浸かっているだけで疲れが解れ消えて行く、温もりにVandalieuは包まれていた。
瞼を閉じ、手足を伸ばして全力で安らぐ。
こうして入浴していると既に二十年以上昔の事だが、自分もやはりかつてはJapan人だったのだなと思えた。
『手足を伸ばして湯船に浸かるなんて、何十年ぶりだったっけ? Earthでchildだった時以来か』
そんなどうでもいい事を自問自答しつつ、Vandalieuは王城の地下に不完全なResurrection Deviceがあると知った後の事を思い出した。
まず、Borkusに新しい腕を用意した。謁見の間に砕けて転がっていたBorkus自身のboneのfragmentを【Golem Transmutation】で集め、形を整えた。その後、Borkusの肩に添えてから再生するimageでManaを流す。
すると、何とBorkusの肩から肉が伸びるように広がり腕が治ったのだ!
『うおおっ、気持ち悪りぃ!』
あんまりな反応だったが。
どうやら、Death-Attribute Magicで治せるのはBone Man達のbody partを構成するboneだけではなく、肉やskinも治せるらしい。これを【Corpse Healing】と名付けよう。
ただBorkusの顔の右半分は治らなかった。やはりmagicにはimageが大事で、Borkusの顔は半分髑髏のconditionが印象深かったため治らなかったのかもしれない。
『どういう理屈か分からねェが、気にすんな。右目は目玉が無いくせに見える、腕があれば戦うのに支障は無ぇぜ。
それに、こっちの方が色男に見えるだろ?』
「確かに」
『ウルセェ! 俺はこっちのガキに言ったんだ!』
即座にNuazaに同意され少し怒っていたが、Borkusはとても喜んでいた。Right Armが戻ってきて前のように戦う事が出来る-samaになったのが嬉しいのだろう。
VandalieuはBorkusのように『口が悪くても良い人』が本当に存在すると分かって、若干の衝撃を覚えた。
今まで『口も人も悪い人』しかいなかったからだ。これでOrbaum Elective Kingdomに入った後口の悪い人に出会っても、多少のResistanceが付いているかもしれない。……敵だと思い込んで反射的に攻撃しない程度に。
それからTalosheimに残っているmagic itemや物資の確認を改めて行った。
Borkusの腕を治しても地下の半ば壊れかけたDragon Golemを倒せる気が全くしなかった、それどころか殺される気しかしなかったので、本格的に戦力のAugmented (2)を行う必要があったからだ。
本当に大切なものはFirst Princess達が避難する際持ち出していて、それ以外の残っていた物も目ぼしい物はほぼ全てMirg Shield Nationに持ち去られ、国宝だったlegend Classや上Class magic itemも残っていなかった。
「残っているのは五Class potionや何処でも手に入るような、下Class magic itemばかり。まあ、残っていても大体腐っているか錆びているかですか」
『まあ、二百年経ってるからな』
後はUndead Giant達が身に着けている物だが、それを差し出させる気にはならない。
『仕方ネェ、Dungeonで取って来るか。死んでから誰も入ってネェだろ? なら、DClass Dungeonでも中Class magic itemが転がってるはずだ。
そういやぁ、Adventurer’s Guildの方はどうなってる?』
Adventurer’s Guildには非常時に備えて、potionが多めに保管されている。中には一時的にAbility Valuesをincreaseさせる効果のあるpotionもあるはずだが、Nuazaは首を横に振った。
「Adventurer’s Guildは当時、このTalosheimに残ってDestinyを共にしてくれた外国人adventurer達と敵との戦いがありましたからね。
potionは使い切られ、magic itemも奪われていますよ。無事なのは、Job changeのroomぐらいですか」
「えっ? 今な――」
『チッ、余所モンが無理しやがって……酒をもっと奢ってやればよかったぜ』
「今からでも何人かには奢れますよ。彼らもUndeadになっていますから」
『そうだったな! 二百年間王城に引きこもっていたから忘れてたぜ! あ、でも酒場が無ぇじゃねえか』
「はっはっは、それもそうでしたね」
「あの、guildのJob changeのroomが使えるというのは、本当ですか?」
各種guildのbranchに設置されているJob changeのroomは、Human社会なら必ずある設備だ。Amid Empireだろうが、Orbaum Elective Kingdomだろうが、Talosheimだろうとそれは変わらない。
なのでMirg Shield Nation軍も態々壊すような手間をかけず、放置したらしい。実際、Undead TransformationしたBorkusやNuaza達は既に人ではなくmonstersだ。Job changeできないので、無用の長物だった。
「それ、俺やGhoulの皆が使えますよね」
しかし、今までHuman社会に入ってJob changeのroomを使用できなかったVandalieuや、Ghoul達には朗報だ。
accurateには、Ghoul達には確実な朗報。彼らは社会的にはmonstersとして扱われているが、実際はVida's New Racesだ。だからJobに就く事が出来る。その証拠に、元HumanのTareaやKatia達はHumanだった頃のJobを持ったままGhoul化している。
VigaroもZadirisも今までJobに就かずskillを磨いてきたのだ。そのGhoul達がJobに就き、Ability Values補正やskill補正の恩恵を受けられるようになったら、きっとかなりの戦力Augmented (2)になる。
Vandalieuの場合は、Rodcorteの【Cannot learn existing jobsのCurse】を受けているためroomを利用できてもJob changeできない可能性の方が高いのだが。
しかし、やるだけやってみたいと前から思っていた。可能性は零ではないのだし。
だから早速この朗報を伝えようと、弾む足取りで皆の所に戻ったVandalieuだったが、そこで彼を待っていたのは衝撃の通告だった。
「坊や、誕生日まで休養を命じる」
遠回しに休めと言っても聞かないと思ったZadirisが皆と相談して、Vandalieuに休養を取るように通告したのである。
「いや、でもResurrection Deviceが、Job changeが」
「その前に倒れたら元も子もあるまい! 坊や、もうお主の耐久力は限りなく限界に近い!」
『そうですBocchan! 末期症状です!』
『お願いだから休んでVandalieuっ! 休んでくれないとkaa-san Reincarnationの輪に帰らせてもらいますからね!』
聞く耳を持ってくれなかった。
彼女達がどうやってVandalieuを休ませるかと頭を悩ませていたところ、ふと窓から外を見ると、いつも通りの虚ろな貌で今まで見た事が無い不気味な走り方をしながら近付いてくる彼が見え、『ヤバイ! 今すぐ休ませないと!』と思ったらしい。
どうやら、Vandalieuにはスキップのaptitudeが無いらしい。
しかし、死んだ魚のような瞳をしているのは何時もの事なのだから、そこまで慌てなくてもと思う。そう抗弁しても、強制的に休養を取らされる流れは変えられなかった。
お願いだから休んでと泣き付かれて、反論する事が出来なかったのだ。
まあJob changeのroomは逃げないし、Job changeしたからといってあのDragon Golemをすぐに倒せるようになるとは思えないので、誕生日までの十日間英気を養うのもいいかもしれない。
それに、何もせず休む事を強制されている訳でもない。勘が鈍らないよう、Alchemyの修行は一日一時間までだけどしているし、他にも色々と休むためにやっている。
例えば、このPublic bathhouseを修理するとか。
TalosheimにはPublic bathhouseがあった。Zakkartのお蔭か、TalosheimのGiant race達はとても風呂好きで、町には五つのPublic bathhouseがあり、王城にも大きな風呂があった。
流石に檜風呂ではなく、古代ローマのテルマエのような石造りの浴場でサウナも和式ではなく洋式だったが。
暴虐を行ったMirg Shield Nation軍もtempleでも防衛施設でもないPublic bathhouseを破壊する暇は無かったらしく、あまり荒らされていなかった。一応火種を作るmagic itemや多少の金品があったが、それよりももっと価値のある物で荷物が一杯だったのだろう。
ただ、二百年放置されていたのでVandalieuが見た時は、王城の浴場も含めて全て惨憺たる有-samaだった。
町の五つの浴場の内、外側に在った三つはDevil Nestsに呑まれ生えた木々などで崩れていて、中心部の一つは攻撃magicの流れ弾でも当たったのか瓦礫の山と化していた。
無事だった一つは、中で茸が大Breedingしていた。しかもただの茸ではなく、手足の生えたWalking Mushroomや毒性のある胞子を出すPoison Mushというmonstersだった。
そんなに強いmonstersではないので、何匹か倒して焼いたら、とても美味しかった。Walking Mushroomは歯応えがあって、エリンギっぽい。Poison Mushは椎茸かな?
結果、王城の浴場を修理する事にした。まあ、ここも雨漏りで浴槽が池と化していて、中にSkeletonが何人か浸かって「いい湯だな~」とかやっていたが。Undeadに成っても湯に浸かりたがるとは、Giant raceもかなりの風呂好きのようだ。
【Golem Transmutation】で雨漏りや、壁やタイルの罅割れを直し、掃除を行う。すると流石は頑丈なGiant raceの王城。それだけで二百年の時を経て浴場は再び利用可能となった。
今まで水浴びしかした事の無かったGhoul達もお湯に浸かる入浴文化を気に入り、今では王城の浴場で疲れを取ろうと毎日列を作っている。
『休みが終わったら他の浴場も直さないと、王城の浴場がいくら大きくてもPunkするな。
Originではshowerだけだったから、気持ち良いな……ん?』
誰かの野太いscreechが聞こえたかと思うと同時に、Vandalieuの頭を誰かがワシっと掴み、そのままザバンとunderwaterから引っ張り上げられた。
「Vandalieuっ! 溺れたのか!?」
「いえ、ただ頭まで湯に浸かって温まっていただけですよ」
Orbaum Elective Kingdomから移住してきた他raceも使用するPublic bathhouseならin any case、Giant race専用の王城の浴場の浴槽は、深かった。
femaleでも二meter半ばのGiant raceが使う浴槽なので、もうすぐ三ageになるVandalieuだと立っていても脳天まで湯に沈んでしまうのだ。
まあ、修理した時に浴槽に段を作って頭を出せる浅い部分が出来るようにしたので、不注意か故意でなければ溺れないはずだ。Vandalieuの場合は、故意である。
「脳天まで湯に浸かって、百数えようかと思いまして」
「死ぬぞ!?」
「いやいや、五分までなら大丈夫」
【Abnormal Condition Resistance】skillのお蔭で、窒息するまで五分以上時間がある。Death-Attribute Magicを使えば、窒息してからも死ぬまでもっと時間を稼げる。
「それでも止めろ、見ていて怖い。我のheartが止まったらどうする?」
「はーい」
潜水式入浴法禁止令、発令。
入浴を終えたVandalieuは、深く悩んでいた。
『さて、これからどうやって休もう』
誕生日までまだ何日もある。その間、どうやって休むかについて。
一日中寝ているのも不健康だし、一日中食べているのは論外だ。虚空を見つめてじっと思索に興じる……趣味は無い。
今までどうやって時間を潰していたかを思い出すと、大体何かしていたら何時の間にか時間が過ぎていただけだった気がする。
No-Attribute MagicやAlchemyの修行をしたり、胡桃と香草でsauceを作ったり、ドングリ粉を作ったり、Bone Monkey達を磨いたり。密林Devil Nestsに居る間は、そうしていれば時間が過ぎていた。
しかし今は休養中なので、そうした作業をするのは止められている。
じゃあ、娯楽に興じて時間を潰そうかとも思うが、考えてみると娯楽があまり無い事に気が付いた。
今、Vandalieuの手元にはEarthに在ったようなgame機やパソコン、television、携Electrify話が無い。次に、このworldでも在るだろう玩具やBoard Gameも無い。……いや、考えてみたらEarthに居た時から手元には無かった物がかなり在るが。
弱肉強食のDevil Nestsで暮らしていたGhoulの集落での暮らしは、そういった娯楽がdevelopmentする余地は無かった。Devil Nestsに入ってくるadventurerの死体から物品を剥ぎ取るにしても、危険なDevil Nestsに玩具やBoard Gameを持ってくる物好きはいなかった。
……本なら何冊かあったが、magic書かmonstersの生態とDismantling方法を記した実用書ぐらいで、それらは既に何度も読んでいる。
Devil Nestsに辿り着く前にmountain banditから奪った本の内幾つかはまだあるが、それらもやはり実用書で何度も目を通している。
『そういえば、このworldの人は普段どんな娯楽を楽しんでいるんだ?』
興味を覚えて元adventurerのKatiaや、死ぬ前の事をよく覚えているNuazaに話を聞きに行くと快く教えてくれた。
「Board Gameや読書以外の娯楽? うーん、お酒とか、theaterで芝居を見るとか大道芸人の芸とか? 上流階Classだったら演奏会とか……あ、Bardの歌を聞くとかかしら。
後はやっぱり買い物ね」
Katiaが教えてくれたのはMirg Shield Nationの庶民の一般的な娯楽や、上流階Classの代表的な娯楽だった。しかし今のTalosheimでは野外theaterはmonstersの巣と化し、大道芸人は自分のboneを拾うのに忙しく、Musical Instrument Performance者やBardはそもそも居ない。
「Katia -sanが挙げた物以外だと、歌を歌ったりコイントスで出るのが裏か表かを賭けるようなgamblingでしょうか? 後、templeで神に祈るとか」
Nuazaが最後に言ったのは、娯楽ではないと思う。
因みに、Vandalieuは酒とgamblingは成人するまで待つつもりだ。自分が見た目に反して熱くなりやすい性格であり、gamblingには向いていないとVandalieuはSelf分析していたし、今のbody partで酒を飲んでも【Abnormal Condition Resistance】skillの修行にしかならないからだ。
「えーと、じゃあ……」
「じゃあ、今日はあたし達と遊んでよ」
「え?」
「いいからいいからっ」
その後、この日はKatia達元adventurer組にAdventurer’s Guildについて教わったり、逆にVandalieuが彼女達にジャンケンを教えたりして過ごした。
その後はBilde達やLife-deadの-sama子を見て、Alchemyの修行をして、一日を終えるのだった。
尚、この時VandalieuがKatia達に教えたジャンケンは彼女達から瞬く間にTalosheimに、そして将来的にはこの Bahn Gaia continent全土に広がるのだった。
次の日、Vandalieuは娯楽を求めてBlack GoblinやAnubis、Orcus達を訪ねていた。
昨日寝る前に「そうだ、暇だったらchild同士遊べばいいじゃないか」と思い付いたのである。
成長の速い彼らは既にVandalieuよりも体が大きいが、今現在community内に存在する数少ない未成年者だ。
きっと追いかけっこやかくれんぼ等で遊んでいて、自分も仲間に入れてくれるに違いない。
Earthではその頃は伯父のせいで挙動不審になっていたため、友達が居なかった。これは寂しい少年時代を忘れるいい機会に違いない。
……断られたら心が折れそうだが。
Katia達と話すのは楽しかったが、child同士遊ぶというのはまた別なのだ。
『いいか、短剣はこう使うんだ!』
「的をよく狙え! よし、放て!」
「これが、Club TechniqueのMartial Arts【Skull Bash】だ。決まればどんな石頭でも中身ごと潰せるが、隙がデカいから気を付けろ!」
っと、思ったら皆真面目に訓練に勤しんでいた。
彼らはいずれDevil Nestsで自分と集落の仲間の食い扶持を狩らなければならないので、childの頃から訓練を受け強くならなくてはならない。
厳しいように見えるが、他のmonstersの生態と文化を考えれば彼らはとても恵まれている。
GoblinやKobold等のmonstersは、childに殆ど教育を施さない。精々群れを維持するためにボスには逆らわない等の最低限のruleを教えるくらいだ。
基本的に「技や知識は見て覚えるか、自分で手に入れろ。武具と道具は自分で作るか奪え」という教育policyなのだ。
GoblinやKoboldはBreeding力が高く、短期間で沢山のchildが産まれる。だから三分の二ぐらい死んでも、三分の一が成体になれば十分収支が合うのだ。
だから自分で食料を獲得し、Weapon Equipmentを作るwisdomや手に入れる運がある個体だけが生き残れば十分なのだ。
態々劣った個体に手間暇かけて教育するために、労力を費やそうとは考えない。
Orcの場合は、多くの個体が道具をやっと使える程度の知能しかないという事情もあるが。
Orc達に武具を行き渡らせたBugoganのような発想は、Noble Orcを含む上位種だからこそ出来るものだ。
それがここでは練習用の武具を与えられて、Endurance作りや武術の基礎をGhoulやUndead Giantから習う事が出来る。magicのaptitudeが有れば、magicだって習う事が出来る。
更に大人になれば、Tarea達の作る質の良いmonsters素材性の武具が支給されるのだ。普通のmonstersと比べれば、破格の境遇である。
「さざんが、く。-sanし、じゅうに」
「しご、にじゅう。しろく、にじゅうし」
Orcus達は、九九の練習をしていた。意外に思うかもしれないが、Ghoulの-samaなmonstersとして暮らしているraceでも、算数が全員出来た。少なくとも、足し算引き算、掛け算に割り算といった基礎的な物は完璧だった。
何故ならVitalityやManaの計算に必要だからだ。自分のVitalityで後どれくらいDamageに耐えられるか、このManaで後何回magicを唱えられるか、Martial Artsを使えるか。そういった計算が出来ないと、生き残れないからだ。
なので当然のようにOrcusにも教えていた。
因みに、九九はVandalieuがGhoulに広めたものだ。彼はGhoulが知らないだけで、Human社会では皆習うだろうと思っていたのだが、Katia達から少なくともこのContinentのHumanは九九を知らないと聞かされて驚いた。
どうやらZakkart達Champion達は、召喚された時にanother worldの知識を全て広めた訳ではないらしい。まあ、当時はDemon Kingとの激しい戦争をしていたので、childに構っている余裕が無かったのだろう。
Earthの知識や文化がLambdaに広がり定着する事を過激なまでに反対したChampion Bellwoodも、まさかジャンケンや九九を知っている者を始末して回るほど見境が無かった訳じゃないだろうし。
「ん? 暇にでもなったのか、坊や?」
ノート代わりの粘土板で文字を教えていたZadirisが、授業が終わったのかVandalieuに気が付いて近付いてくる。
「言っておくが、手伝いは要らぬぞ。このClay Golemだけで十分じゃ」
Zadirisが指したClay Golemとは、彼女や生徒達が使っている粘土板の事だ。
Lambdaでは紙は高Class品で、羊の皮を利用した洋皮紙もDevil Nestsで原始生活をしていたGhoulや、Undead集団と化していたTalosheimでは気楽に手に入れる事はcertainly、作り出す事も出来ない。
適当な植物から繊維を取って作れないかとVandalieuも試したが……流石に【Golem Transmutation】で紙を作るのは無理があると分かっただけだった。skill levelが上がったら、また試すだろうけど。
そこで地面を掘って手に入れた粘土をClay Golemにして、ノート代わりにしたのだ。木の棒をペン代わりにして粘土板に文字を刻んで、それが一杯になったらGolemに一言命令して自分を捏ねてもらい、またflatな板に戻ってもらうのだ。
将来的に、この技術を利用して陶器が作れないかと思ったが……自分で使うためならin any case、売り物に出来る程の品質の陶器を作るには粘土の質にも拘らないといけないし、焼成するための窯を組み立てなければならない事に気が付いて今は手を付けていない。
Talosheimでも陶器を作っていたそうだが、職人はUndead Transformation後monstersに破壊されてしまった親方と、immatureなままFirst Princessと一緒にElective Kingdom側に逃げた息子しか居なかったそうだし。
「いえ、そうではなくてchild同士遊ぼうかと思ったんですよ」
「child同士、か」
「ええ、child同士」
「なら、もう少し待たねばならんぞ。そうじゃ、儂とBoard Gameでもして遊ぶか?」
「Board Game?」
「うむ、王城の遊戯室の隅で埃を被っておってな」
このLambdaのBoard Gameは、上流階Classや知識人の娯楽だとされている。駒の数も多くruleも難解で、とても庶民が楽しめるものではない。
「まあ、盤が重すぎて動かせなかったそうじゃが。何でも駒の数が五十種類で、playerはそこから十一個選んで始めるそうじゃ」
TalosheimのBoard Gameも例外ではなかった。
「rule、もう覚えたんですか?」
「いや、儂もそこまで暇ではなくての」
どうやら、遊びながら覚えて行くつもりらしい。取説も盤や駒と一緒に見つかったのだろうか?
「じゃあ、もっと簡単なBoard Gameをしましょうか」
Vandalieuは、現在廃墟と化しているTalosheimの何処にでも転がっている瓦礫をGolemにすると、錬成を始めた。
「ほほぅ」
遊ぶためにmagicを使うのは、Zadiris的には「休養」の内らしく、彼女は興味深そうにVandalieuが作る物を見つめる。
まず石で正方形のマス目を刻んだgame版を作り、そして白い石から薄い円状の駒を作る。そして黒い石からも同じものを同じ数だけ作り、最後に白い駒と黒い駒を張り合わせて、完成。
「これはReversiというgameです」
そう、石で作ったReversiだった。
「駒が一種類しか無いようじゃが?」
「ええ、だからすぐ遊び方を覚えられます」
Reversiなら駒は一種類で、ruleも将棋やチェスよりもずっと簡単だ。【Golem Transmutation】で作るのも、ずっと容易い。
何より、VandalieuはReversiが得意だった。伯父familyがfamily旅行している間家に残っていた彼は、younger cousinが持っていたReversiをこっそり遊んで時間を潰したのだ。netでもやったし。
将棋とチェスは駒の動かし方を知っているくらいで、やった事は……研究所で受けた知能testで何回かやったか。certainly楽しくなかった。
「こうやって自分の駒で挟んだ駒をひっくり返して、色を変えていくgameです。勝敗は、自分の色の駒の数が多い方が勝ちです」
「なるほど、これは中々……」
カチンカチリと石の駒で、二十年以上ぶりにReversiを楽しむVandalieuとZadiris。石の駒はEarthで市販されている物よりも重いが、二人とも地味に力があるので気にならない。
一戦目は当然Vandalieuの勝利だったが……。
「やはり角を先に取った方が有利じゃな」
しかし、Zadirisは一度の勝負でVandalieuが何年も気が付かなかったReversiの定石に気が付いた。
その後、二戦目からは互角の勝負になった。
「一人遊びでは負けnoneだったのに」
「…………」
「あの、そんな可哀想な子を見る目で見ないで、同情するなら角を取らないで」
「それとこれとは話が別じゃ。勝負とは非情なのじゃ、坊や」
そのまま夢中で勝負を重ねていると――
「King、おれもやりたい!」
『面白そうな事やってるじゃねぇか。俺も混ぜろ』
「まあ、Board Gameっ。優雅ですわね、私にも教えて頂けませんか、Van -sama?」
何時の間にやら授業や訓練を終えたBlack Goblin達が集まり、それどころかInstructor役のGhoulやUndead Giantも興味深そうに覗きこみ、何時の間にかBorkusやTareaまで集まっていた。
結局この日、Vandalieuは二十近いReversiの盤と駒のセットを作ったのだった。
「っと、言う訳で今日も楽しい一日だったんですけど……俺、休んだんでしょうか?」
『楽しかったのならいいのよ』
Reversiの量産でSlightly働いた気がしなくもないVandalieuだったが、Darciaは気にしていないのか微笑んでいる。
実際、Manaを十万使ったとしてもそれはVandalieuにとって全体の一%にも満たない。休憩を取るまでも無く回復する程度の消耗でしかないのだ。
『それに、Reversiって楽しいのね。あ、そこにkaa-sanの駒を置いてね』
「はーい。じゃあ俺はここで」
カチンカチリと石の駒が耳に心地良い音を立てる。
『Mirg Shield Nationにはこんなsimpleで面白いBoard Gameは無かった。ああ、Salire、また父-sanが狙っていた角を取るのかい』
『父-san、勝負は非情なのよ』
『姉-sanと父-sanが、boneも肉も無いのにbone肉の争いをしてる!?』
「はっはっは、Borkus -dono。また私の勝ちですね」
『うおおおおっ! 何故だ、何故勝てねぇ!』
『そりゃあ……Borkusの旦那が角を取らないからだよな?』
「男が……みみっちい事なんてできるかって言って、端に駒を置こうとしないから」
『ウルセェゾ! Shut Upエ!』
「興奮すると勝てませんよ、Borkus -dono」
VandalieuとDarciaが眠った後も、Talosheimにはカチカチカチリと石の駒と盤が立てる音と、Reversiに興じるUndeadの声が聞こえていた。
もしTalosheimでカチカチという音を聞いたら、それはSkeletonのboneがぶつかり合う音では無く、近くでReversiに興じるUndeadが居るからかもしれない。
・Name: Borkus
・Rank: 9
・Race: Zombie Hero
・Level: 5
・Title: 【Sword King】
・Passive skills
Dark Vision
Mysterious Strength:7Lv
Physical Resistance:5Lv
Strengthened Attribute Values when equipped with a Sword (Large)
Strengthened Defensive Power while equipped with non-metal armor: (Medium)
Intuition:3Lv
Mental Corruption:5Lv
・Active skills
Sword King Technique:1Lv
Unarmed Fighting Technique:7Lv
Archery:7Lv
Armor Technique:7Lv
-Surpass Limits-:5Lv
Dismantling:5Lv
Commanding:2Lv
Coordination:4Lv
Instructor:1Lv
・Status Effect
片腕(解除済み)
AClass adventurer、【Sword King】BorkusがUndead Transformationした存在である。当人の死体に当人の魂が宿っているためRankもskillも高いが、Undead Transformation後戦う事も無く謁見の間を守っていたためlevelが低く、更に生前よりも弱体化している。
このworldのUndeadは、無条件に生前より強くなる訳ではない。寧ろ、弱くなる場合の方が多い。
その上Borkusは利き腕を失い、剣も刀身が半ばで砕けて使い物にならず、更に鎧もボロボロという惨憺たる有-sama。【Sword King Technique】や【Strengthened Attribute Values when equipped with a Sword (Large)】、【Strengthened Defensive Power while equipped with non-metal armor: (Medium)】といったskill効果が発揮できないconditionだった。
そのため、Rank9でありながら実際の戦闘AbilityはRank7、Noble OrcのBugoganにも負ける可能性があるconditionだった。一撃必殺の戦い方を得意としていたため、BorkusはVandalieuのBarrierを突破する事が可能であり、彼にとってはBorkusの方が脅威だったのだが。
しかし現在はVandalieuによって利き腕を治され、BugoganのMagic Swordを与えられている為、Rank通りの戦闘Abilityを取り戻している。
Undead Transformationして変化した感覚に慣れれば、強力なskillを所持しているためRankを超える実力を発揮するだろう。
Zombie Heroは、生前secondary nameを手に入れた存在が死ぬその瞬間までsecondary nameに恥じない人物だった時に生まれるmonstersだと言われている。Rankは-sama々で、現在確認されている個体で最低は4、最大は10。
基本的に既に他のUndeadと化した個体がこのraceにRank upする事はない。
God of Law and Life Aldaのtempleでは、このZombie Heroを倒す事こそがHeroic spiritに対する最大の供養であると教えている。また、Honoraryや名声を得られる事から発見されれば数多くのadventurerがその討伐を狙う事になる。
Zombie Heroはその出自故称号持ちの高価な装備品や所持品を持っている事が多く、またManaによってbone等が高価なAlchemyの素材になる事も多く、Honoraryだけではなく実入りも期待できるUndeadである。
・Skill explanation: Sword King Technique
Sword TechniqueのSuperior Skillの一つ。Sword Techniqueが10levelに到達し、更に経験を積んだ時変化する可能性がある。
Sword Technique skillから変化したSuperior Skillには、Sword Saint術、剣帝術、剣神術、魔刃術等が現在までに確認されている。ただこれらのSuperior Skillの特性やAttack Power等がどれ程違うのか、より優れたSuperior Skillが何なのかは保有者が少なくaccurateに検証できていない。
Amid EmpireではlegendのChampion Bellwoodの【Holy Sword God Technique】が最高位であると言われているが、それは政治と宗教上の問題でしかない。――BellwoodのSuperior Skillが本当に【Holy Sword God Technique】という名称だったのかも、実際は定かではない。
Sword Technique以外の他のskill、Spear TechniqueやAxe Technique、Unarmed Fighting Technique等にもSuperior Skillが存在し、こうしたSuperior Skillの保有者は最低でもAClass以上の実力者である。