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Chapter 253: 新member募集中!

 ElfBard Rudolfと身分を偽った、『TrueRandolphへの侵入はあっさりと成功した。

 Bardは特定のguildに属する義務の無い職業で、adventurer以上のrootless草だ。だから当然賞金首や、諜報organizationの工作員が身分を偽るために、Bardを名乗る事が少なくない。


 ただ、青い髪と瞳のElfBardはとても目立つので、門番をしていたGuardも賞金首の類だとは考えなかったようで、簡単にに入る事が出来た。

 originally Moksiが交易都市で人の行き来が盛んなであり、その中にはBardも含まれていた事が良い方向に働いたようだ。


しかし、まいりましたね」

 だが、『Rudolf』の口調でRandolphは苦笑いを浮かべた。

「まさか、入れ違いになっているとは。我ながら、timing悪い事です」

 彼が変装までしてMoksiに来た目的は、Vandalieuに会う事だった。会って、どんな人物なのか確かめたかった。


 しかし、そのVandalieuが既にAlcremに旅立っていたと、Guard達から聞かされたのだ。

(空を飛んで移動したから、途中の村やで拾えたはずの情報が手に入らなかったからな……まさか、そんな事になっているとは。

 だが、徒歩で旅をしていたらここまで来るのに一月近くかかる。他の旅人の目につきながら、街道を疾走する訳にはいかない以上、仕方のない事だ)


 そう考えながら、Randolphは旅のBardらしく安宿にroomを取り、そのまま情報収集を始めた。

 今の彼は、Dhampirの少年を題材にした曲を作るためにに来たBardなので、Humanに聞き回っても不自然ではない。一仕事終えたadventurermercenaryの昼食代を奢ったり、同じBardから話を聞いたりすれば、噂話は幾らでも拾える。


 結果、分かったのは驚くべき事だった。Centerで聞いた噂話の幾つかは事実であり、更にTrue Ruler of the Red-Light Districtであり、を守ったHeroであり、Randolphが聞いた事もないmagic itemを発明し、templeから聖人認定され、領主からは勲章を授与されている。

 人々から少し話を聞いただけでこの多-samaさだ。とても一人の活躍によるものとは思えない。


 それに、彼以外の関係者の活躍もかなりのものだ。

「あの時のDarcia -san達の活躍と言ったら! Rodriguezは流石BClassって感じだったし、SimonNataniaも凄かったが、やっぱりDarcia -sanだな!」


 酒場で声をかけた『Rock Iron Party』と言うpartyleaderRockが正門で起きた戦いを熱弁し、特にDarciaの活躍を絶賛した。早朝の狩りを終えて一杯飲んでいる事もあるだろうが、それだけDarciaに心酔しているのだろう。


「【Familiar Spirit Advent】に、形状が変化するmagic item。そして大勢に付与magicを唱え、前線に出て賊の首Classを上げるとは……いや、素晴らしい。私もその場に立ち会いたかった!」

 そうRockに調子を合わせながら、Randolphは頭を回転させる。


(Nataniaが立ち直ったらしいのは良い事だが、まさかVandalieupupils入りとはな。やはり、隻腕の男に彼女を預けた時、近づいて来ていたのは彼だったのか。そうなると【Demon King Fragment】にimpactを及ぼしたのもやはり?

 しかし、彼の関係者も尋常ではない。特に彼女だが)


 Rockが熱弁しているDarciacertainly、どこからか連れて来た二人のGhoulに、『Hungry Wolf』のMichaelKanako達……そしてNataniaだ。

(隻腕の男もそうだが、彼女もそう強そうには見えなかった。多少出来たとしても、DClassの範囲内だったはずだ。それがあの活躍。

 magic itemの義肢の性能が優れていたと考えても、おかしい。成長が速すぎる)


Rock、何言ってんだ。Rudolf -san、『Giant Splitter』のBasdia -sanの方が凄いんだぜ! 同じ斧使いとして、憧れずにはいられないって感じで! 俺はKnight -samaじゃないが、あの鼓舞の言葉には奮い立ったぜ!」

「いやいや、やっぱりZadiris -chanだろ。確かにBasdia -sanも凛々しいが、可憐さじゃZadiris -chanだ! Stageでも練習を頑張っているんだなって感じがして、そこが良いだろ!?」


「私はKanako -chanだな。確かに、この前の戦いでは目立った活躍は無かった。だが、可憐さと言う点ではloseいないはずだ。いや、Stageでは他のmemberをリードし、followもいれている甲斐甲斐しい娘だ」

「可憐って……ちょっとあざとすぎないか? それだったら、Juliana -chanだろ。見ていると、姪っ子を思い出して和むんだよな」


 Rock以外のmemberも、それぞれ別のVandalieuの関係者のnameを挙げて、熱弁を振るう。

「あの、Stageとは? それにJuliana -sanとはどなたの事ですか?」

 彼らの話に幾つか意味の分からない言葉と、聞くとは思っていなかったnameがあるのに気がついて、Randolphは思わず聞き返していた。


「え? 知らないのかい、Rudolf -sanVandalieuに興味があってこのに来たって言っていたから、てっきり知っているかと思ったのに」

「ええ、実は早くこのに来たくて、途中の村やでは足を止めずに旅をしていたので」

「そうなのか。じゃあ、これが食い終わったら案内してやるよ。俺達も飯が終わったら、見に行こうと思っていたんだ」


 どうやらStageの方は、Vandalieuの関係者が何故か歌やdanceを披露しており、それに二人のGhoulが出ているらしい。単にこの辺りでは珍しいGhoulDark Elfを見世物にしている……とも思えない。Human達のGhoulに対する理解を深めるのが目的なのだろうか?


 そこに行けば、に残っているVandalieuの関係者を自然な形で見る事が出来るだろう。

「それで、Julianaと言う方については、初めて聞きましたが?」

「ああ、VandalieuTamed Monsterの一人で、Minotaurと人の間に生まれたVariantか何からしいけど、詳しくは知らないな」


「見た目はHumanの女の子に牛のtailが生えているだけで、可愛い子だよ。まだ小さいから、正門の戦いには参加していなかったけど、VandalieuFood Stallを時々手伝っていて、俺達はその時会ったんだ」

 どうやら、NataniaのようにJulianaも立ち直った、と言う事ではないらしいとRandolphは考えた。


(しかし、どう言う事だ? Humanの女の子そっくりだと? Variantにしても程があるだろう!?)

 adventurerとして豊富な経験を持つRandolphは、内心でそう叫んでいた。

 Variantと言うのは、その種の通常の個体にはない特徴やAbilityを持っている個体だ。Randolphも、これまで炎の息を吐くGoblinや、毒fangsを持つKoboldの生えたHuge Boar等、-sama々なVariantを討伐してきた。


 そもそも、MinotaurOgreVariantが増えていったとされるraceだ。そのMinotaurKingJulianaに植え付けた、【Demon Kingfallopian tubes】の力で創った卵から孵化した個体がVariantでも何の不思議もない。寧ろ、納得できる。

 だが、HumanShoujoそっくり……存在しないはずの牛のBeast raceのような姿というのはあり得ない。


「それは、ぜひ一度会ってみたいものですな」

 しかしBardRudolfmonstersの生態に詳しいのは妙なので、そう言ってnodだけにした。

(まあ、人にCamouflageしているmonstersもいない訳ではない。それに、少なくとも彼らがJulianaと同じnamemonstersの仔と会っているのは本当だ。自分の目で見てもいないのに否定する事はないか。

 だが……もし人の方のJulianaに似ていたとしても、母親と同じnameを付けるのはどうなんだ? 母親と言っていいか微妙ではあるが)


 しかし、頭の中は思考でいっぱいだった。自分の経験に当て嵌まらない事を否定しようとするのを止め、生まれたmonstersの仔に何故「Juliana」と言うnameVandalieuが付けたのか、疑問の答えをconjectureする。


「それが、残念だがJuliana -chanVandalieu達とAlcremに向かったから、今には居ないんだ」

「そうですか、Alcremに……」

 だが、疑問の元であるJulianaAlcremに向かっているらしい。一瞬、今すぐ彼女とVandalieuの後を追うという考えが脳裏によぎったが、止める事にした。


 着いた当日に旅立つのは幾らなんでも目立ちすぎる。それに、このには他の関係者が残っているし、恐らくVandalieuMoksiに帰って来る。

 なら、それまでこので情報を集めていた方が良いだろう。……変装だけのつもりだったBardの真似事を、酒場で何回か酔客相手に披露することになるだろうが。


(金はあるのに、稼いでいる-sama子の無いBardは不審だろうからな)

 幸い、Randolphは竪琴や太鼓の演奏には覚えがあり、歌にも自信があった。adventurerとして経験が浅い頃は、それこそBardの真似事をして生活費を稼いだこともある。


 その頃……もう二百年以上昔の事を思い出し、一瞬遠い目をしたRandolphに、Rockが話しかけた。

「今から行くとStageが始まる頃に着けそうだが、どうする? 来るか?」

「ああ、そうでしたね。ご一緒しましょう」

 cafeteriaから出て、Open Plazaに設置されたStageに向かう。Vandalieuの関係者は、ここで二日に一度歌やdanceを披露しているらしい。


 彼女達がStageに上がっていない時は、他のBardや芸人が演奏や大道芸を披露し、劇団による演劇が催されている。しかし、一番盛り上がるのはやはりVandalieuの関係者達による「Concert」だと言う。

「なるほど。確かに、これは盛り上がるのも納得です」

 その「Concert」を見たRandolphは、Rock達の態度も当然だと理解した。


『皆、今日も儂達の為に集まってくれて感謝感激じゃ!』

『今日はあたしとZadirisBasdiaTrioで~す! 一生懸命歌うので、よろしくお願いします♪』

『では、今日も行くぞ、Transformだ!』

 ZadirisKanako、そしてBasdiaStage上で挨拶すると、それぞれのTransformation Equipmentを掲げてTransformし、早速musicに合わせて歌い始める。


 Transformation Equipmentの物珍しさや、magicを使った音と光の演出。そして合いの手を入れさせ、観客にも参加している雰囲気を出し、一体感を味あわせる。


 これは確かに娯楽だ。musicはもっと、洗練されたものでなければならないと信じている者達にとっては、気に食わないだろう。

 だが、少なくともRandolphはそうした洗練されたmusicよりも、目の前で繰り広げられている『Concert』の方が好みだった。


(それはともかく、あの三人……かなりの使い手だ。特にBasdiaと言う女GhoulWarriorは、中々の腕だな。『Alcrem Five Knights』と互……いや、それ以上か。あのTransformation Equipmentと言うitemも、性能は噂以上と見た方がいい)


 あのBasdiaと一緒に戦い、彼女以上に活躍したDarcia、そしてBasdia達をTamerしているというVandalieuの実力を想定すると、思わずため息が出る。

 Alcrem Dukeが下手な事を考えていたら、Orbaum Elective Kingdomを構成する十二のDuke 家が今年で欠ける事になるかもしれない。


 そうRandolphが観察と思考をしている間に、幾つかの曲が終わり、小休止になったようだ。Basdia達が一端下がり、共同templeAruman Priest達が聖歌を歌い始める。

 幸いな事に、Priest達の格好は普通のもので、danceも無かった。


「どうだい、Rudolf -san。中々のもんだろ? 今日は三人だったけど、日によって人数が増えたり減ったりするし、前座で孤児院のchild達のTamed Monstershowが見られる日もあるんだぜ」

「小休止の間も、色々楽しめるぜ。今日は共同templePriest -sama達の聖歌と、AldaAruman Priestの説法だが、日によっては飛び入り自由のMusical Instrument Performanceの腕比べなんてのもやってる。機会があったら、Rudolf -sanもやってみたらどうだ?」


 Stageに注目していたRock達が、Aruman Priest達の聖歌が始まった途端に、Randolphに関心を戻す。中々の声量だと思うが……あの『Concert』の後だと面白みに欠けてしまうのだろう。


「ええ、とても興味深かったです。Vandalieu -san達を待っている間も、退屈せずに済みそうですよ」

 BardRudolfとして、RandolphMoksiに滞在する事に決めた。




 Moksiに変装して潜入したRandolphに、Vandalieu達は気がつかなかった。

 の城壁に設置したGolemDemon King Familiarを通して、青い髪のElfに入るのは見ていたが、それとSClass adventurerTrueRandolphが結びつかなかったのだ。


 もしRandolphVandalieuやその関係者を狙っていたら、微かなbloodthirstを感知して【Danger Sense: Death】に反応があったかもしれない。実際、それでVandalieuの関係者の殺害依頼を受けた殺し屋が闇に葬られている。

 しかし Randolphの目的は情報収集で、戦う気は現時点では無い。そのため、Vandalieuの関係者にbloodthirstの類を向ける事はなかった。


 それに、Vandalieu達はMoksiを守ったHeroで、有Adeptだ。彼らの事を聞いて回るadventurerpeddlerBardは幾らでも居る。

 その中に青い髪のElfが一人加わっても、Vandalieu達の監視の目には引っかからなかった。


 そしてStage裏に張られたテントでは、休憩している三人の姿があった。certainly、彼女達はRandolphに気がついてはいない。

Vanとも相談したんですが、今度、Stageに上がる人を増やそうと思うんです」

 そして、KanakoBasdiaZadirisにそう告白した。それに対してBasdiaは落ち着いた-sama子で頷いた。


「そうか、遂にVigaroに声をかける時が来たか」

「何であなたのお父-sanに繋がるんですか!?」

 身長二meter半、"muscle and bones"隆々として獅子の頭を持つ四本腕の男GhoulVigaronameが新memberとして出た事に驚いて、思わず聞き返すKanako


「いや、Ghoulに対する人々の認識が『知能の高い人型のmonsters』から『人』に変わりつつあるから、そろそろ男Ghoulも見せる頃合いなのかと思ったのだが」

「儂等Ghoulは、男と女で姿が大きく違うからの。儂とBasdiaだけに慣れても、Ghoul race全体のimage upにはならんじゃろう?」


「意外と真面目な理由でしたか……でもStage debutはちょっと。いきなりイロモノから広めるのも、どうかと思いますし」

 Kanakoは二人が挙げた理由に納得しつつも、脳裏に浮かんだMagical Girl姿のVigaroを慌てて打ち消した。新しい文化を広めるなら、やはり最初はStandardからが良いだろう。

 ……今までのmemberでも、『Earth』や『Origin』の常識では、Standardとは言えないのだが。


「じゃあ、KatiaVanAlcremに行く予定だから、Bildeに声をかけるのか?

 TareaVanArtifact作りを手伝っているから忙しいから無いとして……最近Chaos ElfになったらしいVan 's ancestor母か、元Elderか?」

「どちらにしても、一度の門から入らんといかんじゃろう。坊やが『戻ってくる頃』にならないと、難しいと思うが」


 そう心当たりや意見を挙げる二人に、Kanakoは首を横に振った

「いえ、の人達から募集するつもりです。Transformation Equipmentは渡しませんし、あたし達の本当の事情を話すつもりもありません。

 ただその人にあたし達で歌とdance、振付を教えて、Stageで一緒に歌う。それだけなのです」


 Stageで大々的に見せているので、Kanako達の歌やdanceはその内広まり、Concertformも真似る者が出て来るだろう。だから、それらは教えても構わないとKanakoは考えていた。

 教える手間も、希望者がBardDancer等なら既に基本が出来ているので、それ程ではないはずだ。


「なるほど。それで儂等と直接交流する事でVida's New Racesへの理解を深め、ConcertVidaの説法という事にしているため、布教活動にも役立つ。そう言って坊やを説得したのじゃな?」

「はい! あっさり了解してもらえました! ……最近信頼され過ぎている気がして、若干怖いんですよねー」


Vanの感覚ではKanako達はもう身内だろう。Darciaを祖とするraceに変異したのだし。

 ただ、募集に応える者の中にAssassinや、過激派のAlda believerが紛れ込むかもしれないから、油断は禁物だぞ」

「ええ、certainlyHungry Wolf警備の人達に協力して貰って……後、Demon King Familiarにも頼むつもりです。Bardの中には、変装した賞金首やSpyが混じっているそうですからね」


 そう言うKanakoは、先程の観客の中にいた青い髪のElfの事を思い出していた。竪琴を持っていたからBardだと思うが、彼は本職なのか、それともBardを装った何者かなのかと考え、すぐに止める。

(流石にちょっと見ただけでは分かりませんね。彼が偽物でないなら、Elfの演奏技術に興味があるので、応募してくれると嬉しいんですけどね)

 Elfに芸術面も長けたraceというimageを持っているKanakoは、そう思った。


「さて、じゃあそろそろ後半Stageです。頑張っていきましょう。集客は前半、goodsの売り上げは後半にかかっています!」

 こうしてKanako達は戦場(Stage)へ向かうのだった。




 Alcrem Duchyの領都、Alcremは人口約百万人の大都市である。

 建国以来の敵国であるAmid EmpireとのForefrontに位置するSauron Duchyや、鉱物資源に恵まれないHartner Duchyを、軽く上回るDuchyの都らしく広く、人が多い。

 その規模の前には、人口約三万人のMoksiの繁栄も霞んでしまう。


 そのため、Alcremの門にはに入ろうとする人々が連日長蛇の列を作っていた。

「長い列だなぁ。今日中にに入れるのかな?」

 その列の最後尾に並んだ若者が、そう言いながら先を眺めていると、一つ前に並んでいる荷車の護衛をしている女が振り返って声をかけて来た。


「ちょっと、お兄-san

「あ、ああ、なんだい、お嬢-san?」

 その女の紅が引かれた鮮やかなlipsに思わず目を奪われた若者が、声を上ずらせた。女はそんな若者に気を良くして微笑を浮かべる。


「お嬢-sanって柄じゃないけど、ありがとう。お兄-sanは、Alcremは初めて? 見たところ、adventurerらしいけど」

「ああ、初めてだよ。この前DClassに昇Classしたんだけど、それまで組んでいたpartyが解散してさ。折だから、都会に出てみようと思ったんだ。

 Alcremで、それまで芽が出ていなかったadventurerが、急に頭を現すようになったって噂を聞いてさ。あやかろうと思って」


 若者は女慣れしていないのか、そこまで聞かれていないのに、饒tongueに自分の身の上を話す。彼の言う噂は、Alda's FactionGodsVandalieuと戦う戦力を育てるため、選んだ者にblessingsを与えている事を指している。

 実際にはAlcremだけではなく、他のDuchyや、Amid Empireでも起きている事だ。ただ、情報が正しく伝達されていないため、それぞれの地域で「人口の多い都会で突然頭を現す者が多い」という噂としてしか広まっていないのだ。


 それはともかく、女の気を引こうと話し続けた若者だったが、逆効果だったらしい。

「そう……もしAlcremの事を知っているなら、ちょっと聞きたい事があったんだけど……」

 どうやら、女は若者に情報収集のつもりで話しかけて来たらしい。若者は内心で「しまった!」と叫び、何とか会話を続けられないかと慌てるが、本当に女慣れしていないため咄嗟に言葉が出てこない。


「ま、monstersだーっ!?」

 その時、列に並んでいる人々の中から叫び声があがった。若者はその瞬間意識を切り替えると、槍と盾を構えてmonstersの姿を探す。

 すると、後方数百meter程にある森から、複数のmonstersに追われている馬車の一団が出て来たのが見えた。


「……んん? 確かにmonstersだけど、追われてはいない?」

 一瞬monstersに追われている馬車が森から街道に逃げて来たと誤認した若者だが、遠目で見ても馬車が走っていないのと、monstersが後ろだけではなく馬車の真横で歩いているのを見て、襲われている訳ではない事に気がついた。


「あの黒い馬車に、灰色の大きな獣型のmonstersはもしかして……」

「もしかして、TamerTamed Monster、なのか? でも、from hereでも見える程大きなmonstersTamed MonsterにしているTamerなんて、いるのか?」

 女の呟きに気がつかないまま、若者は街道に合流して段々近づいてくる黒い馬車の一行を見つめていた。


「なんだ、Tamed Monsterか。驚かせやがって」

「いや、もしかしたら頭の良いmonstersが、Tamed Monsterの振りをしているだけなんじゃ……」

idiotmonstersが馬車を扱える訳がないだろ」

「で、でも一応Guardを呼んだ方が良いんじゃないか? あんなに大きいTamed Monsterなんて初めて見たし、Tamerだからって、善人ばかりじゃないだろ!?」


 列に並んでいる人々がざわめき、何にせよ放置できないと考えたのか、門の方から数人のKnightが馬に乗って駆け出した。

 その間にも、馬車の一行は若者が並ぶ列の最後尾に近づいてくる。


 二頭の立派な馬に引かれた馬車の前に灰褐色の肌の女Warrior。右に、灰色の毛並みのGiantな狼、いや、犬型のmonsters。左に三匹の赤と白、そして鋼色の大きな鼠のmonsters。そして後ろにGiantな蟲のmonstersを連れている。姿は一部しか見えないが、馬車の側面から八本の脚が――。

「や、やっぱりTamerじゃないじゃないか!」

 前に居るのはGhoulだ! それに、後ろのmonstersTamerできないはずの蟲型のmonsters。それに気がついた若者は、再びWeapon Equipmentを構えようとした。


「落ち着いて、お兄-san。あの人達は大丈夫だから」

「ああ、騒いだら後で恥をかく事になるぜ」

 しかし、女とその同僚に止められた。何故そんな事が言えるのかと思っている間に、黒い馬車から話し声が聞こえてきた。


「うわぁ、こんなに大勢のHumanだけの列、初めて見たかも」

Bocchan、随分並んでいますよ。やはり一日待って、明日の早朝に出直した方が良いのではないでしょうか? Bocchan? Bocchan~?』

Vandalieuは、今Gizania -sanの背中に乗っているから聞こえないかも。でも、今から森の中に引き返すのも無理だと思うの」


 GhoulCouch Drivingの中年の男と、隣に座っているDark Elffemale。その声と姿を見て、若者は再びWeapon Equipmentを降ろした。人語を話すGhoulのようなmonstersは少なく、Couch DrivingDark Elffemaleはそれらのmonstersには見えない。

 一応、Undeadも人語を話すが……生前の恨み言を繰り返すのがせいぜいで、会話は出来ないとされている。若者もその有力な説を支持していた。


「それに、知り合いにも会えたし。こんにちわ」

 距離が縮まり、femaleがかなりの美女だという事が分かり、思わず見惚れていた若者の方に美女……Darciaが微笑みかける。


「ご無沙汰しています、Saintess -sama!」

Holy Mother -sama達もお疲れ-samaです!」

 しかしHungry Wolf警備の警備員達がすぐ返事をしたので、若者はやや気恥ずかしい思いをしただけで、すぐに横に……FangMaroll達の前に立つのが怖かったので、後ろに下がった。


Michael -sanのところの人達よね。Gobu-gobuKoboldの干し肉を持ってきてくれたのね」

「はい、Hungry Wolf警備のビビです! Duke -samaに献上する荷物はしっかり護衛しました!」

 Michael……Milesと同じ銘柄の口紅をしたビビは、鮮やかなlipsで笑みを作った。


 そこに、Knight達が駆けつけてくる。

Dark Elfのお嬢-san! そのmonsters達はTamerTamed Monsterらしいが、念のために話を聞かせてもらうぞ!」

 危機的な状況ではないと途中から分かっていたKnight達だが、念のために確認しようと話しかけてくる。


「まず、このTamed Monster達を使役しているTamerは……いや、後ろのmonstersは何だ!? 蟲のmonstersか!?」

「それは、拙者の事だろうか?」

 ひょいと馬車の後ろからArachne……蜘蛛の頭部から女の上半身を生やしたような、若しくは女が本来蜘蛛の頭部がある場所に腰かけているような形状のrace。そのLarge-buildであるGizaniaが顔を出した。


「こいつ、人の言葉を!?」

「待て、彼女はArachneだ! 俺も見るのは初めてだが……Vida's New Races、だったな?」

 思わず身構える部下を制止したKnightに、Gizaniaの背に乗っているVandalieuが応じた。


「ええ、GizaniaArachneLarge-buildで、俺がTamerしています」

 Gizaniaは、ただのLarge-buildに見える幻を纏うmagic itemを身に着けている。Arachneについて深い見識を持つ者だったら大きさの違いで違和感を持つだろうが、Arachneを初めて見るKnight達は見抜く事が出来なかった。


「某も! 某もそうでござるよ~!」

 馬車の後ろから扉を開いてMyuzeが姿を現す。彼女も普通のEmpusaに見えるよう、magic itemで変装していた。


「うわ、何だ、この女!? お、女か!?」

 だが、EmpusaArachneと違ってBoundary Mountain Rangeの外では絶滅したrace。当然だがGuard達の知識に無いため、カマキリの特徴を持つ彼女の姿に、ただひたすら狼狽していて正体を見抜くどころではない。

「女かって、それは幾らなんでもあんまりでござろう! Humanかどうかならまだしも、性別に疑いを持たれるなんて屈辱、某初めてにござるぞ!」


Myuze、彼等は初めてEmpusaを見たので、狼狽えているだけですよ。広い心で対応してあげてください」

「そ、そうでござった。いや、失敬。某はVandalieu -donoTamed Monsterでござるよ~」

 肩から生えた鎌腕と、その下の人と同じ形の腕を「怖くないよー」とchildに言い聞かせるかのような仕草で動かす。


「と、とりあえず、Tamed Monsterならそれでいい。……『Genius Tamer』の噂は聞いているが、ArachneTamerしているとは聞いていなかったぞ。

 他にもGhoulの特徴が聞いていた物と異なり、噂には無かったmonstersもいる。一体どう言う事だ?」

 そう訝しげに尋ねるKnightに、Vandalieuは淡々と答えた。


を出た後、森の中で出会い、Tamerしました。それより、随分俺のTamed Monsterについて詳しいですね?」

 VandalieuTamed Monster達の噂には、secondary nameまでついたBasdiaZadiris以外は、詳細な情報まで含まれていない。Maroll達に関しては、「新種のmonsters」としか伝わっていないはずだ。

 逆に聞き返されたKnightは言葉に詰まると、数秒の沈黙の後視線を逸らして答えた。


「……同僚があなた達のfanでしてね。

 何にせよ、ようこそAlcremへ。正式な手続きは門で行いますが、我々は皆-samaを歓迎します」

 そう言ってKnight達は軽く一礼し、列に並んでいる人々に心配いらないと伝えながら門に戻って行った。


「どうやら、Van -dono達の情報が伝わっているようでござるな」

 MyuzeKnight達の後ろ姿を見ながら、そう静かに囁く。

Spyを送り込んでいたみたいですから、それぐらいは調べるでしょうね。まあ、ここではFitun達と戦った時ほどの騒ぎにはならないでしょう」


 何はともあれ、Vandalieu達はAlcremに到着したのだった。

 ちなみに、SimonNataniaは訓練で疲れ果てて、SamcarriagePrivelと雑魚寝していた。


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