Fitunが人として生きていたのは、今から約五万年前になる。Humanなら、気が遠くなるような年月だが、神にとってはそう長い時間ではない……という事は無かった。
何故なら、Fitunは根っからの戦闘狂、それもThrillに飢えたBattle Junkieだったからだ。
Humanだった時の彼は力を求めた。力は必要だ。戦場では弱兵は、戦闘要員では無くただの肉壁、一山幾らの存在だ。戦いを楽しむ余裕も、Thrillを覚える時間すら無く、ただ刈り取られる。
戦闘を楽しみ続けるには、生き抜けるだけの力が必要だ。騎兵を射殺す弓の腕、重装兵を翻弄する身のこなし、軽装兵を薙ぎ払う武術の腕、Mageやadventurer、mercenary相手に生き延びる為にあらゆる力が必要だ。
折角 mercenaryになったのだから、これまでblood反吐を吐くような訓練に耐えて来たのだから、一度だけでは割に合わない。何度でも、出来るだけ多くの戦場で、出来るだけ長く愉しみたい。
しかし、Fitunは力だけではなく、金はcertainly、名声、酒、食い物、女、ありとあらゆるものを求めた。だが、求めた理由は戦いと、戦いで味わえる興奮と熱狂に身を浸す為だった。
装備を充実させるのに金が必要だ。彼が面白いと感じるような戦場で雇われるためには、名声が……実績が必要だ。
そして戦いの合間に楽しむ酒、食事、そして女も重要だ。死ぬThrillを楽しむには、生きていなければならない。充実した生命を感じるからこそ、死ぬ事に対して生々しいThrillを覚える事が出来るのだ。
雇われて殺し合い、宴で酒とご馳走を楽しみ、女を抱く。そして次の日には訓練を再開し、次の戦場を探す。その繰り返しだ。
だからFitunは、自分はいつか戦場で死ぬだろうと思っていた。
だが、気がつくと何時の間にか自身のmercenary団を率いるまでになっており、暴れ回った結果、戦争が終わってしまった。
Fitunを雇い続けた国が泥沼の戦争に勝利し、大国に上り詰めた事で、群雄割拠の戦国時代の幕は降ろされたのだ。
慌てて次の戦場を探したが、困った事に残った小国同士の小競り合い程度では彼は満足できない。大国を裏切って敵につこうにも、大国にはFitunより強い者が存在しない。
今は次の戦争を待つしかない。大国が割れ、新たな強敵が育つまでじっと耐えるのだ。
しかし、当時の生きるlegendであっても所詮はHuman。驚異的なVitalityで百と二十数年まで生きたが、Fitunは結局大国が割れる前に寿命を迎えた。
当時の人々は建国の立役者であり、戦場で勝利をもたらし続けたHeroの死を悼んだ。乱世が終わり、今の平和が在るのはあなたのお蔭だと。
その平和が乱れるのを誰よりも望んでいたのが、Fitunであると知らないままに。
だがその人々からの祈りもあって、死後Fitunは神の列に加わる事になった。戦場で死ねなかった無念を抱えていた彼にとって、それは願ってもない事だった。
神となり、まだworldの闇で蠢くDemon King Army Remnantsや、 Bahn Gaia continentにあるBoundary Mountain Rangeの内側に潜むVidaとそれに従うGodsとの戦いに身を投じる。
blood湧き、肉踊る日々が戻って来る、しかも相手はHumanだった時の彼では相手にならない邪悪なGods。これまでにない激しい戦いになるだろうと、彼は期待した。
だが、その期待は裏切られた。実際に彼を待っていたのは、worldを維持し、管理するために、worldに満ちるWind-Attributeの力を調整する仕事。そして自身を信じ、祈りを捧げるbeliever達をGuidance、かつて自分自身が神に至ったように、believer達を育てる事だった。
庭師が庭を整えるようにworldを管理し、新兵を鍛える時よりもずっと緩く、そして迂遠にbeliever共をGuiding日々。
certainly、Demon King ArmyのRemnantsやVidaに従うGods、狂い堕ちたと伝えられている『War-God of Fire and Destruction』Zantark等の敵が存在している事は忘れていない。それらが動き出したなら、Fitunは他のWar Godと共にHeroic spiritを率いて戦う事になっていた。
しかし、Demon King Army Remnantsの邪悪なGodsはbelieverを動かして謀略を巡らすばかりで、自身が動く事は無かった。Vida's FactionのGodsも、Zantarkも、Boundary Mountain Rangeの内側やDemon continentに引き籠もり出て来る-sama子は無かった。
Fitun達は備えるだけで、実際に戦う機会には恵まれないまま退屈な仕事を続けるしかなかった。
それはHonoraryな事ではあるだろうし、神でなければ出来ない仕事なのは分かる。
だが、Fitunが求めた熱狂や興奮、Thrillとは異なる役目だ。
自分より先に死んで他の神のFamiliar SpiritやHeroic spiritになっていたmercenary団のmemberを集めて、believerを集めたり、戯れにblessingsを与えたり。
見込みのある者達を集め、創った『Trial's Dungeon』で挑戦者の生き死にを眺めるぐらいしかない。
その間にFitunを雇っていた大国は滅び、nameすら忘れられた。再び訪れた群雄割拠の戦乱の世に、戦争を楽しめる者達にjealousyを覚え、しかし自分自身がAdventする訳にもいかずただ眺めているしかなかった。
そして気がつけば一万年、二万年と時は経ち、FitunはHumanだった時のMemoryと、自身の欲望を忘れてその他大勢のGodsの一員となっていた。
だが、Vandalieuが現れた事で、彼は自身の中に眠っていた欲望を思い出した。
そしてVandalieuは、想像以上に彼の欲望を叶えてくれた。尤も、叶えすぎているから問題なのだが。
殺し合いは好きだし、分の悪い戦いも嫌いじゃない。だが、いいように痛めつけられれば怒りを覚える。それにFitunは負けたい訳ではないのだ。
今も、じりじりとwhole bodyを【Blood Infection】によって変化したVandalieuの一部によって、体内から喰われる痛みに苦しんでいる。
回復magicでBodyの傷は癒したが、自分自身の魂までは癒せない。その痛みには耐えるしか手は無いのだが……。
(痛み。そうだ、他の連中はどうなった?)
【Karma Curse】の効果でFitunは自分だけでは無く、彼の命令で動いている配下のHeroic spirit達が他者に与えた痛みを感じる。だが、いつの間にか感じる痛みの数が随分減っていた。
透明な膜のように見えるspaceの壁によって隔てられているが、Kanako達と戦うGordon・Bobby達の姿は見える。一人減っている上劣勢のようだが、持ち堪えているようだ。
だが、他のHeroic spirit達はどうなった?
(感じる痛みの数が減ったって事は、奴らが敵を傷つける事が減ったって事だ。やられたのか? 確かに、考えてみればまだ町が無事だ。門の外では戦いが続いているが、それだけだ。
チッ、にわか仕込みじゃ無理があったか)
戦力を確保するために、Fitunは配下のHeroic spirit達が受肉する即席のBodyを用意し、更に彼らが【Heroic Spirit form】後も使える武具も用意した。
だが、約五万年前彼らが使っていた武具を、そのまま用意するのは流石に無理だった。彼らの武具の幾つかはtempleに祭られる等して保存されていたが、失われてしまったり、他の所有者の手にあったり、短い時間で手に入れる事が出来ない場合も多かった。
そのため、Heroic spirit達のDefense Equipmentの多くを自身のTrial's Dungeonに出現するTreasure Chestや宝物庫で見繕った。しかし、Weapon Equipmentだけはそうはいかなかった。相手は、【Demon King Fragment】をある意味Demon King Guduranis以上に使いこなしている、Vandalieuである。
彼を殺すつもりなら、Orichalcum製のWeapon Equipmentか【Demon KingのEquipment】が必要だ。
そこでFitunは自身を奉じるtempleに属するClergymanにOracleを与え、秘密裏にtempleの宝物庫を開け放った。そして幾つかの装備や、sealedされていた【Demon King's bones髄】のEquipmentと、そしてHumanだった頃自身が使っていたOrichalcumのscimitar型のEquipmentを手に入れた。
どうしても足りない分は、神としての力を使ってOrichalcumをRefiningし、それでMythrilやAdamantite製のWeapon Equipmentの表面にコーティングを施し、即席のOrichalcumの武具とした。
(それでも足りなかったか……だが、あれだけの痛みをVandalieuの配下に与えたのなら大戦果だ。奴の援軍が現れないのも、俺の部下との戦いで消耗したか、差し違えでもしたからだろう。
だが、俺の方にも援軍は無い。なら、仕方ないか。正直、あまり気分の良い手段じゃないが)
「さて、時間切れだ。今度は僕に協力してもらうぞ、Akira」
そう、【Sylphid】のMisa Andersonが燃え尽きた爆発で生じた煙にまだ視線を向けていたAkiraに、声をかける。
「協力? ……spaceの壁を破るか、【Blood Infection】を消す程強力な電撃を、俺達を巻き込んで放つって話なら、好きにしろ。俺達は出直す」
「出直す、だと? お前、どう言うつもりだ、Akira?」
Orbiaに殴り飛ばされたMurakamiが、呻きながら身を起こす。Misaが集めた【Blood Infection】を、Vandalieuが【Death Flame Prison】の燃料にして燃やし尽くしたため、Akira同-samaに殆ど喰われていない。
まだ刺さっていたknifeを抜いて、気付け薬も兼ねて不味いpotionを飲み、body partを癒した事でまだ戦う事は出来る。Manaも【Super Mana Regeneration】のAbilityを持っているので、問題無い。
先程は、OrbiaのようなGhostを温存している事を予想していなかったので失敗したが、同じ轍は二度と踏まない。
そんな彼に対して、Akiraは信じられないものを見る目を向けて言い返した。
「どう言うつもりだって、Misaが喰われたんだぞ!? 分からないのか、俺達は劣勢なんだよ! 覆せない程になっ! 一度退くべきだろ!
死んでまたやり直しになるのは面倒だが、魂を砕かれるよりましだ。それが分からないのか? まさかそこの神の戦闘狂が感染したなんて言わないだろうな!?」
Akiraにそう怒鳴られて、Murakamiも一考した。確かに、彼の言う通りだと。
Murakamiの想定よりもVandalieuが強くなりすぎていて、Misaを失った。戦い続ける事は出来るが、その結果勝つ事が出来るとは考え難い。
魂を砕かれるhorror……それは本来神ではない人の身には、実感し辛いものだ。宗教を信じていない無神論者には、ただ死ぬのと変わらないように思えるかもしれない。
しかし、ReincarnatorであるMurakami達にとって、魂を砕かれ、消滅する事こそ、真の意味での死だ。
無論、Divine Realmに戻ったところでMurakami達がreincarnationした時とは状況は変わっている。Rodcorteが逃げ帰って来た二人を役に立たないと断じ、Abilityを没収してMemoryを消し、通常の死人同-samaにReincarnationの輪に還してしまう可能性もある。
それでも魂は無事だが……神ならぬ人の身であるMurakamiにとって、reincarnationは出来てもMemoryと人格を失い別の生物として生まれ変わるのは、消滅と大差ないように感じる。
しかし、Rodcorteに見限られる可能性を恐れて、このまま戦い続けたとしても勝ち目はあるのだろうか?
(分が悪くても賭けるしかないと思って挑んだが……spaceを隔離して【Blood Infection】を使われた時点で勝ち目は無かったか。fishermanの利を狙わず、最初からFitunに同盟を持ちかけて情報を提供しておけば、まだ勝算があったかもな。
こうなったらAkiraの言う通り一端退いて、『Origin』で仲間に引き込めそうな奴が死んで、こっちにreincarnationするのを待った方が良さそうだ)
「分かった……suicideするぞ。今頃Divine RealmのRodcorteは大騒ぎしているだろうが、魂の回収は問題無いはずだ」
その返事を聞いたAkiraが、納得してくれたかと安堵の息を吐く。
そして意識にある、やや硬いswitchを押してsuicideする。苦しみは一瞬。heartが止まり、一秒とかからず魂はBodyを離れるはずだ。
「【雷命掌握】!」
「がぁ!?」
「う゛ぎっ!?」
だが、その一瞬の間にMurakamiとAkiraは背後からHajime Fitunが放った強力な電撃によって貫かれた。
『うぉぉぉぉぉ……!』
電撃の余波を受けたspaceの壁が消滅し、space attributeのGhost達が追い散らされる。その結果にHajime Fitunは満足気な笑みを浮かべ、suicideしたはずのMurakamiとAkiraに語りかけた。
「どうだ、好きにしたぜぇ。電撃がどれくらい速いか、知らなかったのか? 僕がお前等を感電させるのに、一秒も必要無いんだよ!」
「ど、どういう、ことっ、だ!?」
二人が、Hajime Fitunを振り返る。彼等は困惑しながらも、Hajime Fitunに対して反撃しようとしていた。
しかし、body partは動かず、MurakamiのAbilityも彼の意思ではActivateしなかった。
「魂がBodyから離れる前に隙があったから、そこを突いてやったのさ! 電撃で無理矢理heartを動かし、神の力で魂をBodyに封じ込めてやった!」
Hajime Fitunは、MurakamiとAkiraがRodcorteに魂を回収されるまでの一瞬の隙をthrust、二人を掌握した。【Marionette】のAbilityでは、魂を封じ込める事は出来なかったが、『God of Thunderclouds』であるFitunの電撃なら可能だ。
本来なら死にかけている者を助ける為に、魂がbody partから抜けないよう抑えつつ心lungを維持するための方法だが、今回は二人を手に入れるのに使った。
「な、何だっ、そんなに、俺達を、殺したかったの、か?」
そう尋ねるMurakamiに、Hajime Fitunは嘲笑を浮かべる。
「それもあるが、違う! お前ら二人を操って、Vandalieuを殺すのにそのAbilityを使うためだ!」
「っ! てめぇ! この、クソ……ガキ……が!」
「ははははっ! 何時までsensei気分なんだ? ……見下しやがって! 魂はこのままBodyに閉じ込め、Bodyをこのまま電流で操ってやる! body partの内側に魂があるうちは、Rodcorteだって手出しが出来ないからなぁ!
戦いが終わったら解放してやる。その時にはnerve細胞が焼き切れているだろうから、解放した途端死ぬだろうが。でも、構わないよなぁ? どの道死ぬつもりだったんだしな!
さあ、協力し合おうぜ、Murakami sensei~っ!」
Hajime Fitunの電撃によってBodyの支配権を奪われる事に、Murakamiはhorrorした。このままVandalieuと戦えばどうなるか。負ければ魂を喰われ、勝っても苦痛のあまり正気を失っているかもしれない。
そもそも、Hajime FitunがVandalieuに対して完勝できるはずもない。戦いの途中で肉の盾にされ、ついでに魂を喰われるのは想像に難くない。
だが、AbilityのActivateすらHajime Fitunに握られてしまった彼にはもう何も出来なかった。
「クククッ、これで一心別体の仲間の出来上がりだ。本当は電流越しでも気分が悪いが、enduranceしてやる。さて……どこから来る?」
Hajime Fitunはまだ収まらない煙の向こうから、Vandalieuの足音がするのに気がついていた。煙に隠れて、こちらの出方を窺っているのだろう。
実際にはただ窺っているだけでは無く、MurakamiとAkiraがsuicideしようとした時、【Death Delay】のmagicをActivateさせていたのだが、【Death Attribute Resistance】があっても、死ぬまで短くても一分はかかる。その間に、もう一度【Death Flame Prison】を唱え、爆殺して魂を喰らうつもりだった。
Hajime Fitunが動いたため、backfireで自分自身も焼きかねない手段に訴える必要は無くなったが。
「だが、煙を挟んで睨み合いをしている暇は無い」
【God form】skillをActivateさせ、神としての力を振るっているHajime Fitunは限界を超えれば死ぬ。HajimeがReincarnatorであり、神であるRodcorteの力によって創られたBodyを持っていてもだ。
「だから、僕から行くぞ! 【双飛雷刃】!」
【Demon KingのEquipment】である曲刀を交差させるように振るい、斬撃を飛ばすMartial Artsを放つ。……煙の向こう側では無く、遠くに見えるMoksiの町に向かって。
距離は一キロから二キロ程離れているが、その程度の距離は関係無い。このworldのAClass adventurerは、全力を出せば小山を一つ割る事が出来るのだ。受肉したWar GodであるHajime Fitunが、【Demon KingのEquipment】のWeapon Equipmentを使って本気で斬撃を飛ばせば、from hereでもただの城壁を破壊する事は容易い。
「【Steel Wall】、【Steel Body】」
だが、その斬撃の前に煙の中から【Flight】で飛び出したVandalieuが、自ら身を晒した。両腕に【Demon King's Carapace】をActivateし、body partは引き続き液体金属の鎧と、【Demon King's exoskeleton】で守り、Hajime Fitunの斬撃を受け止めた。
「止マレ!」
だがそれを読んでいたかのようにMurakamiが叫び、Vandalieuの腕が固定される。
「【神雷付与】! 【双月飛斬乱舞】!」
そして動きのとれないVandalieuに向かって、Hajime Fitunが先程よりも激しい斬撃を連続で飛ばし始める。
今度は流石に耐えられず、carapaceやexoskeletonが切り裂かれ、その下の【skin】まで切り裂かれる。しかし、bloodが流れる事は無い。
Hajime Fitunが付与した電撃が、Vandalieuの傷口を焼いてしまうからだ。
「【Blood Infection】対策のつもりですか。なら、町を攻撃しない方が良いと思いますけどね」
これまでの戦いでHajime Fitunが、Moksiの町を狙える位置にありながら攻撃しなかったのは、Vandalieuに対して町のHuman達を人質にするためだ。
千数百人程度が死ぬ程度の、多少の被害を与えるのは構わない。だが、町の住人の過半数が死ぬような、それどころか町が壊滅するような大きな被害は、決して与えないようにしてきた。
何故なら、Vandalieuが町に見切りを付けたら……町に人質としての価値が無くなったらどうなるか。【Blood Infection】を我が身で味わう前のHajime Fitunでも分かったからだ。
しかし、この人質tacticsはあるものを信じられる事が大前提である。
「貴-samaが町のworm共を、死ぬまで庇い続ける事に……殺す相手の良心に、正義感に、そして慈悲に期待しろって!?」
それは、Vandalieuが、我が身が危なくなっても町を庇い続ける事だ。それが信じられなければ、このtacticsは成立しない。
Demon Kingを討伐するために、Demon Kingが弱者を庇い続ける事を信じる。
『Five-colored blades』のHeinz達には、とてもできないだろう。だが、Fitunは確信していた。Vandalieuが本当にbarelyまで町を守ろうとするだろうと。
戦場では、他人が下らないと思う動機で命を賭ける奴が山ほどいる。HumanだったFitun自身も、金で雇われ命を賭けるmercenaryだった。
そうして命を賭ける理由に、愛や友情、正義と言った動機を持つ連中が存在し、彼等は本当に命を投げ打って戦った事を知っている。
だから『以前の』Hajime Fitunは、Vandalieuが自分にはとても理解できない、下らない理由で命を賭ける事を信じる事が出来た。
「とても無理だね! どうせ、本当に自分の身が危なくなったら見捨てるに決まっている! 町は他にもあるが、自分の命は一つだからな!」
だが、『今の』Hajime Fitunは信じられないようだ。だから【Death Scythe】で町を庇ったVandalieuの片腕に働く、全ての動きを停止し、midairに固定したのと同じconditionにする。そして、一気に勝負をかけようとした。
「なるほど」
Vandalieuはそう頷きながら、額と掌に開いた【Demon King's Eyeballs】を使って、Murakamiに向かって怪光線を放った。彼を消して、【Death Scythe】のAbilityを解除させるためだ。
本来の所有者のKonoe Miyajiの時は、【Abyss】でAbilityを跳ね返すだけで滅ぼせたが……BodyのあるMurakamiに、それも腕に対して使われている力を跳ね返しても、彼の腕が動かなくなるだけで、効果は無い。
Demon King Fragmentを利用して放った怪光線は、magicでは無いので、Murakamiの本来の力である【Chronos】のimpactも受けない。彼は回避できず、体に風穴を作って倒れるはずだった。
しかし、Murakamiは多少動作がぎこちなかったが、Vandalieuの怪光線を回避した。頭とsolar plexusを狙っていたのを、予め読んでいたかのように。
Akiraが予知して回避するよう指示した訳ではない。だが、未来が読めたとしか思えないtimingだ。
「脳の生体電流を繋げて、思考を共有している?」
「気がついたか!」
Hajime Fitunは電流でMurakamiとAkiraのBodyだけでは無く、脳を乗っ取る事で彼らのAbilityとfive sensesも乗っ取っていた。
今、【Odin】のAkiraの目はHajime Fitunの目に等しい。それを利用して未来を予知し、怪光線からMurakamiを回避させたのだ。
「だが、まだまだ元気じゃないか。それじゃあ、大きく削るとしよう! 【轟Thunder God槍】!」
Hajime Fitunは斬撃を飛ばすのを止めると、今度はWind-Attributeのmagicを放った。神の放った槍に等しい雷が、轟音と共に放たれる……Gordon・Bobby達と戦っているKanako達に向かって。
「ちょっ!?」
「た、隊長!?」
Kanakoだけでは無く、magicの規模的に巻き込まれるのが確実なGordon・Bobbyも引き攣ったscreechをあげる。咄嗟にLegionが盾になろうとするが、他のHeroic spirit達と戦っており間に合わない。
だが、magicが彼女達に到達するよりも大分早く、軌道上にVandalieuが立ち塞がった。
「【Magic Absorption Barrier】、【Magic Steel Shield】」
【Death Scythe】で停止された腕を、自ら切断して駆けつけたVandalieuがBarrierを張る。雷は、death attributeのManaの壁にぶつかり、そこでManaを吸われ消えるが――。
「させるか!」
だが、そのBarrierにHajime Fitunが【Demon KingのEquipment】を振るって斬撃を飛ばし、Barrierを切り裂く。
雷の槍の残りを受けて、Vandalieuが仰け反りHajime Fitunのbody partに激痛が走る。これは彼の【Magic Resistance】を抜けて、臓腑が焼けるような大きなDamageを与えたと彼は確信した。
そう、臓腑が焼けるような……。
「ぐぎゃああああああっ!? な、何で……!?」
臓腑が焼かれ、胸を貫かれ、凍てつかされ、耐えがたい圧力に押し潰される。魂が軋むような激痛に耐えかねて、Hajime Fitunは思わず地面に膝を突いた。
Vandalieuと同じ痛みを味わう覚悟は出来ていたが、明らかに違う痛みまである。それは、いったい何故なのか。Akiraの目でも予知は出来なかったと言うのに。
顔を上げ、痛みに涙が滲む目でVandalieuを見るとその背後のspaceが不自然に揺れていた。
『戦temple、私が創った蜃気楼はお気に召したようでなにより』
Vandalieuが雷で貫かれ、Hajime Fitunの注意がそれに逸れた間に、Light AttributeのGhostであるChipurasが創り上げた蜃気楼が消える。
その向こうではVandalieuに庇われたKanako達が、magicを放ってGordon・Bobby達を攻撃している姿が……いや、あれは違う。Kanako達のmagicでは無い。
『今まで大人しくしていた分、燃やします!』
『今度はこっちの相手さ!』
『援軍大感謝ァァァ!』
『ハッハァ! 光あれぃ!』
VandalieuのManaを与えられたPrincess LeviaやOrbia、Darock達がKimberlyと共に、【Dead Spirit Magic】で攻撃しているのだ。
「援軍はありがたいが、外聞に拘り過ぎじゃないか?」
「まあまあ、ポーズを頼まれたら応えないといけません!」
「どうせ物見の塔からは見えないと思うけどね」
Kanako達も自前でmagicを唱えているが、遠目にはPrincess Levia達も含めて彼女達の術に見える事だろう。ちなみに、Legionだけは本当にHeroic spiritを一人踏み潰している。
「Bobby……役立たず共が! だが、何故、奴等が倒されても痛みを感じる!? 奴らが消滅したのは、僕のmagicのせいじゃない!」
【Karma Curse】は、自分が他者に与えた痛みが自分に返ってくるCurseのはずだ。だというのに、何故?
「Bobbyはともかく、寄り代に使ったGordonや『Flame Blade』の人達はお前の部下では無く、ただBodyを奪われた被害者です。
その被害者の痛みが、【Karma Curse】によって加害者に返って来るのは道理だと思いますが?」
「じゃあ、今までの痛みは……クソ、道理で誰も援軍に来ないはずだぜ」
Fitunが今まで部下の戦果だと思っていた痛みは、部下の寄り代に使ったBodyが傷つけられた痛みが混じっていたのだ。
しかも Bobby達はDead Spirit Magicで倒されたので、魂をVandalieuに喰われている。彼らの長であるFitunにも、痛みは届いていた。
「だが……いい気になるな! 僕はまだ戦える、痛みは、ただの痛みだ。死ぬ訳じゃない。
ククク、裏切り者の尻軽共に、crazyたfanaticの成れの果てを戦いに加えても、何も変わらないぜ。寧ろ、【Marionette】の的が増えただけだ!」
Vandalieuはその異常な力で【Marionette】に対して対抗策を打つ事が出来た。しかし、Kanako達にその真似は出来ない。Kanako達もReincarnatorではあるが、Rodcorteを裏切っている彼女達が、まだ他のReincarnatorのAbilityから守られているのか、Vandalieuには分からないはずだ。
Legionにはnerveも脳も無いが、muscleは電気に反応する。
もしKanako達やLegionを操る事が出来たら、そのAbilityを乗っ取る事が出来たら、戦況はひっくり返せる。
まだまだ戦いは……殺し合いは終わらない。
「さあ、続き……ぐあああああっ!?」
しかし、Hajime Fitunは再び膝から崩れ落ちた。魂が歪むような痛みに、とても立っていられず、操っているMurakamiとAkiraのBodyも、奇妙な痙攣を始める。
(BAKANA! もうBobby達は消滅したはずだ! なのに、何故痛みが!?)
『町の方に向かって、俺の仲間に倒され、GufadgarnやSamが集めて来てくれたHeroic spiritの魂ですよ』
そう言いながら現れたのは、Vandalieuだった。ぼんやりと半ば透けた姿で、飴玉でも舐めているように頬を少し膨らませている。
「な、Cloneか!?」
驚くHajime Fitunに二人のVandalieuは交互に答える。
『いえ、煙の中で【Out-of-body Experience】しまして。今までお前が傷つけていたのが、Bodyだけの俺』
「そして、今現れたのが、魂だけの俺です」
『「つまり、どちらもmain bodyです」』
まあ、Bodyを動かすには【Group Manipulation】skillを使用しているので、よりaccurateに言うのなら魂の方がmain bodyなのだろうが。
それはともかく、煙の中で二人に分かれたVandalieuの魂の方は、Samのcarriageに入り、彼が持ってきてくれたHeroic spirit達の魂を口に含み、ついでにJob changeも済ませて来た。
神によりDamageを与える為に、【God Destroyer】にしようかとも思ったが、今のHajime Fitunは受肉しているため純粋な神では無い。なので、より対象が広そうな【Divine Enemy】にした。他にも新しくJobが増えていたが、考察は次の機会にしよう。
skillのincreaseも、後で思い返そう。
『Bodyの方の俺がいれば、ほぼ防げるはずだと確信がありましたからね。では、殺し合いを続けましょうか』
そう言いながら、何かを咀嚼するVandalieu。
「ぎ、ギヤアアアアアア!?」
その瞬間、Hajime Fitunに更なる激痛が走る。その痛みと、Lost感、そして先程Vandalieuが言った言葉が彼に何が起きているのかを悟らせる。
(こ、こいつ、喰っているのか!? 俺の目の前で、俺のHeroic spiritの魂を!?)
人情味が薄いFitunでも、思わず言葉を失う行為だった。だが、Fitunも彼のHeroic spirit達もここへは、Vandalieuと殺し合うために来ている。
自分が喰われ、消滅するかもしれない。それを最初から覚悟して……寧ろ、そうでなくては意味が無いと思ってここにきているのだ。
(立ち上がり、痛みに耐えて奴の首を取れ。Bodyの方じゃない、魂の方だ! 【Demon KingのEquipment】なら、魂は砕けなくても深い傷を付けられるはず! 魂の傷はmagicやskillでも癒せない、大chanceだ!
奴が、油断して、悦に入っている内に――)
立ち上がったHajime Fitunは口を開いた。
「い、嫌だ……」
顔色を蒼白にして、lipsを震わせてか細い声を出しながら、Vandalieuに向かってでは無く、森に向かって足を向ける。
(な、何だ!? おい、待てっ、どう言う事だ!?)
「嫌だっ、死にたくない! 魂を砕かれるなんて真っ平だ! 僕は……僕は嫌だぁぁぁ!」
(か、body partが、Hajimeのbody partが俺の言う事を聞かない!?)
screechをあげながらHajime Fitunが、Vandalieuから逃げるために走り出す。いや、既に彼はHajime Fitunとは呼べないconditionにあった。
(止まれぇ! そんなidiotみたいな真似を、無理矢理徴兵されてきた、cowardな民兵みたいな真似をするな! そんなんで、逃げ切れる相手じゃない!
最後まで戦え! どうせ、お前のBodyはDecayするんだぞ!?)
『God of Thunderclouds』Fitunは、HajimeのBodyの中に存在している。しかし、Bodyの主導権を握ってはいない。
「五月蠅い、Shut Upぇ! もうお前なんかの言う事を聞くか! 何が僕をHeroに、Championにしてやるだ! 言う事を聞いた結果、あいつを倒してHeroになるどころか、ボロボロじゃないか!」
Bodyの主導権は、Hajimeに戻っていた。受肉させたHeroic spirit達と違い、Hajimeは廃人にはされておらず、Fitunの魂に飲み込まれるような形で一体化していた。
そしてHajimeのBodyやskill、AbilityをFitunが自分のものとして操っていたのだ。
だが、Vandalieuとの戦闘で何度も魂を傷つけられ、【Karma Curse】による痛みでMental力を削られたFitunは、Hajimeの魂を抑えて主導権を握り続ける事が出来なくなったのだ。
Fitunに唆され人が変わったようになっていたHajimeだが、今は元のcowardさが戻ってきている。無防備な背中を晒し、しかし電流での支配は維持したままMurakamiとAkiraを引き連れ逃げようとする。
「当然、逃がす訳には行きませんよねぇ。裏切り者の尻軽って言ってたの、聞こえましたし」
「そうね……Vandalieu、蜃気楼でお願い」
『はいはい。よろしく、Darock』
だが、当然追手がかかる。Hajimeの目の前に、突然Kanakoが出現する。
「ひぃぃぃい!? 寄るなっ、近づくな、クソ女ぁぁぁ!」
(幻だ! 足を止めるな!)
traumaを刺激されたHajimeは、Fitunの声を無視して反射的に足を止め、Murakamiに【Death Scythe】でKanakoの動きを止めさせ、Demon KingのEquipmentをthrust出す。
しかし、眼の前に現れたそれは【Dead Spirit Magic】による幻だった。【Death Scythe】も、幻は止める事は出来ない。
(だから言っただろうが!)
動揺して動きを止めたHajimeの背後で、何かが爆発したような音がして、温かい液体が彼のbody partにかかる。
「ヒィ!?」
振り返った彼が見たのは、胸からVandalieuの腕を生やしたAkiraの姿だった。
「俺はお前に恨みは無いが……厄介なんだ。付く方を間違えたと思って、諦めろ」
Dougが、先程Vandalieuが切断した腕を、【Hecatoncheir】で操って飛び道具として使用したのである。当然、Akiraの魂は喰われている。
そして、Akiraのbloodと肉片を浴びて赤く染まったHajimeが思わず尻餅を突く。その前に、Samが出現した。
『ハッハァ! あなたには潰れたカエルのような死に-samaが、きっとお似合いですぞぉ!』
Samは度重なる修行の結果、Slightlyだがその目的を達成していた。彼は、通常spaceと、通常spaceとは異なる位相の異spaceを自由に走行する事が出来るようになったのだ。
だから、実際には突然Hajimeの前に現れたのではなく、異spaceを走り、Hajimeの前で通常spaceに戻ったというのがaccurateな事実である。
だが、Hajimeにとっては突然現れた事に変わりは無い。
「ひ! と、止めろ!」
(テメェが避けろ!)
反射的にMurakamiに、【Death Scythe】でSamを止めさせるHajime。
『今です! Chargeぃっ!』
『お前の魂もBocchanのご飯です!』
止まった反動を利用して、carriageにいたSalireとRitaが飛び出して来る。彼女達もSamと同じように【Death Scythe】で動きを止めようとするが……止まらない。
二人はLiving Armorだ。腕を止められれば腕を置いて、頭を止められれば頭を置いて、バラバラになりながら止まらずMurakamiに襲い掛かる。
Weapon Equipmentも止められたが……Rank12の二人の拳と蹴りはそれだけで凶器足りえる。
「ごびゅっ!」
Murakamiは二人に殴られ、Akiraと同じようにDougが操るVandalieuの腕に魂を喰われて倒れた。
『では、退避!』
そしてSamが娘達を再びcarriageに収納し、異spaceを走り去る。
助かったのか。Hajimeがそう思った時、背後から声がかかった。
『あなたで、最後ね?』
『グルルゥ』
驚いて振り返った先に居たのは、胸に穴が空いたAkiraと……彼の死体を半ば包むようにしてInfestしているBerserk、そして肉の一部を変化させて顔を創ったIsis。そして、Vandalieuだった。
「あ、ああああああっ!?」
『前世の縁もあるから、止めは私が差しましょうか。何か、言い残す事はある?』
「ま、待ってくれっ、食わないでくれっ!」
(止めろっ、見苦しい真似を……俺は、俺はこんな最期を迎えたくて殺し合いをしていた訳じゃねぇ!)
「誤解だっ! 僕はこの、Fitunって神に騙されて、操られていただけなんだ! 僕の意思じゃない、本当だ、信じてくれ!」
Vandalieuは、Fitunの支配から自由になったHajimeに対して、無感動に答えた。
「それは嘘でしょう。途中からでも、抵抗しようと思えば、抵抗できたはずですよ。それに、少なくとも『俺』から『僕』になった後の行動は、あなたのimpactの方が大きかったはずです」
「っ!?」
言い当てられたHajimeが、顔を引き攣らせる。Vandalieuはそれを眺めながら、Berserkに【Bloodshed Enhancement】の術をかけ、Akiraの死体の手に、Hajimeが落としたDemon KingのEquipmentを握らせ、【Deadly Poison】の術をかける。
「Memoryもしっかりあるようですね」
「ま、待ってくれっ、僕は悪く――」
「悪いから魂を喰う訳ではありません。また殺しに来られると迷惑だから、邪魔だから、喰う。それだけです」
『もう良いみたいよ』
Berserkに操られたAkiraの腕が、振り下ろされる。horrorのあまり腰が抜けていて、無防備だったHajimeの首は若干の抵抗を示しただけで、切断された。
こうして、『God of Thunderclouds』Fitun最後の戦いは、Hajime Fitunの無-samaな命乞いと、斬首によって終わったのだった。