三月に入り暦の上では既に春になったが、Alcrem DuchyはSauron Duchyと同じく、Orbaum Elective Kingdomでも北側に位置している。凍てつく北海とはMountain Rangeによって隔てられているが、そのMountain Rangeの一部がDevil Nestsと化しているimpactなのか、この時期になっても雪が降る。
しかし Duchy都のAlcremは、活気のある大都市だ。それはこの日も変わらなかった。
「信じられないな。町はいつも通りなのに、Demon Kingの脅威が近づいているなんて」
酒場の奥の個室。そこに集まった三人の人物の一人が、壁の向こうから聞こえる酔っぱらい達の喧騒を聞きながらそう口を開いた。
「Carlos、滅多な事を言うな。幾ら他の客が騒いでいるからといって、誰かに聞かれたらどうするつもりだ?」
「心配するな、Hendricksen。お前は知らないだろうが、この個室の壁は外の音は通しても中の音を外には漏らさない仕掛けが施された、magic itemだ。外の酔っぱらいの歌は聞こえるが、我々が大声で合唱しようが、国家転覆を企もうが、外の連中には聞こえない」
Carlosは自分の発言を咎める金髪の若者をHendricksenと呼び、そう言った後「試しに一曲歌ってやろうか?」と笑いかけた。
「遠慮する。Edilia嬢の耳を汚すつもりか?」
「汚れるとまでは思わないけれど、あなたの喉を披露するのはまたの機会にして。それより本題に入りましょう」
三人組の最後の一人、栗色の髪を肩まで伸ばした女Mageがそう言って、話題を本題に戻すよう促す。
「そうだな。じゃあ、早速だが……今朝、Oracleを受け取った」
「またか。貴-donoの神は、随分過保護なようだな……と言いたいところだが、私もだ」
「奇遇、と言うにはおかしいわね。私も同じよ」
Carlos、Hendricksen、そしてEdilia。この三人はAlcremで活動しているadventurerであり、それぞれ別の神からblessingsを与えられたHero Candidateだった。
Carlosは、ZantarkのSubordinate Godであった『God of Heat Haze』Rubicante。
Hendricksenは、AldaのSubordinate GodでBellwoodに見出されたとされる『Goddess of the Holy Spear』Elk。
EdiliaはNineroadのSubordinate Godである『God of Strings』Hilshem。
三人はそれぞれblessingsを与えられているが、同じadventurer partyの仲間ではない。こうして集まるようになったのは、偶然だ。
競い合ってはいるが、敵対はしていない。Godsが警告するDemon Kingに対抗すべく、腕を磨く者と言う意味なら同志だ。
しかし、性格は相性が良いとは言い難い。戦友にはなれても、友人にはなれないTypeだ。しかし、三人は情報を共有する為にこの会合を行っていた。
「三人がほぼ同時に。……内容は、やっぱりfrom here暫く離れろ、そしてロドなんとかって言う神に祈れ、だったか?」
Carlosがそう尋ねると、HendricksenとEdiliaは頷いた。
「私は、仲間を率いて『ある場所』に向かえ、そして聞いた事もない神らしい存在の名を唱え、祈れ。しかし誰にもその事は言うなとOracleにあった。
本当に名を聞いた覚えもない神の名だったので、どうしたものかと困惑している。それと、『ある場所』についても教えられん」
「私も似たようなものよ」
実はAlcremには彼ら以外にも、Godsからblessingsを受けているらしい者達がいた。しかし、この三人以外のHero Candidate達は去年の年末から今年の年始にかけて、それぞれの仲間を引き連れてAlcremから旅だっていた。
三人も、その頃神から離れるようOracleを授かっている。
しかし、三人はそのOracleに逆らった。抱えている依頼を放り出すわけにはいかなかったり、神's Divine Protectionを受けた自分が逃げ出すなんてprideが許さないと拒否したり、理由は異なる。
それから一カ月がたち、二カ月が経ち、三カ月目でGodsも待ちきれなくなったのか、二度目のOracleを下したと言う訳だ。
「そうか。Rodcorteという、神については棚に上げるとして、今回は俺達のpartyも逃げる事にした。
Oracleの内容を吟味した結果、Demon Kingの脅威が迫っているのは町じゃなくて俺達個人に対してらしいとconjectureできたからな」
「Rodcorteについては、神である事が分かったわ。私はOracleにあったように、その名を唱えながら祈ったの。そしたらblessingsを頂いたわ。尤も、結局何の神なのかは分からなかったけど。
それと……皆にAlcremから離れる事を促されたので、私も今回は従うつもり」
CarlosとEdiliaの話を聞いたHendricksenも頷いた。
「私も、今回は戦略的撤退を行うつもりだ。……残念ながらこの会合も、これが最後になりそうだな」
脅威が迫っているのなら、何も知らない人々の為に立ち上がり、戦うのがGods 's Divine Protectionを受けた自分達の役目だ。そんな想いがあったからこそ、何かと理由を付けてCarlos達はAlcremに残った。
だが、三人が想像した『Demon Kingの脅威』が迫って来る-sama子は、一向にない。Moksiの町ではmonstersのrunawayが起こったらしいが、既に討伐されている。
それでも町の危機だろうが、『Demon Kingの脅威』には程遠い。
しかし、Godsからは二度目のOracleが下された。どうやら本当に『Demon Kingの脅威』が迫っているらしいが、脅威とは、恐らく自分達Gods 's Divine Protectionを持っている者達に対してのみなのだろうとconjectureし、今回は三人とも逃げる事にしたのだ。
「そう言えば、最近Adventurer’s Guildを騒がせている例の四人組についてどう思う? 見るからに怪しいし、目立っていたし、何組かのadventurer partyと揉め事を起こしているそうだけど」
「ああ、あの数日前に登録した癖に、妙に強い上に見た目が怪しげな四人組……いや、三人と一人か。たしか、leaderはArthurって、奴だっけ?」
Ediliaが話題に乗せた、最近Adventurer’s Guildを賑わせている噂の三人組と一人のpartyの事を、CarlosはMemoryから引っ張り出した。
噂になっているのは、強面のSwordsman Arthurと、美人だが暗くて目つきが鋭いGoddess官のKarinia、そして不気味なDwarfのMage Bolzofoy。そして、振り回されている純朴そうなShoujoのpartyである。
田舎から出て来たそうで、Adventurer’s Guildに登録したその日に絡んできたadventurer partyと揉め、新人が狩れるはずのない高Rankのmonstersを何匹も狩って来て驚かせるなどして、噂になっている。
「関係無いだろう。
見た目が怪しく、Adventurer’s Guildに登録する前から力を持っていた田舎者達と、それに振り回されているShoujo。それだけだ」
「そうだな。他のadventurerと揉めたって言っても、ゴロツキ同然の奴に絡まれただけのようだし」
しかし別に悪事を働いている訳ではなく、素行にも怪しいところはない。また、確かに並よりも抜きんでた実力を持っているようだが、GodsがDemon Kingと呼び恐れるような存在には程遠い。
「そうね。私も彼等がDemon Kingとか、Demon Kingの手先だと思っているわけではないの。ただ、私達と同じように神's Divine Protectionを受けているんじゃないかと思って」
「blessingsか……確かに、その可能性はあるとは思うが……」
神がblessingsを与える基準は、賜る側にとってはよくわからないと言うしかない。Hendricksenもそうだ。自分より敬虔なbelieverや、実力を持つbelieverは幾らでもいたはずだ。なのに、何故彼等ではなく自分がElk 's Divine Protectionを賜ったのか? 彼にはGoddessの御心が分からない。
blessingsを与えるGodsの側にははっきりとした理由があるようだが……結局人の身では理解の及ばない領域だ。
だから、やや見目が悪い田舎者であるArthurが神's Divine Protectionを賜ってもおかしくない。
「俺はその可能性は小さいと見るぜ。俺達を含めて、GodsからAlcremから去るように促されている今、連中はAlcremに来た。Oracleを受け取っているとしたら、かなりの問題児だ」
「それは……たしかに」
だが、現在の状況が状況なので、Carlosの主張に思わずEdiliaとHendricksenがnod。
「どの道、私達が彼らと直接会う事は無いわ。明日中には町から出ているのだから。
あなた達は何処へ行くの? 私はMoksiで最近新しいmusicが発表されたらしいから、それを見に行くつもりだけど」
「奇遇だな。俺もMoksiだ。新しいDungeonが出来たらしいって噂を聞いたから、物見遊山がてらそれを見に行くつもりだ。後、Gobu-gobuの元祖のFood Stallに関心がある!」
「……相変わらずの物好きだな。飢えてもいないのに、Goblinを食いに行くとは」
今頃、Vandalieuを避けるためにOracleを与えたRubicanteとHilshemは、「違う! そうじゃない!」と叫んでいるだろうが、EdiliaとCarlosにはその叫びは届かないのだった。
『Garess' Battlegrounds』と名付けられたDungeonから戻ってきたVandalieu達はguildに報告を済ませ、KanakoやSimon達のCClassへの昇Classを済ませた次の日には、Alcremへ向かって旅立つ事にした。
「なんだか、感慨深いな」
門で手続きを執り行ったGuardは、Wolf-species Beast raceの新米Guard、Kestだった。
正門で行われた戦いに参加したGuardやKnight全員がJob changeに至ったので、「全員が等しく活躍した」と言うconditionだ。そのため、特定の人物が大きく出世するという事はなかったらしい。
だがKestは例外で、「新米」の文字が取れて正規のGuardとして扱われるようになったそうだ。少し給与が上がり、Guard隊の中で下に見られる事が無くなっただけで、細やかなものだ。だが、Kest本人にとっては大きな変化なのだろう。
Vandalieu達の身分証を確認して書類に記入する姿にも、自信が感じられる。
「Alcremまでは片道十日ぐらいか。道中気をつけるんだよ、この町周辺では最近出なくなったけれど、mountain banditも……出ても別に平気か」
「まあ、気を付けるに越した事はありませんが……」
VandalieuはKestに、そう言いながら視線を逸らした。何故なら初めて会った時、「mountain banditに襲われて一人生き残った」と嘘の経緯を彼に話したからだ。
「Kest、確かに出て来ても大丈夫だろうが……mountain banditも避けると思うぞ。この一団は」
門番の片割れ、senpai GuardがVandalieuの挙動に気がつかずにそう評する。mountain banditから見れば、DarciaとVandalieu、JulianaにNatania、Simonの一団は、確かにカモに思えるだろう。SimonとCouch DrivingのSam以外大人の男が居ない、女childの集団に見えるからだ。
だが、その馬車は漆黒で所々Spikeが取り付けられているし、馬車を引く馬はよく見れば二頭ともmonstersだ。
「ウォン」
そして極めつけが、senpai Guardの言葉にnod代わりに短く鳴き声をあげたFangである。遠目から見てもはっきり分かる巨体は、mountain banditたちにしてみれば悪夢以外のなにものでもないだろう。
mountain bandit達がmonstersについて詳しいとは限らないが、馬より大きいmonstersに襲いかかるような身の程知らずではない。
「「「チュー!」」」
「はいはい、分かってるよ。お前-san達もいるよな」
Maroll達がappealするが、やはり迫力ではFangの方が上だろう。monstersに詳しい者以外には、やはり見た目と大きさが物を言うのだ。
「まあ、途中で街道から出て間道を進む予定なので、やはりmountain banditには遭遇しないでしょう」
「間道を? 一体何故? from here Alcremまでは街道を外れても、道が険しいだけで近道でもなんでもないぞ」
街道は整備され、警備隊が巡回してある程度の治安を維持している。だが間道は街道ではないので食料を補給し、宿を取れる村や町、そして警備隊の巡回も無い。そのため野宿でmountain banditやmonstersを警戒しながらの旅になる。
麻薬や盗品の運び屋でもないなら、まず通らない道だ。
「道中、薬草の採取やこの辺りにはいないmonstersのTamerを試してみたいと思いまして」
「そうか、なるほど」
しかし、adventurerやTamerの場合はそうした理由で間道を通ることがある。senpai Guardも納得したようだ。
「では、そろそろ行きますので」
「分かった。行ってらっしゃい、良い旅を」
初めて出会った時よりも大分逞しくなった-sama子のKestに見送られ、Vandalieu達はMoksiの町から旅立った。
そして数時間後、Moksiの町も見えなくなり、街道を行く人もまばらになった頃にVandalieu達はKest達に言った通り道から外れて間道に入った。
from hereさらにしばらく歩いてから、Vidal Magic Empireに【Teleportation】するつもりだった。そして十日……いや、整備されていない森や草原を通って旅をしたのだから、十数日後にAlcremにTeleportationする。これで旅をした事になる。
【Teleportation】する先は既に蟲Undeadを飛ばし、Alcremの都から数時間ほどの距離にある適当な森を見繕ってある。
問題は無い。
「残してきたZadirisとBasdiaが若干不安ですが」
Vandalieu達は、全員でAlcremに旅だった訳ではなく、ZadirisとBasdia、それにKanako達三人とMilesを残していた。
何故かと言うと、GodsがVandalieu達の居なくなったMoksiの町を襲撃する可能性があるから、ではない。Vandalieu達が居ないMoksiの町を、Aldaに従うGodsが襲うmeritが無いからだ。
Godsが直接地上にimpactを及ぼすには、多大な力を消費しなければならない。ちょっとした奇跡……枯れた花を再び咲かせる程度ならそうでもないが、町を一つ滅ぼすとなると何百年もの間眠らなければならない危険を冒さなければならない。
そこまでの危険を冒してMoksiの町を更地にしても、Vandalieu達は拠点になりうる町を一つ失うだけだ。Vandalieu達本人が受ける、Emotional shockと抱く怒りを考慮に入れなければ。
しかし、Moksiの町と同じようにVandalieu達に都合が良い町は、彼等が存在する限り幾らでも作れる。
間違いなく不幸な事だが……Vandalieuに魅了される程despairしている人々は、どの町にでも一定数存在する。
更に、Orbaum Elective KingdomにはVida believerがAlcrem Duchyよりも多いBirgit Duchyや、Sauron Duchyが存在する。
そのため、Alda's FactionのGodsが直接動く事はない。それに……そうした性急な手段を取り過ぎると、逆にOrbaum Elective Kingdom全体から「God of Law and Life Aldaは、人類をAmid Empireに統一させるつもりだ。そのために我が国を滅ぼそうとしている」と敵視されかねない。
既に『God of Thunderclouds』Fitunの消滅で、事態の鎮静化を図っている最中だろうAlda's FactionのGodsが、その危険を冒す事は無いだろう。恐らくは。
「理屈では大丈夫だと思っていても、Earl -san達も不安だろうから仕方ないわよね」
では、何故Kanako達が町に残っているのかと言うと、Hungry Wolf警備の経営とCommandingをしているMiles以外は、Moksi Earlからの非公式の依頼だった。
『すまないが、若干戦力を町に残してくれないか』
町の近くには、BClass Dungeon『Garess' Battlegrounds』。一度runawayを起こした後は、再びrunawayするまで相当の年月がかかる事は分かっている。しかし、先日起きたrunawayでは町に向かってこなかったmonstersもいる。
Job changeを経て一段と強くなったとはいえ、自前のKnight団とGuard隊だけではRank7や8のmonstersが現れたら防衛に不安が残る。
そのため、Alcrem Dukeからの意向なので、VandalieuとDarciaを引き止める事は出来ないが、それ以外の戦力になる者を町に残して欲しいと非公式に依頼されたのである。
そのため、町のOpen PlazaでのConcert講演の許可等を依頼料として提供されたKanako達と、ZadirisとBasdiaが残る事になった。
「それに、Earl -sanが二人はGhoulで法的にはVandalieuのTamed Monsterだって事を、もう気にしない事にしたのなら良い事だわ」
Moksiの町からGhoulがmonstersではなく人であるという認知と、地位向上が図られるのなら良い傾向だと喜ぶDarcia。
「しかし、俺がいない間に二人を手に入れようと企むGordonのような人が現れ、二人がやり過ぎないかと思うと少し心配です。二人とも魅力的ですからね」
「ああ、心配ってそう言う類の……大丈夫だと思うぜ、師Artisan。そう言う事がないように、護衛が出るって話だったじゃないか」
Vandalieuと同-samaの心配をEarlもしたらしく、trouble防止の為に不埒な輩が近づかないようKnight団からの護衛がつく手筈になっている。その護衛もBasdiaとZadirisのfanなので、Human関係的なtroubleを起こす事もないだろう。
「そうですね。Basdiaには暇な仕事になると思いますが、不快な仕事にはならないなら安心です」
町に向かってこなかったmonstersの内、Vandalieuの『Scaled Emperor』や『Dragon God Emperor』のsecondary nameのimpactを受けたThunder Dragonは、既に対処済み。
その他のmonstersは、Legionが偽Moksiの町のDungeonに【Teleportation】させ、JulianaやKasim達が倒しているので、実は町の周囲に脅威は存在しない。
なので、Kanako達は存在しない脅威に備えている事になる。一応、Alda's FactionのGodsが育てているHero達や、Vandalieu達に反感を抱いている人々等もHuman社会には存在するので、完全に安全と言う訳でもないが。
「地下室のDungeonにはJadal -chanがいるし、Zadiris -sanはConcertもあるから大丈夫よ、きっと」
「そうですね……Zadirisは暇な方が良いと言うかもしれませんが」
「ところでVandalieu -sama、Kanako -san達には心配しないのですか? Kanako -san達も魅力的だと思いますが」
Samの幌から顔を出したJulianaに尋ねられたVandalieuは、少し考えた後答えた。
「Kanakoは、手慣れているので大丈夫でしょう。Melissaは、俺では無くDougが心配すればそれで良いのです。
でもJessie -sanの事は分からないので、町に引き返しても良いですよ、Simon」
「突然なんですかい、師Artisan!? 俺と彼女は、たしかに親しくさせて貰っちゃいますが……今は、もう一度Borkusの旦那に訓練を付けてもらって、腕を上げるのが先決ってもんです」
そうpupilsをからかっている内に街道から離れたので、Vandalieu達はVidal Magic Empireへ【Teleportation】した。
十数日の間の時間、Vandalieu達には-sama々なやる事がある。
その一つが、外交的な仕事である。
「お連れしました」
Gufadgarnの【Teleportation Gate】が開き、向こうから『Storm of Tyranny』のmemberと、Dark Elfの一団がやってくる。
今日は、 Bahn Gaia continent西部のDark Elf族の訪問団との顔合わせと、移住に関する話のすり合わせと町の視察である。
その訪問団の長であるが、穏やかな顔つきの青年……最ElderであるDangarは、出迎えたVandalieuに対して礼を取った。
「Emperor直々の出迎え、恐れ入ります。私は、先代よりつい先日Dark Elf族の最Elderの座を引き継いだDangarと申します。お会いできて光栄です」
「こちらこそ最Elderをお迎えできて光栄です。Vidal Magic Empire Emperor、Vandalieu Zakkartと申します。
早速ですが、これから暫くの間仕事は中断してprivateという事で良いでしょうか?」
「それは、願ってもない事です。私の方から頼もうと思っていました」
お互いに軽く礼をして、手を取り合う。そして振り返ったVandalieuは、涙を堪えている-sama子のDarciaに頷きかけた。
「お父-sanっ、おkaa-san!」
その途端Darciaは駆け出し、VandalieuとDangarの横を通り過ぎた。そして、Darciaと同じように目に涙を溜めた一組の男女も彼女に駆け寄った。
「Darciaっ! うおおおおおっ!」
「Darcia、Darciaなのね!」
Darciaに少し似た雰囲気があるmaleが彼女を受け止め、そしてsistersのように似ているfemaleが抱きしめる。二人はDarciaの両親、Vandalieuにとって祖父母に当たる人物だ。
「Darciaっ! お前が死んだと聞いて、お前が里を出るのをもっと強く止めれば良かったと後悔しなかった日は無かったが! だがDalton -donoから、霊として地上に留まり、息子と共にいると聞いて……!」
「そして生き返ったなんて、すぐには信じられなかったけれど、良かった! もう二度と会えないと思っていたあなたを、こうして抱きしめられて!」
「お父-san、おkaa-sanっ、ごめんなさい! 私……私っ、父-san達を嫌いになった訳じゃないのっ、ただ、どうしても――」
「いいのよ、Darcia。もういいの。こうして会えただけで、もういいのよ。だけど、そろそろお父-sanが苦しそうだから、一旦力を緩めてあげて」
普段は力加減もしっかりしているDarciaだが、両親との再会に感極まって加減が疎かになっていたらしい。
「ご、ごめんなさい、私ったらつい力が入っちゃって!」
慌てて父親を抱擁から解放するDarcia。酸欠と圧殺の危機との戦いから脱した彼女の父親は、息を整えそれまでとは違う落ちついた口調で「Darcia、すっかり逞しくなって……」と娘の成長をmaybe喜んでいる。
「くぅっ、泣かせるぜ……」
「こういう場面を見る度に、Demon Kingを裏切ってよかったってしみじみ思うわ」
Schneider達は、親子の再会の邪魔をしないよう他のDark Elf達と静かに感動していた。
「お父-san、おkaa-san、introductionするわ。この子がVandalieu。私と、私を愛してくれた人の間に出来た自慢の息子よ」
そしてVandalieuは無表情のまま、緊張していた。彼にとって初めての経験なのだから。
「初めまして、俺がDarciaの父のZeresiaだ。-kunの、祖父だな。なんだか、不思議な気がするが」
「私があなた's ancestor母の、Fidarilよ。ふふ、本当に不思議だわ。大きくなった孫に、こうしてSelf introductionするなんて」
二人は、DaltonからVandalieuの身の上についてだいたい聞かされていた。彼がReincarnatorである事や、Death-Attribute Magicの使い手である事等、Vidal Magic Empireの国民と同程度の事は知っている。
Vandalieu自身も、それは了解していた。
「Vandalieu Zakkartです。俺も、不思議な気がします。ですが、普通に初対面の孫だと思ってもらえれば幸いです。
何分、三度の人生で祖父母が出来るのは初めてなので」
一度目の『Earth』の時は、実の両親が結婚する前に亡くなっていて、叔父の家では写真も見た事がない。
二度目の『Origin』の時は、そもそも両親の顔を直接見た事もない。
現世である三度目の『Lambda』で、今初めて祖父母が出来たのだ。普通はどうするのかなど、感覚的に分からない。
「そうか……-kunは私達の愛する娘と、娘を愛して命がけで守ってくれた男との間に出来た孫だ。祖父として、これからよろしく頼む」
「それに、娘を生き返らせてくれたのよね。恩人と言うのも変な気がするけれど、貴方は自慢の孫よ。うちのお転婆娘の所に生まれて来てくれて、ありがとう」
Vandalieuと祖父母には、bloodが繋がっている事をInstinct的に察したとか、目があった瞬間心が通じ合ったとか、そうした特殊な出来事は無かった。
しかし、この日肉親が二人増えた事は確かだった。