庭で優雅にお茶でも楽しむには、もってこいな春らしい温かな昼下がり。何の前触れもなく、都の郊外から大きな破壊音が響いた。
Alcrem Dukeの別邸から煙が上がり、GuardやKnight達が周辺の住人を避難させ、その間も鋭い剣戟やmagicの爆発音、そして怒鳴り声やscreechが別邸から響く。
この日別邸で何が行われていたのか、知っていた一部の者達は交渉が決裂し、Dhampir達と『Alcrem Five Knights』の戦いが始まったのだと思い込み、顔を青くした。
だが、このAlcremは約百万人が住む大都市だ。郊外で起きた事件が街中に知れ渡るには、時間がかかるだろう。
しかし、街の外で上がった煙には、多くのHumanが気づいた。
「何だっ、あれは!? 『Holy Wastelands』で何かあったのか!?」
街の城壁沿いに建てられた物見の塔や、Alcrem城に詰めていたSoldierが声を上げる。
Alcremの将兵で、『Holy Wastelands』の重要性を知らない者はいない。Orbaum Elective Kingdomはcertainly、Alcrem Duke 家の前身であるAlcrem Kingdomが存在する遥か昔から、『Evil God of Robbery』Forzajibarをsealedした、『God of Mountains』Borgadonを祭るtempleがあり、sealedを守り続けた一族が暮らす場所だ。
この十万年の間、Forzajibarはsealedから逃れようと幾度も暴れ、それが地震やmonstersのrunawayとして人々を脅かしてきた。その度にHero達の奮闘と、人々のBorgadonへの祈りがEvil God (P)を抑えこんできた歴史がある。
「まさか、Evil God (P)が暴れているのか!? こんな時に!」
その歴史は全て、Zeezoreginが人々の危機感を煽って祈らせ、religionが薄れないようにするための茶番であった事を知らないSoldierがscreechをあげる。
だが、そのSoldierも含めたAlcremの人々はまだ希望は残っていると思っていた。今までのように『God of Mountains』Borgadonが、『Alcrem Five Knights』のようなHero達が、今回もEvil God (P)を抑えこんでくれるはずだと。
だが、煙を蹴散らすようにGiantな人shadowが現れた時、希望は残っていないのだと思い知らされた。
「何だ、あの禍々しいgiantは? あ、あれがEvil God (P)、Forzajibarなのか!?」
「Evil God (P)がrevived……お、終わりだ。もう終わりだぁぁぁぁ!」
時間は少々巻戻る。
templeがDecayした事で発生した土煙に、黒い炎に包まれたZeezoreginの灰色の姿が消えた。
『陛下っ! 倒せませんでした!』
Princess Leviaの叫び声。それに遅れて【Danger Sense: Death】に反応があり、Vandalieuは咄嗟に後ろに下がろうと試みる。
だが、その前に黒い刃が土煙の向こう側から、Vandalieuに向かってthrust出された。
「【金剛壁】」
回避が間に合わないと判断したVandalieuは、背中から生やした【Demon King's Jointed legs】を盾にして、Shield TechniqueをActivateし受け止めようとした。
しかし、黒い刃はArthropod Legsを易々と貫いた。【Demon King's exoskeleton】もActivateしてDefense Powerを高めていたのだが、黒い刃の貫通力はそれも越えていたのだ。
「……危ないところでした」
しかし、刃の勢いは弱まったためVandalieuは、首を曲げて刃を回避する事に成功した。そして貫かれたArthropod Legsを強引に動かし、黒い刃を圧し折った。
貫通力に優れていた黒い刃だったが、厚みや粘り強さはなく、澄んだ音を立ててすぐ砕け散った。
「これは……何かのcrystal?」
『Van -kun!? 首が凄い事になってるんだけど!?』
「首のboneを【Demon King's bones】にして、形を変えただけなので大丈夫です。【nerve】も繋がっていますし」
首を強引に伸ばして、頭部を横にずらしたVandalieuは、Orbiaにそう答えながら元の場所に自分の首を戻した。
『ククク、奪われたskillを新たに習得しなおしたようだが、どうやらlevelが低すぎて、発揮できる効果に限界があるようだな』
それに合わせたように土煙が晴れ、文字通りに山のような巨体に変化したZeezoreginが姿を現す。
『我の攻撃に貴-samaが気づくのが遅れ、我の【fragment】の攻撃が、貴-samaの【fragment】の防御を易々と貫いた。
これは【Demon King】skillのlevelの差、【fragment】の力を我の方がより引き出しているという事に他ならん!』
Zeezoreginは約百meterの巨体と化しただけではなく、背中と腕に水晶のようなcrystalが生え、そのwhole bodyがしっとりと濡れていた。
「あの水晶のようなものは、Demon Kingの水晶とかcrystalとか、そんなfragmentでしょうか? それと、肌のぬめりは【Demon King's Sweat glands】ですか。そしてあの巨体は……やはり【muscle】? いやいや、冷静さを保たなくては」
だがVandalieuは冷静にZeezoreginが使っているfragmentの分析を行っていた。
黒い刃は、水晶のような物の一部を伸ばしたもの。Princess Leviaが変化した黒い炎に耐えられたのは、【Demon King's Sweat glands】で流した汗が熱からbody partを守ったためだろう。
そして"muscle and bones"たくましい体つきに変化し、更にGrowした理由は、【Demon King's Muscles】をActivateしたからではないだろうかとconjectureしつつも、冷静さを保とうと自分に言い聞かせる。
『……どうした? 【Demon King Fragment】同士のぶつかり合いで負けたのが、そんなに衝撃的だったか?』
Vandalieuの独り言が聞こえなかったのか、Zeezoreginがそう言いながらgrinningと笑う。
『ならば、もう一度味わうがいい!』
そう叫ぶと腕を横なぎに振るう。それに合わせて、腕に生えていたcrystalが一枚の刃のように閃き、Vandalieu達を襲う。
「いえ、一度で結構」
だが、今度は視界を覆う土煙はない。Vandalieuは魂をMaterializationさせて纏う、【Soul Breaking Arts】をActivateし、Gufadgarnと共に後ろに飛びのいた。
それに一瞬遅れてcrystalのGiant刃が振るわれ、大地に一直線な傷を残した。
『AldaのDungeonで使ったskillか!』
【Demon King Fragment】がFusionした魂をMaterializationさせ、body partに纏うskill。Zeezoreginは、それについて己のFamiliar Spiritから聞いていた。
『だが、以前程力を発揮できてはいないようだ。まるで普通の甲冑のようではないか!』
Heinzとの戦いで見せた異形とは違い、【Soul Breaking Arts】をActivateしたVandalieuの姿はすっきりとしていた。
それをZeezoreginは、【Demon King】skillのlevelが大幅に下がったため、Vandalieuはfragmentの力を使いきれていないのだとconjectureした。
これなら勝てる。fragmentの数では敵わないが、fragmentに秘められた本来の力を……いや、もしかしたら本来以上の力を発揮させる事が出来ている今なら、確実に。
『その鎧とBody、どちらも砕いてくれる! 【大地破斬】! 【毒炎のtongue】! 【斬空】!』
VandalieuとGufadgarnを追って、地面から鉱物で出来た刃が、Zeezoreginの胴体についた口から毒々しい色の炎で出来たtongueが出現し、crystalの刃を振るった腕が斬撃を飛ばす。
「吸魔の――いや、ダメだ」
Zeezoreginのmagicを打ち消すため、Barrierを張ろうとしたVandalieuだったが、それを中止して回避に専念する。
大地の刃が鎧を掠り、毒の炎を【Disinfect】でただの炎に変えて対応する。もし【Magic Absorption Barrier】を使っていたら、足が止まり、その後に飛んできたZeezoreginの【斬空】によって切り裂かれていただろう。
「しかし、【Demon King Fragment】を使いながらattribute magicを使うとは、驚きました」
【Demon King Fragment】をActivateすると、death attribute以外のattribute magicは使えなくなる。fragmentに宿る、Demon King GuduranisのManaのimpactでそうなるようなのだが、Zeezoreginは土attributeとFire-AttributeのmagicをActivateしていた。
『もしや、奴はVandalieu -samaのようにattribute Ghostを連れているのでしょうか?』
ただ、GhostにManaを渡してActivateして貰うDead Spirit MagicやDivine Spirit Magicは【Demon King Fragment】をActivateしていても、使う事が出来る。
magicを使うのはManaを受け取ったGhost自身で、fragmentの使用者ではないからだ。
Zeezoreginも同じではないかと、Light AttributeのGhostであるChipurasがconjectureするがVandalieuは首を横に振った。
「Ghostの姿は見えませんでした。他の仕掛けでしょう」
「恐らく、奴が二柱の神をAbsorptionした事が理由かと。【Demon King Fragment】のimpactを一つの魂に集中させ、残り二つの魂で術を唱えているのでしょう」
Gufadgarnのconjectureが、ほぼ真実を言い当てていた。Zeezoreginはfragmentの副作用をForzajibarに担当させていた。そして自身のattributeであるFire-Attribute Magicを自分が、Earth-Attribute MagicはBorgadonを利用して唱えている。
Vandalieuのように魂が奇怪な構造をしている訳ではなく、複数の魂をAbsorption同化した結果自身の物として操っているZeezoreginだからこそ出来る芸当であり、彼が【Demon King Fragment】を使う上で優れた資質を持っている証拠と言える。
恐らく、山のようにGrowしたのも自身の力ではなく、AbsorptionしたBorgadonの力によるものだろう。
『【毒Flame Bullet】! 【散弾打ち】!』
しかも、Zeezoreginはmagicの後必ず【Demon King Fragment】を使ったMartial Artsを放ってくる。Vandalieuが足を止めてBarrierを張ってmagicを防いだら、Martial ArtsでBarrierを破って攻撃するtacticsなのだろう。
今も毒々しい色をした炎の弾丸を口から吐き、その後【Demon King's crystal】を急成長させ、crystalのfragmentに【Throwing Technique】のMartial Artsを使い、Vandalieu達に向かって乱射している。
今のZeezoreginの大きさは、約百meter。毒炎の球体も、crystalのfragmentも尋常な大きさではない。
その分狙いが甘いのか、毒炎やcrystalの弾はVandalieu達に回避され、地面に激突し爆発していた。
その狙いの甘さと、ZeezoreginがGrowした事で小回りが利かなそうに見えるのを利用して、懐に飛び込み攻撃を叩きつけるのが、最も効果的なtacticsに思える。
実際、Vandalieuが今Activateしている【Soul Breaking Arts】は【Unarmed Fighting Technique】のSuperior Skillだ。遠距離戦より接近戦に向いている。
そして、adventurerがGiantなmonstersと戦う際のtheoryでもあった。
「如何いたしますか?」
「では、このまま遠距離戦を続けましょう。……なんだか接近戦をするよう、誘っているように見えますし」
そう言ってtheoryを無視したVandalieuは、両拳をZeezoreginに向け、【Demon King's Horn】や【Demon King's Blood】で拳をdrill状の突起で包む。
「【Black Flame Possession】、【冥雷Possession】、そして【rocket punch】」
更にPrincess Leviaの炎とKimberlyの雷をそれぞれ付与し、手首から先をProjectile Fireした。
『もう一回行きまーす!』
『ヒャハハハ!』
真っ直ぐ自分に向かって飛んでくるVandalieuの両拳に気がついたZeezoreginは、反射的にそれを喰らって【Absorption同化】を使い、更にskillを奪おうかと思った。
『っ!? Trapか! 【Super Instant Response】!』
だがVandalieuが飛ばした両拳に、彼の両手首から先が入っているとは限らない。魂だけを飛ばしている可能性が高いと気がついた彼は、何とか回避しようと反応速度を上げるMartial ArtsをActivateさせて、巨体の関節をぐにゃりと捻じ曲げて回避を試みる。
それはbarely間に合い、回避は成功したが――。
「Isla、氷の壁を」
『はいっ、Vandalieu -sama♪』
Vandalieuのshadowから上半身を出したIslaが、Water-Attribute Magicで氷の壁を作り出す。
「三連【滅輝線】」
その氷の壁の向こうのZeezoreginに向かって、光線に姿を変えたChipuras、Darock、Bellquertが、氷の壁に、その向こうにそびえるZeezoreginの巨体へと飛び込んでいく。
氷の壁がレンズの役割を果たし、収束しAttack Powerを増した光線が、Zeezoreginに迫る。
『見え透いた術だ』
だが、Zeezoreginは【Demon King's crystal】で盾を形成。それで光線となった三人を歪曲させ、body partから逸らす事に成功する。
Vandalieuが【Demon King's Eyeballs】と、【Luminescent organs】を使った怪光線を放つ事を知っていたZeezoreginは、光線への対策も用意していたのだ。
Vandalieuが胴体に、Giantな【Demon King's Eyeballs】を出現させ、その虚ろな瞳が怪しく光るのを見た時も、先程と同じように反らして回避しようとした。
「Isla、氷の壁を貰いますね」
だが、VandalieuはGiant eyeballから光線を放つ前に、氷の壁の形を【Golem Creation】で変化させる。
その結果、放たれた怪光線は氷の壁で拡散。それぞれ異なる軌道の光線となって、Zeezoreginに降り注ぐ。
『グアアアアアアっ!? ガハァ!?』
crystalの盾で幾つかは逸らせたが、数十に拡散した光線の全てを回避する事は出来ず、怪光線に焼かれ苦痛に叫ぶZeezoregin。
その背に、【Group Manipulation】で操られて戻ってきたVandalieuの両拳がthrust刺さり、炎と電撃によって肉を焼く。
約百meterの山のような巨体に対して拡散された怪光線とVandalieuの両拳は、あまりにも小さい。しかし、Vandalieuは【God Devourer】skill等を所持している、山も崩す力量の持ち主だ。
攻撃によってもたらされた痛みは、Zeezoreginに危機感を覚えさせるほど大きかった。
(あの両拳はやはり外側だけか。【Demon King】skillでも魂は喰えない……魂を喰う、滅ぼすskillは別にあるのか。
それよりも、奴は接近戦を避けている。近づけば【Demon King's Cnidaria】で刺し貫き、毒が効かなくてもそのまま【Absorption同化】したものを)
Zeezoreginは【Demon King Fragment】の一つ、クラゲ等がtentacleに持つ器官と似た【Demon King's Cnidaria】を持っていた。こうしてGrowしなければ、目に見えない程小さなneedleで触れた者に毒を注入するしか能のないfragmentだ。
だが、今のZeezoreginのbody partの大きさなら、触れた者の手足を貫いて動きを止める事が出来る。その隙にまたskillを奪い、自身のEnhanced (1)とVandalieuの弱体化を同時に狙っていたのだが……。
(こうなれば、仕方あるまい。どの道、口封じはするつもりだったのだ)
ZeezoreginはVandalieuに、そしてその向こうにあるAlcremの街へ向かって両腕を広げた。その腕と胸部に、大小の黒いcrystalがcountlessに生じる。
『避けたければ避けるがいい! 街のHuman共がどうなるかは知らぬがな! 【乱れ打ち】!』
そして黒いcrystalを、Muscular Strengthと【Throwing Technique】のMartial ArtsでProjectile Fireした。
【Throwing Technique】skillは大した事はないが、【Demon King's Muscles】で撃ちだした【Demon King's crystal】だ。from here Alcremの街まで数キロの距離があるが、まず届くだろう。
これだけのcrystalを広範囲に撃ち出したのだ。何時の間にか姿を消したGufadgarnが、spaceを捻じ曲げたとしても、半分以上は防ぎきれないはずだ。
その半分以上を何らかの方法で防ぐため、Vandalieuが何かをするはず。Zeezoreginはその隙を突くつもりだった。
certainly、VandalieuがAlcremの街を見捨てる可能性はある。その場合街に大きな被害が出る事も分かっている。
手塩にかけて増やしてきたHuman達が、大幅に減るのは惜しい。だが、Vandalieuに勝たなければ未来はないのだ。
「まあ、そう来るでしょうね。ファイエル」
そしてVandalieuは、Zeezoreginの良心を信用していなかったため、彼が街を巻き込む手段を取っても動揺せず、背中からgun barrelを生やし、上空に向かって【Demon Kingのfallopian tubes】で創りだした卵を連続で撃ち出した。
卵はcrystalに触れる前に殻が弾け、中から粘着力のある糸がmidairに広がり、crystalを絡めとる!
『BAKANA!? そんなか細い糸でcrystalを!?』
これまでの糸なら、容易く千切られていたかもしれない。だが、撃ち上げた卵の中に入っていたのは、【Demon Kingのsilk gland】で作った糸だ。空一面に薄く広がっていたとしても、そう簡単には千切れない。
そして糸に纏まり、勢いが削がれたcrystalは、街の遥か手前に落下する。最大十meter程のcrystal塊が落下したため、大きな音が響き落下地点の風景が一変するだろうが……荒野なので被害者は出なかったようだ。
そして、ZeezoreginはVandalieuの隙を突くどころか、驚愕によって逆にVandalieuへ隙を晒してしまう。
「Gufadgarn、準備は?」
「たった今、完了いたしました」
Gufadgarnが再び姿を現すと、【Teleportation Gate】が開き、そこから黒い砲台が三門姿を現す。
『『『照準、良―し』』』
『『『撃つ!』』』
「【Hollow Cannon】」
Moksiの町の自宅地下室に創ったDungeonに設置した、砲台型と砲弾型Demon King FamiliarをGufadgarnが連れて来たのだ。
轟音を立てて砲台型Demon King Familiarから、砲弾型Demon King FamiliarがZeezoreginに向けて撃ちだされ、Vandalieu main bodyからも、【Hollow King Magic】の【Hollow Cannon】が放たれる。
『BAKANA!? 貴-samaはfragmentを使いこなせないのではなかったのかぁぁぁぁ!?』
隙を見せていたZeezoreginに意志を持つ砲弾型Demon King Familiarを回避する事は出来ず、crystalでDefense Equipmentを作ろうとするも間に合わず、砲弾が灰色の巨体に命中し次々に大爆発を起こし、【Hollow Cannon】によって胸板を貫かれる。
体勢が崩れ、地響きを立てながらZeezoreginが背後に向かって倒れ、その姿が急激に萎んでいく。
『あああああ! おのれっ! 何故だ!? skill以前に、貴-samaの方がfragmentとの相性が良いとでも言うつもりか!?』
そして元のHuman大のSizeに戻ったZeezoreginは、怒りの声をあげながら【Demon King's crystal】で盾と剣を作り出す。
「そんな事を言うつもりはありません。単に、Manaが俺の方が多いだけでしょう」
Demon King Fragmentを使うには、多大なManaを消費する。しかし、Vandalieuの神から見ても莫大過ぎるManaは、その消費量を賄うのに十分な量だ。
実際、比べて見ればZeezoreginよりもVandalieuの方がManaは上だ。
『Manaの大きさだけでこれ程の差になる訳がない。やはり、貴-samaの全てを喰らい、我がものとしなければDemon Kingへの道は開かれんようだ! Familiar Spirit共よ! 我が寄り代に宿れ!』
呼び寄せておいた自身のFamiliar Spirit達を、寄り代に宿らせて【Familiar Spirit Advent】と同じ効果……【多重Familiar Spirit Advent】とでも呼ぶべきconditionにすると、鋭い踏み込みでVandalieuに向かってSlash込んできた。
『【硬質化】! 【毒炎付与】! 【Flash百閃】!』
「【Super Instant Response】、【百烈thrust】、【Hollow Bullet】」
Zeezoreginが付与magicを自身に掛け、crystalの剣を素早く振るう。Vandalieuは反射速度を上げ、両腕と背中から生やした【Demon King's Jointed legs】でZeezoreginと攻撃の応酬を繰り広げ、【Hollow Bullet】で反撃する。
『オオオオ!』
appearanceは元通りだが、先程までの傷が回復した訳ではないらしく、【Hollow Bullet】を弾いた瞬間、crystalの盾に大きくひびが入り、Zeezoreginの動きは次第に鈍くなって行く。
「【Demon King's Jaws】」
そろそろだと判断したVandalieuは、【Demon King's Jaws】でfangsが生えたGiantなchinを出現させ、Zeezoreginの上半身を飲み込むように噛みついた。
Vandalieuに上半身を噛みつかれた瞬間、Zeezoreginは体内にAbsorptionしていた『Evil God of Robbery』Forzajibarを分離して、解放した。
ただ、Vandalieuのchinの中に。
(これで、喰ったのは我だと偽装できるはずだ)
Zeezoreginは、Forzajibarの魂を犠牲にして逃げ延びようとしていた。ついでに見せた【Demon King Fragment】もつけて。
自分はVandalieuから奪った【Demon King】と【Hell King Magic】skill、そして使わなかった【Demon King's Cnidaria】を持って、潜伏するつもりだ。
彼はHuman大のSizeに戻った時点で、Vandalieuに勝つ事を諦めていた。そして、このまま滅びるよりはどんなに望みが薄くても、潜伏しchanceを待つ事を選んだのだ。
そのchanceが、Demon Kingになるためのものなのか、このworldから逃げ出すためのものなのかは、彼自身もまだ分からないが。
(今はとにかく、この場から離れなければ――)
(その案には断固反対だ、我よ)
その時、ZeezoreginのMentalに自らの思考以外の声が響いた。
(何者だ!?)
(何を言っている? 我が我以外の何者だと言うのだ。我は、我の一部)
(BAKANA……! 我のMentalに、異なる人格や思考は存在しない!)
(存在する。我が求め、配下に奪わせ、同化したのではないか)
Zeezoreginは自分であって自分ではない心の声に混乱しながらも、その正体に思い至った。
(貴-samaは、【Demon King】skill? BAKANA、skillが人格を持つ等、Camouflage Human達からは聞いた事がないぞ!)
(そう、我は【Demon King】skillであり、【Hell King Magic】。accurateに言うなら、skillが刻まれた部分のVandalieuの魂の一部だった、我がAbsorption同化した薄皮一枚だ)
(Vandalieuの魂の一部! 確かに、skillは魂に刻まれる物だが……Absorption同化したskillに人格が宿っていた事は、今まで一度もなかった。……奴がDemon Kingだからか? それともDemi-Godだからか!? 特殊な魂の形をしているからなのか!?)
(我よ、それは我にも分からない。強いて言えば、その全てだろう)
淡々と答える声に、Zeezoreginは寒気を覚えた。得体の知れない存在に、侵食されているような悍ましい気分を覚える。
同時に、自分が勝てなかった答えが、これなのではないかと思いついた。
(貴-sama、Vandalieuを勝たせるために我が不利になるように――)
(それは誤解だ、我よ。我は我の一部。我がDemon Kingになるために、全力を尽くしたではないか。元が誰のskillであっても、Absorption同化で自らのものと出来る。それが『Cannibalismと強奪の邪Evil God (P)』である我の力だろう?)
そう指摘され、確かにそうだとZeezoreginは納得した。それはつまり、戦いに負けたのは自分の方が弱かったからだという事になるがそれはいい。今は生き残る事が最優先――待て、この声は何故生き残る事を最優先にする事に異を唱えたのだ?
そもそも、なぜ急に話しだした?
その時、Zeezoreginは自らが致命的な失敗をしてしまった事に思い至った。
(その通りだ、我よ。我は既に『Cannibalismと強奪の邪Evil God (P)』ではない。何故なら、先程我自身の意志でForzajibarを切り捨てたのだから。そのため、skillを奪い我がものとするAbilityも失われました。
人質として使えるし、また人々から信仰を集める機会もあるかもしれないと、Borgadonの方を温存した気持ちも分かりますけどね)
話している内に口調が丁寧だが平坦なものに、声が声変わり前の少年のものに変わっていく。
(ですが、こうなった以上、俺が望む事は何か。分かりますよね?)
(よ、よせ! 止めろ!)
(Mental力で止めようとしても無理ですよ。何故なら俺はおまえの魂とFusionしているのですから。魂に逆らえるわけがないでしょう?)
魂を喰った手応えと味、そして幾つかのDemon King Fragmentを手に入れた事をVandalieuは理解するが、奪われたskillは戻らなかった。
「【Demon King's Muscles】が手に入ったのは朗報ですが……skillはまた時間をかけて覚えなおしましょう」
『陛下……』
『う゛ぅ~』
【Hell King Magic】skillが戻らなかった事を知り、Princess LeviaやRapiéçageが肩を落とす。
『落ち込んでいる場合ではないぞ! skillが元のlevelになるまでの間は、我々がVandalieu -samaの力となるべく、より一層励むのだ!』
『そうだっ! 俺は励む! 励むぞおおおおお! ハゲエエエエ!』
『貴-sama等は静かにせんか! Vandalieu -samaの御心を考えよ!』
「いえ、Chipuras、俺は別に落ち込んではいませんよ。暫く大変だなと、思っているぐらいで」
『流石、Vandalieu -sama! でも【Danger Sense: Death】の働きや、【Demon King Fragment】の力の低下は由々しき問題だわ。早急に手を打ちましょう』
「そうですね、Isla。帰ったら、暫く特訓と修行に専念しましょうか」
そんな事をZeezoreginの寄り代の残骸の前で話していると、不意に寄り代の残骸が小さく動いた。
「Vandalieuよ、どうやらまだ動くようです」
「おや? もうVitalityも残っていなかったのに、何故?」
Zeezoreginの寄り代は、爆発的な勢いで再生を開始し、数秒で上半身を生やす。
『GUOOOOOOOON!』
声からは知性を感じさせず、まるで獣のような仕草で跳ね起きると、そのままVandalieuに躍りかかる。
しかし、その動きは致命的に精彩を欠いていた。並の相手になら通用するだろうが、Vandalieuには相手にならない。まるで、殺してくれと言っているかのようだ。
「もしかして、体内にForzajibarの魂が残っていたのでしょうか?」
そう言いながら、Divine Spirit MagicをBarrageする。黒い炎の槍や、氷塊、電撃、そして光線と連続で貫かれ、強靭なはずの邪Evil God (P)の憑代は再び倒れ伏した。
そして再び神の魂を喰った手応えと、Demon King Fragmentを入手した感覚。そして――。
(ただいま、俺よ)
(……おかえり、俺よ)
在るべきものが、在るべき場所に戻ってきてしまった、諦めと安堵が混じった感覚を覚え、胸の内で言葉を交わしたのだった。