monstersのrunaway。それは『Lambda』worldにおいて、地震や津波よりも恐れられている災害である。
Dungeonで増え過ぎたmonstersが外部に放出される現象で、その際monsters達は通常時よりも凶暴に、そしてHumanを害するというInstinctに忠実になる。
そのため、近くにHumanが存在する限りmonsters同士で争う事はほぼ無くなり、異なるraceがさながら一つの群れのようになって人里に向かって押し寄せるのだ。
runawayが起こるDungeonの等Classによっては、村や町だけでは無く、国が亡びる事もある。
それだけに、このworldの人々はmonstersのrunawayに対して古来より警戒してきた。Dungeonのmonstersを間引くためにadventurerに依頼し、同時に研究を重ねてきた。
その結果、Dungeonの等Classが高くなるにつれてrunawayが起きるまでの期間は長くなる事等が分かった。そのため現在ではmonstersのrunawayは滅多に起きていない。
だからあり得ないはずなのだ。何の前触れも無くmonstersのrunawayが起きるなんて。
「何でだよっ!? どうしてDragonやらGIANTやら、他にもいっぱい出て来るんだよ!?」
「いいから走って! 門が閉じる前に町に逃げるのよ!」
まだ若い少年Shoujo達が、死に物狂いで走っていた、彼らのずっと後ろでは、Dragonの咆哮やgiantの唸り声が響き、木々が薙ぎ倒されている。
「何処から出て来たんだよ、あのDragon! Thunder Dragonって山や谷に居るもんだろ!?」
「Dungeonの、runawayじゃないの!?」
「そんな訳ないだろ!」
実際にはDungeonのrunawayによって出現したのだが、本来ならあり得ない事であるため、その少年はきっぱりと否定した。
Moksiの町周辺のDungeonに、Rank8のThunder DragonやMountain Giantが出現するDungeonは存在しない。尤も、Dungeonは自然発生するので新たにRank8以上のmonstersが出現するBClass Dungeonが出現した可能性は、否定できない。
だが、出現したばかりのDungeonがすぐrunawayを引き起こす事例は、今までにない事だった。
「私、知ってる! 確か、Hartner Duchyのどっかの町で、出現したDungeonがすぐrunawayを引き起こしたって聞いたよ!」
ただ、Shoujoが言う通り自然発生したDungeonでは無く、何者かの意志によってCreationされたDungeonや、管理下にある場合は例外である。
例えば、VandalieuがHartner DuchyのNiarkiの町周辺で創ったDungeonや、Fitunの『試練の迷宮』等だ。
「何だ、それ!? そんなのどうしろってんだよ!?」
あまりの理不尽に少年の一人が叫ぶが、彼らの実力では何もできない。
「いいから走れ! Goblin狩りとは訳が違うんだ!」
彼らは、Goblinの討伐依頼を受けて狩りに出ていた新人adventurerだった。実力に乏しく、Thunder DragonやGIANTだけではなく、それ以外のmonstersに対しても足止めすら出来ない。
尤も、お蔭でDevil Nestsの浅い部分に居たため、彼らのbody part Abilityでもこうして逃げられている訳だが。
「そう言えばっ、Dungeonのrunawayが起こった時は、他のDungeonの中に逃げ込めばいいって聞いたけど!?」
Dungeonから一度外に出たmonstersは、二度とDungeonに戻らない。それを利用して、自分からDungeonに入り難を逃れるという裏技がadventurer達の間では伝えられていた。
「一番近いDungeonは、monstersの群れの近くだよ!」
「じゃ、じゃあ二番目に近いDungeonは何処だ!?」
「町よりもずっと遠い!辿り着けない!」
「くそっ、もうダメかっ!」
ただ少年Shoujo達の場合は、運が悪くそのtacticsは諦めなければならなかった。
「GYAOOooooo……!!」
だが、先頭groupのThunder Dragonがscreechをあげると、突然墜落した。
「えっ?」
思わず振り返った少年Shoujo達だが、すぐにそんな事をしている場合ではないと視線を前に戻す。だから、彼らは草原の方から飛んで来た黒い雷を見る事は出来なかった。
他にも遠くから狙えるbody partの大きなmonstersが数匹倒れ、後続のmonstersの障害物と成り果てる。しかしそれでmonsters達が進路を変える事は無く、障害を突破したOgreやTrollがそのまま少年Shoujo達を追いかけはじめる。
「そこの若き者達よ! 早く退くのだ!」
だが森の出口で背の曲がった、やけに声に張りがある老婆に声をかけられた。恐らく、自分達と同じようにGoblinを狩りに来ていた、兼業adventurerだろう。皮鎧を身に着け、手には槍を持っている。
「御婆-sanも早く!」
「わ、ワシはいい! 走るのは苦手なのさ! 一匹でも多く道連れにしてやるから、その隙に町まで退け!」
hoodを目深に被った老婆らしい人物の言葉に、少年Shoujo達は一瞬押し黙るが、結局は彼女の横を走り抜けていった。
「ごめんなさいっ」
その際にそう言葉を残して。それは仕方のない判断だっただろう、彼女達には老婆を背負って走る程の余裕は無かったのだから。
彼女が涙を流した事に気がついた老婆は、皺だらけの顔でニヒルに笑った。
「……フッ! 悪い事をしてしまった! 彼女達が今回の事で味わった罪悪感や無力感を乗り越え、未来の勇士となってくれることを願おう!」
そして老婆は張りのある声でそう言うと、迫りくるmonstersの群れに向かって歩き出した。
「償いと言う訳ではないが、役割は果たさなければ!
敵は、Vandalieuが町の外に居る時に襲撃を仕掛けて来るだろうと予見していたが、まさかmonstersの群れが先触れとは予想外だ! だが、構わん!
さあ、来るがいい、獣共よ! 貴-sama等は町には入れん! 町以外の場所に入れてやびゅっ!」
Trollの棍棒が老婆を一撃で叩き潰し、周囲にbloodが……いや、肉だけが飛び散る。Trollにも大量の返りbloodならぬ返り肉片がかかるが、何と、次の瞬間Trollが霞のように掻き消えてしまった。
「ウゴ!?」
「ゴ~っ!? ングーボ!?」
突然姿を消した同族の姿を探すTroll達だが、彼らも次の瞬間最初に消えた個体と同じように姿を消してしまう。
こうしてmonstersの追撃が途切れた隙に、少年Shoujo達はMoksiの町まで逃げのびる事に成功した。
他の場所でも突然Thunder Dragonが町に向かうのを止めたり、GIANTが同士討ちを始めたり、そしてやはり老人や脚をinjureした、誰もnameや顔を知らないadventurer達の献身によって、何人ものadventurerが町まで逃げのびる事に成功していた。
「【雷獣推参】!」
Vandalieu達とHajime Fitun達の戦いは、まずHajime Fitun側からの遠距離攻撃から始まった。Hajime Fitunがイタチに似た電撃で出来た獣を創り出し、『Flame Blade』の面々のBodyを乗っ取ったHeroic spirit達が大弓から矢を放ち、magicを唱える。
彼等の装備は、Vandalieu達が知っている物よりずっと高性能な物に変えられていた。町で買い求めればVandalieuに情報が渡るため、彼等はFitunの『試練の迷宮』で装備を整えたのである。
「まずは小手調べだ! 【空穂】!」
Gordon・Bobbyも、自身の背より長大なAdamantiteの槍で刺突を飛ばすMartial Artsを放つ。そのMartial Artsの射程距離は、本来ならそれほど長くは無いのだが、Bodyを操る『Mountain Breaking Spear』のBobbyの腕前がある程度反映されているのか、楽々と届きそうだ。
「Melissa、Doug、一旦頼みます」
「いいわよ」
【Aegis】のMelissaの張ったBarrierにより、Gordon・Bobbyの【空穂】はcertainly、矢やmagicが弾かれる。だが、雷獣はBarrierを回り込んでVandalieu達を狙おうとする。
「雷獣が俺の担当だな!」
しかし、【Hecatoncheir】のDougのMental Powerの拳が雷獣をとらえた。見えない拳に叩き潰され、雷獣が掻き消される。
「隊長っ、あいつ等が【Aegis】と【Hecatoncheir】か!?」
「そうだ、後の二人は……Elfにreincarnationしたはずなのになんで黒くなってんだ、あのクソ女。それはin any case、Dark Elfモドキが【Venus】だ! もう一人は……Isis!? なんで前世の姿に!? とっ、とにかく、あのHumanの女はLegionだ! 対処法も教えた通りにやれ! だが、まだ追い詰めすぎるなよ!」
肉で出来た人形を球形に捏ね回したようなchunk of meatに成り果てたはずのIsisが、以前と同じHumanの姿でいる事に驚いたHajime Fitunだったが、とりあえず彼女も含めてLegionがTransformした姿だと判断する事にした。
「了解!」
下された指示に従い、自分達の攻撃が楽々と防がれた事に動揺せず、Gordon・Bobbyたちは攻撃を続けた。Martial Artsは使わずただ矢を撃ち続け、短槍を投げつける。
「……俺達のAbilityに驚きもしないって事は、やっぱりあれはHajimeか。だが……」
【Demon Kingのshadow】を門にして、Gufadgarnのmagicによって【Teleportation】させられたDougは、元仲間で同じorganizationに何年も潜入した、顔馴染みの筈のHajime Fitunを見て首を傾げた。
「あれ、本当にHajimeか? reincarnationして若返ったのは分かるが、信じ難いぜ。Punkな髪型はさておくとしても、印象が違い過ぎる。前に見たのがRodcorteのDivine Realmで、しかも二年以上前だったとしても、変わり過ぎだ!」
「……ええ、聞いていた話以上ね」
【Aegis】のMelissaも同感だとnod。年単位で活動を共にしてきたはずの二人にそう言われる程、Hajimeのappearanceは変化していた。
originallyは色白で見るからにインドア派の、nerve質そうな青年だったが、今は程良く焼けた肌と発達したmuscleを持った少年である。
しかも目はblood走り、部下を率いて哄笑をあげる姿は前世の姿とかけ離れ過ぎている。
「きっと、よっぽど辛い目にあったのね。辛いとは思っていなそうだけれど」
「一体、何が彼をあそこまで追い詰めたのでしょうか?」
IsisとKanakoも口々にそう言う。
それを聞いたMelissaとDougは、思わず二人に胡乱気な眼差しを向けた。
「……爆弾で瀕死の重傷を負った後、酸で止めを刺されたからじゃないかしら?」
「俺達も捨て石にしたのは同罪だから、とやかくは言わないが……お前等張本人だろ。特にKanako!」
「まあまあ、昔の事じゃないですか」
そう言うKanakoだが、実際には彼女がOriginでHajimeに止めを刺してから、まだ三年も経っていない。
「あ、あのクソ女共っ!」
そして既にお互いの姿を視認できる距離に居る為、Hajime FitunはKanako達のlipsを読んで何を言っているのか理解していた。
瞬間的に頭が沸騰すると同時に、ガクガクと脚が震える。
「た、隊長? 武者震いか何かで?」
「チッ……このbody partの本来の持ち主のせいだ」
Hajime InuiのBodyを乗っ取ったFitunだが、Hajimeの魂は眠っている訳ではない。Fitunに飲み込まれるような形でだが、同化して存在し続けている。
そのためFitunはHajimeが持つanother worldの知識を手に入れたが、逆にHajimeが負っていたtraumaも共有する事になってしまったのだ。
(普通の女は大丈夫になっていたから油断したぜ。しかも、前世でHajimeを殺した本人が勢揃いとは……クソ)
それなりにtraumaを克服していたHajime Fitunだったが、流石に植え付けた本人から受ける衝撃は予想以上だった。
一方防戦に徹しているVandalieu達は、MelissaがBarrierの内側で首を傾げていた。
「Hajime以外にも色々変ね。周りにいるのは、『Flame Blade』や『剛腕』のGordonのはずよね? ……DClass adventurer partyとは思えないくらい腕が良いし、Gordonって槍じゃなくて斧の使い手のはずよ」
「ですね。中々動きが良いですし、C……いや、BClass以上AClass未満ぐらいでしょうか。Gordonも、あの槍捌きは付け焼き刃では無いですね」
「マジか。そんな短期間で腕を上げる事って可能なのか!?」
「普通は無理ですね。HajimeがGuider Jobに目覚めて奴らを導いていて、更に『Flame Blade』もGenius的なaptitudeの持ち主で、神からblessingsを貰い、更に訓練に最適な環境が整えられていたら、可能性はありますけど」
「つまり、ほぼ不可能なのね」
一カ月と少々でDClassからBClass adventurer相当の実力を手に入れるのは、Vandalieuが言った通りほぼあり得ない事だ。SimonとNataniaだって、まだBClassには程遠い。Talosheimに居るVandalieuのAdventure仲間、Kasim達だって実力を高めるのに何年もかかっている。
「Gordonの方は絶対に無理でしょう。俺は彼のStatusを知っている訳じゃありませんが……恐らく【Axe Warrior】等Axe Techniqueに関するJobに、幾つか就いているはず。そこからSpear Techniqueの達人になるのに、一カ月少々では足りません」
「実は、実力を隠していたって可能性は?」
「そんな器用な事が出来るとは、思えません」
『Flame Blade』達やGordonの奇妙さに、戸惑うVandalieu達。その原因を探ろうと、KanakoはBarrier越しに【Venus】をActivateさせるが……暫くしてから首を横に振った。
「ダメですねぇ。私と視線を合わせようとしません。【Venus】でMemoryをCopyして探るのは無理そうです。……お返しに、あたしの短いMemoryをCopyして、適当に貼り付ける事はできましたけど」
「うごおおおおおっ!?」
Kanakoがそう言うと同時に、『Flame Blade』のGiant raceの盾職がscreechをあげて後ずさりする。戦闘の高揚でcomplexionの良かった顔色が、今は青くなっていた。
「何を見せたんです?」
「秒単位のMemoryでも、心を豊かにする芸術を」
どうやらKanakoは、Giant raceの盾職にTalosheimの建物の屋根に描かれた絵のMemoryを見せたようだ。
「上手く行けばこっち側に引っ張れる、最低でも戦意を挫けるかなと思ったんですけど、ダメだったみたいですね~」
Kanakoがそう言っている途中で、Giant raceの盾職が怒号をあげながらPickpocketングを使い、【遠投】のMartial Artsで石を投擲し始めた。どうやら彼は、怒りでhorrorを乗り越えたらしい。
ただ、Martial Artsで射程距離が伸びた石も、矢やmagic同-sama MelissaのBarrierによって弾かれてKanakoに届く事は無い。
「これくらいなら別にいいけど、防ぐのは私なのよ?」
「いや~、すみませんね。でも、手応えがちょっと変でした。昔、多重人格の相手に【Venus】を使った時と、似たような感じで……Natania -sanから何か聞いてます?」
「いえ、特には」
Kanakoに訊ねられたVandalieuは、逃げ遅れた者達の避難を助ける為に使っていたThunder DragonやMountain Giant等のZombieを呼び戻しながら、首を横に振った。
「多重人格以外にも、あの盾職の男がThrowing Techniqueを使う事も聞いていません。……maybe、【Marionette】のAbilityで何かやられたのでしょう」
「conjectureは結構だけど、いつまで守勢に甘んじるんだ? 時間をかけると町が危険なんじゃないか?」
自分達の後ろ、二キロ程の所にある城壁を指してそう尋ねるDougだが、Vandalieuは首を横に振った。
「Doug、急いで連中を倒しても、monstersのrunawayは止まりません。……monstersの霊に聞きましたが、連中に操られているとか、そんな-sama子は無かったようです」
Vandalieuの言う通り、Hajime FitunはDungeonでrunawayを起こさせただけで、monstersを操作するような事はしていない。彼等にとっては、monstersの群れがMoksiの町に向かうだけで十分だったので、細やかな制御は全くしていないのだ。
「それに、こうして時間をかけないと俺達の社会的立場が危険です。……ここは町に近すぎます」
「このworldには双眼鏡や望遠鏡は無いけど、eyesightをEnhanced (1)したり、映像を拡大したりして、遠くを見るmagicはあるものね」
背後のMoksiの城壁には、一定間隔ごとに物見の塔が在り、そこにSoldierがいる。そこからVandalieu達は見られている筈なのだ。
「……うわ、面倒臭ぇっ!」
「今、こっちをmagicで見ているSoldierがいます。彼等がこっちを見る余裕が無くなる事態……町の防衛戦が始まるまで、あまり派手な事は出来ません。……【黒雷】」
『社会生活ってのは、難儀なもんだ』
そう言うKimberlyを黒い雷に変えて、Hajime Fitun達を撃つVandalieu。こうして、【Abyss】skillでこちらを見ているSoldierの数を探りながら、言い訳すれば常識の範疇だと誤魔化せる程度の攻防に徹していたのだ。
Dragon ZombieやGIANT Zombieは【黒雷】で撃たれただけなので、余程細部を観察しなければ、ただmonstersが同士討ちをしているだけのように見える。
Kimberlyについても、追及されても誤魔化す手段は幾らでもある。
だが流石に【Soul Breaking Arts】のActivateや、周囲に大きな被害を与えるmagicは誤魔化しようがない。
「じゃあ、昔やったって言うDisease原菌は? HumanとElfとDwarfにしか感染しないdiseaseなら、連中の殆どに効くだろ?」
「……実はもうやった後です。何らかの方法で感染を防がれたみたいです」
「アウトドア派に転向したくせに、潔癖症かよ!」
そうDougが罵るが、かつてVandalieuがMirg Shield Nationの遠征軍に使ったDisease原菌にも備えていたHajime Fitun達の攻撃は、続いている。
certainly、この時間稼ぎはある程度余裕が保たれているから出来る事だ。
Moksiの町にRank8や9程度のmonstersの群れなら、ある程度苦戦する演技をしながら退治できる力の持ち主が……DarciaやMiles、Eleonora、BasdiaやZadirisがいる。そして不測の事態に、Gufadgarn達も備えている。
町の防衛は、心配しなくても良い。
だがもし、Hajime Fitun達がVandalieuの背後にある町まで巻き込むような大Attack Powerのmagicを行使するか、Kanako達が危機に陥るような事になれば、Vandalieuは本気を出すだろう。
……そして、それはHajime Fitun達も察していた。
「でも、幸い向こうにも時間を稼ぎたい理由があるらしいわね」
Isisの言う通り、Hajime Fitunにとっても時間は必要だった。彼女達に植え付けられたtraumaを、抑えつける以外の目的で。
「隊長、まだですかい? これじゃあ矢とManaの無駄だっ!」
「まだだ!」
焦れる手下を抑えてHajime Fitunが待ち続けるのは、Moksiの町を囲むように配置した、この場に居ない手下達の行動がまだだからだ。
彼らにHajime Fitunは「monstersのrunawayの後を追いかけるように町へ行き、出来るだけ派手に城壁を破壊しろ」と命令していた。
Vandalieuの注意を町へ向け、彼の周囲から更に仲間を引き剥がすためだ。
(町の連中の目や命が無くなると逆に厄介だから皆殺しにはしないが、城壁を破壊する時に何十人か死ねば、奴も焦るはずだ。
こっちは時間制限がついている手下ばかりなんでな。出来るだけ戦力を削いだところで、仕留めさせてもらうぜ!)
時間は、Vandalieu達とHajime Fitun達がお互いに牽制しあう前に遡る。
城壁に備えられた各物見の塔では、Soldier達が慌ただしく動いていた。だが、その注目の殆どは町の正門に迫ってくるmonstersの群れに向けられていた。
それはVandalieuから最も近い物見の塔も同じだった。
「大物が同士討ちを始めてくれたのが、せめてもの幸いだったな」
「ああ、一瞬Thunder Dragonを倒したのかと思ったが……あれ、何だったんだ?」
「さあな。一瞬、黒い何かが見えた気がするが……混乱させる毒か何かを投げたのか?」
Thunder Dragonに驚いたSoldier達は、horrorのあまり硬直してしまい……VandalieuがDragonを倒したのを認識していなかった。
Vandalieuが何かしたのは分かったのだが、その後すぐThunder Dragonが再び動きだし、他のmonstersを攻撃し始めたので、「Thunder Dragonを何らかの方法で混乱させた」と思い込んだのだ。
実際には【黒雷】で倒したThunder DragonをUndead Transformationさせ、操っているのだが……感電死したDragonは、遠目には無傷に見えたので生きていると誤解したのである。
その後もVandalieuは【黒雷】で他のDragonやGIANTを倒しているのだが、主に【黒雷】を使用していた為、Soldier達は目撃してもThunder Dragonか、VandalieuがTamerしている、自分達が知らないmonstersの仕業だと思い込んでいた。
「Thunder Dragonや他の空を飛ぶmonstersが多く生き残っていたら、城壁なんて何の意味も無いからな」
「GIANTだってそうだ。Hill Giantならin any case、あのMountain Giantにとっては、町の城壁なんて薄い板同然だぞ、きっと」
「ああ、初めて見たが……高Rankのmonstersってのはとんでもないな」
町を守るSoldier達は、町の近くに生息するGoblin等低Rankのmonsters以外は、基本的に目にする機会は無い。Rank7や8のような高Rankのmonstersは、おとぎ話やBardの歌にしか出てこない存在だった。
詳しい生態やAbilityをSoldier達が知らなくても、無理は無い。
更に物見の塔に配属されるSoldierは、比較的eyesightが良い者達やeyesightを補助するmagicの使い手が選抜される。しかし、優れた者は城壁の門周辺に配属される。そのため、この物見の塔のように壁の半ばにある部署には二キロ以上離れた場所に居るVandalieuが何をしているのか、詳細に観察する事が出来る者はいなかった。
「だが、町に戻って来ないのは、やっぱりmonsters達を混乱させているのは彼だからか?」
非常事態を知らせるWarningは響き渡っている。離れていても聞こえているはずだが、Vandalieuは草原から動く-sama子が無い。それを奇妙に思ったSoldierの一人が、じっと目を凝らしている同僚に訊ねる。
「Daniel、どうなんだ?」
「特に何かやっているようには見えないが……いっそ、戻って来ない方が良いかもな」
Life-Attribute MagicでeyesightをEnhanced (1)しているDanielと言う名のSoldierも、先程まで近くに居たFangの巨体から、残った少年がVandalieuだと見当を付けているに過ぎない。
「今から戻ろうとしても、monstersの群れとかち合うかもしれないし……町から離れた場所に一人でいる方が、生き延びられるかもしれない」
Danielが口にしたのは、事実である。runawayしているmonstersはInstinct的にHumanを襲うため、大勢のHumanが居るこの町をまず狙う。たった一人で草原に居る少年には、目もくれないだろう。
「……それもそうだな」
大物のmonstersが何匹も脱落したが、まだまだmonstersの群れは健在だ。Rank7のOgre Kingや、Troll Berserkerがいるらしいと言う報告もある。
Soldier達には、Moksiの町と自分達のDestinyは風前の灯のように思えた。
「ん? なんだ、あの連中……あいつ等っ、何をやってるんだ!?」
だが、Danielが突然大声を出し、怒りに顔を歪めた。
「どうした、何が見えるんだ!?」
「Vandalieu達が、何人かの賊に攻撃を受けているようだ!」
「賊!? こんな時にか!?」
「ああ、間違いない! 草のshadowに隠れていたのか、Vandalieuの周りにも何人かいるが、それはallyらしいが……救援は出せないか」
「なんて奴等だ! Tamed Monsterの居ないTamerを襲うなんて!」
DanielがHajime Fitun達の襲撃に気がついたが、彼の目には【Aegis】のBarrierや【Hecatoncheir】のTelekinesisは当然映らない。そのため、Vandalieu達が一方的に攻撃を受けながら、何とか防いでいるように見えた。
そこに、伝令が彼等に指示を伝えに来る。
「この塔は放棄する! 全員正門へ向かえ! magicが使える兵は、必ず来るようにとの命令だ!」
「……了解っ! くっ、町の恩人の危機を見ていながら、何もできないなんて……!」
magicを齧っただけの一SoldierであるDanielは、命令に逆らう事は出来ず【eyesight Enhanced (1)】のmagicを解いて正門に向かうため、同僚達と共に塔を降りた。
実は、それこそがVandalieuに対して彼が出来る最大の援護だった事を知らずに。
magicを使って見ていた為に【Abyss】skillの効果でDanielの視線に気がついていたVandalieuは、時間稼ぎをする必要はもう無いと知ったのだった。
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・Job解説:Demiurge Luciliano著
Demi-Godである事を示すJob。『Lambda』worldには今まで、Humanが生きたままのconditionで神に至った存在はいない。
Human出身の神は、Humanとしての生を終え、死後に神に至った者達である。極少数の例外もあるが、そうした者達はEvil God (M) Evil God (P)とのFusionや、Humanから龍やTrue giantに変化する等、特殊な過程を経てHuman以外の存在になった者達である。
師Artisanのように、Human(Dhampir)のままDemi-Godへ至った先例は無い。そのため、Gods of Statusが困って搾り出したのがこの【Demiurge】と言うJobではないかと私はconjectureする。
まあ、blessingsを周囲にばらまいていた時点で、既にDemi-Godに至っていたのではないかと思うが。
Fragment Bestowerと同じく、Jobに就いた本人ではなく、本人以外の条件を満たした者達に【Familiar Spirit Demonic Advent】skillを与える事が出来る特殊なJob。
そして、believerから寄せられるreligionをExperience Pointとする事が出来る。師Artisanの場合は【Unable to gain experience independently】のCurseがあるが、religionを向けられると言う受動的な方法で得るExperience Pointは、自力の範囲に入らなかったのだろう。
この事から、師Artisanは今後自身のIdol Statueの建立を、強く反対できなくなるものと思われる。
・Name: Gordon・Bobby
・Race: Human
・Age: 25
・Title: 【Mountain Breaking Spear】(仮)
・Job: Thunder Spearman
・Level: 67
・Job History: Apprentice Warrior、Warrior、Axe Warrior、Unarmed Fighter、Berserker、Magic Axe Warrior、Berserker Axe、Spearman、Strong Spearman
・Passive skills
Enhanced Muscular Strength:9Lv(UP!)
Endurance Enhanced (1):5Lv(UP!)
Poison Resistance:3Lv(UP!)
Peerless Vigor:3Lv
Strengthened Attack Power when equipped with an axe: Large
Detect Presence:5Lv(UP!)
Mental Decay(NEW!)
Abnormal Condition Resistance:3Lv(NEW!)
Spear weapon equipped, then Attack Power Augmented (2) : Small(NEW!)
Enhanced Agility:3Lv(NEW!)
・Active skills
Axe Technique:6Lv
Throwing Technique:4Lv(UP!)
Unarmed Fighting Technique:6Lv(UP!)
Dismantling:2Lv
Armor Technique:6Lv(UP!)
-Surpass Limits-:10Lv(UP!)
Surpass Limits – Magic Axe:3Lv
Spear Technique:8Lv(NEW!)
Surpass Limits – Magic Spear:8Lv(NEW!)
・Unique skill
Heroic Spirit form(NEW!)
『God of Thunderclouds』FitunのHeroic spirit、『Mountain Breaking Spear』のBobbyにBodyを乗っ取られたGordon。Gordonの魂は存在し続けているが廃人にされている。
今のconditionはGordonと言うHumanを、Bobbyが着ぐるみのように着て操っているconditionであり、Bobby本来の力を発揮する事は出来ない。
しかし【Heroic Spirit form】をActivateする事で、Heroic spirit本来の力を発揮する事が出来る。ただし、GordonのBodyはそれに耐えきれずDecayを始める。