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Chapter 256: 今日の予定:夕飯時に決闘

 早朝、少し短めの睡眠から目覚めたVandalieuは、昨night Ricklent Grand Templeから盗んできた……祭られている神が認め、Oracleまで使って手引きしたとしても、盗みは盗みである。

 その盗んできたfragmentsealedを二つ、自分の前に置いた。


「では、解放するので皆離れていてください」

 本来はAdamantiteより硬く、Mythrilよりも対物理、対魔、両方のDefense Powerに優れるOrichalcumsealed具は、同じOrichalcum製の武具で何度も攻撃されない限り、sealedを守り続ける事が出来る。

 【Demon King Fragment】にInfestされた宿主や、宿主を乗っ取ってrunawayしている【fragment】が破壊しようとしても、簡単には壊れない。


 だが、Vandalieuが【Golem Creationskillで形を変えたら、簡単に効力を失った。sealed具のproducerや、使用した『TrueRandolphも、まさかsealed具その物を操って形状を変化させられる事は想定の範囲外だったのだろう。

 sealedが効力を失った瞬間、Orichalcumの筒が内側から膨張し、裂け、中身が這い出てきた。


『我、新たな宿主に――main bodyイィィィ!』

『合流せよ! main bodyに合流せよ!』


 行動するために新たな宿主にInfestしようとしていたfragment達は、Vandalieuを認識した途端、彼に向かって飛び込んでいく。




《【Demon Kingfallopian tubes】と【Demon Kingsilk glandintegratedしました!》

《【Demon Kingskilllevelが上がりました!》




「問題無くfragmentを取り込む事が出来ました。ですが……」

(また一歩、Demon Kingに近づいてしまった)

 脳内アナウンスで【Demon Kingskilllevel upを聞き、思わず視線が遠くなる。


main bodyとの合流に成功せり! main bodyとの合流に成功せり!』

『我等はfragmentにあらず! Demon Kingなり!』

 main bodyの所感に構わず、【Demon King Fragment】は大はしゃぎで騒いでいた。


 Minotaur Kingが、Nataniaを生贄に使った儀式で用意していたfragmentsealed、その中身の【silk gland】も興味深いが……。

「それはともかく……【fallopian tubes】」

 Vandalieuは【Demon Kingfallopian tubes】をActivateして、body partの一部を変化させる。【fallopian tubes】そのものを腕や脚から生やす事も、指やtongue、そして追加でActivateした【Demon Kingtentacle】を変化させてfallopian tubesにする事も出来るようだ。


 そして一通り試した後、こちらを伺っているJulianaと、彼女の傍についているNataniaに話しかける。

「どうです、JulianaNatania? 吐き気や頭痛、眩暈等を覚えますか?」

 【Demon Kingfallopian tubes】は、二人を捕らえたMinotaur Kingが使っていたfragmentだ。Minotaur Kingはこの【fallopian tubes】で、二人と同じように捕えられていたFemale Knight達がBreedingの道具にされるのを見せつけ、Juliana自身も最後には大量の卵を体内に産み付けられている。


 それによってJulianaは、MentalDecayし廃人になるまで苦しめられた。

 Nataniaは生贄として使うために【fallopian tubes】を使われていなかったし、正気を保っていたが、traumaになっていてもおかしくない。


 もし二人が【fallopian tubes】に拒否反応を起こすようなら、今後使うのは控えよう。それこそ、絶体絶命の危機にでも陥らない限り。

 その覚悟で尋ねたVandalieuだが、二人は心の傷に耐えている-sama子を一切見せず、ひたすら困惑した-sama子で彼を見つめ返し、whisperingと何事か囁き合っている。


「あのー、言いたい事があったらはっきり言って構いませんよ? それと、本当に大丈夫ですか? tongueが震えて声が出せないとかもありませんか?」

 そう重ねて尋ねると、Julianaが言いにくそうにしながら口を開いた。


「じゃあ……見ても気分は悪くなりませんし、足やlipsが震えるような事もありません。でも、凄く気になる事があります」

「師Artisan、そのランカンってので卵を産めるの?」


「ふむ……試してみましょう」

 二人に見やすいよう、腕から生やした【tentacle】を【fallopian tubes】に変化させたVandalieuは、卵を出せるか試してみた。certainlyVandalieuにそんな経験はないし、Dhampirというraceにはそんな機能は無いので、感覚も分からない。


 しかし、【Demon King Fragment】には人にはあり得ない部位や機能を持つ物がある。そのfragmentAbsorptionし、FusionしているVandalieuはそうしたfragmentを意志で操る事が可能だ。

「卵……こんな感じでしょうか?」


 tentacleの先端から土間の上に三つ、両生類の卵のような赤黒い中身が透明な膜に包まれているだけの卵、爬虫類のように柔らかい殻に包まれている卵、そして鳥類のように硬い殻に包まれている卵を続けて産みつける。大きさは比較しやすいよう、どれも大人の握り拳程だ。


 その途端、JulianaNataniaも含めて、一同がざわめいた。

「消費するManaの量は基本的にどれも変わらないけれど、殻の弾力や硬度、それに中身を弄ると消費量が変わるみたいですね」

 何故二人以外も動揺するのだろうと思いながらも、自身の新しいAbilityの考察も止められない。しかし、今後使うかは彼女達次第だと思いながら顔を上げる。


「本当に卵を……Vandalieu -samaは女の子になったのですか!?」

 しかし、顔を上げたVandalieuを待っていたのは、Julianaの驚愕の叫びであった。

 そのあまりの衝撃で、思考まで硬直させて動きを止めるVandalieu


「そうだよな。卵を産むのは雄鶏じゃなくて雌鶏だもんな」

「……師Artisan、俺はとりあえず昨日のsoupを温めてますんで」

『お、おめでとうございます、Bocchan? と言うべきでしょうか?』

「ええっと、こういう時は赤いご飯を炊くって、カナ-chanが言っていたけれど……それでいいのかしら?」

「いや、その、女の子には、なってないんじゃない? 卵を出せるだけで。そうだよね?」


 その間にNataniaは鶏に例えて納得し、Simonは現実逃避に朝食の下準備を始め、SamDarciaKatiaは動揺を露わにする。


「これは、お土産にしたらLucilianoが喜びそうでござるな」

Van -kun……この卵? 温めたら何が孵るのかな? 小さなVan -kun?」

Vanが卵を産む……では、拙者は何をすればいいのだろうか?」

 そして卵を産んで増える卵生のraceMyuzePrivelの動揺は大きく……なかった。彼女達はVandalieuがまた常識から外れた成長を遂げただけだと認識しているらしい。


 ……Gizaniaは思わずよろめくほど動揺していたが。


「グルルっ」

「チュー!」

 そしてFangMaroll達は、キラキラした瞳でVandalieuが産んだ卵を見つめ、涎を垂らしている。originallyは草食だったはずのManeHoofも、ニンジンを目にしたかのように歯を噛み鳴らしappetiteを露わにしていた。


『陛下~、正気に……我に返ってくださいっ』

『凄く珍しい気がするけど、そろそろ戻った方が良いよ』

 そしてPrincess LeviaOrbiaに声をかけられ、はっと我に返るVandalieuは慌てて首を横に振った。


「いえ、性別は変わっていません。単に【fallopian tubes】から卵を作れるようになっただけです。Minotaur Kingがどうだったかは知りませんが、これで子孫を増やす事は俺には出来ないでしょう。子孫以外のものは、作れると思いますが。

 だからkaa-san、赤飯は炊かないでください」


 Minotaur Kingは【Demon Kingfallopian tubes】を使い、短期間で大量のMinotaurを産みだし、己が支配する群れの勢力を拡大していた。だが、それはoriginally雄しか存在せず、他の人型のmonstersの雌やHumanfemaleを犯して同族を増やすMinotaur raceの特性が【Demon Kingfallopian tubes】にimpactを与えた結果だろう。


「じゃあ、この卵からはやっぱり小さなVan -kunが!?」

Privel、期待を裏切って悪いですが、この卵からは何も孵りません。中身は全て俺のbloodです。ほら、赤黒いでしょう?」

 両生類に似た卵を指差されて、Privelは「あ、本当だ」と納得した。


「だからFang達が食べたそうにしてるのね。でも、それだったらこのfragmentって何の役に立つの? 刺さりそうだけど、それなら【proboscis】でもいいはずだし」

Katia-chanCloneも作ろうと思えば作れますよ。……Privelが期待している小さな俺ではないですが。

 Julianaも平気そうですし、今度はそれも試してみましょう」


 Vandalieuが【fallopian tubes】からもう一つ卵を産みだすと、その卵は先程の三つと違いすぐに震え出し、数秒で殻を破って中身が出現した。

『みぎゃぁぁぁぁぁああああああ!』

 八つの目を持つoctopusのような生物は、孵化した瞬間から凄まじい速さで成長し、両掌に乗る程度から一分とかからず大人も見上げる程の巨体を表した。


 そして八つ目のoctopusは驚いている-sama子のKatia達を見回して、手の代わりに足を振りながら言った。

『こんな感じになります』

 多少くぐもっているが、Vandalieuの声で。


「このoctopusDemon King Familiar?」

『ええ、Demon King Familiarです。Talosheim等にこっそり配置しているDemon King Familiarと、何も変わりません』

 Demon King Familiar。それは、Vandalieuが自身の【Demon King Fragment】の幾つかを繋ぎ合わせて創る、Pseudo-生命体にして自らのClone。つまり、使い魔である。


 当然、【Demon Kingfallopian tubes】が無くても創りだす事は可能だが……。

『【fallopian tubes】で産みだした卵を使う事で、通常よりも早くDemon King Familiarを創る事が出来ると言う訳ですな』

「普段はVan -donoが直接fragmentを生やしてpartsごとに組み立てたり、bloodを変化させたりして作っているでござるからな。時間も、凝ったDemon King Familiar程長く必要な-sama子でござったし」


 このように、卵から急成長させる方が、手間も時間も節約できる。

「ところでVandalieu、さっきの『みぎゃぁあ』って?」

kaa-san、『みぎゃぁあ』に意味は在りません。演出として吠えてみました」


「小さなVan -kunが出ないのは残念だけど、おもしろいね。普通のDemon King Familiarと同じぐらいの強さなの?」

 同じtentacleを持つからか、興味津々といった-sama子で八つ目octopusに触れ、tentacleを引っ張るPrivel。今にも試してみようよと、提案してきそうだ。


maybeそうだと思います。実際に試すのは、外で見張っている人達にも気がつかれるかもしれないので、またの機会にしましょう』

 しかしVandalieu達がいるこの建物の周辺には、昨nightから複数のSpyらしき者達が張り込んでいた。

 恐らく、主にAlcrem Duke 家が放った諜報organizationの者達だろう。他のDuchyの関係者や、Amid Empireが潜り込ませた草の者も混じっているかもしれないが。


「あいつ等、Kingがこの建物に入ってからずっと見張ってる。今もだ」

『建物の中に侵入しようとする-sama子も無ければ、magicmagic itemで建物の外から中を窺っている-sama子もありやせん。きっと、MoksiでのDarcia -sanの活躍を聞いてビビって、ばれないよう距離を取って監視する事に専念してるんでしょう』


 BragaKimberlyが続けてそう報告する。

「そんなに怖かったかしら……」

 Darciaはこっそり落ち込むが、Spyの立場からすればBClass adventurer相当以上の実力の持ち主は、Dark Elfの美女だろうが、子持ちだろうが怖いだろう。


「こうして中で話しているだけならともかく、模擬戦の物音は気がつかれるかもしれません。Guardの巡回も、この建物の周囲だけ頻繁に行われているようです。

 始末いたしますか?」


Gufadgarn、それはnoneで」

『とりあえず、このDemon King Familiarは俺に戻りますね。それとこっちの卵は食べて良いですよ』

 八つ目octopusはそう言うと、Vandalieushadowの中に沈んでいく。残ったVandalieublood液入り卵はFang達が残さず食べた。


Myuze -dono、さっきの卵とDemon King Familiarがいれば――」

「おお、そうでござった! Van -dono、ちょっと相談があるのでござるが!」

Giantなカエルの形をしたDemon King Familiarの卵なら、創れますよ。あまり小さくは出来ませんが」

 Vandalieuの言葉に、「十分でござる!」と両手を上げて喜びを露わにするMyuze


 他にも卵の中身ではなく、殻を硬くしてfallopian tubesから弾丸のように撃ちだせば、飛び道具として使えるだろうとVandalieuは考えていた。


 もう一つのfragmentである【silk gland】は、試しに糸を幾つか吐いただけですぐ試すのを止めてしまった。

 silk glandとは、蛾の幼虫等が持っている器官で、糸を作る事が出来るとVandalieuの知識にはあった。Demon King Guduranisが糸を吐いて繭を作っていたとは考えにくいので……それを言えば【fallopian tubes】もだが……GuduranisBodyがバラバラに切り裂かれた後、変異した事で発生したのだろう。


 fragmentを使って出した糸の強度は、今までVandalieuが自力で出していた時よりも数段上で、更に太さや性質も操作する事が出来た。カイコが吐く生糸のような糸から、蜘蛛が巣を作る時に出す粘性のある糸まで、自由自在だ。


「前からそうだが、VanにはArachneFormlessだな」

 Gizaniaがそう言ってくれた。糸の有用性はfallopian tubesよりも分かり易いので、時間をかけて試す必要が無かったため、切り上げて朝食となった。


 尚、Simonが自主的に用意したmenuは、昨日の夕飯で作ったsoupを温めたものと、鶏が変化したmonstersであるGiga BirdのスクランブルEggとレタスを挟んだ卵Sandである。


「それで、Tamer guild本部は避けるpolicyですかい?」

「ええ。ここのGuild Masterとは話が合わないので、あまり親しくせず距離を取る事にしました」

「厩舎は下手な宿より快適だったけど……あの話を聞いちゃったらねぇ」

 厩舎は快適だったと評していたはずのKatiaも、据わった目でVandalieuの言葉に同意し、Privel達もnod


 guild本部のMaster、『無き鬼General』のペドロがVandalieuにした提案。それは自身や組合員のTamed MonsterBreeding相手を融通して欲しいと言うものだった。

 monstersTamed MonsterにしてTamerする際、その難易度を下げる手段として一般にも知られているのが、childの頃からTamerが育てると言う方法だ。


 これはDemonや蟲等特定のrace以外のmonsters全般に効果があり、竜Knight達も卵からWyvernを育てて強い絆を育んでいる。

 ペドロも後進の指導にこの方法を積極的に活用しようとしていたが、彼が主にTamed MonsterにしているOgreTrollMinotaurには共通した問題点があった。……雌が存在しない、雄のみの単性raceである事である。


 仔が産まれるまで飼育しなければならないので、野良のOgreのように他のmonstersの雌を使うのは難しい。獣型のmonstersの雌でも使えない事はないが、母体にかかるstressが大きく半分は胎児が流産してしまう。また、相性が悪いと交尾ではなく殺し合いを始めてしまう。


 そこでペドロは今までは、Rank3ぐらいのmonstersの雌を数匹生け捕りにして「数打ちゃ当たる」とOgre達に励まさせるか……女のSlaveを使っていたらしい。

 使われたのは、mountain banditに浚われ売られた違法Slaveや、借金を返したら解放される借金Slaveではなく、一度堕ちたらまず死ぬまで解放されない犯罪Slaveの女なので、法律的には問題は無い。


 それに犯罪Slaveは鉱などで過酷な労働に従事させられて使い潰されたり、時にはmonstersを討伐する際の生餌として使われたり、戦争では消耗品として扱われる存在だ。

 OgreMinotaurBreedingに使っても、仔が産まれるまで三食食べられるだけ、鉱よりもマシと言われる程である。


 ただ、女の犯罪Slaveの数は男に比べて圧倒的に少ない。犯罪Slaveになるのは主に生け捕りにされたmountain banditや海賊なので、当然なのだが。

 そのため、Mage guildの実験で創られたLife-deadを融通してもらった事もあるそうだ。しかしLucilianoのような変わり者はMage guildにもそう居ないので、Life-deadも頻繁には創られない。


 それに、大抵の場合犯罪Slaveの女やLife-deadは複数回の出産には耐えきれず、一回目が終わるとすぐに死んだり、死体に戻ってしまったりする。

 そのため思うようにTamed Monsterの仔を増やせず困っているところに、珍しいGhoulや、MinotaurVariantという事になっているJulianaを連れたVandalieuが来たので、提案してみたらしい。


 GhoulGhouls鬼とも呼ばれるし、HumanよりもBody的に数段丈夫で痛みに強い。MinotaurVariant-samaに、OgreMinotaurと相性が良いのではないかと考えたらしい。

 しかし、その提案がVandalieuにとって愉快なはずはない。


「はっきり断ったので、流石に俺の考えは伝わったと思いますし、彼もすぐに撤回し、忘れてくれと言っていたので大丈夫だと思いますが」

 しかし都に入る時の審査と違い、拒否できる提案であり、ペドロの態度も穏当であったため、Vandalieuも激怒する事はなかった。


Vandalieu -sama、念のためにペドロのTamed Monsterを全て去勢しましょう!」

「まあまあ、落ち着いて。ペドロが実力行使に出た時は、本人を物理的にどうにかしますから」

 そのため今のVandalieuは、Julianaを宥める余裕もあった。


「後何日かで、MoksiでやってるBasdiaの姉御達の噂もここに届くでしょう。そうすりゃ、そのペドロって爺-sanも、少なくとも同じ提案は二度としなくなるんじゃないですかね?」

GhoulHalf-Minotaurが、Idol扱いなんだから。それなのにTamed MonsterBreedingに使うなんて、外聞が悪くて出来たもんじゃないよ、きっと」


 SimonNataniaの言う通り、時間が経てばペドロも考えを改めるだろう。改めなくても、口に出さなくなるはずだ。


「何なら、Alcremでも歌って踊る? KatiaDarcia -sanがやるなら、ボクも手伝うよ。originally歌とdanceは得意だし!」

「ならば是非某も。Empusaの認知度を広めるために!」


「それなんだけど、残念ながら、Church of Vidaでは良い返事が聞けなかったのよ」

 Privelの提案にDarciaが、そう言ってため息を吐いた。


 Moksiの共同templeとは違い、AlcremではZantark以外のGreat Godtempleは独立している。そのtempleの内Church of VidaDarciaは尋ね、Temple Headと面会したのだが……Temple Headは彼女達にとっては微妙な人物だった。

「今、Alda Reconciliation Faction主導でAlda templeとの関係が好転しているから、出来るだけ穏便に、まずは穏便に、とりあえず穏便に……私が何を言っても、穏便にって答えられるから、もう何度言われたのか覚えていないわ」


「ええっと、それはこの場合どう言う事でござるかな?」

『この場合は、『現状を維持したいから、目立つ事は何もしないで』という事でしょうな』

「じゃあ、無理かぁ……Duke -sanとの話し合いも、まだ日にちは決まってないんだよね? それまで、偽Face-Stripping Demonを探しながら待つの?」


「一応、昨日貰ったこのletterの相手には会おうと思います」

 Vandalieuは、昨日Tamer guild本部からの帰り道で謎の大男……Arthurから投げ渡されたletterを手に、そう言う。


 内容はsimpleで、人気のない場所で内密に話したい事があると言う要件と、Arthurと言う差出人のnameだけだった。

 Vandalieuからの返事を受け取る方法については何も書かれていないので、彼が直接受け取りに来るつもりなのだろう。……Vandalieu達は目立つので、探すのは難しくない。


「師Artisan、そのArthurって奴、スゲー怪しいよ」

「……やっぱり、そいつが偽Face-Stripping Demonじゃないの?」

「素早く消える身のこなし、怪しい」

 そう口々に訴えるNatania達だが、Vandalieuも別に彼は良いHumanだと信じている訳ではない。


Arthurらしい人物の周囲には、彼に殺された人の霊はついていませんでしたし、彼は良いmuscleをしていました。

 しかし、俺も彼を信用した訳ではありません。Princess Levia達に憑いて来てもらいますし、皆もshadowの中に入って来てもらいたい。そして、背後にはGufadgarnがいるconditionで会いに行きます」


 見た目は一人で、実際には全戦力で会いに来ましたtacticsである。

 letterには人気のない『場所』で、内密に『話したい』とあるだけで、Vandalieu一人だけで来いとは書いてないので、嘘ではない。


「なるほど、それなら問題ないね」

 そう話し合い、とりあえず今日はAdventurer’s Guildと商業guildに顔を出そうと決めて貸を出た。すると、見覚えのない白づくめの中年femaleが扉の前に立っていた。


「……何かご用でしょうか?」

「ああ、丁度あんた達を訪ねるところでね。あんたが、Vandalieu Zakkartかい? Fallen Champion Zakkartnameを名乗ってるDhampirの?」

「はい、俺がそのVandalieuです」


「そうかい……あんた、まだまだ青い坊やの癖に随分調子に乗っているらしいじゃないか。Moksiに比べれば、Alcremのあたし達は古いとか、新進気鋭の自分の方が上だとか、随分な事を言って」

「いえ、一言もそんな事言った覚えはありませんが」

「え、そうなの?」


 きょとんと、恰幅の良い中年femaleが目を丸くして聞き返すが、Vandalieuは本当に覚えがないので「はい、本当にないです」と答える。

 中年femaleは確認を求めて、Vandalieuの後ろにいるDarcia達に視線を向けるが、Darcia達も首を横に振って「言ってない」と意思表示する。


「えーっと、そうなの? 話と違うけど、しょせん噂だしねぇ。いや、ごめんね、鵜呑みにして誤解しちゃって。でもあたし達も新参者の鼻っ柱を叩き折るって周りに言っちゃった手前、格好がつかなくてさ。

 後生だからあたしらと決闘しちゃくれないかい? 別に看板を賭けろとか無茶は言わないからさ」

 すると、中年femaleは態度を改め拝むような-sama子でVandalieuに、決闘して欲しいと頼み込んできた。


「決闘は構いませんが、何時でしょうか?」

「出来れば今日かなーって思ってたけど、予定もあるだろうし……昼頃か夕飯時のどっちかなら、何日でも」

「じゃあ、今日の昼は時間が足りないので、今日の夕飯時で良いですか?」

「いいのかい!? 話が早くて助かるよ。道具や食材は?」

「持ってきたので大丈夫です」


「流石! あたしは『Alcrem Pentagram Stalls』の一人、『たっぷりsandwich』のSandy! 打ち合わせもあるから夕飯時のちょっと前にはCenter Open Plazaに来ておくれよー! 場所は用意しておくから!」

 そう言うと、Sandyと名乗った中年femaleは軽やかに駆けて行った。通行人に、Moksiの少年『King of the Stalls』と対決すると宣伝しながら。


「……VanFood Stallごぼーせーとは何なのだ?」

Alcremの人気Food Stallの店主五人の事らしいですよ。Center Open Plazaに出店していて、出店している場所を結ぶと偶然五芒星の形になるので、そう名乗っている内に定着したとか、Bachem -sanが言っていました」

「……そう言えば、そんな事を話していたような気がしないでもないような?」


「では、予定を変更です。今日は商業guildに行って、その後『Alcrem Pentagram Stalls』との決闘という事で」

「偽Face-Stripping Demonはどうします?」

Food Stallを準備している間、都中の霊に被害者や目撃者がいないか聞いてみます」

Arthurって奴への返事は?」

「俺が都のCenter Open PlazaFood Stallを開いていれば、気がついて返事を受け取りに来るでしょう」


「じゃあ、Vandalieuが商業guildに行っている間、kaa-san達が出店準備をしておくわね」

「ありがとう、kaa-san。じゃあ、行ってきます」

「目立つ事をするなって言われたのは私で、Vandalieuじゃないし、働くなって言われた訳じゃないから、私がFood Stallで売り子をしても大丈夫♪」


 Darciaは弾む足取りでSamcarriageに乗せて来たFood Stallの準備を始める為に借の中に戻り、Vandalieuは商業guildに向かった。

 それに遅れて我に返ったGizania達が、慌てて二手に分かれてそれぞれVandalieuDarciaの後について行った。




 その-sama子を物陰で見ていた者達がいた。

Ralmeia -samaの策通り、『Alcrem Pentagram Stalls』が動いたな。奴も話に乗ったようだ」

「よし、三班に分かれるぞ。お前はRalmeia -samaに報告し、その後Center Open Plaza班と合流。奴のFood Stallを観察できる場所を確保しろ。残り二班で息子と母親をそれぞれ監視する」

「分かった、抜かるなよ!」


 そしてその-sama子を姿を消したまま眺めるGhostChipurasは、何とも言えない顔をしていた。

Ralmeia……たしか、Alcrem Duke 家に仕える『Alcrem Five Knights』の一人だったはずだが、それが何故こんな事を?

 Humanの考える事は、やはりVampireの儂には分からんのか』

 そう嘆きながらも、とりあえずVandalieuに報告に向かうChipurasであった。


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