Isaac Moksi Earlの演説、勲章の授与等が終わり、町は何日目かのお祭り騒ぎとなった。
Dark Elf、そしてDhampirへの勲章授与。更に、Vida's FactionだけでなくAlda's FactionのGodsも祭られている共同templeのPriest達全員の連名で、『Patron Saint of Transforming Equipment』認定。
これらの出来事は町だけではなく、Orbaum Elective Kingdom全体の歴史に刻まれる出来事となるだろう。
しかし、Open Plazaに集まっている人々でそこまで考えが及んでいるものはほんの一握りだ。
「もしかしたら……私は、新たな歴史の誕生に立ち会ったのかもしれない」
補修の跡が残る安物の竪琴を抱えたBardが、立ち尽くしてそう呟いた。
「これは……こんなのは、今まで無かったわ。これを、何と呼べばいいの?」
信じられないといった-sama子で、酒場でDancerをしているfemaleが、Open Plazaに急いで設置された仮設のStageを見上げていた。
彼女達も、ほんの一握りではない方の人物だ。彼女達が見ているのは、Darcia達によって行われている讃美歌の合唱である。
「「「「~♪」」」」
「あ、わ、らっ、ラァ~♪」
Transformした姿で、DarciaとZadirisとKanako、そしてBasdiaとMelissaが歌いながら踊っている。
歌詞は人々の勇気と愛を称え、『Nameless Heroes』の犠牲を悼みながらも、Smiling Faceで見送り彼らの為にもSmiling Faceで生きて行こうと言うもの。
伴奏は、普段歓楽街の店で演奏しているBardや専属の演奏家の寄せ集め。
それらはどれも新しい物ではない。似たような歌詞の歌は幾らでもある。楽器もリュートや竪琴等の弦楽器に、太鼓や笛、やはり何処にでもあるような物ばかりだ。奏でる腕の方も、せいぜい二流。
歌っている者の技量も、一流と言えるのは一人だけで、他は並……いや、素人同然の者が一人いる。
だからSingingとdance、そして演奏の総合的な技術は高くない。
しかし Stage上の五人は、今話題の『Holy Mother of Victory』に『Owner of the Magical Staff』、『Transforming Axewoman』がいる。他の二人も、名は知られていないがTransformしている。
Dark ElfやElf、そしてGhoulのHero、しかも美女とBishoujoが歌い踊っている。多くの観客が集まっている理由は……少なくとも、きっかけはそれだ。
だが、集まった人々がStageの前から動かず、熱狂して声援を上げている理由は違う。
「軽やかなmusicに、明るい歌詞。danceは観客を魅せつつも、色気で男を引きこむ場末の酒場のdanceとは異なる。
技術的にimmatureなElfを、あのDark ElfのShoujoがそれとなくfollowしているのは分かる。だが、この一体感は、どこから来ているのだ!?」
「これは……観客! 観客に合いの手を入れさせることで、Stageの一部にしているというの!?」
「そんな、観客がStageに、無償で協力するなんて事がありえるのか! これは……新しいmusicの形だ!」
Darcia達、accurateにはKanakoの発案によって、集まった観客には合いの手を入れて貰っている。それも手拍子や足踏みなど簡単なものを、紛れ込んだサクラが実行して見せる事で、何も知らない観客が自然に参加できるよう仕組んでいるのだ。
Moksiの町に、新たなmusicの形……Idolとlive performance Concertが発表され、BardやDancer以外にも多くの者達にimpactを与えた。
Nobleのお抱え演奏家や、伝統的なmusicに通じている者達の中には「破廉恥」、「御遊びのような曲」だと顔を顰めて目を逸らし、所詮名を売った有Adeptがしているから一時的に注目を集めているだけだと関心を向けなかった者達もいた。
しかし、これは新しいmusicだと関心を持った者も確かに存在したのだ。certainly、music的な理由以外にも衝撃を受け感動を覚えた者達もいる。
「次もこの讃美歌をお願いしましょう!」
「Paula Priest、困りますな。共同templeは全ての宗派に開かれた祈りの場。それを、幾ら町のSaviorとは言えVida's Factionだけで恣意的に運営するのは」
「まあ、Aruman Priest。恣意的に運営だなんて、そんなつもりはありません。『皆-samaも遠慮無く加わってください、歓迎いたします』と、Darcia -samaもおっしゃっていたではありませんか」
「む、むぅっ!? そ、それは確かに言われたが……!」
複数のGodsの像が建立され、人々に分け隔てなく門を開くMoksiの町の共同templeに務めるVidaのPaula Priestと、AldaのAruman Priestもそうだ。
ただの説法、ただの讃美歌ではなく、聴衆も演奏に参加する事で得られる一体感は侮れない。二人とも同じ事を考えているが、しかし現実には致命的な差があった。
「だが、あの讃美歌を歌い、踊れる人材が……!」
残念な事に、この町のAlda believerの中にはAruman Priestを含めてもIdol songを歌い、振り付けが踊れる人材が居なかったのである。
いや、一応Aruman Priestも讃美歌は歌えるし、danceも練習すれば多少は踊れるようになるはずだ。だが、Aruman Priestは髭を蓄え、更にchinと腹のラインが緩んできたお年頃の四十代のmale。
軽やかにステップを踏み、chinと腹の肉を揺らす中年maleが野太い声で可愛らしい歌詞を歌う-sama子を、しかも技巧的にはそれ程高くない物を、神への賛美とすることが……いや、Humanとして許されるだろうか?
Arumanの価値観では、断じて否である。
だからと言って、Clericやbelieverの若いfemaleの希望者を募るのも、若干以上に抵抗があった。そもそも、Darcia達からはAlda believerとの融和を良しとしないと、はっきり告げられている。
そうである以上この讃美歌についても教示を受けられないだろうから、Aruman達が同じ事をするには彼女達のStageを見て覚え、真似するしかない。
受けているからと、すぐさま他宗派の猿真似をする。それは、この町のAlda信仰を支える者としてあまりに軽挙ではないのか?
そんな考えが、Alda派のGodsのPriestであるAruman達を迷わせていた。
「くっ、Holy Motherにおんぶに抱っこで、これから先やって行けると良いですな!」
そのため、押し黙ってしまったArumanに代わって、他のPriestが口を挟んだが、下らない憎まれ口を叩くのがせいぜいだった。
「ご心配なく。この讃美歌の事を知ったのは私も今ですが、これからDarcia -samaに、そしてKanako -samaに教わり、皆-samaがこの町から離れた後も続けられる体制を整えます」
しかし、Paula Priestも人々の間でVida信仰への関心が高まっているのが、自分達では無くDarcia達のimpactが大きい事は理解していた。それ故に、彼女達に学ぼうと言う熱意があった。
彼女の場合はArumanと違って同じ宗派なので、抵抗感は覚えないらしい。
「Priestである私が先頭に立って――」
「な、何だと!?」
「いや、流石にそれは無理があるかと……」
「Paula Priest、『God of Battleflags』Xerxも『負けると分かっている戦はするな、勝てる戦をするために全力を尽くせ』と言っております」
だが、流石に彼女自身がStageに立つ事は止められた。Arumanだけではなく、同じVida's Factionの神のPriestにまで。
Paula Priest。自分ではまだまだ行けると思っていたが、周囲の評価はそうでは無かった事を知る三十の冬であった。
(確かに、今のままだとちょっとキツイですねー。衣装と歌詞と振り付けを工夫して、若干shape upすればいけると思いますけど)
そうしたやり取りをStage上から見て、Kanakoは思った。音は聞こえないが、lipsの動きを見ればだいたい何を言っているのかは分かる。
それに、Open Plazaに仮設で作ったStageなので集まった観客は、Kanakoの感覚だとそれほど多くない。それでフリに参加せず、他の観客から若干離れた所に居るPriest達はChaos Elfとなって鋭くなった視覚には目立って見えた。
(それはともかく、Vida's New Racesだけでは無く、Human社会でもIdolが受け入れられると分かったのは収穫でした。全ての人にと言う訳ではないようですが……それは予想通りです。讃美歌と言う形で講演を行う以上、取り締まりや弾圧はし難いでしょうから、大丈夫でしょう)
『Earth』や『Origin』では、Idolの黎明期には破廉恥だとか何だとか言われ、思うような活動が出来なかったと聞く。この『Lambda』worldでもそれは本来なら変わらないはずだ。未知なものに人は好奇心を刺激されると同時に、忌避感も覚えるものだから。
だが今のKanako達は、主にDarciaのお蔭でHuman社会でもVidaのbelieverとして認知され、今日このStageでIdol songはVidaの讃美歌になった。
これを正面から弾圧しようとすると、Vidaへの信仰を弾圧する事になってしまう。伝統的なmusic以外認めないと言う頭の固い人物が居たとしても、Vida信仰を認めるOrbaum Elective Kingdomでそこまで思い切るのは難しいだろう。
(temple以外での講演とか、あたし達以外のIdolの活動とかになると、また別の問題が出て来るでしょうけど、一先ずはこれでいいでしょう。
Vida信仰が禁止されている国や、禁止されていないけれど力のweak地域等では……まあ、今そこまであたしが考えなくて良いでしょう)
TalosheimがあるBoundary Mountain Range内部とDemon continentだけでも、十分広い。更にAmid EmpireやHartner Duchyでの展開を考えるのは、未来を見据え過ぎだ。
(とりあえず、今はなし崩し的にStageへ上げてしまったMelissaの機嫌をどう取るか考えないと)
regular memberのZandiaや、lesson中のLegionが諸事情でStageに上がれなかったため、KanakoはMelissaに頼み込んでStageに上がってもらっていた。
今は不慣れな歌やdanceで何か考えるどころではないようだが……。
後は、彼等に宥めるのを手伝ってもらおうとKanakoは考えていた。
「オ~っ! オ~っ! オ~!」
「おー、おー、おー」
「……本当にボスって、何で声は平坦なのかしらね」
「お前-san、リズムがずれとるぞ! ほれ、儂に合わせるんじゃ! オォ~!」
腕を振り上げ声援を送る観客に混じったサクラ……なのがバレバレだが、Doug、Vandalieu、そしてMiles。
しかし、意外と普通の観客に溶け込めているのか、近くに居たMage guildのGuild Masterが振りを乱しているMilesに注意を飛ばしている。
ちなみに、舞台の照明と演出はZadirisがあらかじめ唱えた【Light Princess Magic】と、VandalieuのLight Attributeの【Divine Spirit Magic】で行われている。
『光だ! ウォレだ! 俺が光だぁぁ!』
『Lunatic Dog of the Eclipse Emperor』Bellquertが、Spirit FormのままVandalieuと、自分と同じUndeadにしか聞こえない声で叫んでいる。自分自身と光を混同して狂乱している彼だが、照明を操作する腕は確かだ。
「その、すまないのだが……」
「へい、何ですかい、Knightの旦那。今は見ての通り取り込んでいまして」
Fang達と警備員をしているSimonに、本当にすまなそうな顔つきのKnightが話しかけてきた。
「握手とか、signならもうちょっと待ってもらって良いかい? 待ってもらえれば-chanと順番は回って来るからさ」
NataniaもKnightにそう言って頷きかける。このworldにも、有Adeptに握手やsignをもらう文化があった。やはり十万年以上前にanother worldから来たChampion由来の文化である。
「いや、そうではなくて、-kun達の師Artisanに伝えて欲しい。Adventurer’s Guild二階の会議室に来て欲しいと。
も、certainly讃美歌が終わってからで結構だ!」
用件を告げたKnightは、途中で呼ばれている事に気がついて自分に視線を向けて来たVandalieuに向かって、慌ててそう付け足した。
彼は、Darciaに対して強引に絡んだ男が、Vandalieuに睨まれただけでhorrorのあまり逃げ出したと言う事実に基づいた噂を聞いていたらしい。
講演が終わった後、Stageの片づけや、BodyとMental両方のFatigueで真っ白に燃え尽きたMelissaの介抱を皆に任せて、VandalieuはKnightに言われた通りAdventurer’s Guildの二階会議室に来ていた。
そこで彼を待っていたのは、この町の主だった地位にある者達だった。流石にMoksi Earl本人は来ていないが、代理としてKnight Delegation Leaderが、そして各guildのMasterが集まっていた。
「やれやれ、年甲斐も無くはしゃぎ過ぎたか」
accurateには、Vandalieuと同じくConcertの最前列でDarcia達に声援を送っていたMage guildのMaster、Rosselは、彼と一緒に入って来たのだが。
「全くです。夢中になる気持ちも分かりますが、自制してください」
「うむ、申し訳ない。つい、我を失ってしま――待て、儂は何もDarcia -dono達の美貌やBasdia -donoのBody美、Zadiris -donoの可憐さに夢中になっていた訳では無いぞ!」
無言のままじっと見上げているVandalieuの視線に気がついて、慌てて言い訳を口にするRossel。単に黙って前を見ていただけだったVandalieuは、とりあえず聞き返す事にした。
「つまり、KanakoかMelissaの方が好みだと?」
「確かに興味はあるが、違う! 儂が見ていたのは貴-donoが作ったと言うTransformation Equipmentだ!」
Rosselが観客の最前列に居たのは、Darcia達を少しでも近くで見る為では無く、彼女達が着ているTransformation Equipmentの方に関心があったかららしい。
originally RosselはVandalieuがSimonやNataniaに、義肢を与えているのを知り、「Mage guildに登録していない者が、magic itemの義肢を作り渡している」と考え、圧力をかけながら彼らの動向を探っていた。
彼がいったいどうやってmagic itemの義肢を作っているのか、その技法に興味があったからだ。
実際には、Simon達の義肢は最新型以外magic itemでは無い、ただの金属製の義肢でしかなかったのだが。そしてMage guildからの圧力は、Vandalieu達にとって全く障害にならなかったので気にもされていなかった。
しかし正門の戦いでTransformation EquipmentがActivateする-sama子や、SimonやNataniaが義肢を変形させて戦う-sama子を見てIntuition的に理解した。
彼女達が持っているのは、自分の知っているmagic itemとは一線を画する物……最低でもlegend Class magic itemと呼ばれる物だと。
Rosselは【Intuition】skillを持っていなかったが、長年magicとAlchemyを生業にしてきた経験がそう答えを出したのだ。
「儂はあの戦いの後、賊の検死や所持品の分析を行う傍ら、Mage guildのMage達の技術で、Transformation Equipmentを再現できないか検討してみたが、まるで話にならなかった。
Manaを流して色や形を変えるだけなら、儂でも作れる。しかし、それではただの変装用のmagic itemでしかない。
あのTransformation Equipmentはmagicを唱える際の補助だけではなく、Transform後のbody part Abilityの向上、更にはDefense Equipmentとしても破格の性能を発揮しているようだった。しかも、見たところあれは布やmonstersの素材ではなく金属を主に使っている。
儂如きでは、残りの人生を費やすどころか、何百年かけても同じ物を創る事は不可能だ」
「……それを何度か見ただけで見抜けるなら、『儂如き』ではないと思いますよ」
長々と頬を上気させて語るRosselに、Vandalieuはそう答えた。実際、Transformation Equipmentは見た目と演出が派手なので、目を惑わされ易い。ここまで冷静に分析できたのは、Moksiの町でも彼ぐらいだろう。
しかし RosselはVandalieuの言葉を、そのままの形では受け取らなかったようだ。
「謙遜するだけでは無く、儂を立てるとは……organizationの長と言う立場を免罪符に、arroganceな態度を取っていたのが恥ずかしい。
圧力をかけていた事、真摯にお詫び申し上げる。だが、どうかMage guildに入会してはいただけないだろうか」
Vandalieu達にとっては無意味だったとはいえ、圧力をかけた事実は事実。そう詫びながらも、勧誘を行うRossel。
「お、御待ちを! 謝罪すると言うのなら私の方が先です!」
しかし VandalieuがRosselに何か答える前に、Chobi mustacheを生やした男が口を挟んだ。
「元Sub GuildmasterのYosefが失礼を働き、上司として誠に申し訳なく思っております! 改めて審査したところVandalieu -donoのFood Stall経営には何の問題も無いどころか、事業として優れた物である事が明らかになりましたので、どうか商業guildの本登録へ手続きを勧めたいので、よろしくお願いしたします!」
Chobi mustacheの男、商業guildのGuild Masterはdesperateた-sama子でそう言うと、土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
「……あの、俺が呼ばれたのは、もしかして?」
自分に向かって下げられた頭を見ながら、この場で最も立場が上のKnight Delegation Leaderに視線を向ける。
「うむ、Rossel -dono達に先んじられたが……Vandalieu Zakkart -donoに、頼み込みたい事がある者が集まって、お願いをする会と言ったところだな。
私はEarl -samaの代理なのだが……後日貴-donoをmansionに呼び出すのもどうかと思うし、彼らの前でEarl -samaが頭を下げるのも具合が悪いので、理解してくれると助かる」
「それは構いませんが……領主-samaが俺に頭を下げなければならない事態とは、何か深刻な事が?」
「いや、desperateた事態ではないし、深刻かと聞かれても微妙なのだが……まあ、desperateている者からいこう」
「お願いします! 登録してください! でないと、物理的にはともかく、社会的に私の首が飛ぶのです!」
desperateている者、つまりChobi mustacheの商業Guild Masterが重ねて頼み込んでくる。今現在、この中で最も追い詰められた立場に居るのは、ageが倍以上離れた大人に囲まれたVandalieuではなく、彼だった。
彼が追い詰められているのは、Sub GuildmasterのYosefの件や、Gobu-gobuが貧しい村を中心に広まりつつある件だけでは無い。VandalieuがSlumのFood Stallの店主達を誘って行っている、franchise契約の件だ。
それをAlcrem Duchy商業guild本部に知られたのが、致命傷だった。
本部の者達はMoksiの町で起きている事について、「guild側に非がある事件で不利益を被った仮会員が、商業guildとは異なる新たなorganizationを作ろうとしている」と解釈したらしい。
そして現Guild Masterの管理Abilityを「大いに疑わしい」と判断したようだ。そのため、彼の社会的な首が危険なconditionに陥っているのである。
「なるほど、言いたい事は分かりました。でも、Vida通りのFood Stallに関しては止めませんよ?」
「certainlyです! 問題は貴方と我々商業guildの間に溝があるとguild本部に思われている事ですから!」
どうやら、商業guildへ本登録しさえすれば問題無いらしい。accurateには、Vandalieu側には問題は起きていないが、誤解した商業guildの本部が事態を何とかしようと動き出すと、色々と面倒な事になるかもしれない。
originally商業guildへの本登録はYosefの件が片付いた頃から、度々促されていた。それをしなかったのは、まだ姿を現さなかったReincarnator達を待ち伏せるために、町に滞在する口実を維持するためだった。
Hajime Fitun達Reincarnatorを倒した今となっては、拒否する理由は無い。……一応、まだ一人【Super Sense】のKaoru Gotoudaが姿を現していないが、未だに姿を現していないという事はMurakami達と袂を別ったか、逃げたのだろう。どちらにしても、この町に姿を現す可能性は低い。待ち構えるだけ無駄だろう。
「では……Yosefの件は水に流すという事で、これからは誠実な仕事に期待します」
しかし、Reincarnatorについて説明する訳にはいかないので、Yosefの事はどうでも良かったとは言えない。なので、態度だけは渋々と言う-sama子で和解に応じる事にした。
「ありがたい! これで左遷されずに済みます。では、後日商業guildで手続きを行いますので……」
商業guildのMasterは安堵の溜め息をつくと、Vandalieuの手を取って何度も握手をし、それから「では私はこれで」と言ってroomから退出していった。
「儂の用件は、先程と同じなのだが……どうだろうか?」
商業guildのGuild Masterが退室すると、Rosselが再び訊ねてきた。
「Mage guildの入会には、現組合員のpupilsである事か、推薦状が必要なのでは?」
「推薦状は儂が書こう。
当然だが、入会したのだからTransformation Equipmentの作り方を教えろと、無茶な事は言わん。Mage guildは職人guildと違って、技巧を共有して高め合うためのorganizationではないからな。Mageやalchemistに秘伝はつきものだ」
VandalieuはMage guildをmagicの専門学校、若しくは研究機関のような物だと認識していたが、実際にはそれ以上に会員間の自由度が高いらしい。
-chanと知識の共有は行うが、秘術や秘伝と言った事を教えるのは自分のpupilsだけ。故に、他人の秘術を学びたければ見てStealか、独自に工夫するか。それが出来ないなら取引を申し出るか、礼を尽くしてpupils入りするかになる。
「それに、あのTransformation Equipmentは作り方を教えられても、簡単に真似できるとは思えん。Dark ElfのElderの秘伝か、秘術が関わっているのだろう?」
Rosselは、VandalieuがHajime Fitunとの戦いで目撃者と後に行う報告を誤魔化す為にでっち上げた、「Dark ElfのElderの秘伝」が、Transformation Equipmentにも当てはまると誤解しているようだった。
実際、あれだけのmagic itemを十年と少々しか生きていない少年が開発したと言うより、千年の寿命を持つDark ElfのElderが教えた技術だと考えた方が自然である。
(それに、本当に創り方を教えたとしても……無理でしょうしね)
Transformation Equipmentは液体金属のHell CopperやDeath Ironを、Vandalieuが【Golem Creation】skillで金属繊維にして、形状Memoryの性質を付与する等-sama々な工程を踏んで製作している。主な材料のHell CopperやDeath Ironが自然界に存在しない以上、創り方を聞いてもどうしようもないのだ。
「分かりました。しかし、登録する際の手続きに関して質問があるのですが」
「guild CardとStatusについてだな。商業guildのCardを基にguild Cardを作れば、誰にもStatusを見られる事は無い。安心してくれ」
Mage guildと職人guildは、他のguildよりも登録するまでが難しい。会員へのpupils入り等をしている間に、身元は師Artisanに当たる人物や推薦人がしっかりと見るのが通例となっている。
「分かりました。では――」
「後は、俺達になるんだが、まあ用件は三人とも同じでな」
「……私は、adventurer登録もしてもらいたいんだが。Statusの件は融通するから」
それまで黙っていたTamer guildのMaster Bachem、そしてAdventurer’s GuildのMasterであるBellardの言葉にVandalieuはいささか驚いた。
Statusを見られる事を気にしているのが、ばれていたからだ。
「いや、誰でも気がつくさ。ここまでAdventurer’s Guildに登録するのを避けるという事は、そう言う事だろうなと。Even now、Statusを見られたくないからAdventurer’s Guildに登録しないって、奴らは何人かいたらしいからな。
……滅多にある事じゃないから、気がつくまで時間がかかったが」
目を瞬かせたVandalieuに、Bellardはそう説明した。そして、こう続けた。
「Dhampirである事は明かしているから、maybe厄介なUnique skillか何かがあって、それが問題なのだろう。……っと、言うか、そうだと決めつけて思い込む事にした。これ以上は考えないし、聞かれても知らぬ存ぜぬだ」
「俺としては助かりますが、organizationのbranchの長としてそれで良いんですか?」
「本来なら良くない! 良くないが……俺達が知ったところでどうにか出来る程度の謎とは思えないからな。藪を突かないのも、処世術だよ」
Vandalieu達が抱えている謎については、この場に居ないIsaac Moksi Earlも含めてある程度察しがついた者達全員で「これ以上追及しない」という事で同意していた。
どう想定しても、guildのMasterや一介のEarlの手には余るからだ。
certainly、それらを調べて本部なりDukeなりに伝えるのが、本来の正しい姿なのだろうが……やはり、どう考えても良い事にはなりそうにない。
世の中には知ってはならない事もあるのだと、物分かり良く納得したBachemは早速本題に入った。
「まあ、それで本題なんだが、Alcrem Duchyの都、Alcremに一度足を運んでTamer guild本部のMasterに会ってもらいたい。これは俺も何だが……何でも、本部の次期Guild Masterに俺を、そしてお前-sanをguildの要職に推挙したいらしい」
「……おめでたい話ですが、お断りしたいです。そもそも、何故一会員でしかない俺に突然guildの要職を?」
「TamerしているmonstersのRankが高いからだな。新種を発見した実績もあるから、目を付けられたんだろう。
どうも最近のTamer guildは、強いmonstersや珍しいmonstersをTamerしているTamerが偉いという、妙な主義がまかり通っていてな。たしかに、Tamerしているmonstersの強さは重要だ。だが、それが全てじゃない。最近の上層部は、それを見失っているんだ」
Bachemも最近のTamer guildの価値観には、文句があるらしい。拳を握って唸っている。
そのBachemに代わって、Knight Delegation Leaderが微妙な顔つきで声を出した。
「後、これはEarl -samaからだが……Alcrem Duke閣下から、非公式にお茶会の誘いが来ている。詳しい用件は伝えられていないが」
「Julianaの件ですか」
「うむ。そう、過激な話にはならないと思うのだが……無視する事は我々の立場では難しい」
そう言ってDuke 家の家紋ではないが、特徴的な紋が描かれた招待状を差し出された。恐らく、これをDuke 家の守衛にでも見せれば、中に通してもらえるのだろう。
「Alcrem Dukeは、自身がAlda Reconciliation Factionである事を公言しており、DuchyでのVida's New Racesの扱いも近年大幅に改めている。Dhampirである貴-donoにも、無体なdemandはしないと思われるのだが……」
「分かりました」
気を使って色々説明してくれているようだが、聞けば聞くほど逆に不安になって来るKnight Delegation Leaderの話を遮って、Vandalieuは招待状を受け取った。
originally、目的があっての滞在だったのでMoksiの町からは折を見て離れるつもりだった。ただ当初の予定よりもずっと町の人々と深く関わっていたので、簡単に離れる訳に行かなかっただけだ。
それに、離れると言っても永遠ではない。購入した家と、その地下に作ったDungeonはそのままにしておくので、いつでも【Teleportation】で来られる。
franchiseのFood Stallに、Hungry Wolf警備と、孤児院、そして盛り返してきたVida信仰。これらを維持しなければならない。孤児院は単にTalosheimに移住するだけでも大丈夫だろうが。
だからAlcrem Duchyの都、Alcremに向かうのは丁度良かった。
本来なら必要な日程の間Talosheimに戻ってparadeや書類仕事を熟し、Alcremに【Teleportation】で移動。Alcrem DukeにJulianaの件をこれ以上気にしないよう話をつけ、Tamer guildに謹んでお断りを申し上げる。
それだけだ。
しかし、家に戻ったVandalieuにJulianaから驚きの知らせがもたらされた。
「Vandalieu -sama、Oracleの意味が分かりました! 『from here北と南に等しい位置にある、なんだか気持ち悪い色のchin(あぎと)に、偉大な女Kami-samaがsealedされている』らしいです!」
「なるほど。所々不明瞭なので、それは後で調べるとして……態々Oracleでそれを伝えるという事は、そのsealedを解けという事なのでしょうね。それで、from here北と南に等しい位置とは?」
「分かりません!」
Alcremに向かうよりもずっと重要な案件が判明した。