Bahn Gaia continent西部。Amid Empireの支配が五百年程続く地の、辺境と呼ばれる場所。そこにDark Elf達の隠れ里はあった。
Vida's New Racesに対して苛烈な迫害を行うAmid Empireだが、千年の寿命を持つDark Elfにとっては長い嵐のようなものだ。後百年か二百年、山野の奥深くから-sama子を見ていれば新しい国に代わるだろう。
住み慣れた森や山を捨てて大移動を行う程では無い。
しかし、Dark Elf族はその大移動を行うべきか否か話し合うための会合を行っていた。脅威が迫ったからでは無く、移住する先に彼らが求めたものが存在するからだ。
「皆よ、改めて問いたい」
各里の長やwisdom者が集まる会議場で、Dierion最Elderが立ち上がってそう語りかけた。
最Elderと言ってもDark ElfはUnagingだ。Dierionもその例外では無く、見た目は二十代半ば程の好青年に見える。だが、九百と数十年の時を生きた経験豊かなElderであり、穏やかな人柄で若い世代からも慕われている人物である事を、会議場に居る全員が知っている。
「昼飯は、まだだったろうか?」
だから、Dierionがそう言っても誰も怒りださなかった。
「大じい-chan、もう食べたでしょう。もう夕方だし、同じ事を皆-sanに聞くのは今日で五回目よ」
「ああ、そうだったか。これはまいった」
補佐……というより介護の為に付いて来ている曾孫にそう言われ、Dierionは頭に手を当てながら爽やかな笑みを浮かべる。
「まいったのはこっちだ。客人とHeroの前で呆けよってからに」
「全くだわい。儂等の話し合いが呆けているから長引いていると誤解されたらどうするのじゃ」
「仕方あるまい、Dierionもageじゃからな。そもそも、最もageをとった長だから最Elderなのじゃが」
口々にそう言い合うDark Elfの長達。やはりDierion同-sama、二十代や十代後半に見える者達が殆どで、声も若い為、年寄りぶった若者たちの寄り合いのようだ。
その中で異彩を放つ一人、mohawk頭にleather fashionを決めたmacho体型のDark Elf、Daltonは仲間達に言った。
「な? 皆Schneiderみたいだろ?」
「全くですな」
「Dwarfの男は髭のせいで皆中年に見えるってよくきいたけど、Dark Elfは更に凄いのね」
「まあ、Schneiderで慣れているからそんなに違和感は覚えないけど」
口々にそう所感を口にする『Storm of Tyranny』の面々。それに対してSchneiderは顔を引き攣らせていた。
「お前等……俺もここにいるんだが」
「だから言ってんだよ」
「他人の振り見て我が身を直すって言うらしいし」
しかし、Schneiderが日頃から年寄りぶった言動をしていたため、控えめな抗議は全く取り合ってもらえなかった。
Schneider達は、DaltonやDarciaの生まれ故郷を含めたDark Elfの里にBoundary Mountain Range内部への移住を勧めていた。しかし、群れごとに意思決定がバラバラだったGhoul等他のVida's New Racesと異なり、Dark Elf達は里同士の交流が維持されていた。そのため、意思決定に時間がかかったのだ。
常にadventurerに狩られる危険に晒されているGhoulやKijin race、そして激しい迫害にあっているBeast raceやGiant raceと違い、Dark Elf達はHuman社会の手が及ばない地に隠れる事に成功していた。そのため、移住を急ぐ動機に欠けていた。
「そうか。儂もそろそろ齢だな……おや、曾孫や、何故二人に増えているのかね?」
「最Elder、私は貴方の妻の双子のImoutoの娘です。つまり義理の姪です」
「顔つきと髪型が似ているだけよ、大じい-chan」
会合の間も、何処かのんびりとした空気が漂っている。しかし、Dark Elf達もただ呆けている訳ではなかった。
「では、改めて……皆よ、儂は最Elderを引退する事をここに宣言する。長の座は娘婿に譲り、最Elderは儂の次に年寄りのDiridiusに――」
「俺は辞退する! Dierion、俺はあんたの一つ下だぞ。来年には飯を食ったか何度も確認して、皆に迷惑をかけるのがオチだからな」
「ふむ、ではDiridiusの次に年寄りのRidelia。どうじゃ?」
尋ねられたRidelia Elder……髪を逆立て耳に幾つもpiercingをし、冬だと言うのに露出度の高い革製の服を着たfemaleは鼻を鳴らして顔を背けた。
「辞退させてもらうよ。あたしみたいな懐古主義の婆じゃ、頭が固すぎて最Elderなんて無理さ。孫の嫁探し一つ満足に出来ないってのに」
ちなみに、 Bahn Gaia continent西部のDark Elf達にとってPunk fashionは、一昔以上前に流行していた格好である。
「後半は関係ねぇだろ、婆-chan!」
「五月蠅いね、Dalton! 何時までも独り身でフラフラしやがって!」
更に、RideliaはDalton 's ancestor母だった。
「仲間を見習って、身を固めたらどうなんだい! 同じフラフラでも、もう一人の方と違って種だけ撒く訳じゃないからまだいいけど!」
「Elderが揃っている前で、俺の結婚事情を騒がないでくれ! 後五十年は誰とも結婚する気は無いって言っただろ!」
「ああ、確かに五十年前そう言ってたね! 覚えてるさ!」
「……Schneider、言われてるわよ」
「いや、一応、親としての責任は……面目次第も無い」
あらぬ方向に飛び火したが、Dierionが「続きは会合の後にしてくれ」と言った事で、祖母と孫の交流は中止となった。
「我等Dark ElfのHero Daltonの嫁探しは後回しにするとして、最Elderはいっそこの中では若手のDangarに任せようと思うが、どうじゃ?」
「私ですか?」
指名されたDangarと呼ばれたDark Elfのmaleは、驚いた-sama子でDierionを見つめ返した。
「私はまだ九百代になったばかりですし、TalosheimのEmperorは私の曾孫のDarciaの息子です。公平な判断が出来るとは思えませんが」
彼はDarciaの曽祖父に当たり、彼女が産まれた里の長だった。そうした理由で辞退しようとしたが、Dierionは爽やかに微笑んでそれを引き止めた。
「Dangarよ、完全に公平な判断をする事は、この場に居る誰であっても不可能だ。相手は我等が母たるVidaをrevivalさせ、Vidaに愛された少年で、Champion Zakkartを継ぐ者なのだから。その威光、そして成し遂げた偉業は、我々が伏して讃えるには十分すぎる」
Vandalieuが成した『Goddess of Life and Love』Vidaのrevival。これはDark Elf達にとって悲願だった。
隠れ住む事でそれなりにstabilityした生活を送る事に成功したDark Elf達でも、何時かrevived Goddessと共に歴史の表舞台に立ちたいと、Aldaの威光を笠に着て過ごしやすい土地を独占しContinentを支配するHuman達に目に物見せてやりたいと言う思いは、常にあった。
長い歴史の中には、実際にDark Elfが表舞台に立った事が幾度かある。Continent西部に大国が存在しなかった時期に、小国をDark Elfが征服し、国を名乗った事も。だが、どの国も数百年しか持たず再び山野の奥深くへ戻る事の繰り返し。
一歩前に踏み出しては、元に戻ってきた。そんな時にGoddessがrevivalし、Vida's Factionの国が建国されたと言う。これに奮い立たない者はいない。
実際には、里での利権や地位に固執する者も何人かはいたが……多くの者が移住を希望している以上、諦めるしかないと判断したようだ。
「まあ、Undeadや一部のmonstersも平等に民として扱われると聞いて、流石に二の足を踏んだが」
「うむ、人を無暗に襲わないreason的なUndeadとmonsters達。実際に目で見るまではとても信じられなかったからのぅ」
「それに、Chaos Elf化か……同じElfでも大きな違いがあるようだしね。こればっかりは孫の言葉でもすぐには理解できないさ」
ただすぐに決断しなかったのはそうした理由があったかららしい。のんびりしているように見えるElder達だが、自分達の判断に里の未来がかかっている事を自覚していない者はいない。
それまでTamerを除けば例外中の例外だったmonstersや、Undeadとの共存。そして最近ではChaos Elfへraceが変化する可能性。それらを考慮して決断しなければならない。
「だが、納得できるだけの材料はもうある。どう判断するか考える時期は終わったのだ、Dangar。後は、新たな最Elderがそれを言葉にして表すだけだ」
Continent西部のDark Elf達にとって、最Elderの地位はHuman社会の国王のような絶対的な権威を持つ事を意味しない。
長同士の会合で意見を纏める、議長のような役割だ。だからこそ人生経験や、優れた人格が必要とされる。
「……分かりました。謹んでお受けします、Dierion前最Elder。
我々Dark Elfは、来たる戦いに参じるためにBoundary Mountain Range内部への移住を行う。しかし、全員では無い。任を帯びた者は里に残り、もしもの時の為のShelterとして里を維持するものとする」
移住を希望するDark Elf達は、安住の地を求めるよりも、戦力として加わるためと言う認識の者が多かった。
実際、『God of Law and Life』Aldaと従うGodsに狙われているBoundary Mountain Range内部よりも、今暮らしている隠れ里の方が安全かもしれないのだ。
だから移住は行うが、もしもの時のShelterとして隠れ里も維持し続ける。それが長たちの決定であった。
「ふぅ、やっとか。まあ、これでも普通に考えれば速い方なんだが、あのクソEmperorが帝位にある内に一段落ついて助かったぜ」
「そうね。Mashkzarは無意味な……と言うか、returnの無いVida's New Races狩りはしなかったから、その点は安心できたのよね」
現Amid Empire Emperor Mashkzarも、それまでのEmperor同-samaにVida's New Racesに対する迫害を行っている。しかし、彼の場合「Empireを纏め、民の不満を逸らす為」と言う実利を決して見失わなかった。
そのため、Empire領との間に険しい山や森を挟んだDark Elf達の隠れ里を探し出し、軍を差し向けて狩りだそうとするような真似はしなかった。
軍に犠牲を出してまで行ったところで、統治し難い土地が増えるだけだからだ。捕えたDark ElfをSlaveとして売りさばいても、莫大な軍費を賄える程の利益が出るとは思えない。
「だが、次のEmperorはAlda templeのinfluenceを強く受けた奴だろうからな。Demon Kingと戦う前に、まずは国内の反抗勢力を一掃するのだ、と言い出すかもしれない」
「Schneider -dono、問題は軍だけではありませんぞ。Alda達が選んだHeroと呼ばれる若者達が、単身、若しくは数人規模で里を襲撃する可能性があるかと。私としては、理解しがたいのですが」
Zodが危惧するのは、軍よりも身軽で平均的なKnightよりもはるかに強力な、Gods 's Divine Protectionを受けたHero達による襲撃だ。Human社会に関わらず生きているVida's New Racesの隠れ里を態々襲撃する事に意味があるのか、彼は理解できない。しかし、Alda believerは度々そうした事を繰り返してきた。
そしてtempleは実行した者達を罰するのではなく、神の使徒として正しい行いだと賞賛してきたのだ。
時代と国によって狙うVida's New Racesは多少変わるし、多くの場合対象にされるのはMajin RaceやKijin race、Scylla等Rankを持つraceでDark Elfでは無い。しかし、Hero達の背後にはGodsが直接張り付いているので何をするか分からない。
「今はまだDungeonでのlevellingや、『Evil God of Joyful Life』を奉じていたVampire organizationのRemnants狩り、runawayした【Demon King Fragment】の再sealed等にかかりきりのようですが」
「そうだな。Dalton、里に残すのは腕利きだけにして、里の周りにも普段以上に厳重にTrapや警戒網を張り巡らせるように言ってくれ。
後、Vandalieuから各里の分の通信機を頼んでおくか」
こうして多少の不安を残しつつも、Dark Elfの移住計画は動き出す事になった。
Alcrem Duchyの交易都市、MoksiにDhampirがいる。それが数々の噂と共にOrbaum Elective Kingdom中に広まりつつあるにつれて、Vandalieuに関して知る者達の耳にも入るようになった。
Elective Kingdomに潜ませているSpyからその情報をいち早く得たEmperor Mashkzarは、嬉々としてその情報を握り潰した。
Alda templeや自分を帝位から追い落とそうとしているNoble達に、情報が伝わるのが一秒でも遅くなるように。
大きな意味は無いし、もしかしたら全くの無駄かもしれない。しかし、素直に教えてやるよりはマシだと考えて。
その後起きた『God of Thunderclouds』FitunのIdol Statueが次々に自壊する事件を聞いて、民を落ち着かせるための演説を考えながら、口元に笑みを浮かべたと言う。
だが現Hartner DukeのLucasは、その噂を聞いた瞬間時が止まったかのように凍りついた。
何故なら彼は約五年前に起きた自領での事件に、Dhampirが関わっていた事を知っているからだ。Adventurer’s Guildで、書類にVandalieuと名を記したDhampirが。
「まさか、あれだけの事を我がHartner Duchyでしておいて、そんな堂々と!? 今度はいったい何を考えて……また何か企んでいるのか?」
普段は冷静で厳めしい顔つきを崩さない彼が、青ざめて狼狽えている。それを見かねた家臣の一人がこう尋ねた。
「Duke閣下、VandalieuなるDhampirには税を支払わず町から抜け出した罪があります。それを口実に噂の元になったDhampirめを呼び出し、尋問いたしましょうか?」
Dhampirは希少なraceで、Orbaum Elective KingdomのHeroである『Blue-flame Sword』のHeinzが保護しているShoujoと同じraceだ。だが、逆に言えばそれだけである。
Nobleの家臣でもなんでもない一介の串焼きFood Stallの店主程度、Hartner Duke 家の威光があればどうとでもできる。そう信じ切っての提案である。
「ば、BAKANA事を言うな! この城まで傾いたら……いや、Decayしたらどうする!?」
だが、主-kunであるLucasはHartner Duke 家の威光をそこまで過信していなかった。声を上ずらせるLucasに、家臣の一人が困惑した-sama子で尋ねる。
「閣下、城が傾いた件はDhampirではなく、Kanataと言う賊の仕業だったはずですが……?」
「確かにその通りだが……当時の事件はDhampirが目撃された時期と合い過ぎている。全てにDhampirが関与していたとは言い難いが、それを否定する証拠も何一つ無いはずだぞ」
「それはそうですが、しかし――」
「Niarkiの町で、新たなDungeonの出現とrunaway、当時Mage guildの長だった人物達の集団自首出頭。Slave鉱山のDecay。極めつけは、cultivation villageの処分を言い渡したRed Wolf Knight団の失踪だ。その全てにDhampirが直接関与した証拠も、目撃証言も無い。そうだな?」
「それは、そうですが……」
「なら、城が傾いた原因もあの者にあっても不思議はない。正体不明の存在は、最大限警戒するべきだ。『Hartner's Six Spearmen』達にも、絶対に関わるなと伝えよ。
それと、弟の行動にも目を光らせておけ。奴がDhampirを利用して手酷くやられるのは勝手だが、こっちまで巻き込まれたら堪ったものではない」
LucasはHartner公peerageを継いだ事で動かせるようになったDuke 家お抱えの精鋭部隊、そしてかつてSuccessorの座を争った腹違いの弟、BeltonがVandalieuに勝手に接触しないよう命じる。
『Hartner's Six Spearmen』はLucasにLoyaltyを誓う精鋭達だが、Amid Empireの『Fifteen Evil-Breaking Swords』と比べるとその力は大分落ちる。流石に約五年前に動かしていたRed Wolf Knight団よりも戦力としては数段上だが、それでもLucasのIntuitionは「彼らでは力不足だ」と告げていた。
そしてDukeの座を兄に譲り、忠実な家臣となったはずのBeltonが、実は腹に一物隠している事をLucasは既に見抜いている。下手な策を考えてVandalieuにちょっかいをかけたら、目も当てられない。
「では、Spyを送り込むに留めましょうか? なにかおかしな動きを……特にHartner Duchyに近づくような事があれば、ただちに報告するようにと命じて、監視させましょう」
「……それならばいいだろう。頼んだぞ」
後日、Moksiの町で起きたDungeonのrunaway事件を知ったLucasは、やはり一連の事件にはあのDhampirが関与していたのだと、確信を深めたと言う。
一方、Sauron公peerageを継いだRudel・Sauronは逆にVandalieu……と言うよりも、彼の母親であるDarciaをSauron領に招けないかと考えていた。
「やはり、あの噂は本当だったようです。十万年ぶりに現れたVidaのFamiliar SpiritをAdventさせた、Saintess。彼女が我がSauron DuchyのChurch of Vidaを訪問すれば、民も活気づきましょう」
そう述べる家臣に、Rudelは「そうだな」と頷いた。
Amid Empireとの戦争の矢面に立ち、そしてほんの数年前に領土を取り戻したばかりのSauron Duchyには、伝統的にVidaをworshiperが多い。
Amid Empireが『God of Law and Life』Aldaを頂点としたGodsを国教として奉じているため、十万年前にAldaと決別したVidaを奉じていると言う理由だが、民には熱心なbelieverも多い。
VidaのFamiliar SpiritをAdventさせたDarciaがVidaのGrand Templeを訪れれば、沈み気味なSauron Duchyの空気も久しぶりに明るくなるだろう。
(相変わらず旧Scylla Autonomous Territoryの攻略は進まず、Amid Empireに対しても華々しい戦果は一つも上げていない。このままでは人心は私から遠ざかるばかりか)
旧Scylla Autonomous Territoryは相変わらずVandalieuの支配下にあった。最近ではadventurerだけでは無く、mercenary guildも仕事を受けつけなくなり、いっそ放置してしまおうかとRudelも悩んでいる有-samaだ。
そしてEmperorとtempleの二大勢力がぶつかり合っているはずのAmid Empireだが、軍は権力闘争何て知らんと言わんばかりに国境を守っている。
領土を回復し、軍の再編成も終わっていないSauron Duchyの状況では、とても戦果を挙げられるconditionではない。
だからこそ、『Saintess』Darciaの存在は民を活気づけるだろう。
「しかし、他のDuchyで名を上げた者を強引に招くのは問題があるかと。Alcrem Dukeも良い顔はしないでしょうし」
だが、別の家臣がそう述べる。別に他のDuchyで名を上げた者を招く事や、家臣として迎える事を禁止する法は無い。しかし、暗黙の掟として避けるようになっていた。
「確かに。強引な手を打てば、Alcrem Dukeはcertainly、Saintess -dono本人の不興を買ってしまう。まずは、Alcrem Duke、そしてMoksi Earlに根回しをしてからにしよう」
「畏まりました」
実はそのSaintessの息子が自分の治世を脅かしている最大の要因であるとは知らないまま、Rudelは彼女を招くための策を講じるのだった。