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Side Chapter 33: 奇妙な一致(Origin)

 何かが起きる前には、実は何回か前触れがあるらしい。だからそれを見逃さずに気がつき、その時点で対処するのが大事なのだと言う。

 そんな事を思い出しながら、Bandaは四本の腕を組んで訊ねた。


Me-kun、拉致されて大型トラックのコンテナに監禁される前、何か前触れってあったかな?』

「んぅ~ん」

『だよねー』

 現在Me-kunこと、Amemiya Meiは兄のAmemiya Hiroshibabysitterfemale、そしてbody Guardmaleと一緒に拉致されていた。


 これまでの経緯を、ざっと顧みるBanda

 まず前日からAmemiya coupleが二人ともいなかった。

 coupleは【Braver】のAmemiya Hirotoと【Angel】のAmemiya Narumi、『Bravers』のleaderとその妻だ。何か事件か災害が起きれば、犯人逮捕やlifesavingの為に出動するのが二人の仕事である。


 ただ、二人とも……特に母親のNarumiが居ないのは比較的珍しい。

 『The 8th Guidance』が壊滅した後、動ける『Bravers』が総動員されるような緊急事態は起きていない。それに『Bravers』はだいぶ減ってしまったが、まだまだ八十人以上いる。

 そして『Bravers』……Reincarnatorではない、このworldHuman達は無能と言う訳でも無い。進んだ科学技術とmagicを犯罪捜査や安全保障に活かし、『Earth』と同じぐらい平和を保っている。


 それ以上に、まだ冥が幼いから片方だけでも出来るだけ傍にいるようAmemiya coupleが努力しているのだろう。

 だが不幸な偶然か、それとも犯人達がpatience強くこのchanceを待っていたのか、この日couplemissionで出かけており、Amemiya 家Hiroshiと冥、babysitterfemale、そしてbody Guardの四人だけだった。


 その四人でから最も近い大型superに買い物に行く事になった。その大型superは会員制で、securityもしっかりしていて安心なはずだった。

 だが、駐車場に車を止めて出た途端、body Guardmaleが倒れた。babysitterは咄嗟にchild達を車に乗せて逃げようとしたが、彼女も同じように倒されてしまった。


 犯人達はLight-Attribute Magicを応用した、最新の軍用光学迷彩Suitを着て待ち伏せていたのだ。

 そして店の監視cameraから車を遮る位置に止まった大型トラックに、四人は拉致監禁されてしまったのである。


「ふぅ、Manaも感知されにくいとは、最新の装備は『Bravers』顔負けだな。報酬代わりにこのSuitを貰いたいぐらいだぜ」

「一時間の使い捨てで、呼吸も不自由なそのSuitをか? もうただ重いだけのガラクタだぞ」

 冥達の拉致に成功して気が抜けたのか、Suitを脱いだ犯人達がそう会話している。スタンガンでfaintedさせて連れ込んだbody Guardbabysitterの二人も、そして念のためにHiroshiまで手足を縛り、更にmagicを使えなくするための首輪を嵌めているので、完全に油断している訳では無さそうだが。


「お、お前等! 俺と冥に何かしてみろっ、父-sankaa-sanが許さないからな!」

 ただ、Hiroshiは意識を奪われていない。威勢よく犯人に言葉をぶつけている。

 しかしそれはhorrorと不安の裏返しでしかないのは、犯人達の目には明らかだった。少年の精一杯の抵抗に対して、ゲラゲラと笑うだけだ。


『犯人は……この場に居るのは五人で、今は四人。運転席に一人か』

「あれは?」

『ああ、あれは数えなくて大丈夫です』

「なんで?」

『もう犯人じゃないから』


「あのガキ、何と話してるんだ?」

「赤ん坊の事なんて俺が知るか。ガキにしか見えないお友達でも居るんだろ」

 自分達を指差して数えるBandaと会話する冥を、犯人達の内二人は気味が悪そうに眺めている。彼らにはSpirit FormであるBandaの姿が見えないのだ。


 実は本当に冥にしか見えないお友達がいて、それを自分達が言い当てたとは気がついていない。


「笑うな~っ! お前等なんか、父-sankaa-sanにかかれば、すぐに――」

「だったらお前が自力で俺達をやっつけてみろよ。とっても強いPapaMamaの息子-samaなんだろう?」

 怒鳴り続けるHiroshiに、犯人の中で最もmachoで見るからにbloodの気が多そうな白人の男が、やや訛りのある発音の言葉でHiroshiに話しかけた。


「その首輪はmagicを阻害するが、『Bravers』のAbilityを防ぐ事は出来ない。お前のクソオヤジなら、あっさり圧し折って外すぜ。

 ほら、やってみろよぉ」


 嬲るようないやらしい口調でそう言う白人の男に、Hiroshiは「うぅっ」と呻いて何も言い返せなくなってしまった。自分に父や母のような特殊なAbilityが無いのは、彼自身が一番知っているからだ。

 いつか自分の中に眠っている力が、目覚めるのではないか。そう夢見て彼なりの努力をしているが、未だに現実になった事は無い。


 その-sama子を見た犯人は、愉快そうに口元を歪めて笑う。

「ハッハッハハーっ! やっぱり何も出来ねぇんじゃねぇか! 口先だけのクソガキめ! 泣いたからって誰も助けちゃくれないぞ!」

「な、泣いてなんかないっ!」

 反射的に言い返すHiroshiと、彼に向かってtongueを伸ばすBanda。白人の男は、更にHiroshiを詰ろうと口を開いた。


「おい、いい加減にしろ。俺達はお前のventに付き合うために、こいつ等を攫った訳じゃないんだぞ」

 しかし白人の男の声を、別の白人の男の不機嫌そうな声が遮った。こちらは酷薄そうな顔つきで、Hiroshiを言葉で嬲っていた男を粗暴なgangと評するなら、この男は腕利きの殺し屋といった雰囲気だ。

「何だよ……別に殴った訳じゃないぜ。それとも心も傷つけるなって? 俺にbabysitterみたいにご機嫌を取れってか」


「ウーが倉庫にこのコンテナを運ぶまであと一時間はある。俺は、それまでこの狭いコンテナの中でお前の独演会を聞くのは御免だと言ってるんだ」


「テメェ、いつまでもleader面してるんじゃねぇぞ」

『って、言っていますね。……外国語は久しぶりだから、間違っているかもしれませんが』

 tongueを伸ばし続けながら、途中から英語っぽいOriginの言葉で話す犯人達の会話をBandaは通訳していた。Bandamain bodyであるVandalieuは、実は『Origin』ではJapan語(っぽい言葉)よりも、外国語の方が得意だった。


 そして通訳している相手は、certainly冥である。一age半と少々の彼女には当然訳されても理解できない言葉の方が多いが、大事な事は分かったらしい。

「にいちゃ、うんちじゃなぃっ」

『うん、そうですね。……後は俺がやっておくので、少し眠っていなさい』

 そう言ってBandaはベリベリとfurのマントのようにbody partの外側を覆っているepidermisを引き千切り、冥に被せた。


「うん、Banda

 そして【Deodorization】、【Silence】のmagicをかける。これで冥は何があっても見えず、聞こえず、臭いも分からない。


 一方、犯人達は仲間内の揉め事に意識を集中していて、冥達の奇妙な-sama子には気がつかなかったようだ。

「お前を殺して、俺達四人とウーの五人で報酬を分けても良いんだぞ」

「チッ……おいっ、お前っ!」

 leader格の酷薄そうな男に脅された粗暴そうな男は、clicking tongueをして引き下がった。しかし、それまで黙って耳の辺りを押さえたままコンテナの壁にもたれかかっている男を指差した。


「……なんですか?」

「一発殴られたぐらいで、青白い顔しやがって。暇だったらbody Guardと女を今のうちに殺しておけ!」


「今、ですか? まだfaintedしていますけど……」

「何バカ言ってやがる、faintedしている内に殺すんだよ! 目を覚まして抵抗されたら万が一って事があり得るだろうが! faintedする前にお前を殴った女もただのbabysitterじゃねぇ! プロの護衛だ、油断しないできっちり殺せ!」


 body Guardの男とbabysitterfemaleを駐車場から連れ去ったのは、犯行がばれるまで僅かでも時間を稼ぐためだったらしい。そして結局殺す予定だったようだ。


「……分かりました」

「おい、銃とmagicは使うなよ。コンテナが壊れたら、警察に止められるかもしれない」

「あいつ、あんな奴だったか? なんだか雰囲気がおかしくないか?」

maybe、初めての大仕事でブルってるんだろ」

「……そんなに経験の浅い奴だったか?」


 そう話している犯人達を無視して、命じられた男は縛られて転がされているbody Guardの男とbabysitterfemaleをコンテナの後方、犯人達が脱ぎ捨てた光学迷彩Suitshadowに引きずって行こうとする。

「おい、どうして態々動かす? まさか殺す前に仕返ししようなんて、考えてないだろうな?」

「……いえ、child達が泣き出したりしたら五月蠅いんじゃないかと」

「まあ、確かにな。漏らされたら堪ったもんじゃない」


「お、おいっ、林おじ-sanと佐久間-sanに何すんだよ! 二人は、何も、してな……」

 異変に気がついたHiroshiが声をあげる。だが、言葉の途中で急に目を閉じて寝息をたて始めた。

「な、何だこのガキ? 急に寝ちまったぞ」

「おい、-sama子を見てみろ。何かの発作で意識が無くなったのかもしれない」


 実際には、Bandaが伸ばしたtongueからHiroshiに即効性の睡眠薬を注射しただけだ。tongueの先端に小さなproboscisを生やし、犯人達のBlind SpotであるHiroshiの背後でMaterializationさせ、彼の指に注射した。チクリと感じた時には、もう夢の中だ。

 そして寝た彼にも、犯人には見えないepidermisの布団をすっぽりと被せる。


「気にするな。重要なのは小さい方のガキだと聞いてるだろ。そっちのガキは最悪諦めても良いとな。

 おい、お前はさっさとその二人を――」

 leader格の男が指示を出す。だが、言い終わる前に二発の銃声が響いた。


 どさりと、側頭部を撃ち抜かれた二人の犯人が倒れた。

「テメェ……何のつもりだ!?」

 粗暴な男が驚愕に顔を歪めながら腕時計に偽装したmagic媒体を、leader格の男が素早くリボルバーを構える。


Artillery Technique skillで磨いた技術が、こういう形で役に立つとは……。ああ、すみません。銃を使ってしまいましたね。いや、一度本物のオートマチックピストルを撃ってみたかったので、つい」

 そして青白い顔の男は、無表情のまま仲間を撃ち殺した銃を二人に向けた。


 その耳から、だらりとbloodが垂れている。

「お前っ、そのbloodは……!」

「まあ、少々訳ありでして」

 駐車場で拉致された時、監視cameraがあるし、犯人達はその場では誰も殺すつもりは無さそうだったので、Banda-sama子を見ている事にした。


 ただ念のため、丁度良く倒れていた犯人の一人の脳に【Demon King's sub-brain】を埋め込み、【Demon King's nerves】でbody partを乗っ取り、InfestDemon King Familiarと同じconditionにしたのだ。

 犯人の体内なら、Materializationしていても誰にも見えない。


 そして攫われた今、犯人達はHiroshiを侮辱し、child達にとって良いbabysitterである佐久間-sanと、顔見知りのbody Guardを殺そうとしている。

 更に、ここに監視cameraは無い。


 犯人達を始末するのに、躊躇う理由はもう無い。


「テメェ、何処に雇われた!? 『Bravers』の手先か!?」

 一応はそれなりの期間を過ごした仲間だった男の異-samaな雰囲気に、粗暴そうな男が顔を怒りで染める。どうやら彼は、不安や不満をすぐ怒りに変えて発散する性格の持ち主らしい。


「いや、そういう訳じゃないんですけどね……ところで、あなた達の背後が運転席なので銃やmagicが使えません。ちょっと横に動いてくれませんか?」

 二人の背後にはトラックの運転席が在り、ウーと言うAsia系の男がハンドルを握っている。Bandaは銃弾が犯人のbody partとコンテナ、そして運転席の壁を貫通してウーが死傷し、トラックが事故を起こす事態を心配していた。


 certainly、この大型トラックが横転してクラッシュ、更に爆発炎上しても、Bandaには冥やHiroshiを守りきる自信がある。林と佐久間の二人も加わると若干難易度が上がるが、それでも対応は可能だ。

 しかしこの大型トラックの近くを走っている車や、後続車まで事故に巻き込まれないようにするのは難しい。


 大事故になると予定している隠蔽工作の効果が疑わしくなるし、巻き込まれて犠牲者が出たら冥と、そしてBandaMentalに良くないので、避けたいのだ。


bastardっ、戯けやがって! マナよ、我が拳に大地の怒りを宿せ!」

 粗暴そうな男はcertainlyそんな頼みごとは無視して、Bandabody partを乗っ取った犯人に殴りかかった。Boxing styleの彼の踏み込みは、プロBoxer相手に通用する程鋭い。


 しかし、引き金を引く方が速かった。Bandaは犯人のbody partを操作して、男の顔面に向かって発砲した。

「【Rockナックル】!」

だが、発射された銃弾は粗暴な男の顔の前に構えている方の拳で弾かれてしまう。

 どうやら先程の呪文は、拳を岩のように硬く、そして重くするEarth-Attribute Magicだったようだ。


「オォ! ラァァッ!」

 そして重いbody Blowに、間髪入れず顔面に左のstraight。銃弾も弾く硬い拳は十分凶器の域に達しており、Bandaが操る犯人のbody partは幾つかの内臓破裂と顔面のboneを砕かれ致命傷を負った。

 しかし、【Demon King's sub-brain】と【nerve】は機能し続けている。倒したと油断している男の胴体に銃口を押し当てるようにして引き金を引こうとする。幸い、男が殴るために動いてくれたので背後は運転席では無い。


「――【impact Bullet】」

 だが、その前にleader格の男のリボルバーから放たれた弾丸が、Bandaが操る男の頭部に命中した。凄まじい衝撃で、後頭部から男のboneや脳が撒き散らされる。【auxiliary brain】や【nerve】は無傷のままだが、男の脳の破片と一緒に体外に飛び出てしまった。

 どうやらあのリボルバーはmagic媒体も兼ねており、それを使って弾丸に付与magicをかけて-sama々な効果を付与するのがleader格の犯人の戦い方のようだ。


「……死んだか。何だったんだ、こいつは? 俺に殴られても平気で動こうとした奴なんて、初めてだ」

 床に犯人の男のbloodや肉とbonefragmentに混じって転がるauxiliary brainに気がつかず、粗暴そうな男が呟く。

「確かに異-samaだが、死んだ以上は死体でしかない。そいつの所持品と携帯を調べろ、何か残っているかもしれない。俺は……ウーの奴を宥めておく」


 今の銃声が聞こえたのか、leader格の男の携帯が運転席のウーからと思われる着信を知らせるアラームを鳴らしていた。

「OK。しかし、このガキ共よく寝てられるな。銃声が四発もしたっての……にっ?」

 携帯を取り出し、ウーに「安心しろ、ちょっとしたtroubleだ。もう解決した」と話していたleader格の男は、粗暴そうな男が不自然に声を途切れさせた事に気がついて、顔を上げた。


「……な、なんなんだ、お前は?」

 そして見た。白く長い頭髪と四つの目、耳がある位置まで裂けた大きな口をした、黒い四本の腕と六本の脚を持つ異-samaな、生物とは思えない形状の生物を。


「あなた方の敵です」

 犯人達には異-samaな事に、whole bodyMaterializationさせたBandaの声はとても明瞭で、理知的に響いた。彼らは、Bandaの口からは、獣じみた吠え声や耳にthrust刺さるような金切り声しか出ないと思っていたのか、一瞬驚いたように目を見張り……すかさず動き出した。


「【フレアBullet】!」

 敵であると言う単純な事実を告げられた事が良かったのだろうと、狙い通りの結果に満足しながらBandaは銃弾を無防備に浴びた。

 着弾の衝撃と同時に銃弾が小爆発する。恐らく、本来なら銃弾が体内で爆発して致命傷を与えるのだろうが……銃弾は【Demon King's exoskeleton】の表面で弾けた。傷一つついていない。


「ふむふむ、なるほど。そのリボルバーの口径と、弾丸の種類を教えてくれませんか? それが分かれば、俺自身のDefense Powerがどれくらいなのかconjectureする――」

Shut Up! 【bolt Bullet】! 【ヘビィBullet】!」

 leader格の男は銃弾が弾かれた事に驚愕しながらも、風や土といった-sama々なattributeの付与magicを唱えて引き金を引く。


 どうやら彼は、複数のattributeの適性を持つがmagicaptitude自体はそれ程では無い、いわゆる器用貧乏のようだ。それをリボルバー型magic媒体で補っているのだろう。

「――conjectureする材料になるのですが」

 だが、全ての銃弾はBandaexoskeletonを貫くどころか、傷一つ付ける事も出来なかった。関節や顔面に当たった弾もあったが、それでも彼がDamageを受ける事は無い。


「お前こそ、一体何で出来てるんだ……!?」

 弾を撃ち尽くしたleader格の男が、冷や汗を垂らしながらそう聞き返す。

Goddamn! マナよ、大地の怒りを、鉄の戦意を我が拳に!」


 そして危機感から逆に我に返った粗暴そうな男が、Bandaに殴り掛かった。

 素早く、プロのBoxerと同じかそれ以上の鋭い拳が振るわれる。牽制のjabに抉るようなフック、防御の隙間を狙ったstraight。見事なラッシュだ。


 その全てをBandaは四本の腕の内、一本だけで受けた。掌で柔らかく、粗暴そうな男が手を痛めないように受け止めている。

「さっきは岩でしたが、今は金属……鉄か鋼のような硬さと重さを拳に付与するmagicですか。確かに、これなら銃弾を弾くDefense Powerが相手でも通じるかもしれませんね」


 右、左、左、左、右と思わせてもう一度左。受け止められた瞬間右straight。それらを全て掌で受け止め、残り三本の腕を組んだままBandaは考察を続ける。


「ジ……ジーザス……!」

 まだ拳を繰り出しつつも、顔にdespairが浮かび出した粗暴そうな男に、Bandaは言った。

悪いとは思いますが、俺から見るとあなた達は弱すぎる」

 Bandaは、『Lambda』にいるVandalieuが、自身のsoul fragmentを捏ねあわせて作った存在、彼のCloneだ。

 そのため、分裂した当時のVandalieuと同じ経験と技術、そしてbody part Abilityを持っている。


 Brown BearLionTyranosaurusさえかわいく思えるようなmonstersを殴り殺す腕力に、翻弄するSpeed、上回るStamina。それらを彼は持っているのだ。

 そして彼はmagicだけでは無く、【Unarmed Fighting Technique】の達人でもある。


 『Lambda』の武術系skillは、5levelで常人としては一流の域に達している。それが10levelともなれば、『Origin』では超人……現実には存在しないフィクション作品の達人の域だ。


 超人Classの達人が、monster以上のbody part Abilityを発揮して戦う。それが『Origin』でのBandaなのである。


「俺の力がどの程度なのか図るための検証を兼ねてお前達を嬲るのは、もうそろそろ終わりにしましょう」

 そう言ってBandaは、粗暴そうな男のpunchを握りしめた。

「ギャッ!? ギャアアアアア!? う、腕がっ、俺の腕がああああ!?」

 それだけでBandaの指が鉄並の硬さになっている拳を砕き、clawsが刺さる。


「ま、待て! ガキ共がどうなっても良いのか!?」

 弾の装填が終わったのか、leader格の男がリボルバーをHiroshiに向けてそう叫ぶ。どうやら人質を取るつもりのようだ。彼らの雇い主にとって重要である冥ではなく、Hiroshiに向けている事から錯乱した訳では無さそうだが、その顔には追い詰められたもののhorrorが浮かんでいる。


 しかし Bandaはそちらを見ずに、Hiroshiや冥に被せたepidermisを【Materialization】させた。

 それまで見えなかったepidermisが突然現れchild達を隠した事に、犯人達が驚いて息を飲む。

「そのepidermisは俺のexoskeletonと同じ硬さがあります。それでどうにか出来るのなら、やってみてください。ああ、触って退かそうと試みても、構いませんよ。……あなた方の手が傷つくだけですから」

 そしてBandaの言葉に、今度こそdespairを浮かべる。


「く、クソ……『Bravers』共め、何てmonsterを飼ってやがるんだ! 畜生っ、兄貴の、仇を……!」

「動機は金だけではなく、Amemiya Hirotoに対する復讐ですか。何らかの理由で兄を殺されたのなら、恨む気持ちは理解できます」

「な、なに?」


 恨みとはemotionsである。reasonで割り切れない事もあるだろう。Amemiya Hirotoが殺した事と、この男自身の行いからconjectureすると、その兄はほぼ確実に犯罪者、それも凶悪犯の類なのだろうが、それでも恨む事を否定するつもりはBandaにはない。

 法の下であろうと、正義があろうと、殺し合いだ。他の誰がどんな理論で否定しようと、恨むか恨まないかを最終的に決めるのはこの男自身である。


「だからと言って、何も変わりませんが」

 二本目の腕をthrust出して、男の脇に抉るようなフックを放つ。彼の肋boneがポキポキと折れる軽快な手応えと、内臓が幾つか潰れる感触をBandaの拳に伝えた。


「お゛ごっ!?」

「お前に復讐する動機があるように、俺にもお前を殺す理由がある。そして俺の方が圧倒的に強い」

 三本目の腕は、男にbody Blowを放つのに使う。男の胴体をthrust破らないように手加減した拳は、男の内臓を更に潰した。


「……げぼっ!」

 ぶばっと男が口からbloodを吐き出す。

「後、伝言です。『お兄-chanは、うんちじゃない』」

 そして四本目の腕で男の顔面に向かって右straightを放った。男は最後の力を振り搾って拳で頭を守ろうとしたが……Bandaの拳は男の拳ごと男の頭部を殴り砕いた。


 水分の多い果肉を硬い殻で包んだ果物が砕け散ったら、こんな感じだろう。そんな音がコンテナに響く。


 首から上と左右両方の拳が破壊された男のbody partをその場に捨てて、Bandaは立ち尽くしているleader格の男に向き直った。

「……分かった。抵抗はしない、せめて一思いに殺してくれ」

 近づくBandaに対して男はそう言うとリボルバーを捨て、首を差し出すようにその場で膝をついた。


「自殺するのならその銃で自分を撃つ方が楽だと思いますが? 弾はまだあるでしょうに」

「……宗教上の理由で、自殺は出来ない」

 訝しむBandaに、leader格の男はそう答えて瞼を閉じた。


「宗教上の理由、ですか」

 幼子を拉致し、人を殺すのはよいが、自殺は禁じるとは、どんな宗教なのだろうかとBandaは呆れたようにため息をついた。

(問題は宗教ではなく、この男自身の倫理観か)

 しかし、そう思い直して男の首を刎ねるために彼に近づいた。


「……虚空を旅し、我が手に戻れ。【apport】!」

 だがその瞬間、男が右手をBandathrustあげながら急に立ち上がる。彼の右手には捨てたはずのリボルバーが握られており、その銃口はBandaの四つある目の内の一つにthrustつけられていた。

 そして銃声と不吉な爆発音が響く。


 不意打ちを見事成功させた男の口から、言葉が洩れる。

「な、なんだ……と?」

 しかしそれはBandaに対する勝利宣言ではなく、驚愕とdespairに打ち負かされた男の呟きだった。


「これは油断しました。降伏して見せて、俺が近づいたらSpace-Attribute Magicでリボルバーを手元に取り寄せ、目を撃つとは」

 Bandaは四つの目で、暴発によって壊れたリボルバーと、その破片で傷つきbloodを流している男の顔を見つめながら言った。


「目を狙ったのは、良い判断でしたね。実際、他の部位よりは柔らかいですから。ただ……あなたの銃程度では、目つぶしにもなりませんけど」

 Bandabody partを構成するのは、【Demon King Fragment】だ。another worldの、GodsしかRefiningできないlegendの金属、Orichalcum製の武具でなければ傷つける事は極めて難しい。


 eyeballもその例外ではない。


「……ばけも……の……め」

 銃の破片が脳にまで達していたのか、どさりと男が倒れた。Bandaは彼の頚boneを踏み折って止めを刺し、運転席にいる犯人groupの最後の一人、ウーの-sama子を見に行く。

 コンテナ内でこれだけ騒げば、異常事態が起きている事は伝わっているはずだ。


 【Materialization】を解いてコンテナの壁をすり抜け運転席を見ると、焦った顔つきのウーが運転しながら片手で携帯を操作している。どうやらleader格の男に何が起こったのか、再度連絡を取ろうとしているようだ。

 Bandaはそのままウーを見張った。彼が携帯に誰も出ない事に業を煮やして人気のない場所でトラックを止めるまで。


『【毒】』

 トラックを止めたウーが運転席から出る前に、背後からDeath-Attribute Magicで作った毒で眠らせる。そして再びコンテナに戻って冥やHiroshi、そしてbody Guardbabysitterの二人が無事である事を確認する。


『全員無事で、トラックも安全に停車。場所も車が多くない道路だ。ああ、良かった。俺がHuman性を保つためにも』

 Bandamain bodyは冥だ。しかしBandaの人格は冥から完全に独立している。その上彼は食事も睡眠も必要無く、姿形もHumanとはかけ離れている。

 そして力は先程示した通りだ。訓練されたプロの護衛二人を、光学迷彩と言う反則技を使ったとはいえ、生きたまま制圧した犯罪group六人の五人を殺し、一人を生け捕りにした。


 この結果にBandaが増長し、このworldHumanを見下すようになったら取り返しがつかない。意味も無く人の命を奪い、その事に罪悪感も覚えず、深く考えもせずに冥の為と言う理由で大量殺人だろうが大規模テロだろうが、何でもやるようになってしまったら、取り返しがつかない。


 それは結局冥の為にならない。彼女一人の為だけのmonsterは、結局彼女自身も傷つけてしまうのだ。

『それに……このworldで俺のDefense Powerが幾ら高くても、それを無視できるAmemiya Hirotoには無力ですからね。本当にCheat Abilityってズルい』

 そう愚痴を零すと、コンテナ内に飛び散った犯人達のbloodを使って、偽装工作を始めた。


「んぅ~、Bandaっ」

『ああ、もう起きちゃいましたか。もうちょっと待っていてくださいねー』

 冥の周りにかけた【Silence】を解除して、そう声をかける。

 そして指を覆うように【Demon King's Fur】を生やし、筆のようにしてbloodで、髑髏とそれを囲む八形をコンテナの壁に描いた。


『この前televisionで見た『The 8th Guidance』のmarkは、確かこんな感じでしたね。……main bodyと連絡が取れたら、Legionに無断使用を謝らないと』


 Bandaの考えた偽装工作とは、壊滅したはずの『The 8th Guidance』の仕業に見せかけると言うものだった。

 『Bravers』との戦いの結果全員が死亡している『The 8th Guidance』だが、それを知っているのは自分達と『Lambda』にreincarnationしたReincarnatorだけだ。

 実際には死体が残っていないため、状況的に死亡したとconjectureされているだけで、厳密には生死不明なmemberもいる。


 例えば【Oracle】のEndou Kouyaに憑りついて彼のBodyごと自殺した、『Shade』。そして【Mage Masher】のMinami Asagiを巻き込んで自爆した、『Baba Yaga』。

 他にも死体が断片しか残らなかった者もいるし、決戦までmember以外の誰にも存在を気がつかれなかった『Ghost』の例もある。


 だからmarkを見れば『The 8th Guidance』の生き残りか、あの戦いの時別行動をしていたmemberだと誤解してくれるかもしれない。

『犯人同士で仲間割れになった状況も一部用意できましたし、『Shade』が犯人の死体に乗り移ったのではないかと思ってくれるかもしれませんしね。

 ……『The 8th Guidance』が何故Me-kun達を助けたのか、疑問に思うでしょうけど』


 だがまあ、Bandaとしては外部に犯人がいると思わせられればそれで十分だ。

 それに、これでAmemiya coupleの危機感が高まって、冥やHiroshiの守りをEnhanced (1)してくれるかもしれない。

 犯罪者に報酬を提示して拉致を依頼できる何者かがいるのだから、今までと同じsecurityでは不十分だ。


『まあ、その依頼主に関しては一人生け捕りにしたのですから、頑張って捜査してもらいましょう』

 一応犯人達の霊から聞いてみるが……Bandaには死者を魅了する力が無いので、脅して口を割るかは分からない。

 魂を砕くとRodcorteに気がつかれてしまう可能性があるので、それは出来ないし。


 そして口を割らせたところで、Bandaは冥から約五十meterしか離れられない。黒幕まで追うのは難しい。


 そして偽装工作を終えたBandaは、警察に『不審なトラックが止まっている』と通報するため、leader格の男の携帯が何処かに転がっていないかと探し始めた。

 その途中で彼は、自身が意識を奪ったHiroshiが、眠りながら泣いている事に気がついた。


『……余程悔しかったのですね』

 この事件は、Hiroshiの幼いMentalに大きな傷を残すかもしれない。彼なら自力で立ち直り、辛い経験をバネに成長してくれると、楽観視はできない。


 立ち直るための杖代わりになる何かが、必要だろう。それをAmemiya coupleが与えられるなら、Bandaの出る幕は無い。だが、尾を引くようなら……。

『その時は、No-Attribute Magicでも教えてみましょうか。【Fortify Regeneration】や【Physical Ability Enhancement】を使えるようになれば、役に立てるでしょうし』


 このworldでは未発見のNo-Attribute Magicだが、Hiroshicomplexの原因である両親達のCheat Abilityには遠く及ばない。だが、杖の代わり程度にはなるだろう。

Banda、にいちゃ、友だちになゆの?」

『なゆのかもしれません。でも、まずは姿を見せないまま呼びかけてみましょう。……夢に出られると楽なのですが』


 冥のtongue足らずな口調に合わせて答えつつ、Bandaは見つけた携帯のボタンをプッシュしようとして……それがスマートフォンである事に気がつき、操作にかなり戸惑う事になった。




 Amemiya Meiの拉致に失敗した。その報告を聞いても、【Avalon】のRokudou Hijiriは残念には思わなかった。

「予定通りだ」

 originally拉致は失敗する予定だった。accurateには、拉致には成功するが取り返しのつかない事態にdevelopmentする前に犯人達の情報が手に入り、無事冥とHiroshiは保護される。犯人は逮捕か射殺され、聖が用意した依頼主の男は死体で発見。真の黒幕は不明のままというのが、大まかな筋書きである。


 この計画の目的は、Amemiya coupleに自分達のchildは狙われていると強く意識させる事だ。そして彼らに信頼されている聖が、「護衛として常に【Bravers】の誰かを付けよう」と提案し、彼自身も冥達の元に頻繁に通う。

 つまり、手元に置いているのと同じ状況を作る事にあった。


Amemiya Mei……あのchildは私のdeath attribute研究にとって重要なSampleだ。本格的な研究は、体内のManastabilityし適性が検査で分かる三ageになるまで待たなければならないが、今からでもそのための環境を作っておいて損は無い」

「それは分かっていますが……我々の筋書きとは異なる事態が起きています」

 同じReincarnatorであると同時に聖の部下でもある【Shaman】のMoriya Kousukeは、事件解決の経緯を纏めた報告書を彼に渡しながら、説明した。


「犯人groupの情報を捜査機関に流す前に、不審なトラックが止まっているとの通報があり、警官が向かってみるとAmemiya Meiを含めた四人の被害者と、犯人groupが発見されました。四人は全員が生存し、犯人groupは六人中五人が死亡。

 そしてこれはmass mediaには伏せられていますが……コンテナに『The 8th Guidance』のmarkが描かれていました」


「何だと?」

 聖は驚いて報告書に視線を落とし、詳細に読むがそこには奇妙な事ばかりが書かれていた。

 Murakami達を背後から操っていた彼は、『The 8th Guidance』全員が死亡している事を知っている。研究機関から逃げ出したmemberの資料等から見ても、間違いは無い。

 まさか『Ghost』のような例外が、何人もいるとは思えないが……。


「……ただのcopycatが、ここまでの事を出来るはずがない。death attributeManaは、幾つかの条件を満たすと感染する事があるのは、『Undead』と『The 8th Guidance』の事から明らかだ。

 同じように『The 8th Guidance』から、誰かにdeath attributeが感染しているのかもしれない。その可能性があるとしたら、Amemiya Meiだけだと思っていたが、警戒が必要だな。

 だが、概ね予定通りなのは変わらない。Amemiya Meiを警護しつつ、この偽『The 8th Guidance』について調査する。目的、Ability、そして何処に居るのか、全てだ」


「はい、お任せください」

 Kousukeはその後早急に偽『The 8th Guidance』の調査に乗り出すが、しかし一向に手がかりを手に入れる事は出来なかった。

 何故なら、彼が探している存在は常に冥と共にいるのだから。


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