彼は生前、自分に武術やmagicのaptitudeがあるとは考えた事も無い男だった。Nobleに仕えるServantの両親の元に生まれ、自分もServantとして育った。childの頃は命がけのAdventureに挑むadventurerや、勇ましいKnightの物語に憧れた事もあるが、馬と馬車の扱い以外に取り柄が無い自分とは別のworldの話だと思っていた。
そしてmagicの魔の字も知らないまま大人になり、結婚して娘が出来たが……Undead Transformationした後、あるskillを獲得した事で自分にはaptitudeはin any case、適性はある事を知った。
そのskillとは、【Space Expansion】。carriageのappearanceの大きさは同じまま、内部のspaceを拡大して乗せられる人や荷物を多くする事が出来ると言う効果を持つskillだ。
その名称の通り、明らかにspaceが関係している。だからもしかしたら、自分にはspace attributeの適性もあるのかもしれない。そう思った。
そしてSelf研鑽の一環として、Space-Attribute Magicと更にTime-Attribute Magicを習得する事に成功した。
『その私なら、この困難な目標も達成できるはず!』
Church of VidaのZuruwarnとRicklentのIdol Statueにcurryを奉納して神頼みも済ませたSamは、勢いよく大地を走り出した。
『必ずや、時とspaceを駆ける馬車となり、Bocchanの乗機としての地位を取り戻しますぞぉっ!』
どうやらSamは空を駆けるだけでは飽き足らず、時spaceを駆ける馬車を目指しているようだ。
GufadgarnやLegionを超えるために。
Sam本人としては自分のpositionが奪われたように感じていた。だが実際には、VandalieuがMoksiの町に馬車の彼を連れて行ったら目立つのではないかと考えただけなのだが。
Moksiの町から引き揚げたら、今まで通りDungeon攻略や旅の脚として活躍してもらうつもりである。
『今日こそ越えて見せますぞ! 時とspaceの壁を!』
しかしそれを知らないSamは、今日もmagicに詳しい仲間からは「不可能に近い」と言われている目標達成を目指して、猛Speedで疾駆する。
周囲の仲間にSamを止める者は無く……逆に、続こうとする者が現れた。
『俺達も負けちゃいられねぇ! Samの旦那に続けぇ!』
『ですが、いきなり時spaceは無理というもの。とりあえずは空を目指しましょう!』
『それなら、最も現実的なunderwater潜航を試すべきでは?』
『沈むだけなら何時でも出来る! 我々は幽霊船CuatroのFour Captains of the Dead Seaだぞ。目指すなら空と言う名の海にするべきだ!』
Vandalieuが四隻の難破船のpartsを繋ぎ合わせて作った、幽霊船Cuatroとその四人のUndead船長である。
『ウオォォォォォォォ……!』
怨嗟の叫びに似た声をあげながらCuatroが、川を進む。
それを遠目に見ていた『Divine Spear of Ice』のMikhailは、近い将来Talosheimの乗機系Undeadは全て空を飛ぶだけでは無く、時spaceを駆けるようになるのではないだろうかと思った。
まあ、時spaceを駆けると言うのがどんなものなのか、彼には想像もできないが。
『Mikhail -dono、もう一手頼みたい』
『……Bone Man、すまないが、-kunが切り落とした腕の縫合が終わるまで待ってくれないか』
そしてMikhail本人はBone Manと実戦形式の模擬戦で訓練をしていた。ただ、訓練に熱が入ってしまい、内容がかなり過激になっていたが。
『ヂュオ、それは失敬。同胞たちが主の元で研鑽を積んでいると思うと、つい気がはやってしまいまして』
ちなみに、Bone Manの言う同胞とはMaroll、Urumi、Surugaのmouse三sistersである。生前は同じmouseだったBone Manは彼女達に仲間意識を持っていた。同時に、senpaiとしてloseはいられないとも思っている。
『それに、早くEmperorでなくなりたい』
そしてBone ManはVandalieuへの不敬へあたるとして、Skeleton Blade Emperorから「Emperor」の字を消す為にRank upする事を目標にしていた。
12と言う高Rankの為、中々目標を達成できずにいたが。
『……この国は向上心のmonsterしかいないのか』
つきあう身にもなって欲しい。そう思いながら、Mikhailは器用に片手で切断された利き腕の縫合を続けていた。
人口約三万人の交易都市であるMoksiの正門Open Plaza。そこは今日も活気に満ちていた。
多くの商人や旅人、adventurerが出入りする門に、それらを対象にした商売をする者達の客引きの声。だが彼女達が通ると、誰もがその視線を彼女達へ向けた。
彼女達を含めた一団が、Adventurer’s Guildの中に入り、彼女達二人だけが外に残されると益々その注目は高まった。
「kaa-sanなら一緒に中に入れたんじゃないか?」
「idiotを言え。最初は誤魔化せても、後で問題になるに決まっているじゃろう。規則は守らなくてはダメじゃ」
Adventurer’s Guildの前に設けられたspace……とは言っても、塗料で地面に線を描いただけで周囲の視線を遮る者は何も無い。そこに並んで立って、二人は母娘同士、やや声を抑えて会話を交わしていた。
「いや、その規則でTamerが頭や肩に乗せたり、抱き上げたり出来る大きさのTamed Monsterは建物の中に連れて入っても良いそうだ。kaa-sanならVanにおぶさるか、抱き上げて貰えば行けると思うぞ」
「ば、idiotを言うでないわ! Basdia、お前は母を晒し者にしたいのか!?」
顔を赤くし、器用にも小声で怒鳴ったZadiris……Ghoul Wizard High Princessで、最近までDemon continentでKanakoと共にMagical Girlとして説法(Concert)に出ていたGhoulの女Elderは、娘のBasdiaに食って掛かった。
彼女のBodyは十代前半で成長を止めているので、こうして取り乱すとElderとしての貫録は剥がれ落ち、可愛らしいShoujoにしか見えない。
一方叱責されたBasdia……彼女の娘で、Ghoul Amazoness Night Queenの彼女は、平気な顔でその豊かな胸を張った。
「もし私だったら、Vanに抱き上げて貰うぞ。kaa-sanは体裁を気にしすぎる」
鍛えられたmuscleとfemale的で豊かな曲線を同居させるBasdiaは、二十代半ばから後半に見えるappearanceだ。そのため、一見しただけでは二人の母子は親と子の立場を逆に認識する者も多い。
「むぅ、近頃の若い者はこれじゃから……」
実際にはBasdiaは三十age程で、そうブチブチと呟いているZadirisは約三百ageなのだが。appearanceが老けないraceなので、それを見分ける術は無いのだった。
GhoulはVida's New Racesの一員だが、Human社会では昔からZombieの上位種、つまりmonstersであるUndeadの一種とされ、そう扱われてきた。すなわち、人里で見つけたら即討伐である。
そのGhoulの二人が何故堂々とHuman社会の、それも本来なら天敵であるAdventurer’s Guildの前に何故いるのかというと、Vandalieuが立案した「Human社会にGhoulの正しい知識を広げるためのtactics」の一環だった。
Food Stallで販売する成り行きは偶然だったが、Ghoulの知識であるGobu-gobuやKobold肉の蒸し焼き。その認知度は一月もかからずMoksiの町だけでは無く、周辺の町村にも広まっている。
そのためGhoulは獣同然のUndeadでは無く、wisdomと文明を持ったraceなのではないかという認識も広まりつつある。Gobu-gobuについて教わったGhoulについて取材しようと、Vandalieuを訪ねてきた者もいたぐらいだ。
ただ「Ghoulはmonstersではない」と訴える声が出る程では無い。それは人々が本物のGhoulを知らないからであるとVandalieu達は考えた。
人々は「Ghoulはmonstersだ」と教わるが、多くの者はGhoulを見ないまま一生を過ごす。それはGhoulがDevil Nestsの集落で暮らしているためで、Ghoulと遭遇するのはadventurerかmonsters狩りのmissionを与えられたKnightやSoldierぐらいだからだ。
だから人々が本物のGhoulについて知れば、僅かずつでも状況は変わるかもしれない。……Moksiの町周辺のGhoulは既にTalosheimに移住したので、時間がかかっても問題は無いし。
そして相談した結果、GhoulであるZadirisとBasdiaを「Tamerした」という事にして町に連れ込む事にしたのである。
……Concertも、KanakoがLegionのlessonにかかりきりになっているので暫くは無いそうだし。
ちなみに、家の地下室に居るTareaではなく二人を呼んできた理由は彼女の希少性からである。もしTareaが優れたArms Artisanであり、Talosheimの武具製作を支える一人であると敵に知られたら、執拗に狙われる事になる。
彼女一人を殺し、死体を持ち去るか完全に破壊する事が出来ればそれだけでTalosheimの戦力を低下させる事が可能なのだから。
certainly Basdia達も狙われない訳ではないので、それなりの備えはしてある。【Familiar Spirit Demonic Advent】による連絡に、町中に張り巡らされたGhostとGufadgarnの監視、そして物陰に潜んでいるMiles。
一見すると無防備に見えるが、ある意味Vandalieu以上の防衛網が張られている。
「しかし、奇妙な決まりだな。頭の上に乗せられるとか、抱き上げられるとかを判断基準にして、持ちこめるTamed Monsterの大きさを完全に決めないとは。
Tamerのraceや体格によって持ちこめるTamed Monsterの大きさが変わってしまうから、不公平ではないだろうか?」
DwarfのようなHumanの大人の胸までしかないraceのTamerと、特に大きい者は三meterに届くGiant raceのTamerでは、規約の基準をclearするTamed Monsterの大きさも変わるはずだ。
特にGizaniaのようなLarge-buildのArachneの場合、体長三meterぐらいまでのmonstersなら背負って運べそうだ。
だというのに何故と不思議がるBasdiaに、Zadirisは杖を弄りながら自分なりの見解を答えた。
「maybe、そこまで考えて決められた規則では無いだけじゃろう。小型のTamed Monsterは主に偵察などに使うもので、weak monstersが多いからの。外に繋いでおくと、盗まれたり殺されたりするかもしれない。そう心配したTamerのadventurerが訴えたかどうかして、Tamerが保持して監督できるなら持ちこんでも良いと言う規則になったのかもしれん」
そして一端言葉を切ってから、こう付け加えた。
「それに……幾らTamerの体格が大きくてもGiant raceまでじゃろうから、Tamed Monsterも精々オオカミや山羊ぐらいじゃろう」
Vida's New Racesに比較的寛容なOrbaum Elective Kingdomでも、Arachneのようなmonstersのbloodを引くとされるraceのadventurerは認められていない。そのためAdventurer’s Guildの規則も、Arachne等のraceのadventurerは居ない事が前提になっているのだ。そうZadirisは暗に言っているのである。
「なるほど。それもそうか……それはともかく、意外と何とかなるものだな、kaa-san」
「確かにそうじゃな」
guildの規則について話題に話していた彼女達だが、本気でguildについて疑問に思っている訳ではない。-sama子を見ながら周囲の反応を伺うために、雑談をしていただけだ。
その二人に対する周囲の反応だが、-sama々だった。多くの人達は、ただ物珍しそうに好奇の視線を向けるだけだが、興味深そうに彼女達を見つめるadventurer風の者達やMage、彼女たち自身より持っている武具に視線を向ける職人らしいDwarfもいる。
中にはBasdiaやZadirisの灰褐色の肌を舐めまわすように、好色そうな視線を向ける者もいるが……bluntに嫌悪や敵意を向けて来る者はいない。
「……私達はUndeadの上位種とされているらしいから、多少の不安があったのだが……大丈夫そうだな」
「うむ。問答無用で襲い掛かってくる者もいるのではないかと思ったが、大体坊や達の言う通りじゃったな」
UndeadはTamerできないのが常識となっているのに、その上位種とされているGhoulはTamerし、Slaveの首輪を嵌めてSlaveにする事も可能。何故そう思えるのか、疑問には感じないのか、一度TamerかSlave商人にじっくり話を聞いてみたいものだ。
『万が一襲い掛かってくる奴がいても、姉-san方なら素手で畳めるでしょうに』
安堵して頷き合う二人に、Schwarz Blitz GhostのKimberlyがそう囁く。
「いや、装備はかなり落ちているから、ちょっと不安だったんだ」
そう言うBasdiaやZadirisの装備は、言葉通りにかなり格下のものだ。monstersの皮から作ったleather Armorやローブと、作り自体は良いが鉄製の斧とただの木製の杖である。
人目に触れる為、普段装備している武具は持ってこなかったのである。……もっとも、隠し持っているitemボックスの中にTransformation Equipmentや杖が入っていて、いつでも取り出せるようになっているのだが。
「儂はMageじゃからそうでもないが、BasdiaはDefense Equipmentがただの皮じゃから頼りないのじゃろ。普段着けている鎧と重さは変わらないのに、鋼と紙程もDefense Powerに違いがでるからの。丸裸にでもなったようじゃろう?」
「それを言うならkaa-sanも、杖が気になって仕方ないようじゃないか。愛杖が無くて、丸腰になったように思えて不安なんだろう?」
『口喧嘩しているところ悪いんですけど、二人とも周囲の視線は、全く気にならないんで?』
「「いや、全く」」
小声で話す二人には、周囲から向けられる幾つもの視線は緊張や羞恥を誘う程のものではなかった。何せ、二人とも期間に差はあるが、Stageと化したKnochenの上で歌とdanceを観客に披露したのだ。視線に対する免疫は十分できている。
「それに、二日目だしな」
「昨日Tamer guildで首輪を貰って来る時に坊やと一緒に行った時の方が、見られたものじゃ……ん?」
ふとZadirisは、自分達に向けられる熱い視線に気がつき、そちらに視線を向けた。すると視線の主は若い、まだ二十age前後に見えるfemaleだった。
武装はしておらず、簡素な装飾だがしっかりした生地の服を着て、何故か思いつめた表情をしてZadirisとBasdiaを見つめている。
『bloodthirstは感じませんが、注意を』
そうKimberlyが囁くのに合わせたようなtimingで、femaleが二人に向かって歩き出した。そして意を決した-sama子で口を開く。
「お願いします! 毒を吐いてください!」
「……変態か?」
「まだ若いじゃろうに……」
「あああっ! 言い間違えましたっ、すみません! 罵って欲しいのではなくて、毒を恵んで欲しいんです!」
公の場で罵るよう懇願されたのかと思った二人が困惑したり憐れんだりすると、femaleは慌てて首を振って誤解を解こうとした。
「私はalchemistで、Jessieと申します。最近麻痺毒専用の解毒potionの研究を始めたのですが、その少し前からGhoulの毒が手に入らなくなってしまって……」
originally Ghoulの素材は他のmonstersの素材と比べて特別需要のある物ではなかったので、Mage guildの備蓄も僅かだった。Jessieの研究の為にはその備蓄を使い切っても足りなかったので、新たに手に入れようと探していた。
しかし、最近この辺りではGhoulの素材は爪から分泌される麻痺毒も含めて品薄になっていた。
そうなると遠く離れた場所から取り寄せるか、Adventurer’s Guildに依頼するかのどちらかだが、その為にはお金と時間がかかる。guildから出ている予算は潤沢とは言えないので、いっそ自腹を切るかそれとも父の伝手を頼るかと悩みながら歩いているところに、BasdiaとZadirisの二人を見つけたのである。
「それでつい……先程は失礼しました」
「なるほど、そういう理由か。私こそ誤解してすまなかった」
「いえいえ、私が紛らわしい事を言ったせいです。すみませんでした」
「儂らの毒か。ふーむ、さて、どうするかの」
お互いに謝り合うJessieとBasdiaを余所に、Zadirisはやや悩んでいた。
Jessieが話したGhoulの素材不足の原因は、Vandalieuがこの辺りのDevil Nestsに住んでいたGhoul達をTalosheimに誘ったのが原因である事は明らかだ。その事には、罪悪感は微塵も覚えていない。Jessieは二人に事情を説明する際濁していたが、Ghoulの素材を取るという事はGhoulを狩るのと同じ意味だからだ。
逆にGhoulの素材を必要としているJessieを恨む気持ちも無い。Ghoulの側も倒したadventurerの死体を食料にしたり、捕まえたHumanの女を同族に変化させたりしているので、非が無いわけではない。
少なくとも、無暗やたらにHumanを憎む程では無い。
そして爪から分泌する麻痺毒は、Zadirisにとってはそれ程重要なものではない。汗や涎と同じで、大量に求められたら別だが、基本的には提供しても構わないものだ。
「しかし、今はやる訳にはいかんな」
「どうにかなりませんか? ほんの少しで良いんです。certainly、お礼はします!」
「いや、断ると言う訳では無くてな、儂等が勝手に決める訳にはいかないのじゃよ。儂等はTamed Monsterじゃからな」
縋りつくように頼み込んでくるJessieにそう答えて、Zadirisは自分が嵌めている首輪を指差した。すると、彼女もはっとして「そ、そうでした!」と言った。
「すみません、私ったら……お二人のごmasterに了解を取らないといけませんよね」
Tamed MonsterはSlaveと同じで、masterの所有物である。そのため他者が勝手にTamed Monsterに何かするのは、罪に問われる事がある。毒の提供は、当然masterの同意が必要とされる。
どんなにTamed Monsterの知能が高くても、例外は無い。
「Jessie、もしかして、そそっかしいとよく言われないか?」
「恥ずかしながら……でも、お二人と話しているとまるで人と話しているのと変わらなくて……つい」
頬を赤くしながら言ったJessieの言葉に、BasdiaとZadirisは口元を緩めた。
この分なら、Ghoulのimage upも想像していたよりは上手く進むかもしれないと。ただ、同時にtroubleのshadowが近づいている事にも気がついて、どうしたものかなと苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、ここで一緒にお二人のごmasterを待っていても――」
「お嬢-chan。あんたがこのGhoul共のごmaster -samaか」
「え、ちが……ひゃあ!?」
近づいてくる足音に気がつかなかったJessieは、突然声をかけられて振り返ったら、そこに凶悪な人相をした大男がいる事に驚いてscreechをあげた。
額や頬に幾つもの傷跡がある、金属鎧の上にmonstersのfurを使ったマントをHaoriった大男は、そんなJessieの態度に腹を立てるどころか気分が良さそうに口の端を釣り上げた。
明らかに暴力とhorrorを己の利益に繋げて来た者の態度だ。つまり、いわゆる堅気のHumanでは無い。
「だったら話が速い。そいつらを譲ってもらおうか……お嬢-chanみたいなヒヨッコMageが前衛代わりに使うには、勿体ない上玉だからな。悪い話じゃないだろう?」
しかも圧力をかけて脅しながら、明らかに悪い話を持ちかける大男。さらに大男の取り巻きらしい、やはり人相の悪い男達がJessieを生やしたてる。
「Gordonの兄貴が笑っている内に頷いた方が、身の為だぜぇ! この辺りにも『剛腕』のGordonの名は轟いてんだろう!?」
「何ならお嬢-chanもこっちにくるか? 俺達が朝まで相手してやるぜぇ……ヒヒヒ!」
髪を逆立てた男とmonstersの頭蓋boneを加工した兜を被った男が言った、『剛腕』のGordonと言う大男の名に、何事だと足を止めた人々の何人かがざわめく。
その何人かの口から洩れた情報によると、どうやらGordonは別の交易都市で実力と、何よりも素行の悪さで名の知れたadventurerで、Moksiの町に今日初めてやって来たらしい。
等ClassはCClassで、噂では素行さえ悪くなければとっくにBClassへ上がれていただろう実力者らしい。ちなみに、『剛腕』はmonstersのrunawayが起きてadventurerとSoldier総出でmonstersの迎撃に出た際、大型のmonstersを何十匹も退治したachievementを称えられて名づけられたものだとか。
「adventurerにはゴロツキと変わらないのもいると聞いたが、あのGordonと言うのは『いざという時役に立つゴロツキ』という困ったTypeのようじゃな」
「多少素行が悪くてもbarelyの一線は超えないし、緊急事態では戦力になるから思い切った処分が出来ないという事か。そんなに使えそうには見えないのだが」
「ふむ? ……お主の目から見て、どれくらいじゃ?」
「KasimやFesterよりは、確実にweakな。私はAdventurer’s Guildの等Classに詳しくは無いが……Rank5や6のmonstersなら倒せそうではある。Vida's New Races相手だと、Rank4以下じゃなければ無理そうだが」
Basdiaの目から見ると、Gordonの雰囲気や存在感、立ち振る舞いからconjectureすると、彼はCClassの中から上ぐらいの実力らしい。
BClassへ上がっていたと言うのは、ただの噂でしかないようだ。
Vida's New Racesである上に、Rank11のBasdiaやZadirisにとっては、雑魚でしかない。普段の装備が無くても、あっさり倒す事が出来る相手である。
「ふ~む、それでどうする、kaa-san?」
「出来れば穏便に済ませたいところじゃな」
ただ、二人が直接Gordonを死なない程度に殴り倒して退散させるのは、難しい状況である。
『今の二人はTamerされたTamed Monsterって扱いですからねぇ。向こうが先に手を出してこないと……殴り掛かるかWeapon Equipmentでも構えない限り、傷つけたらmasterって事になっているボスの責任になっちまいますからねぇ』
Kimberlyの言ったように、Tamed MonsterはHuman社会では人では無くPetや家畜と同じように扱われる。
だから、多少言葉で絡まれたぐらいで、Gordonを叩きのめしてはいけないのだ。赤子の手を捻るより簡単だとしても。
『まあ、ボスなら罰金ぐらい幾らでも払えるでしょうけど……』
「それこそ危なくなるまでは-sama子を見たいな。出来ればJessieに期待したいところだが」
仲間内で囁き合いながら、HumanのJessieが穏便に場を収めてくれないかと期待する三人だが、それは難しいようだった。
「わっ、私は、Tamerじゃ……ち、父はguildのMasterです! 人を呼びますよ!?」
どうやらJessieはalchemistでも、主に研究や薬品のCompoundingを行うTypeで、荒事に免疫が無い一般人だったようだ。GordonからBasdia達を守ろうと立ちはだかっているが、声も膝も震えている。
「いいageして親に泣きつくってのか、お嬢-chan。これは大人同士の話だぜ。きっちり、自分で決めてくれないと困っちまうなぁ?」
Gordonが凄みながら、Jessieに一歩近づく。どうやら彼は、guildのMasterの身内に対しても委縮しないrebel Mentalの持ち主のようだ。……JessieがTamerではない事は、彼女の声が震えていて聞き取れなかったようだが。
「しかし納得が行ったぜ。guildのMasterの娘なら、Ghoul WarriorとGhoul MageをTamerしていてもおかしくねえ。どうせ親にねだって、腕利きのadventurerに生け捕りにさせてSlaveの首輪で従えたんだろう」
そして、しかも誤解を深めている。彼はBasdiaをRank4のGhoul Warrior、ZadirisをRank5のGhoul Mageだと勘違いし、JessieがSlaveの首輪で従えているのだと思ったようだ。
ただBasdiaとZadirisのRankを誤解したのは、Gordonだけでは無い。町中はcertainly、Tamer guildのMaster、Bachemでさえ誤解しているのだから。
このworldに存在する数多のmonstersのraceとRankを、人々はどのような方法で見分けているのかと言うと、当然だが自分の知識を基に、monstersの特徴などのappearanceや行動、特殊Ability等を観察して見分けるのだ。
【Appraisal】のmagicも存在するが、その効果は自分の脳内から効率良く対象に対する情報を探しだして教えてくれるだけで、未知の知識を授けてくれる訳ではない。
翳せばmonstersのRankが表示されるmagic itemは実在したらしいが……Age of Gods Era、まだmonstersに関する知識をHuman達が持っていなかった頃にRicklentが授けたとされるlegendのArtifactなので、Gordonのようなadventurerが持っている筈も無い。
そのため目の前のGoblinの正体が、Goblin Soldierだと見破れなかった一般人や、Goblin Barbarianだと気がつかなかった新人Soldierや新米adventurerが、痛い目を見る事が起こるのだ。
Basdia達の場合もそうだ。Ghoul AmazonessやGhoul Wizardの存在は、書物に記されているが…… Bahn Gaia continentでは見かけないため、今ではMage guildの書庫で希少な書物の中に記されているのみである。
appearance的な特徴であるbody partの文-samaは、刺青や染料で描いたpaintingにも見える。額のjewelに似た第三の目は、そのまま装飾品か何かだと思われているのだろう。
なのでGhoulに関して調べ尽くし、Ghoul Doctorと呼ばれる程の知識量の持ち主でなければBasdiaとZadirisの正体を、看破する事は不可能だ。
もし町に来たのが四本腕のGhoul Tyrant系になったVigaroだったら、すぐ尋常なGhoulではないと気がつかれただろうが。
Tamer guildでもTamed Monsterのbody partに触れ、furや体液を採取してalchemistに分析させるような精密検査はしないので、Bachemも頭を抱えながら「絶対何かおかしいが、Ghoul WarriorとGhoul Mageである事を否定する証拠が無い!」と呻いていた。
だからGordonにBasdia達の正体を見抜けるはずないのだ。
しかし、武術の達人である事はふとした仕草から見抜かれるかもしれないので、今までは大人しく立ち尽くしていたのだが――。
(Jessieをこれ以上怖がらせるのは、事情があっても流石に悪いな。Vanには後で謝ろう)
そうBasdiaが動き出そうとした時、それまで彼女達と同じようにJessieに期待して-sama子を見ていた男が現れた。
「ちょっと良いかしら?」
「何だ、テメェ?」
現れたMiles……『Hungry Wolf』のMichaelに、Gordonが思わず身構え、Jessieの顔色が蒼白になる。
「その二人のごmaster -samaの関係者よ。そういう訳だから……鎖boneを圧し折られたくなければ消え失せてくれない?」
二meter近い鍛え上げられたBodyに、野性的だが整った顔立ち。そして何故か紅が引かれたlips。その異-samaさと迫力に呑まれかけたGordonとその取り巻き達。完全に飲まれて、半ばfaintedしているJessie。
「なるほど……このお嬢-chanのおもりって訳か。何処の誰だか知らねぇが、横から出てきてこの俺を脅そうとはいい度胸だぜ」
当然だが、今日初めてMoksiの町に入ったGordonたちは、『Hungry Wolf』のMichaelの事を知らなかった。……知っていても、チンピラのGeneralごときと侮った可能性が高いが。
「ちょっとあんた、何か勘違いしてない?」
「こうなったらsimpleに行こうぜ。決闘だ! そのGhoul共を賭けて俺と男らしく素手で勝負しやがれ、カマbastard!」
何処か得意気にそう宣言するGordon。最初から金等の代価を支払わず、BasdiaとZadirisを手に入れる事が狙いだった彼としては、この『Hungry Wolf』のMichaelが登場する展開は都合が良かったのだろう。
「……まあ、別に私は困らないから良いけど」
そして『Hungry Wolf』のMichaelこと、Milesにも都合の良い展開だ。彼がGordonをただ殴り倒したのでは暴力事件だが、決闘ならGuardも手出しして来ないだろうからだ。
Alcrem Duchyの法律では決闘に関する取り決めは無く、ただの慣習に過ぎない。「決闘だ!」と一方が主張しても強盗や殺人として立件される事件も多い。
だが、adventurerやmercenary同士の決闘の場合は死人が出ておらず、また条件が余程悪質でない限り見逃される事が多い。特に限りなくチンピラに近いadventurerのGordonと、最近やや堅気に近づいている『Hungry Wolf』では、心情的に『Hungry Wolf』にallyするGuardも多いとconjectureされる。
「決闘だっ! 決闘だぞ!」
「さぁ、MoksiのSlumと歓楽街の『Hungry Wolf』のMichael対、CClass adventurer、『剛腕』のGordonの決闘だ! 賭けた、賭けた!」
そして決闘が始まる事を叫んで、邪魔が入らないように野次馬の壁を作るGordonの取り巻き二人。更に頼んでもいないのに賭けの胴元を始める者が現れ、集まった野次馬に商品を売るFood Stallの店主達。Guard達は苦い顔をしたが、騒ぎを止めようとはしない。
「頑張れ、『Michael』。私達の為に争って来てくれ」
「それが仕事だからいいんだけどね!」
「わた、私っ、ふ、二人をあんな獣達に……!」
「Jessieは儂等の為に争わんで良い! 落ち着けっ、冷静になるのじゃっ!」
「そうだ、Jessieっ。『Hungry Wolf』と言ってもあいつは良い方の獣だから!」
Milesを決闘に送り出しつつも、panicに陥ってふらふらしているJessieは引き止める二人。
「おおっと、三つ巴の戦いからJessie嬢が早くも脱落か!?」
そんな事を言って囃し立てる賭けの胴元を睨むMilesに、恐ろしい展開が待っていた。
「じゃあ、代わりに俺が入りましょうか」
「頑張ってください!」
するっと野次馬の壁を抜けて来たVandalieuが、Julianaを降ろして決闘に加わろうとしているのだ。
「ちょおぉっ!?」
「何だ、このガキは? 薄気味悪い……そうかっ、てめぇがこの町に居るって噂のDhampirか! Goblin食いのBad Eatingらしいが、何で邪魔をする!?」
「Slightly俺に関する噂が間違っている気がしますね。それはin any case、俺が彼女達をTamerしているTamerだからです」
「何だとっ!? ち、だったとしても構うもんかよ。Alda Reconciliation Factionなんざ、知った事か! monsterとの混bloodのクセに女Ghoulを侍らしやがってっ、気に食わねェ!」
そう言って唾を地面に吐くGordon。構わずShadow Boxingを始めるVandalieu。
「頑張れ~、Van!」
「とりあえずNataniaよ、坊やに持ち金を賭けておけ」
応援したり、Vandalieuに続いてguildから出てきたNataniaに賭けの指示を出すGhoul母娘。
「ちょっと待ちなさい!」
そして顔色を変えてscreechをあげるMiles。何故ならこの決闘、何故か三つ巴という事になっているのだ。このままでは彼はVandalieuと戦う事になってしまう。
別に胴元の男につきあってやる理由は無いのだが……Vandalieuの場合、Gordonを捻った後気まぐれを起こして「まあ、折角ですし。実戦形式の稽古だと思って」とMilesとそのまま決闘を続けかねない。
そうなると、十age少々のchildに公衆の面前で良い勝負をする『Hungry Wolf』と言う光景が誕生してしまう。まだ完全に堅気ではないし、警備会社的な仕事を始めたばかりのMilesにとって、大変外聞が悪い。
「Simonっ! あんた私に借りがあったわよね! あんたが代わりに出なさい!」
そして目についたSimonを、咄嗟に決闘に駆り出す。
「ええっ!? 俺ですかい!? Michaelの旦那っ、流石にsecondary name持ちのCClass adventurerに素手なんて……あ、やれそうっすね。
素手でも義手は外さなくて良いんでしょう!?」
突然の事に最初は及び腰だったSimonだが、自分の義手が鉄で出来ている事を思い出したため、義手を付けたままでいいかと確認する。
「ふんっ、腕の無い半端bastardめ。何だったら後ろのBeast raceの姉-chanと一緒に出るか!? 半分同士で丁度一人分だ!」
GordonのProvocationに、笑い声をあげる彼の取り巻き達。
Simonはそうした嘲りに慣れているので、動揺もせず「じゃあ、遠慮無く」と義手を付けたまま前に出る。
「あっはっはっはっは、面白い事言うよなぁ、半分同士か、思わず笑っちまったよ。……オレも出る!」
「ええぇっ!?」
「Natania -sanっ、誇りの為に戦うあなたは立派です!」
「Julianaの御嬢-san、止めてくだせぇ!」
だが激怒したNataniaが乱入し、三つ巴どころか四つ巴の決闘が始まってしまったのだった。
そして始まった決闘を上空で眺めている者がいた。
それはVandalieuやMilesでも、霊やGolemでも、そしてGufadgarnでも発見する事は出来ない存在……空気だった。
(……あいつら、何やってんの。もしかして、私達を誘き出す為のcamouflageのつもり?)
whole bodyを無色透明無臭の気体に変化させた【Sylphid】のMisa Andersonは、事態をただ観察していた。Vandalieuを直接見ないようにしながら。