Mirg Shield NationのHero【Divine Spear of Ice】のMikhailがTalosheimへの攻撃に参加し、都市に攻め込んでから何があったのか、Undead達のMemoryは穴だらけで、詳しい事は今まで分からなかった。

　自分達が殺された時の出来事であり、Undead Transformationする前の出来事であり、した直後の出来事だからだ。

　確かだったのはTalosheimの滅亡、Heroたちの敗北、そのままMikhailは王城の地下に存在するGoddess Vidaの遺産を破壊しようとしたが、遺産の守護者であるDragon Golemに重傷を負わされ、Mirg Shield Nationは撤退したという歴史だけだ。

『俺は……俺とJeena、Zandiaの嬢-chanの三人は謁見の間であのクソッタレを迎え撃った。俺は当時Talosheimに出来たAdventurer’s Guildのbranchから、ＡClass adventurerだと言われてた。Jeenaも戦争が始まる前にＡClassに昇Classした、Zandiaの嬢-chanはまだＢClassだったが、将来はＳClass間違いnoneと言われてた。

　legend Classのmagic itemを持っていようが、奴も俺と同じＡClassだ。やれると思った』

　ＡClass adventurer二人とＢClass adventurer一人の計三人で、ＡClass adventurer一人を迎え撃つ。戦力は明らかに前者に有利で、防衛はまず成功するはずだった。

　だがと、Borkusは続けた。

『結果は、知っての通りだ。俺も【Sword King】なんて呼ばれていたからな。負けるつもりは無かった。Jeena達からmagicの援護を受けて、このMagic Swordで、得意技の【Dragon Slayer】で、奴を倒そうとした。

　っが、実際には俺のMagic Swordは……竜種の首も一撃で落した俺のMagic Swordは奴の槍に砕かれていた。畜生、よくもやりやがったなと叫んで、俺は奴に殴り掛かろうとした。だが、出来なかった。へへ、何の事はねぇ、利き腕もMagic Swordと一緒に砕かれてたのさ』

　adventurerは、ＧからＳの等Classによって分けられている。それは単純な戦闘力だけでは無く、依頼の達成率や素行等も考慮されるし、Jobや所有skill等によって相性も変わる。しかし、等Classが同じなら力量に圧倒的な差は出来ない。

　しかし、ＡClassとＳClassは例外だった事をその時Borkusは思い知った。

　ＡClassは超人達が至るHeroの領域。Dragon Slayerなんて掃いて捨てるほどゴロゴロしている。だが、同じＡClassでもadventurer達には大きな差が存在した。

　常人以上超人未満のＢClassから、少しはみ出ただけの者。常人寄りの超人。ここに【Saintess】Jeenaが。

　間違いなく【超人】でHeroだが、あくまでも超【人】でしか無く、人の括りから抜け切れていない、Mythに語られるEvil God (M)やEvil God (P)と戦った神の領域に手が届く人外の存在では無い者。それが【Sword King】Borkus。

　そして、Mikhailは実際には人外の存在、ＳClass相当の力を持つＡClassだった。

『お蔭で俺は床にキスするfeather目になった。そして次に気が付いた時は、Undeadになっていた。

　そして振り返れば、そこにZandiaの嬢-chanが居たのさ。一部だけな』

　そう言いながら、Borkusは二百年守って来た謁見の間の扉を押し開いた。

　扉の向こうから、寒気がするほど冷たい空気が流れてくる。

　謁見の間には糸程の光も無かったが、【Dark Vision】を持つVandalieuやNuazaには真昼のようにはっきりと見えた。

　最初に見えたのは、謁見の間に空いた穴とその穴を塞ぐ氷の柱だ。あの穴が王城の地下にあるGoddessの遺産へと続く入り口なのだろう。

　そして、氷の柱の中に巻き込まれるような形でほそ……maybe形状的には女の人のだろうなと思うが、切り落とされた手首が一本、凍り付いていた。

「これは……っ！　お二人の姿もご遺体もこの二百年見なかったのは、Borkus -donoが弔ったのだと思っていました。ですがこれはまさか……！」

『そう言う事だ。あの忌々しい氷の向こうに二人の死体があるんだろうさ。この手は大きさから見てZandiaの嬢-chanのだろう。

　俺がやられた後もあの糞bastardと戦って、片手になってもJeenaと一緒に地下に降りた奴を追ったに違いねぇ。それで、きっと氷の向こう側でやられたのさ』

　Mikhailの異名の由来になったlegend Class magic itemのMagic Spearは、強い氷のManaが宿っていた。その力は魂すら凍てつかせるほどだと称えられ、罪人の魂を捕えれば永久に放す事は無いと謳われていたらしい。

『この氷の向こうで何があったのか、俺には分からん。分かるのは、この氷を融かす方法が無いって事だけだ。俺が砕こうとしても罅一つ入らねぇし、脂をかけて火を付けても焦げ跡一つ付やしねぇ。

　それで、お前はこの氷を融かせるのか？』

「融かせます」

　Vandalieuは、やはりすぐnod。BorkusとNuazaが話している間に調べたが、やはり氷からManaを感じる。

　Slightly Curseとは違うようだが、似たようなものなのでManaを消滅させればこの氷は瞬く間に溶けて、地下への入り口が開くだろう。

『そうか、ならやってくれ。氷の向こうに在る二人の死体が、Undeadになっているかいないかは分からんし、なっていても正気かどうかも分からん。

　だが、一言謝らねェと気がすまねぇのさ』

「分りました」

　Manaを吸うdeath attributeのManaを放出して氷を包むと、氷は高熱に晒されたように見る見るうちに融けて行く。

　数分ほどで、Zandiaの片手と地下への入り口が解放された。

「どうですか、Mikoよ」

「……二人の霊らしいshadowは見えません。ちょっと待ってくださいね、この手から何かわからないか見てみますから」

『うん？　ホーイガクって奴か？　Zakkartが元いたworldで目指していた職業だって聞いたが』

　Champion Zakkartは、Earthに居た頃法医学者を目指していたらしい。中々のインテリだったようだ。

「いいえ、Occultです」

　Vandalieuは、よっこいせと太陽に愛された褐色の肌をした、しかし今は氷のように冷たいZandiaの手を拾い上げた。

『でかいとか、重いとか、そんな事言ったら悪いんだろうな』

　【Tiny Genius】の手首は、大きかった。

　これはVandalieuが幼児だからでは無く、単純にZandiaが大きかったからだろう。

　certainly異名の通り彼女は小さかったのだろう。Giant raceとしては。

　Giant raceの成人maleの平均身長が二meter七十センチで、femaleでも二meter六十センチ。ZandiaはBorkusに「嬢-chan」と呼ばれるぐらいだからまだShoujoだった可能性が高いが、maybe二meterは超えていたのではないだろうか？

　なので、Vandalieuの基準では細いとか小さいとかは言い難い大きさだったのだ。

『まあ、それはin any case残留思念を見てみよう』

　Death-Attribute Magicは、死体の一部から残留思念を読み取る事が出来る。ただ、死体からしか読み取れないし読み取れても意味をなさないものも多いので、今まで余り使う機会が無かったのだが。

　冷たいZandiaの手の平に額を押し付け、瞼を閉じる。

　すると、瞼の裏に一目で業物と分かる槍をthrust出す、男の姿。その後ろに、砕けた剣の柄を握ったままblood塗れで倒れている男。

　倒れる。ダメ押しのつもりか、何度も槍が刺さる。かすむ視界の隅に、既に倒れている褐色の肌をした女の姿。そして闇に閉ざされる数瞬前に、地下に降りて行く男の姿。

　槍を持った男がMikhailで、blood塗れで倒れている男がBorkus。女がJeenaだろうか。

　しかし、残留思念が正しいならZandiaとJeenaはBorkusが殺された後に、Mikhailによってこの謁見の場で殺されている。Borkusがconjectureしたように、氷で閉ざされていた地下には降りていない。

　しかし、だったら何故死体が無いのか？　単にこの手首以外氷に閉じ込められず保存されていなかったとしてもboneは残るはずだ。それにBorkusは白bone化するずっと前にGiant raceのZombieとして蘇っている。ZandiaとJeenaの死体が在れば、気がつかないはずが無い。

　誰かが持って行った？　boneも残らないように処分した？　だったら何故この手首と、何よりBorkusの死体を放置した？

　……一人で考えても答えは出ない。

「二人はMikhailが地下に行く前に死んだように残留思念では見えました」

『何だと！？　どういう事だ、じゃあ二人は地下には居ないのか！？　確かに、出て来る-sama子は無いが……』

「では、御二人は何処に！？」

　それまで地下の穴からZandia達が出て来ないかと覗きこんでいたBorkusとNuazaが驚いて振り返るが、Vandalieuは「さあ、分りません」と答えた。

「俺が見たのは、この手首が切り落とされた時の残留思念ですから。手首を切り落とされた時混乱したのかもしれないし、現実では無く頭に思い浮かべたdespair的な未来の想像が焼きついただけかもしれない。

　もし俺が見たのが真実だったとしても、実はあの後息を吹き返した二人がMikhailを追いかけたのかもしれないですし」

『つまり、とりあえず行ってみないと分からない訳か』

「はい。ところでこの先は――」

『知らねぇ。何せ聖域だからな』

「ですよね」

「ですが、確かめるには降りるしかありません。行きましょう、Borkus -dono、Mikoよ」

　聖域だから入る事はまかりならんとか、そういう事は無いらしい。それとも、もうMikhailが入った後だから構わないのか、それともMikoだからだろうか？

　穴の淵から覗くと、そこには壁にthrust立てられるように棒状の石が生えていて、Spiral階段になっていた。

　Lemureを一体作って先行させてから、Vandalieu達はSpiral階段を下りて行った。そして下に着くと、何処かtempleの-samaな作りの通路が続いていた。

　特段Trapや試練等の障害も無かった。Goddessは設置したDragon Golemに余程自信があったのか、それともMikhailがDragon Golem以外の障害を全て破壊したからなのかは、分からない。

　ただ、扉という扉が氷で閉ざされているのには辟易したが。

「聞いた話だと、重傷を負ったMikhailは命からがら逃げだしたそうですけど、結構余裕があったんでしょうか？」

　逃げる途中で通路を氷で閉ざして行くなんて。

　そう言いながらdeath attributeのManaで氷のManaを抜いて融かして行く。難しい作業では無いが、それを何十回と繰り返すと、どうしても飽きが来る。

「残してきたMagic Spearを奪われる、若しくは自分が半ば破壊したDragon Golemに止めを刺して遺産を何者かが手に入れる事を危惧したのかもしれませんね」

『ん？　そういやぁ、この氷も謁見の間の氷もあの糞bastardが逃げ出した時に作ったんだよな？　どうやって作ったんだ、奴はMagic SpearをDragon Golemに投擲して、そのまま逃げたんだろ？』

「あ、そういえば……」

　今Vandalieuが融かしている氷は、灼熱の業火でも溶けない魔氷とでもいうべき氷だ。とても普通のattribute magicで作れるとは思えない。

　そしてこの魔氷はMirg Shield Nationの国宝だったMagic Spearを持っていたからこそ、作る事が出来た代物だ。

　なのに、どうしてMagic Spearを失って逃げ出したMikhailが魔氷で扉や入口を閉じる事が出来たのか。

『二百年以上気がつかなかった俺が言うのもなんだが、おかしいよな？　どういう事だ？』

「この氷は実はMagic Spearの力では無く、Mikhail個人が編み出した特殊なmagicの産物と言うのはどうでしょうか？」

「あと、Magic Spearの所有者だけはこの氷を透過する事が可能で、進む時に背後から敵が来ない-samaにしていたとか？」

　NuazaやVandalieuはconjectureを口にするが、どうもしっくりこない。

「とりあえず氷が融けたので進みますよ。ちなみに、二人の霊は居ません」

『ああ。あいつ等、何処に行っちまったんだろうな』

　しかし、conjectureや推理はin any case三人は先に進んだ。彼らの目的は当時の真実を知る事ではなく、ZandiaとJeenaのUndead、若しくは死体、霊を発見する事だ。

　疑問は尽きないし好奇心は刺激されるが、考えるのは後でいい。

『ところで、気に入ったのか？』

　BorkusはVandalieuが両腕で抱きかかえるようにしているZandiaの手首を見下ろして聞いた。

「気に入ったというか……上に置いておくのもなんですし」

　埃やらなんやらで汚れた床に放置するのもstealthなかったし、BorkusもNuazaも受け取ろうとしなかったのでmagicでDecompositionを止めて、何となく持ってきただけで特に意味は無かったのだが。

　しかし Borkusは話を止めようとしない。

『気に入らねェのか？』

　どうやら、イエスかノーか以外の選択肢が存在しないらしい事に気が付いたVandalieuは、Zandiaの手首を見つめ直し、改めて観察した。

　褐色の肌はきめ細かく、一見たおやかな手だが指には幾つかoctopusが出来ている。きっと杖を携えて戦って来たから出来たものだろう。切断面から香るbloodの匂いが、二百年の時を超えて甘く鼻孔をくすぐる。

「気に入るかいらないかでいえば、気に入りましたけど」

『手首のあたりが気にならねェか？　そこが太いだの形が悪いだのなんだの愚痴ってたんだが』

「太さ？　形？」

　言われて再度手首を見てみるが……多少太かったり形が悪かったりしても、Vandalieuに見分けが付く訳がない。originallyのSizeが異なり過ぎるのだ。

「気になりませんけど」

『おおそうか、嬢-chanは年上好みだったがそれを聞いたら喜ぶぜ！　じゃあ、嬢-chanをよろしくな』

「……はい？」

　何言ってるんだ、こいつ？

『おう、良い返事が聞けてうれしいぜ』

「いや、そうじゃなくて、俺はただ聞き返しただけです。宜しくなってなんですか？」

　なんだかこのやり取り、前にもあった気がする。そう既視感を覚えつつ、Borkusにどういう事かと説明を求めた。

『いやな、ほれ、ここまで来ても二人の死体が無いし霊も見えないんだろ？　何かの奇跡で二人が生きて脱出したっていうなら嬉しいが、何処かの誰かが二人の死体を運び出したのかもしれねぇ』

　二人はHeroで、特にZandiaは第二Princessだ。Mirg Shield Nation軍が首を晒すために持ち帰った可能性も十分にある。Katia達の話では聞いていないが、単に今の時代に遺体を晒した事が伝わっていないだけかもしれない。

『だとするとだ、お前-sanは二人の死体を探してくれるわけだよな？』

「…………まあ、時間はかなりかかると思いますよ。俺、暫くMirg Shield Nationに戻るつもり無いので」

　Borkusからの頼みは二人を魔氷から解放する事なので、実際には魔氷を全て融かした段階で達成と見なしていい気がするが、彼は「俺はそんなんじゃ、納得しねぇ」と目で語っている。

　それに、二人のHeroの遺体をMirg Shield Nationから取り戻すのは悪くない考えのように思えたのでそう同意すると、Borkusは半分しかないlipsを釣り上げる。

『おう、それでいい。

　だとしたら、追加報酬があって然るべきだろ。だからお前が嬢-chanとJeenaの死体を取り戻したら、そのままものにしちまえばいいって話だ』

「はいぃ！？　Undeadにしろって言う事ですか！？」

　そう驚くVandalieuの声が通路に木霊する。しかし、驚いているのは彼だけだった。

「おお、なんと素晴らしい思い付きでしょうか、流石Borkus -dono」

　Apprenticeとはいえ神職に在ったはずのNuazaは、何故か感動に打ち震えていた。その体に水分が残っていたら、涙を流したに違いない。

「Zandia -samaはTalosheimの第二Princess、Jeena -samaはChurch of Vidaの最高責任者。このお二人とOracleのMikoの結びつきは、Oracleの通り我々に繁栄と栄光を齎す事でしょう！」

「あの、政略結婚か何かと勘違いしていませんか？」

　二人とも高い確率で死んでいるんですが、しかも今あるのはZandiaの手首だけなんですが。

『問題ネェだろ、その手首左手だし』

「おお、指輪の交換も可能ですな」

「いや、可能だからってなんだというんですか？」

　結婚できますねって？　確かEarthのJapanには、一部だが遺族が未婚のまま死んだ親族を結婚させるという文化が存在したと覚えているが、Zakkartはそれもこのworldに導入したのだろうか？

　しかし Nuazaは話を聞いてくれない。

「Jeena -samaとZandia -samaもMikoの仲間に加わり、いずれAlda神とそれに従う者共を打倒する手伝いが出来るのなら、喜んで不死者として蘇る事でしょう」

『はっはっは、そしたらMirg Shield Nationと三人で再戦だな！』

「いやいや、色々混じってますし。Oracleの方はin any case、VampireのTrue Ancestorの予言は関係無いですからね」

　この二人、もしかして耳が高い場所に在るからchildの声は聞こえないとでもいうのだろうか？

「俺が聞きたいのは、死者への冒涜とか、HeroのHonoraryを汚すとか、そんな風に思わないんですかという事です」

　God of Law and Life Aldaの事は除外するにしても、EarthやOriginでは死体をUndeadにするのは死者への冒涜、神に対する背信であるという価値観が強かった。

　Earthでは現実にUndeadは居ないが、宗教的なタブーとして昔からその手のMythやlegend逸話民話には事欠かない。

　フィクションでもそうだ。数々の作品で死者をrevivalさせる試みは失敗どころか、実行者も破滅して終わっている。悪役がprotagonistに「お前の大切な人を生き返らせてやろう」と言っても、protagonistは悩んでも最終的にはその誘惑を跳ね除け、未来に進むものだ。

　間違っても「マジっすか！？　是非お願いします！」とは言わない。

　Originではmagicが存在し、Undeadも存在したのでよりその傾向が強い。法律でUndeadを作ってはいけない、試みるだけでも重罪とされている程だ。

　Vandalieuを実験動物にしていた軍事国家の研究者たちは、その辺りの倫理観が壊れていたが。

　そして実際、VandalieuもUndeadを作る事に忌避感は無い。そうで無ければ母親を生き返そうとしたり、Bone Man達を作ったりはしない。

　だが他の人なら嫌がるだろうなと、想像する感覚を忘れてはいなかった。

　だから神職にあったNuazaや、生前からの仲間だったBorkusの手前JeenaとZandiaをUndeadにするのは無理だろうなと思っていたのだ。

　無理にUndeadにして今の関係を悪化させたくなかったから、考えもしなかった。二人がUndead Transformationしていたら、scoutぐらいはしただろうが。

　なのでBorkusが全く逆の事を言い出し、更にNuazaまで同意するどころか喜んで勧める-samaな事をいうので驚いたのだ。

『オイオイ、Undeadに何を言ってんだ』

「そうですよ。そもそも、Goddessご自身が死したChampion ZakkartをUndead Transformationさせて蘇らせているではありませんか」

「あ……そういえば、そうでしたっけ」

　だが確かに、Mythではそう伝わっていた。どうやら、Goddess VidaはUndeadに関して寛容らしい。……この場にいるのがUndeadのbelieverだけなので、生きているbelieverがどれくらい寛容なのかまでは分からないが。

　しかし、そういった事はTalosheimから出てHuman社会に出た時に、慎重に見極めればいい事だ。

「まあ、それでいいなら俺は文句ありませんけど」

　【Sword King】だけでなく、【Saintess】や【Tiny Genius】のUndeadまでallyに成ってくれるなら、頼もしい事この上ない。だから納得さえすれば二人のUndead Transformationを断る理由は無かった。

『ほれ、頑張れば良い女が手に入ると思えばやる気も出るだろ。男ってのはそういうもんだ』

「俺、まだ三ageにも届かないんですが」

『三つ子の魂は百ageと変わらないって言うだろうが』

「……俺の知っていることわざの意味と違う」

「まあまあ。Miko、御二人とも大変お美しい方でしたよ」

　いや、いくらお美しくても今頃boneしか残ってない可能性の方が高いんですけど。

　そういおうかと思ったが、この二人には何を言っても無駄だろうから黙っておく事にした。

　Hero色を好むと言うが、ちょっと土気色でも色は色なのだろうか？

　そんな和やかに進んで行くと、Giant raceのBorkusと比較してもGiantな扉が現れた。当然氷に閉ざされているが、扉の一部が砕かれていて、中を氷越しに見る事が出来た。

『あれがDragon Golemか。流石あのmonsterを痛み分けとはいえ追い返しただけの事はある。こうしているだけで寒気がするぜ』

　扉の向こうは、上の謁見の間がダース単位で入りそうな程大きなspaceに成っていた。その中心に、Giantな黒金のDragonが今も立ちはだかっていた。

　氷越しに見えるその姿は見るからに痛々しい。雄々しかっただろう頭部や鞭のように撓っただろう尾は、半ばで砕け床に転がりただの金属塊と成り果てている。Right Armも肩から抉り取られるように捥がれ、そして胸の中心に槍がthrust刺さっていた。

　体中に深い罅が入り、今にも崩れそうに見える。

「ええ、中に入るのは止めた方がいい。この扉の氷を融かしたら、死にます」

　しかし、それで尚あのGolemはまだ稼働している。そして、あの壊れかけのGolemは自分達を殺せる。

　扉の氷を融かせば、死ぬ。Vandalieuの【Danger Sense: Death】がそう伝えて来ていた。

「この向こうにお二人が居る可能性は？」

「Undead Transformationしていたら、Golemに破壊されていると思います」

『死体なら、氷の中かもな』

　あの壊れかけのGolemがUndead TransformationしたGiant raceを攻撃しない可能性は低いように思えるし、roomの中はMikhailと戦ったからか、氷だらけだ。その中のどれかにZandiaとJeenaの死体が入っているのかもしれない。

「あのGolemに襲われずに入る方法とか、伝わっていませんか？」

「確か、国王-samaなら知っていたと思いますが……」

　Nuazaは首を横に振った。どうやら、国王はUndead Transformationしなかったか、二百年の間に塵に帰ったらしい。

　Vandalieuも、流石に霊が存在しなければ死者の話を聞く事は出来ない。

「じゃあ、強くなってあのGolemを倒せるようになるまでお預けですね」

『だな。俺も利き腕とMagic Swordもnoneじゃあ無理だ』

　Golemを倒しても、中に二人の死体が無い可能性も高い。しかし、有無がはっきりすれば次に探す場所を考える事が出来る。

『まあ、死体が無ければGoddessの遺産で作って、前渡しするって手もあるな。魂の方は、SpiritualistならSpirit Communication術で呼び出せるんだろ？』

「俺、Spiritualistじゃないので一度も見た事が無い霊はSpirit Communication術でも無理です。ところで――」

「何と、そうだったのですか！　私達の-samaなUndeadに親しい-sama子でしたので、てっきりMikoはSpiritualistのJobをお持ちなのかと思っていました」

『ああ、驚きだぜ。じゃあ、何で霊が見えたり嬢-chanの手首からMemoryを見れたりするんだ？』

「それより！　……Goddessの遺産で死体を作るって、どういう事ですか？」

『何って……Goddess Vidaの遺産は不完全な死者Resurrection Deviceだからに決まってんだろ』

　その昔、Goddess VidaはVampireを生み出すために死したChampion Zakkartを蘇らせようとした。しかし、幾ら生命を司るGoddessといえど、死者を蘇らせるのは容易な事では無かった。

　そのためGoddessはいくつかの試行錯誤を行った。その中の一つが、このTalosheimの地下にある遺産だ。

　このResurrection Deviceによって新たなBodyを創り出し、Zakkartを生前の姿そのままに蘇らせようとした。だが、Bodyは確かに出来たが魂の無いBodyは、生命では無くただの肉の塊でしか無く、生命のGoddess Vidaの力を受け付けなかったのだ。

　この装置はただ蘇生させたい者の、傷一つない死体を創り出す事しか出来ない。そう結論付けたGoddessはこの装置をsealedした。不完全であっても将来自分の子等の役に立つかもしれない、しかし Demon KingのRemnantsに悪用されない-samaにと自ら命を吹き込んで創ったGolemを番人にしたらしい。

「それが、あのDragon Golemの向こうに在る……それは素晴らしい」

　蘇らせたい者の、傷一つない死体を創り出す装置。

　それが本当なら、この装置で創りだした死体にVandalieuが霊を宿らせれば、完全な蘇生になるのではないだろうか？

「Nuaza、俺が予言のMikoでいいので、あの装置を使ってもいいですか？」

　何としても、手に入れよう。

　そしてkaa-sanを生き返す！

・Name: Nuaza

・Rank: ４

・Race: Lesser Lich

・Level: １００

・Passive skills

Dark Vision

Mysterious Strength：２Ｌｖ

Physical Resistance：２Ｌｖ

Spirit Form：１Ｌｖ

Mental Corruption：３Ｌｖ

Augmented Stamina：３Ｌｖ

・Active skills

Life-Attribute Magic：２Ｌｖ

No-Attribute Magic：２Ｌｖ

Mana Control：１Ｌｖ

Club Technique：３Ｌｖ

Shield Technique：２Ｌｖ

Armor Technique：２Ｌｖ

Stonemason：２Ｌｖ

　LichとはUndead Transformationした瞬間から生前同-samaにmagicを行使する事が出来るUndeadの総称である。そのため、magicの奥義を究めたMageが自らUndead Transformationするような個体も居れば、ほぼ偶然思考AbilityとManaを持ったままUndead Transformationした、初心者と同程度にしかmagicが使えない個体も存在する。

　Nuazaの場合は後者寄りの個体で、彼は生前Apprentice Cleric-warriorで、Undead Transformationした後も修行や研究に明け暮れた訳では無い。結果、生前そのままの実力となっている。

　そのため、LesserとはいえLichでありながらWeapon Equipmentでphysical battleをした方が強いという妙なUndeadになっている。

　ミイラ状になっているため皺だらけでまるで老人の-samaだが、実は享年は若く、十代半ばの少年だった。そのためTalosheimのUndeadから今でも若造と呼ばれる事がある。

　因みに【Stonemason】skillはUndead Transformation後に習得したskill。Undead Transformation後、二百年かけてMirg Shield Nation軍に破壊されたtempleの修理をしている内に習得した。

　Lesser LichがRank upするためには、level以外に４level以上のmagic skillが一つ必要である。