chinを少なくない金額を払って治癒magicで治した『剛腕』の……元『剛腕』のGordonは、あの決闘から数日後、secondary nameを失った翌日にMoksiの町から逃げるように旅立った。
「クソ……畜生……クソ……!」
ぶつぶつと語彙に乏しい呪詛を繰り返しながら、足早に町から遠ざかる彼から、これからMoksiの町に向かう者達は気味が悪そうに視線を逸らす。それは気にならなかった。
だが、背中に向けられる、Moksiの町から旅経つ者達からの視線は忌々しくて仕方がなかった。
同情、軽蔑、嘲笑。Open Plazaで行った決闘を見たか、話を聞いた連中の視線がGordonには耐えられなかった。
決闘騒ぎに負けたGordonが受けた傷は元通り治っていて、後遺症も残っていない。Simon達に金をとられた訳でも、guildからpenaltyを受けた訳でも、Guardに捕まって罰を受けた訳でも無い。
だがGordonはその力で、周囲に無理を通してきたHumanだ。そんなHumanのreputationに大きな傷がつけば、それは致命傷になり得る。
周囲から恨みを買っていても、Gordonが「強い」と思われている内は相手も手が出しにくい。だがGordonはこの数日で『剛腕』のsecondary nameを失った。
それはもうGordonを『剛腕』と恐れる者よりも、そう呼ぶには値しないと認識している者の方が多数派になった事を意味する。
Gordonはそれまで拠点にしていた町を離れ、Moksiの町に来たばかりだった。それを考えれば、彼に被害を受けた者達……稼いだ金やmonstersの素材を巻き上げられたadventurerや、強引に同意がある事にされて抱かれた女の縁者の耳には、まだ決闘に負けた事は知られていないだろう。
だが知られたら……それまで「やっても無駄だ」、「もっと酷い目に遭わされる」と恐れていた者達が、「もしかして、やれるんじゃないか?」と思ったらどうなるか。
「DClass以下の格下共でも、徒党を組んで来たら流石の俺でも無傷で切り抜けるのは難しい。クソ、こうなったら他のDuchyでやり直すしかない」
そう理由を付けて、GordonはMoksiの町を逃げ出して来たのだ。町のHumanが自分に向ける視線に。そして想像していたよりも大きい『Hungry Wolf』のMichaelと、あのGhoul達のmasterであるVandalieuのinfluenceに耐えられずに。
しかし、Alcrem Duchyから逃げ出すのはGordonにとって有効な選択ではある。やや際どいが、彼は犯罪者では無い。mountain bandit等犯罪者以外に人は殺していないし、金を巻き上げる時も相手の上前をはねる程度で身ぐるみ剥ぐような事はしていない。
女は……まあ、置いておくとしても、公的機関に訴えられた事は無い。
だから賞金首のように情報が大々的に広がる事は無い。彼に嘲笑や憐憫が込められた視線を向ける者も、他のDuchyにまで行けば、殆ど居なくなるはずだ。
そして新しく拠点と決めた町で暫く大人しく依頼を達成する事に専念していれば、reputationも戻って来るはずだ。guildからは何のpenaltyも課されていないし、『剛腕』のsecondary nameを失ったが、これまで培ったskillはそのままだ。
CClass adventurerとして、十分やっていく事が出来るはずだ。
そう考えながらGordonは街道を進んで一日、街道沿いの村を出て数時間、そろそろ干し肉と水袋の中の水で簡単な食事でもとろうかと思い始めた頃、ふと彼は足を止めた。
そして、何となく街道の外に広がる雪が積もった草原に視線を向ける。
「……いっそ街道から外れて、そのまま進むか」
何故だかは不明だが、それが良い選択だとGordonには思えたのだ。彼はその予感に従う理由を、「街道を進むより早くこのDuchyから出る事が出来る」とか「普通の旅人なら危険だが、自分の実力があれば問題無い」と、後から考えて、足を草原に向けた。
そして彼は雪を踏みしめながら歩き始めた。普通なら雪の積もった原野を踏破するよりも、多少遠回りでも街道を進む方が良いと気がつくはずだが……Gordonは何かに導かれるように進み続けた。
そして暫く進むと……突然稲光が空に向かって走った。
「な、何だ!?」
「……【浄化のLightning】だ。霊を見張り代わりに配置するとは、下手にUndeadや使い魔に尾行させるよりも性質が悪いな」
「だ、誰だ、テメェ!?」
驚いて空を仰ぎ見たGordonの耳に、彼の知識に無い上位のWind-Attribute Magicを使ったと答えた、若い少年の声が響く。再度驚いて視線を地上へ戻すと、そこにはいつの間にか少年がいた。
髪を逆立てた十代後半の中肉中背の少年だ。どこの武具店でも売っていそうな皮鎧を身に着け、手には同じく特徴の無い斧を下げている。
その見た目だけなら、髪型以外はやはりどの町のAdventurer’s Guildにもいる新人adventurerにしか見えない。
だが少年から放たれるプレッシャーがGordonにそう判断させなかった。
「……た、ただ者じゃないな。お前、何者だ? いや、Humanなのか?」
後ずさりながら、斧を抜いて身構える。しかし少年は……Hajime InuiはGordonではなく、空に視線を向けたままだ。
「Humanは【Spiritualist】か、余程特殊なskillの持ち主じゃなきゃ、霊にも気がつかないから監視役に丁度良い訳か。だが、さっきの術でこの辺りの霊は……げぇ、ある程度間隔を開けて霊が並んでるだと? どれだけ霊を配置したんだ、あのbastard。
チッ! 【浄化のLightning】!」
そして再び空に向かってmagicを一度、二度と続けて放つ。しかし、満足いく結果は得られなかったようだ。
「流石に遠すぎるか。仕方ない、残りは放置しよう。全部浄化するのは面倒だ。それに、向こうも俺の存在に気がついてない訳じゃないだろうしな」
そしてHajimeはGordonへやっと視線を向けた。
「よく来たな、Gordon。お前程度の信心でも、呼ぶ事が出来て安心したぜ」
「お、俺を呼んだだと? 何の事だ、俺はお前なんて知らない! 見た事も無い!」
「いやいや、知っているはずだ。見た事も無いって言うのは、その通りだが」
Hajimeの生意気な態度にも、Gordonは怒りを覚えなかった。彼の心を満たしているのは、正体不明のhorrorだった。
だが背を向けたら、その瞬間何をされるか分からない。そんな危機感から逃げ出す事も出来ず、少年から視線を外す事も出来なかった。
「さて、負け犬のGordon。お前に良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは、お前はHeroになれる。お前の名は歴史に残り、後世に渡って語り継がれる事になるだろう」
「わ、悪い知らせの方は何だ!?」
そうGordonが尋ねると、Hajimeはgrinningと口元を歪めて答えた。
「悪い知らせか? それはな……お前の名は残るが、お前の意識は残らないって事さ」
そう言い終わると同時に、Hajimeの手にManaの光が集まる。
「うっ……うおおおおおおおお!」
逃げても間に合わない。そうIntuitionしたGordonはHajimeに向かってChargeした。それまで動かなかったのが信じられない程、力強く地面を蹴り、斧を振り上げる。
「ウスノロが」
だが、斧の間合いまで近づく前にHajimeの手から電撃が放たれた。それはGordonを直撃し、彼の口から絶叫が放たれた。
堪らず膝をつくGordon。しかし Hajimeは電撃を止めようとはしない。
「ガガガガガガガ……ガガ、もう、十分っ、だ、隊長っ……!」
だがGordonがHajimeを「隊長」と呼んだ途端、電撃を放つのを止めた。電撃によって焼かれ、白い煙を漂わせたGordonは大きく息を吐くと、ポーチから取り出したpotionを呷った。
「……ふはぁ! 不味い! 全く、脆弱なbody partだぜ。これでCClassとは、近頃のadventurerの質も落ちたもんだ!」
電撃で負った火傷を癒したGordonは……Gordonだった者はそう悪態をついた。
「それは仕方ないさ。お前が現役だった頃とは時代も場所も違うんだ、『Mountain Breaking Spear』のBobby」
それにHajimeはGordonとは異なる、あるHeroの名を口にして宥めた。
『Mountain Breaking Spear』のBobby。彼は何万年も前に生きていたHeroだ。Giant raceのWarriorでも持ち上げられなかったAdamantiteの芯とObsidian Ironで出来た剛槍を軽々と振り回し、そのSpear Techniqueは山をも崩したと謳われている。
そして、『God of Thunderclouds』FitunがHumanだった頃に率いていたmercenary団の一員であり、死後は彼のHeroic spiritと化したとされている。
【Heroic Spirit Advent】で降りてきたのでなければ、本来地上には存在出来ないはずだ。
「そういうもんですかね。しかし……今回は留守番かと思いましたぜ」
だがGordonの口を使って話している存在は、自分を『Mountain Breaking Spear』のBobbyだと認識していた。
「悪いな、お前を降ろすのに、相性が良くて、それなりに実力がある入れ物が中々見つからなくてな」
全てはHajime……彼を乗っ取ったFitunの仕業だった。
最初は、VandalieuがFamiliar SpiritやSpirit CloneがAdventする前の無防備なconditionを狙って魂を砕く事に対する、単純な対抗策のつもりだった。
Familiar SpiritやHeroic spirit、Spirit CloneはAdventする際、空から光の柱となって降りてくる。その-sama子は、遠目からでも視認できる程目立つ。Vandalieuにしてみれば、「撃ってくれ」と言われているようなものだろう。
だからFitunはHajimeに降ろすSpirit Cloneを、最初からHajimeのBodyの近くに宿らせておけば良いと考えた。HajimeにSpirit Cloneを宿らせた装飾品……Artifactを与え、撃たれる隙を作らず彼のBodyに降りられるようにする。それだけのつもりだった。
しかし Fitunが想像していた以上に、彼とHajime、そして【Marionette】の力の相性は良すぎた。
Hajimeを飲み込む形で徐々にFusionしていく過程で、Fitunは『Lambda』worldでは得られるはずがない脳細胞の仕組みや働き、機能に関する知識を手に入れた。
そして【Marionette】の力と自身の『God of Thunderclouds』としての権能を合わせれば、自分だけでは無く配下のHeroic spiritやFamiliar Spirit達を地上に降ろせるのではないか。そう考えたのだ。
Bodyがhard、魂がソフトなら、【Marionette】のAbilityはハッKingだ。
GordonのBodyに電撃で接触し、【Marionette】で彼の脳内の情報を書きかえ、自身のDivine Realmに待機させていた『Mountain Breaking Spear』のBobbyをdownloadさせ、彼の魂を上書きする形で乗っ取った。
細かい事を省いて例えるなら、以上がGordonの身に起きた事だ。
「実力、ねぇ。どうにも重いし、感覚が鈍いんですがね」
「luxuryを抜かすな、文句を言うなら急に出て来たVandalieuに言え。お蔭で急いで容れ物を探さなきゃならなくなったんだからな」
ただ誰にでもHeroic spiritやFamiliar Spiritを降ろしてBodyを与えられる訳ではない。まず前提として、多少はFitunへの信心を持っている者でなければならない。戦いの度に勝利を願うとか、週に一度はtempleに通う程敬虔でなくてもいいが、Fitunに祈りを捧げた事が無いようなHumanには、流石にHeroic spiritを降ろす事は出来ない。
更に容れ物に使うHumanには、downloadするHeroic spiritやFamiliar Spiritとある程度以上の相性の良さが求められる。raceや性別が同じで、出来れば体格が似通っているHumanを使うのが望ましい。そして、ある程度Bodyが鍛えられていれば最高だ。
「流石にこの辺りだけで探すとなると、限られてきますか」
「ああ、他のDuchyやAmid EmpireのHumanを容れ物にしても、その後Moksiの町まで来させるのはboneが折れるからな。
だが、これも殺し合いの醍醐味だ」
殺し合いをする時、万全の装備と体調が整っている事は稀だ。それどころか、刃毀れしたWeapon Equipmentを傷つきFatigueしたbody partで振るわなければならない事の方が多い。それでも敵は構わず向かってくる。
それがいい。日取りを決めて、見届け人を立てて、準備万端整えて挑む決闘には無いThrill。そして、それ以上の駆け引きがある。
傷ついた武具でどう相手の攻撃を防ぎ、どう殺すか。Fatigueや傷にどう耐えるか。それの無い戦いは、Fitunからしてみれば遊戯でしかない。
彼の配下のHeroic spirit達も、同じ考えだ。
「クク、隊長らしい」
「笑っている暇があるなら、Statusを確認しろ。お前のBodyは生前の物でも、【Heroic Spirit Advent】を獲得したHeroでもなく、負け犬bastardのものだ。Ability Valuesやskillに異常が出てないだろうな?」
「へい、【Status】! ……nameはGordon・Bobby。Ability Valuesとskillは、それなりですかね。全力を出したら数分で壊れそうですが」
Statusを確認したBobby……Gordonの魂を飲み込む形でBodyを乗っ取ったGordon・Bobbyは、そう言って眉間に皺を寄せた。
「だろうな。だが、他の連中の中には一分と持たないBodyしか見つからなかった奴もいてな。そいつらを、俺のDungeonで鍛えているところだ」
Fitunは分類的にEvil God (M) Evil God (P)ではないので、本来ならDungeonを創る事は出来ない。しかし、『God of Law and Life』AldaがHeinzを鍛えるためにDungeonを創ったように、無理をすればDungeonを創りだす事が出来る。
彼はその無理を、Vandalieuがこのworldにreincarnationする数万年前に、何千年もかけて行っていたのだ。
ただ流石にAldaのDungeon程の格は無いが。
「雷雲の迷宮で、鍛える? あれは隊長's Divine Protectionが欲しい連中や、Artifactが欲しい、いわゆるHeroになりたい連中が受ける試練でしょうに。また無茶を」
それでもBClass adventurerが苦戦する程度の難易度はある。不慣れなbody partでそこに挑むのは、千尋の谷へthrust落されるようなものだ。
「中身はお前と同じ生前から俺の部下だった奴か、有象無象のbeliever共の中から頭角を現した猛者だ。寧ろ楽しんでいたぜ。弱くなったお蔭で、また死闘を味わえるってな。
お前は最後だから時間はそんなにないが、Demon Kingとの殺し合いを楽しむ前に肩を慣らしておけ」
「へいへい。……あ、そう言えば『Goddess of Rain Clouds』が隊長に連絡を取ろうとしていました。隊長のDivine Realmに顔見知りがいないのを知って、諦めたのかすぐ引っ込みましたが」
「あの根暗女か」
HajimeはFitunのMemoryにある『Goddess of Rain Clouds』Baciasの事を思い浮かべ、顔を顰めた。
BaciasはFitunとほぼ同時期……実際には数百年程の差があるが、神にとっては誤差だ……に神に至ったGoddessだ。
雲に関する神は、originallyは『God of Wind and Art』Shizarionの腹心でSubordinate Godの中でも高い力を持つ一柱の神が纏めて担当していた。しかし、その神はShizarionと同じくDemon King Guduranisに魂を砕かれ消滅してしまった。
そして死後Heroic Godに至ったChampion Nineroadが急遽二代目『雲の神』を立てたが、若い神一柱では大役に対して力量が不足していた。そこで『雷雲』や『雨雲』等役割を分け、複数のGodsに担当させる事にした経緯がある。
そのためFitunにとってBaciasは、戦場のHeroとして大成したが神としては力量不足である事を表す存在であり、好意的な印象は無い。
「放っておけ、奴がblessingsを与えたHeroが突っかかって来るならともかく、地上に居ない奴main bodyは邪魔にすらならない」
しかし、既にFitunのmain bodyは地上のHajimeのBodyに宿っている。今更出来る妨害は無い。
「分かりました。……Heroと言えば、何で他のGodsは隊長と同じ事をしないんでしょうね? その【Marionette】って力が無くても、信心深いbelieverにでもbody partを差し出させてHeroic spiritか何かを降ろさせる事は、不可能じゃないでしょうに」
Hajime Fitunの後をついて歩きながら、Gordon・Bobbyがふとそう疑問を口にした。GodsはVandalieuと戦うための戦力として、『Blue-flame Sword』のHeinzを筆頭に多くの素質ある者を選び出し、Heroにするため育てている。
だがそんな手間をかけなくても、Hajime FitunがしているようにHeroic spiritを受肉させる方が効率的のように彼には思えたのだ。
だが当のHajime Fitunは「idiotが」と彼の疑問を一笑した。
「こんな事を考えて実行するのは、俺のようなbelieverを人とは思わない外道だけ。お上品な奴らには、出来っこない芸だ!」
この行いが知られれば、間違いなく自分はAldaに杭を打たれる事になるだろうと彼は思っていた。当然だ。believerをGuidingべきとされる神が、believerを直接使い潰しているのだから。
しかし、Champion達のworldにはこんなことわざがあるらしい。
『勝てば官軍』。Demon King Vandalieuを倒せば、その手段がどんなものだったとしても栄光を手に入れ、負ければただ滅びるだけだ。
何ともsimpleで分かり易い仕組みである。
前世では嗅ぎ慣れた臭いに、Doug Atlasは顔を歪めた。
家や畑が焼け、焦げる臭いに、blood臭。これで硝煙の臭いが加われば、完璧だったが、それは無い。
夫婦かloverと思われる男女の死骸が、自分達のbloodで赤くなった雪へ、重なるように伏していた。
「……ここ、Moksiの町じゃないよな?」
「そうね。どう見ても、mountain banditか何かに襲われた後の村か何かよね」
それに答えたのは、真冬だと言うのに白いone pieceを着た黒い髪のShoujo……Legionの人格の一人、Plutoである。
「ああ、俺もそう思う。だけど……何でここに【Teleportation】したんだ? 俺達はMoksiの町に行くはずだったよな?」
DougとPlutoは、Legionの人格の一人であるJackのAbilityによって、TalosheimからMoksiの町に【Teleportation】する予定だった。
だが一瞬の浮遊感の後、目の前に広がっているのはこの惨状である。一瞬想定外の緊急事態が町に起こったのかと思ったが……そうでないのはすぐ分かった。周囲の-sama子を見回せば交易都市とは明らかに異なっていたからだ。
一体何のつもりでこんな場所に自分を連れて来たのか。そう遠回しに尋ねたDougがPlutoを見ると、彼女もDougに視線を向けたところだった。
『Origin』では崇拝者達に神秘的と評されていた瞳は、戸惑うように揺れている。
「ねぇ、Doug……ここ、どこかしら?」
「お前……マジでただの迷子かよ!?」
どうやら何か意図があった訳では無く、単純に『Teleportation』する先を間違えたようだ。
「仕方ないでしょう。私達、Moksiの町に行った事は無いし、Vandalieuもdeath attributeのManaをTalosheimよりは抑えているし……途中でこんな死のsignの濃い惨劇が起きていたら、間違いもするわ」
「そういう事にしておくか」
Legionの【Teleportation】は、Gufadgarnが行うようなSpace-Attribute Magicによるものではない。死のsignやdeath attributeのManaを感知し、それを目印にしてspaceを瞬間的に移動する。彼女達の人格の一つ、JackのDeath-Attribute Magicである。
そのため、時折死のsignと仲間のsignを間違えて予定になかった場所に【Teleportation】してしまう事を、Dougは知っていた。Jack……彼が『Jack-o'-lantern』のCodenameを与えられたのは、そういう理由もあっての事だ。
「じゃあ、ここはTalosheimとMoksiの町の間にある、どこかの村か。from here Moksiの町へ移動できるか?」
「そうね、maybe大丈夫だと思うけれど……その前に試したい事があるから少し待っていてもらって良い?」
「それぐらいなら良いぜ。まあ、俺も一仕事あるみたいだが」
PlutoとDougはそう言い合いながら、再び周囲に視線を向ける。
「お前達……どこから現れた? この村の生き残りか?」
二人の周囲は、布や仮面で顔を隠した武装した人shadowに包囲されつつあった。建物のshadowから、ゾロゾロと現れた彼らの一人が、戸惑った-sama子で二人に声をかける。
皮鎧を身に着けた軽装で、褐色の肌に癖の強い髪をしたDoug。逆に蠟のように白い肌でこの辺りでは珍しい黒髪黒瞳をした、しかも midairに浮いているPluto。どちらも村人には見えない。
「迷い込んだ旅人みたいなもんだが、あんた達も村人やGuardには見えないな」
Dougが無難な答えを返すと、顔を隠した者達の中で最も異-samaな仮面を被った男が急に笑い出した。
「旅人か、それはいい。貴-sama等の人生と言う旅は、我等が神の生贄になると言う終焉をここで迎えるのだ!」
「あの人、見かけの割に詩人ね」
「そうだな、人は誰でも人生と言う旅をする旅人……って、それはどうでもよくないか?」
どうやらこの村を襲ったのは村人にとって運が悪い事に、mountain banditではなく邪悪な神を奉じるfanatic達だったらしい。mountain banditなら食料や金を差し出せば助かるかもしれないが、村人を生贄として捧げるために殺しに来たfanaticには意味が無い。
お蔭でPlutoが勘違いする程、この村は濃厚な死のsignが漂う事になってしまった。
「さあ、今日最後の贄だ! この二人を……男の方はともかく、特にあの清らかな乙女を生贄に捧げれば、我等が神、『Evil God of Evil Blood』Tuberis -samaも、再び我等にお言葉をかけて頂けるはず!」
「Tuberis -sama~!」
「我等が神の為に!」
口々に叫びながら、村人達のbloodで染まったWeapon Equipmentを構えながら、近づいてくるfanatic達。それに対して、Dougは顔を顰めながら訊ねた。
「それでどうする、清らかな乙女のPluto?」
「とりあえず、皆殺しにしてから考えましょう、男の方のDoug」
「そうだな……Lucilianoのおっ-sanへの土産に持って帰るのも、面倒だしな」
Dougが、【Hecatoncheir】のMental Powerで雄叫びをあげながらSlashかかって来たfanatic達を叩き潰した。
「えっ?」
教祖的な立場に在る仮面の男の見ている前で、部下達が粘土で出来た人形のように潰されていく光景に、思わず素に戻って声を出した。
ろくにWeapon Equipmentも持っていない少年が、何らかの手段で部下達を瞬く間に屠っていく。その光景は彼の理解力を超えていた。
『Doug、退屈そうね』
『ああ、あいつが好きなのは殺しじゃなくて戦いだからな』
『好むのは一方的な殺戮では無く、闘争……勇士っぽいな! 私もそういう風に言われてみたいぞ!』
『Pluto、あたしが一気に燃やせば早いんじゃないかい?』
『それじゃあ、村人の死体も燃えちゃうじゃない』
だが仮面の男にとって、更に理解不能な存在が正体を現しつつあった。彼が清らかな乙女と評したShoujoが、内側から膨張するように膨らみ、chunk of meatと化していく。
「あ、ああっ、神よ、我が神よ、我に、我に救いを……!」
ミヂミヂと音を立てて、countlessの肉で出来た人形を球形に捏ねあわせたような異形になりつつあるShoujoの姿に、仮面の男は震えながら膝をthrust、Weapon Equipmentを落した。
『清らかな乙女の次は、Kami-samaだってさ』
『そう、じゃあ神である私が命じるわ。お蔭で迷子になったじゃない、死ね』
仮面の男に向かってLegionのcountlessの手が伸びていき、男の肉を掴んでは引き千切り始めた。仮面の男は絶叫をあげるが、Legionのcountlessの手は彼が死ぬまで丁寧に肉を指でつまみ、そのまま引き千切り続ける。
こうしてEvil God (M)のfanatic達は、二度と死のsignを発生させLegionの【Teleportation】の邪魔が出来ないよう、皆殺しにされたのだった。
そしてLegionは幾つかの霊と交渉し、「試したかったこと」を何回か実行する事に成功した。
その数時間後、『Evil God of Evil Blood』Tuberisを信仰するEvil God (P)教団を追っていた、『God of Fresh Water』Junos 's Divine Protectionを受けたKnight AbelがCommandingする一隊が村に到着するが、その時には何も残っていなかった。
「これは……いったいどういう事だ!? 大量のblood痕に焼けた家々、そして村を襲ったfanatic達の内何人かの首があるのに、村人たちの遺体が無いとは……!」
Abelは村だけでは無く周辺へ探索の範囲を広げるが、【Teleportation】でこの場を去ったLegion達の手がかりを得る事は出来なかった。
ちなみに、『Evil God of Evil Blood』Tuberisはとっくにbelieverを見捨てて、Vandalieuをやり過ごすために眠りについていたので、特に何が起こる事も無かった。
《Vandalieuは【Strengthened Attribute Values: Target of Faith】skillを獲得しました!》
《【Strengthened Attribute Values: Ruling】、【Strengthened Attribute Values: Target of Faith】skillのlevelが上がりました!》
《【Whip Tongue Calamity】にJob changeしました!》
《【Whip Technique】skillを獲得しました!》
《【Body Stretching:tongue】skillのlevelが上がりました!》
二月の下旬。暦ではin any case、この辺りではまだ春が遠く思える頃。
それまでにVandalieuはやや信頼度は低いが、広範囲に霊による監視網を整備し、Itobamの町を含めた近隣の町や村、宿場への情報収集にも更に念を入れた。
しかし、MurakamiやHajimeの重要な情報を手に入れる事は出来なかった。
Murakamiの方は一度【Sylphid】のMisa Andersonらしき存在が偵察に来ただけで、それ以上の動きを見せなかった。
Moksiの町の周辺の町や村に直接出入りしている-sama子はcertainly、人を雇って食料品や必需品だけを買いに行かせている-sama子も無かった。
恐らく、何らかの手段で前もって食料や生活必需品を買い込んでから、Alcrem Duchyに入ったのだろう。どの町や村にも入らず、出来るだけ狩りをせずに原野に潜伏するために。
若しくは、『Origin』で新たに死んだReincarnatorを仲間に加え、その仲間のAbilityを用いた可能性もあるが、それは低いと思われた。
Hajimeの方は一度霊の監視網に引っかかり、元『剛腕』のGordonと一緒に居るのを見たと言っていた霊の話を聞いたと言う霊がいたが、それだけだ。
直接見た霊はその直後、Hajimeのmagicで浄化されてしまったのでaccurateな事は分からないが。
「どうやら彼は【Spiritualist】にでもなったか、特殊なskillでも身に付けたか……そうでなければ、Familiar Spirit等神のFollowersか、神そのものと同化でもしているみたいですね」
このworldでdeath attributeのMage以外で霊を見る事が出来るのは、まず【Spiritualist】Jobに就いた者、それ以外だと神とそのFollowersである。
一応霊を見る事が出来るmagic itemは存在するから、それを使っている可能性もあるが。
そして、やはりそれ以降Hajime達の足取りは途絶えてしまった。
「あいつが神のFollowersと一体化……酔狂なKami-samaも居たもんですね」
『性犯罪の神やfemale horror症の神でも居たのかしら?』
「それは流石に居ないと思いますけど……『人形使いの神』も、ピンpoint過ぎですね」
Melissaだけではなく、KanakoやLegion、Doug等Reincarnator達を知っている者達とそう相談を重ねるが、やはり彼らがどんなtacticsを考えているのかは分からなかった。
Hajimeの【Marionette】のAbilityからconjectureすれば、何らかの方法で他人を継続的に操り、手足にしているだろうことはconjectureできるが……まさかEvil God (M) Evil God (P)では無いAlda's Factionの神が自身のbelieverを使い潰す事が前提になっているtacticsを実行するとは、Vandalieu達でも思わなかったのだ。
情報収集には難航しているが、それ以外の事は順調に進んでいる。
特にTalosheimでのGiant Idol Statue建設は、Vandalieuが協力していないにしては驚異的なpaceで進んでいる。大きなmissも無く、けが人も出していない。
「抗議活動は続けているのですけどねー」
「抗議活動って、あれでか? 作業の邪魔にならないように道の端で、大声を出して作業員の気が散らないように静かにplacardを持って佇んでいるだけのDemon King Familiar」
Talosheimに最後まで残っていたDougが、Demon King Familiar達の抗議活動を思い出してそう尋ねる。
デモ隊と評すにはあまりにも人畜無害なDemon King Familiar達の行動は、路上の清掃運動中ですと言っても疑われないだろう。……実際、抗議活動の後には、周辺の掃除までしている。
「『Earth』のデモ隊を見習って叫んだり、通りを占拠したりしないと、存在にすら気がつかれないぞ」
「……そこまでしなくてもいいです。俺のselfishnessで国民の声を否定するのは抵抗がありますし」
こうしたVandalieuの対応のお蔭で工事は順調に進み、彼のExperience Pointもどんどん溜まり、【Demiurge】Jobがmaxedしてしまった。
そして【Balor】や【Abaddon】、【Demogorgon】と言った特徴的なnameのJobが新たに出現したが、最近【Unarmed Fighting Technique】を使う事が多くなり、【Demon Kingのtentacle】も手に入れて鞭状の器官も増えたので【Whip Tongue Calamity】にJob changeした。
これで【Whip Technique】を覚えれば、【Unarmed Fighting Technique】以外の戦い方も出来ようになり、多彩な戦い方が出来るようになるだろう。
他にもMash達孤児院のchild達が、Tamer guildの新人セミナーを受けたり、孤児院と共同templeのVida believer達との和解が進んだり、Gobu-gobuの作り方が貧しい農村にまで広まったりしている。
「それはともかく、これからどうするの?」
「近くにいるらしいのは確かなのですが……虫Undeadを放っているから、連中が近くに潜んでいるなら、その内見つかると思いますけど」
『時々普通のadventurerに潰されているようだけど、Demon King Familiarと比べると騒ぎにはなり難いものね』
あまりやりたくは無いtacticsだったが、VandalieuはUndead Transformationさせた虫をMoksiの町を中心に放っていた。これならただの霊を配置するよりも、確かな情報を得る事が出来る。
……その分、普通の人にも気がつかれ、騒ぎになってしまう可能性もあるのだが。
既に勘の良いadventurer数名に気がつかれ、潰されたり捕獲されて、guildに報告されたりしている。ただ、Undead Transformationさせたのが、ハチやscorpionではなく、毒を持っていない普通の虫である事と、報告されたのも数件だからguildもまだ危機感を覚えていないようだが。
念のために町の近くでUndeadの群れが発生していないか、adventurerに依頼して見回ってもらっているぐらいである。
「とりあえず、警戒網といつでも動ける態勢を維持しながら、ひたすら待ちましょう。……狙って来るだろうtimingは大体予想がつきますが」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・Name: Legion
・Age: 2
・Title: 【Holy Flesh-wife】
・Rank: 11
・Race: Eclipse Legion
・Level: 90
・Job: Occult Meat Warrior
・Job Level: 35
・Job History: Apprentice Mage、Mage、Apprentice Warrior、Warrior、Meat Sphere Warrior、Enormous Meat Sphere Warrior、No-Attribute Mage、Flesh Manipulator、Thief、Assassin、Dark Fighter、Mass Caster
・Passive skills
Mental Corruption:7Lv
Composite Soul
Magic Resistance:6Lv(UP!)
Special Five Senses
Physical Attack Resistance:8Lv
Form Shift:3Lv(UP!)
Super Rapid Regeneration:8Lv
Mysterious Strength:9Lv(UP!)
Mana Enlargement:4Lv
Vitality Enlargement:1Lv
Strengthened Attribute Values: Consumable Meat:7Lv
Fire and Lightning Resistance:4Lv
Strengthened Attribute Values: Creator:2Lv(NEW!)
Self-Enhancement: Guidance:3Lv(NEW!)
・Active skills
Limited Death-Attribute Magic:10Lv
Size Alteration:10Lv(UP!)
Commanding:5Lv(UP!)
Surgery:7Lv
Unarmed Fighting Technique:9Lv(UP!)
Dagger Technique:7Lv(UP!)
Fusion:3Lv(UP!)
Charge:10Lv(UP!)
Chant Revocation:4Lv
Long-distance Control:9Lv(UP!)
No-Attribute Magic:6Lv
Mana Control:6Lv
-Surpass Limits-:7Lv(UP!)
High-Speed Running:7Lv(UP!)
Strengthened Regeneration: Consumable Meat:7Lv(UP!)
Throwing Technique:5Lv(UP!)
Cooking:2Lv(UP!)
Lockpicking:4Lv(UP!)
Assassination Technique:4Lv(UP!)
Assassin Combat Technique:3Lv(UP!)
Silent Steps:2Lv
Trap:2Lv
Magic Fighting Technique:2Lv
Singing:1Lv(NEW!)
Dancing:1Lv(NEW!)
Familiar Spirit Demonic Advent:1Lv(NEW!)
・Unique skill
God of Origin’s Divine Protection
Zuruwarn’s Divine Protection
Ricklent’s Divine Protection
Gazer:5Lv
Encroachment Fusion:2Lv(UP!)
Vandalieu’s Divine Protection
Diana’s Divine Protection(NEW!)
Multiple Parallel Thought Processing:1Lv(Parallel Thought Processing awakened into!)
・Title explanation::True Ruler of the Red-Light District Luciliano著
○○の支配者、○○の顔役等、特定の地域の重要人物である事を表すsecondary name。この類のsecondary nameは、余程強く認識されているか、特異でなければ獲得できない。(師Artisanが『Talosheim Emperor』等、分かりきったsecondary nameを獲得していないのと同じ)
師Artisanの場合、「歓楽街で最も強いinfluenceを持つのが少年である事」や、「表向きには『Hungry Wolf』のMichaelと言う支配者が存在していた事」等が獲得できた理由と考えられる。
効果はその場所でのinfluenceやcharisma性を増す事である。
・Skill explanation::Multiple Parallel Thought Processing Luciliano著
Legionが【Parallel Thought Processing】skillをAwakeningさせた事で現れたskill。複数の魂がFusionし、別々の人格が存在する多重人格と呼ばれるconditionにある彼女達、ならではのskillだろう。
……やはり、普通ならHumanが獲得できないskillのSuperior Skillの場合、Awakeningすると更にHuman離れする傾向にあるようだ。