頭を抱えながら、彼は自分にとっての手の定位置は、頭なのではないだろうかと思っていた。最近……彼にとっては本当に最近だが、頭を抱える事が多くなったからだ。
今ではこうして頭を抱える姿勢を取る事が自然体のような気がする。
『……どうしたものか』
現実逃避をしていたRodcorteは、我に返って疑問ではなく自身への確認を込めてそう呟く。
どうにかしたいのは【Avalon】のRokudou Hijiriと【Braver】のAmemiya Hiroto、そしてAmemiya Hirotoの娘とVandalieuのCloneと、それに惑わされた数人のReincarnator達だ。
『Origin』にはReincarnatorがまだ何十人もいる。しかし、その中でもRokudou HijiriとAmemiya Hirotoは抜きんでた力を持っている。ぜひとも『Lambda』にreincarnationしてVandalieuを倒すために協力して欲しい存在だ。
『Origin』に居る段階ではさほどでもないが、reincarnationする前に多少手を加え、『Lambda』で何度かJob changeを経験すれば、Alda達が育てているHero Candidateよりも強くなるだろう。
それが『Origin』でお互いに衝突しようとしている。だが、それ自体は別に構わない。Rodcorteにとって、最も避けたいのは二人がこの後何十年も長生きする事だからだ。
Vandalieuへの切り札になり得る二人が何時までもreincarnationしないままでは、結局役none(ブタ)と同じだ。
しかし、問題はRokudou HijiriがVandalieuのCloneが憑いているAmemiya Meiに近づこうとする事だ。
『魂を砕かれたらどうするつもりなのだ、奴は?』
Cloneでは魂を砕けない可能性もあるが、それは試してみなければRodcorteにも分からない。だが、それをRokudou HijiriとAmemiya Hirotoの魂で試してもらっては困る。
そこで、Amemiya Meiに近づかないようRokudou HijiriにOracleを与えたのだが……驚くほど届かなかった。
『あの-sama子では、私のOracleは漠然としたimageしか伝わっていないだろう。それでも、Amemiya 家に近づかなかったのは幸いだったが』
Rokudou Hijiriは、本物のdeath attributeのManaを持つAmemiya Meiを調べれば自分もDeath-Attribute Magicの力を手に入れる事が出来ると考えているため、彼女のskin片やfur、blood液、何でも手に入れようとしている。
前回のAmemiya 家のhome partyも、本来なら自分が出席しようとしていたはずだ。
それを思いとどまったのは、【Shaman】のMoriya Kousukeが放ったArtificial Spiritを破壊した何かがAmemiya 家に潜んでいる可能性がある事と、RodcorteのOracleによって伝えられた不吉なimageが意識の片隅に残っていたからだろう。
(accurateには、それぐらいは私のOracleが役に立ったと思いたいところだが……)
問題は、これからどうなるかだ。
Rokudou Hijiriはshadow武者……【Metamorph】のShihouin Mariのbody partや服に仕込んだsensor類で、Amemiya Meiがdeath attributeの適性を持っている事を知ってしまった。
今は何としても冥を手に入れるため、tacticsを練っている。
(確実に失敗するが)
当然だ。Amemiya Meiは、VandalieuのCloneが守っている。彼女を手に入れ、調査と実験をする事を目的とするtacticsは成功するはずがないのだ。
(寧ろ、成功してはならないのだ)
もし仮に、Rokudou Hijiriが奇跡を起こしてBandaを制し、冥の身柄を手に入れてしまった場合……Vandalieu main bodyが『Origin』にやってくる可能性が極めて高い。
魂だけのconditionでspace (UCHUU)からAdventするのか、worldの壁を破って現れるのか、それとも夢から導いたHumanのBodyを乗っ取るのか、方法は不明だ。しかし、『God of Origin』や『God of Space and Creation』Zuruwarnをallyに付けている以上、可能なはずだ。
そうなってしまえばどうしようもない。Cloneだけが暴れるよりも被害は格段に大きくなる。
(あの分body partなら、どれだけ暴れても被害はある程度で治められる。分body partの標的がRokudouとその配下、協力者なら何とかなるだろう。最悪でもContinent一つ程度で済む)
RodcorteはVandalieuのClone、Bandaの強さを、神としての権限でFamiliar SpiritのAranにAbilityの使用を強制し、計算させていた。
結果、『Origin』には現段階でBandaを倒せる存在はReincarnator達以外に存在しなかった。あのworldで最も優れたMageと、科学とmagicを合わせた最新兵器、戦闘機にヘリに戦車にMissile Satellite、そして屈強なSoldierを使い潰すつもりで投入しても勝てる見込みがないのだ。
その場合BandaはAmemiya MeiとHiroshi、ついでにその場にいた他数名を守る事が出来る。Materializationした彼は、whole bodyが【Demon King Fragment】で作られた存在だ。『Origin』に存在する全ての金属は、彼にとって飴細工に等しい。
ナパーム弾で窒息させようとしても、熱を奪い燃焼そのものを消す事で冥達を守るだろう。
【Bravers】達、Reincarnatorなら、Bandaに勝つ可能性はある。……もっとも、負ける可能性の方が大きいのだが。
(そもそも、『Origin』は彼等に経験を積ませるためのFirst段階。『Lambda』で簡単に死なないよう、そしてworldをよりdevelopmentさせるための経験を積むための時間。そこに何故『Lambda』にreincarnationしたVandalieuがCloneを送り込めるのだ!)
そもそも段階が違うのだ。『Reincarnator』が普通にやってBandaに勝てるはずがない。
(しかも、Rokudou Hijiriは自らが創り上げた勢力だけで、Amemiya Meiを手に入れるつもりだ。Amemiya HirotoとNarumiや、自身のorganizationに取り入れられなかったReincarnatorとも敵対して。……これで成功する可能性があるはずがない)
Rokudou Hijiriが立てるtacticsによっては、Amemiya Hirotoを倒し、彼にallyするReincarnator達も殺す事が出来るだろう。だが、Bandaには絶対勝てないから失敗するのだ。
『むしろ、ここまで来るとRokudouがAmemiya Hirotoにlose殺される展開の方が、私にとっては望ましい。あのCloneが魂を砕くか喰らう事が可能かもしれないのだから』
AmemiyaがRokudouを殺せば、Divine RealmにやってきたRokudouの魂に、色々と情報を開示し、依頼をする事が出来る。
既にRodcorteの目的は、『Lambda』のdevelopmentではなく、Vandalieuの抹殺と自身を認識している彼が治める国の滅亡、国民の全滅となっている。
目的が叶えば『Lambda』worldをsystemから切り離す事も可能になるので、RokudouがUnaging不死になろうがどうでもよくなる。certainly、理想的なのは相打ちになってRokudouも死に、異常が除去された『Lambda』のCircle of Reincarnationをこれまで通り管理する展開だが。
『最悪なのはRokudouのtacticsが上手く行ってしまい、Vandalieuが『Origin』に現れる事だな。Rokudouとその配下のReincarnator達、そして協力した政財界の重鎮や犯罪organizationの長の魂は確実に、そしてAmemiya達の魂も喰われかねない。
そして『Origin』は未曽有の危機を迎えるだろう』
その際、Circle of Reincarnation systemが受ける負担はどれ程か、想像するだけで目の前が暗くなる。『Lambda』ではただでさえ、Concertや育毛Creamなど、信じられない方法でHuman達の魂を導いているというのに。
こうなると、『God of Origin』がVandalieuのallyである事が逆に頼もしい。Vandalieuも、自身にallyした神のworldを滅ぼし、消滅させるような事はしないだろうと最低限だが信じる事が出来る。
『じゃあ、RokudouだけじゃなくてAmemiyaにもOracleを出したらどうだ? Rokudouよりはマシだと思うけど』
『そうだな。Amemiyaは私の【Oracle】やAsagiのimpactで、多少は神仏を尊重していたから。特定の宗教に入れ込む事はなかったが』
Rodcorteが悩んでいると、Familiar SpiritのAranやKouyaが意見を装った誘導を行おうと声をかけた。
AranとKouya、そして泉にとって、Amemiya Hirotoは【Bravers】の仲間であり、Rokudouは仲間を裏切った男だ。彼等がどちらのallyか、Humanを理解できないRodcorteでも察する事は容易だった。
『……良いだろう。私としても、VandalieuのCloneの出番は、ない方が望ましい』
Rokudou達に湯水の如く力を注ぎ、それでも極薄のベールより薄い勝利という奇跡を手にさせるか、それとも多少の手助けをしてAmemiya Hirotoを勝たせるか。
考えるまでもない事だ。
『だが、Amemiya Hirotoを完勝させる事が出来るかは分からない。それは理解してもらおう』
Amemiya Hirotoを勝たせるのは決まったが、今からRokudou Hijiri達を弱くする事は難しい。『Lambda』のCarlosやEdiliaにしたように、blessingsを回収する事は出来る。しかし、それでRokudou Hijiri達が失うのは力ではなく、成長速度のincreaseや限界までの伸び代の追加だけだ。既に成長した分は、そのままだ。
与えたCheat AbilityやFortuneは、彼が死んでこのDivine Realmに現れた後でなければどうしようもない。特に、Reincarnatorの身を守るFortuneはRokudouとAmemiya両方が持っているので、打ち消し合ってしまう。
しかも、『Origin』にはStatus systemが存在しない。
『Lambda』なら、Vitality……いわゆるHPの概念が存在するため強者は多少油断しても死なない。背中をchildにアイスピックで刺されたり、階段から足を滑らせて転落したりしても、強者なら「ああ、痛かった」で済む。大口径の銃で撃たれても、当たったのが目や口の中でなければ、軽傷で済むだろう。
しかし、『Origin』ではどんなに鍛え上げられたBodyを持つ強者でも、アイスピックで背中を刺されたり、階段から転落したりすれば死ぬ可能性がある。銃弾が当たれば、軽傷では済まない。
そうした事を考えると、Amemiya Hirotoを程良く勝たせるのは難しい。Rodcorteとしては、Amemiya Hiroto側がRokudou達を圧倒する展開も望ましくないのだ。
圧倒してしまった場合、Rokudou達を殺さず法で裁こうとAmemiya Hirotoは考えるかもしれない。そして、裁判の結果Rokudouが終身刑にでもなったら……Rokudouが長生きしてしまい、Rodcorteの手元に来るのは何十年も先になってしまう!
certainly、Amemiya Hirotoが死ぬのも遠い未来の話になるだろう。
(だが、これ以上思考を巡らせても仕方がないか。出来れば刺し違えてくれれば最善だが、それで結局Amemiya Hirotoが敗れ、Vandalieuが『Origin』にAdventしてしまったら意味はない。
Amemiya Hirotoを勝たせ、ここに来たRokudouには力を補うための追加の力を今から用意しておこう。副作用で、三度目の奴の人生の寿命が大きく削れる事になるだろうが、構うものか)
Rodcorteはそうpolicyを決めると、Amemiya Hirotoに与えるOracleの内容を吟味し始めた。
Royal Nobilityが社交界の時期に入る頃、Orbaum Elective Kingdomの各guildも揺れていた。
Alcrem Duchy以外のguildでは、それまで事態を楽観視する者が多かった。Dukeの乱心か、Vida believerに対するポーズか、政治的駆け引きによるbluff。そのように考えていたからだ。
しかし、この頃からAlcrem Dukeは乱心した訳ではなく、本気で改革を進めるつもりである事。更にMoksi Earlを始めとした少なくないNobleが、改革を支持している事が明らかになってくる。
Alcrem Duchy内のAdventurer’s Guildから、「そちらがGhoulの討伐依頼を出すのは自由だが、Alcrem Duchy内でGhoulを狩った事が明らかになった場合、厳罰に処されるので注意されたし」という通達が隣接するDuchyに届くと、現実逃避も出来なくなった。
Adventurer’s Guildは急いでadventurer達にAlcrem Duchyの周知徹底を行い、更に将来HarpyやCentaur、そしてGhoulをadventurerとして認めるか否か、協議を重ねることになった。
certainly、Alcrem Duchyの中にあるguildでも大きな混乱が起きている。
Alcrem Dukeが改革を発表した段階では、少なくないNobleが改革に反対し、従わない姿勢を見せた。
だがPossa Marquis 家では、当主であるTheodoreが突然「改革を支持し、協力する」と表明したため、Possa Marquisに従うNoble達も合わせてそれに倣った。
だがAlcrem Duchyの交易都市、MoksiのAdventurer’s Guildでは改革は既に終わっていた。
今、Human社会で最も開かれたAdventurer’s Guildと言えば、このMoksi branchの事だろう。
「Goblin狩りは新人の方々に譲るべきでしょうし、他の依頼は薬草の採取に、街道の整備工事……めぼしい依頼が無いですね」
その証拠の一人が、依頼書が張られているボードの前で腕を組んでいる。
一見すれば、ただの若いfemale adventurerだ。背はfemaleとしては長身で、身に着けている装備もプレートArmorに長剣と盾と、veteranのpartyならそう珍しくない物だ。唯一目を引くのは、首につけたrusticな首輪ぐらいだろう。
しかし、彼女はveteranではなく、accurateにはadventurerでもない。
「Juliana -chan、お使いかい?」
「あ、Rock -san。こんにちは。依頼の帰りですか?」
牛の角とtailを持つHalf-Minotaur、Juliana。彼女は書類上人ではなく、adventurerにTamerされたmonstersである。
一人ではなく一匹、若しくは一頭と数えられ、Adventurer’s Guildの建物の中に入る事は出来ないはずだ。
「いや、今日は休みだ。裏のDismantling場で『Garess' Battlegrounds』のレアなmonstersのDismantlingを行うって聞いて、見学していたんだ。Juliana -chanは?」
しかし、彼女に話しかけたCClass adventurer party『Rock Iron Party』のleaderであるRockは、guildの規則に従って彼女を叱り、建物の外に出そうとはしなかった。
それどころか親しげに会話を続けている。そして、他のadventurerやguildの職員達も、Julianaと彼女に対するRockの態度を問題視している-sama子はない。
このbranchではJulianaを「一匹」ではなく「一人」と認識している証拠だ。
「私は、依頼のcheckを。二、三日で済ませられそうな依頼で、良いのがあったら取っておいてほしいと」
「期限付きか……そうなると、Juliana -chanとあいつ等の実力じゃ、微妙な依頼しかないか」
ボードにある依頼を見直して、Rockはそう評価した。
「しかし、SimonやNatania、『[Heart Warriors]』もBClassか。すっかり追い越されちまったな」
約十年くすぶっていたSimonはともかく、Nataniaや『[Heart Warriors]』のArthur達はRockよりも後にadventurerになった、彼から見れば後輩達だ。
しかし、DClass adventurerだったRockが今年に起きたDungeonのrunawayを経て、CClassに昇Classしたのと比べ、後輩たちはこの前BClassに昇Classしている。
CClassもadventurerとしては非凡な力を持つ者の証明であり、十分尊敬に値する等Classだ。しかし、BClassとは比べ物にならない。
もっとも、Rockと彼の仲間達は幾つかの依頼や訓練として行った模擬戦を通じて、Simon達の今の実力を知っているため、jealousyはしていないが。寧ろ、あの勢いで成長するだけのaptitudeなら、このままAClassまで昇Classしそうだなと思っている。
Simonに関しては、利き腕を失ったせいだろうと考えているため、特に怪しんではいない。その分、Rockは彼やNataniaの義肢を作ったVandalieuの技術力に尊敬の念を抱いていた。
「……Vandalieuにまだ追い越されていないのが、解せないが」
その彼が未だにEClassですらないFClassである事に、Rockは一番納得できないでいた。
FClassはApprenticeや、一般人が副業として働くための等Classで、そもそも戦闘が発生するような依頼を受ける事はできない。
ただし、Vandalieuはその依頼を受けずに、自主的に町の外のDevil NestsやDungeonに入り、Food Stallで売る串焼きの為の食材としてmonstersを狩っている。
「ごmaster -samaは、未成年でまだAdventurer's School校に入っていませんから」
そして、JulianaをTamerしている事になっているTamerでもある。
どう考えてもFClassではないのだが、彼女が言ったようにguildのrule上仕方なくFClassなのである。
「Bellard -sanに頼めば、すぐ昇Classできそうなものだけどな。領主-samaだけじゃなく、Alcrem Duke -samaとも知り合いなんだろ?」
「そうだと思いますが、ごmaster -samaはAdventurer's School校に興味があるそうですから」
「……Centerにあるっていう、特別なAdventurer's School校か」
通常のAdventurer's School校は、たいしたものではない。未成年の希望者が、戦闘が発生する依頼を受ける……つまり、最低限Rank2程度のmonsters相手に一対一なら勝てる実力を付けさせるための訓練施設だ。
ついでに、文字の読み書きや基礎的な計算、採取依頼の対象になる植物の知識や、monstersをDismantlingする技術等guildとしてもadventurerに身に付けて欲しい事を教え込む。
そして、若きadventurerにpartyを組む仲間Candidateと会わせる事も出来る。そんな施設である。
入学に条件はなく、希望すれば成人でも入学する事が出来る。
だが、Orbaum Elective Kingdomの首都にあるAdventurer's School校は違う。
入学するのは、生まれた順のせいで家督を継げず、政略結婚にも使えないNobleの三子や四子、そしてIllegitimate Child。有力商人のyoung child、adventurerとして名を上げた親を持つchild、そして生まれつきUnique skillを持つchild等だ。
両親から期待され資金援助を受けられる者や、aptitudeを持っている者だけが入学する事が出来るAdventurer's School校なのだ。
基本的なcurriculumは他のAdventurer's School校と同じで、単位を取ればすぐ卒業できるのも同-samaだ。だが、優秀な講師陣を揃えており、卒業生の多くがCClassに至り、中にはAClass adventurerになる者もいる。
そうしてElected King領はDungeonのrunawayなど、不測の事態に対応できる強力なadventurerを育成し、保持しているのである。
だが、そこにVandalieuが入学する予定であると聞いて、Rockが思い浮かべたのは……。
「やっぱり、人材の青田買いか?」
と言う事だった。卒業生の多くがCClass adventurerになるAdventurer's School校でも、既にBClass以上の実力を持つVandalieuが学ぶことがあるとは思えない。
「maybe、そうだと思います」
Julianaも同感だった。恐らく、Royal Nobilityのyoung childと繋がりを持ち、そこから侵食するようにElected King領の為政者達を取り込むつもりなのだろうと。
Rockが予想しているよりも広い範囲で人材を取り込む事になるが、流石にそこまで詳しく説明するつもりはない。Julianaは彼を信頼できる人物だと思っているが、彼が信じる神が信頼できるかは別の問題だ。
「そうか……来年からは寂しくなるな。
話は変わるが、nameが六文字で四文字目が『ダ』のKami-samaって知らないか?」
たしかに、話が変わりそうだ。彼が信じる神が、Julianaが信じる神と同じになるかもしれない。
「……六文字で、四文字目が『ダ』のKami-sama? 何かのクイズですか?」
「あ、ああ。ちょっと知り合いから出されたクイズでな。答えが分からなくて困っているんだ」
「そうですか……きっとその内分かりますよ」
(突然得たblessingsと夢の内容を結び付けて良いか、まだ半信半疑なのでしょう)
しかし、何れ彼も理解するだろう。偉大な存在に触れた事を。……同時期にblessingsを受けた者が彼以外にも複数いて、彼等と相談すればあっさりと答えに辿りつくかもしれないけれど。
そう思いながら、Julianaは新しい後輩や弟を見守るような眼差しをRockへ向けた。
「そ、そうか。まあ、そうだよな。ええっと、そう言えば……」
突然慈しみの中に狂信が潜んでいる瞳を向けられたRockは、困惑と危機感を覚えて咄嗟に再度話題の転換を図った。
「そう言えば、二、三日で済ませられる依頼を探しているとさっき言っていたが、近々予定があるのかい?」
VandalieuとDarciaが今Moksiに居ないのは、Alcrem Duke 家のpartyに出席するためである事を、Rockは知っている。Stageで、Darciaがpartyに出席するため、暫くStageには立てないと発表していたからだ。
当時はBAKANA Nobleやそのボンボンが二人にちょっかいをかけるのではないかと、心配になったのでよく覚えている。
「はい。帰って来たごmaster -sama達と一緒に、CentaurやHarpyのAutonomous Territoryを訪ねる予定になっていますから、暫く帰って来られなくなります。
Simon -sanとNatania、そして『[Heart Warriors]』の皆-sanも同行する予定です」
これは本当だが、それだけではない、予定では、両Autonomous Territoryを訊ねた後、そのままVidal Magic EmpireやDemon continent、Gartlandに【Teleportation】し、tacticsの準備を整え、実行する手筈となっているのだ。
GoddessからのOracleを果たす為に。
「そうか、Darcia -sanはVidaの聖人だものな」
しかし、Rockは特に疑うことなく納得し、「頑張ってくれって伝えてくれ」と言って離れていった。
JulianaもAdventurer’s Guildから出て、表で待たせていた仲間と合流した。
「相変わらず人気者ですね」
「「「チュー!」」」
MarollとUrumiとSurugaのmouse三sistersは、体長三meterの巨体とつぶらな瞳で通行人に愛敬を振りまき、芸をしておひねり……おやつを貰っていた。
「「グルゥ……」」
対して、Fangは疲れたように唸り声をあげている。
Rank upし、三頭立ての馬車のcarriageを上回る巨体と二つの頭を持つOrthrosになった彼だが、mouse三sistersと違って背中のfurに触れても安全であるため、child達の玩具にされていた。
本来は人懐っこいとは言い難い気性の犬なのだが、Maroll達にKanako直伝のMascotキャラの心得を教え込まれているため、childを追い払えないのである。
しかも、Rank upした結果知能も高くなってしまったので、patience力を身に付け遠慮や配慮も出来るようになってしまった。お蔭で、自力では抜け出す事が出来ないでいる。
「皆、そろそろ帰らないといけないから、Fangを放してあげてくださいね」
「あ、Juliana -chanだ!」
「またでっかくなってる!」
「育ち盛りですから。それと、女の子に『デカイ』なんて言っちゃいけませんよ」
顔なじみ……ある意味幼馴染のchild達をFangの背中や頭の上から降ろして、彼女は前世からの仲間達が待つ家に帰宅した。
ちなみに、仲間達が全員生前と同じぐらいの背丈に成長したため、家は両隣の家を買いとって増築し、今は小さなmansionぐらいのSizeになっている。
冬の澄んだ空を、七隻の船がDemon KingのContinentに迫っていた。
「では、First段階を始めましょう」
Vandalieuの言葉に、背後に控えるLucilianoとJulianaが口を開く。
「……ついにこの時が来たか」
「ええ、ついに時が来たのです」
言葉はだいたい同じだが、込められたemotionsは真逆だった。
『主よ、【Muscle Technique】の実験もするのでしょう? 奴らが持ち堪えられなかったらどうするのですか。途中で退却しますか?』
Bone Manの質問に、Vandalieuは少し考えた。tacticsのFirst段階は、やや戦力を高めた事以外はこれまでと同じ偽装工作。本命は第二段階で、First段階でBotinのDefense Corpsが破れてしまったら予定が変わってしまう。
「その時は、退却しないでそのまま第二段階をActivateしましょう。準備自体は出来ている筈ですから。……我が息子以外は」
『今頃は、お昼寝の時間よね』
『一度寝ると、中々起きないからね。childは寝るのが仕事だから、それで良いのだけれど』
Legion達が言うように、卵から誕生したVandalieuとTiamatの間に生まれた龍は、寝起きが悪かった。既に戦闘に耐えられるBodyを持ち、Rank10以下のmonstersをスナック菓子やドリンク感覚で気軽に飲み食いできる強さだが、お昼寝の時間は絶対に起きない。
「kaa-sanとPauvinaと、あとLuvezfolとFidirgが見ていてくれるから、お留守番でも大丈夫でしょう。Luvezfolの身の安全は、やや不安な気もしますが。
では、全速前進です」
Vandalieuは、言葉とは裏腹に恐れも不安も感じさせない-sama子でCuatroを前進させた。
大きな試練……Giant Idol Statue完成を祝う式典を終えた彼にとって、Botin Defense Corpsとの戦いは恐れるに値しないのである。
《【Strengthened Attribute Values: Ruling】、【Strengthened Attribute Values: Target of Faith】、【Strengthened Attribute Values: Vidal Empire】skillのlevelが上がりました!》
《【Muscle Technique】skillを獲得しました!》
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・Name: Fang
・Rank: 8
・Race: Orthros
・Level: 78
・Passive skills
Dark Vision
Mysterious Strength:7Lv(UP!)
Detect Presence:5Lv(UP!)
Intuition:3Lv(UP!)
Self-Enhancement: Guidance:7Lv(UP!)
Enhanced Body Part:fangs、爪:7Lv(UP!)
Mental Resistance:4Lv(UP!)
Fire-Atribute Resistance:6Lv(UP!)
Strengthened Attribute Values: Watchdog:3Lv(UP!)
Rapid Regeneration:1Lv(NEW!)
Disease and Poison Resistance:1Lv(NEW!)
・Active skills
Silent Steps:3Lv
Dark Aura:6Lv(UP!)
Scream:4Lv(UP!)
Charge:6Lv(UP!)
Coordination:7Lv(UP!)
Flame Breath:8Lv(UP!)
-Surpass Limits-:7Lv(UP!)
Dancing:3Lv(UP!)
Familiar Spirit Demonic Advent:2Lv(UP!)
Parallel Thought Processing:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Vandalieu’s Divine Protection
Zantark’s Divine Protection(NEW!)
○Monster explanation::Orthros Luciliano著
師Artisanによると、another worldにおけるHELLのWatchdogの弟らしい。二つの頭部を持ち、EARTH Dragonもかみ殺す鋭いfangsと、業火の息を吐きながら、その業火に自身は耐える事が出来るとは……another worldの死後のworldのsecurityはさぞ万全なのだろう。
かと思ったら、Heroに殴り殺されたとlegendにあるそうだ。
Fangの場合は、Rank6のGarmからRank7のHuge Garmを経て、Orthrosに至った。戦闘が終わってしばらくしたら、突然頭部が二つに裂けて、そのまま頭部と首が二つに再生変形したそうだ。現場に居合わせたSimonやNatania、『[Heart Warriors]』のArthur達はさぞ驚いた事だろう。
……意外な事に、Miriam嬢がMemoryに止めていて詳細なreportを読む事が出来た。流石師Artisanの真友だ、胆が据わっている。
Rank upした事で【Rapid Regeneration】や【Disease and Poison Resistance】、そして【Parallel Thought Processing】skillを獲得したFangだが、現時点では人格は増えていないらしい。
HELLのWatchdogの兄の方である、Cerberusになったらどうなるのか、是非観察したいので彼の今後の成長が楽しみだ。
ああ、ついでにZantark’s Divine Protectionも得たらしい。maybe、Fire-Attributeっぽいからだろう。