「Curseだとっ!? ……ハハハハ! Hajimeの知識を持っている俺が、Death-Attribute Magicを使うお前と戦うのに、Curseに備えていないと思っていたのか!?」
毒々しい紫色にLuminescenceするtongueに巻きつかれたHajime Fitunはそう言いながらも、早く自由になるために身を捩った。
『Origin』のある軍事国家の研究所では、当時のVandalieuから搾り取ったdeath attributeのManaを使い、magic itemを研究していた。その中には表に出せない軍事兵器に関する研究も存在した。
Soldierを不死身にする研究だけでは無く、virusや毒物……そしてCurseを兵器として転用するための研究もあった。
しかし、その全てに研究者達は失敗した。彼等は研究者としては一流だった。しかし、真の所有者から奪ったManaを完全に制御する事は出来なかったのだろうと、『Origin』の調査機関は結論付けている。
その調査機関の報告書を目にしたHajimeのMemoryを持つFitunは、「つまり、Vandalieu本人はCurseを扱う事が可能である」とconjectureする事が出来た。
そのため、今日の戦いに備えてCurseに対する準備を最大限可能な限り整えてある。自身が鋳造したOrichalcumで護符を作るだけではなく、templeの宝物庫に納められていた強力な魔除けも身に着けて来た。
だからCurseに対する防御に自信はあった。後は、両腕を封じられた今の状況を脱するだけだ。
しかし、Hajime Fitunに巻きついたtongueは中々外れない。ますます強くLuminescenceし、白い煙を上げ始めた。
「あ、ぁぁぁぁぁぁ!? BAKANAっ、俺の護符や魔除けが効果を発しないだと!?」
tongueは急に熱を持ち、彼のbody partを焼く。skinだけではなく、その下の肉にまで呪詛が焼きつけられるのを感じて、彼は怖気を覚えた。
次の瞬間、縄のようにHajime Fitunのbody partに巻きついていたtongueは塵と化して崩れ落ちた。だが、tongueが巻き付いていた部分のskinはどす黒く変色し、ジクジクと染みるような痛みを訴えている。
「て、テメェ――うがっ!?」
再びscimitarを構えてVandalieuにSlashかかろうとしたが、目を見開き、呻き声をあげて右胸を押さえる。まるで、肋boneを何本か折られたような痛みを覚えたのだ。
それを眺めながら、Vandalieuは自分がかけたCurseが効果を発揮した事に満足気に頷いた。
「あなたにかけたCurse、それは至極単純で分かり易いものです。自分の行いによって他人が覚えた痛みが、自分に返ってくる……【Karma Curse】です」
【Whip Tongue Calamity】Jobは、tongueで攻撃した相手にCurseを与える事が出来る。しかし、与えられるCurseの種類は少ない。
Ability Valuesをdecreaseさせるか、five sensesのどれか一つを封じるか、そして今使った【Karma Curse】である。
「他人の痛みだと? 俺の目には、とてもお前がinjureをしているようには見えないがな」
Hajime Fitunは胸を押さえたまま、胡乱気な眼差しでVandalieuを見る。確かに、その-sama子から肋boneが折れているようには見えない。それどころか先程自分で噛み切ったtongueすら再生し終えている。
尋ねられたVandalieuは、こともなげに答えた。
「ここ以外にいるのでしょう。あなたが実行したtacticsのせいで、肋boneが折れた人が」
「っ!? ……俺が原因で起きた事なら、直接俺が手を下した訳ではない痛みまで跳ね返るCurseか!」
【Karma Curse】の厄介さを理解して、Hajime Fitunの顔が強張り、声が引き攣る。
【Karma Curse】は、呪われた対象が直接他人を害した場合だけでは無く、間接的に与えた危害にも反応する。
今回の場合だと、Hajime FitunがCommandingを執るtacticsに参加しているHeroic spirit達や、彼がrunawayさせたDungeonのmonstersが他者を傷つけた場合、その痛みをHajime Fitunも味わう事になるのだ。
(……効果範囲が広い分、時間が経つと解けてしまうのですけどね。何処までが『間接的な被害』なのかも、Curseを受けた当人の認識次第ですし)
このCurseには、そう言った弱点もある。しかし、Hajime FitunがこうしてVandalieuの視界内に存在する間はCurseを維持できる。
『間接的な被害』の範囲も、Hajime Fitunの場合は問題無く機能するだろう。少なくとも、Heroic spirit達を受肉させ、tacticsを考え、実行し、Commandingを執っているのは彼だ。その認識がある限り、Curseの範囲は維持される。
そのHajime Fitunは強張った顔つきのまま、首から下げていた護符やメダリオンに視線を落とし、Curseを解除できないかと試みようとした。
しかしメダリオンは音を立てて割れ、Orichalcum製の護符も何故かどす黒く変色している。
「……なるほど、そりゃあそうだよな。Great Godが十一柱全員揃っていても一方的に追い詰められて、わざわざanother worldからChampionを召喚しなけりゃ、勝ち目も無かったのがDemon Kingだ。その二代目のCurseが、神になって精々五万年と少々程度の俺が作った護符で防げるはずがない」
そう言うと、紐を引き千切って護符を放り捨てる。
こうしている間も、幾つもの痛みがHajime Fitunを襲う。腕が砕かれ、頭を殴られ、脇腹を深く薙がれ、炎で焼かれ、氷で凍てつかされ、体中を刺される。
その痛みによって沸き起こるemotionsを抑えきれず、彼は顔を上げた。
「甘く見ていたぜぇ……こんな都合の良いCurseをかけてくれるなんてなぁ!」
Hajime Fitunの顔には、bloodの臭いが漂ってきそうな狂笑が浮かんでいた。そして、【Karma Curse】について聞いていたはずなのにscimitarを構え直し、躊躇いも無くVandalieuに向かってSlashかかる。
「都合の良いCurse?」
その反応は流石に予想外だったのか、防御の為に掲げた【Demon King's Claws】に変化したclawsが、指の肉ごとOrichalcumの刃に切断される。
その痛みも、Hajime Fitunに返っているはずだが動きに乱れも無く、鋭い攻撃を続ける。
「そうとも! 痛みの大きさで分かる、俺の攻撃でお前がどれ程のDamageを受けているのかが! 俺の部下共がどれくらい戦果を挙げているのか、monstersがまだ全滅していないかどうかが、痛みで知る事が出来る!
今俺が傷つけた指は、お前にとって大きなDamageじゃないって事も分かるぜ! 後、お前相手に小技は意味が無いのも良く分かった! 最後の奥の手を見せてやる!」
楽しそうに笑いながら、Hajime Fitunは叫んだ。
「【God form】!」
Godsしい。普通ならそう評されるだろう輝きが、Hajime Fitunから放たれる。その名称と、Heroic spirit達がActivateさせていた【Heroic Spirit form】からconjectureすると、どんなskillなのかは想像に難くない。
そして輝きを纏い、圧倒的なオーラを放つようになったHajime Fitunが、より鋭くなった剣捌きでVandalieuに襲い掛かる。
「後ろの町と、そこでしか生きられないクソweak worm共が大事なら、その身で受け止めな、Demon King!」
「痛みでshock死しろ、Evil God (M) Evil God (P)より邪悪な神」
Hajime Fitunが町へ向かって放った斬撃の形の衝撃波を防ぐため、Vandalieuが間に入り、十字に組み合わせた腕で受け止める。blood飛沫が上がるが、【Demon King's nerves】で故意に痛覚を鋭敏にしたVandalieuが覚えた痛みをCurseで返したため、screechをあげたのはHajime Fitunの方だった。
だが、Hajime Fitunの動きは止まらず、screechと狂笑をあげる彼と無言のVandalieuとの戦いは激化していった。
Hajime Fitunの暴挙を知ったMurakami達は、草原が覗ける森で彼らの戦いを見ていた。三人の手には、それぞれ望遠鏡が握られている。
このworldでは、レンズの加工技術が一般には広がっていない。しかし、Nobleや軍と取引する限られた職人には作る事が可能だ。その作品の幾つかを、Murakami達は盗んだのである。
無論、性能では『Earth』や『Origin』の方がずっと上だが……肉眼とは比べものにならない。下手にmagicを使えばVandalieuの【Abyss】によって感知されてしまう事を考えれば、これ以上ない道具だ。
それで戦況を観察していた【Chronos】のJunpei Murakamiは、Hajime Fitunが激しくLuminescenceした現象を目にして溜め息を吐いた。
「Hajimeの奴、このままだと負けるな」
Murakamiは、Hajime Fitunの敗北を確信したからだ。……前世で陰謀のvice-leader格だったKanakoと部下だったMelissaが、『Transform!』した事に対する呆れではなく。
「何でそう思う? Kanako達じゃないが、明らかに『これからが本当の闘いだ』って感じのPower upじゃないのか?」
「ええ、Akiraが言ったのと似たような事を叫んでいるのが聞こえる。Kanako達じゃないけれど、もしかしたら、押し切れるかもしれない」
同じReincarnatorで元教え子の【Odin】のAkira Hazamadaと、【Sylphid】のMisa Andersonが異を唱えるが、Murakamiの確信は覆らなかった。
「奴の手下が使っている【Heroic Spirit form】と同じか、それよりも強力なskillでも使ったんだろう。どう考えても制限時間付きのPower upだ」
「……確かに、【God form】って、叫んでいるわね」
Misaは、自身のBodyを気体に変化する事が出来る【Sylphid】のAbilityを持つ。そのAbilityを応用して、彼女はbody partの極一部のみ気体に変化させ、象の耳のように大きな空気の膜を作り、それで大気の振動を高精度で感知し離れた場所の音を拾っていた。
それでVandalieuやHajime Fitun、そしてVandalieuの仲間やHajimeの部下達が話している事に聞き耳を立てていた。
Dungeonの中にいるJulianaやBorkus、Warren達の話し声までは流石に拾えないが、MilesとKizelbain等別の戦場で戦っている者達の話し声は聞く事が出来る。
「だったら、【God form】も【Heroic Spirit form】と似たような効果だろう。奴のBodyを動かしているFitunが、受肉した神として力を使うのなら、長時間は持たないはずだ」
「だから、その受肉した神の力ならVandalieuを倒せるんじゃないのか? Fitunって確か生前はlegend的なmercenary兼adventurerだったはずだろ」
Reincarnatorをこのworldに送り込んだ『God of Reincarnation』Rodcorteから、Hajimeのconditionに関する情報を得ていた。そのためAkira達は、『God of Law and Life』Aldaの勢力と協力関係が出来る以前からFitunの情報を集めていた。
Vandalieuに対する戦力として利用できるか、調べるために。
そして約五万年前、戦場で活躍したmercenaryで、戦争が無い時はadventurerとしても活躍していた人物だと知る事が出来た。adventurerとしての活動は当人が小遣い稼ぎの為の副業程度にしか力を入れていなかったため、現在ではあまり伝わっていない。それでもAClassへの昇格の誘いが何度も有ったという話だ。
mercenaryとしてのachievementもAdventurer’s Guildが評価していれば、間違いなくSClassへと至っていただろう。
Evil God (P)のfanaticに乗っ取られていた国や、Vida's FactionのGodsを奉じていた国、Demonの軍勢を従え『新たなDemon King』をself-proclaimedしていたMajin Raceの猛者との戦争で、いずれもGeneral首を上げている。
そのFitunなら、もしかして。そんな期待があった事は、Murakamiも否定しない。
「Akira、これからFitunがVandalieu相手にすぐ押し切れるなら、確かに奴が勝つ確率が高い。だが、俺の目には奴が分の悪い賭けを楽しんでいるようにしか見えない。
確かに、危険が大きいtacticsを完遂させなければならない時はある。俺達の前世の時のように」
『Origin』では『Bravers』に、特にAmemiya Hiroto達のpolicyについて行く事が出来ず、Murakami達はdeath attributeの研究を秘密裏に進める【Avalon】のRokudou Hijiriの誘いに乗った。
『The 8th Guidance』に協力する演技をして潜入し、彼らと『Bravers』の殺し合いを利用して、『The 8th Guidance』のmemberの死体をUnited Statesに売り渡すと言う、危険の大きいtacticsを実行した。
結果、最初から捨て石にするはずだった【Marionette】や【Death Scythe】以外にも、部下を半分失った。しかも、Rokudou Hijiriの裏切りに遭い結果的に自分も含めて全員死亡してしまった。
その最終結果は雇い主が裏切り者だったからという、どうしようもないものだったからともかくとしても、大きなreturnを得るためには、大きなriskを侵す必要があるのは確かだ。
特にFitunの場合、Murakami達同-sama Vandalieuを倒さなければ後が無い以上、勝ち目が小さくなっても全力を振り絞る以外の選択肢は無い。
今の戦況は、正にそれだ。
「……つまり、俺達も介入しなきゃダメって事か。クソ、Hajimeの奴がVandalieuを殺せるなら、それが一番楽だったってのに」
Reincarnator達は、Vandalieuを殺す事に成功すればRodcorteから報酬を約束されている。未来の『Earth』か、『Earth』に似た文明の発達したworldで、恵まれた環境に生まれ変わる事が出来る。その際、望めばスポーツや芸術に関するaptitudeだって貰う事が出来るだろう。
そして、その報酬はVandalieuを殺したReincarnatorだけでは無く、Reincarnator全員に等しく与えられる。Vandalieu側に寝返ったKanako Tsuchiya達や、協力する意思の無い【Mage Masher】のAsagi・Minami達には無いだろうが。
これはMurakamiがRodcorteにdemandした、Reincarnator同士で足を引っ張らないようにするための措置である。
……もっとも、その頃Hajimeは既にFitunに傾倒していたため、RodcorteのOracleが届かなかったので、その措置を知らないのだが。
しかし、Fitunに乗っ取られたconditionのHajimeがVandalieuを殺しても、Murakami達には報酬が与えられる。何の危険も無く報酬を手に出来る、彼等にとって最も都合の良い展開だったのだが……それは諦めなければならないようだ。
「だけど、もしHajimeの方が私達を攻撃して来たらどうするの? いくら神に乗っ取られているといっても、私達は前世で奴を騙して謀殺した側よ。信用するとは思えない」
Misaが、Hajime Fitunが事を起こす前に合流し協力を申し出ようとしなかった理由を、再度主張する。
しかし、Murakamiは、その心配は無いと言った。
「奴にそこまでの余裕は無いさ。それに、Hajimeを動かしているFitunって神は、立場こそ神だが実際の考え方はEvil God (M) Evil God (P)の類だろ。俺達が横やりを入れて勝手に援護しても、断るような高潔さは持っていないだろう」
「なら、Vandalieuを殺すまでは大丈夫か」
そう言ってnod Akira。殺した後の事……VandalieuがUndead Transformationする前にRodcorteが魂を回収し、Demon Kingのsoul fragmentに施されたものと同じsealedを施した後の事は、彼等にとって考えなくてもいいことだ。
Hajime Fitunも【God form】と言うskillをActivateした以上、後はBodyがDecayへ向かうだけであろうし、自分達も全員が生きているとは限らない。
それでも報酬は来世での幸福だ。魂さえ喰われなければ、受け取る事が出来る。
「さて、三度目の人生で鍛え直した力を発揮するとしよう」
用意しておいたOrichalcum製の武具を抜き、Murakami達はそれぞれFamiliar Spiritの宿った指輪を胸に当てて呟いた。
「【Familiar Spirit Advent】」
激戦を繰り広げるのはVandalieuだけでは無く、彼の仲間達も同-samaだった。ただ、中には相性の結果で早々に決着が着きそうな組み合わせもあった。
「【Dark night刃風】!」
両手にscimitarを持ったElfの青年が、countlessのSkeletonを相手に舞うように立ち回っていた。
『おおおぉっ』
人やmonstersのboneで出来た人型が、なす術も無く切断されていく。
しかし、青年の顔に余裕は無かった。
「もっと上Classのpotionを持ってくるべきだったか」
肋boneを折られ、それがまだ回復に至っていないのだ。このままでは、繋がっていない肋boneがlungにthrust刺さって、全力を発揮できなくなる。いや、その前に【Heroic Spirit form】の副作用によってBodyがDecayしてしまうかもしれない。
そう考えた青年は、なら今こそ全力で技を振るおうと決断した。
青年のsignが変わった事を察知したのか、数え切れないほどのSkeletonが彼に向かって殺到した。
『おおおおおん!』
四足獣のSkeletonが、素早く駆け回って青年に毒のBreathを吐きかけた。
『おお~ん!』
Spirit Formの翼を持つSkeletonが、空からboneやSpirit Formのfeatherを青年に向かってProjectile Fireする。
『おぉぉぉぉぉぉ!』
そしてSkeletonと評すよりboneを出鱈目に組み合わせたBone Golemと評すべき巨体が、青年に襲い掛かって行く。
その動きの速さと力強さは、通常のSkeletonのものではない。数が互角だったとしても、DClass adventurer程度なら碌な抵抗も出来ず一方的に蹂躙されただろう。
しかし青年のBodyは無名のElfのDClass adventurerだったが、それを動かしているのは『God of Thunderclouds』FitunのHeroic spiritである。
「【Transcend Limits – Magic Sword】! 【True Instant Response】! 我がManaを糧に、星々の煌めきを我が刃に宿-san! 【煌Star Blade】!」
OrichalcumをコーティングしたMagic Swordの性能と自身の反応速度をskillとMartial Artsで引き上げ、更にLight Attributeの付与magicをActivateさせる。
「見せてやろう、我が奥義を! 【Star Blade Dark night大乱舞】!」
Heroic spiritの名は『Star Blade』のChestun。Humanだった頃のFitunの育ての親にして、彼のmercenaryとしての師Artisanだった男である。
数々の武術とmagicを操るが、最も得意としたのは曲刀の二刀流。彼の剣はあまりにも早く、太刀筋すら見えず、刀身が反射する光だけがMemoryに残ると謳われた人物だ。
Chestunが振るう二振りのscimitarは、次々とSkeletonを屠った。硬い頭蓋boneや大腿boneも小枝のように切断し、ばらばらになっていく。
Spirit Formのfeatherだけでは無く、形の無い毒のBreathも切り裂き、千を超えるSkeletonを倒す事に成功した。
その-sama子は、正に無双の活躍と賞賛されるべきものだろう。
『おおおおおおおおおん!』
だが、勝利は得られない。
Chestunは、千を超えるSkeletonを……Fissionを屠った。しかし、数百、数千万のboneで構成される【Bone Pandemonium】であるKnochenにとっては、痛手では無い。
切断されても、boneはboneだ。塵になった訳でも無ければ、消滅した訳でも無い。数が増えて、小さくなっただけ。
それを組みあわせて再びFissionを作るのは、Knochenにとって負担でもなんでもない。
更に、KnochenのFissionの中に黒いboneを持つFissionが混じり始めた。それにもChestunのscimitarが喰い込むが、同時にガギンという鈍い音を響かせる。
黒いbone……【Demon King's bones】の強度に、Orichalcumを表面にコーティングしただけのscimitarが耐えられず刃毀れを起こしたのだ。
「……ここまでか。ククッ、まさか、ここまで質より数の相手とぶつかるとはな」
scimitarの刃毀れ以外にも、既にActivateしていた【-Transcend Limits-】によって酷使された事で、【Heroic Spirit form】によるBodyのDecayは大分進んでいる。
相手がKnochen以外なら、得物が紛い物では無く、生前彼が振るっていたMagic Swordだったら、他のHeroic spirit達と分断されていなければ、また違った結果になったかもしれない。
『おおおおおおおおん!』
だが、Chestunは苦笑いを浮かべたまま、Knochenのboneの群れに飲み込まれていった。
そして本来のBodyの主であるElfの青年の魂を残し、Heroic spiritであるChestunの魂が現れた。咄嗟にKnochenが捕まえようとするが、実体を伴わない魂はそのboneをすり抜けてしまった。
しかし、Chestunの方もKnochenに反撃する事は出来ない。無理矢理とは言え受肉していたので、自力でAdventした場合よりは大分マシだが、それでもDivine Realmに戻らなければ地上に干渉できない程消耗していたからだ。
そのため、Chestunは回復しようとDivine Realmを目指して空へ向かってincreaseした。
しかし、ここは出入り口以外外部とspace的に隔絶されているDungeonの内部だ。地上でAdventした時よりも、Divine Realmに戻るまで時間がかかる。
『やはり、Bodyが破壊されるとDivine Realmに戻ろうとするようだな』
だがそんな声が響くと同時にspaceに裂け目が生じ、内部から出て来た蜘蛛を連想させるArthropod LegsがChestunの魂を捕まえ、そのまま裂け目の中に引きずり込んでしまった。
「回収成功」
「よそ見をするんじゃ、ないよぉっ!」
Humanの女が杖を掲げ、弾速に優れたLight Attributeの攻撃magicと、形を工夫する事で軌道を複雑にし、回避を難しくしたEarth-Attribute MagicをGufadgarnに向かってSustained Fireした。
「【風の連矢】!」
そしてダメ押しに、目視が極めて難しい風の矢を複数放つ術をActivateさせた。どれも一撃のAttack Powerは低いが、Hit Rateに定評のある攻撃magicだ。
しかも、唱えたのはただのMageではなく、Heroic spiritにまで至ったMageだ。当たればただでは済まない。
「しかし、確保し続けるにも限界はある」
だが、Gufadgarnは視線も向けず、確保したChestunをどうするか思案し続けている。
しかし、彼女のbody partに女が放った攻撃magicが到達する事は無かった。その寸前にspaceが揺らめき、countlessの穴が空き攻撃magicを全て呑み込んでしまったのだ。
だが、それに驚く暇は女には無い。彼女の周りのspaceが揺らめいているからだ。
「くっ! 【雷Mana盾】!」
揺らめくspaceに飲み込まれた時と同じくcountlessの穴が生じ、女自身が先程放った攻撃magicが、彼女に向かってTeleportationさせられてくるからだ。
彼女は手の平に生じさせた雷の盾を使い、Mageらしからぬ巧みな体捌きでmagicを防御する。その甲斐あって防ぎきることに成功したが、彼女の目には焦りが浮かび、口からは悔しげな呻き声が洩れていた。
「これでも駄目か……timingも軌道もずらして狙ったのに、全てに合わせて【Teleportation Gate】を、しかも詠唱もせず開くなんて……こんなSpace-Attribute Magicの使い手がいるなんて、聞いてないよ!」
magicと体術をWeapon Equipmentに戦場を渡り歩き、Heroic spiritにまで至った女だったが、目の前のElfのShoujoに見える存在程規格外なspace magicの使い手は見た事が無かった。
いや、Heroic spiritに至った後も含めてだ。少なくとも、五万年以上それ程の使い手は存在していない。
「最終的にはVandalieuに捧げるのだが、忙しそうだ。今召し上がっていただくには、一工夫必要か。
……ああ、まだ存在していたのか」
Gufadgarnは目障りな存在、まるで害虫を見るような視線を女に向けた。
女が見た事が無いのも、当然である。Gufadgarnは迷宮を司るEvil God (M)であり、信仰以外にもDungeonに対して人々が向けられる畏怖やhorrorのemotionsを力にしているのだから。
その力は彼女と同じくDungeonを司っていた『Evil God of Demon Castles』が封じられている現在、Great Godに準ずるほど高まっている。
「この『Storm Mage』Matilda -samaを、雑兵以下の扱いとはね……! どうせGufadgarn 's Divine Protectionか何かを受けているんだろうけれど、侮るんじゃないよ!」
「Evil God (M)の存在は知っているのか」
女、Matildaに対してGufadgarnは、意外そうにそう呟き返した。自分をElfのMageだと勘違いしている事から、もしかしてFitun達は自分の存在を知らないのではないかと思っていたからだ。
しかし、Matildaは眼の前のElfのShoujoが、寄り代に受肉したGufadgarn自身だとは思い至らないらしい。
何故気がつかないのかGufadgarnは不思議に思ったが……それだけ彼女の寄り代のCamouflageが完璧すぎたのである。
Evil God (M) Evil God (P)はDemon King Guduranisに従い、このworldとは物理法則が異なるanother worldから現れた存在だ。そのため、寄り代に受肉した時、そのsignを隠しきるのは難しくなる。
だがGufadgarnはZakkartの望み(失言)に従い、何万年もかけて、「ElfのBishoujoに見える」自分の為の寄り代を創り上げた。そのため、appearanceはcertainly、無意識に放つsignや体臭すらElfと同じになっていた。
彼女の奇妙な言動も、Gufadgarnと直接面識が無い者の目には、Vandalieuへの狂信故だと映るかもしれない。
実際、Matildaもそう思い込んでいた。
「確かに、今まで私はお前に掠り傷の一つも与えていない。舐められるのも仕方ないかもしれないね。だから……逃げさせてもらうよ!」
そしてGufadgarnに対して苛立ち、怒りを露わにしていたはずのMatildaは、何とその場で身を翻すと逃走を試みた。
星明りすら無いDungeonの階層だが、そこかしこでMatildaと同じHeroic spirit達が戦っており、彼等が作った明かりが闇の中からでも見える。それを目印にすれば、合流する事は難しくは無いはずだ。
しかし、幾ら走っても何故かGufadgarnから一定以上離れる事が出来ない。彼女がMatildaの逃走を妨害するために、spaceを歪めているのだ。
(かかった!)
だが、それがMatildaの狙いだった。彼女の狙いは、Gufadgarnに少しでもmagicを使わせる事だったのだ。
(どの道そろそろBodyの時間切れだ。隊長には悪いけど、このElfの首Classでenduranceして貰うよ!)
BodyのDecayが近づいていたMatildaは、口の中で唱えていた呪文をActivateさせて、素早くbody partを反転させた。
「【風空走】! 【Thunder God槍付与】!」
Wind-Attribute Magicでmidairを走り、杖に雷の穂先を創りだして槍とする。そして【-Transcend Limits-】等の使えるだけのskillをActivateし、一瞬でGufadgarnを間合いに納める。
「【嵐神万槍撃】! 私を舐めたツケを払いな!」
そして必殺のMartial Artsを放つ。Matildaが生前『Storm Mage』と言われたのは、magicと武術を高い水準で使い熟す事が出来たからだった。
「なるほど、私の処理速度の限界を超える速さと数で攻撃するつもりか。正攻法だが、それ故に防ぎにくい戦法だな」
Matildaの狙いに気がついたGufadgarnだったが、彼女はそれまでと同じようにspaceを操作し、雷の穂先を彼女に返していく。
「だが、言わせてもらえば、私はお前を舐めた訳ではない」
Champion Zakkartは、そうしたarroganceを嫌っていた。だから、Gufadgarnは明らかに自分よりweak存在と戦う時も、彼女なりの方法で敬意を示して相手をするように努力している。
敬意を示すに足る相手に対しては。
「あああああああ!!」
雷のように鋭いthrustを連続で放つMatilda。Gufadgarnが開いた【Teleportation Gate】でそのthrustを自身に返されても、紙一重で回避しながら【嵐神万槍撃】を放ち続ける。
その速く、巧みな槍捌きは確かにGufadgarnの処理速度を超え、【Teleportation Gate】を開くのが間に合わずthrustの幾つかが彼女のbody partに届いた。
「ただ、私にとって貴-samaは敬意を払うに値しない存在だと言うだけだ」
他人のBodyと命を、さも自分のもののように扱って戦うMatilda達Heroic spirit。彼らの目論み通りVandalieuを倒した場合は、自分達が出した被害を全てVandalieuに被せるのか、それとも本来のBodyの持ち主のせいにするのか。
そこまでは、Gufadgarnも知らない。
だが、「殺し合いをしよう」等と口にしながら、riskを全て他者に負わせるその戦法は、Gufadgarnの目には酷く醜悪に映った。
彼女達が向かったのが非戦闘員のいるMoksiの町ではなく、魂を喰らう事が出来るVandalieuだったら評価したのだが。
「故に、戦うつもりは無く、body partが自壊するまで待とうと思っていた」
雷の穂先で貫かれたまま、Gufadgarnは愕然としているMatildaを眺めた。
「お、お前……Humanじゃ……生き物じゃないのか?」
Matildaの槍は、首、胸部、solar plexus。人体の急所を貫き、今も右目を焼き貫いている。だが、Gufadgarnは平然とした-sama子で話し続けている。
「しかし、今気がついたが、それでは貴-samaのBodyの本来の持ち主が『哀れ』なのかもしれない。Bodyを乗っ取られたまま、介錯もされず死ぬまで放置されるのは、きっと『非道』なのだろう。
なので、既に遅いかもしれないが今すぐ――」
上下左右、三百六十度、Matildaを円形に囲む形でspaceが揺らめき、数え切れないほど小さな【Teleportation Gate】が開く。
「ひっ!?」
「そのBodyから引きずり出す」
小さな【Teleportation Gate】全てから、蜘蛛に似たclawsが生えたArthropod Legsが現れ、Matildaを襲う。
引き攣ったscreechをあげながら、Matildaはそれを、穂先が消えた杖とmagicで防ごうとするが、既にbody partのDecayが始まっている上に、【嵐神万槍撃】で全力を発揮した直後だ。
whole bodyを刺され、Bodyに宿り続ける事が不可能になったMatildaの魂が現れたが、やはり即座にGufadgarnによって回収され、囚われてしまった。
「さて、この死体と傷ついた霊も回収しなければならないが……他の戦況も動いているようだ。Heroic spiritの魂を回収し、timingを見てVandalieuに捧げなければ」
『Storm Mage』Matildaを屠ったGufadgarnだが、彼女は寄り代の傷を再生させてもその場を動く事は無い。彼女はDivine Realmに帰ろうとするHeroic spiritの魂の捕獲等、やるべき事が幾つもあるのだ。
――――――――――――――――――――――――――
・Name: Hajime Fitun
・Race: Human
・Age: 2age(appearanceは17age)
・Title: 【Reincarnator】 【War God】 【God of Thunderclouds】
・Job: God's puppet
・Level: 100
・Job History: Warrior、Wind-Attribute Mage、Magic Sword User、Berserker、Dual Sword Warrior、Assassin、Dark Fighter、Thunder Blade Warrior、Murder Swordsman、One Nearest God
・Ability Values
・Vitality: 104,705
・Mana: 12,561
・Strength: 10,270
・Agility :21,072
・Endurance :18,939
・Intelligence :1,320
・Passive skills
Abnormal Condition Resistance:5Lv
Death Attribute Resistance:5Lv
Wind Attribute Resistance:5Lv
All Ability Values Enlarged (3):Voice of God : Small
Murder Healing:1Lv
Dual Sword weapon equipped, then Attack Power Augmented (2) : Large
Mental Corruption:10Lv
Rapid Healing:10Lv
Automatic Mana Recovery:6Lv
Intuition:5Lv
・Active skills
Dual Sword Thunderclap Technique:3Lv
Thunder God magic:2Lv
Mana Control:10Lv
Archery:6Lv
Dagger Technique:8Lv
Unarmed Fighting Technique:9Lv
Throwing Technique:5Lv
-Transcend Limits-:1Lv
Silent Steps:7Lv
Lockpicking:5Lv
Trap:6Lv
Surgery:1Lv
Survival:3Lv
Armor Technique:9Lv
Transcend Limits – Magic Sword:2Lv
Coordination:1Lv
Assassination Technique:7Lv
Assassin Combat Technique:5Lv
Dismantling:3Lv
Chant Revocation:5Lv
Light-Attribute Magic:4Lv
・Unique skill
Marionette:10Lv
Rodcorte’s Divine Protection
Fitun 's Divine Protection
Target Radar
God form
・Status Effect
Fusion
●Job解説:God's puppet
神の人形である事を表すJob。Familiar Spirit Advent系のskillに補正がかかる。……基本的に、Evil God (M)やEvil God (P)に魂を売り渡し、Bodyを捧げ寄り代になったHumanのfanaticが就くJobであり、真っ当な神を信仰する、通常のbelieverなら就く事は無いJobである。
Reincarnator Inui・Hajime。本来は【Gungnir】のKanata等と同じ程度の力しかなかったが、Fitunの指示に従いEnhanced (1)される事で、Adventurer’s GuildではAClassに相当する実力を身に付けている。
本来の彼はphysical battleや銃撃戦よりも、【Marionette】の力を多用して暗躍する事を得意としていたが、FitunによってSword TechniqueやWind-Attribute Magic等をSuperior SkillにAwakeningさせられ、自ら前線に出て戦うBattle Junkie向きの力を獲得した。
その育成policyはHajimeの素質をあまり考慮しておらず、目的はBodyを乗っ取った時の事を考えて生前の彼にHajimeを近づけようとするもの。
そのpolicyと約二年と言う時間の無さが祟って、所々歪なStatusになっている。Ability ValuesのMana、そして特にIntelligenceが低いのは、Hajimeでは無くFitunがManaの消費、そして思考を行っているため。
考えようによっては神のManaを手に入れ、思考も協力して行っているとも言えるが……実際にはGordon・BobbyたちよりもBodyと魂を乗っ取られているだけである。
また、Sword Technique以外の武術がSuperior SkillにAwakeningしていなかったり、No-Attribute Magicを覚えていなかったり、Awakening済みのskillもlevelが低い等、skill面でも偏りがある。
【Mental Corruption】が10levelなのも、Bodyを乗っ取られた結果だ。
Rodcorteから与えられた、「任意のActive skills」は、習得が難しい【Chant Revocation】skillに割り振られている。
Enhanced (1)の結果、Hajime単体では発狂していて使い物にならなくなったが、FitunがBodyを動かし生前の自分の実力を発揮するためには及第点な水準に達している。(Fitunの経験で、Hajimeの低いskill levelを補っているcondition)
しかし【Rapid Healing】等通常ならHumanが獲得するのは難しいskillの獲得の為、命をすり減らすような訓練を重ねてきたため、【God form】skillを使用しなくても寿命がすり減っている。