Alda's FactionのGodsは、Talosheimを含めるBoundary Mountain Range内部を監視していた。ただ、Vida's FactionのGodsが張り巡らせているBarrierによって神の力が遮断されてしまう。
そのためGodsは自身が存在するDivine Realmに覗き窓を創り、雲よりも天高くから地上を見つめると言う……諜報活動としてはかなり頼りない方法である。
これが Bahn Gaia continentの地形の観測や、accurateなmapの測定、広範囲に渡る気象を含めた自然の観測なら、大きな成果が望めるだろう。
だが、Godsの目的は地上に存在する都市国家の情報収集である。
もちろん高位の存在であるGodsの目は、Humanよりもずっと遠くのものを見る事が出来るが……流石に限度がある。それに透視Abilityを持っている訳でもない。そもそも、本来なら必要無いのだ。
Godsは自らに祈りを捧げるbeliever達の目や耳を通して、worldを知る事が出来るのだから。
この「祈りを捧げる」という条件のhurdleは、かなり低い。毎日決まった時間に何時間も礼拝を行うような熱心なbelieverでなくても、食前に短く祈り、一週間から一カ月に一度、templeや祠、家に置かれているIdol Statueや聖印に手を合わせれば十分満たせる。もちろんreligionが強ければ強い程詳しく見る事が出来る等の違いはあるが、その程度だ。
……まあ、これは諜報の為の力では無く、Godsとして備えるべき基本的なものなのだが。believerの祈りに応える事が出来るのは稀とは言え、そもそも祈りを聞く事が出来ないのではそれすら不可能になってしまう。
もっとも、Boundary Mountain Range内部はBarrierで阻まれている事と、何より彼らのbelieverが一人も存在しないためどの道諜報には使えないのだが、
『……う゛ぅっ!』
そうした事情で己のeyesightのみを頼りにBoundary Mountain Range内部を監視していた神の一柱、『God of Waves』Ryaonが呻いてそのままDivine Realmの内側に倒れた。
『Ryaon -dono! Ryaon -donoが倒れたぞ!』
『Talosheimを見過ぎたのか!?』
『だ、大丈夫だ。暫く休めば落ち着く……だが今これ以上続けるのは難しいようだ。Yupeon -samaに、他の神との交代をお願いしてこよう』
『そうしなさい。その間の監視は、我が代わりましょう』
Alda's Factionでは、光と生命の両attributeの長をAldaが務めているが、他のattributeの長を務めるべきGreat Godが存在しない状況が十万年前から続いている。そのため残りの六attributeはそれぞれ代理の神が長を務め、各attributeのGodsを率いてきた。
Farmounが約五万年前に離反したため、Fire-Attributeは更に代理の神を立てなければならなかったり、spaceと時attributeは残っていたのがegoを持たないGodsばかりで新しい神を選ぶのも難しいconditionだったりと、stability的とは言い難い体制だが。
だがWater-Attributeと土attributeはそれぞれGreat Godの補佐を行っていた神が代理に立っており、十万年前から比較的にstabilityしていた。
そのWater-Attributeの神のGreat God代理が、Championに槍を授けた事で知られる『God of Ice』Yupeonである。『God of Waves』Ryaonは、彼のbelieverの中から見出された神である。
『しっかり休むのだぞ、Ryaon -dono。
しかし、我等GodsのMentalさえ蝕むとは。Demon King Vandalieu……恐ろしい奴だ』
そのRyaonのMentalを蝕んだのが、Talosheimの建物の屋根に描かれた謎の模-samaである。何か意味が込められた抽象画のようであり、childの落書きのようでもあり、個々の屋根の絵が独立していると感じる時もあれば、町全体で一つのthemeを表しているようにも思える。
それはただの前衛芸術では無く、Vandalieuの【Mind Encroachment】skillの効果が込められたCurseの絵である。
目にするだけで神のMentalをも蝕む、恐ろしい魔の芸術だ。
『我々神であれば耐える事も出来るが、もしbeliever達が見てしまったらと思うとゾッとする……』
『Amid Empire軍やSauron Duke 家では、Scylla共のAutonomous Territoryだった土地に奴が仕掛けたmonolithや地上絵を見たせいで、既に何人も正気を失ったそうだ。【Mental Resistance】skillを持つ者でも、油断はできないとか』
『正気を失うだけならまだいい。中には奴に魅入られ、何かに誘われるように旧Scylla Autonomous Territoryへ向かい姿を消した者もいる。彼らは、既に我々のbelieverでは無くなっていた』
『Championの力を持ったDemon Kingか。それにしても厄介なGuidanceだ』
監視を行っているGodsにとってはCurseの絵だが、Godsから見て心に闇を抱えた存在が眼にすると、Demon Kingのfanaticへと導かれてしまう。
Guidanceはpsychological攻撃では無く、受けた者にとっては良い効果なのでresistance skillも役に立たない。
『Moksiの町でもVida’s Incarnationと共に、次々に人の子を甘い言葉と手練手管で誘い、導いているらしい。案外、Ricklent -samaやZuruwarn -samaがAlda -samaを裏切ったのも、奴に狂わされたせいかもしれないな』
『……否定は出来んな。あの姿を見れば、尚更。伝え聞いたDemon King Guduranisの恐ろしさも薄れる悍ましさだった』
『事実、Guduranisより恐ろしいかもしれん。我々は十万年前の戦いの後に神に至った故、Guduranisを直接見てはいないが……明らかにVandalieuの方が狡猾で、したたかなのは分かる』
『その狡猾でしたたかなVandalieuを、Rodcorte -donoのReincarnator達は倒せるのか? 我らがAlda’s Divine Protectionを受け、AldaのHeroic spiritまで遣わされた次代のChampion、Heinzですら大きな被害を出して一旦引かせただけだ。
己の魂をRealizationさせ、更にその魂を自ら傷つけても一月も経たずrevivalし、『Evil God of Joyful Life』を喰い滅ぼし、ついには龍やTrue giantのbloodlineでもないのにDemi-Godに至ったようなmonsterだぞ』
『Demi-Godか……確かにその通りだが、奴はすっかり神気取りだ。見ろ、人々にGiantな己の像をArchitectureさせている』
その神が指差した場所では、GiantなVandalieu像のArchitecture作業が行われていた。後世までTalosheimが存続した場合、観光名所の一つに数えられるのは確実だろうと思えるGiantさである。
だが『いや、殺せるはずだ』と他の神が口を挟んだ。
『Bodyがある以上、いつか死は訪れるものだ。寿命を持たないVampireやMajin Raceや、既に死んでいるUndeadであっても滅びは避けられない。より高度な存在、Demi-GodであるTrue giantや龍、Beast Kingであってもそれは変わらん。
……Demon King Guduranisは、確かにBodyをcountlessの肉片に切り裂かれ魂を分割されても生き続けているが、sealedする事は出来ている。そうだろう?』
その神の言葉に、確かにと他のGodsも同意する。彼らGodsの認識の中では、永遠に不滅の存在は無いとされている。事実、Great GodですらDemon King Guduranisに滅ぼされてしまったし、そのGuduranisも厳重にsealedされ死んでいるに等しいconditionだ。
どんな存在であっても、例外は無い。違いはそうなるまでの年月ぐらいだ。
『ただ……殺す事が出来たとして、その後どうするのだ? 奴が普通のDhampirなら気にしないでもいいとは思うが、奴はUndead Userだ。死の瞬間、自らの死体をUndead Transformationしてrevivalする可能性は十分ある』
今までの歴史上、Pure-breed Vampire GubamonやTerneciaのような、俗に言うnecromancer、Undead Userが何人も登場した。それらはVandalieuと同じdeath attributeのmagicでは無く、邪悪なGods 's Divine Protectionや異端のLife-Attribute Magicで死体に偽りの命を与えて操る術者達だった。
そうしたnecromancer達の内何人かは、致命傷を負って倒れても自らの死体をUndead Transformationさせて立ち上がる事があった。殆どは生前の人格もMemoryも失ったただのZombieになるだけで、悪足掻きに過ぎなかったが。
しかし、もしVandalieuが同じ事をした場合、生きている時と同-samaの脅威であり続ける可能性が高い。
『それに関しては、Alda -samaとRodcorte -donoが約定を取り決めたではないか。殺した後、Undead Transformationする前にRodcorte -donoの『God of Reincarnation』としての権能でVandalieuの霊を捕え、sealedすると』
『God of Reincarnation』であるRodcorteの権能は、生きているHumanには及ばない。権能が及ぶのは死んで、reincarnationして生まれ変わる前の魂だけだ。
だがBodyを失って死んだとされるconditionなら、自身のCircle of Reincarnation systemに属していない魂にも、干渉する事が出来る。
Lambda worldにAdventする形で手を伸ばし、無力なconditionの霊を掴みとるのだ。そして、そのままsealedする。
Demon King Guduranisのsoul fragmentと、同じように。
『魂について我々は門外漢だが、専門家であるRodcorte -donoがあれほど強く断言したのだ。殺す事さえ出来れば、Vandalieuをsealedする事は可能なはず』
『なるほど、確かに。あのGuduranisの魂をもsealedするRodcorte -donoの力なら、信頼は出来る。
だが、肝心のReincarnator達はVandalieuを殺す事が出来ると思うか?』
そう神の一柱が尋ねると、他のGodsは思わず押し黙った。
Vandalieu以外のReincarnator達、『Bravers』の『Origin』での活躍をAlda's FactionのGodsは詳しく知らない。だがこのworldにreincarnationしてからの動向はある程度知っている。
それからconjectureすると……今のところ平均的なHumanよりはずっと速く成長しているが、今後の伸び代を加味しても神をも滅ぼすVandalieuを倒せるかは疑問と言うものだった。
『後は、Rodcorte -donoが主張するCheat Abilityが、どの程度有効かだな』
『それと、我々GodsがこのworldのHeroと同じようにblessingsを与え、Familiar SpiritやHeroic spiritを遣わして支援した場合どの程度伸びるのか……戦上手で知られる『God of Thunderclouds』Fitun -dono次第か』
『Nineroad -donoのUnder Commandから離れ、独自に行動をとっているため、Alda -samaの怒りを買ったようだが……いっそ我々のHero達もFitun -donoに合流させて、力を合わせて戦うべきではないか?』
『待て、Fitun -donoがReincarnatorに授けた策が分からぬまま不用意に近づけば、かえって邪魔になりかねん。
誰かFitun -donoか、そのHeroic spiritやFamiliar Spiritに連絡の取れる者はいないか?』
Vandalieuに対する危機感が募っている若いGodsはお互いの顔を見回すが、誰も手を上げない。Fitunとその配下達に連絡を取る手段を持っている神はいないようだ。
だが、Ryaonから監視を代わった『Goddess of Rain Clouds』Baciasが、視線をTalosheimから動かさないまま口を開いた。
『同じNineroad -samaのSubordinate Godとして、勝手な行動を止めるために連絡を取ろうとした事がある。我が知っているFitunのHeroic spiritやFamiliar Spiritに仲介を頼んで。
だが……彼らはFitunのDivine Realmには居なかった』
『居なかった? まさか既にVandalieuに砕かれて……!?』
『いや、それはあるまい。それならGodsの誰かが気がつくはずだ!』
『恐らく、Fitun -donoがReincarnatorに授けた策のために、Divine Realmの外に出ていたのだろう。……各々方、どうやら我々に出来る事は無いようだ。各自、割り振られた役目を果たす事に専念しよう。
……ところでBacias -dono、大丈夫か? Ryaon -donoと交代する前もBacias -donoが監視をしていたはずだが』
この場に居る若いGodsの纏め役である神が、Baciasを気遣って声をかけるが、彼女はやはり視線を動かさずに答えた。
『問題無い。貴-donoが言ったように、我は己の役目を果たしているだけ』
『そうか。貴-donoの献身にはNineroad -donoも感心しておられるだろう。だが、変調を覚えたらすぐ言うのだぞ』
そう頷いてその神はBaciasに監視を任せた。この時彼は、強引にでもBaciasのTalosheimを見つめる顔を見ておくべきだったかもしれない。
彼女の顔にはじっとりと湿った口調とは裏腹に、熱が浮かんでいたのだから。
その頃、甘い言葉と手練手管で人々を誘っている片割れであるVandalieuは、まさしくその最中であった。
ぼんやりと光るWispが唯一の光源である薄暗いroomに、immatureな者達を集め、語りかける。
「闇に誘われし、か弱き者達よ。よくぞ我の下に集った」
Vandalieuの言葉に、集まった者達の中にいるOswaldが小さく震える。
「我は汝らに、光に満ちた白い道を歩く者には決して与えられぬもの……力を与える存在。
力を得れば、汝らは一つを除いて欲するものを全て手に入れる事が出来るだろう。より長く生き、より美味い物を喰らう事が出来る。
だが、その代価に我は汝らの自由をdemandする。一度魔性に堕ちた者は二度と元に戻る事は出来ない、その覚悟がある者のみ我が前に進み出てそろそろきついので勘弁してください、Mash」
「何だよ~っ! 超良いところだったのにぃ!」
Wispの明かりが届かないroomの端の方に集まっていたchild達の中から、Mashが不満そうに声をあげる。
「そうだよ、お兄-chanかっこよかったよ!」
「凄く悪役っぽかった!」
「続きやって、続き~!」
そしてMarciaを含む他のchild達も、Vandalieuに芝居を続けるようにせがむ。
「ちゅう」
「キィキィ」
Vandalieuの前に並んでいるimmatureな者達……Marciaの飼いmouseのOswaldや、Mashが育てている仔BatのNightwingは、大人しくPet仲間と戯れている。
孤児院の一室で何故こんな事をしているのかと言うと……Pure-breed Vampire Birkyneの魔の手から助け出されたMash達に、Vandalieuは自分の正体とMoksiの町に来た裏の理由を打ち明けた。
それに対してMash達は……
「お前、俺達に隠し事をしていたお詫びに、何でもするって約束したよな?」
「約束しました」
「それでNightwing達をFangやMarollみたいにしてくれって言ったら、『-chanとTamer出来ていたら』って言ったよな?」
「言いました」
「それでお前の出したtestに皆合格したよな!?」
「皆二回目で合格しましたね。Mashだけ三回目でしたけど」
「それはいいんだよ! それで、ついでにNightwing達がもっと強くなれるように、おまじないに協力してくれって頼んだら、頷いたよな!?」
「……頷いてしまいましたねー」
今日に至るざっとした経緯は、そんなところだった。
あれから約二週間かけてTamerとして最低限……nameを呼ぶと寄って来る等、飼い慣らしていると判断できる段階までPetを躾けたMash達は、Petのmonsters化をVandalieuに頼んでいたのだ。
「まさか、おまじないでこんな芝居をさせられるとは思っても見なかったのですよ。大根役者の俺がやっても、つまらなくないですか?」
「そんな事無いって、お前スゲーaptitudeあるぜ! お化け役なら今すぐtheaterで雇ってもらえるぜ、きっと!」
「Mash、ありがとう。気持ちだけ受け取っておきますね」
死んだ瞳に白い髪、屍蠟のような肌、そして不気味なほどの存在感の無さ。無表情と平坦な口調のため演技が出来なくても、確かにお化けならはまり役だろう。
……自前で【Flight】したり、【Demon King's Ink Sacs】の色素でeyeballを真黒く染めたりと特殊効果やメイクも出来るので、horror専門のtheaterがあったら、確かにすぐdebutできそうだ。
『はて、儂は何をしていたのでしたかな?』
Wisp……Chipuras達Light AttributeのGhostに倒され、自身もLight Attributeを帯びた元Birkyneの腹心だった、老Vampireはぼんやりとした-sama子で、ふよふよと漂い出した。
「おじい-chan、あたし達と遊んでいる途中だよ」
『おお、そうだったかのぅ』
「じい-chan、そっち行っちゃダメだよ。こっちこっちっ」
声だけ聴くと孫と戯れる老爺のようだ。Light AttributeのChipuras達に倒されたため、彼のevilはMemory等と一緒に洗い流されてしまったらしい。
彼も加害者の一人なのだが、child達は青白く光る火の玉があの時の老Vampireだとは認識していないようだ。
ちなみに、彼とMagisa以外の残り二人のBirkyneの腹心は、VandalieuによってUndead Transformationさせられている。ElfのNoble-born VampireはBodyが完全に破壊されたためCursed Weaponsに、逆にDwarfのNoble-born VampireのMortorは体が残っていたので、Magisaと同じくVampire Zombieになっている。
二人ともこの町でなく、TalosheimのVampire Zombieで構成されたDark Night KnightsのApprenticeとして働いている。
「なあ、あの爺-sanみたいなWispだったら、俺達でもTamerってできるかな?」
child達とWispの交流をVandalieuが、やや現実逃避気味に眺めているとMashが確認するように訪ねてきた。
「できますよ。既に例がありますし」
UndeadはTamerできないとされているし、Vandalieu以外には実際生者がTamerを試みるのは危険なmonstersだ。だが既にVandalieuが導いたmonstersなら、彼以外のHumanでもTamerする事が可能だ。
前例として、父親の霊が宿っているCursed WeaponsをTamerしているIrisや、Living ArmorをTamerした元偽ResistanceのHaj達がいる。
「まあ、向き不向きがありますけど。俺に好意的だからと言って、俺以外の人にも好意的とは限りませんから」
「その辺りは生きている奴も同じだろ。だったら、親の霊がくっ付いている奴が孤児院に来たら、顔を見させてやってくれよ。もし一緒に居られるなら、辛い別れにはならないだろうし」
「構いませんよ。当人達の意思や、霊のconditionにもよりますけど」
Mashの頼みに、Vandalieuは特に問題を感じなかったので頷いた。このworldでは母であるDarciaがいるが、『Earth』では物心つく前に両親は死んでいたので本当の親に会えない気持ちは理解できるからだ。
霊を常人の目にも映るようになる【Visualization】の術をかける事はcertainly、Undead Transformationさせるのも今では負担では無い。
同じ事は違法な人身売買を行っていた、『Hyena』のGozorofの犠牲者にも行っているし。
流石に「適当な霊から両親の代役を見繕って、それを実の両親だと偽ってintroductionしろ」とか、「死体をツギハギして両親っぽいZombieを作ってくれ」等と言われたら、考えただろうが。
「本当か!? 孤児院に来たばかりの奴の中に、時々両親に会いたいって泣く奴がいるから助かるぜ」
「その子に親の霊がついているとは限りませんけどね。この町周辺で亡くなったのなら、まず俺の所に来ているかもしれないので、探してみますけど」
「それで十分だぜ、ありがとな。いやー、もし断られたらDemon Kingごっこ止めても良いからって頼み込むつもりだったから、すぐ頷いてくれて助かったぜ」
「……今からでも断って良いですか?」
「ダメ」
「ですよねー」
がっくりと膝をつくVandalieu。
「でも、そろそろ時間も無くなるから、変化させるところまで進めてくれ」
「はい。ええと……力を求める者達よ、我が紅きbloodの祝福を受け、闇のFollowersに加わるがよい」
【Perfect Recording】の効果もあって暗記していた台詞をそのまま口にしたVandalieuは、鋭いclawsを自分の掌にthrust刺した。
紅いbloodが、床に置かれたsoup皿に滴り落ちる。それを前にしたOswaldやNightwingが、皿に駆け寄りVandalieuのbloodを飲み始めた。
child達のPetの多くは肉食や雑食性の小動物だが、bloodを特に好む生態ではない。それが飢えた獣のように夢中でbloodを飲む-sama子は、確かに異-samaであった。
そしてbloodを飲み続けるPet達のbody partからメキメキと何かが軋むような音が響き、変異が始まった。
そしてOswaldはGiant Ratに、NightwingはGIANTバットに、他のPet達もRank1のmonstersへと変わっていく。
「これで汝らは我がFollowersとなった。我を裏切る事は許されない……ゆめゆめ、忘れる事のないように。っと、言う訳で明日は皆でTamer guildに行って登録しますからね。忘れないように」
「「「は~い!」」」
『はぁぁい』
「それは分かっているけど、もうちょっと余韻を楽しませろよ~っ!」
元気の良いchild達の返事と、それにつられたWispの返事と、Mashの苦情。しかし結構Vandalieuとしても限界に近かった。
Evil God (M) Evil God (P)にすら蝕まれなかったVandalieuのMentalを追い詰める、Mashの台本。恐るべし……なのかもしれない。
単にVandalieuもこじらせた時期があっただけともいうが。
「Mash、皆何をやってるの! 昼間から窓を閉め切って、Vandalieu -sanに変な事を頼んで、困らせていない?」
「なんだか変な臭いが……っ!? blood、bloodが!?」
そこに扉を開けてCelisとBestraが入って来た。二人ともMash達のPetを今日変異させる事は知っていたはずだが、何か異変を感じて入って来たようだ。
実はSubordinate VampireであったCelisとBestra、そしてDhampirだったDirectorは、暫くはそれまで通りHumanとして孤児院を運営する事にした。
DhampirのDirectorはともかく、VampireであるCelisとBestraは法律上monstersであり、Humanと偽って町に入り込んでいた事が分かると、Adventurer’s Guildの討伐対象になってしまうからだ。
彼女達の事情を明かせば、町からの追放ぐらいで許されるかもしれない。だが逆に「Pure-breed Vampireの手先を養成するための機関」として孤児院全体が糾弾されてしまう可能性もある。
VandalieuはMoksi Earlとは良好な関係を築いているし、それなりに信用もしている。しかし、彼は絶対的な権力を持つMonarchと言う訳ではない。
他の領地を治めるNobleには彼の政敵もいるだろうし、それとは関係無く「Dhampirはいいけど、Vampireは例外無く悪だ」と断じる宗教勢力もある。
Moksi Earlがそれらと政治的に戦う事を選んだとしても、彼が仕えているAlcrem Dukeがどう判断するか分からない。
Dukeは今のところ、Julianaの関係でVandalieu達を探ってはいるが、それだけで具体的に敵対的な意思は見せていない。だが、孤児院の真実を知った時、彼がそれをVandalieuに対する攻撃材料として使わずにいられるか、分からない。
そう言ったややこしい上に、Moksi Earlの政治生命と毛髪に致命的な事態を引き起こし、最悪の場合VandalieuによるAlcrem Duchy侵略が開始される未来よりは、真実を闇に葬って数か月の間口をつぐんでいる方が平和と言うものだ。
将来的にCelisとBestraの二人はTalosheimに移住し、Mash達も順々に連れて行く予定だ。
その後DirectorがDhampirである事を明かして、身分と顔を偽っていた事情を「両親を殺した者達の目を誤魔化す為」と説明する予定である。
「大丈夫だよ、姉-chan。なあ、Vandalieu?」
「ええ、もう治っていますから」
bloodをsoup皿に溜める為に自ら傷つけたVandalieuの掌は、【Rapid Regeneration】skillの効果で既に傷跡も残さず完治している。bloodは傷から溢れだした分の残りでしかない。
「そうか……聞いて想像していたよりもbloodを流していたから、驚いた。……Oswald達は本当にmonstersになったようだな」
「皆、Vandalieu -sanが言った通りRank1みたいね。これならみんなでも扱えるわね」
胸をなでおろした-sama子のBestraとCelisが、変異したOswald達を見まわしてnod。
Rank1のmonstersの内、Giant RatやGIANTバット等は、大きいmouseとBatでしかない。危険度は野良犬と同じか、それ以下である。飼い主であるMashやMarciaに懐いているのなら、犬や猫と同じようなものだ。
幼いchildでも扱う事が出来るし、実際Tamerとして幼いころから教育される場合、最初にRank1のmonstersを飼いならす事から始める者も多いのだ。
だから十age未満で、師Artisanから与えられたRank1のmonstersをTamerして使役しているTamerは、少なくない。
……だとしても、明日Tamer guildのBachemは度肝を抜かれるだろうが。Rank1のmonstersが一匹だけとは言え、guildの組合員数が倍以上に膨れ上がるのだから。
「良かった。いきなりRank3や4になったらどうしようかと、少し心配していたんだ」
「動物から変異する場合、Rankがどれくらいになるかは大体分かるようになりましたからね」
これまで幾種類も動物を変化させてきたVandalieuは、pupilsの研究者であるLucilianoが纏めていた情報を基に、変異した後のmonstersがどれくらいの強さになるのか見当がつけられるようになっていた。
小さなmouseやBatのような小動物の場合は、Rank1。犬や猫、カモ等ある程度以上の大きさの鳥、Capivara、馬等はRank2。そして、まだやった事は無いが大型の猛禽類やBrown Bear等はRank3のmonstersに変異する確率が高い。
上記のように、変異する元になる動物が強ければ強い程強力なmonstersに変化するようだ。
「死者をUndeadにする時よりも、結果を予想しやすいですから。個体差によって変わる可能性もありましたけど、そこまで変なのはいませんでしたからね。猫より強いmouseとか、虚弱体質なキツネとか」
「でも大丈夫だぜ! 今はまだweakけど、Fang達みたいにガンガンRank upしてみせるからさ。だろ、Nightwing!」
そう意気込んでpartnerに声をかけるMashだが……NightwingはVandalieuのbloodが溜まっていたsoup皿を舐めるのに夢中になっている。
「それはまだ早いわ、Mash」
しかも、Celisに止められていた。
「な、何でだよ!?」
「当たり前よ。今のMashじゃ、Nightwingと力を合わせても、Goblin一匹を倒せるか分からないじゃない。-chanと戦えるようになってからにしなさい」
「ヴぁ、Vandalieuと一緒に行けば――」
「一緒に行ってもダメよ。それじゃあ、Vandalieu -sanに頼りっぱなしじゃない。Nightwingのpartnerは、あなたでしょう、Mash?」
そう繰り返し言われたMashは言葉に詰まった-sama子で暫く考え込んだ後、「分かったよ」と言って肩を落とした。
「分かってくれて嬉しいわ、Mash。焦らなくても、あなたはこれからなんだから。もっとゆっくりして良いのよ」
そうCelisが本物の姉のようにMashの肩に手を置いて、優しい言葉をかける。そして、Mashに言わなければならない事を全て言われてしまったVandalieuに視線を向ける。
「Vandalieu -sanも、手のbloodを洗わないと。傷は治っていても、bloodまみれのままじゃ……いけないから……綺麗に……」
その優しげだった瞳が何故か爛々と輝き、頬が赤くなる。そしてVandalieuの腕を両手で掴む。
「綺麗に、しないと……っ」
そして何故かごくりと喉を鳴らす。彼女がどうやってVandalieuのbloodまみれの手を綺麗にするつもりなのか、その-sama子を見れば明らかだ。
「うわぁ~っ!? Celis姉-chanがNightwingみたいになってる!?」
「うーん、我を失う程の衝動に取りつかれる事になるとは思いませんでした。とりあえずbloodの臭いを【Deodorization】してみましょう」
「Celisっ、落ち着くんだ!」
Mashがscreechをあげた事で事態に気がついたBestraが、慌てて彼女をholdstopい絞めにして止めようとする。
「そんな事をしたらっ、エレオ……他のVampireのようになって、戻って来られなくなってしまうぞ!」
「うぅっ、Bestra、分かっているの、それは分かっているのよ。でも……喉が渇いて、乾いてしかたがないの!」
「……なんだか俺のbloodが怪しい薬みたいな扱いですね」
「暢気な事言ってるなよ! そのDeodorizationってmagicをさっさと使えよぉ!」
「Mash……もう使いました」
「マジかよ!?」
どうやら、switchが入った後に臭いを消しても意味は無いようだ。
「う゛ぅ、だ、ダメだ……私も……」
それどころか、Celisを止めていたはずのBestraも熱に浮かされたような顔つきになり、だんだん彼女を止めるのではなく、彼女と同じようにVandalieuの腕についたbloodを見つめている。
「Bestra姉-chanまでダメになってる!? Vandalieuっ、引き剥せないのか!?」
「出来なくはないですけど……二人を振り回すような勢いで強引に引き剥す事になるので、ちょっと危ないです。俺と彼女達以外が」
CelisとBestraはSubordinate Vampireであるために、細身に見えてもそれなり以上に力が強い。Mashが「gorillaみたいだ!」とからかうぐらいにはMysterious Strengthである。
そのCelisが手加減noneでVandalieuの腕を掴んでいるため、簡単には逃げられそうにない。certainly、多少荒っぽくしても彼女達自身は平気だろうが……周囲のchild達とPetがやや危ないかもしれない。
「それに、皆に慕われている二人を荒っぽく扱って嫌われたら、俺の心も無傷ではいられないでしょう」
そう言いながら、bloodまみれの方の手に顔を近づけようとするCelisとBestraを、bloodが付いていない方の手で押し止めているVandalieu。この時点で年若い娘にする扱いでは無い気もする。
「じゃあもうちょっと何とかしろよっ。Eleonoraの姉-chan達がこうなったときは、どうしてるんだ!?」
「bloodを飲ませています」
「ダメじゃん!?」
「では、blood以外でenduranceしてもらいましょう。accurateには、成分の半分ぐらいbloodですが。
Mash、俺の服の内側のポケットに小瓶が入っているので、それを出してもらえますか?」
「お、おうっ」
Vandalieuの言葉通り、小瓶を取り出そうとするMash。
「何やってるの~?」
「お姉-chanとMash兄-chanも、bloodを飲んで『やみのしゅくふく』を受けようとしてる!」
「止めなきゃ! お姉-chan達が本物のgorillaになっちゃう! Mash兄-chanがお姉-chan達をgorilla gorillaって言うから!」
しかし四人の状況を見たchild達が、儀式の続きをしていると誤解してCelisとBestra、そしてMashまで止めようとする。
「違うっ、俺のせいじゃな~いっ!」
そう主張するMashだが、厨二Diseaseじみた儀式を提案してVandalieuにdemandしたのは彼なので、間接的には彼のせいでもあるのだが。
「……仕方ない、自分で飲ませましょう」
その後、Vandalieuは【Demon Kingのtentacle】で懐のBlood potion……VandalieuのbloodをベースにCompoundingされたpotionを二つ取り出し、CelisとBestraの前で栓を抜いて見せる。
「っ!? んぐっ……んくっ……」
その途端二人の関心が腕のbloodから、Blood potionに移った。二人とも夢中になって飲み始めた。
「良かった、これで二人とも……あれ? 良かったのか?」
Blood potionを飲むにつれて、二人の瞳にreasonが戻っていくのを確かめて胸をなでおろしたMashだったが、結局bloodを飲んだのは変わらないのではないかと思って首を傾げる。
「俺の腕を舐めて飲むよりは、それを見るchild達の教育にいいと思いますよ。後、正気に戻った後の二人のEmotionalに」
「そ、それもそうか」
「うわっ、Vandalieu兄-chanがRank upした!?」
「じゃあ、お兄-chanもOswaldみたいに、GIANTになるの?」
「……将来的にはなりたいと思います」
Blood potionを飲み干してBloodsucking衝動を満足させ、正気に返ったCelisとBestraによって、「儀式」は解散させられたのだった。