数時間ほど時間を巻き戻し、Vandalieu一行が正門でAlcremに入る審査を受けている頃、あるEClass adventurer partyが、宿屋のcafeteriaに集まっていた。
「……時が、来た」
眉が薄く酷薄そうな顔つきをした、muscle質なBodyのSwordsmanにして、『Goddess of Rain Clouds』Bacias 's Divine Protectionを持つ男、Arthur。
「お告げが、現実になったのね。兄-san」
そのArthurのImoutoで、波打つ髪を腰まで伸ばし、陰気に俯き鋭い目つきで睨むように視線を投げかけている美女、Karinia。彼女は『Goddess of the Dark Nights』Zelzeria 's Divine Protectionを受けており、そのGoddess官でもある。
「これでやっと、真の目的の為に動けると言うものだ」
若いが髪が薄く、生まれついての虚弱体質の為痩せた小柄な老人のように見えるDwarfのMage、『God of Shadows』Hamul 's Divine Protectionを受けているBolzofoyが、ギョロギョロと視線を彷徨わせる。
この三人がいるだけで、時間帯のせいで人が少ないだけのcafeteriaが、後ろ暗い取引に使われる場所のような異-samaな雰囲気を醸し出している。
Evil God (M) Evil God (P)の類ではない、真っ当なWind-Attribute一柱と、Light Attribute二柱のGodsから選ばれblessingsを得たHero Candidate達なのだが。
「あ、あの、お告げとか真の目的とか、何ですか? 初耳なんですけど!」
そして別に何の神's Divine Protectionも得ていない、Arthur達よりも少しadventurer歴が長いだけの新人adventurer、Miriamが涙目になって困惑している。
「何か思いつめているなら、私にも相談してください。私自身も忘れそうになりますが、party leaderなんですから!」
噂しか知らない者達はpartyのleaderはArthurだと誤解するが、実はMiriamが真のleaderだった。
辺鄙な村で暮らしていたArthur達は、都会の常識だけではなくadventurerの常識に疎かったため、senpaiのMiriamに「是非leaderに」と頼み込んだのである。
……Arthur達の行動が突飛なため、leadershipを取るどころか引っ張り回される事が多いため、対外的には「変人三人の犠牲者」か、「実は彼女も変人なのでは?」と見られているのだが。
そんな彼女を、Arthurは目をくわっと見開いて見つめ、そのまま数秒沈黙した。
「Arthur -san、maybe凄く言いにくい事を私に告白する為に、意思を固めているところだと思うんですけど……凄く怖いです」
「Miriam -san……ここまで田舎者の私達の為に苦労を掛けましたが、これ以上は危険だ。あなたには黙っていたが、私達はあるGodsからblessingsを賜り、使命を授かっていたのです」
キョホホホと突然Bolzofoyが笑いだし、瞳孔の開いた目を一層激しく彷徨わせ、Miriamに告げた。
「儂らが村を出て都会に、このAlcremに来たのも、adventurerになったのも、最初から使命達成の為。Miriam -san、あなたは儂等に利用されていたのじゃよ」
その禍々しい声に、宿屋に入ろうとした客が身を翻して逃げて行く。しかし、Miriamは小さく溜め息をついて口を開いた。
「Bolzofoy -san、無理して変な笑い声を出さないでください。それに、さっきから一度も私と目を合わせませんよね? 視線を逸らすのは、貴方が嘘をつく時の癖ですよ」
「ぬぅっ、見抜かれた!?」
「Miriam -san、ですがBolzofoyの言った事は本当の事も混じっています。……我々は、神からblessingsと使命を授かっているのです」
「あ、はい。それは大体察していました」
声を潜ませたArthurの告白に、Miriamはあっさり頷いた。今まで黙っていた秘密を彼女が察していた事に、Arthur達は驚愕を露わにする。
「いや、だって……数か月前までHunterやHousework手伝い、Cleric -sanからmagicの手ほどきを受けただけの人が、こんなに強いのはおかしいし。それに、三人ともBaciasやZelzeria、Hamulの聖印を自作してお守りにしてますし。
だから、最近増えているらしいKami-sama 's Divine Protectionを手に入れたHero Candidateなのかな~って、思っていたんですよ」
Arthur達を怖がって距離を取る者達では気がつかない事に、Miriamは気がついていたのだった。
「Miriam、兄-sanがBacias -sama 's Divine Protectionを賜った事に気がついていたのね」
Kariniaが思わずといった-sama子で呟く。
「え、Karinia、貴女とBolzofoy -sanは違うの?」
「今はZelzeria -sama 's Divine Protectionを賜ったけれど……それは貴女とあった後、だいたい一カ月くらい前の事よ。ただ強いだけのHousework手伝いで、ごめんなさい」
「儂も、blessingsを賜ったのは一か月くらい前じゃ。儂は、Dwarfにしてはmagicの素質があったらしい」
「そうでしたか。なんて言うか、すみません」
Miriamが思っているよりも、KariniaとBolzofoyはaptitude豊かな人物だったらしい。
「それはともかく……我々の秘密に気がついていたとは驚きましたが、なら尚更これ以上あなたを付き合わせる訳には行きません。神から賜った使命は、とても危険なものなのです」
「それは、分かってます。噂で聞くHero Candidateと呼ばれる人達の活躍は、凄いものばかりですから」
runawayした【Demon King Fragment】の再sealed、未発見のDungeonの攻略、最近ではEvil God (M)を奉じるNoble-born Vampireの討伐も行われていると言う。更に、GodsがHeroに課す試練の一つである、神が管理するDungeonに挑戦している者もいると言われている。
Miriamのような新米adventurerから見れば、Hero Candidateではなく既にHeroと呼ばれても遜色ない活躍だ。
Arthur達がそれ等と同じような事をGodsから使命として授かっていたら、自分が付いて行けるかどうか彼女には分からない。
「でも、私にも意地があります。確かに皆-sanには振り回されてばかりですが、これでも助けてもらった恩は忘れてません」
MiriamがArthur達奇妙な三人組と行動を共にしているのは、去年の秋、彼女がArthur達の暮らしていた村に珍しい薬草を採集する依頼の為に訪れたのがきっかけだった。
主な街道から外れ、Adventurer’s Guildの出張所も無い辺鄙な村を囲む森で薬草を探していたMiriamは、そこでOgreに襲われた。
Devil Nestsではない普通の森で、Rank4のOgreに襲われ、当時のMiriamはhorrorのあまり腰を抜かし、逃げる事も出来なかった。
そこに現れたのは武装した新たなOgre……ではなく、Arthurだった。彼は恐ろしげな咆哮をあげてOgreを威嚇し、怯んだOgreに向かって鉈を振り回しながらphysical battleを挑み、何と勝利してしまった。
そしてOgreの返りbloodで真っ赤に染まったArthurがSmiling Faceで「大丈夫ですか、お嬢-san」と声をかけ、それを見たMiriamのMentalは限界に達し、失神したのだった。
その後、Arthurの家でKariniaの看Diseaseを受け、二人の幼馴染のBolzofoyから村の周辺の植物の植生を教わり、無事薬草を採取する事が出来た。
その数日間の交流で、Arthur達が見かけによらず善人である事を知ったMiriamは、彼等からadventurerに転職しようと考えていると相談を受けた時は、今度は自分が力になる番だと張り切った。
Arthur達をguildのある町まで案内し、暫くはsenpaiとしてadventurerについて教えようと決意したのだ。
……adventurerになるためには装備を買うお金がいるからと、村から離れたDevil Nestsへmonstersを倒しに行ったり、街道の警備隊にmountain banditではないかと疑われ、その疑いを晴らす為に何故かmountain bandit退治に協力したり。adventurerになる前から振り回される事になったが、今から思うと良い経験だ。
「確かに、私では力不足かも知れません。ですが、私達友達じゃないですか! 同じpartyの仲間じゃないですか! 危険だからと私だけ置いて行くのはnoneです!」
「ですが、from hereは本当に――」
「もう止めて、兄-san!」
尚もMiriamを説得しようとするArthurの言葉を、Kariniaの叫び声が遮った。彼女は席から立つと、Miriamの手を両手で包むようにして握り、涙の浮かんだ瞳で見つめた。
「兄-sanだって分かっている筈よ、私達が今ここに居るのは、Miriamのお蔭だって。
Bacias -sama 's Divine Protectionを賜っても、兄-sanは村から出ようとしなかった。私も、兄-sanの負担になっているのが分かっていたけど、外のworldが怖かった。私達brothersは、昔から誤解されてきたから……。
でも、そんな私達を彼女が変えてくれた」
「え、私、そんな大層な事をしたんですか?」
戸惑い気味に尋ねるMiriamに、Kariniaは頷き返した。
「私達三人は、お互い以外に友人と呼べる人がいなかった。Miriam、そんな私達に、あなたは初めて出来た外のworldの友……心友になってくれた!」
「あ、あの、Karinia -san、今、『しんゆう』って……?」
「確かに……Kariniaの言う通りじゃ。同じ村の者からも気味悪がられていた儂等三人を、今では仲間……真の友だと言ってくれる。
Arthur、そんな彼女の意思を無下にしてはいかんと、儂は思う」
「ボ、Bolzofoy -san、真の友って、私は言ってないです……!」
瞬く間に友人から心の友と書いて心友に、そして真の友と書いて真友にと、立場がRank upしていく事に困惑が隠せない。
「確かに、その通りです。Miriam -san。私が間違っていました」
しかし、目から感動の涙を流しながら重々しい口調で自分の手を取るArthurの顔を見ると、はっきり「違います」という事はとてもできない。
「あなたは共に命がけのAdventureをするpartyの仲間、何よりも強い絆で結ばれた友。我々四人、死ぬ時も生きる時も一緒です!」
どうやら、Arthur達は、「adventurer partyの仲間」に対して純粋な思い込みを抱いているらしい。どんな窮地にあっても仲間を見捨てないとか、心と心が繋がっているとか。
そのためMiriamに対しても、partyの仲間=心の友であり真の友、と言う公式が成り立ってしまったのだろう。
(そんな事ありません、Arthur -san! partyの仲間でも仕事以外では仲が悪かったり、Human関係で解散したり、中には仕事中の事故に見せかけて殺しちゃった事件もあるんですよ~!?)
「はい、そうですね」
そう心の中で絶叫するMiriamだったが、口から出たのは同意の言葉だった。
自分から秘密を打ち明けてくださいと言いだしたのに、今さら「ちょっと重いです」とはMiriamには言えなかった。
「分かりました、Miriam -san。打ち明けましょう、Godsが我々に与えた使命とは……今日、Alcremに到着したらしいDhampirの少年、Vandalieu……Godsに次代のDemon Kingと呼ばれて恐れられている彼と接触し、行動を共にする事です」
そして、Godsの試練もろくなものではなかったとMiriamは後悔するのだった。
この日の夕方、Tamer guildにVandalieuが向かった事を知ったArthurが、彼等の帰り道で待ち伏せし、letterを出しに行こうとした時は、彼女は必死に止めた。
しかし、Miriam達のpartyには専門のscout職がおらず、元HunterのArthur以外誰も【Silent Steps】skillを持っていなかった事、そして『Face-Stripping Demon』という物騒な犯罪者が暗躍しているのにfemaleを路地裏に連れて行く事は出来ないと、結局Arthurが一人でletterを届ける事になった。
そして無事Vandalieuの足元にletterを転がす事に成功し、視線が合ってもSmiling Faceを見せて敵意が無い事をappeal出来たArthurは、使命達成に大きな前進を果たしたと確信して宿に帰ったのだった。
そのnight、Ricklent Grand Templeはいつも通り静かだった。
Grand Templeとは呼ばれているし、実際Alcremの中では最も大きく、歴史あるtempleではある。だが、Alcrem DuchyでRicklent信仰が盛んである事実はない。
数千年以上昔、Ricklentを信仰するMageがrunawayした【Demon King Fragment】をsealedした事で、そのachievementに報いる為、そしてsealedを守り続けるための施設として大きく堅牢なtempleが建立された。
その後幾度も国が亡びては興っても、人々の信仰がRicklentからAldaやVidaに移っても、Grand Templeは残り続けていた。
建立された当時sealedしていたfragmentは、時の為政者によってAlda templeに移設されてしまったが、歴代のTemple Headは「重要なのはfragmentではない、そのfragmentをsealedし、それを維持するための知識を後世に伝える事だ」と説き、今もRicklent Grand TempleはAlcremで最も大きく、歴史あるtempleとしての威容を誇っている。
「大図書館の収益はまずまずか。最近は赤字続きであったからな、一安心だわい」
「Mage guildとの共同研究の成果で、Duke 家からの喜捨を頂けたのも大きいですな」
「最近は他のNobleや商人の方からの喜捨が減っていましたからね。Heroに信仰されているtempleの方に人々の信仰と喜捨が集まるのは、仕方のない事ですが」
「最も、そのHero達がどう言う訳か一気にAlcremから去ったので、その内喜捨や寄進も戻って来るでしょう。
Alcremに残っていたHero達も先日旅立ちましたし。当時は、何故揃って同時期に居なくなるのかと、不思議に思いましたが……」
「Temple Headが受けたOracleに関係があるのでしょうな。時期的に見れば、恐らく『Patron Saint of Transforming Equipment』Vandalieuと。……見本に一本欲しいものですな」
「あれは特定の個人専用のEquipmentだと、Moksiから報告が来ていただろうに。誰用に作ってもらうつもりなのだ、全く」
だが、Grand Temple上層部のClergymanたちは、かなり俗な話題を話し合っていた。
『Magic God of Time and Arts』Ricklentの教義は、人としての正しい在り方も説いていない訳ではないが、研究者としての在り方に重点が置かれている。
理想を見て、夢想を思い描く事、想像する事は重要だ。それが前に進むための原動力になる。
しかし、足元が現実にある事を忘れてはならない。
どんなに重要な研究に取り組んでいようとも、知識を蓄えていようとも、それを維持するには先立つ物が必要なのである。
「その点では、先日の彼には助かったと言えば助かったが、どうするかな? あれほどはっきり聞こえたOracleに逆らうつもりはないのだが……」
「彼にだけ真実を打ち明けましょう。彼なら、情報を漏らす事もあり得ますまい」
「ですな。では、私は今宵大図書館に籠もって朝まで調べ物がありますので」
「私は慣れぬ酒を飲んで、日が昇るまで自室で眠りこけていた、という事にしましょうか」
「待て、-kunは酒が飲めない体質だろう。大丈夫か?」
「ええ、ですから酒瓶の中身はwineではなく果汁です。機密扱いで頼みますよ」
「やれやれ……では私は、三日連続で徹nightしたので熟睡していた事にするか」
「するか、ではなく事実でしょうに。若くないのだから、徹nightも程々に」
night、何があっても気がつかない口実を作ったGrand Temple上層部の者達は解散すると、その口実通り翌朝になるまで何事もなく過ごした。
そして、翌朝。sealedされていたDemon King Fragment、『True』Randolphが託した【Demon Kingのfallopian tubes】と正体不明のfragmentのsealedの二つが、偽物にすり替わっている事が判明した。
temple上層部は市民に混乱が広がらないように一般に情報を公開するのを止め、領主であるTakkard・Alcrem Dukeに何者かに盗み出された事を報告した。
そして、『True』Randolphにのみ真実が伝わるようにした。
『Magic God of Time and Arts』RicklentからのOracleにより、midnightにstealthこんでくる何者かが、貴-donoが預けた【Demon King Fragment】を盗み出すのを放置した。許されたし。
しかし、Ricklent Grand Templeの上層部もRandolphの現状を掴んでいる訳ではないので、その真実は彼が主に使っているOrbaum Elective Kingdomの中心、Elected King領の隠れ家に伝えられた。
そのため、Moksiの町に潜入しているRandolph……BardのRudolfは、まだその真実を知らないままだった。
Alcrem DuchyがAlcrem Kingdomだった頃から建つAlcrem城。その会議室では物々しい雰囲気に包まれていた。
「いったいどう言う事なのだ……Randolphから一方的にJulianaと、捕まっていた女adventurerを生きたままMoksiの町のadventurerに託したとは聞いたが……それからどんな経緯を経て今のこの状況になったのだ?」
会議室の円卓で、Takkard・Alcrem Dukeは以前Bachemと会談した時とは別人のように老け込んでいた。
「儂は、Julianaを謀殺しようと企んだ訳ではない。村を襲っているのがmountain banditではなくMinotaur……それも【Demon King Fragment】を取り込んだMinotaur Kingが率いる群だとは知らなかったのだ」
そう嘆くDukeに、Duke 家の内政を取り仕切っている、Prime Ministerのような役割を果たしている家宰が大きく頷いた。
「分かっております、Duke閣下。万が一mountain banditではなくmonstersの群れである事も考慮した上で、Juliana -sama率いるKnightの一隊を派遣した事も。
Duke閣下にJuliana -samaを謀殺する意思は無かったと、この場に居る全員が知っております」
「そうだ。その後、Juliana達がmonstersに囚われた事が明らかになった時、Randolphに救出ではなく介錯を依頼したのも、他意は無かった。囚われて時間が経っている。そのまま生きていくのは、あまりにも惨いと考えたが故だった」
「certainlyです、Duke閣下。実の父親である先代-samaがご存命でも、Juliana -samaを哀れに思い、同じ判断を下された事でしょう」
このworldでmonstersに汚されたという事実は、女にとって深い傷になる。Nobleの子女なら尚更だ。良い縁談など望めず、一生をmansionの離れで過ごすか、人里から離れたtempleに出家するかしかない。
その子女の家が余程の権力を持っているなら、monstersに汚された事を隠蔽し、BaronやKnight爵等の下Class Nobleの家に養子に出す事も出来る。しかし、それはbody partと……何よりも心が無事であればだ。
四肢を半ばで切断されてMinotaurの仔を産みつけられた挙句、廃人と化していたJulianaには、とても不可能な措置だ。
「儂が直接依頼した時のRandolphの目。あれを見れば、彼がDuke 家の力が……金と権力があれば、Julianaが生きてさえいればどうとでも助けられただろうと思っていたのは明らかだ。
確かに、生かし続ける事は可能だ。胎の中のmonstersの仔を堕ろし、高価なpotionを使って四肢を再生させる事が出来る。だが、後は何年かかるか分からないMentalの回復を信じて、口の堅いServantたちに世話をさせ続けるしかない。目が覚めるまで何年でも、死ぬまで……だが、それは助けられたと言えるのか?」
Randolphはそれでも、「可能性は残されている」と主張するかもしれない。実際、彼はJulianaと女adventurerを中途半端に助けている。その結果を見ても、Alcrem Dukeからの依頼に、良い印象を持っていなかったのは明らかだ。
「Duke閣下、今は過ぎた事を話し合っている場合ではありません。あのDhampirとJuliana -donoの生き写しのMinotaurの仔をどう始末するか、策を練らなければなりません」
だが、『Alcrem Five Knights』の一人、『Knight of Roaring Flames』Brabatieuは現在に至った経緯と、それが正しかったのかどうかの検証は脇に退ける事を主張した。
「ま、待てっ、Brabatieu! 始末とはあまりに性急ではないか。儂は、そんなつもりでお前達を呼び集めたのではないぞ!」
「ですが閣下! 奴らの魂胆は明らかです!」
主-kunの制止にも耳を貸さないBrabatieuに対して、他のKnightが小さく笑う。
「Knight of Flames -dono、その明らかな魂胆と言うのは、何でしょうか? Spy達の報告には、それらしい情報は無かったはずですが」
「『遠雷のKnight』Sergio、若い貴-samaには分からんようだな。いいだろう、はっきり教えてやろう。
あのDhampir、-sama々な点が不自然過ぎる! 恐らく、他のDuchy……いや、もしかしたらAmid Empireの手の者かもしれん!」
「な、何を根拠に!?」
思わず聞き返すSergioに、Brabatieuはきっぱりと言い切った。
「根拠は無い! だが、考えても見ろ、十を過ぎたばかりの幼子がmonstersをTamerし、しかも次から次に新種にRank upさせたかと思えば、我がAlcrem Duke 家のalchemistでさえ仕組みを推理する事しか出来ないTransformation Equipmentなるmagic itemをいつの間にか発明しており、更にSlumと歓楽街を公然と支配している!
このどれか一つなら、儂もaptitudeに恵まれた少年だと思うが、三つ揃うと陰謀の臭いしか感じられん!」
「で、では彼らの魂胆とはなんなのだ?」
「無論、我がAlcrem Duchyの権勢に傷をつけ、Orbaum Elective Kingdomを混乱させる事でしょう!
Juliana -donoが産んだと評しているMinotaurの仔にJulianaと名付けたのも、彼女の死をAlcrem Duke 家のSuccessor争いによるものだとでっちあげ、醜聞として吹聴するための企みに相違ありますまい!」
Brabatieuの主張する通り、改めて聞くとVandalieuのachievementはとても一人の、それも少年が成し遂げたものだとは考え難い。
だからそれに続く彼のconjectureも、一定の説得力があった。
Sergioもそれは認めたが、彼は自分を若輩者扱いする年配のKnightに皮肉っぽく聞き返した。
「なるほど。確かに出来過ぎだ。きっとあの少年がDhampirだと言うのも、片方を義眼にし、手の爪も何らかの処置を施して変装しているのでしょうなぁ?
他にも、新種のmonstersや強力なGhoul、Transformation Equipmentを用意した、何者かがいるのでしょう。まったく、恐ろしい」
「……貴-sama、何が言いたい!?」
「Brabatieu -dono、Sergio -donoはこう言いたいのではないかな? 確かに疑わしいが、陰謀だとすると必要な工作に対してかかるcostが割に合わないと」
『Alcrem Five Knights』の紅一点……なのだが、Dwarfであるため一見するとShoujoのように見える『Thousand BladesのKnight』ValdiriaがそうSergioの主張を纏めて伝えると、Brabatieuも唸りながら席に座り直した。
「それに、Alcremを騒がせているのはDhampirの少年とJuliana -donoモドキではなく、『Face-Stripping Demon』でしょう。今のところ殺されているのが悪人か、善人の皮を被った悪人ばかりで、幾つかの証拠が顔の皮と一緒に残されているので市民が混乱する事態には至っていませんが……このままではGuard、そして我々Knight団の威光は失われ、信頼は地に堕ちるでしょう」
「確かに……今や『Face-Stripping Demon』は義賊と民に持て囃され、対して我々には冷たい視線を向ける者も少なくないと聞く。
具体的な行動に出ていないDhampir共は監視、若しくは調査に留め、我々はその間当初の予定通り『Face-Stripping Demon』に専念するべきか」
originally『Alcrem Five Knights』に招集がかけられたのは、通常のGuardやKnightではtailを掴む事も出来ない凄腕のAssassin、『Face-Stripping Demon』を捕まえる為だった。
certainly、VandalieuとJulianaに対してもDukeは思い悩んでいるが、より問題となっているのは『Face-Stripping Demon』だ。
「分かってくれたか……たしかにDhampirのVandalieuと、Julianaは無視できない。しかし、未だ彼らが何の目的で動いているのか、ただ単に彼が後のlegendに語られるようなHeroになる非凡な少年なのか、分からない。
そのconditionで性急に手を出せば、我々の方が非難を浴びる事になるだろう」
対外的にはJulianaは死亡し、あの『Juliana』はJuliaと言うfemaleがMinotaurに襲われた結果産まれたTamed Monsterという事になっている。末のImoutoに似ていると言う理由で始末すれば、Tamer guildから大きな非難を受けるだろう。
多くの竜Knightを抱えているため、Wyvernの育成にTamer guildの力を借りているDuke 家としては、guildとの間に亀裂が入るのは痛い。
Duke 家の権力で事実を闇に葬る事も考えられるが……その場合、JulianaのmasterであるVandalieu、そしてその母親であるDarciaの存在が大きすぎる。
門を見張らせていたKnightからの報告によると、新たなGhoulにArachneやScylla、そしてカマキリの特徴を持つ謎の亜人型monstersを連れてきている。Rank3やRank4のただのGhoulやLarge-buildのArachneだと言い張っているようだが、本当かは不明だ。
今後のpolicyを決める為にも、調査は必要だ。
「そこで、彼らの調査のCommandingを『Knight of the Insight』Ralmeiaに任せようと思う」
指名されたKnight……と言う割に鎧ではなくローブを着て、小さなknifeを一本携えているだけの男が頷いた。
「畏まりました。私の【SurveyingのMagic Eye】の力で、かのDhampir達のAbility ValuesやskillのlevelをSurveyingしてご覧に入れましょう」
RalmeiaはaccurateにはKnightではなく、Spyや技術者の類であった。彼が持つUnique skill、【SurveyingのMagic Eye】は、目にした物をSurveyingし、数字で表す事が出来る。
物の大きさや重さ、働いている力だけではなく、対象が戦っている姿や、skillを使っている姿を見ればだいたいのAbility Valuesやskillのlevelを測る事が出来る。
Statusを一目で看破する【Magic Eye of Appraisal】よりも時間はかかるが、情報収集には有効なMagic Eyeである。
「うむ、頼んだぞ。
残りの者達には『Face-Stripping Demon』に集中してもらう。それで良いな、『Knight of the Crumbled Mountain』Gordiよ。お前には、sealedされたEvil God (P)の監視missionから離れて貰う事になるが……」
「構いません」
それまで沈黙を守っていた『Knight of the Crumbled Mountain』Gordiは、気真面目そうな顔で頷いた。
「Age of Gods Era、Heroic God Farmounが崩した山の下敷きにしてsealedしたEvil God (P) Forzajibarのsealedは、そう簡単には揺るがないでしょう。
私はただ、Knightとして剣を捧げた方の意思を尊重します」
「そうか、よろしく頼んだぞ。このAlcremの平和は、諸-kun等の肩にかかっているのだ」
こうして『Alcrem Five Knights』は動きだし、Dukeのstressは緩和され、家宰もほっと安堵した。
しかし、翌日Ricklent Grand Templeからの報告を受けた事で、再びDukeのstressは激増し、Ralmeia以外の四人が再び集められ、それぞれ『Face-Stripping Demon』と【Demon King Fragment】を追う班に分けられるのだった。
midnight、人気の無い廃屋で縛られた男が命乞いをしていた。
「ま、待ってくれぇっ、た、頼むっ、助けてくれっ! あんた、『Face-Stripping Demon』だろ? 違うんだよ、俺は違うんだよ!」
涙と鼻水で汚れた男は、片手に液体で満たされた瓶を、もう片方の手にknifeを持っている人物に、必死で訴えた。
「俺は確かに罪を犯したよ、悪人だ! でもあんたが顔を剥すような極悪人じゃない!」
『Face-Stripping Demon』は、悪人しか狙わない。それも、惨い殺され方をしたとしても世間一般からは同情を寄せられないような極悪人を狙っている。
犯罪者でも寸借詐欺や、市場の売り物をかっぱらう盗人程度には目もくれず、麻薬の売人の元締めやそれに近い幹部、腕利きの殺し屋や、違法Slaveを扱う闇のSlave商、それらと取引をし、甘い蜜を吸っているNobleが主な犠牲者達だ。
しかし、男はそれに当て嵌まらなかった。
「確かに麻薬は売ったけど、俺は下っ端だ! それに人は殺してねぇ! 確かに、俺が用心棒をしていた店は、裏で違法Slaveが取引されていたそうだが、俺は何も知らなかったんだよ!
もうその店の店主も元締めもあんたが顔を剥いだじゃないか! なのになんで今更俺を……ばぼばっ!?」
必死に命乞いをする男に、『Face-Stripping Demon』は瓶の中の水をかけた。
「これは聖水だ。神が、お前のような罪人でも迷わず天に召されるようにと、私に指示されたのだ、感謝して……礎となるがいい。お前は罪人だから殺されるのではない、Demon King討伐の礎となるのだ。
それまで、お前は私が捏造した証拠によって人身売買の共犯という事になるが、事が済めば必ず汚名をそそぐ事を約束しよう」
「な、何言ってんだよ!? あんた、訳がわから――」
縛られた男の声が不自然に途切れ、『Face-Stripping Demon』は更に聖水をかけ、それから彼の顔の皮を剥ぎ始めた。
翌朝、男の顔の皮が、闇Slave商から受け取ったとされる金と、それを告発する書状と一緒に発見される事になる。