Vidal Magic Empire。Vandalieu達が提案したこの新国名は、ほぼ全員に受け入れられた。
『Giant Idol Statueを建立する時よりも抵抗なさるだろうと予想していたのに、その日のうちに新国名への改名を了承成されるとは! さあ、陛下の気が変わらない内に手続きを進め、式典の準備を整えるのだ!』
「思ったより早かったな。俺はてっきり、暫くの間抗議活動でもするかと思ったぜ」
ChezareとKurtが受け入れた理由は、新国名そのものに対してではなく、Vandalieuが自分から提案した事に対してだったようだが。
二人にとって、新国名そのものは重要ではなかったらしい。
certainly、多くの国民は新国名を正しい意味で歓迎した。やはりVidaの名と、Vandalieuの名から取ったのが良かったようだ。
そして受け入れるまで多少ごねた者も、新国名に関係ない理由だった。
「何でtournamentが無いんだ!? 儂ぁ、納得できんぞ!」
「父-san、selfishnessを言わないでください! しかも酔っていますね!?」
駄々をこねるGodwinをIrisが叱っているが、酒が入っているため効果はいまいちのようだ。
「じゃあ、代わりに皆で組手しましょう。それで納得してください」
「本当か!? よし、War Godを倒したその腕前、どれほど強くなったか興味があったのだ!」
『おお、そいつは面白そうだ!』
「うおおおお! 暇な奴は全員集まれ! Vandalieuと組手だ!」
何故かBorkusやVigaroも加わって行われた、Battle Royale組手。全員素手だが、拳と拳がぶつかる度に衝撃波が発生し、残像が観客の目を惑わす激しい戦い。
それが行われている間に改名の手続きは粛々と進み、Talosheimは書類上Vidal Magic Empire首都Talosheimとなった。
なお、Battle Royaleの勝者はBragaだった。
「皆、好戦的過ぎ。強い奴同士で潰し合ってたら、Battle Royaleは勝てない。Kingは、遠慮しすぎ」
「【Demon King Fragment】と【Soul Breaking Arts】は、組手には不向きですからね」
ただし、国名を改名した事を祝う式典は後日という事になった。前日に戦勝paradeをやったばかりだった事と、どうせVandalieuが数か月から数年はごねるだろうと誰もが予想していたため、準備が行われていなかったのである。
そのため式典は、Giant Idol Statue完成式典と併せて行われる事となった。
ちなみにGolemによるCola製造工場の建設も、まだ企画段階だ。GolemはVandalieuのManaがあれば動くが、機械のように増やせない。創った後、必要な動作を命令し、習熟させる必要があるのだ。
死体の代わりに鉱物の人型に霊を取りつかせるVandalieuのGolem特有の問題点である。
しかし magicや霊を活かして、炭酸の強いColaを創る方法が確立された。
「Kanakoの【Venus】で二酸化炭素については分かったが……それだけを抽出するのは中々boneが折れる」
『【Fluid Manipulation】で液体を操る方が簡単かもね』
ZadirisがWind-Attribute Magicで空気中の二酸化炭素を集め、Orbiaが液体を操作する。
Golem工場程大量には作れないが、これで自分達が飲む分は確保する事が可能だ。
後はCelisとBestraのSurgeryだが、当人達がSurgeryに対して不安があるようなので今回の滞在では行わず、火傷跡の具合を見て移植するskinとBlood potionの準備だけに止める事になった。
その間二人にはSurgeryの経験者であるBellmondではなく、Abyss Pure-bornとなったPure-breed Vampire達から話を聞くguidanceが行われた。
Abyss種に成るのは怖くないし、決して残念になる訳ではないのだと理解してもらいたいと、Elper達は張り切っていたが……。
後はGodsのSpirit Cloneを宿したArtifact作りだが、それには流石に時間が足りないので、一旦Moksiの町に帰り、Alcrem Duchyの領都、Alcremに向かう準備をする事になった。
《【Strengthened Attribute Values: Ruling】、【Strengthened Attribute Values: Target of Faith】skillのlevelが上がりました!》
《【Strengthened Attribute Values: Vidal Empire】skillを獲得しました!》
「それで馬、ですか。馬車では無く」
Gufadgarnの【Teleportation】でMoksiの町に戻ったVandalieu達は、その準備の為、peddlerのEdmondに「馬が欲しい」と相談を持ちかけていた。
持ちかけられたEdmondの方は、若干戸惑った顔をしていた。彼からすると、勲章を授与された翌日と翌々日家に籠って疲れを癒していたらしいVandalieuが、突然やって来て彼が主に扱っている商品ではない馬を買い求めようとしたのだから、それも無理はない。
「ええ、馬を最低一頭、出来れば三頭。certainly貴方の隊商が使っている馬を寄越せと言っているのではありません」
Edmondは固定の店を持たないpeddlerだが、十台程の馬車からなる隊商を率いて町から町へ移動するEdmond Chamber of Commerceの長だ。馬車を引く馬以外にも、護衛が乗る馬や予備の馬を含めて数十頭の馬を持っている。
しかしそれは商品ではなく、Edmond達が商売を続けるために必要な移動手段だ。
「それは助かりますが、今から数日中に馬を揃えるのは運の問題になりますよ。来月の市まで待てばそれなりの馬が手に入る筈ですが……ご依頼の期限ではロバしか集められないかも知れません。
馬車をCouch Drivingごと雇うのでは問題があるのですか?」
Tamer guildには、決まった雇い主を持たないCouch Drivingも所属している。馬車を引くのはmonstersではなくただの馬だが、力が強くてStaminaに優れる。それにCouch Drivingの腕は確かだ。guildの組合員のVandalieuならコネもあるし、金さえ出せば確実に雇えるはずだ。
しかし、Vandalieu達はそれを選ばないと言う。
「ええ。うちのVandalieuやTamed MonsterのFangは人見知りだから。それに、馬車とCouch Drivingには心当たりがあるの」
優しげに微笑むDarciaの言葉に、Edmondは張り付いたような笑みを浮かべて聞き返した。
「あなたの息子-sanが人見知りで、馬車とCouch Drivingに心当たりがあるのに馬は無いと?」
Darciaの横で無表情を崩さず、淡々と落ち着いた口調でEdmondに依頼を伝えたVandalieu。Edmondには彼が人見知りのようには、とても思えなかった。
「そうなの、馬だけ持っていなくて。FangやMaroll達に馬車を引いてもらう事は出来るけど、あの子達が馬車から動けなくなってしまうと、道中の護衛役に支障が出るから」
それらしい言い訳を口にするDarciaに対して、Edmondは胸中で「嘘だ!」と叫んだ。特に、あなたの息子が人見知りなのは絶対嘘だと。
「なるほど。道中の護衛をTamerしたmonstersにさせる訳ですな。それなら機動力も確保でき、馬に乗ったmountain banditに襲われても安心だ」
しかし、EdmondはVandalieuに疑念をぶつける事はしなかった。彼は商人であって、journalistでは無い。追及するのは真実ではなく、利益だ。
Vandalieu達の秘密を探り出せば、間違いなく利益になる。しかし、Edmondは自分が信頼されている訳ではない事を自覚していた。今無理に探り出そうとすれば、関係を切られてしまう。
秘密は、何れ打ち明けられ共有できる信頼関係が出来るようになるまで知るべきではない。そうEdmondは自制した。
……Vandalieuが人見知りであると言うのも、実は事実なのだが。
「ロバでも構いません。車を引く事が出来るようTrainingされているなら、俺達が雇うCouch Drivingなら問題無く動かせるでしょう」
そしてVandalieu達が心当たりのある馬車とCouch Drivingとは、certainly馬車に霊が憑りついてUndead TransformationしたDimensional Road CarriageであるSamの事だ。
Alcremまで行くのに、いろいろと便利なSamを移動手段に使いたい。しかし、それには大きな問題がある。Samのmain bodyは馬車そのものであり、Couch Driving台に座っている男の姿や馬車を引く三頭の馬は全てSamの一部なのだ。
Couch Driving台の男の姿は、肌が青白くbloodの気が無い事と紅い目以外は生前のSamの姿と変わらない。帽子を目深に被っていれば、誤魔化せるだろう。
しかし、馬の方は難しい。bloodのように紅い瞳をした青白い馬は、呼吸もせず、触れても体温を感じる事は出来ない。この町やAlcremの町の門番に馬が呼吸をしていない事や、体温が無い事に気がつかれたら大問題だ。
なので、馬車を引いている振りをするために生きている馬が必要になったのである。
どんな駄馬でも、もっと言えばロバでも構わなかった。Samである馬車main bodyは何かに引かれなくても、自力で車輪を回す事が出来る。見かけさえ取り繕えればそれで良いのだ。
「ふーむ、その馬車がどれ程のものか私は知りませんが……幾らなんでもロバですと、重くて引けなくなるのではありませんか? 皆-sanが仕入れに使っている荷車ならともかく」
しかし、Edmondが指摘した通りロバでは体裁を繕う事そのものが無理だったようだ。考えてみれば分かるが、三頭立ての馬車がmain bodyであるSamを、ロバが引く光景は多くの人にとって奇妙に映るはずだ。
「やはり、私の隊商の予備の馬を出しましょう。なに、あくまでもお売りするのは予備ですから、行商にimpactはでないでしょうからご安心ください」
「まあ、そんな事出来ないわ。私達に予備の馬を売ったせいで、『何か』あったら悪いもの」
「いえいえ、『何があっても』お気になさらず。私どもはお客-samaに対して、誠心誠意、『裏表無く』商いをさせていただいておりますので」
「まあ。私に『あの話』を持ちこんでから、まだ一カ月ぐらいだったと思うけれど?」
「はっはっは。あの一件から、私も『心を入れ替えましてね』」
「それは良い事ね。でも遠慮するわ。もしもの事があったら悪いもの」
突然自分の隊商で使っている馬を融通しましょうと言い出すEdmondと、それを固辞するDarcia。
Edmondは自分達の馬を融通する事で、Vandalieuに対して貸しを作ろうと企んでいる。彼の言う『何があっても』とは、融通した馬の事ではない。馬を融通したEdmond達が不便な思いをしても、と言う意味だ。
もしそれを後でVandalieuが知れば、性格上気にしないはずはないと読んでの事で、思いっきり裏がある。
『Darcia -samaは、こやつのそうした思惑を読んで、固辞しているのです』
そう生者には聞こえない声で解説するChipurasに、Vandalieuは「なるほど」と頷いた。商人とはよく考えるものだなぁと、思って。
「diseaseやinjureをした馬や、ageを取った馬でも良いので探してもらえませんか? 普通の馬と同じ値段で買い取りますので」
DarciaとEdmondの交渉の合間に、Vandalieuがそう口を挟むとEdmondは「そこまでおっしゃるなら」と自分達の馬を融通する案を引っ込めた。
「しかし、そこまで馬が必要ならいっそmountain banditから馬を奪うと言う手もあるでしょうし、馬のmonstersをTamerする事に挑戦されてはどうです?」
「Edmond -san、最近この辺りでは滅多にmountain banditを見かけません。後、この辺りに馬のmonstersはあまりいませんよ」
代わりに口にした提案に対して、それまで黙っていた彼の専属護衛である元BClass adventurerのRodriguezが口を挟む。
彼の言う通り、Moksiの町周辺の治安は最近劇的に回復していた。……Vandalieuの命令を受けた、Braga達Black Goblinのninja部隊の活躍によって。そのためmountain banditは滅多に出ないconditionが続いている。
そして馬のmonstersをTamerしようにも、この辺りに馬のmonstersはあまり生息していなかった。いるのは、cowardだがLight AttributeのManaを持ち、外敵と遭遇すると光で目を眩ませてその隙に逃げ出そうとするShining Horseぐらいだ。
「そう言えば、確かに。しかし Vandalieu -san程のTamerなら、手懐ける事も可能なのでは?」
「いえ、難しいでしょう。Tamerは全てのmonstersに好かれるわけではありません。相性の良いmonstersをTamerし、そのmonstersと上手く付き合っているだけです。俺も例外ではありません」
そのShining Horseとは、以前串焼きの材料を狩りにDevil Nestsへ行った時に遭遇していたのだが……Vandalieuとdespair的な程に相性が悪かったのだ。
Tamerできそうな-sama子は全く無かった。
「なるほど……優秀なTamerは何種類ものmonstersをTamerする者ではなく、相性の良いmonstersと上手く付き合える者ですか。勉強になりました。
では、早速知り合いに声をかけてきましょう。少々お待ちください」
そしてEdmondは市で店を開いている知り合いの商人達へ話を持って行き、Vandalieuが提案した条件が破格だったためか、すぐに一頭の馬を見繕って来た。
「すぐintroductionできるのは老馬です。今の商売が終わったら、手放すつもりだったそうです」
案内された厩舎の馬房に繋がれている老いた馬は、静かにVandalieu達を凝視している。その-sama子に、彼とMaroll達は満足気に頷いた。
「目を逸らさず睨み返して来るとは、中々胆が据わっているようです。経験豊富な馬は流石ですね」
「「「チュチュウ」」」
「Vandalieu、maybe、怖がっているだけだと思うの。少し鼻息が荒いし」
老馬は、monstersであるMaroll達の脅威をInstinct的に悟り、horrorで動けないだけだった。……ちなみに、Fangは体が大きくなったため厩舎に入らなかったので、外で待っている。
Fangまで来ていたら老馬はpanicに陥っていたかもしれない。
そんな老馬にVandalieuはすっと手を伸ばした。
「あっ、危ないっ、手を噛まれるぞ!」
売主のmaleが声をあげるが、horrorで凍り付いている老馬はとてもVandalieuの手に噛みつく余裕は無かった。
荒い息づかいを繰り返し、blood走った目で自分のchinに添えられた白い手を見つめている。
「どうやら、この馬はShining Horseよりも俺と相性が良いようです。こんなに大人しいですし」
Vandalieuの手に撫でられるうちに、老馬の呼吸は落ち着き、眼差しも落ち着いてきた。それは肉食獣に喉笛を噛みつかれ、死のDestinyを悟り、生を諦めたかのようだった。
「あれ? こんな人懐っこい奴だったかな? まあ、買って貰えるなら気の合う人のところが良いだろうから、良い事だが。
ところで、本当に若い馬の相場と同じ売値で良いのかい? 見ての通り痩せているし、毛も抜けて見た目も悪い。しかも、馬力もEnduranceも若い馬より落ちるぞ」
「ええ、大丈夫です。彼なら俺達と上手くやって行けるでしょう。nameはありますか?」
「いや、特には聞いてないな。俺も何年か前に買った馬だったから」
そう言われたVandalieuは、毛並みが悪く少し禿げている老馬の鬣を見上げて頷いた。
「では、Maneと名付けましょう」
『Origin』の言葉で鬣を表す言葉を、Vandalieuは老馬の名とした。
faintedから目覚めたRodcorteは、Edgarの治療を再開しながら懊悩していた。
(Murakami達が消滅した今、私の指示に従いVandalieuを殺すReincarnatorが居なくなってしまった……いったいどうすればいいのか)
RodcorteはCircle of Reincarnationに関しては、複数のworldに跨るほど大きな力を持っている。他のworldにreincarnationさせたり、その際に大人のBodyを与えたり、特殊Ability……いわゆる『Cheat Ability』を与える事だってできる。
だが、生きているHumanには手出しが出来ない。当人の意思を無視して強制的に命令に従わせる事も、不可能だ。
Oracleの形で命令する事は出来るが……本当に命令するだけだ。「Vandalieuを殺せ」と命令しても、強制力が無いので、受け取った側にその気が無ければ無視されてしまう。
Murakami達は報酬として四度目のreincarnationを用意したためRodcorteの依頼に従っていたが……四度目のreincarnationに魅力を覚えないReincarnatorにとっては、何の意味も無い。
だから既に彼の依頼を断った、残りのReincarnator達をVandalieu抹殺の為に使う事も出来ない。
(Asagi・MinamiはVandalieuに対して警戒感はもっているが、抹殺するつもりはまだ無いらしい。奴の力を削ぐ事に繋がるならと思い放置したが……いや、今の彼等はMurakamiよりweak。戦わせる意味は無いか)
【Demon King Fragment】についての研究を行っているAsagi達は、未だ成果を出せていなかった。まあ、runawayした【Demon King Fragment】を新たにsealedするなど、研究以外での成果は上げているのだが、それでも今の実力はMurakamiよりも下だ。
数もMurakami達と同じく三人。Vandalieuと戦っても、返り討ちに遭うだけだろう。
(そうなると、新たなReincarnatorが『Origin』で死に、『Lambda』にreincarnationするのを待つしかないのだが……)
残念ながら、そのsignはない。
Rodcorteには寿命を表す蝋燭の炎を吹き消す事や、トラックによる事故を起こさせて生者を強制的に殺すような力は無い。事故かdiseaseか、それとも殺人によるものか、何でもいいが死ぬのを待つしかないのだ。
『Origin』では現在、『Bravers』と『The 8th Guidance』との戦いが終わり、表面上は平和なconditionが続いている。【Avalon】のRokudou Hijiriがdeath attributeの研究を続けながら陰謀を巡らせているようだが、そのimpactが現れるのはまだ先の事だろうとRodcorteは見ていた。
Reincarnator達が簡単に死なないように色々工夫したが、まさかそれが仇になるとは思わなかった。
『Oracleで殺し合うよう伝えても、恐らく誰も従うまい。自殺するように伝えても同じか……【Metamorph】にegoが残っていればしたがったかもしれんが……む、僅かだが快方に向かっている? いや、今の状況では吉報では無いな』
衰弱死でもしてもらった方が助かるのだが。そう思いながら、ざっとReincarnator達の状況を見るが、どれもすぐには死にそうにない。
この時Rodcorteは本当にざっと調べただけだったので、【Metamorph】や【Druid】等Vandalieu’s Divine Protectionを受けた者のconditionと経緯の詳細を調べようとはしなかった。
更にRodcorteの関心はReincarnatorにしかなかったため、Amemiya Hiroshiと冥のbrother and sisterに関しては調べようとも思わなかった。
この時もし調べていれば――とてつもなく対処に困っただろう。
彼が直接手を出せないのは、『Lambda』だけではなく『Origin』もだからだ。
(Rokudou Hijiriが目障りな研究を重ねているが、奴がdeath attributeを手に入れる事は出来まい。それは良いが、奴が動き出すまでまだ時間がある。
まさか、私がReincarnator同士の殺し合いとそれによって出る死者を待ち遠しく思うとは……)
ReincarnatorにはOracleと言う形でmessageを送る事が出来るが、『早く死になさい』と言って死ぬ者はいない。全能のVoice of Godを装えば上手く誘導できるのだろうが、Humanの心理に疎いRodcorteにはそんな器用な事は不可能だ。
逆に不信感を持たれ、本当にReincarnator達が死んだ時に面倒になりかねない。
だからと言って、指をくわえて見ているだけというのも耐えがたい。そこでRodcorteは二つの策を考えた。どちらも、今の彼が実行可能なものだ。
一つは、新たなReincarnatorを創り出す事。Cheat Abilityを新たに用意する時間は無いが、『Lambda』を含め『Earth』や『Origin』等彼がCircle of Reincarnationを司るworldで出た、Vandalieuを抹殺するための戦力になりそうな死者を再び『Lambda』へ送り込むのだ。
(しかし、Amemiya Hiroto達のように間に別のworldを挟んで経験を積ませるような余裕は無い。一度目の人生で既にある程度強かった者でなければならない。そう考えると、『Lambda』は厄介だ。戦闘力ばかり高い劣等worldめ)
『Earth』のようにStatusもskillも、magicも無いworldからのReincarnatorでは、Vandalieuにも、その配下にも勝てないだろう。
『Lambda』は、人並みの運動nerveがあるHumanなら誰もが努力すればRank3のmonsters……『Earth』のハイイログマ、いわゆるグリズリーを剣や槍など原始的なWeapon Equipmentで倒せるようになるworldだ。『Earth』のようなworldのGenius Martial Artistでも、『Lambda』では凡庸なadventurerと同じかそれ以下だ。
reincarnationさせる際にblessingsを与えてEnhanced (1)しても、Murakamiが一年以上かけてVandalieuに全く敵わなかった事を考えると、相当の時間をかけて修行しても無理だろう。
他のworld、magicが存在する『Origin』のようなworldや、Statusやskillが存在するworldも幾つかRodcorteがCircle of Reincarnationを司っているworldにはある。それらのworldでも強い者をReincarnatorとして送り込む事が出来れば、勝機があるかもしれない。
『しかし、Vandalieu達に対抗できる程の強者が、頻繁に死ぬようなworldがある筈もない』
そのworldでも最強の人物が、都合良く死ぬはずがない。これはその時が来るまで、ひたすら待つ必要があるが、何も出来ない無力感を紛らわす事は出来る。
『だが、気晴らしでは現在の状況は変わらない。やはり、もう一つの策……Alda's FactionのGodsが鍛えているHero達に、私もblessingsを与え更にEnhanced (1)するのが現実的か』
Gods 's Divine Protectionは、『Lambda』ではlevelが上がり難くなる時期、いわゆる『成長の壁』の高さの緩和や時期の短縮の効果がある。Rodcorte’s Divine Protectionもその例外ではない。
『Alda's FactionのGodsが育てるHero達に私's Divine Protectionを与える事で、Hero達は更にEnhanced (1)される。それで彼らに貸しを作り、近い将来『Lambda』に送り込んだReincarnatorに、blessingsを与えるようdemandする事も出来るだろう。
Cheat Abilityとは違い、blessingsは神の力を与えるだけ。私なら、何十人でもblessingsを与える事が出来る。……Murakamiの魂を喰われた時のようにならないために、一工夫必要だが』
一度に何十人ものHeroの魂がVandalieuに喰われるような最悪の事態は、考えたくも無いが……無いとは言えない。
blessingsを与え、もしもの時にDamageを引き受けるCloneの役割を果たすFamiliar SpiritかSpirit CloneをManaで創っておくべきだろう。しかし、その前に踏まなければならない手順がある。
『その前に、Hero達にblessingsを与えるために根回し、Hero達に私の存在を知ってもらう事が必要か』
blessingsを与えるのは神の権能だが、神の存在を知らないHumanにはblessingsを与えられない。RodcorteはBoundary Mountain Range内部……Vidal Magic EmpireではVandalieuの敵として知られているが、Human社会での知名度は無い。
blessingsを与えるには、Alda's FactionのGodsを通じて、Hero達に存在を知ってもらう必要があるのだ。
『Hajime Inuiの事で何か言われるかもしれないが、あれはAlda側の『God of Thunderclouds』の仕業でもある。それに、何か言われても『今は過ぎた事をとやかく言っている場合では無い』、『主義主張の違いを乗り越えて、協力し合うべきだ』と言っておけば、誤魔化せるだろう。
彼らもVandalieuに脅威を覚え、力を欲しているはずだ』
Moksiの町からAlcrem Duchyの領都、Alcremに向かう準備は、一つを除いて終わった。
商業guild、そしてAdventurer’s GuildとMage guildの登録にも特に問題は起きなかった。Hartner Duchyでも警戒したが、この町でもチンピラadventurerが絡んでくるようなeventは起きなかった。
ただAdventurer's School校については保留という事になったため、Adventurer’s Guildの等ClassはFClassだったが。Bellard曰く、少し大きな町のbranch長では、『未成年者はAdventurer's School校を出ないとEClass以上には昇Classできない』規則は曲げられないそうだ。
「-kunがEClass以上……もっと言えばBClass以上の実力を持っている事は分かっている。分かっているのだが……organizationである以上破れない規則と言うのがあるんだ。
それと、うちのAdventurer's School校では-kunはかなり手に余る。後は、AlcremのAdventurer’s Guild本部のMasterと相談してくれ」
「いえ、学校は行くつもりなので別に構いませんよ。それにAdventurer’s Guildで危険な依頼は受けられなくても、Devil NestsやDungeonに入る事は出来ますし」
心苦しそうにそう告げるBellardに、Vandalieuはそう返した。彼も自分がAdventurer's School校で学ぶ事が多いとは思っていない。
だが制度上の問題なら、Human社会で活動するために入学し、単位を取って短期間で卒業してしまえば良いと思っていた。
その間はHuman社会で布教活動をしたり、【Teleportation】でこっそりVidal Magic Empire内に戻ったり、Heinz達が戻って来ていないか動向を探ったりと、同時進行で-sama々な事が出来る。
それに、Adventurer's School校で将来有望な人材と巡り合える可能性もある。
だから時間の無駄とは思わない。
他にもVida通りのFood Stall店主達との打ち合わせと、Vandalieuが留守の間商品の仕入れをHungry Wolf警備の社員が行う事、孤児院を含めた警備態勢を整える等、-sama々である。……こっそりHungry Wolf警備の社屋や孤児院にDemon King Familiarを設置するのも忘れない。
後は……。
「町の近くのDevil NestsにDungeonが出現したかどうか、出現したのなら内部の調査ですか」
「あれだけの規模のmonstersの群れに襲われたら、まあDungeonが出現したと思うのが普通でしょうけど……」
Hajime Fitunが起こしたDungeonのrunaway。それで使われたDungeonの調査をMoksi EarlがKanakoやMelissa、Doug、そしてSimonとNataniaを指名して依頼したのだ。
「普通、こういう依頼はCClassか、もっと上のBClass adventurerに出すものでしょう? 何でDClassの私達を指名して依頼したのかしらね。まあ、答えは知っているけれど」
「ああ、俺も分かる。FClassのVandalieuや、adventurerじゃないDarcia -sanを指名する訳にはいかないから、知り合いの俺達に依頼しただけだよな」
「そう愚痴らずに。Earlの立場では、調査依頼を出すのは仕方のない事だと思いますよ。Kanako達の実力もDClass以上だと察しているでしょうし」
そうKanako達を宥めながら、Vandalieu達はTamer guildに登録し、翌日にはRank2のLesser Demon HorseになっていたManeにSamを引かせてDevil Nestsに向かうのだった。
○Skill explanation::Strengthened Attribute Values: Vidal Empire
Vidal Magic Empireが管理する領域内部に存在しているときや、国民と一緒に居る時、Emperorとしての政務や軍務についている時、Empireの利益や安全の為の何かをしている時にAbility ValuesがEnhanced (1)されるskill。
○Monster explanation::Lesser Demon Horse
馬がmonsters化したmonsters。Rankは2で、馬の中でもponyのような小型の馬や、老いている馬の場合はこのmonstersになる。
軍馬などbody part Abilityの高い馬は、殆どRank3のDemon Horseになり、ときおりそれ以外のraceの馬型のmonstersに変化する。