自分が瞼を閉じているのか、開いているのか、それすらも分からないconditionで、彼女は転がっていた。
分かるのは頬の傷が熱い事だけ。その傷が、何故ついたのかも、思い出せない。
脳裏に浮かんでくるものが、過去のMemoryの断片なのか、それとも自分の妄想の類なのかも判別がつかない。
どれぐらいそんなconditionだっただろうか? 彼女は、ふとGiantな存在が近づいている事に気がついた。
(なんだ、あれは?)
曖昧模糊なworldの中で、そのGiantな存在だけははっきりと感じ取る事が出来た。
そのsignは、長い経験を積んだ彼女でも一言では言い表せない。それでも、最も近い存在を挙げるとしたら、数十年前、彼女がただのKnightだった頃、先代『Alcrem Five Knights』のCommandingの下討伐し、sealedした【Demon King Fragment】だろう。
しかし、そう思う一方で、runawayした【Demon King Fragment】とは全く違うとも感じていた。
(runawayしていた【Demon King Fragment】が発していた怒りや焦り……余裕の無さが……感じ取れない?)
Infestした宿主を完全に乗っ取り、runawayした【Demon King Fragment】は、Guduranisとしてrevivalするために他の【Demon King Fragment】を求める。
そこにあるのは飢えに似た渇望とInstinct的な欲求のみだ。常に同類を求めて鳴き喚き、暴れ狂っている。
それに対して、Giantな存在はとても静かだった。穏やかとすら言える。
(これは……なんなのだ? わたしは……?)
Giantな存在は、禍々しい雰囲気は無く、何処かSacredさすら感じさせる。この存在に助けを求めるべきなのかもしれない。
しかし、何から助けて欲しいのだろうか? この自分自身のconditionからか、それとも……ダメだ、思いだせない。
そもそも、どうやって助けを求めればいいのだろうか? 今の自分は立ち上がるどころか、声を出す事も出来ない。手足を動かしても、本当に手足が動いているのか、動いている夢を見ているだけなのかも分からないのに。
『おおおおおおおおお』
そう彼女が迷っていると、Giantな存在が唸るのが聞こえた。視線をせわしなく動かし、細長い腕ともantennaともつかないものを蠢かせている。
(何かを、探しているのか? もしかして……私を?)
それに気がついた時、彼女の胸の深い場所で欲求が生じた。あのGiantな存在に応えたい、見つかりたい。その欲求は力となり、僅かだが頭が回り始めた。
見つかるためには、この隠しroomから出なくてはならない。だが、今の自分には隠し扉の仕掛けを作動させるのは不可能だ。
では、どうすればいいのか? それを考えた時、彼女はIntuition的に理解した。懐にendureばせていた物を使えば良いのだと。
(これを……取り出して使えば……)
普段は数秒で出来る簡単な作業が、今はwhole body全霊の力を振り搾り続けなければならなかった。
彼女は何とか懐から取り出したそれを首に当てると……何とか上げていた顔を再び床に落した。
自分の首の周りを、かぐわしい赤い花が飾るのが見える。この香りなら、きっと気がついてくれるはずだ。
彼女の期待に応えるように、赤い花は広がって行く。
(花に囲まれてsleepsなんて、Shoujo趣味だな……)
そんな事を思いながら、彼女の思考は力尽きたように深い眠りへと落ちて行った。
Valdiriaは懐にendureばせていた解毒用のpotionではなく、Mythril製のknifeを取り出し、頭の重さで首を切った。
AClass adventurer相当の実力を持つ彼女の首は、本来ならその程度なら掠り傷しか負わないが……毒によって衰弱し死に瀕しているconditionでは、余命を大幅に削るのに十分だった。
一方裏庭では、ここで死にかけている人がいると言われて、Takkard・Alcrem Dukeが驚いていた。
「な、何だと!? そ、それはどう言う意味かね!?」
Vandalieuの言葉を、そのままの意味なのか、遠回しな脅しなのか、真意を測りかねて思わず声を荒げた。その顔は蒼白で、今にも泡を吹いて倒れそうに見え、Servant達も「Duke -sama、お気を確かに!」と、素早く駆け寄る。
「文字通りの意味です。この子は勘が良くて、近くで人が死に瀕している事に気がつく事があるんです」
だが、Darciaがそう言うと、何とか持ち直したようだ。
「そ、それはUnique skillか何かですかな?」
「ええ、そのようなものです!」
Darciaがきっぱりと言い切ると、Dukeや、Servant……の演技をしているKnightやMage、庭に隠れているSpy達のsignが一端落ち着く。そこですかさずMyuzeが声を張りあげた。
「この別邸に持Diseaseのある方や、heartのweak方はいないでござるか? いるなら、Van -donoやDarcia -donoなら治療できるはずでござる!
Van -donoは-sama々な薬に通じており、Darcia -donoはLife-Attribute Magicの達人でござる故!」
そうMyuze達が注目を集めている間、KimberlyやPrincess Levia等Ghost達が改めて別邸を探り、GizaniaやFang達が、何が起きても対応できるように周囲を警戒する。
『Van -kun、本当に誰か死にかけているの?』
『ええ、【Danger Sense: Death】には引っかかりませんから俺の見える範囲には居ませんが……何となく分かります。微かな匂い、蟲のsign、霊のざわめき。そうしたものから判断しました』
Vandalieuも視界の外で死にかけているValdiriaの事を、直接感知した訳ではなかった。しかし、彼のfive sensesは新鮮なbloodの良い匂いに気がついた。
更に、今現在Valdiriaは霊も通れないBarrierの内側にいるが、Gordiとそのpartnerに引きずり込まれる前はBarrierの外に居たのだ。そのため、霊の中には彼らの犯行を見ている者もいた。……何が起きたのか理解できず、ただ騒いでいるだけだったが。
しかも Barrierに阻まれる事のない蟲達が、Valdiriaが死にかけている事に気がついて近づこうとしている。
それら全てがVandalieuの判断材料になり、「誰かが死んだ、若しくは死にそうになっている」と分かったのだ。
『偽Face-Stripping Demonに関係する事かもしれませんし、無視はできません』
『そうだね。Duke -san達が把握してないって事は、尋常じゃないし』
「この別邸には、そのような者はいないはずだが……! 誰か、倒れている者が居ないか確かめるのだ! 何者かが侵入し、狼藉を働いたのかもしれん!」
VandalieuがTelepathyでOrbiaと話している間に、DukeはせわしなくServant達に指示を出している。
この別邸に配置しているのは、Servantに変装している者も含めて戦闘要員であり、不意に持Diseaseの発作を起こして動けなくなる者は一人もいないのを、Dukeは知っている。
そしてVandalieu達は、SimonやNataniaはcertainly、Tamed Monsterとして入って来たJulianaまで、この都に入って来た者は全員が目の前にいる。小細工は不可能だと、彼の目には見えた。
そのため、この会談を快く思わない勢力……Alda過激派や政敵の放った刺客が外部から侵入したと思ったのだろう。
流石にVandalieu達の目の前で、庭木のshadowや池に潜んでいるSpy達の安否確認は出来ないが、Servantを演じているKnightの内何人かが建物の中や、表に走ろうとする。
「お逃げください、Duke閣下ぁ!」
その時、別邸の二階の窓が内側から弾かれるように開き、壮年の完全武装したKnight……『Knight of Roaring Flames』Brabatieuが飛び出して来た。
「Brabatieu!? 何故出てきた!?」
驚き目を剥くDukeへ、ageと重武装に似合わない軽やかな着地を決めたBrabatieuが駆け寄り、Vandalieu達との間に立ち塞がる。
「先程私が雇い入れたSpiritualistが嘔吐し、白目を剥いて倒れました! 恐らく、こやつらが言っているのは、その者の事でしょう」
「そ、そうか。では速く治療をするのだ! 一刻も早く、最優先で!」
「Spiritualistという事は……あれ? 予想していたのと違う展開なのですが」
『Alcrem Five Knights』を潜ませていた事が明らかになってしまい、色々手遅れだがこれ以上の醜態は防ぎたいDuke。
最初からBrabatieu達が密かに配置されているだろうことは予想していたが、まさか自分から出て来るとは思わず、戸惑うVandalieu。しかも、倒れたのがSpiritualistという事で、恐らくVandalieuの周囲に漂う数え切れない数の霊のプレッシャーか何かに負けたのだと原因が予想できるので、困惑は更に深くなった。
同じFive Knightsの一人である『遠雷のKnight』Sergioは、「何をやっているんだ」と頭を抱えていた。
Spiritualistが倒れたなら、自分が治療すればいいじゃないか。応急処置ぐらい出来るだろ、と。
「その必要はありません、Spiritualistは既に応急処置をして、部下に任せております」
「だ、だったら何故!?」
「閣下、これは恐らくこのDhampirの仕業です! 私がSpiritualistを雇ったのを知り、霊を扇動して彼をfaintedさせ、閣下の周りから人を遠ざけ何事か企んでいるものと考えられます! なので、今の内にお逃げください!
皆の者っ、私が一秒でも長く時間を稼ぐ! その間にDuke閣下を連れて逃げるのだ!」
「な、何をBAKANA事を言っているのだ!?」
「……どうしましょうか」
Brabatieuの主張を信じられず聞き返すDukeと、Spiritualistが倒れた原因は確かに自分にあるので、言葉に詰まるVandalieu。
「ま、待ってください! 何を根拠に!? 霊を扇動なんて出来る訳ないじゃないですか!」
Julianaが、自分の後ろで『そうだそうだ!』と騒ぐGhost達を無視して、そう訴える。彼女の言う通り、Undead Transformationしていない正常な霊の姿を見て、声を聴く事が出来るのは【Spiritualist】Jobにある者だけだ。
そして【Spiritualist】でも、霊を自由自在に操れると言う訳ではない。【Spiritualist】は単に霊とcommunicationを取る事が出来るだけのJobなのだ。
そうである以上、Brabatieu達が持っている情報では、Vandalieuが霊を扇動する事は不可能だと判断するはずだ。
そう思って訴えたのだが、Brabatieuは揺るぎもせず答えた。
「先日、Spiritualistに貴-samaの事を調べさせた。Dhampirよ、貴-samaは随分と霊に好かれているようだな。あらゆる霊がお前を称えていたそうだぞ。
それは貴-samaのTamerとしてのaptitudeが、霊にまで及んでいる事の証拠! 貴-samaはSpiritualist以上に霊を操る事が出来る稀有なUnique skillを持っているのだろう!」
疑心暗鬼とこじつけと、不都合な所はUnique skillで強引に説明しようとする、暴論を展開するBrabatieu。しかし、最も信じられないのはその暴論が真実に近づいている事である。
「そ、それは……!」
Julianaも咄嗟に言い返す事が出来ず、狼狽える。
「いや、それは俺達がDuke -samaの周囲から人を減らして何事か企むような、動機がないと成立しないのではないでしょうか?
そして、俺にDuke -samaの周りから人を少なくして得になる事はありませんよ。会談も上手く進んで、打ち解けてきたところなのに」
だが幾ら真実に近づいていても、実際に企んではいないVandalieuは、Brabatieuにそう言い返した。普段なら無表情なまま狼狽えていたかもしれないが。今は非常時である。
既に応急処置を受けたSpiritualistの男以外に、死に瀕している人がいる可能性が高いのだから。
それがこの騒動で発見が遅れ、そのまま死んでしまったなんて事になったら寝覚めが悪い。
「そ、それは我々が居ても居なくても関係ないと言う宣言のつもりか!? おのれっ、KnightのHonoraryにかけてDuke閣下とこの都は――」
「Brabatieuっ! 下がれっ、とにかく一旦下がるのだ!」
「お待ちください!」
Vandalieuの言葉を抗弁ではなく、遠回しなProvocationと解釈するBrabatieu。彼を強引にでも下げようとするDukeとVandalieuの前に、今度は『Knight of the Insight』Ralmeiaが現れた。
「Ralmeiaっ!? お前が何故ここに!?」
「Duke -samaっ、確認いたしましたところ、この別邸に潜んでいるSpy達、Servantに扮したKnight達は全員死にかけてなどおりません! 死に瀕してはおりません!」
「Ralmeiaぁぁぁぁ!?」
瞳孔が開ききった、かなり平静ではない瞳をしたRalmeiaがもたらした報告に、Dukeはscreechをあげた。Brabatieuが出てきた事だけでも不味いのに、お前まで姿を現した挙句全てをぶちまけてどうするのだと。
「それは確かなのか?」
「確かです。私の『SurveyingのMagic Eye』で一通り調べたので」
しかし、そのRalmeiaはDukeに制止されるどころか、Gizaniaの質問に丁寧に……自身のUnique skillの名称まで明かして答えた。
その代わり、彼の報告は真実だった。彼は【SurveyingのMagic Eye】で潜んでいるSpy達をざっと眺め、配置されている全員が【Silent Steps】等のskillの効果を発揮しているのを確認した。
死にかけているconditionでskillの効果を発揮できるとは思えないので、Spy達は大体健康なはずだ。
次にServantに扮したKnightやMageだが、彼等は潜んでいない。Servantの役割を果たしているので、隠れendureんでいたら逆に不自然だし、配置されるときも三人組以上のgroupになっている。
だと言うのに、未だに重傷を負っている者や体調不良の者が見つからない以上、彼等の中にも死にかけている者はいないと見るべきだ。
「……なので、恐らく私とBrabatieu -dono以外のFive Knightsの誰かが、死に瀕しているのではないかと」
「「Ralmeiaぁぁぁ!!」」
「いや、他の人もいるのだろうなと、もう察していますから」
DukeとBrabatieuが揃って叫び声をあげ、Vandalieuが落ち着くようにと声をかける。
Ralmeiaにこの別邸の戦力をほぼ全てばらされてしまい、screechをあげるDukeとBrabatieuだったが、まだ隠れているSergioの動揺はそれ以上だった。
(畜生! あそこまで正気を失っているとは思わなかった! こんな事なら、狂って戻って来た時に多少強引にでも奴を始末しておくべきだった!)
だが『Knight of the Crumbled Mountain』にして、Camouflage HumanのGordiはそれ以上に動揺し、胸の内で口汚く罵っていた。
BrabatieuがVandalieuの前に姿を現したのは彼にとっても想定外だが、彼にとっては好都合だった。まさかVandalieuが、霊からの情報以外でValdiriaが死にかけている事に勘づくとは思わなかったが、Brabatieuなら事態を引っ掻き回して、Valdiriaの事を有耶無耶にしてくれるはずだ。
しかし、Ralmeiaまで出てきた上に、何故か正気を奪った相手であるVandalieu達に対して好意的で、Duke達の叫びも無視して情報を提供しだした。
その結果有耶無耶になるどころか、死にかけているのはFive Knightsの内、まだ姿を現していない三人の中の誰かだという事になってしまった。
「どうする、partner。俺を殺して、侵入者を始末した事にするか?」
partnerがそう尋ねる。その言葉が表す通り、Camouflage Human達には個の概念が薄い。Memoryを共有した自身のCopyを作る事で増えていく生態のため、『自分の代わりが常に存在する』と言う認識がInstinctにまで染みついているためだ。
例外は、彼らのCreatorである『Cannibalismと強奪の邪Evil God (P)』ZeezoreginからtacticsのCommanderに任命され、blessingsとSpirit Cloneを授けられたGordiぐらいだ。
「いや、お前を始末して死体を見せても、Vandalieuが何でValdiriaを感知しているのか分からなければ意味がない。それに、お前の霊が奴に服従しない保証もない」
「そんなBAKANA。partnerは、俺のGodsへの、Zeezoregin -samaへの信仰とLoyaltyを軽んじるのか?」
個の概念が薄い代わりに、Camouflage HumanはZeezoreginへのLoyalty心が強い。それは三大欲求や生存Instinctよりも優先され、Zeezoreginが「sleepsな」と言えばCamouflage Humanは死ぬまで眠らず、「死地へ赴け」とdemandすれば当然のように赴く。
だから、Camouflage HumanをどんなにTortureしようと無意味だ。彼等が命乞いをし、寝返る事を約束しても、それこそがCamouflageであり、Trapなのだ。
だが、死んだ後の事は分からない。
「違う、私は我等の主が、BorgadonのFamiliar SpiritにCamouflageさせた自らのFamiliar Spiritから手に入れた、Vandalieuの情報を重んじているだけだ。
奴の周囲には、奴に殺された者達の霊やUndeadが、嫌々ではなく嬉々として侍っている。Evil God (M)派のNoble-born Vampire共の中には、犬として扱われる事に至上の喜びを見出すようになった者までいるらしい。
生前の誇りやLoyalty心、そして信仰すら奴の前にはfragmentも残らないと考えるべきだ」
「……何と恐ろしい。Zeezoregin -samaを差し置いて、次代のDemon Kingと呼ばれ恐れられているのも納得だ。だが、このまま隠れている訳にはいかないはずだ」
prideが高いはずのNoble-born Vampireが、死後は自ら飼い犬になりtailを振るようになるとはと、恐れ戦くpartner。しかし、彼が指摘した通り、このままただ隠れていても、事態は悪化するばかりだ。
Ralmeiaのせいで死にかけている者のCandidateは、Five Knightsの内残り三人に絞られた。ValdiriaはGordiによって、本来彼女が配置される場所とは異なる聖域の張られた隠しroomに移動されているが、Spy達はこのmansionの隠しroomを全て知っている。
十分とかからずにValdiriaを探し出してしまうだろう。
残る希望は、「死にかけている者がいる」と言うVandalieuの言葉自体をDuke達が嘘だと決めつけ否定する事だが――。
「SergioやValdiriaが死に瀕しているだと? idiotも休み休みに言え! Sergioは若造だが我等『Alcrem Five Knights』に名を連ねるだけの腕は持っている。そしてValdiriaは儂以上の古豪、Gordiは若くして先代と並ぶ武術とmagicの使い手。仲間に裏切られぬ限り、誰にも気がつかれず致命傷を負うとは考えられん!
はっ!? まさか、これはこのmansionに配置された戦力を丸裸にする為のtactics!? 貴-samaは、ここまで読んでいたと言うのか!?」
BrabatieuがSlightly真実に掠っている事以外は、Gordiの望み通りの主張を展開する。この時ほど彼が頼もしいと思えた事はなかった。
「いえ、『死にかけている人がいませんか?』と言うだけで、ここまで事態が動く事を想定するのは無理があると思います。あと……庭や池に誰かが隠れている事は、最初から予想していましたし」
「Brabatieuよ、この通り既にばれているのだ。Sergio達も出て来るがよい。幸い、Vandalieu -dono達は我々をこの事で責めるつもりはないらしい。会談の仕切り直しと行こう」
しかし、VandalieuはBrabatieuにどれ程無礼な口調で疑いをかけられても、怒り出すどころか淡々としている。
Dukeも、自らのKnightの意見を信じるつもりはなさそうだ。それどころか、他のFive Knightsにも出て来るようにと言い出している。
「どうすればいい? 二つだ、奴の幾つもあるだろうskillの内、二つだけ奪えればいい。奴のskillの多さと、body partの小ささ、そして俺の性能なら、片腕の半分も喰えれば、それでいいんだ。それで……。
仕方ない。partner、結局お前には死んでもらう事になりそうだ」
「分かった」
隠しroomの中で短いやり取りでtacticsをpartnerに伝えたGordiは、早速実行に移した。
重い爆発音と共に、mansionの壁の一部が内側から砕け散った。
「何っ!?」
咄嗟にDukeを庇うBrabatieuに、舞い上がった土埃の向こうを油断なく睨みつけるVandalieu達。
「た、助けてくれっ! Valdiriaがやられたっ、敵は向こうに……」
bloodだらけのValdiriaに肩を貸し、よろめきながらも助けを求めるGordiが姿を現す。そのCamouflageは、普通なら完璧だった。
bloodの香りも、Vandalieuはcertainly FangのSense of smellでも本物としか思えなかった。
「あれはっ、Valdiriaではない!」
だがappearanceだけでskillをCopyしていないCamouflageは、Ralmeiaの【SurveyingのMagic Eye】にあっさりと見抜かれた。
(死の危険を感知できない)
そして、視界内に入ったにもかかわらず【Danger Sense: Death】に反応が無い事から、bloodだらけなのは見せかけだとVandalieuも判断した。
すぐに、それまで敵対的なmagicを使ったと勘違いされないように控えていた、【Detect Life】を使用する。
「kaa-san、そこの壁の向こうです。今にも死にそうなので、すぐ治療を」
そう言って、Vandalieuはこの局面で重傷を負って助けを求めるふりをしている二人に、接近する。
(そうだ、我々の背後の別邸には、まだServantに扮しているKnightがいる。貴-samaなら、magicは撃たないと読んでいたぞ!)
内心、そう歓喜しながら、Camouflage Human達は動いた。意識が無いように見せている偽ValdiriaをVandalieuに向かって投げ、偽Gordiは宝剣を構えて疾駆する。
「……シャアアアア!」
投げられた偽Valdiriaは、一瞬でfangsやclawsを生やした、monsterらしい姿に変化するが、その動きは隙だらけだった。
故にVandalieuは、偽Valdiriaは捨て駒で、本命は油断ならない力量を感じさせる動きで疾駆する偽Gordiの、宝剣だと判断。Left Armのclawsを振るって、偽Valdiriaを切り捨て、偽Gordiに備えようとした。
そして左手のclawsが偽Valdiriaの腕を掻い潜り、胴体に刺さり――そのまま抵抗もなく手首まで減り込んだ。
「っ!?」
驚いたVandalieuが咄嗟に左手を引き抜こうとする前に、更に偽Valdiriaの内側にLeft Armが吸い込まれ、boneが断たれる鈍い音が響き、左肘から先が切断される。
「アアアアア! 貰ったぞ、貴-samaの腕の半分を! ハハハハ!」
そして偽Valdiria……『Knight of the Crumbled Mountain』Gordiが笑い声をあげた。
《【Hell King Magic】と【Demon King】skillが奪われました!》
Left Armを半ばで失い、脳内に響いたアナウンスの内容に驚いたVandalieuは目を見開き――。
「とりあえず、【Skull Bash】」
「はははごべはぁ!?」
自身のshadowから取り出したGyubarzoの杖で、歓声をあげながら元の姿に戻りつつあるGordiを上段から叩き付け、地面に減り込ませる。
更にLeft Armを再生させながら、tacticsが成功した時に浮かべた笑みを浮かべたまま硬直している偽Gordi……partnerに向かって杖を構える。
「き、貴-sama、partnerにskillを奪われたんじゃないのか!?」
「【Mana Bullet】」
「うおおおおおっ!?」
直径一meter程のMana Bulletと言うよりMana砲弾を宝剣で何とか弾き飛ばそうと、partnerが吠える。
「Van -kunっ!? そいつ、skillがどうとかって言ってたように聞こえたけど! それにLeft Arm大丈夫!?」
「はい、skillが奪われました。こいつ等は人のbody partを食べる事で、skillを奪う事が出来るようなので、接近戦をする際は気を付けてください。
Left Armは、もう元通りです。心配してくれてありがとう」
「skillを奪うっ!? 一時的に使えなくするんじゃなくて!? 師Artisanっ、それって滅茶苦茶やばいんじゃ!?」
「あっ、そっか! 取られたのは【Cooking】や【Whip Technique】skillで、magicやUnarmed Fighting Techniqueは無事だったのね! それなら――」
「いえ、かなり重要なskillを一つ奪われました」
「拙いじゃない! どうするのっ!? 吐かせればいいの!?」
VandalieuはDarciaが、本当に死にかけていた人……恐らくGordiが化けていた女Dwarfを助けているのを見て確認すると、動揺する仲間達に言った。
「いえ、万が一使われると致命的な事態になりかねないので……skillを取り戻すよりも、無力化する事を優先しましょう。
他にskillを奪わせる訳には行きませんし」
「ば、BAKANA……! 私を殺せば、貴-samaのskillは二度と帰って来ないのだぞ!?」
地面に半ば減り込んでいたGordiは身を起こしながら、只ならぬ量のManaを漂わせて自分を見下ろすVandalieuと、その周囲のcountlessの霊やGhost達に戦慄しながらそう聞き返した。
「だろうなとは思いますが、まあ戻らないなら仕方ないでしょう。skillを惜しんで自分や仲間の命を失う方が、被害が大きいですし。時には、損切りも必要です」
【Hell King Magic】は、また【Death-Attribute Magic】から覚えなおせば良い。今度は、Job補正もあるのでずっと速く覚えられるだろう。
【Demon King】の方は……まあ、無くなってもそれはそれで構わないかもしれない。
皆を殺されたり、これ以上skillを奪われたりするくらいなら、さっくりと殺してしまおう。