Giantな、それを生物と認識するのが困難なほどGiantな異形の足元に、二人の人shadowがいた。
『行ってきます』
一つは辛うじて人型ではあるが、それと同じく異形の存在。
『あいあい』
そして行ってらっしゃいと手を振る、黒いが赤ん坊と幼児の間位の大きさの人shadowだ。
見送られた異形は、そのまま真っ直ぐGiantな異形に近づいて行き……そのまま音も無く溶けるように一体化する。
だが、すぐに、Giantな異形から別の異形が生えて分離した。
『Banda、おおBanda、こBanda』
『ただいま、Me-kun。それは大きい方の俺と、俺と言う意味でしょうか?
それで、説明は要りますか、俺よ?』
…………。
『要らないようですね。どちらも俺自身なのですから、こうして一瞬でも再接続が叶った以上、MemoryとAbilityのupgradeは問題なく行われましたし』
…………。
『でも、もう一つ俺を作って彼に与える事は流石に無理ですか。まあ、仕方ありませんね』
『にーにー』
…………。
『……では、そのようにしましょう。丁度、使いどころのない異物もあるようですし。使いこなせるかは、彼次第ですが』
最初その夢を見た時は、最近見るようになった怖い夢だとHiroshiは思った。
あの事件があった時から見るようになった、突然悪者に捕まって、苛められ、最後は殺される悪夢。
実際にはHiroshi達は誰も殺されなかった。途中で意識を失って、気がついたらhospitalのベッドの上で、事件は解決していた。
両親には平気だと答えたし、学校の友達には「全然怖くなかった」と強がって見せた。しかし、本当は怖くて仕方なかった。なのに、嘘をついた罰のように夢であの事件が、現実よりも残酷に繰り返される。
tonightも、暗い闇の中、気がつけば捕まって身動きが取れないconditionから夢が始まるのだろうとHiroshiは思った。
『……あれ? これって、海か?』
だが、Hiroshiを暗闇が包んでいたのは一瞬だけだった。気がつけば、彼は不思議なspaceに居た。
明るい海の底を思わせる場所で、淡く、そして色鮮やかに輝くCoralやSea Anemoneのような物がcountlessにあり、その間を海藻のような物が踊るように波打っている。
Hiroshiはそこで溺れる事もなく泳いでいた。
『力は欲しくありませんか?』
そして唐突に話しかけられた。四つの目と耳まで裂けた口の、黒いローブの怪人に。
monsterだ。そう思ったが、Hiroshiは不思議とそのmonsterにhorrorを覚えなかった。Imoutoの冥の落書きにこのmonsterが何度も描かれていた事を思い出したからか、それとも、守られた事があった事を薄っすらと覚えていたからか、夢に過ぎないと高を括っていたのか。彼自身にもどれが正解なのか分からない。
『欲しいよ、欲しいけど……俺じゃ、父-sanやkaa-sanみたいな特別な力は無理なんだ』
両親のような、特別な力が欲しい。特別になりたい。それがHiroshiの願いだった。彼は同い年のchild達に比べれば、数段優秀だ。勉強やスポーツだけではなく、magicも両親の素質を良く受け継いでいる。
だが、Cheat Abilityだけは無い。両親がReincarnatorで、Cheat AbilityはRodcorteから与えられた力である事を知っているReincarnator達はそれを不思議には思わず、当然だと受け入れる。
しかし Reincarnatorについて真実を知っているのは、Reincarnator自身だけだ。大人達も、学校のchild達も、そしてHiroshi自身も知らされていない。
『そうですか。欲しいのなら、俺がその力の源をあげましょう。それに、今なら特殊なmagicの使い方も教えます』
「本当!?」
『ええ、本当です。ではまず、これを食べなさい』
monsterはそう言うと、Hiroshiに向かって新鮮な臓器っぽい物を差し出した。その途端、Hiroshiの顔が青ざめる。
『な、何だよそれぇ? ぬるぬるしてそうだし、ビクビク震えてるし、絶対ヤバイ物だろっ!』
『大丈夫、大丈夫、着色料や化学薬品は全く使っていない、自然由来の……物だから』
『物って何だよ!? そんな怪しい物、俺絶対食べないからな!』
『むー、とても健全な感性を持っていますね。……こうなったら仕方ない』
monsterはそう言って一度内臓を引っ込めると、代わりに懐から鍋を取り出した。そしてHiroshiの見ている前で、何とCookingを始めた。
海藻っぽい物で炎を起こし、近くに生えていたSea Anemoneっぽい物を一本引き抜いてそのまま搾り、紅い汁で鍋を満たす。そして先程の臓器っぽい物を適度な大きさに切り分け、鍋に投入。
そしてグツグツ煮込む。
『え、ええー……』
困惑するHiroshiの前で、妙に手慣れた-sama子でCookingを続けるmonster。
『考えてみれば、初対面の相手から手渡しで受け取った生物をそのまま食べるのは、教育上良くありませんでしたね』
『ええっと……Banda、だっけ? monsterのworldで生の肉やホルモンを手渡しするのって、普通なのか?』
『よくわかりましたね、俺のname』
『え? うん、冥があんたの絵を描いて、Bandaだって言っていたから、そうだと思ったんだ』
『そうですか。さて、それはそうと完成です』
monster……Bandaはやはり何処からか取り出した皿に、鍋の中身を盛りつける。異-samaな食材を使った割に見た目は、やや赤みが強いビーフシチューのように見えた。
しかも、夢なのに何故か匂いまでしてくる。
『う、美味そう!?』
信じられないと驚くHiroshiに、Bandaはspoonを差し出して改めて誘った。
『特別な力が欲しいのなら、これを食べなさい。さらに望むのなら、特殊なmagicの使い方も教えましょう。このworldでは誰も存在に気がついていない、No-Attribute Magicを』
目覚まし時計が鳴る数分前に、Hiroshiは目覚めた。
「……何だ、ただの夢か」
『言い忘れました』
「っ!?」
不意に聞こえた声に驚いて顔を枕元に向けると、そこにBandaはいた。四つの目で彼を見つめ、耳まで裂けた口からfangsを覗かせて。
『夢で見た事は全て秘密です。俺が教えるmagicも、人前で使ってはいけません。ご両親にも。分かりましたね?』
HiroshiがnodとBandaはすっと音も無く消えようとした。
「ま、待てっ。お前って、『The 8th Guidance』なのか? 俺達が誘拐された時、助けてくれたのか!?」
しかし Hiroshiに呼び止められたBandaは立ち止まり、ぐるりと首を傾げてから答えた。
『残念ですが、それを今話す事は出来ません』
「な、何で!?」
『長い話になるので、最後まで話すと学校に遅刻するからです』
Hiroshiにとって残念な事に、今日は平日だった。
【Braver】のAmemiya Hirotoと【Angel】のNarumi、二人のchildが何者かによって拉致され、そして救出されてから一カ月以上の時が過ぎていた。
匿名の通報によって駆け付けた警察が見たのは、攫われたchild達とbody Guard、babysitterの無事な姿。そして一人を除き、惨たらしく殺された犯人達の死体。
そして、その犯人達のbloodで描かれた『The 8th Guidance』のmarkだった。
捜査機関はすぐさま報道管制を敷き、両親であるAmemiya coupleを筆頭に『Bravers』が招集され、各国の捜査機関が情報提供と引き換えに捜査の協力を申し出た。
「……なのに、協力を申し出た捜査機関が調べるのは『The 8th Guidance』の生き残りばかり。実行犯を操ってHiroshiと冥を攫った黒幕は野放しのままだわ」
しかし、その捜査力は誘拐犯ではなく、『The 8th Guidance』の方にばかり向けられていた。
確かに、犯人とは言えHumanなのだから、それをslaughterした容疑者を追う事自体は間違っていないのだが……その姿勢はあからさまに過ぎた。
「確かに。あの犯人達を、ただの営利誘拐目的の外国人犯罪groupで片付けようとするのはやり過ぎだよな。退役軍人やmercenary経験者が全員分の銃と移動手段のトラックまで用意して、外国で営利目的の誘拐なんてする訳がない」
【Titan】のIwao一樹が、そう言ってNarumiに同意する。
「でもまあ、安心してくれ。奴らが『The 8th Guidance』を追うのは勝手だが、俺達の邪魔はさせない。ウーって言う運転手役から情報を引き出して、-chanと調べているからさ」
「それにNarumi、『The 8th Guidance』について捜査するのも間違ってはいない。彼女達の生き残りが本当に存在するのか、そして何の意図があって冥達を助けたのか……はっきりさせないといけない」
Iwaoの言葉に、Amemiya Hirotoがそう続ける。彼の言う通り、形としては『The 8th Guidance』のmarkを残した何者かは冥達を助けている。しかし、その意図が不明過ぎた。
単純に助けてくれてありがとうと感謝していいのか、分からない。PlutoがNarumiを殺そうとし、体内に小さな命が宿っている事に気がついて止めた。冥がその時の小さな命だと言う事は、一般には公開されていない情報だ。
知っているのは各国の捜査機関に所属する者達の中でも、情報にaccessする事が出来る限られた者達。そしてAmemiya coupleとあの時tacticsに参加していた『Bravers』のmemberだけである。
死体が見つかっていない『The 8th Guidance』が実は生きていて、逃げ延びていたのか? それとも、未知のmemberが存在するのか? それとも、何者かが捜査側を攪乱するために『The 8th Guidance』のmarkを使っただけなのか?
「それに、彼等は『協力』しているだけで僕達や警察のUnder Commandに入った訳じゃない。実行犯の黒幕については僕達が調べれば良い。彼らには、このまま姿を消した何者かについて追ってもらおう。
僕達には、もっと重要な問題もあるが」
「そうね、冥は何も覚えていないようだったけれど、Hiroshiはまだ夢でうなされる事があるようだから」
「実行犯と話したそうだしな。奴らが死ぬところは見ていなかったとしても、楽しい経験じゃないよな」
Hiroshiは強がっていたが、Narumiには【Angel】を使うまでもなく、彼の心に傷が残っている事が分かっていた。同じ経験をすれば、大人でもtraumaを負う。それが悪夢にうなされる程度で済んでいるのなら、まだ軽い方なのだろう。
「私に、心を癒すような力があればどれだけ良かったか……」
Narumiの【Angel】は、five sensesを共有し、心の声で会話する事を可能にする。だが、心の傷を直接癒すような力は無い。それを嘆く妻を励まそうと、Hirotoは彼女の肩に手を添えた。
「そう悲観する事はない。最近はHiroshiがうなされる事もなくなってきたようだ。さっき寝顔を見た時――!」
だがその言葉の途中でHirotoは突如椅子から立ち上がり、child達が眠っている二階へ向かった。
「どうした!?」
「妙なManaを感じる。二階に……!?」
階段を駆け上がったHirotoが立ち止まり、二階を見回す。だが何も起こっていなかった。
「今度はどうした!?」
「Manaが、消えた。気のせい、だったのか?」
Iwaoにそう答えながらも、Hirotoはchild roomで眠っているHiroshiと冥の姿を確認し、次に事件の後増やした警備員に異変はなかったか確認したが、彼等は何も気がついていなかった。
「あなた、security systemが一瞬だけど不審なManaを捉えているわ。これは……本当に何なのかしら? Wind-AttributeとLight AttributeのManaが一瞬現れて、ぱっと消えたけれど……」
だが、Hirotoの気のせいではなかった。security systemを調べていたNarumiが、Manaを検知した事に気がついたのだ。
「Hirotoがnerve質になっていた訳じゃなさそうだな。しかし、意味もなく、一瞬でManaが現れて消えるなんて……実は、Hiroshiが寝たふりをしながらmagicで悪戯でもしたとか?」
childの悪戯を疑うIwaoに、Narumiは首を横に振って「違うわ」と言った。
「最近、Hiroshiは私達に隠れて、magicの練習を熱心にしているようだけれど、まだchildよ。この大きさのManaは出せないはずだわ」
Amemiya 家には土水火風と光と生命、そしてspaceの七つのattributeのManaを検知するsensorが付けられている。時attributeは存在せず、無attributeは未発見。そしてdeath attributeはそもそも検知し難い性質を持つ上に、生きたSampleが現在では存在しないためsensorを簡単には作れない。
そんな状況の『Origin』では、十分なsecurity systemだ。
だが、それでも、何が起きたのか分からない。
「たしか、こういう事にはRokudouやMoriyaが詳しかったな。Moriyaは丁度明日来るはずだし、聞いてみるか?」
Hiroshiと冥が攫われてから、Amemiya 家には『Bravers』の人員が交代で護衛にやってきていた。Iwaoがこの日Amemiya 家に居たのも、そのためだ。
「……そうだな。だが、念のためにdeath attributeのManaを検知できるsensorを調達できないか、交渉してみよう。もしかしたら、本当に『The 8th Guidance』の生き残りが居るのかもしれない」
そう相談しつつ眠れぬnightを過ごす三人だったが、翌朝早い段階で【Shaman】のMoriyaから連絡がもたらされた。missionが発生したため、Amemiya 家にはいけないと言う連絡が。
Amemiya Hiroto達が相談している頃、冥のroomでBandaは先程の出来事について首を傾げていた。
『あの、妙なのは何だったのだろう?』
睡眠の必要がないBandaが姿を消したままAmemiya 家を徘徊していると、自分と同じように肉眼では捉えられないManaの塊が二つある事に気がついた。
それは壁を幽霊のようにすり抜け、child roomの方に向かって来た。しかし、明らかに幽霊ではない。Manaの塊で出来た、使い魔のような存在だとBandaは見抜いた。
そして、その使い魔を攻撃し、一瞬で倒した。姿を消したままDemon King Fragmentで出来たbody partで殴っただけで、正体不明の使い魔はあっさりと砕け散った。
その際、Manaが空気中にばらまかれ、Amemiya Hirotoに気がつかれた時は胆が冷えたが、すぐに姿を消したので気がつかれなかった。
『Rokudouがちょっかいをかけて来たのか、それとも別口か……捜査機関の放った秘密の護衛の可能性もあったかな? だとしたら早まったかも。
Hiroshi -kunも俺になじまなかった部分を、それなりに上手くAbsorptionしたようだし、No-Attribute Magicを覚える前に本格的に手出しをしてくるでしょうか?』
VandalieuがReincarnator達の魂を喰った時、Absorptionできなかった部分をBandaはHiroshiに鍋Cookingにして与えていた。
Manaを回復させるAbilityらしいが、Vandalieuから見るとその回復量は少なすぎて、使い道を見いだせなかったようだ。
そして、Hiroshiに移植された今では、originalのconditionよりも、さらに回復量は低くなっている。しかし、『Origin』のchildにとっては無限のManaを手にしたに等しい。
そのManaを使ってHiroshiが【No-Attribute Magic】を習得するまで、必要な時間は大分縮まっているはずだ。
夢の中に出た時に、少しでも印象が良くなるようにとmain bodyに頼んで楽しい夢を演出した甲斐もあり、Bandaの事を若干怪しみつつも、指導は素直に聞いてくれている。
【Demon King's Luminescent organs】と【Demon King's Ink Sacs】で角やboneをCoralに、tentacleをSea Anemoneっぽくして、furを海藻のように揺らめかせた。アドリブでCookingした事も含めて、我ながら良い演出だったとBandaは思っている。
そこまで上手くいったので、できれば、Hiroshiにはこのまま【No-Attribute Magic】を習得して欲しい。
『都合が良いように誤解してくれると、助かるのですが』
「う~っ?」
『ああ、起きちゃいましたか、Me-kun。ほーら、にょろにょろですよー』
「にょろにょろ~!」
Bandaは【Demon Kingのtentacle】を生やして冥が再びsleepsまで、あやすのだった。
一方、その頃、Amemiya 家から離れた場所に居た【Shaman】のMoriya Kousukeは、驚愕で青ざめていた。
「私が放ったArtificial Spiritが、二体とも一瞬で消滅しただと!?」
Moriya KousukeのAbility、【Shaman】は自身のManaを用いてAnimaを人工的に創り出し、それを使い魔として操る事が出来るようなAbilityだ。
特定のattributeのManaが集まり、知能やemotionsがあるように動き回る。それがOriginのAnimaだ。生物ではなく、自然現象の一部だと解釈されている。
MoriyaはそのAnimaを自分の意志とManaで創り出し、通常の使い魔よりも巧みに操る事が出来る。
最新のsecurityーを突破し、targetの盗聴や盗撮を行い、観察する事も容易い。その力で、Amemiya 家の-sama子を、特にchild達の身の回りを探るつもりだったのだが……その試みはたった今、Moriyaのprideと共に砕け散ったのだった。
「いったい、どうやって私のAnimaに気がついた? Amemiya HirotoやNarumiじゃない、Iwaoは論外だ。まさか、本当に『The 8th Guidance』の生き残りが、child達の周りに潜んでいるのか? だとしても、私のAnimaに見られる前に攻撃し、二体とも消滅させるなんて事が可能なのか?
……もしや、敵も私と同じTypeの力を持っているのか!」
目に見える悪霊を操るCurse師の話は、古来より伝わっている。そのlegendに極めて近い性質のDeath-Attribute Magicが存在し、それを『The 8th Guidance』のmemberの一人が使えるのかもしれない。
「だとしたら……私が今Amemiya 家に近づくのは拙い。奴らが私のArtificial Spiritに近い性質の、しかし遥かに強力な人工悪霊を操っているのだとしたら、私を邪魔者と見なし攻撃してくるかもしれない。それに私は対抗できるかどうか……。
Amemiya達に怪しまれるとしても、護衛の件は断らなければ。Rokudou -sanの判断を仰ごう」
Bandaの願いどおり、Moriyaは都合良く誤解した。これによって、今しばらくAmemiya 家の平穏は表面上保たれる事になった。