『オ、オカエリ……ナサイ……マセェ……ゴmaster……サマァ……』
たどたどしい口調と、ぎこちないSmiling Faceで女が挨拶をする。
bloodの気の失せた肌に、体中に残る縫合の痕。女は、Undead……Zombieだった。
だが、ただのZombieでは無い。Vampireの死体がUndead Transformationした、Vampire Zombieである。口元から覗くfangsと、光を失いどろりと濁っていても紅いままの瞳がその証拠だ。
このworldでは、Undead Transformationする事は生前より強くなる事には必ずしも結びつかないが……たどたどしくても言葉を話せる程知能が残っているのなら、Humanにとって脅威になる事は間違いない。
特に生前Noble-bornだった場合は、高度なmagicを使い、翼も無いのに空を飛ぶことが可能だ。そんな恐ろしい存在なのだが……彼女が着ているのはMaid服だった。しかも、胸元が覗いていたりskirt丈が膝より上だったりと、露出度が高くなるように改造されている。
『オォ、オカエ……リィ……ゴ……しゅじ…ん……ザマァ……』
そして先程から、何故か挨拶の練習をしている。
『うぅぅん……やっぱりたどたどしいですね。姉-sanがHalberdで頭を叩き割ったせいでしょうか』
『そうね……ちょっと動きがぎこちない。RitaがGlaiveで首を落したからかも』
そしてそのVampire Zombieの挨拶を監督しているRitaとSalireが、そう評価した。そう、女はBirkyneの四人の腹心の一人にして、RitaとSalireに倒されMaidにされたNoble-born Vampireである。
名をMagisaと言い、生前はRank11のVampire Marquisであり Bahn Gaia continentのDark nightを何万年もの間暗躍し続けた恐るべき存在である。
ただし、当然だがMaidとして有能かどうかは別の話である。
『Maidとしては新人その物ですが、私達にはあなたを手にかけた責任があります!』
『Vampireの人が一気に増えたので、私達Maidも増えました。ですがMagisa -sanは私達の手で立派なMaidにして見せますからね』
そして二人が『だから一緒に頑張りましょう!』と言うと、Magisaの濁った瞳は潤み、手足は小刻みに震えた。
『とりあえず挨拶は後回しにするとして……まず【Spirit Form】と【Long-distance Control】skillの獲得から行きましょうか。体中をバラバラにして、自在にHouseworkが出来るのは私達Undead系Maidの利点ですからね』
『それより、まずblessingsの獲得を目指してBocchan漬けにするのはどう? body partや脳の修復作業の時も一緒に居たから、もう少しだと思うんだけど』
『目と脳の修復に時間がかかったと、Bocchanから注意されちゃいましたからね……』
「……それより良い提案があるんだけど、良い?」
震え続けているMagisaの教育policyについて相談するSalireとRitaに口を挟んだのは、【Aegis】のMelissaだった。
『Melissa -san、離乳食作りは終わったんですか?』
「終わったわよ。それより、あんた達が彼女を立派なMaidに仕立て上げる気なら、まずするべきなのは彼女にまともな、つまりformalなMaid服を着せる事よ。そのcosplay衣装みたいなのじゃなくて」
apron姿のMelissaは、半眼でMagisaの格好を改めるべきだと提案した。
実際、Magisaが着ているMaid服は本職の、それも高貴な身分のmasterに仕える一流のMaidなら気分を害するような改造Maid服である。それを二十代半ば程のappearanceでstyleの良いMagisaが着ているので、どうしても「nightの商売でQueen -sama Typeの人が、客のdemandを断れなくて仕方なく着ている」と言う風に見えてしまう。
つまり、本物のMaidには見えない上に無理をしているように感じられるのだ。
しかし、二人には異論があるようだ。
『そんなMaid -sanが増えたら、私達が目立っちゃうじゃないですか』
Living Bikini ArmorとHigh-leg Armorの彼女達は、鎧から伸びる肢体は全てmain bodyから出ているSpirit Formだ。だが、はた目には露出度が高い格好をしたShoujoに見える。
もしformalなMaid服を着たfemale達の中に混じっても、一目でわかるほど目立つだろう。
『それにHuman社会のformalなMaid服を着たMaidなんて、Talosheimには一人もいません』
そしてTalosheimの王城で働くMaid達の多くは、Vida's New RacesやUndeadである。そのため、Human社会の常識は当てはまらないのだった。
「そう言えばそうだったわ。私、Maidにだけはならないようにしよう」
Melissaはそう言って、二人の説得を諦めたのだった。捨てられた子犬のように震えているMagisaを出来るだけ見ないようにして。
「ワウゥゥゥ~ン!」
「チュウゥ~♪」
その時、納屋からFangの困り果てたような鳴き声と、Maroll達とchild達の楽しそうな声が聞こえてきた。
『child達が遊んでいるみたいですね。Fangはchild達に遊ばれているみたいですけど』
『Maroll達は流石ですね~、Kanako -sanの教えが良く身についてます』
「mouseはworld的な人気Characterになる可能性があるって言って、勝手に芸を仕込んだのよね。Lucilianoも止めないし」
なごんでいる三人を眺めながら、MagisaはVandalieuがAdventurer’s Guildから帰って来たら服について直訴しようと企んでいた。
Vandalieu達がAdventurer’s Guildの建物に入ると、中に居たadventurer達は思わず注目した。
「あれは、確かにSimonだな。俺が新米の頃受けた町の清掃の依頼で一緒だったから、覚えてるぜ」
「隻腕だったはずなのに……今じゃあのmagic itemの義手で、昔みたいに両手剣でmonstersと戦っているらしいな。どうやってそんな高性能な義手を手に入れたんだ?」
「その程度で驚いてる場合じゃないぜ。隣を歩いているBeast raceの女。お前は知らないだろうが、あの女はMinotaurに襲われて捕えられたところを助け出された女の一人だ。その時には片腕どころか、両手足全部Slash飛ばされていたらしい」
「何っ!? じゃあ、あの手足は鎧を着ている訳じゃなくて……!」
「義肢だろうな。よく見りゃ、多少の差はあるがSimonのbastardの義手とよく似てるし」
まず注目を浴びるのは、SimonとNataniaだ。二人とも腕や四肢を失った事がadventurer達の間ではそれなりに知られており、そしてそれらを義肢で補っている事が噂になっていたからだ。
尤も、噂では義肢がmagic itemだと勘違いされていたが。
「その義肢を二人に与えたのが、あのガキか? Dhampirらしいが、正直、気味が悪いだけのガキにしか見えないぞ」
「おい、滅多な事を言うんじゃねぇ。あのガ……お子-samaはここのMasterやTamer guildのMasterと親交があって、領主-samaのお茶会に呼ばれるような大物だ! この町の歓楽街はもうあのお子-samaの庭みたいなもんなんだぞ!」
「な、何でガキが歓楽街を庭にしてるんだよ!? どんなマセガキだ!?」
「だから、滅多な事を言うんじゃねぇって! 聞かれたら二度と娼館に行けなくなるぞ!」
「それよりも、腕利きのTamerだって教えてやれよ。Rank4のHellhoundに、他に新種のmonstersを三匹も連れているらしいぞ。表が騒がしいのは、そのせいかもな」
「新種ねぇ。ちょっと興味があるわ。見てこようかしら」
「ところで、そのお子-samaにおんぶされているBeast raceのchildは何だ? ええっと……牛系のBeast raceなんて、いたっけ?」
そんな囁きがAdventurer’s Guildのあちこちで洩れる。どうやら、Vandalieuと顔見知りである『Rock Iron Party』のRock達はいないようだ。
「あのさ、師Artisan。噂がちょっと変な風に流れてるけど、放っておいていいのかよ?」
「大丈夫、本当の話はその内自然と伝わるでしょう。……Mage guildの人達から、意味の無い圧力をかけられていますけど」
「あいつ等、師Artisanがただでmagic itemを配り歩くつもりじゃないかと邪推しやがって……実害が無いなら良いんですけどね」
そう言葉を交わしながら、Vandalieu達は職員に案内されるまま二階へ上がり、奥のGuild Masterの執務室に入ったのだった。
「最近は落ち着いてきたようですね。この町にも慣れましたか?」
連絡があると当事者であるNataniaと、その仲間や保護者であると言う理由でVandalieu達を一緒に呼び出したAdventurer’s GuildのMaster、Bellardはそう語りかけた。
「……ええ、まあ。最近は落ち着いてきました」
そう同意するVandalieuだが、Bellardとは言葉のNuanceが異なっていた。
Bellardの最近は、「ここ半月ほど」という意味だ。彼の目から見ると、実際ここ半月ほどVandalieuの周りで奇妙だったり、驚愕に値したり、胆が冷えるような事は起きていない。
商業guildのSub GuildmasterだったYosefは何事も無く追放されたし、Guild Masterも出張から戻ってきた。行方不明の汚職Guard、Aggarが正気を失ったconditionで発見されたのはちょっとした事件になった。だが発見された場所は、Vandalieuが住む地域やFood Stallを出している歓楽街から離れていたので、無関係だと見られていた。表向きには。
後はVandalieuの傘下のFood Stallが増え、Gobu-gobuとKobold肉の蒸し焼きがMoksiの町の新しい名物になった事や、『Hungry Wolf』のMichaelがすっかり彼の仲間のような関係になり、配下のチンピラ達に訓練を施し用心棒……警備員に仕立てて歓楽街とSlum街の治安を劇的に回復させた事だろうか。
Adventurer’s Guildがらみでも新種のmonsters、火鼠や濡れ鼠、鉄鼠の発見で注目されている。
それだけでは無く、Bellard自身も今後adventurerの中に手足を失った者がいたら、SimonやNataniaのように義肢を扱えるように訓練してもらえないかと、話を持ちかけているところである。
本来ならそれらは大きな出来事だ。特に、商業guildの職員や、歓楽街やSlum街の関係者にとっては、十年経っても忘れられない大事件。Bellardとしても、義肢の件は小さくはない。
だが彼らと立場が異なるAdventurer’s GuildのMasterであるBellardにとっては、「大事件」という程では無い。stomachの痛みに耐えながら、Earlやguild本部へ報告書を書かなくてもいい、日常の延長線上にある出来事だ。
だがVandalieuにとっての最近は、「ここ二日ほど」程度の意味である。
Pure-breed VampireのBirkyne、そして『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaを喰らい、それからの約二週間は、Bellardが知っている出来事以外にもやらなければならない事が多く、忙しかったのだ。
まずBirkyneが残したorganizationや施設の内、放置しておくと危険な場所や、価値のある物がある場所を巡った。
生贄やUndead、そしてVampireにするためのHumanを「飼育」するための施設は殆ど放置しても問題の無い場所だった。このMoksiの町のように、洗脳されたDhampirやVampireや、裏の事情まで全て知っている悪人が世話役をしている施設は数える程で、多くは何も知らない人達が運営している事が分かったからだ。
必要があった時にHumanに変装したVampireが里親として孤児を引き取り、SlaveやProstituteを身請けして回収していたそうだ。
その回収役のVampireが逃げるか恭順を示しているため、今後は極普通の孤児院やProstitute館、Slave商として運営されていくと思われた。なら、手を出す必要は無い。
organizationの場合も各地の犯罪organizationを裏で操っている程度の場所は放置し、向かったのはUndeadの保管庫や、Birkyneの趣味のTortureの一環で脳を弄られたSubordinate Vampireが集められている場所等だ。
Undeadを芸術作品だと認識していたTerneciaや、戦力にしていたGubamonと違い、BirkyneはUndeadを労働力だと認識していたらしい。
建物のArchitectureや武具の製作等、Production的な活動をさせるためのUndeadが複数の施設で保管されていた。
まさか、自分がヒステリーを起こすたびに建物を破壊してしまうからという訳でもないだろうが……。
脳改造されたSubordinate Vampire達は、reasonやemotionsを無くしたり、知性が獣並になっていたりしたが、逆にそれが幸いした。彼らはVandalieuを認識した瞬間にUndeadや生ける屍と同じように魅了され、大人しくVandalieuに従うようになった。
そして、itemボックスを含めた国宝Classのmagic itemを手に入れた。それまではただ各地を【Teleportation】で巡るだけの、弾丸ツアーで特に苦労も何も無かった。
忙しかったのはその後、危険な施設から救出した孤児等や、回収したUndead、Subordinate Vampire達を連れ帰った後だ。
孤児達の内、originally MoksiのSlumの孤児院出身者や、捕らえられている間にその出身者と仲良くなった孤児達十数人も、一緒にHolly Directorの孤児院で暮らす事になった。
だが、孤児達は全部で百人以上いる。なので、孤児院に戻る孤児以外はTalosheimに連れて行く事になった。しかし、保護者のいないchildを百人も適当に寮に詰め込む訳にはいかない。
Production related Undead達は命令しない限りじっとしているので問題は無かったが……Subordinate-bornの方も連れて来た後放置するのは問題だった。特に脳改造された者は、Vandalieuには従順でもそれ以外の者にとっては危険だ。
そうした問題を片づけながらBellardが知っている出来事や、NataniaやSimon達の修行を見て、ある計画を始動し、生まれ変わった「彼女達」の世話をしているのである。
中々忙しかった。
(Miles達が表でも活動できるようになったから、その点は楽になったけれど)
この町を裏で牛耳っていた犯罪organizationに潜入していたMiles達だが、Birkyneを始末した事で潜入を続ける意味が無くなった。
既にorganizationの情報網は掌握しているし、残るtargetのReincarnator達は、RodcorteやそのFamiliar Spiritとなった仲間達から情報を手に入れているだろうから、最初から彼らの潜入はばれている。
尤も、それなりに裏でnameが売れていたMilesは、引き続き『Hungry Wolf』のMichaelと名乗っているし、UndeadであるIslaは表に出ず裏に留まっているが。
「最近は従業員を増やしたとか。それに、外の彼女達……Simon -kun、彼が何処からあんな美人を連れて来るのか、知らないか?」
「いや、俺には見当もつきませんぜ。それに、まあ、師Artisanっすからね」
ちなみに、まだSimonはVandalieu達の秘密を知らされていない。しかし、最近は「師Artisanだから」という便利な言葉で、Vandalieuとその関係者の奇妙な点を納得してしまい、探ろうとはしていない。
いつか話してくれると信じているのか、もしかしたらblessingsの伏せ字が解放されつつあり、それで何かを察しているのかもしれないが。
「そうか、出来ればあやかりたかったんだが。guildの組合員でもない彼の事を調べる訳にもいかないから諦めるか」
「それより、オレの賠償金全額を『Flame Blade』が払ったってどう言う事なんだ? まだ、賠償金額も決まってないはずだと思ったけど」
「そうです。早く教えてください」
Vandalieuを取り巻くHuman関係を探るのを諦めたBellardに、自分達を呼んだ用件を早く説明しろと急かすNataniaと、彼が初めて見るはずなのに見覚えがあるShoujoに見える何か。
(-kunの事も出来れば詳しく聞きたいような、見なかった事にしたいような……)
Bellardはその何か……Juliana Alcremのvestigesを強く残した、牛を思わせる角とtailを持ち、Tamed Monster用の首輪を付けた五age前後に見えるShoujoに、憂鬱な視線を向けた。
そのBellardの視線に気がついた二人は口々に言った。
「だから、この子はJulia -sanが産んだMinotaurのVariantだって言ってんだろ!?」
「Julianaと申します。以後、良しなに」
そう説明するが、実際は当然異なる。Minotaur Kingによって産み付けられた、卵の一つにPseudo- reincarnationしたAlcrem Dukeの末のImoutoだったJulianaが産まれたのは、Hihiryushukakaを滅ぼした数日後だった。
卵のconditionで産まれたJulianaは、すぐに孵化して成長し、十日程で赤ん坊のconditionから五age前後に見える今のconditionになった。
Vandalieu’s Divine Protection以外にも何故か『Goddess of Water and Knowledge』Peria’s Divine Protectionまでもっており、同時にPeriaからのOracleを受けたようなのだが、まだ思い出せていないなど、想定外の事も起きている。しかし、今のところは問題無く元気に育っている。
元気に育ち過ぎかもしれないが。だがoriginally MinotaurのchildはGoblin程ではないが成長が速く、さらに【Demon Kingのfallopian tubes】によって産み付けられ、Vandalieuによって変異させられた卵から産まれたchildだ。これぐらいの変化は許容範囲だろう。
……Vandalieu達にとっては。
「そうか、Variantか……Variantなら仕方ないのかねぇ?」
「仕方ないんじゃないでしょうか。Tamer guildのBachem -sanも、『目の前に存在している以上、Variantとして納得するしかない』って言っていましたし」
なお、Variantとは通常とは異なるappearanceやAbilityを持って産まれたmonstersの事で、いわゆる突然変異の事だ。
「通常のMinotaurとは似ても似つかない姿……っと、言うか女の子だね、明らかに。しかも、言葉を話しているし、monstersの討伐中に戦死したと発表されたはずの誰かにそっくりだけど……Variantなら仕方ないのか」
「そう思いますよ」
このworldにはStatusが存在し、raceもしっかり表示される。だがそれを見る事が出来るのは本人以外には、【Magic Eye of Appraisal】と言う希少なUnique skillの所有者か、Tamerしている存在のみ。Julianaの場合は、Vandalieuだけである。
他には、guildの登録証などのmagic itemで他人に見えるようにStatusを表示する事も出来る。しかし JulianaはHumanではなくmonstersとされており、monstersが登録する事が出来るguildは存在しない。
そのためどんなに奇妙で怪しくても、Vandalieu達が「JulianaはMinotaurのVariantです」と言い張る限り、納得する以外ないのだった。
「私の中のVariantの概念がどうにかなりそうだよ。あと、guildの建物内はTamerしたmonstersの持ち込みは禁止されているはずだが」
そうBellardが細やかな抵抗を試みる。それに対してVandalieuは、椅子から立ち上がりJulianaを抱き上げて見せた。
「ただし、こうして個人が保持できる小型のmonstersの場合は持ち込みを許可すると規約にありますから、問題ありませんね。……俺が抱き上げる側なのは、少し新鮮です」
「お、恐れ多いので降ろしていただけると……Bellard -sanっ、私は誤魔化されませんからね!」
「は、はあ、以後気を付けます。ええっと、ですね……」
別にJuliana達の追及をかわそうとしたわけでは無かったBellardだが、もう彼女に関して考えるのは止める事にした。
(公的な身分はただのTamerで商売人Apprenticeの筈なんだが……この町では歓楽街やSlumを中心に大きなinfluenceを持っているし……最近何処からか連れて来た赤毛と銀髪の美女も、身のこなしからしてただ者じゃない。
変に突っついても、良い事は無さそうだ。相変わらず、得体が知れないのが不気味だが)
そして『Flame Blade』に関する報告書を出して読み上げる。
「確かに、まだ-kunに支払うべき賠償金の額も決まっていなかったのだが……どうやら『Flame Blade』が想定される最高金額をAdventurer’s Guild branchに払ったようだ。
一人十万で、合計五十万Baum」
「「ご、五十万!?」」
「……思っていたよりも高額ですね」
Bellardから告げられた金額に、思わず腰を浮かすNataniaとSimon。Vandalieuも目を瞬かせ、Julianaも口を手で覆っている。
accurateではないが、通貨の価値は一Baum百円程だ。なので、五十万Baumは『Earth』の五千万程の大金となる。『Earth』では四肢を失う事になった被害者へ加害者が払う賠償金としては、あり得ない金額では無いだろう。だが『Lambda』の物の価値に当てはめれば、五十万Baumはかなりの大金である。
慎ましく清貧に暮らすなら、十分残りの一生を食べていける額だ。それだけあるのなら四肢を失ったとしても生きていけるだろう。ただ、本来はこれほど高くはならないらしい。
「ず、随分吹っかけたじゃないのさ」
「それはね……汚い話だが、ただのDClass adventurerでしかなかった-kunがEarlのお茶会に出席するような人物になったし、保護者が彼だからね。向こうのguildも、精一杯配慮したようだ」
後、Nataniaがguildに報告する際Julianaのnameを出さず、あくまでも「村娘のJulia」だと証言した事も関係するかもしれない。相場より多い分の幾らかは、彼女への口止め料が含まれている可能性も否定できない。
「ただ、それはあくまで最高額で、そこからある程度……恐らく数万Baum程度は値引きされた金額に決まるはずだった。しかし、『Flame Blade』は金額が決まる前に狩ってきたmonstersの素材やMagic Stoneで、値引きされる前の最高金額を完済してしまったらしい」
「そんなのは何かの間違いか、からくりがあるに違いねぇ! 俺達がNataniaにあって、guildに報告してからまだ一カ月も経ってないんだ。AClassやBClass adventurerならin any case、DClass adventurerが稼げる額じゃない」
自身もDClass adventurerであるSimonがそう主張し、NataniaとJulianaもnod。「私も怪しいとは思う」とBellardも同意した。
「向こうのguildでも流石に怪しんだらしい。十日以上狩りに行ったまま町に戻って来ないと思ったら、大量の素材とMagic Stoneを持って戻って来たらしいから。買い取りの際も、素材やMagic Stoneが本物かどうかいつもより入念に調べたそうだ。
だが、全て本物だという事が分かったそうだ。あと、guildの規約やAlcrem Duchyの法に違反する方法で手に入れた物ではない事も」
『Flame Blade』がguildに持ち込んだのは、全て本当に価値のある素材とMagic Stoneだった。そして、それらが他のadventurerからの強盗や窃盗などの行為によって集められたものでない事も、明らかになった。
……五十万Baum相当の大量の素材やMagic Stoneを他のadventurerから奪うには、彼らが拠点にしているItobamの町のguildに所属するadventurerを襲い尽くしても、約十日では足りないからだ。
「ただ、目撃者によると『Flame Blade』以外のadventurerが何人か一緒に居たらしい。そいつらに協力させたのかもしれない。……まあ、それでも妙な話なんだが」
「他人が協力って、それは不正じゃないのかよ!?」
「残念ながら、不正じゃないんだ。昇Class試験ならともかく、『Flame Blade』がしているのは賠償金の納付……借金の返済みたいなものだからね」
食って掛かるNataniaに、Bellardはそう説明した。組合員の実力を測る試験なら他人の手を借りるのは不正だが、賠償金の場合は他人の手を借りても払ってもらえれば、guildとしては誰の手を借りても構わないのだ。
「彼らに協力していたadventurerのnameや素性は教えてもらえますか?」
「すまん、無理だ」
だからVandalieuもBellardが首を横に振っても驚きはしなかった。
「そりゃないだろ!」
「Guild Master -sanよぉっ! 頼むぜっ!」
そう言って食ってかかるNataniaとSimonに、Bellardは慌てて抗弁した。
「落ち着いてくれ、出来れば私も教えたいんだ! 落ち目の『Flame Blade』に手を貸す上位のadventurer、何らかの思惑があるとしか思えない!」
『Flame Blade』のmemberの誰かが希少で特殊なUnique skillを持っているとか、実は何処かのNoble 家のご落胤だとか、親類に腕利きのadventurerがいる等の特殊な事情があるなら、分からなくもない。
しかし guildが知っている限り、『Flame Blade』はありきたりな普通のadventurerだ。素質はある方らしいが、注目を集める程のaptitudeがある訳ではない。
そんな『Flame Blade』に、短期間で五十万Baumを稼ぐ事が出来る上位のadventurer……恐らくBClass以上の腕利きが手を貸すなんて、考えられない。何らかの思惑が無ければ。
そしてBellardはその思惑は、直接の被害者であるNatania、その保護者であるVandalieuが関係するものだと考えた。
だからNataniaだけではなく、Vandalieu達もこの場に呼んだのである。
「ただ、情報が無い。そのadventurerはguildどころか、町に入ってもいない。そのadventurerの顔を知っている者も町に居なかったらしくて、nameや等Classも不明だ。もしかしたら、実際はadventurerじゃなくmercenaryか何かかもしれない。
分かっているのは髪を逆立てた、若いHumanの男だってことくらいだ」
「それじゃあ、仕方ない。町に入ったんなら、門のGuardから聞き出せばnameと、adventurerだったら等Classぐらい分かったはずだが……」
町に入る時、身分証の提示を求められる。その時guildの登録証をGuardが見ていれば、そこから聞き出せたのにとSimonが悔しがる。
「なあ、そんなに徹底して正体を隠している奴なら、もしかして賞金首なんじゃないか?」
「それは調べたが……少なくとも、この辺りに手配書が出回っている賞金首じゃなかった。あと、似顔絵の類は……流石に無い。どう考えても怪しいが、違反を犯していないHumanの似顔絵を他の町のbranchに回すのはどうかと、Itobamのbranch長が判断したようだ」
「まあ、そうでしょうね。怪しいだけで似顔絵が周辺の町に回されていたら、俺の似顔絵も回されているでしょうし」
Vandalieuがそう言って引き下がると、彼以外の全員が驚いた-sama子で動きを止めた。
「……師Artisan、怪しいって自覚はあったのか」
Simonが思わずつぶやき、BellardとNataniaが同感だとnod。……ちなみに彼らには見えないが、Princess Levia達Ghost達も同じように頷いていた。
「まあ、失礼な!」
Julianaは異論があるようだが、「まあまあ」とVandalieu自身が宥めて落ち着かせる。
「心当たりはありますし」
「あるのか!? じゃあ、やっぱりAlcrem Duke 家からの……!」
「いや、Duke 家は関係無いです」
BellardはJulianaの件で、Duke 家が何らかの陰謀を仕掛けようとしているのではないかと疑っていたようだが、Vandalieuが違うと言うと、あからさまにほっとして椅子に座り直した。
「師Artisan、やっぱり悪名高いAlda過激派ですかい!?」
代わりにSimonがそう尋ねて来るが、Vandalieuは首を傾げた。
「そうと言えなくもない、と思いますけどちょっと微妙でして」
Vandalieuの心当たりとは、Birgit Duchyに居るAsagi達三人以外のReincarnator、MurakamiやHajimeだ。彼らはこのworldにreincarnationする際、十五age程のageの若いHumanのBodyを手に入れている。【Sylphid】や【Super Sense】などのfemale陣はElfを選んだそうだが。
Reincarnator達は、Rodcorteから与えられたVandalieuの位置が分かるRadarを使って、狙い通りにこのMoksiの町に誘き出されてきたのだろう。
(居場所が分かるとしても、idiot正直にこの町へ来るとは流石に思いませんでしたが……何を考えているんでしょう?)
nameを知られないようにしている時点で、自分を狙って来たReincarnatorだろうなという事は分かる。だが、彼らが何を考えて『Flame Blade』に手を貸したのか、Vandalieuには分からなかった。
Abilityで操るか懐柔してminionsにするにしても、DClass adventurer五人程度ではVandalieuはcertainly、その仲間の相手にもならない事はReincarnator達も分かっているはずだ。
『でも、Abilityで操っているなら【Marionette】のInui Hajimeって人ですよね?』
『でしょうね。聞いた話だと、体か電気で接触した相手が対象で、一度に複数のHumanは操るのは難しいそうですが……Rodcorteが与えたAbilityには成長させる余地があるようですから、reincarnationしてから研鑽を積んだのかもしれません』
『じゃあ、Kanakoを呼んだ方が良くない? そのReincarnatorが【Marionette】なら、絶対無視できないよ!』
『Legion -sanも呼んで、Isis -sanの姿にTransformしてもらいましょう!』
TelepathyでOrbiaとPrincess Leviaが、嬉々とした-sama子でエグイ提案をした。
『Origin』でHajimeはLegionの人格の一つ、Isisを【Marionette】の力で操って拉致しようとして失敗し、彼女が体内に仕掛けていた爆薬で瀕死の重傷を負った。そして助けを求める彼に、止めを刺したのが当時は仲間だったはずのKanakoである。
色々と自業自得なのだが、女に続けざまに酷い目に遭わされたHajimeの心の傷は深く、RodcorteのDivine Realmでfemale horror症を発症させていたそうだ。
彼がreincarnationした後どうなったかは分からないが……心理学が未発達なこのworldで、約三年程度の時間でhorror症を克服できるかは、怪しい。
BellquertやChipuras達が『お、女って怖い!』、『Terneciaも女でしたからな……』『……Ternecia?』と戦いている。
『まあ、逆上して二人を殺そうとする可能性もあるので、慎重にならないといけませんが……』
「心当たりはありますが、此処ではちょっと話せません」
Telepathyを一旦止めて、Simonにそう答えると、彼では無くBellardが口を開いた。
「そうしてくれると助かる」
その言葉で、Simonも彼は自分達と立場が違う事を思い出したようだ。
「私は何があろうと、この町のAdventurer’s GuildのMasterとして行動する。-kun達を信頼してない訳じゃないし、明らかに『Flame Blade』の方がきな臭いのは分かっているが、私に話せない事はあるだろう」
BellardはVandalieu達に好意的な立場だが、仲間ではないのだ。
「では、受付で賠償金を受け取ってくれ。個人的には、guildに預金する事を勧めるが。adventurerを続けるなら、もしもという事もあるだろうからね」
そしてVandalieu達に退室を促そうとしたBellardだったが、逆に彼の執務室に入って来る者がいた。
「Bellard -sanっ! 外で騒ぎが起きてます!」
ノックもそこそこに、expressionを変えたguild職員が入って来る。
「おい、来客中だぞ」
「それどころじゃありません! そのお客-sanのTamed Monsterを賭けて、あなたの娘-sanと『Hungry Wolf』のMichael、そして男達が決闘を始めそうなんです!」
「はぁっ!? 何でうちのJessieが!? あいつはalchemistだぞ!?」
部下から告げられた緊急事態に、Bellardが思わず椅子から立ち上がって叫ぶ。
「訳が分からないが、こいつは一大事だ! 師Artisan、早く行かないと……って、師Artisan達が居ない!?」
「さっきJulianaを持ったまま出て行ったよ。オレ達も早く行くよ!」
・Name: Salire
・Rank: 12
・Race: Tartarus Maid Chief Armor
・Level: 45
・Passive skills
Special Five Senses
body part Ability Super Enhanced (1):1Lv(Physical Ability Enhancement awakened into!)
Water-Attribute Resistance:10Lv
Physical Attack Resistance:10Lv
Self-Enhancement: Subordinate:10Lv
Self-Reinforcement: Murder:10Lv
Murder Healing:10Lv(UP!)
Strengthened Attribute Values: Creator:8Lv(UP!)
Strengthened Physical Ability: Spirit Form:7Lv(UP!)
Self-Enhancement: Guidance:7Lv(UP!)
槍Axe weapon equipped, then Attack Power Enhanced (1) : Medium(UP!)
Magic Resistance:3Lv(UP!)
Mana Enlargement:1Lv
・Active skills
Housework:6Lv
MEIDO Halberd Technique:1Lv(Halberd Technique awakened into!)
Coordination:10Lv(UP!)
Archery:8Lv
Spirit Form:10Lv
Long-distance Control:10Lv
Armor Technique:10Lv
Aura of Fear:9Lv(UP!)
No-Attribute Magic:3Lv
Mana Control:5Lv(UP!)
Water-Attribute Magic:5Lv
-Surpass Limits-:5Lv(UP!)
Familiar Spirit Demonic Advent:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Vandalieu’s Divine Protection
・Name: Rita
・Rank: 12
・Race: Tartarus Maid Chief Armor
・Level: 49
・Passive skills
Special Five Senses
body part Ability Super Enhanced (1):1Lv(Physical Ability Enhancement awakened into!)
Fire-Atribute Resistance:10Lv
Physical Attack Resistance:10Lv
Self-Enhancement: Subordinate:10Lv
Self-Reinforcement: Murder:10Lv(UP!)
Murder Healing:10Lv(UP!)
Strengthened Attribute Values: Creator:8Lv(UP!)
Strengthened Physical Ability: Spirit Form:7Lv(UP!)
Self-Enhancement: Guidance:7Lv(UP!)
Magic Resistance:2Lv(UP!)
Mana Enlargement:1Lv
・Active skills
Housework:6Lv(UP!)
MEIDO Naginata Technique:1Lv(Naginata Technique awakened into!)
Coordination:10Lv(UP!)
Archery:8Lv
Throwing Technique:10Lv
Spirit Form:10Lv
Long-distance Control:10Lv
Armor Technique:10Lv
Aura of Fear:8Lv(UP!)
No-Attribute Magic:2Lv
Mana Control:3Lv
Fire-Attribute Magic:6Lv(UP!)
-Surpass Limits-:3Lv(UP!)
Familiar Spirit Demonic Advent:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Vandalieu’s Divine Protection