Vandalieuは『Goddess of Water and Knowledge』PeriaのDefense Corpsとの戦いで鹵獲した、膨大な数のOrichalcum塊の一つにManaを注いでいた。

　かつては一時的に形を変えるだけで精一杯だったOrichalcumも、今では自在に形を変え、加工する事が出来るようになった。

「やはり、鉄や銅のようにはいきませんか」

　だが、Death IronやHell CopperのようにOrichalcumを新たな金属に変化させるのは不可能なようだ。Orichalcumよりも格段に加工し易いMythrilやAdamantiteも同-samaなので、別に不思議ではないが。

「ここに至っても無理となると……やはり、師Artisanの技量やManaの問題ではないのだろうね」

　書類に実験結果を記入しながら、Lucilianoがそうconjectureする。

「っと、言うと？」

「前にも説明したが、OrichalcumやMythril、Adamantiteはどれも魔導金属と評される金属だ。加工前の素材のconditionから、既にManaが宿っている。つまり、既に変化を終えているから、これ以上変わらないのではないかと、私は思っているのだよ」

「なるほど……では、彼女達に渡すTransformation Equipmentには、このまま既存の金属を使いましょう。Death Iron、Hell Copper、そしてspirit silverにlife goldで。

　……奴の分も、一応仕立てておきましょう。God of Originが支援するそうですが、それでも負けたら困りますし」

　Lucilianoのconjectureに納得したVandalieuは、Orichalcumを置いて、用意しておいた液体金属とSpirit Form金属、そして生体金属の加工を始める。spirit silverの視認は、かつてはLegionの協力が必要だったが、今は【Demon King's Demon Eye】を使えば可能だ。

「……他の国なら師Artisanが弄っていた小さな塊を売るだけで、mansionが家具Servant付きで買えるだろうに。うちの国の金属需要はどうなっているのだろうね？」

　その-sama子を見て、Lucilianoは苦笑いを浮かべる。

　Vidal Magic Empireでの金属需要は、他の国と比べると異質だった。MythrilやAdamantiteの価値は鉄以上、Obsidian Iron並で、そのもっとも安価な人造魔導金属であるはずのObsidian Ironが全く作られない。

　何故なら、Vandalieuが鉄や銅からObsidian Iron以上の性能を持つDeath IronとHell Copperを作るため、Blacksmith師達はObsidian Ironを作る時間も理由もないからだ。

　そしてOrichalcumでなければ対抗できない、【Demon King Fragment】で作られた武具もProductionされている。

　更にVidal Magic Empireの民は、Emperorへの感謝と信仰を表す為にEmperor本人の粘り強い反対運動をものともせずに、EmperorのGiant Idol Statue建設を進める国民性だ。

　性能が同程度なら、Orichalcum製のArtifactより、VandalieuがRefiningした【Demon King Fragment】から作られた武具を選ぶ者が、圧倒的に多い。

　Magic Empire内のTransformation Equipmentへの人気も、「Vandalieuのお手製」という理由が大きかった。……Magical Girlを増やしたいZadirisが、そう煽ったのである。

「他の国の需要は、今は関係ありません。Orichalcumを輸出する訳ではありませんし」

「確かに。万が一でも加工されたら、Hero Candidate達や『Five-colored blades』の支援者の手に渡るだろうからね。

　ところで、another worldでもTransformation Equipmentは動くのかね？　向こうには時attributeが無いそうじゃないか」

「一応、事前に試すつもりです。そもそも、これを届けられるかも実験しないといけませんし」

「spirit silverとlife goldを使うのも、初めてではないかね？　本当に大丈夫なのだろうね？」

「SalireとRitaには使いましたよ。Ability Valuesやskillの獲得やlevelのincreaseには、目に見える変化はありませんでしたが」

　Living ArmorのSalireとRitaのmain bodyである鎧部分に、spirit silverとlife goldを使った改造が既に施されていた。しかし、その結果は『味覚がより鋭くなり、満腹感を感じるようになった』とか『睡眠をとる事が可能になった』というものだった。

「確か、そのTransformation Equipmentを贈る相手は、全員Humanだったと思ったが……味覚や睡眠に障害でも負っているのかね？」

　SalireとRitaの人生が豊かになったのは喜ばしいが、今回の目的には合わないのでは？　そう訝しく思っているらしいpupilsに、Vandalieuは答えた。

「spirit silverとlife goldを使えば、夢に持ちこめることが分かりましたからね。space (UCHUU)から地上へ直接Adventするのは、God of Origin -samaから止められているので、夢経由で渡す予定です」

　worldの壁を強引に破壊するのも、緊急時以外しない予定だ。……何度も破壊したら、Amemiya 家がspace的な特異点になってしまうかもしれない。

　しかし、Vandalieuは多忙だった。Muscle Technique習得の為の修行、Gartlandのtunnel工事や融和政策、Pauvina達と一緒にFirst子への絵本の読み聞かせ……幾つかはDemon King Familiarを使って同時進行で行っているが、このままTransformation Equipment作りに没頭する訳にはいかない。

「あ、そろそろdanceのlessonの時間ですね。じゃあ、作業はCloneに引き継がせるので後はよろしくお願いします」

　Honorary Earl位を受け取ったDarciaは、社交界に参加する権利を得ている。そして、Dukeから是非参加して欲しいと頼まれていた。

　Vandalieuがdanceのlessonを受けているのは、その時付き添うためである。ちなみに、緊張はしていない。Royal Nobilityが着飾って集まり、美食を堪能する豪華絢爛なpartyは、luxury complexを抱えるVandalieuにとって、夢見た催し物だからだ。

　Vidal Magic EmpireにもDancing会はあるが……partyというよりも祭という感じになってしまうし、武道大会の方が圧倒的に多く開かれている。

　それに――

「俺とTiamatの子のお披露目と、Giant像の完成式典が迫っている事を考えれば、大した事ではありません」

「師Artisan……未だにIdol Statueとは認めていないのかね。

　それはともかく、前も言ったがdanceよりもMental修行の方が良いと思うよ。ご母堂に色目を向けたNobleのbloodで、Venueが真っ赤に染まる予感しかしないのだが」

　その付き添いの結果、惨劇が起こるのではないかと心配しているLucilianoはそう言うが、Vandalieuは首を左右に振った。

「Luciliano、あなたは自分の師を何だと思っているのですか。そんな事はしません」

　彼はDarciaがRoyal Nobilityから見ても美しく、魅力的である事を理解している。だから社交の場に出た彼女がNobleから注目を集め、褒められたり口説かれたり、danceに誘われても気にしない。

　そうした事は、社交界ではmannerの一環であると理解しているからだ。寧ろ、Vandalieuが怒りを覚えるとしたら、Darciaが社交界で無視されるような場合だろう。

　ただ、世の中idiotはどこにでもいるものだ。

「……manner違反を犯すような手合いなら、どうかね？」

「程度によりますが、その場での対応はホストであるDukeの仕事でしょう」

「……師Artisan、partyに行く時は土産に追加のCreamを渡すのを忘れないようにしたまえよ」

　LucilianoはVenueに集まるNoble達ではなく、Alcrem Dukeとその部下達に心から同情した。

「Lucilianoも、DolsteroのLife-dead化を頑張ってくださいね。次の戦いには参加して貰う予定ですし」

　だが、そう言われた途端、「他人に同情している場合ではない」と気分を切り替えた。

《【Dancing】skillを獲得しました！》

　秋。村では収穫を祝って祭が催される。

　そしてRoyal Nobility達は社交界が開かれ、幾つものpartyがこれから催される事になる。

　Alcrem Duchyのpartyは、例年よりも賑わっていた。partyの豪華さは、例年と同じ。大Nobleの跡取りのお披露目や、婚約発表等の特別なeventがある訳でもない。

　だと言うのに例年よりも多くのNobleが出席していたのは、Takkard・Alcrem Dukeが主導して行おうとしている制度改革……Alda temple贔屓のNobleにとっては歴史に残る大暴挙、Vida believerのNobleにとっても衝撃的な大革命によるものだ。

　Alcrem Duchy内のあらゆるVida's New RacesのAutonomous Territoryを廃止し、移住と職業の自由を……各guildへの加入はまだ不可能だが……認める。

　更に、それまで人型のmonstersとして扱われていたGhoulを、法で守られたHumanの一種として扱う事。

　この二つはNoble達に大きな衝撃をもって受け止められた。

　故にDukeと直接会ってその真意を確かめたい者や、Duchyの中枢では何が起きているのか確かめずにはいられない地方領主やその名代が集まっているのだ。

「諸-kun、まだ新年を迎えるには早いが、今年は我がAlcrem Duchyにとって試練の年であったのは疑いようもない。我が末のImouto、Julianaの死、そして『God of Mountains』Borgadonのtemple『Holy Wastelands』のDecayと、Evil God (P)のrevival。最悪の場合、このAlcremは滅びていただろう。

　こうして諸-kunらと会えたのも、我がDuchyのHero『Knight of the Crumbled Mountain』Gordiと、新たなHero『Holy Mother of Victory』Darcia・Zakkart Honorary Earl、そして民の尽力によるものだ。彼の冥福と、新たなHeroの今後の活躍を皆で祈ろう。乾杯！」

　Takkardに合わせて集まったNoble達がglassを揚げ、「乾杯」と唱和する。しかし、彼の求め通り祈っている者は少数派のようだった。

　特に、originally反Duke派だったNobleや、今回の大改革で反対派に転じたNoble達はTakkardやその周りの人物を観察し、情報収集を行っている。

　反Duke派のNobleの中心人物、Theodore Possa Marquisもその一人だった。婚約者探しという名目で連れて来た次男と次女をVenueに放ち、他のNoble 家の子pupils女からの情報収集をさせ、自身は同じ派閥のNoble達と会話している演技をしながら、分析を続けている。

　今年は、確かにAlcrem Duchy全体にとって試練の年だった。accurateに評するなら、Orbaum Elective Kingdom全体にとっての試練の年になるはずだった。

　Juliana Alcremの死は些細な問題だが、Moksiの町を襲ったDungeonのrunaway、そして『Holy Wastelands』を壊滅させrevived Evil God (P)(実際は邪Evil God (P)だが、表向きrevivedのはEvil God (P) Forzajibarだという事になっている)。

　もし対処が遅れてDungeonから溢れたmonstersやEvil God (P)が野放しになったら、被害はMoksiの町やAlcremだけに留まらない。この場に集まったNobleとその領地も無事では済まなかっただろう。最悪の場合は全滅。Fortuneにも直接襲われなかったとしても、交易都市や首都の壊滅は経済的に大きな打撃となる。

　特にEvil God (P)は、Human達がmapに引いた境界線など無視して、他のDuchyでも破壊の限りを尽くす可能性が高かった。

　まさしく、Elective Kingdom全体にとって試練の年となっただろう。

　それを防いでくれた当事者たちには、Theodoreも感謝の念を抱いていた。

(去年見た時よりも顔色も肌艶も良い。それに、明らかに頭髪の量が増えている。健康不良を誤魔化す為、腕の良いカツラ職人を雇い、顔色をmagicで誤魔化しているのか？

　だとすれば、年末のpartyか、Elected King領で開かれる新年を祝うpartyで跡取りに家督を譲る事を発表するはずだが……挙動からはそこまで深刻には見えないが、無理をしているのか？)

　そう分析したTheodoreは、暫く政治的な攻勢は控えるべきかと思案した。誰もが認めるachievementを挙げた者の敵は、悪評を受けやすい。それが心労で弱っている者なら、尚更だ。

　強欲、冷酷、残酷、悪徳。そうした悪評は、たとえそれが実際そうであったとしても受けるべきではない。何をするにも疑われ、痛みの有無にかかわらず腹を探られる。その上、擦り寄って来る者達の多くは同じく悪評を受けている者達。

　外から見れば諸悪のRootのように見えるのだろう。そうなれば全てに支障をきたす。

（何事も、程々で済ませなければ。反Duke派と言っても、私はDukeを倒したい訳ではないのだからな）

　Theodoreは四十代前半で痩せ型、酷薄そうな顔つきで、いかにも悪徳Nobleらしい容姿の男だ。だが、そう見えるのはappearanceだけで本当に悪徳Nobleである訳ではない。

　清廉潔白ではないし、私腹もそこそこ肥やしている。しかし、mountain banditや違法Slaveを扱うSlave商人や麻薬売買に便宜を計り賄賂を受け取ってはいない。

　反Duke派とは言っても、それは政治的な立ち位置のため。Takkard・AlcremがAlda Reconciliation Factionに傾倒したため、反発している反Alda Reconciliation Factionのtemple勢力との繋がりや、派閥の頂点としてReignする事で得られる利益を目的としたものだ。本気でAlcrem Duke 家に反発している訳ではない。Marquisとは言え、Alcrem Dukeの家臣である事は変わらないので、本気で反発……反乱を起こしたらPossa Marquis 家が潰されてしまう。

　寧ろ、TheodoreはTakkardの健康を願っている。当主の急死による家督相続は、治世が乱れる大きな要因だ。Alcrem Duchyが乱れては、反Duke派等と言っている場合でなくなってしまう。

(そう言えば、先程の声には張りがあった。もしや、Dukeは本当に健康で、私が勘ぐっているだけなのか？)

「しかし Possa Marquis、Alcrem Dukeには困ったものですな。新たなHeroにかぶれたのか、下品な見世物を公共の場で開かせるだけではなく、自らDuchyの秩序を乱すとは」

「Dark ElfにHonorary Earl位を授けるだけでも前代未聞だと言うのに、Autonomous Territoryの解放とは。最初に聞いた時は耳を疑いましたぞ」

「来年には空にはHarpyが、地上ではCentaurが走り回る事になりますな。伝書鳩や馬車馬の代わりに使う分には有用かもしれませんが、奴らが調子に乗れば目障りな事になりますな」

　Alcrem Duchyには、北部の岩山にHarpyのAutonomous Territoryが、そして岩山のふもとには小さいがCentaurのAutonomous Territoryが存在する。CentaurはAutonomous Territory全体でも千人も居ないのでimpactは少ないだろうが、Harpyは数万人規模なので、Autonomous Territoryが解放されれば何が起きるか分からない。

「調子に乗るとは？　まだ商業guildを始めとした各guildへの加入は出来ないのでしょう？」

　各guildは政府から独立した存在だ。certainly完全に権力と無縁ではいられないが、建前だけという訳でもない。そのため、Alcrem Dukeが出来るのは改革の働きかけまでで、その後は各guildが判断する事になる。

　ただ、Alcrem Duchy内で変わった法制度を無視し続ける事は出来ないので、Ghoulの討伐依頼を廃棄したAdventurer’s Guildのように、徐々に制度を変革していく事になるだろう。

　だが、それはまだ先の話。早くても数年後以降のはずだ。

「分かりませんか？　HarpyやCentaurのAutonomous Territoryは解放され、今はAlcrem Dukeの直轄領となったため、Duke 家が統治しなければなりません。しかし、General Officerを送り込んで治めるのは難しい土地柄。

　そのため、DukeはHarpyやCentaurの長にNoble位を与え領主とするつもりではないかと、私は睨んでおります」

「そ、そんなBAKANA！？　尊き青いbloodに、鳥や馬のbloodを混ぜるなど、正気ではないっ」

「Dukeは社交界に鳥獣を招くつもりなのか！？」

　目を剥いて、しかし小声で騒ぐ取り巻き達を「器用だな」と思いつつ、Theodoreは口を開いた。

「……HarpyやCentaurのNoble誕生か。結構な事ではないか」

「Possa Marquisっ！？」

　Theodoreがそう口を挟むと、取り巻き達は驚いたような顔をして振り返った。

「寧ろ、Duke 家の直轄領のままの方が不都合でしょう。Duke 家の力が大きくなりすぎる」

「ですが、Centaurはまだしも、HarpyのAutonomous Territoryだった場所は岩山で、利益は殆ど上がっていないはずです。力が大きくなるとは、思えないのですが？」

　反Duke派Nobleの中には、Alda教の熱心なbelieverもいる。そうしたNobleは熱心過ぎて、Vida's New Racesを侮る傾向が強い。

　だが、Possa MarquisはVida's New Racesを、今は侮ってはいなかった。Alcrem Dukeの改革を聞き、その意味と狙いを調べる内に、警戒に値すると考えるようになっていた。

「Centaurの機動力と耐久力は優秀な乗用馬を上回り、また、槍や弓が達者だと聞いております。優秀な騎兵となるだろう。

　HarpyのFlight Abilityも素晴らしい。嵐でなければ、どんな早馬よりも早く情報を伝える事が出来るでしょう。また、戦となれば一対一では竜Knightに敵わないだろうが、彼女達の内戦えるのは数千feather……いや、数千人を超える。総力戦を行えば、百騎未満の竜Knightとどちらが勝つか、考えるまでもない」

　もし元Autonomous TerritoryがDuke直轄のままなら、CentaurとHarpyはDuke 家の領民になってしまう。そうなれば二つのraceの力は、Duke 家が独占してしまうかもしれない。

「それは、確かに……」

　そう納得する取り巻きのNoble。しかし、Theodoreが危機感を覚えていたのはCentaurとHarpyの軍事利用だけではない。それは、経済効果だ。

「これはこれは、Theodore Possa Marquis。ごきげんよう」

　思考に没頭しかけたTheodoreに近づき、声をかけて来たのは、DarciaとVandalieuにAlcrem Duchyで最初に接触したNoble、Isaac Moksi Earlだった。

「Moksi Earlか、どうしたのかね？」

「certainly挨拶回りですよ。これでも交易都市の領主なので」

　Isaac Moksi Earlは反Duke派ではない、いわゆる普通のNobleだ。そのため、Theodoreとは距離を取り、会話をする事は少なかった。

　それが積極的に自分から声をかけて来るのは、妙だとTheodoreには感じられた。特に、Alcrem Dukeの乾杯の言葉で、Moksi Earlは注目されている。そんな中積極的に反Duke派のTheodoreに話しかければ、彼も反Duke派になったのだと思われても仕方がない。

　しかし、それでも領地であるMoksiの町が大きな被害を受けていれば、復興の為の援助を募るために派閥に関係なく声をかけても不自然ではない。

　だが、Moksiの町は被害を受けるどころか、押し寄せてきたmonstersを倒した事で貴重な素材が市場に流れ、更に新たに出現したＢClass Dungeon『Garess' Battlegrounds』と取り巻きの一人が『下品な見世物』と評したshowのお蔭でadventurerや旅人が集まり、空前の好景気に沸いているはず。

　それとも、Moksiの町で宗教的な問題が起きていて、Alda templeと繋がりを持つTheodoreを頼って来たのだろうか？

「私の事よりも、皆-sanが注目しているあの方々に注目を向けてはいかがですかな？」

　だが、Earlはそう言って自分ではなくVenueで大勢のNobleに囲まれている人物を目で指した。

　そこに居るのは、Darcia・Zakkart Honorary Earlだ。彼女を見た瞬間、Theodoreは息を飲んだ。

　彼女が美しかったからではない。彼女の着ているdressが、見事だったからだ。

（何だ、あのdressは！？　あの生地は絹……いや、ただの絹ではない！　それに仕立ても……初めて見る型だ。あれもDark Elfの秘伝だとでもいうのか！？）

「では、私も彼女に挨拶をしなければなりませんので、これで」

　息を飲んだTheodoreが何か言う前に、Moksi EarlもDarciaの元に向かって歩き出した。

「は、EarlもAllureに惑わされたようですな」

「やれやれ、年甲斐もない」

　自身の取り巻き達の言葉を聞き流しながら、TheodoreはMoksi Earlの後ろ姿を目で追い……そして気がついた。

　Darciaの周囲に集まっているのは、殆どが四十代以上のNobleで、その全員が豊かな頭髪と良い艶の肌をしている。TheodoreのMemoryでは、彼ら全員が去年は頭髪に不自由していた……中には頭頂部が完全に禿げていた者もいたというのに。

（まさか……やはり彼女なのか！？　あの頭髪がカツラでないとするなら……Darcia・Zakkartは、既にこのAlcrem Duchyを裏から牛耳っているのか！？）

　かつてない危機感に、Theodoreは背筋が凍るような寒気を覚えた。頭髪はどうでもいいが、反Alda Reconciliation Factionと繋がっている自分は、そしてPossa Marquis 家がこのままではどうなるか、想像してしまったのだ。

（な、何としてもあちら側に行かなくては！　でなければ……我が家は破滅する！）

　Theodore Possa Marquisを遠目に見ながら、Takkard・Alcremは彼が内心で何を考えているのか、見透かしていた。

（本来なら、彼もここまで分かり易い男ではないのだが……まあ、仕方ないだろう）

　反Duke派のtopではあるが、反対勢力を一纏めにしてidiot過ぎる事をしないよう歯止めになってくれる、下手なallyより有能な男なので、是非こちら側に来て欲しい。

　そのためにMoksi Earlに動いてもらったので、期待したいところだ。

　政治とは、時に有能な敵よりも無能なallyの方が恐ろしいものなのだから。

（皆、儂が何故この改革をしたか、興味を持っているようだな。大方、儂がDarcia -samaのAllureに惑わされたとか、軍事力や経済効果目的だとか、考えているのだろう）

　Allureに惑わされた以外は、かなり良いconjectureだとDukeは思った。実際、彼自身も期待している。

　経済効果は……Centaurの数は数百人と少ないが、彼等がHumanのpeddlerと組めばその経済効果は計り知れない。certainly、その分馬のAnimal Trainerやpeddlerの護衛の仕事を受けていたAdventurer’s Guildやmercenary guildには、損失になるだろう。

　しかし、Centaurも泊まれるよう街道沿いの村や町の宿は改築をするため、Carpentryは仕事が増え、木こりは材木の需要が増える。

　そしてCentaurは、農村でも雇われるかもしれない。Humanと同等の知能と、平均的な農耕馬を上回る馬力を併せ持つraceなのだから。

　しかも、村全体で共有したとしても一年中世話しなければならない家畜と違って、Centaurは畑を耕す時や新たに開墾する時だけ雇えば良いのだから、負担も少なくて済むだろう。

　Centaur側は家畜代わりに雇われるのを嫌がるかもしれないが……Autonomous Territoryから解放された彼らも、変化を強いられる。変わらなければならないのはHumanだけではないのだ。Centaurから、誇りではなく仕事と報酬を求める者も出るようになるはずだ。

　Harpy達はCentaurよりもimpactは大きい。Alcrem DuchyのHarpy達は、山間部に住んでいる一族であるためダチョウのように発達したlower bodyを持つ地上種は殆どいないが、Flight Abilityの高い個体が多い。

　そのため伝令に向くが……それよりも、彼女達はHumanが命がけで登らなければ到達できない高い岩山や、その向こうにある海に飛んで行き、希少な薬草や海産物を手に入れる事が出来る。

　そしてHarpy達の力量によっては、岩山やContinent北部の海にだけ生息するmonstersの素材も、取引する事が可能だ。

　Harpy一人が一度に運べる量は少ないが、中に入れた物品の重さを軽量化する事が出来るmagic itemを預ければいい。

　そうして稼いだ分、Harpy達が使う金も多くなるはずだ。それまで限られた商人からしか購入する事が出来なかった、Autonomous Territoryでは作る事が出来ない実用品や嗜好品や装飾品を、自由に買う事が出来るのだ。

　両raceの解放がもたらす利益は計り知れない。

　これらの利益は、頭が良ければ以前から想定する事が出来た。なのに、何故それをしなかったのかと言えば差別意識や慣習、そしてVida信仰が認められているOrbaum Elective Kingdomであっても根強いAlda教のimpactによるものだ。

　そして、Human以外のraceが権力を持つ事を嫌うCenterの意向があるからだ。

　それらに逆らって実行する事は、どのDuchyでも不可能だと思われた。

（それなのに実行するからには、templeやCenterの大Nobleの妨害を跳ね除けられる後ろ盾を儂が手に入れたからだと考えているだろう。

　だが、自力では気がつけまい。想像を絶する程頼もしい、Spike付きの後ろ盾だとは！）

　Vandalieu Zakkartが後ろにいる。そう思うだけでtempleやCenterのNobleなど、怖くともなんともない。甘噛みをしてくる子犬のようなもので、いっそ憐れみすら覚える。

　改革に反対する者達がAlcrem Duchyへ人と物が流れないようにして、経済的に封鎖しようと試みる。

　民の不満を煽り、Dukeやその関係者の暗殺、そして反乱を企てるよう促す。

　Orbaum Elective Kingdom全体の敵として、Alcrem Duchyに軍を差し向けられる。

　そうした危険が現実になったとしても、Vandalieu Zakkartが後ろにいれば恐れる必要はない。

　彼が治めるEmpireは大きく、資金も潤沢。経済的な援助も約束してくれている。暗殺や反乱が起こる前に、扇動者は顔の皮を残して消される。そして軍が差し向けられたとしても、すぐさま踏み潰すだろう。

　そうした保証以外にも、彼が「友好の証しに」と渡してくれるＶCreamも大きい。頭に塗れば毛髪が蘇り、肌に塗れば弛みや皺が消え、十代のような瑞々しい肌が戻る。他にも関節痛や重篤なskin Disease、火傷さえ塗れば快方に向かうという、驚くべき声も聞いている。

　Vandalieu Zakkartの力と脅威を信じない者でも、このＶCreamの効能は塗れば分かるので、改革に賛同する仲間を得るのに役立っている。

　……certainly、自分でも使っているが。

「Alcrem Duke、ただ今戻りました。Possa Marquisは喰いついたようです」

「ご苦労。Possa Marquisは頼もしい同志となるだろう。彼を破滅させ、-kunをMarquisへ昇爵させる事にならなくて良かった」

「おや、出世のchanceをふいにしてしまいましたかな？」

「はっはっはっは、冗談だとも、Moksi『Duke』-dono」

　戻ってきたMoksi Earlに冗談を言うAlcrem Duke。しかし、彼はVandalieuからの好感度では、自分よりもMoksi Earlの方が高いのではないかとconjectureしている。

　もし自分がVandalieuに協力しなかったら、自分は排除されMoksi EarlがDukeにされていたのではないかと。

　だからこそ、Alcrem Dukeはこの改革をVandalieuに指示される前に提案した。

(この改革は、何としても進めなければならん！)

　Vandalieu Zakkartと彼が治めるMagic Empireは、後ろ盾としては最高だ。だが、Spikeがついている。

　それは動きが遅ければ……役に立たないと判断されたら、背中からAlcrem Duke 家を貫くだろう。

「冗談が過ぎますぞ。しかし、良かったのですか？　お仲間やJuliana嬢を招かなくて。我々が彼女等を蔑ろにしていると思われるのでは？」

「それは儂も考えたが……Zakkart -donoから『今はまだ早いでしょう』と言われてな」

　Venueの警備や給仕を、CentaurやHarpyに依頼するなどして、VenueにVida's New Racesを増やし、Vandalieuの仲間がいても目立たない状況を作るなど、色々考えたが、Vandalieuにそこまでしなくてもいいと諌められた。

　それで改めて、彼は自分達の事情も考慮してくれる存在なのだと思い、Alcrem Dukeは安堵した。だが、同時にSpikeを意識させられた。Moksi Earlも同感らしく、顔色を悪くしている。

「……今はまだ早い、ですか」

「そうだ。その時を迎えるために、急がなければならん」

　まずは、HarpyとCentaurのElderをNobleにしなければならない。どんな妨害を受けても。

　一方その頃、SpikeつきのDukeの後ろ盾、VandalieuはDarciaとdanceをdance、Venueに用意された美食を楽しんでいた。

　美食の味は自分達が作ったCookingよりも格段に落ちるが、『外食』というのは雰囲気込みで楽しむものだ。……それに、他人が作ってくれたCookingを食べるのは楽でいい。

「Vandalieuが仕立ててくれたこのdress、すごいreputationよ。生地をどこで手に入れたか教えてほしいって、何度も言われちゃったわ」

「着ているのがkaa-sanだからです。お蔭で、蜜絹の宣伝にもなりました」

　これなら蜜絹……Gehenna Bee達が作るはちみつ色の絹は、上流階Classを中心に流行するだろう。Alcrem Duchy都との密貿易は順調だ。

（俺が促す前に、自分から改革を発案して実行してくれていますから、serviceしないといけませんからね）

　Alcrem Duke達が感じている盾に生えたSpikeは、実は幻なのだが……それに当人達が気づく事は当面はないだろう。

「次は、私と踊ってはいただけませんか、Darcia -dono！」

「あら、私でいいの、Sergio -san？」

「もちろんですとも！」

「で、では、その次はっ、是非私と踊って頂きたい！」

「Ralmeia -sanは……少し、休んだ方がいいんじゃないかしら？」

　Vandalieuから、Darciaに近づく狼藉者を排除する事が期待されていたAlcrem Dukeの指示により、『Alcrem Five Knights』のSergioとRalmeiaは彼女のdanceの相手を代わる代わる務めていた。こうして独身のNobleやそのyoung childが近づく事を防いでいるのだ。

「ではVandalieu -donoは、私とdanceましょうか。背丈も合いますし」

「お手柔らかにお願いします」

　その間、VandalieuはValdiriaと踊っていた。こちらも、増長したNobleのyoung childや、逆に彼に娘やImoutoを近づけようとするNobleの接触を防ぐためだ。

　彼等の尽力によって、partyはtroubleもなく進行し、後の惨劇も起きなかった。

　ちなみに、『Alcrem Five Knights』最後の一人Brabatieuは、二人からやや離れた所でいわゆるidiot Nobleの動きを見張っていた為、何も食べる事は出来なかったそうな。

《【Dancing】skillのlevelが上がりました！》