Vandalieuが【Sword King】Borkusのscoutの為Nuazaと王城に向かっている間、彼をよく知るZadirisやVigaroと言ったSam以外の主要memberが、Talosheimの建物のある一室に集まっていた。
「馬車から離れられないSam -donoを除き、皆集まったようじゃな」
「それでZadiris、私達を集めて何をするつもりですの?」
「accurateには、お前は呼ばれていないはずだが」
自らEntから削り出した扇で口元を上品に隠しているTareaは、半眼に成っているBasdiaの視線を受けて「あら」と小さく笑う。
「だって、Van -samaをお慰めするためのtactics会議と聞いては聞き逃せませんもの」
「むー、そんな事を言った覚えは無いのじゃが、何処から聞きつけたのやら。まあ、いいわ」
Zadirisは本当ならVandalieuの事情……前世以前の事や神や百人のReincarnatorについて知っている者のみで議論するつもりだったが、TareaにはVandalieuもかなり気を許しているし、自分達が発言に気を付ければ問題無いだろうと考え、このまま会議を始める事にした。
「さて、今日集まってもらったのは坊やを休ませる必要があると知ってもらうためと、坊やを休ませるために協力して欲しいからじゃ」
Zadirisはそう議題を口にしたが、まず一堂に広がったのは困惑だった。
『休む、ですか? Bocchanは毎日よく寝ていますけど』
『うん、いつも熟睡よ』
Samの代行として出席しているSalireとRitaが口々にそう言う。実際、Vandalieuは二人の言うようによく寝ている。寝返りも打たず寝息もとても穏やかに。
思わず脈を取って死んでいないか確かめた事は、二度や三度では無い。
「そうだ、Zadiris。Vandalieuに疲れた-sama子は見られないし、そもそも疲れたのなら自分から休みたいと言うに決まっている」
「そうだな。sauce作りの時も保存食作りの時も、いつもと変わらない-sama子だったぞ」
VigaroとBasdiaの言う通り、Vandalieuは疲れたような仕草も見せず、表情も浮かべず。そもそも「疲れた」とか「休みたい」とか口にする事も無い。
ため息をつく事も多いが、それは疲れというよりもままならない現実に対しての物の方が多いし、そもそも静かに息を吐くだけなので、溜め息を吐いた事を誰にも気がつかれない事の方が多い。
『それに皆-san Vandalieuを大事にしてくれているもの。確かにあの子は頑張り屋-sanだけど、無理はさせていないと思うわ』
この時起きていたDarciaも、Salireに通訳してもらう事で会議に参加している。
通訳越しに伝わってくるDarciaの信頼に、「む」っと小さく呻いてZadirisは首を横に振った。
「その信頼を裏切って済まぬが、儂らは坊やに無理をさせておる。
この前、ふざけ半分に坊やの肩を揉んでやったのじゃが……硬かった。その上、嫌がるどころか『極楽』と言ってそのまま眠りかけたのじゃぞ」
「何を言い出すかと思えば、肩揉みが上手い事の自慢ですの? 誰だって肩を揉まれたら思わずほっこりしますわ」
「年寄りは口を開く前に五秒考えい。思い出せ、坊やはもうすぐやっと三ageになるageなのじゃぞ」
そうZadirisが言うと、全員がはっとした。
肩揉みが気持ち良いと感じる、つまり肩が凝っている幼児。……普通その年のchildは、肩なんて凝らないのに。
「あと、思い出してみよ。坊やは一日の間に何をどれくらいしているのか。ちなみに、一日最低でも四時間はAlchemyの修行を止めようとせん」
ゴリゴリと擂鉢で素材を磨り潰し、混ぜ合わせ、捏ねてManaを込める修業を一日四時間。
「……胡桃や香草のsauceや、ドングリ等の木の実でクッキー作りを皆としているな。塩が無くなったから、代わりになる材料が無いかと悩んでいた。
石臼型や擂鉢型のGolemで、あまり時間や労力をかけずに作る工夫はしていたが……」
おしゃべりしながら作業してそれなりの時間。
「移動中は私達の世話をしてくれましたわ。それに、Lemureや虫Undeadで周囲を警戒して、何より道を作ったり戻したり。
今では木から材木を作ったり、建物の壊れている部分を治したりしていますわね」
『それに、night遅くまでNo-Attribute Magicの練習もしてるわ。【Telekinesis】で細かい作業をして、Mana Control skillの練習も兼ねて』
『ええっ!? Bocchanって朝早くから起きてDeath-Attribute Magicの修行もしてるじゃない!』
『そんな、じゃあVandalieuはいつ寝てるの!?』
「そう言う訳じゃ。坊やは【Abnormal Condition Resistance】skillを持っておるからな、過労も睡眠不足も耐えられてしまうのじゃろう。【-Surpass Limits-】まで持っているようじゃし」
Zadirisの言う通り、Vandalieuが持っているskillがあれば幼児のbody partでも過労に耐えられる。本人が無理をしているという自覚を、軽くしてしまう程。
resistance skillのお蔭で疲れていても普段通り動けるので、「自分はまだ元気なんだ」と思ってしまう。そのせいで生まれてから成長に悪impactが無いようにと、普通に取っていた睡眠も眠気に耐えようと思えば耐えられてしまうので、「これぐらい寝れば十分なんだ」と次第に短くなっていく。
ただresistance skillはあくまでも耐えられるだけで、Fatigueしなかったりすぐ回復したりする訳では無い。なので実際はFatigueが溜まっている。
「それに……今になって思い出したが、Vanはemotionsが表情に滅多に出ない。口調や仕草や雰囲気である程度分かるが……」
そして溜まったFatigueが表情に出るという事も、Basdiaが言っているように殆ど無い。それに顔色は常に白すぎるほど白いのだ。
美白とかそういうconditionでは無く、まるで蠟を塗ったような白さなので常に顔色が悪い。そのため顔色から健康conditionを察する事が出来ない。
そしてDarciaやSam、SalireやRitaもVandalieuの過労については気がつかなかった。彼女達は肉のbody partを持たないUndeadであり、Fatigueを感じないからだ。
psychological Fatigueならin any case、Body的なFatigueはUndeadになってまだ三年と経たないSalire達も、既にその感覚が思い出せなくなっている。
更にDarciaは一日の内半分以上をremainsの中で眠って過ごしている。何時どれくらいVandalieuが休んでいるのか、把握できなくても仕方ない。
「ぬぅ、なら何故Vandalieuは自分から休もうとしない? 確かに旅の間はあいつが休む余裕は無かったかもしれん。だがここ数日は違う。
それに、旅の途中で余裕が無かったとしてもあいつが一日休むくらいは出来た」
Vigaroが唸るように、Vandalieuは休もうと思えば休む事が出来た。皆に「今日は疲れたので休みたい」と言えばいいのだ。
何故なら彼は今や真の意味でGhoulのKingであり、communityの頂点に存在しているからだ。
VigaroやZadiris、TareaにBasdiaといった主だったGhoulはcertainly、今では誰もがVandalieuをGhoul Kingだと認めている。
Mountain Range越えの旅はVandalieuが道を作らなければ進む事が出来ないが、monstersが比較的襲って来ない場所を選べば一日くらい休んでも問題無いし、誰からも文句も出て来ないだろう。そもそもVandalieuが居なければGhoul達がMountain Rangeを越えるのは不可能なのだから。
いや、Vandalieuが居なければ今でもBugoganに囚われたままだった女や、今頃襲撃を受けて集落を滅ぼされていただろう者達が殆どなのだ。文句を言える道理はない。
しかし、Vandalieuの口から休みたいと言う言葉は出て来ない。
「確かに。何故じゃろう?」
その点はZadiris達には理解が及ばないところだった。それは彼女達Ghoulがoriginally怠惰な性質を持つraceだからだ。「休むな、訓練を続けろ、働け」と言う事はあっても、「そろそろ休め、一息入れろ」と言う事は殆ど無い。
Ghoul達は言われなくても休むし、疲れたら自分から言うからだ。その点はGhoulが半ばmonstersである証拠でもある。
『うーん、父-sanが馬車になってからしばらくは昼寝もしていたんだけど……』
『やっぱりresistance skillのせいかしら。resistance skillを生まれつき持っているraceは、そのせいでそのresistance skillが抑えるStatus Effectの常識が危うくなるって誰かに教えてもらったような……』
Darciaは熟考した結果、そうconjectureした。
Dark ElfであるDarciaは、生まれつき【Magic Resistance】skillを持っていた。攻撃magicから受けるDamageや、magic由来のStatus Effectにかかり難く、かかっても治りやすくなる。
そのため自身の【Magic Resistance】を過信して大火傷を負ったり、逆に他raceとの戦いで敵を生け捕りにしようと「この程度のmagicなら直撃しても死なないだろう」と術を放ったら目標が肉片になってしまったりといった事が、少なくなかったらしい。
そのため全てのDark Elfはchildの内に【resistance skill】について、skillが無ければどれ程のimpactを受けるのかも含めて教えられるのだ。
しかし、Vandalieuはそれを教えられていない。なので、【Abnormal Condition Resistance】があるから耐えられているだけなのを「意外と疲れてないな」と勘違いしている可能性が高い。
『だから自分から休もうとしないのよ。
それに、もしかしたら今は緊急事態だとか非常事態だと思っているのかも。私が死んでから、色々あったから……』
母親である彼女が殺されてから生き延びるのに必死だったし、その後は復讐を実行しようとしていた。結果的にGhoul達と行動を共にする事になったが、Zadiris達に会った当初は目的のskillを習得したらDevil Nestsから旅立つつもりだったので、修行を頑張った。
そしてNoble Orc攻略にMountain Range越え、移住だ。確かに非常事態の連続である。
いくつかの作業では、Vandalieuは直接body partを動かして働いた訳では無いから、「働いた」という印象は薄いかもしれない。
しかし、Manaを使うと実際にFatigueを覚える事をこの場にいる全員が知っている。
「Van -samaが疲れているのはよく分かりましたわ。それでは休んでほしいと一言、私達の方から言えばよいのではなくて?」
Vandalieuに休養が必要だという認識は十分共有された。だが、そのための手段はとても簡単なのではないだろうか。そう言うTareaに、Zadirisの首は縦では無く横に振られた。
「それぐらいなら儂がもう言っておる。
しかし、あまり聞いてくれんのじゃよ」
休みを勧めるZadirisの言う通り、Vandalieuも「まだやれるのに」と言う感じだったが一応Alchemyの修業をそこで中断する。
しかし横になりながらDeath-Attribute Magicの修行をしていたり、気晴らしに散歩をしているのかと思えばTalosheimの壊れた建物を必要も無いのに修理していたりと、自分から進んでやる事を考えて勝手に実行しているのだ。
他にもBlack GoblinやAnubisのchildと遊んでいるかと思えば勉強を教えていたり、Life-deadの世話をしていたりと、殆ど休まない。
Undead達の中で唯一levelが100に到達した後Rank upしていないBone Manをどうにかして強くできないかと、妙な実験をしている事もある。
「そう言えば、私もVanから三ageになったらUnarmed Fighting Techniqueを教えて欲しいと言われていた。三つの頃から習うと達人になれるという言い伝えがあるとかなんとか」
「何っ!? 何故我では無くBasdiaに言うのだ!?」
『明らかに腕の長さが違い過ぎて、Vigaro -sanの技は覚えられないからでは? GhoulのUnarmed Fighting Techniqueって、男と女で全く違うんだって教えてくれたのはVigaro -sanですよ』
「Vigaro、少し黙っておれ。Basdiaはもし教えるのなら上手い事を言って、坊やを休ませるのじゃぞ。
そういう訳で皆よ、坊やに休みを取らせるには策を練らねばならん。若い者を如何に訓練漬けにするかで頭を悩ませた儂が、まさか休養を取らせる事にもwisdomを絞らなければならんとはの」
そして、Vandalieuが王城に行っている間にZadiris達は、どうやってVandalieuを休ませるかについて話し合ったのだった。
VandalieuはNuazaの案内で、王城の崩れた門をやや苦労しながら潜った。
「……階段の高さが幼児には優しくない」
maleで平均身長二meter七十センチ、femaleで平均二meter五十センチのGiant race仕-samaの建物は、つくづくVandalieuには優しくなかった。
階段を上るだけでちょっとしたアスレチックになってしまう。
「すみません、他raceの方用の階段はご覧の通り瓦礫に埋まっていまして」
そう言うとNuazaはひょいと、boneと皮だけの腕でVandalieuを持ち上げる。Lich……accurateにはLesser Lichと化した今でも、生前持っていた【Augmented Muscular Strength】skillが変化した【Mysterious Strength】skillは失っていないらしい。
「今まで使わなかったから後回しにしてましたけど、王城も出来るだけ早く直した方がよいですね」
Darcia達が聞いたら「止めて!」と止めただろう事を言い出すVandalieuだが、Nuazaは「Mikoのご都合に合わせてくだされば、何時でも構いません」と言った。
「確かに直していただければ幸いですが、武官もcivil officialも居ない城ですから。それに、後数百年は崩れないでしょうし」
Nuaza達TalosheimのUndeadにとっては、王城はGiantな祖国の墓標という認識だった。直してくれれば嬉しいが、それはVandalieu達の予定に食い込む事になってまでして欲しい事では無いようだ。
激しい戦闘の後二百年が経った今も荒廃し多少崩れてはいるが、Dungeon産の石材で作られた王城は変わらずに聳えている。Nuazaが言うように、数百年後でも今と変わらず城は在るだろう。そう思わせる存在感があった。
「……分りました。余裕が出来たらにします。
それで、Borkus -sanは?」
「地下に続く隠し階段がある謁見の間へ続く扉の前に居るはずです。彼は二百年、あそこから一歩も動こうとしないのです」
scoutに行く前に、【Sword King】Borkusがどんな人物だったのかはNuazaを含めたUndead Giant達から聞いておいた。
曰く、TalosheimのHeroたちの中で唯一Undead Transformationした存在で、現在のUndead Giantの中では最強の存在らしい。
その人格は――。
『仁義に厚く人情家で陽気、酒を奢りたがるくせに自分は酒にweak。女の魅力は胸の大きさ、男の魅力はmuscleだと言って憚らない人でした』
とは、Giant raceの中ではインテリ派だったらしいNuazaからの話だ。
他の情報提供者からの話は――。
『ハゲテタ!』
『強イ! 凄イ! 強イ!』
『奥-sanの愚痴と娘の自慢話が長い。ウゼエ、う゛ぜえええええげどい゛い゛やずう゛ううぅっ!』
結論、良い人っぽい。
「俺、muscleに自信ないんですけど、『一昨日来い』とは言われないでしょうか?」
「それは無いでしょう。それを言うなら、私はboneと皮だけですよ」
「それもそうですね」
そして罅割れた壁や砕かれたreliefのfragment、折れた柱の破片が転がる城内を進むと、程なくして謁見の間に辿り着いた。
当時は重厚さと豪華さを併せ持っていただろう扉の残骸の代わりだというように、【Sword King】Borkusはそこにいた。
Giant raceの中でも3meterと大柄な体は、bloodの気の失せた肌を内側から大きく盛り上げるmuscleで覆われ、Undead Transformationした今も強烈なsignを放っている。
【Divine Spear of Ice】のMikhailとの激しい戦いでRight Armを失い、Giantな両手剣は半ばから折れているがそれでもBorkusは強さを失っていない。
そう【Appraisal】を使うまでも無くVandalieuは確信した。常にActivateしている【Danger Sense: Death】が、彼に「こいつを怒らせるな」とWarningを鳴らしているからだ。
『templeの小僧かぁ……なんだ、その妙なガキは?』
頭の右半分がboneだけになっている【Sword King】Borkusは、胡乱気な視線でVandalieuを睨みつけた。その声には警戒が強く込められていて、彼が【Death-Attribute Charm】skillの効果に抵抗した事が分かった。
「この方は【Ghoul King】のVandalieu、OracleのMikoです」
『何? ぐーるきんぐだと? Dhampirじゃなくて、GhoulのVariantか。女でガキがKingとは、この妙な雰囲気といい、ただ者じゃないな』
「いえ、GhoulじゃなくてDhampirです。それに男です」
『そうかい』
急いで誤解をcorrectionするが、BorkusはVandalieuに「ただ者じゃない」と言いつつも、あまり興味は無いらしい。
『何を考えてこんな所に来たかしらねぇが、俺はお前が何をしようが興味はネェ……住みつくなり盾国の糞bastard共の取りこぼしを持って行くなり、勝手にしろ』
ガチャリと、折れた剣を左肩に担ぐようにしてVandalieuを見下ろすBorkus。リラックスしているようにも見えるが、何かあればその剣を一瞬で振り下ろすだろう。
その態度からは、やはり【Death-Attribute Charm】のimpactを受けているようには見えない。寧ろ、彼の警戒心を駆り立てているだけのようだ。
『ここまで効果が無いとは思わなかったな』
Vandalieuも、【Death-Attribute Charm】が全てのUndeadに効果を発揮するとは思っていなかった。抵抗される可能性も当然考えていた。
しかし、考えてはいたがその場合どうすればいいか具体的な答えは出なかった。
敵になるなら魅了できなくても、倒す方法を考えればいい。
戦力が欲しいなら、他の方法を考えればいい。
でも、不干渉を宣言して協力を拒絶する場合はどうすればいいのか。
(普通に交渉するしかないんだろうな)
まあ、そこに行きつく。
「Borkus -san。俺は、あなたに協力して欲しい事があります」
『悪いが断る。こっちには、やる事があるんでな』
撃沈。どうやらscout交渉は失敗したようだ。
イヤイヤ、まだだ。諦めるには早い。
「Borkus -san、俺はDeath-Attribute Magicという今までこのworldには存在しなかったmagicを使う事が出来ます。それを使ってあなたの望みを叶える事が出来るかもしれません」
交渉とは、相手が望む物を提示しそれを提供する代わりに、こちらの希望を叶えてもらう事だ。そのためにBorkusの望みをまず聞き出そうと、Vandalieuは思った。
Mirg Shield Nationへの復讐だろうか? それともbody partの修復? 若しくはOrbaum Elective Kingdomに脱出した娘がどうなったのか知りたいのか。
『……お前みたいなガキが、そんな事出来るのか?』
「少なくとも、このworldで今までできなかった事の幾つかは出来ます」
Borkusに聞き返されても、Vandalieuは胸を張って答える事が出来た。これは自信の有るnoneの問題では無く、これまで存在しなかったmagicが使えるのだから、これまで出来なかった事が出来て当たり前だという事を知っているからだ。
初歩のDeath-Attribute Magicである【Sterilization】や【Bug Killer】だって、他のattribute magicで再現するのは困難であるらしいし。
Borkusはその答えを聞いて、片方しかeyeballの無い顔を俯かせてしばし考え込むと。顔を上げないまま言った。
『だが、legend Class magic itemのCurseを解くような真似は出来ねぇだろう?』
legend Classのmagic itemには、一流のMageでも解けないCurseを対象や使用者に齎す物がある。そうしたCurseを解く事が出来るのは、同じlegend Classのmagic itemかHero、若しくはGodsか、それに等しい存在だけだ。
それはMikoとはいえ、流石に不可能なのでは。Nuazaはミイラの顔で器用に案じるような表情を、Vandalieuに向ける。
「Curseですか? できますよ。今日はまだManaを使ってませんし」
『出来んのかよ!?』
「そんなBAKANA!?」
あっさり出来ると答えたVandalieuに、NuazaまでBorkusと一緒に否定していた。
『Curseだぞ、しかも legend Class magic itemのだぞ!? templeに金貨を幾ら積んでも浄化できないぐらい強力なんだぞ!?』
「そうです! 私なんて足元にも及ばないHigh Priest -samaやTemple Head -sama、【Saintess】Jeena -samaだって浄化できない代物なのですよ!? 浄化どころか、Mikoまで呪われたらどうするのです!」
口々にそう言うBorkusとNuazaだが、彼らからすればあり得ない事をVandalieuが言い出しているのだから当然だ。
「ええ、前はよくやって……やらされていましたから出来ると思いますけど。だって、Curseなんでしょう?」
しかし、Vandalieuからしてみれば、Curseなら解除出来て当たり前という認識があるため、何故二人が狼狽しているのか、さっぱり分からない。
いや、まあ、二人の態度から「きっとこのLambdaでは、簡単にCurseを解く事が出来ないんだろうな」ぐらいは察したが。
「Curseって、つまりManaによるStatus Effectですよね。物によっては怨念や憎悪が核だったりしますけど、結局具体的な効果……決して治らないDiseaseを発Diseaseさせるとか、不幸を呼び込むとか、特定の行動を封じるとか、そういったStatus Effectを起こすのには、Manaが必要です」
基本的に、Curseが具体的な効果を発揮するにはManaが必要不可欠だ。
例えば憎い相手をCurseでdiseaseにしたい場合、ズタズタにした人形をただ送りつけただけではただのMental攻撃だ。相手が図太いnerveをしていたり怖いもの知らずな性格だったら、全く効果が無い。
Curseをただのおまじないでは無く確実な効果を発揮させるには、Manaが必要なのだ。儀式を行い呪文を唱え、生贄を捧げる等してManaを込める必要がある。所有者に不幸を齎す宝石だって、Manaが無ければただの宝石だ。
これが科学とmagicが存在するanother world OriginにおけるCurseの定義だ。
「そして俺のDeath-Attribute MagicはManaを含めたenergyをAbsorption、消滅させる事が出来ます。なので、Curseを形作るManaを消滅させれば、Curseは解けます」
っと、当時研究者から聞かされたことをそのまま口にする。
当時のOriginでもCurseを解くのは大変だったようで、実験が成功した時は興奮した研究者達がウザかったなと、Vandalieuは思い出した。
まあ、研究成果が出ても待遇が改善される訳では無かったし、何か希望が叶えられる訳でも無かったので、Curseを解く……消せる事がどれだけすごい事なのか、Vandalieuは今まで考えた事が無かった。
『つまり、お前はlegend Class magic itemのCurseを解けるんだな?』
「はい。よっぽど特殊なCurseでなければ」
そう答えながらも、Vandalieuは内心では首を傾げていた。何故なら、Borkusが呪われているsignが無かったからだ。……Undead Transformationしてしまった事を除けばだが。
『……分かった。もし、お前があいつ等を取り戻してくれるのなら、俺はお前の部下でも手下でも、何にでもなってやる。
今でも意味があるか知らねぇが、【Sword King】の名に懸けて誓ってやる』
「あいつ等?」
『ああ。今でもあのクソッタレな氷槍のCurseに囚われている俺の仲間……JeenaとZandia嬢-chanを解放してくれ。
頼む』
Vandalieuのずっと上に在ったBorkusの頭が、Vandalieuより低い所まで降りてきた。
彼の毛の無い脳天に、「分かりました」と答えた。
・Monster Explanation::Life-dead
死後硬直前の新鮮な死体に、Life-Attribute Magicで外部から人工的にVitalityを与え、魂の無いBodyに鼓動や呼吸等の生命活動を再開させた特殊なUndead。
死体であり魂が無いため、Life-deadには最低限のInstinctすらなくZombieのように生者に襲い掛かるような事もしない。生前持っていたskillも出身raceが生まれつき持っている物以外は全て失っている。(この事から、skillはBodyでは無く魂に依存するという説を唱える学者がいるが、少数である)
倒し方も簡単で、普通のHumanを殺すように傷つければそのまま死ぬ。
基本的なRankは0で、そのままなら脅威度はSlimeやGoblinにも遠く及ばない。また、その性質上Devil NestsやDungeonで自然発生する事も無い。全てのLife-deadはMageが人為的に作った個体ばかりだ。
こんなただ生命活動をしているだけのUndeadを何故Mageが作るのかというと、魂が無いため使い魔にして術者の代わりに行動させるのに最適だからだ。
その場合Life-deadはbody part Abilityを限界以上に発揮する、厄介な敵になる。
また、それ以外にも過去にはある国の国王が急死したとき、Life-deadにして死んだのではなく重Diseaseで床に伏せっているだけだと偽ったという話や、真偽は不明だがNoble 家の当主が若くして死に跡継ぎがまだ居ない時に、Successorを作るためにLife-deadにしたという噂が囁かれている。
尚、生命活動が不可能な損傷を受けて死んだ死体では不可能(失blood死を含む)なので、一部を除いたDisease死や突然死で死亡した死体でしか作れない。
また、死体にManaが残留するmonstersや、Vida's New Racesの中でもGoddessがmonstersと交わって誕生したrace(Vampire、Dhampir、Ghoul等)の死体では、Life-deadに出来ない。