Dungeonは基本的に一度発生したら、出入り口は固定され移動する事はない。だが、幾つかの例外がある。
その例外の一つが、神の管理するDungeonだ。accurateには、Dungeonの出入り口が移動している訳ではない。Dungeonを管理している神が「挑戦の資格あり」と認めた者しか出入り口に辿りつけない仕掛けや、逆に認めた者の方をDungeonの入り口へ運ぶ【Teleportation Gate】を設置しているのである。
『God of Thunderclouds』Fitunが管理していたFitunの『試練の迷宮』も、本来はその類だった。
「尤も、今は管理していたFitunが消滅しており管理者不在であるため、挑戦者の選別が行われないまま、放置されているようですが」
Gufadgarnの解説を聞きながら、Vandalieu達はそのFitunの『試練の迷宮』を進んでいた。
「『Trial of Zakkart』のように迷宮そのものが移動している訳ではないとしたら、何故このDungeonはここに現れてそのままなのでしょう? 俺の【Labyrinth Creation】のように出入り口を移動させたとも考え難いのですが」
Vandalieuの【Labyrinth Creation】skillは、Dungeonの出入り口を移動させる事が可能だった。ただ、その移動速度は人が歩くのと同じ程度。Devil Nestsとは言え日々adventurerが狩りを行なっているので、Dungeonの出入り口を連れて歩いていたら目につくはずだ。
「恐らく、Space-Attribute Magicでここに出入り口を【Teleportation】させ、そのまま固定したのでしょう。対象が神の管理するDungeonであり、管理者である神の同意と後押し、そして術者がmagicの達人ならば可能かと思われます」
Gufadgarnのconjecture通り、Dungeonの管理者であるFitunは配下であるHeroic spiritのSpace-Attribute Mageに命令し、Dungeonの出入り口をここに固定した。
何故なら、tacticsに必要だったmonstersの群れがDungeonから出るまで時間がかかるため、短い時間spaceを繋ぐだけでは不十分だったからである。
monstersの群れがDungeonから出るまでの数十分、spaceを繋げ続けるか、spaceを固定してしまうかだったら後者の方がManaの消費が少なくて済むのだ。
その後、まさか自分が消滅してDungeonがMoksiの町の近くに固定されたままになるとは思わなかっただろう。いや、もしかしたらその可能性も考えたかもしれないが、Fitunの性格上、そうなる事も考えたが自分が滅んだ後の事はどうでもいいと、考慮しなかっただけかもしれない。
「なるほどー。ところで、神が直接管理しているDungeonって、Vidal Magic Empireの大湿地帯にもありますよね? あのFidirgってKami-samaが創ったDungeon。あれは普通のDungeonみたいですけど」
「大Marshlandsにある『Lizardmanの巣』か。詳しい事はFidirgに訊ねなければ分からないが、挑戦者の選別を行っていなかったのではないだろうか?」
Kanakoの質問に、GufadgarnはFidirgが大Marshlandsに創ったDungeonの事を思い浮かべて答える。
管理する神がいても、その神が「来る者は全て拒まない」と挑戦者の選別をしなければ普通のDungeonと同じだ。
「それに、FidirgはLuvezfolにsealedされていたから、Dungeonの管理をできていなかったはずよね。後、そのLuvezfolの『Scale Kingの巣』もあるけれど、あれもVandalieu達が攻略した時にはBoundary Mountain Rangeから逃げ出した後で、いなかったはずだし」
Darciaが当時の事を思い出して、そうconjectureする。尤も、彼女のconjectureはSlightly外れていた。FidirgやLuvezfolは、攻略者を選別するような機能をDungeonに持たせていなかったからだ。
彼らは自身の聖域とbelieverであるmonstersを創るための場所としてDungeonを必要としたため、そうした機能を付ける意味が無かったのである。……Fidirgの場合は、DClassの難易度で攻略者を選別するような意味が無かったという理由も大きいが。
「なるほどねぇ。じゃあ、Heroが誰も知らなかったDungeonを偶然見つけて、そこを攻略してArtifactやKami-sama 's Divine Protectionを得るlegendがありますけど、それに出て来るDungeonは、その類なんですかね?」
『思い返せば、そうしたlegendの類が結構ありますな。Veld -donoも、そうしたDungeonでVidaの訓示を受け、愛剣を手に入れたとか』
「Veld senseiのそのlegendに関しては、senseiの子孫が作った創作みたいよ。senseiは、武具に愛着は持たない主義だって言っていたし」
「Alda達を奉じていたHeroのlegendは、私はあまり知らない。だが神が一度に管理できるDungeonは、一つか二つ、無理をしても三つまでだろう。単に-sama子を見るだけなら幾らでも『管理』できるが、挑戦者の選別や試練の内容の操作等を行うのなら、それが限界のはず。
故に、多くの場合後世の創作と思われる」
Godsもworldの維持管理をしながら、無制限にDungeonを管理できるわけではない。そもそも、管理するDungeonの数が多ければ良い、と言う物でもないのだ。
挑戦するHeroが、常に何十人もいる訳でもないのだ。
SimonとSamの疑問に、DarciaとGufadgarnが答える。それを聞きながら、Nataniaは尋ねた。
「それは良いけど……ここ、Kami-samaが管理していたDungeonには思えないんだけど。さっきから全然敵が出てこないし」
そう、Vandalieu達はDungeonに潜ってから未だに一匹もmonstersに遭遇していなかった。
既に地下五階なのだが、【Labyrinth Creation】skillで階層の構造を把握したVandalieuが進行方向を指示し、無人の草原や荒野、砂漠を進むだけの順調過ぎる道程が続いている。
とても神が試練として課すDungeonとは思えない平穏さである。
「monstersのrunawayの直後ですからね。内部にいたmonstersは、あの時に殆どが地上に出たのでしょう」
「結構多かったものね。Legionの皆が地下室のDungeonにmonstersを送って、それを倒してJuliana -chan達やKasim -san達も大活躍だったみたいだし」
その平穏さの理由は、VandalieuとDarciaが言ったように、Fitunが起こしたDungeonのrunawayの結果である。
今Samの馬車を引いている馬のうち一頭、Hoofの前のmasterは場所を勘違いしていたが、runawayが起きた直後はその場所のmonstersが激減する事は正しかった。
「でも、それでももう少し敵が出て来ても良いんじゃないかなって思うけど。DungeonってDevil Nestsよりmonstersが多いはずだろ?」
「それはその通りですがNatania、BClass以上のDungeonはCClass以下のDungeonと比べるとmonstersの数自体が少ないのです」
「え、そうなの?」
きょとんとするNataniaに、Vandalieuは頷いて説明した。難易度の高いDungeon程、monstersは少なく、また新たに供給されるまでの時間も長めになる傾向にある。
これはDungeonが新たにmonstersを発生させるのに相応の時間とManaを必要とし、monstersが自然Breedingするのに必要な時間が長くなるからだ。
Dungeonはmonstersの成長を早めBreedingを活発にするが、それでも限度はある。Goblin等低Rankで元からBreeding力の強いmonstersなら、幾ら倒されても補充する事が出来る。
だがThunder DragonやMountain GiantのようにBreedingにかかる時間がHumanよりもずっと長いmonstersは、そう簡単には増やせない。
それに、高RankのmonstersがGoblinのように際限なくうじゃうじゃ出て来たら、Dungeonの難易度が跳ね上がる事になる。高Rankのmonstersを倒せるadventurerの数は少ないので、対応しきれない。monstersの間引きが適正に行われず、Dungeonのrunawayが頻発する事になっていただろう。
「まあ、Rank1のmonstersが一匹だけしか出ないFClass Dungeonは除きますが、一階層にでるmonstersの数で言えばEClass Dungeonが最も多いです」
「へー、そうなんだ。オレ、DClass Dungeonの一階層目しか行った事が無かったから、知らなかったよ」
「さすがDungeonに慣れてますねー」
「ええ、初めて知ったわ」
「……Kanako達も知らなかったんですか?」
Vandalieu達と出会う前まで、平均よりやや上程度の素質のDClass adventurerだったNataniaに続いて、初めて知ったような顔で頷いているKanako達に、逆にVandalieuは驚いた。
「Kanako達もDungeonには結構潜っていると思いましたけど」
「残念ながらCClass以下のDungeonか、お前とGufadgarnが作った地下室のDungeonにしか潜ってない。亡命前は、MurakamiやAsagiを避けるためにも入らなかったんだ。
もし俺達がDungeonに潜っている間に、Rodcorte経由で俺達の居場所を調べた奴らが出入り口で張り込んだら、袋のmouseだからな」
Vandalieuの質問に、Dougがそう説明した。
Dungeonに潜った方が効率良く稼げるし、Experience Pointも手に入る。しかし、出入り口が一つしかないので、前世ではAsagi達を裏切り、現世ではMurakamiとRodcorteを裏切ったKanako達は、Dungeonに潜らなかったそうだ。
「敵がいないと言っても、中ボスやDungeonボスは既に出現しているはず。Dungeonの管理者が消滅したとはいえ、Dungeonの内装は生きている。機能は停止していないはずだ」
「確かに、Dungeonの中とは思えない爽やかな風に、青い空、そして太陽ですからねぇ」
SimonがDungeonの内装の一部である、本物そっくりな太陽を見上げて言う。屋内とは思えないこの光景が、Dungeonが機能している証拠なのだ。
「まあ、のんびり行きましょう。あまり速く戻っても不自然でしょうから。俺はこの間にArtifact作りも進められますし」
そう言いながら進むVandalieuだったが、次の六階層目、砦を思わせる階層にcountlessのUndeadが、それ以降もUndead、そして蟲と植物型のmonstersが次々に現れ、のんびりとはいかなくなってしまった。
Undeadは【Death-Attribute Charm】が変化した【Enticement】によってVandalieuに魅了され【Guidance】のimpact下にされるし、蟲型のmonstersの多くも同-samaだ。しかし、植物型のmonstersは魅了されない個体の方が多い。
「うおおおおっ! この樹のmonsters、面倒臭ええええ!」
「どんな感覚器官がどこにどれだけあるのか分からないと、【Venus】は使い辛いんですよねぇ!」
「Demon continentの火炎樹が動き出したら、このmonstersになるのかしら」
「FangとMarollの攻撃が、絶対効かないTypeのmonsters!? 師Artisanっ! ちょっと助けてくれやせんかねぇ!?」
「ギャインッ、ギャイン!」
そのためDoug達は、次々に襲い掛かってくるBClass Dungeonに出現する高Rankの植物型のmonstersに、文句やscreech、弱音を吐きながら対応する事になった。
ちなみに、今戦っているのはRank7のバーニングTreantである。枝に葉の代わりに炎を茂らせている。……certainly【炎Resistance】skillを高いlevelで所有している。
「俺は、皆の実力を信じています。ここはDungeonなので、Transformはcertainly、【Chaos】も【Familiar Spirit Demonic Advent】も使っていいので頑張ってください」
そしてそんなmonstersとの戦いを繰り広げるDoug達から救援要請を、Vandalieuはそう言って断るのだった。
「Fitunは、monstersの群れを用意する時にVandalieuのGuidance対策として、Undead以外にも蟲型や植物型のmonstersが混じらないようにしていたみたいね。それで結果的に残されたDungeonが、それらのmonstersだらけになってしまったのね」
『何処からかBocchanがUndead以外にも、植物や蟲のmonstersを装備している等の情報が洩れたのでしょうな。蟲はまだしも、植物型のmonstersは全て導けるわけでないのですが』
Darciaがconjectureした通り、Fitunはmonstersの群れがVandalieuに寝返らないように、それらのmonstersを避けた。そして結果的に、導かれない植物型のmonstersのみが襲ってくる状況を作り出していた。
植物型のmonstersの多くは痛覚が無く、生物的なInstinctも希薄で、脳やheart、脊髄等の急所に当たる部位が無い。そのため、頭部を潰せば大体倒せるUndeadよりも厄介な場合がある。
「Zombieより植物の方が不死身なんて、理不尽としか思えねぇ!」
しかも、バーニングTreantはRank3のEntとは比べ物にならない程硬く、近づくだけで炎の熱にさらされる。そのため、Dougは【Hecatoncheir】でHajime Fitunとの戦いの後貰ったVandalieuの腕を操り、一行の中で唯一優勢に戦いを進めていた。しかし、Weapon Equipmentにしている腕の攻撃範囲が小さい為倒すまでに時間がかかっていた。
一方、Unarmed FighterのNataniaやSwordsmanのSimonとの相性はかなり悪く、苦戦を強いられていた。
「やれやれ、【Flying Sword】じゃきりがねぇ。先にManaが尽きそうだ」
Simon達は義肢をSpirit Formで操り、【Long-distance Control】が可能だ。それを活かして遠距離からバーニングTreantを攻撃する。しかし Nataniaのclawsや回転する拳はともかく、Simonの剣では大きなDamageを与える事は出来ない。
「【rocket punch】! Simon、その剣じゃなくて、義手で殴った方が効くと思う! その剣はただの鉄製だろ!?」
「あ、いわれてみれば確かに」
しかし、両拳を飛ばして戦っているNataniaからの助言を受けて、Simonは剣では無く義手のknifehandで戦い始める。すると途端、バーニングTreantへの幹に深く食い込み、効果的にDamageが入るようになった。
Death Iron製の義肢は、鉄製の剣よりも高いAttack PowerのWeapon Equipmentになり得るのだ。
「【Unarmed Fighting Technique】を覚えるか、もっと良い剣を買えるよう稼ぐかしねぇと、ダメだなこりゃ」
剣を使わない方が強いという事に、Swordsmanの端くれとして微妙な顔つきになるSimon。
その横ではMarollとFangが、他のバーニングTreantに対して効かないFlame Breathや火炎のfurを諦め、二頭で協力してphysical battleを挑んだ。
「ヂュウ!」
「ギィ!」
Fangが【Dark Aura】でバーニングTreantを惑わし、出来た隙を突いてMarollがtailを鞭として使い、バーニングTreantの幹に叩き付け"tree bark"を弾けさせる。
「ガァ!」
「ギィィィィィィ!」
そしてよろめいたバーニングTreantに強烈なtackleをくらわせ、一気に押し倒す。
「キィー!」
「ヂュガアアア!」
UrumiとSurugaは更に簡単だ。Surugaが前衛でバーニングTreantを足止めしている間に、UrumiのcoldがバーニングTreantの炎を凍てつかせる。
「確かに、ここなら人目もありませんもんね。Transform! からの~!」
TransformしたKanakoが掲げた腕が、ミヂミヂと鈍い音を立てながらscaleに覆われclawsが生えた異形の腕に変形する。
「【鉄裂】! 必殺Idolクロー!」
Chaos Elfになって獲得した【Mysterious Strength】skillも効果を発揮したclawsの一撃は、バーニングTreantの幹を砕いた。
「Idolじゃなくて、Dragonって感じよね。って、言うかWater-Attribute Magicは使わないの?」
一方、Melissaは背中から透き通ったトンボに似た形状のfeatherを生やして、それを振動させて作った衝撃波でバーニングTreantを滅多打ちにしていた。
Kanakoは腕を戻しながら、幹を細かく削るような戦法をとるMelissaに答えた。
「湯気で何も見えなくなりそうですからね。Melissaだってmagicを使ってないじゃないですか」
「space attributeの攻撃magicは、Manaの消費が大きいのよ」
そうMelissaが言い終わると同時に、最後のバーニングTreantが倒れた。
その後もFitunの策のimpactとVandalieuのGuidanceによって、敵がほぼ植物型のmonstersしかいないDungeonの攻略は順調に進んだ。
それは戦闘だけでは無く、衣食住に関しても同-samaだ。Samのcarriageは見た目よりずっと大きく、更に【Comfort Maintenance】skillの効果で、幌の中は冷暖房が完備されているのと同じconditionにある。
更に、「戦闘には加わっていないので」とVandalieuは、【Preservation】で新鮮なconditionの食材を使ったCookingが食事の度に振る舞われる。
そして通常のDungeon攻略では考えられない事だが、入浴まで可能だ。Vandalieuが【Golem Creation】や【Labyrinth Creation】で鉱物やDungeonの内装の一部を操作して浴槽を作り、彼のDivine Spirit MagicとDarciaやKanakoのWater-Attribute Magicで水を出し、お湯にする。
『Earth』に例えると、キャンピングカーで旅行をしているようものだ。
『Job change roomがありますので、気兼ねなく使ってください』
更に、SamのcarriageにはJob change roomが設置されているのでJob changeまで可能だ。
Rank7以上のmonstersはSimonとNataniaにとってかなりの強敵であり、バーニングTreantとの戦いのようにDoug達がいなければまず勝てない相手だ。そのため、二人は一度の戦いで大量のExperience Pointを得ていた。
だが大量のExperience Pointを得たのは、二人だけでは無かった。
「ヒヒィィィン!」
「ブルルル!」
惨い有-samaのmonstersに、ManeとDemon Horseに変化したHoofが蹄を叩き付け続けている。
「蟲のmonstersでも、Vandalieuに導かれない子もいるのね」
「Lightning Locustだそうですから、何らかの要因でFitunのimpactが大きかったのかもしれませんね。Wind-Attributeのimpactを強く受けているだけなら、Peteもそうですし」
電光のように素早く飛び、放電もするイナゴのmonstersはVandalieuに導かれる事無く、appetiteのままに襲い掛かって来た。
あまりに数が多かったのでVandalieuも戦いに参加し……群れの内二匹のfeatherと脚を切り落として生け捕りにし、ManeとHoofに蹄で蹴らせているのだ。
certainly、Experience Pointを稼ぐためである。
しかし、蟲の息のLightning Locustに止めを刺す事がなかなかできない。やはり、Rank2のLesser Demon Horseの蹄では、Rank7のmonstersにDamageを与えるのは至難の業のようだ。
「とりあえず、久しぶりに【Bloodshed Enhancement】を」
「じゃあ、私も付与magicをかけるわね」
だが、VandalieuとDarciaの助力もあり、数分後、二頭はLightning Locustを倒しRank upを経験したのだった。
そのようにちょっとした出来事もあるが、順調なのに変わりはない。寧ろ、順調過ぎてDoug等は文句を漏らしたほどだ。
「幾ら中ボスって言っても、あれはないだろ。バーニングTreantやLightning Locustの方が、まだ歯ごたえがあったぜ」
十階層の中ボスはOgreハイMageが一匹。Rank7で、Ogreとしてのbody part Abilityとmagicの腕前を併せ持つ強敵だ。しかし、前衛が居ないので呪文を唱える間もなく倒されてしまった。
二十階層の中ボスは、Mountain Giant Barbarianだった。Mountain GiantからRank upし、よりMysterious Strengthになった個体なのだが……Hajime Fitunと戦った時に何匹もgiantと戦っているVandalieu達の敵ではなかった。
寧ろ、食傷気味な相手である。そのため、戦闘狂の気があるDougは不満を覚えていた。
「俺には、どっちも命がけの相手なんですけどね」
「あれより強い相手だったら、その日はもう戦えなくなるのを覚悟で【-Surpass Limits-】して、Martial Artsを連発するしかなくなる」
「ウォン!」
ただ、SimonとNatania、そしてFangにとっては強敵である。十階層ではOgreハイMageが呪文を唱え終わる前に倒そうと、二十階層ではMountain Giant Barbarianの間合いの外から攻撃して牽制する等して、必死に戦っていた。
「確かに、十階層はともかく、二十階層でもう少し中ボスが強いか、中ボス以外のmonstersが居たら俺も手を出しましたね」
戦いの間Simon達の健闘ぶりを見ていたVandalieuが、そう評する。どうやら、本当にSimon達にとってはbarelyの戦いだったようだ。
「恐らく、本来ならDougが望むような難易度の高い戦いが用意されていたのだろう。十階層では前衛を務めるmonsters、そして二十階層ではgiantを援護する為のmonstersが配置され、過酷な戦いを挑戦者に課したはずだ。
だが、今は管理者不在の上にrunawayを起こした直後だ。中ボスの援護を行うmonstersの再配置が進んでいないのだろう」
Gufadgarnがそうconjectureを口にする。
彼女の言う通り、Fitunの『試練の迷宮』では難易度の高い戦闘が連続で起こり、それを潜り抜けた者のみがFitunからblessingsや高度なmagic itemを得る事が出来た。
しかし、Fitunが無理にrunawayを引き起こしたため、Fitunの『試練の迷宮』の中ボスは通常のBClass Dungeonよりやや劣る程度の難易度に下がっていた。
「それじゃあ、Dungeonボスも――」
「その向こうの宝物庫も期待できないって事ですか。なんだかSlightlyやる気が失せてきましたね~」
「そう言わないで頑張って。Dungeonボスは、私達も戦うから」
そしてDungeonボスのRank9、ストームGIANTとの戦いにはDarciaも参加し……やはり順当に勝利し、予想通りしょぼい宝物庫の中身を持って地上に戻るのだった。
依頼主であるMoksi EarlとAdventurer’s Guildには「やはりDungeonが発生していた」と報告された。これにより、monstersのrunawayを未然に防げなかったMoksi Earlの失点は、限りなく小さくなった。
突然発生したDungeonが、僅かな時間でrunawayを引き起こす。流石にそれを防げと言うのは無理がある。
それでも多少の叱責は受けるだろうが、それは形式的なもので具体的な罰が伴わないものになるだろう。
そしてFitunの『試練の迷宮』だが、Alda's FactionのGodsが利用できないようにGufadgarnが手を加え、その後は放置する事になった。これからはMoksi Earl領のBClass Dungeonとして数多のadventurerが挑む事になるだろう。
ちなみに、名をFitunの『試練の迷宮』から『Garess' Battlegrounds』という名に改名された。
Adventurer’s GuildにとってFitunの『試練の迷宮』は、突然発生した未攻略Dungeonだったので、命名権が初攻略者であるVandalieu達に委ねられたのだ。
Vandalieuの名を付ける事は、本人とGufadgarnが強固に反対した。
「偉大なるVandalieuの名を、この程度のDungeonに付ける事は許されない」
と言うのが彼女の弁である。
では書類上依頼を受けた事になっているKanakoやDoug、SimonにNataniaの名を使うのはどうだろうとVandalieuは思ったが、全員辞退した。
「じゃあ、『Nameless Heroes』でどうだ? 今、流行ってんだろ」
『お願いだからやめて、本当に止めて』
Legion達が本気で頼んだ結果、『Nameless Heroes』案も没となった。
そこで『God of Warriors』Garessの名を使う事にしたのである。『War-God of Fire and Destruction』ZantarkのSubordinate Godであり、Vida's Factionの神であるGaress。彼の名と存在はHuman社会には殆ど残っていない。
「Dungeonの内装には、砦のように戦争を連想させるものがありますし、Vidaのbelieverである俺とkaa-sanがそう命名しても不自然は無いでしょう。
バーニングTreantのように、Fire-Attributeっぽいmonstersも出てきますし」
「DungeonボスはストームGIANTだったけど、別に良いわよね」
こうしてFitunの『試練の迷宮』の名はlegendの中にのみ記される事となった。尤も、Alda's Factionとしては、必要もないのに、Demon Kingごと罪も無い人々を万単位で殺そうと企んだ証拠を残されるよりは、ずっと良かっただろうけれど。
――――――――――――――――――
・Name: Mane&Hoof
・Rank: 4
・Race: Shadowホース
・Level: 98
・Passive skills
Mysterious Strength:2Lv
Dark Vision
Mental Resistance:3Lv
Disease and Poison Resistance:1Lv
Enhanced Body Part:蹄:4Lv
Self-Enhancement: Guidance:2Lv
Shadow Assimilation
・Active skills
High-Speed Running:1Lv
-Surpass Limits-:4Lv
Charge:2Lv
Dark Aura:1Lv
・Unique skill
ヴ■■■■■'s Divine Protection