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Chapter 255: 都で暗躍する者たち

 Hungry Wolf警備が、前身である犯罪organizationだった頃からの伝手で借りておいた倉庫兼住宅は、Alcremの商業区と住宅街の境目にあった。

 一階が馬車数台を止められ、更に荷物を置く事が出来る倉庫spaceで、敷地内に厩舎もある。そして住居spaceは二階にあり、一roomずつの広さはやや狭いが数は多い。


 originallyChamber of Commerceを運営する商人向けの物件として建てられたそうだ。しかし、大商人にとっては住居施設が安っぽく、かといって中小の商人には建物が大きすぎて賃料が高すぎる、微妙な物件として扱われていたらしい。

 そのため、すぐに借りる事が出来た。


「じゃあ、荷物は置いておきますので。お疲れ-samaでした!」

「お疲れ-samaでした」

 ビビ達は倉庫部分に荷物を運び入れると、二階の住居に向かう事なく撤収を始めた。


「でも、いいんですか? あたし達が宿で、皆-sanが此処で。普通、逆じゃないでしょうか?」

 Milesと同じ色の口紅を使っているビビが、そう不思議そうに尋ねる。この建物が殊更みすぼらしい訳ではない。しかし二階のroomはさほど広くなく、それに具だって揃えられていない。

 中程度の宿でroomを取った方が、余程快適に過ごせるだろう。


 ただ、Servantや従業員の宿舎としては上等な部類なので、ビビは普通逆ではないかと思ったようだ。

「いいのよ、ビビ-san。私達、二階は使わないから」

 しかしDarciaはそう答えた。土間の馬車置き場と、硬い板張り倉庫しかない一階で寝泊まりするつもりなのかと、ビビ達は驚いたが、すぐに彼女の存在に気がついた。


「拙者達がいては、このの宿屋は相手をしてくれそうにない。それに……あの階段は、拙者には狭すぎる」

 Gizaniaがそう言って、Giantな蜘蛛のlower bodyを見る。その大きさは馬車よりも明らかに大きく、この貸の階段では確実に詰まってしまうだろう。


「まあ、Gizania -donoだけではなく某達も嫌がられるでござろうからな」

「ボク達Vida's New Racesでも、人には無い部位があるからね。ボクだと床がヌルヌルになりそうだし……そもそも、このの宿のroomは、ボク達にとっては快適じゃなさそうだから」

 EmpusaMyuzeが鋭い刃のついた鎌腕を、Privellower bodytentacleを挙げて見せながら、そう言う。


 確かに、Humanが快適に寛げるように作られたこのの宿屋は、最高Classの宿でも彼女達は快適だとは感じないだろう。

「それに、あたしやMyuzeroomに入れてもらえないだろうし。Ghoulと謎の人型カマキリは、Vida's New Racesだと思われてないし」

「はっ!? それもそうでござった!」


「なので、このまま一階でみんな楽しく過ごそうかと、寝る時は馬車のcarriageで良いですし、何カ月もこのに滞在する訳ではないですからね」

 なるほどと、ビビは納得した。【Intuitionskillを持つ彼女だが、別に未来や過去が見える訳ではない。危険にいち早く気がつき、複数の選択肢がある時、どれが一番良いか分かる場合があるというだけのものだ。


「そう言う事なら分かりました! あたし達はここで失礼します!」

「今日明日はまだにいますんで、何かあったら言づけてくだせぇ!」

 だからビビ以下、lipsの手入れを欠かさないHungry Wolf警備所属の警備員達は、撤収する事にした。


 Vandalieu達の言動から、ScyllaArachne達でも快適に過ごせて、利用可能な宿泊施設があるが存在する事が窺えるが、今は追及しない方が良い。

 尋ねたら教えてくれそうだが、知ったら後に引き返す事は出来なくなる。そんな予感が【Intuition】的にしたからだ。

 もっと後で、心の準備が出来た頃に改めて尋ねるか、VandalieuMilesが打ち明けても良いと判断するのを待つべきだ。


 そう判断してビビ達は宿屋へ去っていった。


「じゃあ、荷物を置いたらTamer guildに行きましょう。kaa-sanは、Church of Vidaですか?」

 そんなビビ達の胸の内を知らないままVandalieuが訊ねると、Darciaは「ええ、でもその前に」とVandalieuを引き止めた。


「あのKnight -sanMagic Eyeで睨もうとしたのは何故なのか、考えてからにしなさい。Tamer guildで同じ事が起こるとは考えにくいけど、Bachem -sanも来ているんでしょう? 迷惑をかけたら悪いもの」

 Moksi branchGuild MasterであるBachemも、Alcremguild本部に呼ばれていた。彼はVandalieu達よりも後で、Huge Wyvern……正門での戦いの後Rank upしてGreat WyvernになったTamed Monsterの背に乗って空を旅してAlcremに向かい、既に到着している筈だった。


 そのBachemの前でtroubleを起こすと、彼の顔に泥を塗る事になってしまうとDarciaは思ったのだ。certainly、不幸な犠牲者が出ないようにとも思っている。


「それはそうだけどDarcia -sanVan本人も分からないって言っていたし、考えてもすぐに答えは出ないんじゃないかな?」

kaa-sanPrivel、それなのですが自問自答した結果、だいたい分かりました」


「分かったのっ!? いつの間に!?」

Priveltentacleから解放され後、MyuzeKatiaと手を繋ぎながら歩いている間に」

 【Group Thought Processingskillを使い、思考力の半分以上を割いてVandalieuSelf分析を行った。自分自身のego、そして『Trial of Zakkart』でFusionした虚像の自分、そして 【Demon Kingshadow】を取り込んだ事で出来たshadowの自分。それ等で議論を行った。


 まさか、『Earth』で例えると連行されるspace (UCHUU)人のような体勢でそんな事をしているとは思わなかったので、驚くPrivel達にVandalieuは自分達が出したconjectureを口にした。


「今までDevil NestsDungeonでのlevellingや、決闘、そして殺し合いでFangを含めて、仲間が傷つく事はいくらでもあった。しかも、受けた傷は明らかに今回よりも重いのに、その時は抑えきれない程の激情には駆られなかった。

 それを考えた結果。Fangが攻撃を受けた状況が問題だったのではないかとconjectureしました」


「状況、と言うと?」

Fangが自力で回避や反撃が出来ない、攻撃を受けるしかない状況だと思います」

 普通の戦闘では、まず起きない状況をVandalieuは述べた。毒で体が麻痺しているか、magicなどで拘束されていればあり得るが、それも毒やmagicを攻撃と解釈するなら、それを避けるか防げば回避できるので、結局当てはまらない。


『ふむ……理不尽な状況で一方的に暴力を受けざるをえなくなる状況だと、ついカッとしてしまうという事ですかな?』

「はい、maybe。恐らく、『Earth』や『Origin』でのtraumaを引きずっているのかもしれません」

 当時のVandalieuは、自分では避ける事も防ぐ事も出来ない暴力を受けていた。それを思い出して頭にbloodが上るのかもしれない。


「それって結構不味いんじゃないですかね? Nataniaはまだしも、Gizania -san達が絡まれたら……」

 SimonSamの纏めに頷いたVandalieuに、深刻そうな顔をしてそう言う。


 Alcremは、統治者であるDukeが率先してVida's New Racesにも友好的なAlda Reconciliation Factionを推している。そのため、ここの領民達は、Hartner Duchyの領民よりもVida's New Racesには友好的な傾向がある。

 しかし、見た目がHumanから大きく異なるGizaniaPrivel、そしてそもそもVida's New Racesと認識されていないGhoulKatiaは、いわれのない差別を受け、実際に手を出される可能性もある。


 それをSimonは心配したようだが、Vandalieuは首を傾げて答えた。

「その時は、あのKnightと違って何も問題はないのでやってしまえば良いでしょう」

「ええっ!?」


「そうね……仕事だから仕方なくって訳じゃないし。自分の意志でそう言う事をする人は、別に可哀そうでも何でもないもの」

 Vandalieuの言葉にDarciaまでどうしてと驚いたSimonだったが、はっと我に返った。


「……そう言えば、皆Tamed Monster扱いでに入ったんでしたね。確かに、陰口程度ならともかく、実際に手を出すようなidiotは殺されても文句は言えないか」

 Tamed MonsterTamerにとっての武具、生きていくために必要な存在だ。それに手を出す、危害を加え、攫おうとする行為は、adventurerKnightから武具を奪う行為に等しい。


 『Earth』ではともかく、この『Lambda』では強盗を殺しても罪には問われないので、Gizania達を攻撃してきた者をVandalieuslaughterしても、問題にはならないのだ。

 そしてDarciaJuliana達が気にしているのは、あの四い顔つきのKnightのように職務上の理由で、悪意や害意無く攻撃した者達が、惨い目にあう事だ。無謀な差別主義者がrunawayした末路を、気にしている訳ではない。


certainly、程度がある事は俺も分かっています。childMaroll達の毛を引き抜こうとしたり、酔っぱらいがPrivel達に絡んだりする程度なら、Even now似たような事がありましたが、我を失う事はありませんでした。

 相手がNobleなど身分のある相手で、した事が悪質なら……ばれないようにやります。幸い、【Perfect Recording】のお蔭で、顔も声も絶対忘れないので」


 Vandalieuがそう言い終えたのと同時に、倉庫の中に複数の小柄な人shadowが現れた。

King、その『ばれないようにやる』の、俺達の仕事か?」

 黒い肌に尖った耳や鼻、釣り上がった目つき。そして黒装束に背中にはninja刀。Black GoblinBraga達だ。彼等ninja部隊は、暫く前から交代制でAlcremに暗躍していた。


「『Face-Stripping Demon』お疲れ-samaBraga。新しい仕事の話は気にしないでください」

「そうか。そろそろlistにある奴等、殆ど送ったから最近暇だった」

Isla、もう追加のlist送って来ない。帰って良い?」


 Braga達は『Hyena』のGozorof等、Moksiを根城にしていた犯罪organizationと取引していた者や、逆に競争相手だった犯罪organizationの者を、始末して回っていたのだ。

 犯罪者を罰するだけなら、証拠をGuardの詰め所に置いて来ればいい。だが、そのGuardを纏める隊長の一部や、Knight、そして一部のNobleが犯罪organizationと繋がっており……実は犯罪organizationの幹部だった者までいた。


 この状況では証拠を届けても大きな動きは期待できない。下っ端がlizardtailのように切り捨てられるか、全て握り潰されてしまう。


 後、Vandalieu達が掴んでいる証拠の中には、Alcrem Duchy政府が信じるか疑わしい証拠も含まれている。霊やUndead、何者かにEmotional、物理的に脳を弄られた犯罪organizationmemberの証言などだ。

 容疑者のKnightNobleが「狂った死人や、何者かにTortureされた犯罪者の戯言を信じるのですか!? これは私を陥れようとする何者かのTrapだ!」と主張したら、maybe Alcrem Dukeは容疑者の言葉の方を取るだろうと、Vandalieuは考えた。


 だから、実力行使だ。certainly、時間をかけて調査し、動かぬ証拠を掴み、それを汚職に手を染めない清廉なKnightNobleに渡せば正規の手段で犯罪者を罰する事も不可能ではないだろう。

 しかしVandalieuはそこまでしてAlcrem Duchyの警察機関の面目を保ってやる理由を思いつかなかった。


「苦戦したりはしませんでしたか?」

stealth込んで、Islaに教わった通り顔の皮を剥いで、後は連れて行くだけ。纏めてTalosheimに送る。苦戦しなかった」

Luciliano、大喜び」

「賞金かけられたけど、誰も私達の事、複数犯だと気がつかない」


 殺した相手の顔の皮を剥ぎ、それだけを残して死体すら持ち去る謎の殺し屋。何故そんな手口を選んだのかと言うと、Islaが生きている標的の顔を鮮やかに剥ぐのを見て、真似を始めたためだ。

 お蔭でAlcremhorrorのどん底に……と言うところまではいかなかった。『Face-Stripping Demon』が殺すのは犯罪者か、reputation悪い NobleKnightだけなので、真っ当に暮らしている一般人には関係ない。それどころか、一般人からは何故か義賊として扱われているようだ。


「流石でござるな~。某もBraga -dono達のようなninjaになりたいものでござる」

 Champion Hillwillowが残した、エンターテイメント的なninjaSamuraiの知識が伝わっているBoundary Mountain Range内部では、ninjaとは戦闘要員である。そのため、MyuzeBragaBlack Goblinに尊敬のまなざしを向けている。


「そんなに凄くない。不意を突かない戦いなら、Myuzeの方が強い。流石、body partWeapon EquipmentKunoichi

「いやいや、そんな事ないでござるよ」

 そうお互いを称えあう二人。ちなみに「body partWeapon Equipment」と言うのは、文字通りの意味である。『Lambda』のKunoichiBody派なのだ。


「そう言えば、さっきは殆どと言っていましたが、まだ残っているtargetが居るのですか?」

 Vandalieuが訊ねると、Black Goblin達は顔を見合わせた後、悔しそうな顔をして答えた。


「何人か殺し損ねた。でも、生き残っている奴はいない」

「俺達の真似、している奴がいる。そいつが、listに載っている悪人と、載って無い悪人を殺してる」

 Braga達が『Face-Stripping Demon』としてnameが知られるようになった頃、彼らと同じ手口で殺されたらしいlistに無い女の顔の皮が見つかった。


 certainlyBraga達の誰かが独自に見つけた悪人を、勝手に始末した訳ではない。そもそも、殺された女が麻薬の売人の元締めだった事も、彼等は知らなかったのだ。

 その後も、同じようにBraga達の知らない『Face-Stripping Demon』が暗躍し、listに載っていた悪人も何人か先を越されてしまったらしい。


 それを何故今までVandalieu達に報告しなかったのかと言うと――。

「でも、報告するような事か迷った。別に悪い事、してない」

「うん、真似されただけ。先を越されたの、悔しい。でも、手伝ってくれただけかもしれない」

 そういった理由からである。


「そうですね。模倣犯が悪人以外を標的にしたら一大事ですが、悪人しか狙っていないようですし……」

 VandalieuBraga達が言った理由に理解を示し、模倣犯に対してどう対応するか首を傾げた。

 彼等にとって、殺人は無条件に罪にはならない。自衛の為にはcertainlyだが、そうでなくてもmountain banditや不法Slaveを商う闇Slave商、殺人鬼等々を殺し、生きたまま拉致し人体実験に使用した挙句最後にはUndeadの材料や、Golemの動力源に使用している。


 そのため、模倣犯が独自に悪人を殺している事には何も……いや、若干だが感心しているぐらいだ。

 certainly法律的には犯罪に当たるのだろうが、それを取り締まるのはAlcrem DuchyKnightGuard、治安維持organizationの仕事であり、『Face-Stripping Demon』の黒幕であるVandalieuの仕事ではない。


 このままなら、模倣犯は「どうでもいいか」と放置されていただろう。


「師Artisan、確かに殺されたのは悪人ばかりだとしても、正義や義の為じゃなくて、金や縄張りの為に起きた悪人同士の潰し合いで起きた殺しを、『Face-Stripping Demon』に濡れ衣を着させて誤魔化しているだけのような気が……。もしそうだったら、放置するのは不味くないですかね?」

Simonもそう思うよな!? 良かった~、オレが変な訳じゃないんだ。そうだよなー。確かに悪い事とも言えないけど。良い事じゃないよな!」


 しかしHuman社会の常識を保っているSimonが自信無さそうに、だがしっかりとそう主張し、Nataniaも同調する。

Vandalieu -samaSimonconjecture以外にも、犯罪者達は顔の皮を剥いだだけで、実は生きているという事もあり得ると思います」

 更にJulianaが、模倣犯に殺されたはずの悪人達の生存説を唱える。


「え、でも顔の皮が残ってたんでしょ?」

「確かに死体は見つかっていないが、【Rapid Regenerationskillも無くそんな事をしたら……DarciaJeenaのような高度な治癒magicの術者に伝手がなければ、元にも戻らないぞ」

「そこまでするのでござるか?」

 Julianaの唱えた説に驚くKatiaGizania。そして聞き返したMyuzeに、彼女は頷いて答えた。


「並の治癒magicの術でも、ある程度は治ります。上Classpotionを備蓄しているかもしれません。

 それにAssassinの中には、変装のAdeptになるために自ら顔を削ぎ落とす者もいると聞きますし、生き残る為ならそこまで思い切る者が出てもおかしくはないと思います」


 Julianaの主張に、最近までBoundary Mountain Range内部のVida's New Racesが治める国で、Production relatedの職業に従事する大人しく柔和なHumanしか知らなかったGizaniaMyuzeが衝撃を受けた。しかし、驚いて思わず反論するような事は無かった。

『なるほど。何にせよ、模倣犯が何故『Face-Stripping Demon』の犯行を模倣しているのか、目的を探らなければならないという事ですな』


 何故なら、Boundary Mountain Range外から来た元HumanSamが、殺人馬車と化しているのだ。生きているHumanの中にも、それぐらい思い切る者が存在してもおかしくない。二人はそう考えたようだ。


「分かりました。調べてみましょう……とは言っても、今日はTamer guildにも行かなければならないので、霊の言葉を聞くぐらいですが。Gufadgarnは、LucilianoIslaにまだ生きている実験体から情報を聞き出すように、伝えてください」

「畏まりました」


「俺達、情報屋のいる場所知ってる。俺達自身は、会った事がないけど」

 Braga達は交代制でTalosheimに戻りながら、Alcremで暗躍し続けていた。しかしBlack Goblinである彼らは人に姿を見られる訳にはいかないので、ひたすら暗躍していただけで情報収集は殆どしていなかったのだった。




 模倣犯について話した後、VandalieuGizaniaPrivelKatiaMyuze、そして【Shadow Assimilationskillで付いて来たManeHoofを連れて、Tamer guild本部に向かい……用事を終えて今出てきたところだった。

 certainlyVandalieuが暴れてguild本部がDecayするような大惨事は起こらず、Guild Masterとの会談は表面上だけは穏やかに終わった。


「すまんなぁ、気分のいい話じゃなかっただろう?」

 Vandalieuと同じく本部のGuild Masterに呼ばれていたBachemが、苦笑いを浮かべて尋ねた。

「はい」

 即座に、端的に「不愉快だった」と答えられたBachemの頬が、一層引き攣った。


「そんなに不愉快だったのでござるか。厩舎は結構快適でござったが……」

「施設の水準と長の人柄は一致しないという事か。それはともかく、良く堪えた」

「うんうん、偉い、偉い」

「あ。これあたしも撫でる流れだ! えらい、えらい」


 Tamed MonsterであるためVandalieu達がGuild Masterと話している間、厩舎で待っていたGizania達が順番に彼の頭を撫でる。

 彼女達が居た厩舎は、それぞれの体型に合わせ分けられていたが、十分広く、また亜人型である程度知能の高いmonsters用の区画もあり、そこは簡素なroomのようになっていた。


 そして区画ごとに数人の管理人がおり、Gizania達にそれぞれ一人が担当として付き、コンシェルジュのように世話を焼いてくれたのである。

 飲み物を頼めば水ではなく、お茶や果汁を水で割った物が。軽食を頼めば、sandwichsoupが出てきた。


 厩舎ではあるが、待遇は中程度の宿よりも上である。

 guildの職員たちの対応は、それほど慣れていて、戸惑うようなそぶりは見せなかった。恐らくArachneScyllaではないだろうが、Even now Vida's New RacesTamerした事にして連れ込んだTamerがいたのだろう。


 certainlyGizania達はGuild Masterが別のから態々招いたVandalieuTamed Monster、いわゆるVIPだからこその待遇というのもあるだろうが。


「えらい言われようだが……反論は出来んな」

「ヒヒヒン」

「ブルルル!」

 shadowから上半身を生やしたManeHoofに顔を摺り寄せられているVandalieuに、Bachemは苦り切った顔で弁護を諦めてしまった。


「……まあ、Tamerとしては優秀な人なのだろうと思いますよ。guildの職員から、現役時代は『巨鬼使い』とか『無き鬼General』とか呼ばれていたと聞きましたし。

 後、Masterとしての手腕も、問題ないと思います。俺、人物眼にはそれ程自信はないのですが」

 本来なら弁護する側であるはずのBachemが諦めてしまったので、Vandalieuは話の流れでGuild Masterをそう弁護していた。


 AlcremTamer guild本部のMaster、ペドロ・オルセン。Alcrem Duchyにある全てのbranchtopに立つ人物は顔や腕等、所々に傷跡が残る歴戦の古強者と言った容姿の人物だった。

 口調は多少粗っぽく、仕草には丁寧さが欠けるが、悪い人ではなさそうだ。……単に、Vandalieuとは相性が悪いだけで。


 今でもTrollOgreMinotaurを十数匹従えており、彼とそのTamed MonsterだけでKnight団一つ分の戦力になる。『Alcrem Five Knights』が六Knightだったら、六人目は彼だっただろうと言われるぐらいの腕の持ち主だ。


 だが、その分Tamerの腕を、Tamed Monsterの強さで測る傾向が強く、更にTamed Monsterを文字通りの意味でWeapon Equipmentとして扱う傾向がさらに強い。だからこそ彼のTamed Monsterは、訓練された軍隊のように厳しく統制されているのだが……Tamed Monsterfamilybrothersのように考えるTamerからは酷く嫌われている。


「彼のpolicyが間違っているとは言いません。きっと、OgreTrollを従え、中でも安全に運用できる程律するには、彼の方法が正しいのでしょう。

 でも、そのpolicyを俺に助言として教えるのはどうかと思います」

「ペドロ爺-san、押しが強いんだよな。しかもageを取ってから説教臭くなって……俺も苦手だ。Tamerなんて千差万別なんだから、一番正しい方法なんて無いと思うんだがな」


 しかも Guild Masterになってから、面倒くさいTypeの老人と化していた。それでもGuild Masterを十年以上勤めていられるのは、彼に賛同しているTamerも多い事を意味している。


「なるほど。Van -donoとは水と油のような人でござるな」

「ボクは、その扱い方じゃ嬉しくないなー」

 そういいながらも、MyuzePrivelはこの場に居ないIslaEleonora達の顔を思い出した。maybe、彼女達ならそんな扱いでも喜んで……いや、何かのご褒美のようにVandalieuの命令を聞くだろうと。


「まあ、Tamed Monsterpolicyについては話が長くて、それとなく七回ほど断ったら、Bachem -sanと同じように『Tamerは千差万別だ』と言って引き下がってくれましたし、guildに就職する話は一回断るだけで引いてくれましたし」

「おや? VanTamer guildで囲い込むのが目的かと思ったが、やけにあっさり諦めたな」


「それはペドロの爺-sanも、本気でお前を今すぐ就職させようとは考えちゃいないって事だろう。お前-sanは未成年だし。

 Adventurer’s Guildよりも先に唾を付けておくだけで、とりあえず満足したはずだ。……その分、俺の昇進は本気だったようだが」

 不思議がるGizaniaに、Bachemはそう説明する。ペドロの狙いは、『Genius Tamer』のVandalieuTamer guildMasterが目をかけている事を内外に示し、Adventurer’s Guildをけん制する事だったらしい。


「え? 断られてるのに? Tamer guildは袖にされたって事にはならないの?」

「それは、断られたのはまだ若くてimmatureだから、現場で経験を積みたいと言われたからだと、それとなく捏造して広めるつもりだろう。時間さえ経てば、Tamer guildに就職すると他のguildが誤解するように」

「……Guild Masterって、下手なNobleより考える事がNobleっぽいのね」


 そうKatiaが感心と呆れ半分の視線を、遠ざかりつつあるTamer guild本部の建物に向ける。

「まあ、ペドロ爺-sanHonorary Baronだからな。一応Nobleと言えば、Nobleか」

「……ああ、あの人が俺の目標だったHonorary Noble……それがTamed Monsterに対する価値観が違うとはいえ、あの提案をするとは嘆かわしい」

「普通のmonstersTamed Monster相手なら、普通の提案なんだがな……」


「ん? どんな提案をされたの?」

 言葉を濁すVandalieuBachemを不思議に思ったKatiaが尋ねたが、二人はペドロからされた提案についてはっきりと答えようとはしなかった。


Juliana達に関する事ですが、KatiaMyuzeにも関係あるので、帰ってから説明します。外では話しにくい事ですし」

「ペドロの爺-sanも無理強いするようなことはないだろうし、しつこく繰り返すようなこともないだろうから……穏便に頼む」


「な、何だか不吉な予感がするわね」

「ううむ、Humanは怖いところでござるな」

 そう話しながら一行が建物と建物の間の細い路地の横を通った時、小さな何かがVandalieuの足元に転がって来た。


「……」

 それは紙片を括りつけた小石だった。路地にVandalieuが視線を向けると、暗がりに強面で実に良いmuscleをしているのが服の上から分かる男が、凄惨な笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 Vandalieuと視線が合った瞬間笑みを深めると、男は素早く身を翻し、音も無く路地を走り去った。


「何かあったのか?」

「いえ、気のせいでした」

 Vandalieushadowに潜んでいるMimicry SlimeKühlに取り込ませると、もろともshadowに収納した。

 そして素知らぬ顔で、途中までBachemと話しながら帰ったのだった。




―――――――――――――――――――




Name: Braga

Title: Face-Stripping Demon】(NEW!)

Rank:

Race: Black Goblin ninja Absolute Master

Level: 90


Passive skills

Dark Vision

Abnormal Condition Resistance:5Lv(UP!)

Enhanced Agility:10Lv(UP!)

Intuition:6Lv(UP!)

Detect Presence:9Lv(UP!)

Ninja weapon equipped, then Ability Values Augmented (2) : Medium(Ninja weapon equipped, then Ability Values Enhanced (1) awakened into!)

Murder Healing:3Lv(NEW!)

Strengthened Attribute Values: Duty:4Lv(NEW!)


Active skills

Dagger Technique:10Lv(UP!)

Throwing Technique:9Lv(UP!)

Silent Steps:10Lv(UP!)

Trap:7Lv(UP!)

Dismantling:7Lv(UP!)

Lockpicking:5Lv(UP!)

-Transcend Limits-:1Lv(-Surpass Limits- awakened into!)

Assassination Technique:7Lv(UP!)

Ninja -Surpass Limits-:4Lv(UP!)

Coordination:6Lv(UP!)

Pursuit:4Lv(NEW!)

Torture:3Lv(NEW!)

Familiar Spirit Demonic Advent:1Lv(NEW!)


Unique skill

Human Slayer:7Lv(UP!)

Vandalieu’s Divine Protection(NEW!)




Monster explanation:Black Goblin ninja Absolute Master Luciliano


 Rank7のninja Master、そしてRank8のninjaハイMaster、それから更にRank9のninja Absolute MasterRank upしたBraga

 恐らく上位種では無いGoblinの中でも、最も高Rankに達したGoblinだろう。


 更にninjaの業を極めた時、彼は何になるのか……。


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