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Chapter 249: 主無き迷宮へ

 Vandalieu達がMoksiに現れて二ヶ月が過ぎ、三カ月目に入った。この頃にはOrbaum Elective Kingdom内では諜報organizationや特殊な情報網を持っている権力者以外にも、彼の存在が知れ渡り始めていた。

 ただ人から人に情報が伝播する際に余計な尾ひれがつき、逆に重要な部分が欠ける等accurateさが失われていき、Alcrem Duchyから離れたDuchyでは、かなりいい加減なものになっていた。


 ただ、Dark Elfの母とDhampirの息子がAlcrem Duchyに居るという事だけは共通していた。

 その噂はOrbaum Elective Kingdomの各地に潜む過激派のAlda believerの耳にも入った。彼等にとってVida's New Racesは蔑視する存在であり、Dhampirは闇に葬るべき忌子だ。そんな彼らにとって、噂は不愉快なものだった。


 しかし、具体的に動く事は出来なかった。Alda過激派と一括りにされているが、彼等は一つのorganizationでは無い。地域ごとに散らばっている集団や個人だ。それに、Orbaum Elective KingdomではAmid Empireと違いDhampirHumanとして扱うと法に記している。


 Alda過激派はそれを悪法であると考えているが、彼等がどう考えようが司法機関には意味の無い事だ。

 更に『Five-colored blades』のleaderHeinzの活躍によりOrbaum Elective KingdomではVida's New Racesにも寛容なAlda Reconciliation Factionが力を増している。originally Elective Kingdomでは少数派だった過激派の力は、より小さくなっている。


 離れたAlcrem Duchyに刺客を送りつけるような行動力やorganization力は、無かった。Vandalieu達が彼らの巣くうに訪れた場合は、何らかのtroubleが発生しただろうが。

 ちなみに、Alcrem Duchyは数年前までBeast raceに対する迫害が行われていたので、過激な思想を持つAlda believerも少なくなかった。Moksiのような交易都市はともかく、弱小Nobleが治める他の地域との交流が少ない辺鄙な領地等では、領民全体がAlda過激派に染まっているという事もあった。


 しかしAlcrem Duchy全体がAlda Reconciliation Factionに傾いた近年では、過激派のような偏った考え方の者は減りつつあった。だが、それでも金で雇われた刺客が送り込まれ、旅人を装ったAlda過激派のbelieverを訪れている。それが表面化していないのは、刺客を『Hungry Wolf』のMichaelことMiles RougeIslaが処理し、Moksi EarlSpyAlda過激派のbelieverから排除しているからである。


 Dhampirにとって危険な集団としては、『Heroic GodBellwoodbelieverの中でも過激な、若しくは狂信的な者達の存在が知られているが……実は知られているだけで、少なくとも現在のOrbaum Elective Kingdom内にはorganizationとしては存在していない。


 米を栽培したと言うだけで農村を焼き打ちし、村人を皆殺しに、そしてanother worldの技術と同じ発明をしたという理由で発明slaughter。そしてVida's New Racesへの凄惨な事件の数々を、歴史に現れる度に起こしてきたBellwood fanatic。同じBellwoodAldabeliever達からも忌み嫌われ、時にはBellwood信仰を騙って狼藉を繰り返す犯罪者として処断されてきた。


 だが、彼らの信仰対象である『Heroic GodBellwoodは、約五万年前に眠りについている。believerOracleblessingsを与える事もない。そのため一部の歴史あるtemple以外のBellwood templeは、現在Alda templeAbsorptionされていた。

 Alda templeBellwoodIdol Statueも祭られているconditionであるため、現在では過激なBellwood believerAlda過激派にAbsorptionされる形で一体化されていた。


 そしてDhampirbloodの汚れとして狙うVampires serving Evil Godsorganizationは、 Bahn Gaia continentを牛耳っていたHihiryushukakaを奉じていたorganizationが壊滅したばかりだ。

 いずれ他のContinentVampires serving Evil Godsorganizationが進出して来るだろうが、それは先の事だろう。


 そのため、Moksiに居る限りVandalieuに敵対するorganizationは、『God of Law and LifeAldaに従うGodsとそのHero達のみだ。

 しかしVandalieuallyの……少なくとも、当人達はallyだと信じて疑わないorganizationも存在する。


「どうかな? -chanと書けてる? 書き間違えてない?」

 『Five-colored blades』に保護されたDhampirShoujo Selenは、自筆のletterを三人の大人に見せた。

 一人は現在彼女を護衛しているadventurer partyRoaring Swordsmen』のleaderであるRembrand

 そして残り二人はそれぞれ高位のClergymanを意味するローブを着た男女だ。胸にある聖印は、『God of Law and LifeAlda、そして『Goddess of Life and LoveVida


「漢字も使って書いてあるし、読みやすいぞ。勉強を頑張った甲斐があったな」

 Heinz達が留守の間、護衛としてだけではなくfamily代わりとして接してきたRembrandに褒められたSelenは、嬉しそうに微笑む。


Rembrand -donoの言う通りです。心がこもっているのが、伝わってくるおletterですね」

 Vidaの聖印を記したローブを着た優しげな青年……Duke Farzonの甥にあたるPietro Farzon High Priestがそう評する。


「ええ、SelenletterならAlcrem Duchyに現れたDhampirの少年も受け取ってくれるでしょう」

 そして、Aldaの聖印を記したローブを着ている二十代のfemaleMehgan Cardinalが纏めた。


 Duke Farzon領に居る彼女達は、北のAlcrem DuchyDhampirの少年と、その母親のDark Elfが現れたと言う噂を聞き、詳しい調査を行った。そしてDhampirの少年が本当に存在しており、母親のDark ElfVidaFamiliar Spiritを降ろす事が出来る聖人である事を確信した。

 それはReconciliation FactionであるMehgan Cardinal、そしてAlda Reconciliation Factionと積極的に協力体制を築いてきたPietro High Priestにとって吉報だったが、同時に喜ばしくない情報がもたらされた。


 Dhampirの少年とその母親は、Vida Fundamentalism、つまり融和を目指す彼女達と正反対の立場に在るという事だった。

 これではAlda Reconciliation FactionMehganや、Pietroの使者が接触しても相手にされない可能性が高い。


 しかしAlda Reconciliation Factionとそれに協力するVidaHigh Priestとしては、二人と対立する事は避けたい。特にVidaFamiliar Spiritを降ろす事が出来る母親、Darciaとは。

 Orbaum Elective KingdomAlda believer全体をReconciliation Factionに、そしてVida believerReconciliation Factionとの協力体制に取り込む事を目標に掲げ、それが徐々に現実に近づいているのだから。


「でも、私のおletterじゃ失礼にならない? 私、childだし……」

 Selenは法律上、Honorary Earl位を持つHeinzの義理の娘という事になっている。Honorary Nobleは一代限りで世襲する事は出来ないので、彼女を希少なraceの平民としか見ない者もいた。法律上は、Heinzが存命している間は彼女もNobleとして扱われるのだが。


 そんな中途半端な立場の上にchildの自分のletterだけでは、Vandalieuに対して失礼にあたるのではないか。そう心配するSelenPietroは笑って答えた。


「大丈夫だよ、私達のletterも同封するし、-chanと使者に持たせるから平気だよ」

 Pietroも、Duke Farzon 家の姓こそ名乗っているが、継承権は放棄している。法律上Nobleではあるが、彼のchildは他のNobleの養子になるか婚姻してに入らなければ平民になる。

 MehganCardinalと言っても、その権威はClergymanとしてのもので世俗の法制度の中では平民でしかない。


 二人とも、今のSelenの微妙な立場を理解していた。


しかしFundamentalismか……今の時代には珍しい」

 十万年前Aldaに敗れたVidaだが、そのbelieverが居なくなったわけではない。だが、つい最近までVidaやそのSubordinate God、そして近しいGodsOracleblessingsbelieverに与えた事が無かった。


 そのため人々の関心は、華々しい活躍をするHero達がいる『God of Law and LifeAldaとそれに近しいGodsに向けられる事が多かった。

 Vida believerにも、Dhampirの『Mercenary KingVeldのようなHeroが現れる事もあったが、それはあくまでも例外であった。


 だから大多数のVida believer達は、Alda believerに対して程よく距離を取り、積極的に論争はしても、武力で争う姿勢は見せなくなっていた。


Dark Elfだそうですから、社会から隔絶された里で暮らしていたのかもしれません。新race……その中でもGoddessの過ちによって生まれたMajin Race等は、今もAldaの打倒とHumanの根絶を唱えていますから」

 Vampireの次にHuman社会と衝突する事が多いMajin Raceを例に出して、PietroMehganに説明する。Vampireについて言及しないのは、Selenの前だからか。


「そうかもしれませんね。もしそうなら、Alcrem Duchyの良き人々が彼女の考えを和らげてくれる事を祈りましょう」

「なんて言うか、小難しい話だな。いつも思うんだが、Kami-samaの事はとりあえず棚上げして、上手くやろうぜって事じゃダメなのか?」


 PietroMehganに、Rembrandはそう尋ねた。彼は特定の神のbelieverではない。Adventureの前に適当な神に祈って縁起を担ぎ、稼いだ時は特定のtempleに偏らないように寄付をする。Clergymanに睨まれないようにしてきた。


 その結果Alda's FactionVida's Factionの争いを無くし融和する事を目的とするReconciliation Factionの知り合いが増え、Heinzと親しくなり、今に至ると言うだけでRembrand自身に強い思い入れがある訳ではない。

 そんな彼にMehganは苦笑いを浮かべ、Pietroは真剣な顔で答えた。


「それが出来れば良いのだが……Clergymanなんてやっていると、難しく考えてしまうものなのよ」

Champion Zakkartは、生前『神も過ちを犯す』という言葉を残しています。

 そのZakkartChampion四人を犠牲にしてしまったAldaBellwood、そしてBeast raceGiant race等新たな人類の仲間たるraceだけではなくMajin Raceなど人類に仇成すraceを産み出してしまったVida。偉大なるGodsでもこのような過ちを犯すのです。人の子に過ぎない我々が過ちを犯さぬよう慎重になるは当然でしょう」


 Pietroが口にしたChampion Zakkartの言葉。それは事実、十万年以上前に生きていた彼が残した言葉だ。この言葉を指して、一部のAlda believerは、彼が堕ちる前からChampionに相応しくない人物だった事を表していると唱える。

 そして多くのVida believerは、神への盲信を戒める言葉だと教えている。


 だが真実は、BellwoodChampionに選んだAldaを皮肉った言葉だったのだが。


「……やっぱり難しい事しか言わないな。これだから人生相談はNunに、結婚式はブラザーに頼めと言われるのだ」

「人生相談ではfemaleの方が優しい言葉をかけて貰える。だが、結婚式では新婦に浮気を疑われないよう、年配のmale Clergymanに頼む方が良い。実際はそうでもないと思いますが」

「寧ろ、femaleの方が辛辣な場合も多いですよ」


 大人達がそう話している間、Selenは薄れかかっているMemoryに残っているVandalieuの事を思い出していた。

(maybe、新しく現れたDhampirって、あの子の事だよね? 今度はお話しできるかな?)

 Niarkiで偶然出会い、しかし声をかけた途端逃げ出してしまった同raceの少年。Selenはその事をRembrandにも話していなかった。


 Heinz達に口止めされていたからだ。Vandalieuが逃げ出した後に起きたDungeonの出現とそのrunaway等、不吉な事が多かったからだ。

 妙な悪評を発生させて、それにVandalieuを結び付けられないようにと言う配慮も……半分くらいはあった。


 そしてHeinzは、Rembrand達にかつてMirg Shield Nationadventurerとして受けた仕事でDhampirの母親を捕まえ、AldaHigh Priestに引き渡した事は話していた。

 しかし、その母親が産んだDhampirVandalieuであるかもしれない事は話していなかった。母親のnameが、Darciaである事も。


 彼等にとっては話し辛い過去の汚点だった事もあるが……DarciarevivalしてHuman社会に現れるなんて事態は想定外だったのだ。




 上手くすれば儲けられるはずだった。

 monstersrunawayが起きた後のDevil Nestsmonstersの数が少なくなるし、立ち入り禁止だからadventurerと出くわす可能性も無い。

 最近この辺りの同業者が捕まったかどうにかして消えたらしいので、今なら裏社会の上層部に食い込めるかもしれない。


 そう考えて馬車に『商品』を乗せ、彼はmercenaryを二人護衛に雇って、街道に設置された警備隊の詰所を避けるためDevil Nestsに入った。

「話が違うじゃないか!」

 しかし、彼は自分の考えが甘かった事をすぐに思い知った。


 Devil Nestsに入ってすぐの頃は、確かにmonstersは少なかった。だが次第にGoblinKobold等のmonstersが現れるようになり、今はRank3の猿に似たmonsters、狒々の群れに追われている。


 亜人では無く猿のmonstersだが、凶暴で何より群れる習性がある。Rank upすると大狒々という、gorillaを一回り程大きくした種になるが、群れる習性が薄れる為そちらの方が倒しやすいと評される。

 地域によってはKiller ApeGoblin Apeとも呼ばれる。


 そんなmonstersが十匹以上、彼の馬車を追いかけていた。

「ホォー! ホォー!」

「ウォォォ! ヴオオオ!」

 護衛に雇ったmercenary達は、既に他のmonstersによって殺されている。狒々たちは、次にご馳走にありつくのは自分達だとfangsを剥き出しにし、底なしappetiteが浮かんだ瞳を馬とCouch DrivingHumanに向ける。


「もっと早く走れ! この駄馬が!」

 焦って馬を罵るが、馬が限界なのは分かっていた。昨日、diseaseを起こす茸型のmonstersの胞子を受け、そのconditionから休ませず移動を続けて来たからだ。

 Moksiまで保てばそれでいいと思っていたが、それも無理そうだ。


「クソっ、何でこんなにmonstersが多いんだ!? monstersrunawayが討伐された後は、monstersが減るんじゃなかったのかよ!」

 彼が叫んでいる通り、通常monstersrunawayが討伐された後はmonstersの数が減る。だが、Moksiを襲ったmonstersrunawayは、通常のものでは無かった。


 『God of ThundercloudsFitunが管理するDungeonの出入り口を、彼の配下であるHeroic spiritMoksiの近くにあるDevil Nestsに設置し、FitunDungeonを操作して起こさせたrunawayだ。だから当然、Moksiを襲い討伐されたmonstersの多くは、FitunDungeonで発生したmonstersで、Devil Nestsに生息しているmonstersではなかった。


 とは言っても、幾らかは他のmonstersにつられてrunawayに加わったり、逆に見慣れないmonstersに縄張りを荒らされたと考えて襲い掛かり、返り討ちに遭ったりしただろう。

 しかし originally数が多いGoblinや、頭が良く見慣れないmonstersを警戒して巣に籠ったKobold、そして狒々にはimpactは殆ど無かったのだ。


「ウボオオオ!」

 その時、群れの先頭の狒々が石を投げた。monstersの腕力によって投じられた石は、狙い違わず馬の脚に命中し、馬が転倒し馬車が横転する。

「うああああっ!?」

 男はscreechをあげてCouch Driving台から投げ出され、地面に叩きつけられた。しかし、狒々達が男に殺到する事は無かった。


 見ると、馬は立ち上がれないのか大きな声で嘶きながら、脚で宙を蹴っている。その動きと、横転した馬車から散乱した『商品』が狒々達の注意を男から逸らしているようだ。

「い、今のうちにっ!」

 体中から感じる痛みを堪えながら、男は逃げ出そうとした。『商品』を無くすのは痛いが、死んでは何の意味も無い。


 もうDevil Nestsの表層のはずだ。後は何とか駆け抜けて、まで辿りつければとりあえず助かる。今はそれだけを考えて、男は駆け出そうとした。だが、狒々達がそのsignを見逃す筈も無く……。

「【Flying Sword】!」

 突然響いた声と共に飛来した黒い金属の手が握る剣が、狒々の胸を貫いた。


 目を見開いて動きを止める男と、彼以上に驚愕する狒々達。そこに、更に「【rocket punch】!」と言う女の声が響き、素早く回転する何かに狒々達が薙ぎ倒される。


「狒々の群れか。前なら両腕があっても、相手するのは勘弁だったが……!」

「今のオレ達には、物足りない相手だ!」

 そして男と狒々が衝撃から立ち直る前に、やはり黒い鎧を着た男と、Beast raceの女が現れて狒々の群れに突っ込んで行く。


「二人とも、初めてTransformしてからまだ十日も経っていないのに、随分腕を飛ばすのが上手くなりましたね。Nataniaは俺が教えたrocket punchMartial Artsとして使えるようになりましたし」

Borkus -san達の訓練は壮絶だったから。終わりの方にはDougも巻き込まれたし」

「ああ、全く。俺とあの二人は違うって言うのに、似たようなもんだって言いやがって……」


 そして次々に狒々を倒していく二人の活躍を見守りながら、Vandalieu達が現れた。monsters化したManeに引かせている……ように見えるSamを囲むようにして歩いている。

 男からすると狒々の群れはdespairを覚える程の脅威だったが、Vandalieu達にとってはSimonNataniaの訓練の成果を見るのに、適当な相手でしかない。


「た、助かった……。なあ、あんた達adventurerだよな? すまないが助けてくれないか」

 狒々が全滅したのを見て安堵した男は、自らのFortuneに感謝しながら恩人達に話しかけた。FangMaroll達を見て驚き、声が震えたがTamed Monsterである事を示す首輪をしているので、問題無いだろうと自分を落ち着かせる。


「見ての通り、俺の馬車は使えなくなっちまった。それで、無事な商品をあんた達の馬車に乗せてまで運んでくれないか? 謝礼は商品を売った金の三分の一、いや半分でどうだ?」

 originally全て諦めるつもりだった『商品』だ。それに表向きの商品と実際の『商品』は異なる。表向きの方の半額程度は、男にとって痛くもかゆくもなかった。


「馬は、まだ元気みたいですけど?」

 そう言ってKanakoは、まだ混乱して嘶き続けている馬を指差す。その馬に、Samcarriageから降りたDarciaVandalieuが近づいて行く。


「いや、でも脚が折られていて、しかも diseaseだからfrom here 町まではとても――」

 そう男が説明しているのを聞きながら、Darciaは暴れている馬の脚を見た。そこは確かに折れて曲がっていた。

「この程度なら、折れて時間も経っていないし簡単ね」

 しかし、【Magic Eye of Regeneration】をActivateしてほんの数秒で治してしまった。


diseaseは、もう治しましたよ」

 そしてVandalieuによって、馬のdiseaseはいつの間にか完治していた。

「治癒magicが使えるのか! ありがたい。残った商品を馬に乗せ変えれば、まで行けそうだ」

「その商品というのが、これですね?」

 Vandalieuは、喜ぶ男に向けて割れた陶器の壺のfragmentを掴んで見せた。男が馬車で運んでいた『商品』は、塩を入れた壺だったのだ。


「ああ、そうだ。東隣りのAlsabah Duchyの塩だ。Alsabahには小さいが港があってな。そこで海水から作られる塩は岩塩とはSlightly味が違うらしくって、この辺りなら高く売れるんじゃないかと思って運んで来たんだよ!」

 あらかじめ用意してあった台詞を口にする男に、Vandalieuは続けて尋ねた。


「そうなのですか? 俺のtongueにはこの辺りの岩塩と同じ味にしか感じませんが。それに、この壺は陶器に似ていますが違いますね。舐めると麻薬の味がしますし」

「はっはっは、そうかい? そうか……ひぃっ!」

 Moksiに麻薬を運び、売りさばこうと企んでいた男はVandalieuに背を向けると、Kanakoの脇をすり抜けDarciaが降りたため、空になっていた馬車のCouch Driving台に飛び乗った。


 そしてそのまま逃げ出そうとするが……その馬車はただの馬車では無い。

『飛んで火に入る春間近のwormですな』

 背後に出現したSamSpirit Formによって、男は抵抗する間もなく締め落されて白目を剥いた。


Bocchan、この男、如何いたしましょう? 麻薬を運んでいた以上この男も嗜んでいた可能性がありますので、食材にはお勧めできませんが、森の肥やしにでもいたしますか?』

「縛り上げて、事情を説明するletterと証拠品と一緒に、Fangに届けてもらいましょう。お使いよろしくお願いします」

「ウォン!」


「それより、麻薬なんて舐めて平気なんですか?」

「俺は【Status Effect Immunity】ですから。それよりも、彼の置き土産を受け取りましょう」

 そうKanakoに答えたVandalieuは、bone折とdiseaseを治療されたため、立ち上がったが、失ったEnduranceはそのままなので動けないでいる馬に向き直った。


 ManeFangの瞳に憐れみが宿り、Maroll達がチュウチュウとはしゃぐなか、馬を撫でて落ち着かせようと、Vandalieuは手を伸ばした。

「ヒヒン!?」

 それに対して、馬は反射的に蹴りを繰り出していた。硬い蹄が、Vandalieuを打つ。


「師Artisanっ!?」

 狒々のMagic Stoneと討伐部位をはぎ取っていたNataniaが、思わず声をあげる。

「む? お手と勘違いしましたか?」

 しかしVandalieuは痛みを感じていなかった。自分が伸ばした手を、「お手」の合図だと馬が勘違いしたのかと、誤解までしている。


 Maneと、そしてFangの瞳に馬に対する親近感が浮かび、憐れみが深くなった。

「思ったより人懐っこいですね。お手」

「ヒヒィン!?」

 ばしんと再度蹄で蹴られるが、ビクともしないVandalieu。馬の混乱が、horrorに変わっていく。


「たしか、もう一頭馬が欲しいって言っていたが、あの馬を持って行く気なのか?」

『私のSpirit Formの馬ですと、瞳は紅く、呼吸はしていない。更に、触れられると体温も無いのがばれますから。車体の大きさを考えますと、Manemonsters化して馬力が上がった事を考慮しても後一頭は欲しいところですな。

 【Size Alteration】で車体を小さくする事も出来ますが……』

 DougSamが改めて何故馬が必要なのかを説明する。そうしている内に、馬はVandalieuに屈したらしい。まだ懐いてはいない、屈しているだけだ。


「この子のnameはどうするの、Vandalieu?」

「蹄だからフーフ……だと夫婦に聞き間違えそうですね。Hoofにしましょう」

 やはり『Origin』の言葉で蹄を意味する言葉を名づけた。Vandalieuは、何故か急に『お手』をしなくなったHoofの顔を撫でたのだった。




 Hoofが加わり、Fangがお使いから帰って来るのを待って動き出した一行は簡単にDungeonの入り口を発見した。

 Mountain Giantを含めたmonstersの群れがに向かった痕跡は、馬車が通れるほどの道を森の中に作っていたのだ。


「これがFitunの『試練の迷宮』の入り口……簡素ですね」

 森の中にさえなければ、大きな洞窟としか見えなかったそれに、Vandalieuはそう所感を呟く。

「『Trial of Zakkart』みたいに、看板がある訳じゃないのね」


Vandalieu、そしてDarcia -dono、あの看板はDungeonの趣旨を間違えて挑んでくる攻略者があまりに多いので建てた物です。

 Godsが管理するDungeonは、originally選ばれた者しか入る事が出来ないようにするそうなので、看板を設置する意味が無いのでしょう』


 姿が見えないだけで、常にVandalieuの背後にいるGufadgarnがそう説明する。

「とりあえず、中に入りましょうか。Dungeon初攻略のHonoraryを手に入れ、Kanako達をCClassに昇格してもらい、更にDungeonの管理を乗っ取り、Vida's Factionのものとするのです」


「おー! DClassだと箔がつきませんからね。adventurerで芽が出ないから、DancerBardの真似事をしてるって陰口も囁かれますし」

「師ArtisanKanakoの姉-san達はともかく、俺らはまだCClassには相応しくないって昇Classを辞退したばかりなんですが……」


 そう言い合いながら、躊躇いなくDungeonの中に入って行く一行。彼等にとってBClass相当だろうと思われるこのDungeonは、Vandalieuといる限り脅威を覚える場所ではない。

 例外はManeHoofの二頭ぐらいのものである。


ManeHoofも心配はいりませんぞ。いざとなったら、お前達ごと亜spaceに潜るか、お前達をcarriageに引っ張り込んで私が自力で動きますので。ハハハハハ!』

 楽しげな馬車の声に励まされても不安を隠せない二頭だったが、止まる事は許されずDungeonの中に消えていったのだった。


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