商業guildに顔を出したVandalieuは、Guild Masterの計らいで-sama々な厄介事を避け、早急に用件を済ませる事が出来た。
「まさかの大人気でござるな、某達。嬉しくないでござるが」
-sama々な厄介事とは、商人達が持ってきた、いわゆる『儲け話』だった。内容はMoksiの商業guildのSub GuildmasterだったYosefが持ちこんだのと同じ話が三分の一。Vandalieuが発明した、Transformation Equipmentに関する話が三分の一。そして残りはほぼ全てMyuzeやMaroll、Julianaに関する話だったらしい。
新種のmonstersであるMaroll達や、実際には違うが新種だと思われているらしいEmpusa、そしてこの辺りでは珍しいArachneやScyllaの素材……抜け毛や涎、脱皮した後の殻を売って欲しいと言う穏当な話。それとは逆に、Julianaを愛玩用に買いたいと言う穏やかではない話まであったようだ。
前者の話は、Maroll達はともかくMyuze達にとっては愉快ではない話だ。目をギラギラさせた大勢の男女に、抜け毛や涎、殻を求められるのは生理的に受け付けない話である。
Guild Masterが集まった商人達を叱責し、追い払っていなければVandalieuの【Demon King's Demon Eye】が猛威を振るっていたはずだ。
「商業guildを取り仕切る者として、心からお詫び申し上げる。だが、ここの商人達があのような者ばかりだと誤解しないでほしい。あれらは商人としての経験が浅いか、経験から学ばないidiotが、-kun達を見て思わず軽挙妄動に出ただけで、真面な商人は動いていない。どっしりと構えて、-kun達の事を観察しているはずだ。
だから、彼女を買いたいと言った者の話は忘れてくれ。私からも厳重に注意するから、出来るだけ、早急に」
そう商業guildのMasterは、Vandalieu達に頼み込んだ。彼は軽挙妄動に出た若手の商人達と違い、Duke 家の末のImoutoだったJulianaの顔を知っていたのだ。
それが何故MinotaurのVariantのchildになっているのか、彼には理解できなかったが、一介の商人程度が手を出して良い案件ではないと考えたようだ。
「とりあえず、この町での営業許可は取れましたし、sugar beetを栽培している農家も教えてもらいましたし、それで良しとしましょう」
町のCenter Open Plazaに置かれたベンチに腰かけたVandalieuは、MyuzeとPrivelにそう言った。
「実際、普通の商人の人も何人か居ましたし」
商業guildから出たVandalieu達に、「若いfemaleにこんな事を頼むのは抵抗があるのですが」と前置きした後、殻や抜け毛を譲って欲しいと求めて来た者や、Vandalieu達ではなくHungry Wolf警備の方を目当てに接触を図って来た商人達もいた。
そうした商人にはVandalieu達も相応に対応している。とは言っても、前者には対応しただけで「機会があれば」と口約束を交わしただけだが。
「脱皮は年一回だし、拙者は自分の抜けた毛を持ち歩いてはいない。彼らには悪いが、涎は流石に抵抗が……」
「仕方ないって。ボク達の髪の毛や殻を調べたら、何が出るか分からないし。あ、これ美味しい」
「懐かしい……前食べた時と変わらず美味しいですね」
そして商業guildを後にしたVandalieu達は、Center Open Plazaで買い食いをしていた。
大都会AlcremのCenter Open Plazaには、身なりの良い富裕層相手の高Class店から、安い値段で食事を提供する庶民向けの店まで-sama々な飲食店がある。
その中でもVandalieu達はFood Stallで売られている商品に狙いを絞り、端から回って購入して食べていた。
「あんた達……tonight決闘だってのに、相手の店で商品を買うなんて大胆だねぇ」
朝、『Alcrem Pentagram Stalls』の代表者としてVandalieuに決闘を申し込んだ、『たっぷりsandwich』のSandyが、呆れと感心が混じった眼差しで見ている。
Vandalieu達の荷物には、彼女のFood Stallで売られている具沢山のsandwich以外の五芒星の商品も、混じっていた。
「tonight決闘だからですよ。事前に決闘相手の商品と、Alcremの人達には何が売れるのかリサーチしなければ、勝てませんからね。
あと、打ち合わせをしたいから、決闘の前に来て欲しいと言ったのは貴女でしょうに」
「そうそう、早めに顔を出してくれて助かるよ。それで、あたしのsandwichはどうだい?」
「美味しいです。sauceに工夫が凝らされているのが特に良いです」
Sandyのsecondary nameにもなっているsandwichは、見た目通り具がたっぷり挟まれている。breadは小麦粉で作られた白breadではなく、雑穀で作られた黒breadだ。しかし、そのどっしりとした酸味のあるbreadがまた具と合うのだ。
Vandalieuが言った、具に掛けられているsauceも絶品だ。Human社会にはmayonnaiseやketchup等は存在しないので、当然sandwichのsauceにも使われていない。しかし、香草やFruitの皮、細かく刻んだ野菜のミンチが複雑に絡み合い、飽きさせない味になっている。
「ほう、分かっているじゃないか」
「最も良いのは、安い材料が使われているため、売値を抑えても利益が出るところですね。美味しくて安価、そして食べ応えがある。まだ稼げない新人adventurerや、Chamber of Commerceや職人の下働きの人達に人気なのも分かります」
「そうそう、分かって……そのageでちょっと分かり過ぎじゃないかい? 御嬢-san達、あんた達の入れwisdomかね?」
Vandalieuの評価と分析に、最初は機嫌が良さそうだったSandyが怪訝そうな顔つきになって、Privel達に視線を向けた。
「いや、某達はHumanの町に来たのは初めてでござるから、買い食い自体初めてでござるよ。ところでSandy -dono、Food Stallは良いのでござるか?」
実際には、Myuze達にはBoundary Mountain Range内部の国々で買い食いの経験はあるのだが、Alcremに入った時Knight達に話した設定が破綻しないように嘘をつき、更に話題を逸らそうとする。
「ああ、あたしのFood StallじゃCookingはしないんでね。家で作って来たsandwichをFood Stallで売る形だから、売り切れたらそこで商売は終わりだよ。
普段なら今頃店仕舞いして、夕飯時に売るsandwichを仕込んでいる旦那の所に戻ってる頃さ。でも、今日は打ち合わせがあるからね」
Myuzeの狙い通り話題を逸らされたSandyがそう話していると、彼女の背後から四人の人物が近づいてきた。
「その打ち合わせの前に、Self introductionと詫びを入れないとな。俺は『気紛れsoup』のシング」
「私は、『灼熱飯』のパーパラスです」
「初めまして、『Chaosを握る』ミッチェムと申します」
「儂は『甘々甘味sweets』のトムじゃ。……このくどいsecondary nameの事は、深く聞かんでくれよ」
威勢の良さそうな中年の男に、癖の強い髪と髭のDwarfの男、二十age前後のfemaleに、見るからに好々爺っぽい老人。彼等はそれぞれ名乗ると、纏め役らしいトムが改めて口を開いた。
「そこのSandyを加えて、儂等が『Alcrem Pentagram Stalls』じゃ。この度は、迷惑をかけてすまんかったな」
そう言ってトムが軽く頭を下げると、Sandy達もそれにならって口々にVandalieu達に謝罪した。
「いえ、噂ですし、そうお気になさらず」
「いやいや、噂話を真に受けて煽られたSandy達と、諌められなかった儂等が悪い。いや、謝罪でなければ礼を言った方が良いかな。無視されたら、Sandy達の立場がなかったじゃろうし」
トムの言葉に、シングとパーパラスは決まりが悪そうに視線を逸らした。
どうやら、Sandy達三人が噂話を真に受けて決闘だ、対決だといきりたったが、トムとミッチェムはそれを止めようとしたらしい。
「噂が本当でも気にする事ないって言ったんですよ。そう言う売り文句は、どこでもありますから」
「それが濡れ衣だったのに決闘を受けてくれたんだ。感謝しかねぇよ。まあ、決闘では手は抜かないけどな」
「重ねて言いますが、気にしないでください。ところで打ち合わせの方は?」
「うむ、決闘の方法なのじゃが、売り上げと客の総数で、勝敗を決めようと思う。一位から六位を決め、その順位がどうだったとしても最後は『これからもお互い頑張ろう』と握手して終わる、という形でどうじゃろう?」
店の看板や商品、営業する場所等を賭けず、最後は和解して終わる。決闘の勝敗としては有耶無耶だが、eventの締めくくりとしては、丁度良いだろう。
実際、VandalieuはAlcremでFood Stallの営業を続けるつもりはないので、看板や営業場所を勝ち取ったとしても扱いに困るだけだ。
「異論はありませんが、もう一つ。俺が勝ったらこれをFood Stallに飾ってください」
しかし、Vandalieuはそう条件を付けながら、Gizaniaが背負っている荷物から布を取り出した。それには、Hungry Wolf警備や、Food Stallが飾っているVidaの聖印であるheart markが描かれていた。
「こりゃあ、良い布だ。良い布だが……お前-san、templeから派手な事はするなと言われちゃいなかったか?」
町の噂話に聡いトムがそう尋ねると、Vandalieuは首を横に振った。
「言われたのはkaa-sanで、俺ではありません。それにこれは布教活動ではなく、ただの商売ですから」
詭弁だが、originally AlcremのChurch of VidaにVandalieu達の行動を縛る権限はない。ただ、要請されただけだ。
certainly、templeからの要請を無下にして、Alda templeやbelieverをProvocationするような真似をすればVandalieu、そしてDarciaのreputationは悪くなるだろう。
だが、これぐらいは平気だろう。町の人々にとってこの決闘騒ぎは、ただのeventなのだから。
「なるほど。じゃあ、構わんよ。別に傘下に入れとか、そう言う話ではないんじゃろ? だったら、どのFood Stallが勝ったのか分かり易くて助かるわい」
それに、トム達にも異論はないようだ。単に旗をFood Stallに飾るだけで普段の商売から何も変わらないし、期限付きだ。
彼等が、熱狂的なVida以外の神のbelieverだったら嫌がったかもしれないが、特にそんな-sama子もない。
「トム爺-sanは夕飯時だとまず負けるだろうからな。今の内に貰っておいたらどうだ?」
「シングっ、本当の事を言うな! 一応勝負の前じゃろうが!」
「本当の事? トム老、拙者は当然Vanを応援するが、あなたの店のCakeはとても美味しかった。もっと自分のCookingに自信を持つべきだと思うが」
トムのFood Stallで買ったCakeをそう評したGizaniaに、トムは嬉しそうに顔の皺を深くして笑った。
「Arachneの御嬢-sanにも儂のCakeが喜ばれるとは嬉しい限りじゃ。やはりraceが違っても、女子には甘いものじゃな。
じゃが、夕飯時には儂の店の商品は売れ行きが昼より落ちるのじゃよ」
「あたしのsandwichも、若干落ちるよ。代わりにパーパラスの焼き飯や、シングのsoupが売れるのさ。夕飯時だから、客層が変わるのさ」
日が暮れると、この辺りで食事を手軽に済ませようとする客は、若いfemaleの割合が減り、一仕事終えた労働者やadventurer、Guard達になる。彼等は夕食のmainに、食い応えがあるパーパラスやシングのFood Stallで売っているCookingを求めるようだ。
certainly夕食に甘いdessertを付けたがる者もいるが、トム達は『Alcrem Pentagram Stalls』と呼ばれているが、結局はFood Stallである。そうした客は、restaurantを利用する事が多い。
「既婚者のadventurerやGuardが、家で帰りを待つfamilyへの土産に買いに来るから、売れない訳ではないがの。
だからSandyが決闘を申し込んで来ると言って飛び出した時は、焦ったわい」
「いや、あの時は明日の昼時を指名して決闘を申し込むつもりだったんだよ。条件も、あたし達が有利なようにして。
そしたらああだったから、調子が崩れてね」
「まあ、何はともあれお互いがんばりましょう。俺達のFood Stallも来ましたし」
Vandalieuが視線を向けると、HoofとManeに引かれた自分のFood Stallと手を振っているDarciaの姿が雑踏の間に見えた。
リサーチの結果、Vandalieuが決闘に際して作るCookingは……結局串焼きであった。
「準備期間が数時間ですからね。Cookingを大きく変える事は出来ません。そうでなければ、まだこの辺りは冷えるので蒸しbread……肉マンでも作ったのですが」
このworldでは麺類はdevelopmentしなかったが、蒸しbreadは存在していた。hot spring地で暮らしていた売れないBakerが、燃料代を節約するために熱い水蒸気でbreadが出来ないかと思いつき、試したのが由来とされている。
ただ、蒸しbreadは『hot spring bread』と呼ばれていて、hot spring地のご当地グルメとして扱われており、hot spring地以外では馴染みがないようだが。そのため、Vandalieu達もHuman社会の蒸しbreadがどんなものなのか実際に食べた事はなかった。
「だったら、決闘の時間を明日や明後日に変えれば良かったんじゃないのかい、師Artisan?」
「Natania -san、Vandalieu -samaには串焼きで勝つ自信があるのです。技術では明らかにVandalieu -samaが上回っているのですから」
Julianaが言った通りだ。Vandalieuの【Cooking】skill levelは8。一流Cooking店のmainシェフや名門Noble 家でCooking長をしていてもおかしくないlevelだ。
対して、Sandyやトム達『Alcrem Pentagram Stalls』の【Cooking】skillは、そこまで高くはないだろう。有名Food Stallの店主で、実際に食べたCookingも美味しかったが、流石にVandalieu以上と言う事はないはずだ。
「でもJuliana、【Cooking】skillのlevelだけで勝負が決まるもんじゃないよ。特にVan -kunは、ここだとね」
「はっ、確かにっ!」
Privelが言葉の意味を察して、Julianaははっとした。Human社会では、Vandalieuは将来Vidal Magic Empireの名物や輸出品にするため等、諸々の理由で幾つもの調味料や食材、Cooking法を使う事が出来ない事を思い出したのだ。
「でも、まあ程々のところまで行けると思いますよ。五芒星に串焼きFood Stallはありませんでしたから、個性を出せますし。三位、もしかしたら二位を狙えるかも」
「一位は目指さないのでござるか?」
「目指さないのでござるよ、Myuze。新参者が大きな顔をしたら、嫌われますからね」
五芒星の内何人かに勝ち、何人かに負ける。そしてお互いに「やるじゃないか」と握手を交わし、お互いの健闘を称えあう。
これがFood Stallでの決闘としては、理想的な決着だろう。
Vandalieuが全員を下して、「『Alcrem Pentagram Stalls』を倒したぞ!」となるのも、逆に五人全員に負けるのもよくないのだ。
「……新参者って、Moksiじゃかなりの事をしていたと思ったけれど」
「それは、Yosefが手を回して妨害工作をしてきたり、Hajime達が絡んできたりしたせいです。それがなければ、俺は今でも程々の串焼きFood Stallの店主だったはずです」
Nataniaに突っ込まれ、Vandalieuは責任をYosefと『God of Thunderclouds』Fitunの寄り代となって襲いかかって来たReincarnatorのHajime Inuiに転嫁した。
「それでも、結局孤児院やBirkyneの事があるし、Vandalieuの事だからSimon -sanの師Artisanにもなったと思うの。結局、今とあまり変わらなかったかもしれないわね」
しかし、Darciaにそう言われて撃沈する。撃沈するが、仕込みの手を止めはしない。
「ところでVandalieu、それはThunder DragonやMountain Giantの肉じゃなくて、ただのOrcやImpaler Bull、それにMad Boarの肉ね。悪い食材じゃないけれど、それでいいの?」
「え、そうなの?」
Darciaがそう指摘すると、気がついていなかったPrivelが驚いた顔でVandalieuが作っている串を見る。
Alcrem周辺にはBClassからEClassまでのDungeonが存在し、数多くのadventurerが拠点としている。そのため、monsters由来の食材が多く出回っている。
そのためRank3のOrcやImpaler Bullの肉は、珍しくない。『Alcrem Pentagram Stalls』でも、sweets専門のトムのFood Stall以外では普通に使われている。
実際、Vandalieu達が買い食いしたsandwichやsoup、オニギリの具として使われている。
Rank4のMad Boarも、Orcよりも使っている店は少なくなるが、珍しいと言う程ではない。
Rank8のThunder Dragonの肉とは、味も希少性もdimensionが違う。
「はい。良すぎる食材を使って決闘に勝っても、外聞や体裁が悪いですし」
「確かにそうね。Cookingの腕や工夫じゃなくて、素材だけで強引に勝ったと思われたくないものね。
あっ、じゃあ私がTransformして売り子をするのも止めた方が良いかしら?」
「それは構わないかと。kaa-sanが売り子をしているのは、向こうも知っていたでしょうし」
「が、外聞や体裁を気にするのか? 今更?」
「それに、Moksiの町じゃ、それで一人勝ちconditionだったじゃないか」
VandalieuとDarciaの言葉に、GizaniaとNataniaが驚いて目を見張る。
Food Stallより大きな蜘蛛のlower bodyを持つArachneのLarge-buildであるGizaniaや、PrivelやMyuzeが居るVandalieuのFood Stallは、周囲を通る人々からの視線を集めている。大部分はただの好奇心からだが、少数ながら嫌悪感やhorror心、怒りと言った負のemotionsが込められた視線もある。
だと言うのに構わず自分を連れまわしているので、Vandalieuは外聞や体裁を気にしていないのだろうとGizaniaは思っていた。
そしてNataniaが指摘したように、Moksiの町でVandalieuのFood Stallが頭角を現した要因の一つは、格安で美味いmonstersの串焼きを売った事である。……Vandalieu自身、そして売り子をしていたDarciaが珍しいraceである事等、それ以外にも複数の要因があるが。
「それは気にしますよ。Vida believerで、Moksiの『King of the Stalls』、『True Ruler of the Red-Light District』で、『Patron Saint of Transforming Equipment』としての外聞と体裁は。俺やGizania達、Vida's New RacesやTamed Monsterが嫌いな人はどうでもいいので、今更どう思われても構いませんけど。
Moksiの町ではただの商売でしたが、今回は決闘、勝負です。明確なruleはありませんが、だからと言ってrule無用の競い合いでは気分が悪いですし……そこまでして勝たなければならない訳ではないですし」
Vandalieu達は、今のところAlcremに拠点を移す訳ではない。Dukeとの謁見が終わり、偽Face-Stripping DemonやArthurとの問題が解決すれば、一旦Moksiに戻る予定だ。
五芒星相手にごり押しで勝ちをもぎ取っても、何が手に入る訳でもない。
「では、やはり程々に手を抜くのですか?」
「いいえ。暗黙のruleと自分が定めた制限を守った上で、本気で勝負します。……思考の一部を偽『Face-Stripping Demon』の被害者本人や、目撃者の霊を探すのに使ってはいますが。……寝る前に死体が発見された場所に行って、地縛霊になっていないか見た方が良いかもしれない」
あと、この人目につく決闘は、返事を受け取りに来るArthurにとって目印になるだろうとも、Vandalieuは考えていた。
『ところでVandalieu -sama、こちらを監視しているRalmeiaの件は、如何しましょう? 何やら探っているようですが』
朝方、恐らくSandy達の耳に『噂話』を入れて煽り、決闘騒ぎを起こさせた黒幕である『Alcrem Five Knights』の一人、『Knight of the Insight』Ralmeia。彼について報告したChipurasが、Open Plazaの一画を指差して指示を求める。
「……とりあえず、引き続き監視するだけに止めて起きましょう。何がしたいのか分かりませんし。
【Magic Eye of Appraisal】の持ち主で、俺達のStatusを見るのが目的なら、一目見ればそれで十分なはずですし」
『そうですな。では、監視に戻ります』
ChipurasがRalmeiaの監視に戻ると、それと入れ替わりにSimonとKatiaが、荷車を引くFangと一緒に戻ってきた。
「師Artisanー! 言われた通り熱で溶けるcheeseを買えるだけ買ってきましたぜー!」
「sauceにでも使うの? それとも、もしかしてcheeseの串焼きとか?」
「Katiaのideaも面白そうですが、今回はcheeseをかけようと思いまして」
そして、仕込みが進み、遂に決闘が始まった。
Center Open Plazaの一画には屋外で食事やお茶を楽しめるよう、簡素なtableやベンチが設置されている。『Knight of the Insight』Ralmeiaは、そのベンチの一つに腰かけ、Center Open Plazaで自身がCommandingしたtacticsを続行していた。
Chipuras、そして彼から報告を受けたVandalieu達も訝しんでいたが、Ralmeiaが『Alcrem Pentagram Stalls』を煽り、決闘騒ぎを起こすよう誘導したその目的は、certainly【SurveyingのMagic Eye】でVandalieu達のskillやAbility ValuesをSurveyingする事だ。
それなのに、何故Cooking対決なのか? 実力が見たければ名物Food Stallの店主ではなく、ゴロツキやチンピラを彼等に差し向ければ良いのではないか。
(私の【SurveyingのMagic Eye】の力を知らぬ者達は、そう考えるだろう。私の【SurveyingのMagic Eye】は、対象のappearance的な特徴以外は、見ただけではaccurateな数値を測る事は出来ない。そのAbility Valuesやskillについて、ある程度本気で発揮していなければ、accurateな数値は分からない)
Moksiの町にAlcrem Duke 家が放ったSpyからの報告や、伝え聞く噂話を基にconjectureすれば、母親のDark Elfは最低でもBClass adventurer相当、Vandalieu本人は不明だが、Tamed Monsterも強力な個体が揃っている筈であり、彼が見かけと現在のAdventurer’s Guildの等Class相応の無力な少年とは思えない。
pupilsの『Flying Sword』のSimonや、『Iron Cat』のNataniaも、CClass adventurerだ。新しいTamed MonsterのArachneやScyllaも、門で申告した通りのRankではないだろう。
そんな彼らが、そこらのゴロツキやチンピラ相手にある程度以上本気を出して撃退するだろうか? 実力のfragmentも見せず、適当に畳んでしまうだろう。
そもそも、BClass adventurer相当の実力者にある程度実力を発揮させる強さの捨て駒なんて、簡単に用意出来る訳がない。Alcrem Duke 家に縁のある人物……Duke 家に仕えるKnight団の腕利きや、Ralmeiaと同じFive Knightsの誰かや、コネのあるBClass以上のadventurerに、腕試しでも申し込ませていいのなら別だが、かなり高い確率でVandalieu達の警戒心を煽り、後に控えた非公式な謁見を危険なものにしかねない。
(その点、Cookingや歌とdanceなら簡単だ。平和的に、『ある程度本気』を出させる事が出来る。certainly、直接戦闘系skillのlevelを測る事は出来ないが、Ability Valuesはaccurateな数値を測る事が可能だ。
Cookingで頭を使い、素早く手を動かせばIntelligenceやAgilityが、Enduranceを消費すればEnduranceが、それに魔導コンロを動かせばManaが分かる。それに、danceは武に通じるという言葉もある。……まあ、彼女達が歌って踊るかどうかまでは、分からないが。
まあいい、後はこの特等席で奴らの力をSurveyingしよう)
Ralmeiaが座っているのは、当然VandalieuのFood Stallが見えるベンチだ。幸いな事に、この辺りでは珍しいArachneやScyllaを連れている彼等は、周囲の人々から視線を集めている。彼がVandalieu達を熱心に観察しても、数いる見物人の一人としか思われないだろう。
……実際には、Chipurasが既に見つけており、Vandalieu達から逆に観察されていたのだが、Ralmeiaは気がつかなかった。
(ともかく、数値を。まずはVandalieuから……Tamed Monsterを連れているのに【Training】skillが効果を発揮していないのはどう言う事だ? まさか持っていないのか。
【Cooking】は……8level!? BAKANA、ageは……見た目通り十一だと言うのにか!? 五芒星の一人、トム老でも6level。Alcrem Duke 家のCooking長でも7level。何十年と経験を積んでそれだと言うのに、それをたった十一ageの少年が超えただと!?)
まず本来の目的とは関係のない【Cooking】skillで、早速度肝を抜かれたRalmeiaは、続けてVandalieuのAbilityをSurveyingする。
(Manaは不明だが……それ以外のAbility Valuesは全て万単位!? そんな出鱈目な! 我々Five Knightsに匹敵するどころか、超えているぞ!?
奴は本当に十一ageの少年なのか? いや、もしかしたら……奴の父親は、Subordinate-bornやNoble-bornではなく……Pure-breed Vampireの直系なのか!?)
この時彼にとってFortuneだったのは、VandalieuのFood Stallが魔導コンロではなくFire-AttributeのGhostであるPrincess Leviaの炎でCookingをしていた事だ。もしVandalieuのMana量を、大まかにでもSurveyingしていたらhorrorのあまりscreechをあげていたかもしれない。
もっとも、Mana以外のAbility ValuesをSurveyingしただけでも、彼のMentalは度肝を抜かれすぎて穴が空きそうになっていたが。
(予想外だ。本人もそれなりに戦えるTypeのTamerだろうと予想していたが、まさかAClass adventurer……いや、SClass adventurer並のAbility Valuesとは。
まさか、他の連中もそうなのか!?)
RalmeiaはFood Stallの周りで警備や売り子をしているSimonやNatania、目立つGizania達に【SurveyingのMagic Eye】を向ける。身長や体重、age等の数値がまず彼の意識に表示され、次いでAbility Valuesが表示される。
もっとも、Simon達は何かの作業を行っている訳ではないので、あまりaccurateな数値ではないが。
(やっぱり他の連中もそうだったのか!)
しかし、数値の不accurateさを考えても、Gizania達のAbility Valuesは高かった。実はRank10前後で幾つものJobにも就いているGizania達のAbility Valuesは、AClass adventurerの域に十分到達していた。
SimonとNatania、そしてJulianaはそうでもないが……それはVandalieuやGizania達と比べれば低いと言うだけで、三人がweakという事ではない。それに、二人の場合は義肢がある。
(GhoulとDark Elfが使ったTransformation Equipmentと言うmagic itemといい、『Flying Sword』と『Iron Cat』の義肢といい、尋常ではない。Defense Power、柔軟性、何よりも込められているManaが並のmagic itemとは桁違いだ! これ程のMana、いったい何万人のMageを導入すれば……いや、高RankのmonstersのMagic Stoneを使ったのか? 何だと!?)
その時、Ralmeiaが見ている前で売り子だけではなく、waitressのように客の元に皿代わりの木の葉に乗せたCookingを届けていたKatiaに絡み、強引に連れて行こうとした酔っぱらいがそのKatia本人の手で叩きのめされた。
Katiaに袖にされたadventurerかmercenaryらしい酔っぱらいが剣を抜き、Katiaが護身用に持っていた木の棒でそれを迎え撃ち、撃退したのだ。その-sama子を【SurveyingのMagic Eye】で見ていたRalmeiaは、更に驚愕する。
(【Sword Technique】がlevel7だと! Ghoulのskillがこれほど高いとは……噂で聞いた強さは、Transformation Equipmentや付与magicのEnhanced (1)によるものではなく、素のconditionで我々の想像を超える力を持っていたという事か)
それまでRalmeiaはGhoulの事を、人語が話せるほど知能が高いが素のconditionでは精々Rank3、上位種でも近年はRank6以上の個体は発見されていない、大きな脅威には至らないmonstersだと認識していた。
だが、それは大きな間違いだったようだ。
(くっ、この『Knight of the Insight』と謳われたこの私が、Ability Valuesを一通りSurveyingしただけで冷や汗をかくとは。だが、【Cooking】以外のskillもSurveyingしなければ、Duke閣下に合わせる顔が無い)
そうしてまず見たのは、客のrequestに応えて軽く歌とdanceを披露しているDarciaだった。【Singing】や【Dancing】といった、普通のskillが彼のMentalを落ち着かせる。
(ん? 【Self Super Enhanced (1):Vandalieu】、【Strengthened Attribute Values: Creator】、【Vitality Enlargement】だと!? 【Abnormal Condition Resistance】に、【Monstrous Strength】!? この女、本当にDark Elfなのか!?)
しかし、普通のDark Elfならあり得ないPassive skillsの数々に、Ralmeiaの背に冷や汗が浮かぶ。
(これは、【Self-Enhancement: Guidance】だと!? つまり、この女は誰かに導かれて……Guiderに導かれているのか!?)
DarciaのそのskillをSurveyingしたRalmeiaは、彼女の周囲にGuider Jobを持つ者がいる事に気がついた。
彼もGuiderについては知っている。Bellwood達Championを除いて、歴史上同時期には二人以上存在した事がないとされているJobだ。
そのinfluenceは、SClass adventurerを超える。
Darciaを導いているGuiderは、いったい何処にいるのか。Ralmeiaは、その有力Candidateに視線を向ける。意識では、そんな事はあり得ないと何度も繰り返しながら。
しかし、VandalieuのPassive skillsをSurveyingした結果、【Guidance】skillの存在を確認してしまう。
(【Guidance】に【Self-Enhancement: Target of Faith】!? これがTamerでありながら【Training】skillが無かった理由か! こいつはTamed MonsterをTrainingしているのではない、Guidance、自らを信仰対象にして従えているのだ! それに【Abyss】だと!? 何だ、【Abyss】とは!?
と、とにかくこの事をDuke閣下に報告しなければ!)
VandalieuはGuiderである。それを知ったRalmeiaは、すぐにベンチから立ち上がり身を翻そうとした。しかし、それは出来なかった。
いつの間にか、自分がVandalieuに見つめられている事に気がついたからだ。
「ヒッ!」
口から引きつったようなscreechが洩れる。それほどはっきりと、Ralmeiaは意識した。Vandalieuの虚ろな目に自分が映っている事を。
そしてInstinct的に悟る。自分がStatusを覗き見ていた事を、Vandalieuは気がついているという事に。
(こ、殺される。私は、ここで死ぬ!)
Vandalieuの瞳の奥のAbyssから、異形のmonsterが這い出てくる光景を幻視したRalmeiaは、自分の死を確信した。だがVandalieuは、震え上がっている彼を数秒見つめると、特に何もせず視線を逸らした。
そのまま客の大剣を背負った大男から、注文を取り始める。
(み、見逃されたのか? この私が)
大した脅威ではないと、始末する価値は無いと放置された。それに気がついたRalmeiaは、周囲から不審な眼差しを向けられるのにも構わず、走ってその場を後にした。
彼の胸を満たしていたのは屈辱ではなく、「まだ生きていられる!」と言う喜びと安堵だけだった。
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・Name: Katia
・Rank: 8
・Race: Ghoul Wizard Sword Adept
・Level: 90
・Job: Fire Space Magic Swordsman
・Job Level: 70
・Job History: Apprentice Warrior、Warrior、Apprentice Mage、Mage、Magic Swordsman、Fire-Attribute Mage、Space-Attribute Mage、Fire-Space Magic Swordsman、Light Wind Arts Swordsman
・Age: 27age(appearance19age)
・Passive skills
Dark Vision(Night Visionから変化!)
Pain Resistance:4Lv(UP!)
Mysterious Strength:8Lv(UP!)
Paralyzing Venom Secretion (Claws):4Lv(UP!)
Staff weapon equipped, then magic Attack Power Augmented (2) : Medium(NEW!)
Strengthened Attack Power when equipped with a Sword: Very Large(NEW!)
Strengthened Defensive Power while equipped with metal armor:大(NEW!)
Mana Enlargement:4Lv(NEW!)
Self-Enhancement: Guidance:7Lv(NEW!)
・Active skills
Sword Technique:7Lv(UP!)
Armor Technique:5Lv(UP!)
Shield Technique:6Lv(UP!)
Dismantling:4Lv(UP!)
Surpass Limits: Magic Sword:5LV(NEW!)
-Surpass Limits-:10Lv(NEW!)
Coordination:8Lv(NEW!)
No-Attribute Magic:8Lv(NEW!)
Fire-Attribute Magic:7Lv(NEW!)
Space-Attribute Magic:7Lv(NEW!)
Light-Attribute Magic:5Lv(NEW!)
Wind-Attribute Magic:6Lv(NEW!)
Mana Control:9Lv(NEW!)
Chant Revocation:5Lv(NEW!)
Housework:2Lv(NEW!)
Singing:1Lv(NEW!)
Dancing:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Vandalieu’s Divine Protection(NEW!)