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Chapter 236: 大事なのは魂

 VandalieuGyubarzoの杖を出した瞬間、Hajime Fitunだけでは無くGordonBobbyを含めたHeroic spirit全員が危険を察知した。

 何故なら、今まで杖を使っていなかったVandalieuが態々杖を取り出したのだ。警戒しない訳が無い。


「【Hollow Bullet】、【Death Bullet】」

 Melissaが【Aegis】のBarrierを解除するのと同時Vandalieumagicを放つ。見た目はただの【Mana Bullet】だが、実際には高密度のManaが凝縮された【Hollow King Magic】の【Hollow Bullet】が連続で放たれ、直前までGordonBobby達が放っていたMartial Artsや投擲Weapon Equipmentmagicを消し飛ばす。


「受けるなっ! 死ぬ気で避けろ!」

 Hajime Fitunの命令に、【Heroic Spirit form】したGordonBobby達が素早く従う。Giant raceの盾職も、body partを投げ出すようにして回避した。


 握り拳大の黒い【Hollow Bullet】は、軌道上にある全てを削り取りながら森の方へ飛んで行く。そして体勢を崩したHeroic spirit達を狙って、DougMental Powerの拳で狙う。

「【雷獣群推参】!」

「ちっ、させるか!」

 だがHajime Fitunが雷で出来た獣の群れを作り出すと、狙いを獣の群れに変える。【Marionette】のAbilityを使われる事を警戒しているためだ。


 基本的にReincarnatorCheat Abilityは同じReincarnatorには効果が薄い。更にRodcorteによって、【Chronos】や【Mage Masher】、【Venus】等のCheat Abilityは、Vandalieu以外のReincarnatorには効かないよう調整を施されている。

 しかしAbilityによっては通常よりも効果を発揮し難い程度にしか抑えられていない場合もある。


 それにHajimereincarnationしてから二年以上が過ぎている。彼が、どれほど成長しているか分かったものではない。実際、『Origin』には存在しなかったmagicを唱えている。何か、裏技を用意しているかもしれない。


 完全に操られる事は無いだろうが、暫くbody partと思考を麻痺させる事ぐらいは出来るかもしれない。戦闘中にそんな事をされたら致命的だ。念のため、Mental Powerで叩き潰しておくべきだ。

「【Super Instant Response】! イイイイイクゼェ!」

 そうDougが判断するのを分かっていたように、Hajime Fitunは自身が作り出した獣の群れに続いて、突っ込んできた。


「な、何だと!?」

Atlasっ! 肝心なところでcowardになる癖はそのままか!?」

 Hajimeがいる事で、DougMental Powerが緩む。獣の半数はそれでも雷を弾かせて消えたが、残り半数とHajimeがそのまま突っ込んでくる。


bastard! その名で呼ぶんじゃねぇ!」

Doug、あなたはMelissaKanakoの援護を。彼女達へのプレゼントを贈りますから、上に気を付けて」

 『Earth』での名、Shirai Atorasu(しらい・あとらす)を思い出して激高するDougの横を、Vandalieuがすっと動いてHajime Fitunを迎え撃つ。


 その時にはGordonBobbyや『Flame Blade』達も体勢を立て直し、今度は本気でKanakoMelissaKilling Intentを向けている。

「分かった! おらっ、上司の一部っ、前に言われた通り盾に使ってやるから暴れるなよ!」


 プレゼント云々は理解できなかったが、とりあえず上に気を付ければ良いのだろう。そう適当に納得しながら、Kanako達とは違い後回しにされていたIsisを、何とMental Powerで掴み上げた。

「まあ、乱暴ね」

 そして間髪入れず、敵とKanako達の前にthrust出した。


「貴-samaBarrierと俺の槍! どちらが勝るか勝――うげぇ!?」

 MelissaBarrierを、Martial ArtsEnhanced (1)した槍でthrust破ろうとしたGordonBobbyだったが、突然穂先の前に飛び出してきたIsisの姿に、慌てて槍を横に逸らす。

 Isis……つまりLegionの【Counter】を、GordonBobby達は当然聞いていた。牽制目的の攻撃ならin any caseMartial ArtsEnhanced (1)した本気の一撃を【Counter】されたら、堪ったものではない。


 それは何とか防いだGordonBobbyだったが、balanceが崩れ完全に動きが止まってしまう。

「【強酸弾】!」

「【space撃】!」

 そこをKanakoMelissaの攻撃magic、酸の弾とspaceTeleportationして放たれる衝撃波が襲う。


「ぐおおおおおっ!?」

idiotがっ! 考えなしに突っ込むからだ!」

「【氷巨獣推参】! その女に見える肉を殺せぃ!」

 screechを上げて下がるGordonBobbyをそう叱責しながらも、カバーに入る【Flame Blade】の面々。そしてIsisには、Half-ElfMageが作り出した氷で出来たGiantな熊が襲い掛かる。


「なるほど。確かに、そう言う手もあるわね」

 そう、Isisが言い終えたと同時に、氷の巨熊の前足が彼女の首から上を吹き飛ばす。そして一拍置いた後、巨熊の頭部も澄んだ音を立てて砕け散った。


 Half-ElfMageは、Legionの【Counter】をmagicで作り上げた僕に肩代わりさせる方法で回避したのである。

 Legion main bodyだったら、氷の巨熊程度にやられはしなかっただろうが、Cloneなら十分だと彼は判断したようだ。


「は、ははっ! どうじゃっ、上手く行ったぞ!」

 もっとも、実行した本人も成功すると確信していた訳ではないらしい。Bodyを動かしているHeroic spiritageが高いのか、年寄り臭い口調で勝ち誇ってみせた。


「チッ、一部を倒しただけで偉そうに。だが、これで六対三だ。本来の力を取り戻した俺達に、質と数でも劣るお前等が勝つ見込みは――あぁ?」

 『Flame Blade』のleaderだった男のBodyを乗っ取ったHeroic spiritの言葉は、上から飛んで来たMountain Giantによって途切れた。


 やや離れた所でZombie化しVandalieuに操られたmonsters達が戦っていたのだが、Mountain Giantを放り投げて来たのだ。

 『Flame Blade』達は咄嗟に下がって下敷きになるのを避けた。midairGIANTMartial Artsmagicで粉砕する事も可能だったが、その隙をDoug達に突かれる事を警戒したのだろう。


「何ですか、あれ!? 下手するとあたし達も下敷きですよ!?」

「彼女へのプレゼントらしいぞ。心当たり無いか?」

「少なくとも、私とKanakoじゃないわね」

 一方Doug達は、Mental Powerで自分と仲間二人を運んで下がっていた。


「でも、援軍はありがたいわね。あいつ等、Heroic Spirit formとかなんとか言って、突然強くなるんだもの」

 Melissaがそう言うと同時に、『GYAOooN!』と言うThunder Dragon Zombie達の咆哮と、Mountain Giant Zombieが立てる足音が響く。


『ヒャハァァァァ! Thunder Breathゥゥゥゥウ!』

 そして黒い雷と化したKimberlyが、Thunder DragonBreathに混じって『Flame Blade』達に向かってChargeしていく。……どうやら、VandalieuCloneが彼にManaを与え続けているようだ。


「【大Magic Steel壁】ぃぃぃがががが!?」

 咄嗟に前に出たGiant raceの盾職がKimberlyを盾で受け止めるが、電撃を防ぎきれず彼のwhole bodysparkが走る。

「ががが! 俺の【Shield Technique】と【Wind Attribute Resistanceskillthrustぬけて痺れさせるだと!? 貴-samaのような強力なThunder Breathがあってたまるかぁぁぁ!」


『遠目にはVariantDragonの吐いたBreathに見えるだろうって事さぁ! ヒヒヒッ! もう一発いくぜえ!』

 そう言いながら、Thunder Dragon Zombieの口元に戻ったKimberlyが再び黒い雷に変化して、『Flame Blade』達を襲う。


「ですねぇ。じゃあ、彼が時間を稼いでいる間に『Transform』と降魔しましょうか」

「出来れば、同郷の奴らにだけはあの姿は見せたくなかったわ。特に、Murakami達が何処かから見ていると思うと、気が重いわね。降魔だけじゃ……ダメよね」

「気にすんなって。今頃、他の所でもTransformしている奴は大勢いるはずだから。それに、この距離ならからは殆ど見えないって」


 何故かウキウキとした-sama子のKanakoに対して、Melissaは渋い顔をしてTransform杖を取り出す。そして、Dougの言葉にStage debutよりはマシかと諦め、「Transform」と言った。



 一方、Vandalieuは突っ込んできたHajimeに対して(意外だな)と若干の驚きを覚えた。

 『Earth』の同学年の学生達との関係が希薄だった彼にとって、Inui Hajimeに関するMemoryはほぼ無い。だが、LegionKanako達から聞いていた彼の性格と技能からconjectureすると、ある程度距離を保っての中距離戦を選ぶのではないかと思ったからだ。


 だが、驚愕で動きを鈍らせるほど意外と言う訳ではない。

「【Death Bullet】」

 黒い胡桃大の、触れた存在のVitalityを奪う【Death-Attribute Magic】を放って迎撃する。だが、それをHajime Fitunは足を止めずに、避けて見せた。


「はっはぁっ! 挨拶代わりのつもりか? だったらこれを食らいな!」

 雷の獣ではなく、電撃を付与したknifeを鞘から抜いて投擲するHajime Fitun。【Marionette】を警戒するべきなら、Barrierで防ぐか避けるかするべきだろう。


「貧相な挨拶ですね」

 しかし、電撃を帯びたknifeVandalieuは伸ばしたclawsの一振りで弾いた。【Marionette】が効果を及ぼしたsignは無い。


「それは悪かったな。だが、お前に俺の【Marionette】が効かないと確認したかった!」

 VandalieuDark Elfを母に持つDhampirだ。【Magic Resistance】や【Abnormal Condition Resistanceskillを生まれつき持っている。


 「特殊Abilityで他人にBodyを操られる」と言うStatus Effectが、効くとはHajime Fitunも思っていない。


「だが、【Marionette】は他人を操るだけのチンケなAbilityじゃ無いって事を……教えてやる!」

 次の瞬間、まるで瞬間移動したかのようにHajimeの姿はVandalieuのすぐ前にあった。

「【Super Instant Response】」

 一瞬で懐に入って来た敵に、Vandalieuは冷静に【Armor Technique】のMartial ArtsActivateさせながら、Gyubarzoの杖を大降りに振るった。一撃でCClass adventurer程度なら撲殺できる一撃だが、Hajime Fitunはこれも回避してしまう。


 だが、それは計算通り。技の無い力任せの攻撃が、当たるとは思っていない。回避したHajimeに対して、攻撃を続ける。

「【槍蹴り】」

 槍のthrustのように鋭い蹴りを放ちながら、同時に杖を持っていない方の手で袖に仕込んであるクナイを投擲し、口では強力なCorrosion毒の唾を吐く。


 並の達人ならVandalieuが口にしたMartial Artsの名に意識を奪われて、クナイか唾を受けてしまうだろう。

「チィ! 人目を気にしてこの汚さとは、見上げたもんだ!」

 だが、Hajime Fitunは蹴りだけでは無く、クナイや唾も回避した。地面に伏せると言う方法で。


「だが、この距離でこいつ等からは逃げらねえ!」

 そのHajime Fitunの背を飛び越えて、残っていた雷の獣達が襲い掛かってくる。Vandalieuは、反射的に【Magic Absorption Barrier】を張る。


 Barrierに飲み込まれた、雷の獣達は成す術も無く消えていく。しかし Hajime Fitunはそれに動揺もせず、地面に伏せた事で曲がった膝を思いっ切り伸ばし、背中の鞘に保持していた二振りの曲刀を抜いた。

「【双fangs】! 【Million Slashes】!」

「【爪壁】、【千獣爪】」

 Barrierthrust抜ける二振りの曲刀……scimitarを、Vandalieuは左の杖と右手のclawsで受け止める。続けて、Hajime Fitunが放ったcountlessの斬撃は、同じくclawscountlessの攻撃によって対応する。


 黒いBarrierが切り裂かれ、杖とclawsscimitarとぶつかり合い、bloodが迸る。

「対Manaだけで、対物理攻撃用のBarriernoneか!? 動きが止まったお前を切り刻むつもりだったが、切れたのは手だけか!」

 Vandalieuの指や手をscimitarで傷つけたHajimeが、口の端を笑みの形に釣り上げる。


「俺を殺すつもりなら、Orichalcum製の武具か、Demon KingEquipmentぐらいは準備して来るだろうと予想していましたからね」

 だが、浅い傷は【Rapid Regenerationskillで、数秒とかからず消えた。飛び散ったbloodmagicで毒に変えたが、Hajime Fitunには効いた-sama子は無い。


「御見通しか、鉄に見えるよう幻覚を仕込んでおいたが、無駄だったか」

 Hajime Fitunが持つ二振りのscimitarは、Orichalcum製だった。彼はそれを鉄製だと思わせ、【Impact-Negating Barrier】を張って動きの止まったVandalieuに一泡吹かせるつもりだったのだ。


 Vandalieuには光を屈折させて作る蜃気楼のような幻ならともかく、Mentalimpactを与えて見せる類の幻覚は【Deformed Soul】の効果で、通じない。

 ただ、それは無くても【Demon King Fragment】を使う自分を殺すつもりなら、それぐらいの準備はしてくるだろうと予想していたのも事実だ。


「それで……お前は、何だ? 【Marionette】では無いでしょう?」

 clawsと曲刀の攻防を繰り返しながら、そう確信を込めて尋ねるとHajime Fitunは口元を釣り上げて答えた。

「おいおい、冷たいな。classmateを忘れたか? いや、お前ってclassmateだったか? 違ったか?」

「俺のclassmateに、神はいない」


 誤魔化そうとしたHajime Fitunだったが、そうthrustつけられると真顔になって訊ね返した。

「今、神と言ったな。連れて来た部下共と同じHeroic spiritじゃなく、神だと。いつ気がついた?」

「……」

 Moksiの周りや、を模して作ったDungeonにはVandalieuの使い魔や、Demon King Familiarが配置されている。


 そのためHajime Fitunの部下達が【Heroic Spirit form】するのを見て、彼等の名乗りを聞く事が出来た。そして先程、Giant raceの盾職に【Venus】を仕掛けたKanakoが口にした、妙な手応えもHajime達の正体をconjectureする手がかりになった。

 何より――。


「お前から二つの魂の匂いがします。そのうち一つが……Hihiryushukakaと同じように美味そうに感じる」

 まるで同じ皿にご馳走と、そうでもないCookingの二つが盛り付けられているようだ。そしてVandalieuが美味そうに感じる魂とは、ただのHumanではありえない。


 だというのに、Hajime Fitunへの怒りやKilling Intentが滾る度に「喰いたい」と言う欲望が大きくなる。それで確信に至った。

 濁った瞳の奥で、原始的な欲望が蠢いている。それを理解した時、Hajime Fitunの背筋に震えが走った。


「いいっ、いいぞ! それでこそだ! 『殺し合い』はこうでなくちゃいけ――ねぇ!」

 数万年ぶりに覚える、背筋が凍るようなThrillに『God of ThundercloudsFitunは歓声と共に、口に含んでいた小さなneedleを吹き出す。言葉の途中で口をすぼめ、「ねぇ!」と言いながら吐き出された含みneedleVandalieuの眼に入った。


「一泡吹きなぁ! 【Dark night刃風】!」

 mercenaryではなく主に殺し屋が使う暗器で視界を奪ったHajime Fitunは、【Assassin Combat Techniqueskillを組み合わせたMartial ArtsActivateさせ、月の無いDark nightで振るわれたように視界に映らないHigh-Speed攻撃を仕掛ける。


「お望みなら、吹いてあげましょうか」

 だがVandalieuは【Demon King's Eyeballs】をActivateさせ、額に第三の目を作り、clawsHajime Fitunscimitarを受け止める。

 そして今度は、Vandalieuが何かをHajime Fitunに吐きかける。それを毒だと判断した彼は、【Abnormal Condition Resistanceskillと、magic itemの効果を信じて無視し、攻撃を続行しようとした。


 しかし、吹きかけられたのがぬるりとした液体だと気がつき、「しまった!」と顔を強張らせる。

「【Death Flame Prison】」

 Legionの人格の一つ、Baba Yagaの発火Abilityを再現した【Hell King Magic】。それはVandalieuが口から噴いた【Demon Kingの脂】を糧に、Hajime Fitunを炎で包んだ。


「ぐあああああぁっ!?」

 火達磨になるHajime Fitunと、backfireに焼かれて少し焦げるVandalieu

 しかしVandalieuは熱energyを奪う青白い炎の玉、【Demon Fire】を作ってすぐに自分についた火を消す。


「ただ、泡は出せないので、脂でenduranceしてください」

 そうのたまいながら左右の目に入ったneedleを、伸ばしたtongueで舐め取って吐き捨てる。


「ぁぁぁぁ、『あ』しかあってねぇ! このDemon Kingが!」

 火達磨になったHajime Fitunだったが、怒声をあげながら炎を消す。どうやら、【Wind-Attribute Magic】で周囲の空気から酸素を取り除いて、炎を強引に消したようだ。


「このworldでも物が燃えるには空気中の酸素が必要である事が、実証されましたね」

 Manaの働きからHajime Fitunが何をしたのか察したVandalieuが、そう声をかける。

「暢気な事を言いやがって。Provocationのつもりか?」

 火達磨にされた割には冷静にそう返すHajime Fitunは、殆ど無傷だった。


 彼も、一応Rodcorteから【Death Attribute Resistanceskillを与えられているし、Vandalieuに挑戦する前に-sama々なresistance skillを獲得し、この日の為に用意しておいたmagic itemを装備してきた。生半可なmagicでは、致命傷は受けない。

 尤も、軽い火傷で済んだのはVandalieuが【Death Flame Prison】を、生半可なAttack Powerに抑えたからだが。


 全力でActivateしたら、燃焼する範囲が広すぎるため加減したのである。


「俺を怒らせて時間を稼ぐつもりか? 【Heroic Spirit form】に気がついたという事は、俺の部下共に時間制限がある事も気がついているはず。タイムリミットが来れば、部下同-sama俺も力を失い、後には哀れな廃人が残るだけだと狙っているのか?

 だとしたら、興ざめだから、教えておいてやる。時間稼ぎは無駄だ」


 【Marionette】の力で廃人にしたadventurer達のbody partに受肉したHeroic spirit達は、そのままのconditionではHeroic spirit本来の力を発揮すると数分でBodyDecayしてしまう程度の存在だった。

 しかしFitunの『Trial's Dungeon』の過酷な訓練でHeroic spiritが使うには脆弱過ぎるBodyを鍛えた。更に効果の強さは異なるが、常時Bodyの損傷を回復させるmagic itemを配ってある。


 これで数分程度だったタイムリミットを、十数分以上に引き上げる事に成功した。

 Hajime Fitunが連れて来たGordonBobbyや『Flame Blade』達は、受肉したBodyとの相性が良かったのか、部下の中でも長い時間【Heroic Spirit form】して戦う事が出来るようになった者達だ。


 それでも一時間と保たないが、多少会話する程度なら問題にならない。

 そしてHajime Fitun自身については、【Heroic Spirit form】のようなskillは使っていない。使っているのは……【Marionette】だ。Hajime Fitunは、自分自身のbody partを操っているのである。


 『Origin』でInui Hajimeとして生きていた時は、彼は他人を操る事にしかAbilityを使わなかった。しかしWar GodでもありHumanだった頃は腕利きのmercenaryだったFitunは、【Marionette】で自分自身のBodyを自由自在に操る事を思いついた。

 Fitunは戦場で手柄を上げ続け、その実力と崇拝から神に至った男だ。その戦闘経験は、対人戦に限っても莫大な量になる。


 その経験を百percent活かしてFitunHajimeBodyを操り、Vandalieuと渡り合っているのだ。

 当然、時間制限は無い。

「下手に時間稼ぎなんかしたら、その間に大事なお仲間が俺の部下共にやられ……何のつもりだ、あれは!?」

 その時、Mountain Giantの死体がZombie達によって投げ捨てられて大きな音と土埃が立ち、それを掻き消すように、杖を掲げたKanakoMelissaが「Transform!」と声をあげた。


 Transform杖から液体金属が分離して形を変え、一瞬でKanakoMelissaTransformが完了する。

 動きやすそうなミニskirtだが、RibbonFrillsを多用したKanakoの衣装に対して、Melissaは装飾をやや抑えたタイトなdesignになっている。

 Transform杖を作り始めた当初、magic陣を刻むための面積を確保するというAlchemy的な問題の為、装飾過多にしなければならなかった。それを考えれば格段の技術的進歩である。


「何だ、あれは!? 姿が変わったぞ!」

magic itemだ、奴らの切り札に違いない! 油断するなよ!」

 Transformした二人の姿を目にしたGordonBobbyや『Flame Blade』達が警戒する。ReincarnatorBodyと知識を持つFitun配下のHeroic spiritである彼らだが、流石に『Earth』のサブカルチャーまでは教わっていない。


 多少見た目が奇異でも、驚きは油断や嘲笑では無く、警戒心へと繋がった。


「ふ……ふざけるなぁ! Transformだと!? 殺し合いの最中にゴッコ遊びか!?」

 だがHajimeの知識を持つFitunは、Kanako達が持つTransform杖が何を模しているか理解し、驚きは怒りへと変化してしまった。


 戦いを汚されたとばかりに怒りを露わにするHajime Fitunに、Vandalieuは隙を見出し、飛びかかった。Gyubarzoの杖を背中に差し、両手足のclawsで切り刻もうとする。

(かかった!)

 しかし、それはHajime Fitunの演技だった。


 そして、既に電撃で触れていたVandalieuに対して、【Marionette】をActivateさせる。ただ、Hajime Fitunもそれで彼を操れるとは思っていない。

 万が一操れたとしても、相手はBodyから【Out-of-body Experience】して戦うような人外だ。最初から期待してはいない。


(だがな、この【Marionette】には他の使い方があるのさ。思考を読ませてもらうぜ!)

 【Marionette】でnerveを操るのではなく、nerveに流れる微弱な生体電流を読み、脳で何を考えているのか読む。それがHajime Fitunの切り札の一つだった。


 ReincarnatorであるHajimeの知識と、Wind-Attributeの神であるFitunだからこそできる高等技術である。

(これはmagicで心を直接読む訳じゃねぇ、俺がただ脳とnerveに流れる微量な電気を読みとり、それからconjectureするだけだ! 読lips術の脳波版のようなものだから、resistance skillも無意味! さあ、頭の中身を……何だ、これはっ!?)

 早速飛びかかって来るVandalieuの思考を読むFitunだったが、驚愕して攻撃に反応するのが遅れ、危うく演技が演技では無くなるところだった。


「【千獣双爪】」

「うおおおおっ! 【極・Instant Response】!」

 High-Speedclawsによる連続攻撃を、【極・Instant Response】で反応速度をincreaseさせscimitarで何とか弾きながら、Fitunは冷や汗を浮かべる。


(こいつ、どう言う頭をしてやがる! 一度に複数の事を考えるにしても、限度があるだろうが!)

 手足のclawsを振るい、時折tongueによるthrustである【tongue鋒】も繰り出すVandalieuは、【Group Thought Processingskillによって、同時countlessの思考を行っていた。


 手足の制御だけでは無く、KimberlyへのManaの供給、Dragon Zombie達への命令、Demon King Familiarの制御、周囲への警戒。数え切れない思考の数に、Hajime Fitunはどれを読むべきか咄嗟に判断できなかった。

(だが、分かって来た。これが読むべき思考だ)

 しかし、何度か攻防を繰り返す内に、Hajime Fitunは自分が読むべき思考を特定する事に成功した。


(これだ、この思考を読めばこいつが何をするのか、先が読める!)

 だが、その思考は、『Earth』の医療科学では考えられない程速かった。『Earth』では、Humanの思考速度には限度がある。……nerve細胞のnet workに流れる生体電流の速さを越えて、思考する事は原理上不可能なはずだ。

 それなのにVandalieuの脳に流れる生体電流は、通常の速さとは比べ物にならない速度で動いている。


 『Earth』の科学者ならあり得ないと驚愕して、「何かの間違いだ」と否定するだろう。しかし、ここは『Earth』では無く『Lambda』である。

 magicが存在するだけでは無く、Dragonが空を飛び、GIANTが地上を闊歩し、HumanもSClass adventurerになれば海面を走るようになるworldである。物理法則が異なる以上、『Earth』の科学的な常識に当て嵌まらなくても、おかしくない。


 後の問題はそのHigh-speed Thought Processingを読みとれるかどうかだが、Hajimeには無理でもFitunは雷雲を司るWind-Attributeの神にして、legendmercenaryだ。出来ると言う確信があった。

「くくくっ! 死ねェ! 【-Transcend Limits-】、【Transcend Limits – Magic Sword】! 【双天雷刃】!」

 Hajimebody part AbilityMagic Swordの力を限界まで発揮させ、Superior SkillMartial ArtsActivateする。


「……【Hollow Bullet】、【Impact-Negating Barrier】、【Rotating Tongue Dagger】」

 対してVandalieuは急に全力を出してきたHajime Fitunに驚きながらも、それに合わせるように【-Transcend Limits-】をActivateし、より激しい攻勢に出る。

 しかしVandalieuの攻撃は急にHajime Fitunに通じなくなった。


 clawsの攻撃をscimitarで弾き、受け流していたはずのHajime Fitunが素早く回避して当たらない事が増えた。逆に、Vandalieuが彼のscimitarの攻撃を防御する事の方が増えた。

 このまま攻防が逆転するのは拙いと、不意を突いて隙を作るために【Hollow Bullet】を放ち、薄い【Impact-Negating Barrier】を一瞬だけ張って動きを止めようとし、伸ばしたtongueによるthrustを放つ。


 しかし、その全てにHajime Fitunは対応した。BarrierActivateした瞬間にOrichalcumscimitarで切り裂き、黒い弾丸とtongueは動きを止めず回避した。

「まずは一撃!」

 代わりにVandalieuは、Hajime Fitunscimitarを胴体に受けてしまった。

 初めてDamageらしいDamageを与えたと、喜悦に口元を歪める彼だったが、Vandalieuが服の下に液体金属の鎧を着ていた為に、傷が浅い事に気がつくとclicking tongueをした。


 その間も攻防は続いている。


(Heinzが使っていた【Radiant Life】や、Regenerative Powerを遅延させるmagicは編み出していないらしいのは、幸いでしたね)

 浅い傷口はすぐ再生される。液体金属の鎧の損傷も、斬られた部分が液体に戻り数秒で修復される。

 Hajime Fitunが『Blue-flame Sword』のHeinzのように対death attribute用のmagic等を編み出していないのは、助かった。


(しかし、何故こうも俺の攻撃を読めるのでしょうか? 戦闘経験はあちらが上としても、総合的な実力はそれ程変わらないはず)

 Vandalieuが見たところ、Hajime Fitunの実力は、外聞を気にして抑えているconditionの自分自身より数段上だ。しかし、まるで未来を見ているかのように繰り出す攻撃全てに対応され、防戦一方にされる程の差があるとは思えない。


(なら、何かしているはず。未来を予知するのは瞳の【Gazer】だから違うとして……俺が何をするのか、思考を読んでいるとか?)

 【Marionette】は他人を操るAbilityだ。その応用で、他人の思考を読みとる事が可能かもしれない。


(では、試してみましょう。……杖よ)

『ギギギ!』

 Vandalieuが背中に差しているGyubarzoの杖。その半魚人の頭蓋boneを連想させる不気味な杖頭が、奇怪な音を立てた。


 そして、杖頭のchinが「ガクン」と開き、中から怪光線が放たれる。VandalieuGyubarzoの杖に、【Demon King's Eyeballs】と【Demon King's Luminescent organs】を仕込んでいたのだ。

 手に装備していない杖からの怪光線による射撃なんて、予想できるはずがない。


 だが、Hajime Fitunは「クソ!」と罵りながら回避した。それを見てVandalieuは、彼が自分の思考を読んでいる事を確信する。

 Hajime Fitunも、Vandalieuが気づいた事を彼自身の思考から知るが、「だからどうした」とも同時に考えていた。


 Humanは脳やnerveを使わずには思考する事は出来ず、magicを使いbody partを動かして戦うには脳が必要不可欠。

 しかし、これでVandalieuが外聞の維持やへの被害が及ぶことを防ぐ事を放棄し、よりDemon Kingらしく全力を出す可能性が出て来た。そうなる前に勝負をつけようと、Hajime Fitunは必殺の一撃を繰り出そうとして――

「ん? な、何だ、うがああっ!?」

 脇腹にVandalieuclawsを受け、肉を大きく抉られた。


 もう少し傷が深ければ、鎧が高Rankmonstersの皮で出来ていなければ内臓まで傷が達していたかもしれない。

 しかしHajime FitunはそのDamageよりも大きな衝撃を受けた。

 突然Vandalieuの思考が読めなくなったのだ。


 そんなBAKANAと、思わず驚愕と動揺で動きを鈍らせたFitunに対し、Vandalieuはゴキボキと手足の関節を外す。

「【鞭打爪】」

 そして、【Whip Technique】と【Unarmed Fighting Technique】を組み合わせた攻撃を放つ。関節が外れて伸びるようになったVandalieuの手足がHigh-Speedで閃き、Hajime Fitunを襲う。


「くっ、くおおおっ!? どう言う事だ!? てめぇっ、どうやって俺の 【Marionette】を防いだ!?」

 複雑怪奇な軌道で襲い来るVandalieuclawsに対応できず、Hajime Fitunは瞬く間にwhole bodybloodまみれになった。まだ致命傷は負っていないが、それは彼が辛うじて首等の急所を守る事に成功しているからだ。

 何とか立て直さなければならない。そのためには、思考を読まなければならないと【Marionette】の使用に意識を割くと、その分防御が疎かになる。


 しかし、その甲斐あってHajime FitunVandalieuが何をしたのか分かった。

「貴-sama……脳を使っていないのか!? monsterもたいがいにしろよ、Demon King!」

 体内に脳の役割を果たす別の器官があるのか、それとも第三者の手によって一瞬で幻覚やGolemに入れ替わったのかと考え、目の前のVandalieuを【Marionette】で調べた彼は気がついた。


 自分がVandalieuの思考が読めなくなったのではなく、Vandalieuの脳が活動を停止したから一切の思考をしていないだけだと。


「人をidiotみたいに言うな」

 脳を使っていないはずのVandalieuは、そう言いながら、【Death Flame Prison】を唱え、Hajime Fitun自身のbloodを燃焼させる。

 screechを耐えながら、以前と同じ方法で火を消し、懐にendureばせたpotionを飲んで回復するHajime Fitun

 彼は脳を使わず喋り、magicを行使するVandalieuhorrorの眼差しを向けた。


「ただ、脳を使わず魂と霊で直接body partを動かしているだけなのに、そんな目で見られるのは心外ですね」

 しかしVandalieuからしてみると何の事は無い。魂と霊だけでbody partを操作しているだけだった。

 『Origin』でBodyの自由を奪われ、長期間霊と過ごした事。そしてUndead Transformationした経験から、Vandalieuは、特に意識せず脳を使わずに思考する事が以前から可能だった。


 だから【Out-of-body Experience】をして霊の頭部を分裂させて増やす事で、思考Ability2x Augment Multiplierさせるなんて真似も出来たのだ。

 Vandalieuにとって脳とは、重要だが唯一の重要器官ではなく、魂の補助器官でしかない。

(まあ、流石に完全に機能を止めると、いろいろ不都合がありますが。……呼吸や鼓動を意識して行わないといけないので、意識を失ったら死にますし)

 なので、好んでやりたい事ではないのだが。


「【Marionette】では、魂や霊に干渉する事は不可能なようですね。……【Whip Tongue】」

 口から伸ばしたtongueを、鞭のようにしならせてHajime Fitunを狙うVandalieu。肉の鞭と化したtongueは、彼の腕を打ち、ぐるぐると巻きついた。

「まだっ、まだ負けた訳じゃねぇ!」

 だが、Hajime Fitunは巻きついたtongueを外そうとはせず、逆にもう片方の腕で掴んで、Vandalieuを引き寄せようとした。


 鞭と違いtongueなら引っ張られても手放す事は出来ないだろうと考えたのだろう。そして不stabilityな体勢のVandalieuの頭部に、scimitarを叩きつけるつもりなのだ。

 しかし、これは悪手であった。Hajimeはともかく、War GodであるFitunがそれに気がつかなかったのは、まだ衝撃と動揺で冷静さを取り戻していなかったからでもあるが、迂闊だった。


「っ!?」

 Hajime Fitunが引っ張るだけVandalieutongueは伸び続けた。そして、Vandalieuは特に躊躇わず、口を閉じて十分な長さになったtongueを噛み切った。

 自由になったtongueは、肉の鞭からヘビと化しHajime Fitunbody partに巻きついていく。


「う、うおおおお!? また【Death Flame Prison】か!? 無駄だ、何度でも俺のmagicで炎を消して――」

「いえ、鞭のようなtongueで、禍々しいCurseを成します」

 そうVandalieuが言い終えた瞬間、Hajime Fitunに巻きついたtongueが毒々しい色にLuminescenceを始めた。




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 Skill explanation:Assassin Combat Technique


 【Assassination Technique】と【Unarmed Fighting Technique】、【Dagger Technique】等を組み合わせて放たれる、対人に特化したskillHumanを対象に攻撃するには効果が高く、専用のMartial Artsも存在するが、その分body partの構造が異なる獣型や竜種、Slime等のmonstersや、内臓やblood vesselが存在しないGolemや植物型のmonstersに用いるには、向かない。


 そのためadventurerよりもmercenaryや、Assassinなどが獲得するskillである。

 ただ、亜人型のmonstersには効果的であるため、adventurerでも獲得している者は一定数存在する。


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