墨田城……Originでは【Druid】のJoseph Smithと呼ばれる男は、目は健康だと思っていた。実際、健康診断でも問題は見つからなかったし、eyesightは良好。
そしてMentalも、最近は飛躍的に回復していると自分では思っている。悪夢にうなされ不眠に苦しんだり、幻聴や幻覚、Flash Backに悩まされたりする事が、今年に入ってからめっきり少なくなった。
カウンセラーは彼が悪夢の代わりに見るようになった夢の内容のせいか、中々回復したと認めてくれない。しかし、快方に向かっているはずだと思っていた。
「久しぶりだね、Joseph。-kunが来てくれて助かった」
「墨田sensei……じゃないわよね。Joseph -kun、本当にありがとう」
久しぶりに顔を合わせたAmemiya coupleは、そう言って彼を迎え入れた。二人とは半年以上会っていなかったが、特に変わったところはないように見える。
「は、初めまして、Joseph -san! 俺、Amemiya Hiroshiって言います!」
「こらこら、Smith -sanでしょ」
「いやいや、気にしないでください。男の子は元気な方が良いですから」
初対面でnameの方でJosephを呼ぶcoupleの長男であるHiroshiを、やんわりと注意するAmemiya Narumi。極普通の母と息子の姿だ。
『Me-kun、ご挨拶は?』
「めー、です。いっしゃい!」
「Smithおじ-sanにご挨拶できて偉いね、冥。上手、上手」
『ええ、上手ですよ、Me-kun』
そして、Narumiに抱っこされた一ageの……確か後二ヶ月ほどで二ageになる長女の冥。その右隣りには妻と娘を見守る夫のHirotoがいて……左隣に怪人が立っている。
遠目には、マントをHaoriり、不気味な仮面を被っているだけのように見えるだろう。しかし、約一meterの距離から怪人を見つめるJosephには、四つの目と耳まで裂けた口は全て本物だという事が分かってしまう。
(あれは……夢に出てきて、私を宥め、寄り添い、導いてくれた謎の存在に、何となく似ている!)
そしてJosephは、怪人……Bandaに見覚えがあった。何故なら、彼はVandalieuと夢の中で出会っており、その時彼からsoul fragmentを与えられたからだ。
Vandalieuの魂から作られたBandaに、親近感を抱くのは彼からすれば当然である。
(だが、どうして見えるんだ? 私は今、起きている筈なのに。これは夢……いや、幻覚なのか!?)
だが、即座にBandaがどんな存在なのか理解し、受け入れられるほどJosephのIntuitionは鋭くなく、彼は理論的な人物であった。
「すまないが、今日から三日、child達の護衛を頼む。-kun以外にもボディGuardや、軍や警察の護衛がつくが……」
「ああ、分かっている。相手は『The 8th Guidance』かもしれないのだろう。油断はしない」
そして内心の動揺を抑えこんで、Amemiya coupleと会話をしながら-sama子を伺う事が出来る程度には、彼は訓練を受けていた。
『やはり『The 8th Guidance』の皆は強敵だったようですね』
だが、BandaはJosephが自分に対して反応しない事から、他のHumanや【Titan】のIwaoのように自分の事が見えていないのだろうと思い込んでいた。
彼のmain bodyであるVandalieuは、戦闘経験は豊富でも、時に諜報も行う軍の訓練を受けた経験はなかったのだった。
(Amemiya達には見えていないし、声は聞こえていない? つまり……やはり私の幻覚か)
そしてAmemiya coupleに見えていない事から、JosephもBandaは自分が見ている幻覚、幻聴であると思い込んだ。
こうして奇妙な三日の共同生活が始まったのだった。
だが、BandaとJosephの擦れ違いは一日目に解消された。
JosephがHiroshiの勉強を見ていると、やって来たBandaがHiroshiに問題の解き方を囁いて教えたのだ。それを聞いた途端、Hiroshiが算数の問題を解き始めたので、Josephが「Bandaは自分にしか見聞きできない幻ではない」と気がついた。
『俺の事が見えるのですか。それは驚きましたが……それはともかくHiroshi、この公式を覚えれば問題を解けるようになるので、頑張りましょう』
「Bandaっ、そんな事言ってる場合じゃないだろ! でもおじ-san、Bandaの事見えるのか!? スゲーっ、俺はBandaが見せてくれないと見えないのに!」
「あ、ああ。もしかして、誰かのAbilityなのか? Amemiya達は知っているのか?」
驚くJosephに対して、Bandaは首を横に振った。
『いいえ、俺は『Bravers』の誰かのAbilityによって作られた存在ではありません。それに、俺の事を知っているのはAmemiya Meiこと、Me-kunとHiroshiだけです。あの二人には秘密にしています』
「では、何故この家に居るのですか!? やはり、『The 8th Guidance』……!」
『いえ、そう言う訳ではありません。俺はただ、友達のMe-kunに付けられたmain bodyのCloneです。目的は、Me-kunが健やかに育ち、幸福に過ごす事。それだけです』
「main body!? Banda、俺、初めて聞いたんだけど!? 後、俺の事はどうでもいいの!?」
『どうでもいい訳がないでしょう。あなたはMe-kunのfamilyです。Me-kunの幸福は、大好きなお兄-chanが幸福でなければ達成されません』
そうHiroshiに告げながら、BandaはJosephに手で「少し待て」と伝え、更に続けた。
『こう言うとHiroshiがもう少し大きくなった頃に、『大切なのは冥の兄としての俺で、俺自身はどうでもいいんだろ!』と思うかもしれませんが、それも大きな誤解です。
Humanは産まれた瞬間から-sama々な立場を与えられ、それは一生ついて回ります。Amemiya HirotoとNarumiの長男で、Me-kunの兄である事は、あなたが死ぬまで変わりません。斜に構えず、捻くれず、否定せず受け入れる心を育てましょう』
「ええっと……まあ、何が言いたいのかは何となくわかったと思う。maybe」
かなり困惑した-sama子のHiroshiがそう返事をすると、Bandaは『それは良かった』と言って彼の頭を四本ある手の一つで撫でた。
そしてJosephに向き直る。
『お待たせしました。出来ればこのまま、話を聞いてほしいのですが』
「……そうですね。話を続ける事に異論はない。幾つか納得できた事もある」
BandaがHiroshiに話しかけている間に、Josephは思い出した。Bandaの声が夢で聞いた声と同じである事に。
更にHiroshiと冥が誘拐された事件で、犯人達をslaughterしたのがBandaである事も察する事が出来た。
あのHuman業とは思えない死体のconditionも、人外の存在の仕業なら不思議はない。
「しかし、まず言いたい事がある」
「Joseph -sanっ、Bandaは見た目が確かにあれだけど、良い奴なんだ! 本当なんだよ!」
そうJosephとBandaの間に割って入るHiroshi。その彼の為にも、Josephは言わなければならない事があった。
『ありがとう、Hiroshi。言いたい事は何でしょうか、Smith -san?』
「では言うが……先程の言葉は理屈っぽすぎる。言葉を尽くそうとしているのは分かるが、もっとstraightに思いを伝えるのも大切じゃないだろうか?」
『なるほど、確かに。
Hiroshi、大好きですよ。tentacle、触ります?』
「うわわわわっ!? 止めろよ~っ!」
Josephの言葉を即座に採用して、Hiroshiを後ろから抱きしめつつtentacleを伸ばすBanda。Hiroshiは驚きと照れを浮かべながら、必死な-sama子でtentacleを振り払う。彼はImoutoと違い、にょろにょろした物が好きではないらしい。
「にょろにょろ~♪」
そしてお昼寝から起きた冥が、Bandaにトコトコと歩み寄る。その-sama子から、JosephはBandaがchild達に対して害意を持たない者には、無害な存在だと理解したのだった。
勉強を終えたHiroshiが秘密の修行……No-Attribute Magicの修行を始め、冥が再びお昼寝をしている間、BandaとJosephは会話を重ねた。
他のbody Guardはchild達のいるroomの外で護衛しており、彼等には最初からBandaの声は聞こえない。先程の騒ぎも、child達と遊んでいただけだとJosephが誤魔化した。
彼らと違いJosephがBandaの姿を見て、声を聴く事が出来るのは、彼のAbilityである【Druid】が原因だろうというconjectureが成された。
本来は植物を操るAbilityだが、Life-Attribute Magicに近い力であるためかJosephは、生命体のオーラを見る事が可能だった。
それで、冥の魂の一部であるBandaをオーラとして視認出来たのだろう。
「まさか、そんな事になっていたとは……『The 8th Guidance』とUnited StatesのHexagon壊滅の裏で、Rokudouが糸を引いていたなんて、信じ難い。いや、信じたくない」
そしてBandaはJosephの耳元で、囁くようにKanako達から聞いた『Origin』での情報を話した。
それは、Josephに自分の存在を黙っていてもらうために事情を話す必要があった事と、彼自身にRokudouに対して注意するよう頼むためだった。
ただ、『Lambda』の事や自分の正体については話さなかった。『Lambda』について説明すると情報の量が多すぎるし、Josephがそこまで信じてくれるか分からなかった。それに、自分の正体を知った事で『The 8th Guidance』との関係や、『Bravers』との確執を疑われるかもしれないからだ。
「ですが、あなたには嘘をつく理由がない。それにRokudouが【Metamorph】をマインドcontrolして、操っているのなら、私が知っている彼のalibiは意味が無い。彼は【Metamorph】をshadow武者にして、同時に別の場所に存在する事が出来るのだから。
信じましょう。あなたの正体も含めて」
衝撃的な内容である上に、Bandaが全てを話していない事に気がつきつつも、Josephも囁くような声で彼の説明を受け入れた。
ちなみに、Joseph達が囁き声で会話し続けているのは、今Amemiya邸の中には『The 8th Guidance』のRemnantsを警戒するために、death attributeのManaも検知する事が出来るsensorを搭載した希少な警報機器が設置されている。だからDeath-Attribute Magicで音を消す事が出来なくなっているためだ。
『……俺が言うのもなんですが、信じて良いのですか? 俺が『The 8th Guidance』でない根拠はありませんよ?』
「まあ、そうですが……疑っていたらきりがありませんから。それに、『The 8th Guidance』なら私を助けたりはしないでしょうし……冥-chanならともかく、Hiroshi -kunにあそこまで懐かれる事はないでしょう」
Josephの視線の先では、Hiroshiが【Telekinesis】で積み木の組み立てを行い、magicの制御を学んでいた。
No-Attribute Magicはこのworldでは存在を確認されておらず、そのため無attributeのManaを検知するsensorは発明されていないため、Hiroshiは自由に練習する事が出来るのだ。
「しかし、そうなるとあなたはやはり、死後のworldから戻ってきた『Undead』なのか。だとしたら、何故私を助けるような事を? 私はあの時あの場所には居合わせなかったが……それでもあなたにとってはallyではないはずだ」
完全にではないが、自分の正体を言い当てたJosephの言葉を否定せず、Bandaはtentacleを伸ばしながら答えた。
『ただの偶然ですよ。夢の中でSelf introductionした訳ではないでしょう?』
「そうですが……この事をAmemiya達には?」
『話せると思いますか?』
「難しいでしょう。Narumi -sanは分かりませんが、Hirotoに打ち明けるのは危険だ。彼は、death attributeは存在してはいけない禁断の力だと仲間達に語っていました。あなたの事を……冥-chanの事を知った時、どう出るか分からない」
Josephにとって、Amemiya Hirotoは善人だ。Emotionalにも、自分よりもずっと強く、stabilityしているように見える。しかし、娘がdeath attributeのManaを持っていると知った時、彼が今までと同じ良き父親でいられるかまでは信じる事が出来ない。
「だが、もしdeath attributeのManaを消す事が出来るのなら、彼は娘からdeath attributeのManaを消そうとするのは間違いないでしょう。もし娘がdeath attributeのManaの素質を持っている事や……あなたの存在が世間に知られれば、娘が『Undead』や『Pluto』と同じ立場になるのは間違いない」
『やはり難しいですね。Amemiya HirotoがMe-kunの父親でなければ、話は単純なのですが』
「……Rokudouの方をどうにかする事は出来ませんか? 彼が裏で糸を引いていたのなら、death attributeではなくそれを利用しようとするHumanが不幸の原因なのだと、Amemiyaの考えを改める事が出来るかもしれません」
冥にとって良好な家庭環境を保ちたいBandaに恩を感じ、Amemiyaにも友情を感じているJosephは、両者の関係が穏便に済む方法として、Rokudouの悪事を明らかにする事を提案する。
Rokudouに他のReincarnatorや政財界の大物が協力している事を知らない二人には、その案がAmemiya対策にはもっとも現実的な手段に思えた。
『しかし、可能ですか?』
「私だけでは難しいと思う。ですが、彼のshadow武者にされている【Metamorph】、Shihouin Mariを正気に戻し、その身柄を保護する事が出来れば動かぬ証拠になるはずです」
Shihouin Mariは、社会的には『The 8th Guidance』によって監獄を爆破され、死亡した事になっている。その彼女がRokudouの姿にTransformしてshadow武者をさせられていた事が明らかになれば、Rokudouは破滅だ。
Mariが正気に戻った後に、shadow武者をさせられていた間のMemoryが残っていればそれも重要な証言になる。
そう語るJosephに頷きながらも、Bandaは答えた。
『問題は、俺が彼女のマインドcontrolを解けるかどうかですね。あと、本物のRokudouか【Metamorph】かを見分けるのも難しいでしょうし』
「え、私の時のようには出来ないんですか?」
『俺が人の心を自在に操れるのなら、とっくにAmemiya Hirotoを操って、Rokudouを警戒させています』
「それは、確かに」
Josephのtacticsは、BandaがShihouin Mariを助けられないのなら成功しない。
Bandaもmagicや【Demon King Fragment】による洗脳なら解く自信は在るが、長期間施されたShihouin Mariの洗脳を解けるのか、自信はなかった。
尤も、そのMariにも夢でVandalieuがsoul fragmentを与えていたのだが……BandaもVandalieuも、それに気がついてはいなかった。
「じゃあ、どうしましょうか? 私だけでは出来る事に限界があるのですが」
『あなた以外にもsoul fragmentをあげた人が何人かいるので……縁があれば会う事もあるでしょう。それまでは、現状を維持しながら-sama子を見るという事で。
決して無理はしないでください』
「そうするしかありませんね……」
Josephが危険な真似をしてRokudouに捕まり、Bandaの存在が知られれば冥が危険に晒される。
それにBandaも、Josephを捨て石にするつもりはなかった。そんな理由で彼のmain bodyは、Josephにsoul fragmentを分けたつもりはないのだから。
「Banda、積み木の城が出来たっ」
【Telekinesis】の課題を熟したHiroshiが、BandaがいるだろうJosephの周りにやって来てそう小声で報告する。見てみると、確かに積み木で城が組み上げられていた。
『よく出来ましたね。Hiroshiは、俺よりも呑み込みが早い』
「そ、そうかなぁ?」
『ええ、そうですとも。では、次はトランプのピラミッドを作ってみましょうか』
Bandaが次の課題を告げると、照れていたHiroshiの顔が鮮やかに変わる。
「それ、凄く難しいやつ! もっと簡単なのないの?」
『まあ、ぶっちゃけると大人でも難しいと思います。でも、あなたなら出来るようになると思いますよ。それが出来たら、次のmagicを教えましょう』
「ん~、分かった。でも、-chanとManaを分けてくれよな」
『ええ、certainly』
口をへの字に曲げながらも、満更でもない-sama子でHiroshiは冥の積み木を片付け、ピラミッド作りに挑戦し始める。
「Manaを分けられるとは……No-Attribute Magicと言うのも、奥は深そうですね」
『まあ、練習とMana次第ですがね。Hiroshiには、aptitudeがあるようです。
ああ、そろそろおやつの時間なので、冷蔵庫のゼリーをMe-kunに食べさせてあげてください』
「……そうでした。私は二人の護衛兼子守でした」
その頃、Divine RealmではRodcorteが『Five-colored blades』のmemberの一人、Edgarの治療を終え、彼の魂をAlda達の元に送り返したところだった。
『通常なら一年以上かかる作業を、半年とかからずに済ませたのだ。文句はあるまい』
Demon Kingの魂の微細なfragment、魂の粉とも呼べるものを使ったが、それでも文句を言われる筋合いはないとRodcorteは思っていた。
Edgarの魂は傷つき、Memoryやskillだけではなく人格にもDamageが出ていた。それに『God of Judgement』NiltarkのHeroic spirit Lukeのsoul fragmentを繋ぎにして元通り復元する。
Circle of Reincarnationを司り、魂の専門家であるRodcorteにとっても難易度が高い作業だ。
それを一年以内に終えるためには、Demon Kingの魂の粉と言う劇薬を使うしかなかったのだ。
Machida AranはDemon King's Powderを使った事を正直に伝えた方が良いと最後まで主張していたが、Rodcorteはそれも無視していた。
Demon King's Powderは、魂の中の意味のないMemoryやemotionsの残滓で、Demon King Guduranis自身にとっても価値のない部分だ。粉を核にEdgarの魂を乗っ取るような事は、天地がひっくり返ってもあり得ない。
(身に覚えのないMemoryを思い出し混乱する事や、人格に多少impactを受ける可能性ならあるが、それならLukeの魂から受けるimpactの方が遥かに大きいはずだ。
その上でDemon Kingの魂の粉を使った事をAlda達に伝えれば、Edgarに対して無意味な警戒心を抱き、Vandalieu討伐に支障が出る可能性がある。故に、Alda達に伏せた私の判断は正しいのだ)
そうSelf正当化を行ったRodcorteは、各worldのReincarnator達の-sama子を確認するため意識を切り替えた。
『Lambda』の情報はHuman達のrecord、そしてAlda達から日々送られてきている。Vandalieuが相変わらず、好き勝手に人を導いている事も、Circle of Reincarnation systemがあげるerrorの警告音で分かった。
最近ではEndou KouyaやShimada Izumiが素早く対処するので、その警告音もすぐに鳴りやむようになっていたが。
『Vandalieuが今回魂を砕いたのは、Demon King ArmyのRemnantsか。厄介な事だな』
邪悪な神の配下のmonstersはDemon King式Circle of Reincarnation systemの管轄なので、幾ら魂を砕かれてもRodcorteは構わない。monstersのmasterである邪悪な神についても同-samaだ。
そもそも神の魂の行方については、Rodcorteも詳しくは知らない。もしかしたら、Rodcorte達Godsよりも更に上位の存在がGodsの魂を管理しており、今頃Vandalieuの行いに頭を悩ませているかもしれない。
だが、仮にそうだったとしてもRodcorte達には関係ないだろう。Guduranisが配下の邪悪なGodsや敵であるLambdaのGodsの魂を砕いた時も、居るかもしれない上位の存在が出て来た事はないのだから。
そうした妄想はともかく。最近のLambdaの情報を確認したRodcorteは、Alcrem Duchyの現状を知り溜め息を吐いた。
『これでまたVandalieuの、ひいてはVidaの勢力が増し、Aldaの勢力が削られるか。believerどころか、Godsまで奪われるとは。
手ぬるい事だ。Zeezoreginが健在だと分かった時に、Alcremの街やBorgadonごと攻撃し、壊滅させてしまえば良かっただろうに』
そうすれば損失は同じでも、Vida's FactionのGodsのbelieverは増えず、Human社会にMoksiの町以上に大きな橋頭堡を与えずに済んだ。問題は百万人程死人が出る事だが、その死人の霊はVandalieuに利用される前に回収し、Circle of Reincarnation systemにかければいいだけだ。
Amid EmpireのGrand TempleのPopeに、素質のある者を付けたのだから、OrbaumはEmpireに侵略させても問題ないはずだろうに。
『いや、Vandalieu達は【Teleportation】で逃げるか。そうなると、地上に干渉し大都市を滅ぼすのは力の浪費につながる。後の戦いが不利になるのを嫌ったのか。なるほど』
そう勝手に納得すると、RodcorteはBirgit DuchyにいるAsagi達、 Bahn Gaia continentを出たMaoやGotouda。そして、【Urðr】のKei Mackenzieを見た。
『そろそろ五ageのはずだが。reincarnation先を死産となるはずだった胎児のbody partにした分、受精卵からreincarnationするよりは成長しているはずだからな。
しかし、未だMemoryは戻ってはいないか。後数か月から半年ほど-sama子を見るか』
そして次は『Origin』のReincarnator達に視線を移す。まずはdeath attributeの研究を続ける【Avalon】のRokudou Hijiriと、その仲間達。まずないだろうが、研究が成就してUnaging不死に到達されでもしたら困るからだ。
『今のところはその兆候はないようだな。では、Amemiya Hiroto達は……』
そのRokudouを倒し、death attributeの研究を止めてくれる事をRodcorteに期待されているAmemiya Hirotoも、特に変化は見られない。
そしてそれ以外のReincarnator達は――。
『何だ、これは!?』
【Druid】のJosephのrecordを見た途端、Rodcorteは驚愕の叫びをあげた。彼のMemoryに、Bandaの存在が映っていたからだ。
『BAKANA。これはVandalieuの魂の一部、Cloneか。何故このworldに……どうやって、何の目的で!?』
驚愕するRodcorteが慌ててsystem内のHumanのrecordなどを調べるが、それは分からなかった。
直接Bandaと話しているJosephや、Hiroshi、そして冥のrecordを探ろうとしたが、JosephとHiroshiのrecordには映像や音声にノイズが混じって詳しい事が分からない。冥に至っては、見る事すら出来なかった。
『私のCircle of Reincarnation system以外のsystemが存在しない、Statusもskillも存在しない『Origin』で、導いているのか? 『God of Origin』がVandalieuに協力しているとしても、そんな事が可能なのか?』
Status systemは『Lambda』worldの内のみ有効なものだと考えていたRodcorteは、大いに困惑したが、事実として冥やHiroshi、Josephは半ば導かれていると感じた。
いや、Rodcorte自身が口にしたように、『Origin』worldだからRodcorteのCircle of Reincarnation systemに留まっているだけかもしれない。彼女達がもし『Lambda』worldに移動したら、その瞬間完全にVida式Circle of Reincarnation systemに組み込まれる事になるだろう。
いったい、何故こんなconditionになったのか?
『まさかZuruwarnの手引きか? そしてAmemiya Hirotoの長女に己の魂の一部を植え付けたのは……Reincarnator達の情報をAmemiya Hirotoの近くで集め、ゆくゆくは長女のBodyを乗っ取り、Reincarnator達がreincarnationする前に魂を喰らうため?
……いや、もしかしたら『Lambda』が滅びた時の為に、『Origin』を侵略するつもりかもしれん』
Alda達GodsとVandalieuを筆頭にしたVida's FactionのGodsの戦いは、worldを国に例えると内戦だ。両陣営とも争いに勝たなければならないが、やり過ぎればLambda worldが滅びてしまう。
Vandalieuがもし戦いに勝っても、Alda's FactionのGodsの多くを滅ぼしてしまえば、worldの維持管理が行えなくなり、『Lambda』は遠からず滅びる。
そうなってしまった時の為に、保険としてanother worldに自分のCloneを送り込み、有事の際はworldとworldを繋ぐ【Teleportation Gate】を開き、Demon King Guduranisがかつて行ったようにanother worldを侵略するつもりではないか?
いや、monstersやUndeadの数が極端に少なく、Status systemが存在しない『Origin』のHuman達の軍事力は、Vandalieu達の前では容易く捻られてしまう。Alda達との決戦前に、侵略してしまうかもしれない。
そして『Origin』の全人類を殺してUndeadにし、Vida's FactionのGodsを信仰させる。約百億匹のUndeadの祈りに支えられたVida's FactionのGodsの力は、Alda達を上回り、戦いを優勢に進める事が出来、その後のworldの維持管理も余裕を持って行えるだろう。
それが狙いだと、Rodcorteはconjectureした。
『何という事だ!『God of Origin』も協力している以上、このままでは『Origin』の全人類がUndeadにされてしまう……』
そして、自分のconjectureが正しいと確信した。
何とかしなければと焦るが、『Lambda』worldの神であるAlda達に警告しても、『Origin』では何もできない。Rodcorte自身も、『Origin』の人々に信仰されていないため、Circle of Reincarnation以外では何の手出しも出来ない。
Reincarnator達にOracleを出す事は可能だが……。
『Amemiya HirotoとNarumiに警告したとして、同じReincarnatorはともかく自分達のchildを殺せるかどうか……寧ろ、VandalieuのCloneに私が二人に警告した事を気がつかれ、魂を滅ぼされてしまう危険がある。
ならば……VandalieuのCloneが警戒しているRokudou Hijiriを利用するべきか』
Rokudou Hijiriを煽り、VandalieuのCloneの注意が彼に向いている間に、Amemiya Hiroto達に警告する。
これしかVandalieuのCloneを排除する方法はない。
『まさかRokudou Hijiriのdeath attribute研究を、私が後押しする事になるとは。しかし、彼に私のOracleが正しく伝わるだろうか?』
そう疑問に思いながらも、RodcorteはOracleを送る準備を始めた。
その一連の-sama子を眺めていたAran達は、どうしたものかと頭を押さえていた。
『……賭けてもいい。絶対あのconjectureは外れだ』
『その賭けは成立しないわよ。ハズレに賭ける奴なんていないから』
『それもそうか』
Aran達RodcorteのFamiliar Spiritは、Vandalieuが『Lambda』での戦いを有利に進める為、『Origin』worldを侵略し全人類をUndeadにするつもりだと言うRodcorteのconjectureを、fragmentも信じていなかった。
確かに、Vandalieuにとって『Origin』は良い思い出がないworldだ。その上、二度目の人生での両親はどちらも彼を捨てている。彼を信仰する『The 8th Guidance』が一人も残っていない。
Vandalieuと『Origin』worldの関係は、VandalieuやLegionが【God of Origin’s Divine Protection】を持っている事を知らないAran達からすると、切れているに等しい。
彼にとって『Origin』worldの人類の殆どは、「どうでもいい存在」でしかないだろうと、彼等は考えていた。
『だが、彼は『どうでもいいから殺しても構わない』とは考えない人だろうからね』
『ああ、零をマイナスとは考えないだろうな』
特に面識がなく、縁のない他人でも、相応の理由もなく殺す事はない。相応の理由があると躊躇わない点は、『Earth』の一般的なJapan人とは大きく異なるが、少なくともRodcorteが心配しているような事はしないだろう。
実際、『Origin』ではなく、『Lambda』でだって同じ事は出来るのだ。HumanをUndeadにして魅了し、Vida's FactionのGodsを信仰させるのは。
それをしていないのだから、『Origin』でも実行する事はないだろう。
『とは言っても、あの-sama子では私達が何を言っても聞かないだろう。止められないし、放っておくしかないな』
『Vandalieuもいつか気がつかれるとは思っていただろうし、自力で切り抜けて貰いましょう。それよりAran、Vandalieu達が『God of Law and Life』達との戦いに勝つ可能性は、どれくらいあるの?』
『んー、……【Calculation】するが、あんまり当てにするなよ。Vandalieu達の戦力はconjectureだし、Alda達の方もRodcorteや俺達を信頼していないから、詳細なdataは無いんだから。
だが……VandalieuがVida's FactionのGodsと一緒に総力戦をAldaに仕掛ける場合は、現時点で一割以下だな』
まずAlda達はDivine Realmに居るので、Vandalieu達は何らかの方法でDivine Realmに行かなくてはならない。
次に、Divine RealmはHeroic spiritやGodsのhomeグラウンドだ。地上では制限があるHeroic spiritやGodsが全力を振るう事が出来る。
最後に数の差である。Alda's FactionのGodsは多く、更に十万年の間にHeroic spiritに至ったHero達や、Aranと同じようにFamiliar SpiritになったHuman達がcountlessにいる。
Vida's Factionも数は多いし、Vandalieuの仲間にはGodsと戦える者も少なくない。だが、それでもAlda's Factionの方が数は多いのだ。
しかも Alda's FactionのHeroic spirit達には、地上にAdventした時と違って時間制限はなく、そしてFitunが作った急造Heroic spiritと違い装備も、いわゆるGodsの武具を揃えている。
『まあ、単純に勝つだけなら五割ぐらいあると思う。Vida's FactionのGodsは消耗している神が多いが、ZantarkにFarmoun、Gufadgarn、Tiamat、Pure-breed Vampire、そして消耗していてもVida達Great Godも三柱。何よりVandalieuがいるからな。
だが、勝った後Vandalieuが滅ぼした神や、力を消耗したGodsが多ければworldの維持管理を熟せないから、結局worldごと滅びる』
『God of Law and Life』Alda達は、攻め込んできたVandalieu達に対して死力を尽くして応戦するだろうし、Vandalieu達もAlda達に手加減して勝つのは不可能だ。
Alda's FactionもVida's Factionも消耗し、結局worldと共に皆滅びる可能性が最も高いだろう。それがAranの【Calculation】結果だった。
『まあ、そもそもDivine RealmにVandalieuが仲間を連れて行けるのかが問題だけどな。後、これはBellwoodが眠っているconditionを想定した計算だからな。Bellwoodがrevivedら、更に勝率は下がる』
『ちなみに、Rodcorteのconjectureが正しかった場合は?』
『『Origin』の人類約百億総Undead Transformation tacticsか? その場合は、Vida's Factionの勝率九割以上は硬いな。『Lambda』のAlda's FactionのGodsのbelieverの百倍以上の信仰だから』
『……つまり、Rodcorteの推理もあながち的外れじゃないのね』
『しかしそんなtactics、Vandalieuは発想もしていないだろうから……近いうちにVandalieuがAldaと決戦に臨む事はないという事か』
Kouyaの言葉に、Aranは大きく頷いてから、こう続けた。
『だろうな。俺としては、Vandalieuから決戦を仕掛けるような事はしないと思うぜ。Alcrem Duchyでしたように、Alda's FactionのGodsのbelieverを、Vida's FactionのGodsのbelieverに転向させていき、timingを見てAmid Empireを侵略する。
それでAlda's FactionとVida's FactionのPower balanceが逆転する。その前にAlda達も何か手を打つだろうが……Divine Realmに攻め込むより地上で決着をつけた方が、Vandalieuにとっては有利だ』
『……なら、私達にもまだしばらく時間がある訳か。Aran、Kouya、systemの運営と管理には慣れた?』
『普通に回すだけなら。errorにも慣れてきたが……応用はきついな』
『同じく。万全を期すためには、あと数年は時間が欲しい』
なら、昨日までと同じ事を続けよう。三柱のFamiliar Spiritは頷き合うと、Circle of Reincarnation systemの補助に戻った。