Pure-breed Vampire、Birkyneの拠点は人里から遠く離れたあるDevil Nestsの中心部に、古から存在していた……訳ではない。

　EleonoraがVandalieuに寝返ったことにより、Birkyneが彼女の知らない拠点を必要とした結果、ここ数年の間に整えられたものだ。

　流石に一から建てるのは難しかったので、Eleonoraを拾う前に使っていた拠点や、遺跡と化していた滅びた国や町の建物をreformして使っていた。

　この砦もその一つだった。

　此処で暮らすのは管理を任されたNoble-born Vampire達数名と、その配下であるSubordinate Vampireが数十人。そしてHumanが約百人程である。

「……昨日は隣の牢の奴がbloodを吸われたらしい」

「死んだのか？」

「いや、少ししか吸われなかったって」

「でも、その内死ぬまでbloodを搾り取られる……その内あたし達も」

　暮らすと言っても、Human達の殆どはchildで牢に繋がれ家畜のように管理されている。彼らはそのbloodでVampire達の喉を潤し、何らかのmagic儀式や『Evil God of Joyful Life』にblessingsを乞うための祭祀に使うための生贄としてストックされているのだ。

　孤児院等管理する施設もあるが、必要になる度に直接孤児院から集めるのは問題がある。この砦はその問題を解決する中間管理施設なのだ。

「ケッ、当たり前だろ。俺達はVampire共の餌になるためにここで飼われてるんだ。いつかは奴らにbloodを吸われて死ぬか、Undeadにされるに決まってるだろ」

　それをchild達も知っており、斜めに構えた-sama子の少年が、同じ牢に入れられているchild達に答える。

　Vampire達は、当然だがbloodを吸う。だがその頻度と量は、Humanが思っている程では無い。またVampireはBloodsucking以外の、普通の食事からも栄養を取る事が可能だ。

　流石に年単位でbloodを飲まないと健康を害したり、Regenerative Powerが衰えたりするが、数か月bloodを飲まなくてもbody part的なimpactは無い。

　しかし高位のVampire……【Bloodsucking】skillが【Bloodwork】skillにAwakeningしているVampire等は、Bloodsuckingへの衝動が高まる。

　そして何より、Birkyneの趣味である。child達は知らないが、彼のstress発散の為に行われるTortureの犠牲者として消費される者もいた。……最近は自分の周囲に霊が漂わないように、比較的殺生を控えていたようだったが。

「そ、そうとは限らないだろ。Vampire -samaは、僕達がしっかり仕えて優秀さを見せれば、Vampireにして一族に加えてくれるって……」

「確かに言ってたけど、それは本当なの？　働いてもUndeadにされるだけかもしれないじゃない」

　他の用途として、child達の中から従順な者は生かしておいてSubordinate Vampire等にし、そうでない者はUndeadの材料にする場合もある。

「だけど、逃げ出そうなんて考えるなよ。出会うmonstersによっては、Vampire達に嬲り殺されるより酷い死に方をする事になるんだからな」

「……分かってるよ」

　この砦で飼われているchild達は、Birkyneに洗脳されてはいない。Human社会から隔離され、砦を一歩出れば危険なmonstersがウヨウヨしている。そのため洗脳する必要が無いのだ。

「どうせ大人になるまで生きられたか分からないんだ。だったら後一日か数か月か知らないが、その時が来るまで楽しもうぜ」

「楽しもうぜって、ご飯ぐらいしか楽しみが無いじゃない。昼は仕事させられるし」

　そう言う少年にShoujoが不満を述べる。

　牢に繋がれ家畜の暮らしを強いられているchild達だが、食生活は孤児院に居る時より向上していた。

　贅が尽くされている訳ではないが、肉や魚のおかずに野菜、時々果物のdessertがつく食事。昼間はその食事を賄うための畑仕事や果樹の世話。

　balanceのとれた栄養conditionと適度な運動によって、bloodの品質を高める狙いがあるのだろう。

「腹がいっぱいになれば十分だろ」

「そりゃあ……なんだか騒がしいわね」

「他の牢から、また人が連れ出されたのか？」

　child達は話の途中で、周囲が騒がしくなっている事にふと気がついた。

「いや、これは……Vampireじゃないか？　そうだ、Vampire達がscreechをあげているんだ！」

　耳を澄ますと少年が言った通り、砦にはchildがあげたとは考えられない大きなscreechが響いていた。

「ＧＹＡａａａａａａａａａａａ！？」

「ヒイイイイイッ！　ヒーッ！　ヒーッ！」

「もうダメだっ！　終わりだ、終わりなんだぁぁぁ！」

　何処からか響いて来る獣の絶叫のようなscreechが、Vampireのものだと気がついたchild達は顔を見合わせた。

　Vampire達がscreechをあげる理由、それが分からなかったからだ。

「も、もしかして誰かがVampireを殺して回ってるんじゃないか！？」

「じゃあ、あたし達助かるの！？」

　誰かがVampire達を退治するために、砦に攻め込んだのではないか。そう思ったchild達の、諦めにくすんでいた瞳に希望の輝きが戻る。

「おい！」

「「「ひっ！？」」」

　だがその希望の輝きを吹き消しに来たかのように、child達がいる牢の前にVampireが現れる。彼らはこのSubordinate Vampireの顔を覚えていた。nameは知らないがchild達の世話や監督を行っている一人で、上司のNoble-born Vampireには媚びへつらうが、child達には厳しく当たる嫌な奴である。

　ただ、nameまでは知らなかった。

「な、何かご用でしょうか、Vampire -sama！？」

　上ずった声でchild達の一人が返事をすると、Subordinate Vampireの男は顔を強張らせたまま叫んだ。

「俺のnameはAndrewだ！」

　自分のnameを。

　これでこのSubordinate Vampireのnameを知る事が出来たchild達だが、「何故今Self introductionを？」とAndrewの意味不明な行動への困惑と、Vampireへのhorrorで硬直してしまう。

「いいか？　もう一回言っておくぞ、よく聞け、俺のnameはAndrewだ！　分かったな！？　ふんぬぅ！」

　だがAndrewはchild達の反応を待たずに、再び名を名乗った。そして、何とclawsを振るって牢の鍵を壊してしまった。

「さあ、出ろ！　貴-sama等は……いや、皆-samaはこれから自由の身だ！　いいか、俺が……いえ、このAndrewめが皆-samaをお助けした事をお忘れなく！」

　そして強張り引き攣った不気味なSmiling Faceを浮かべながら、そう言ってchild達を解放する。horrorと困惑は寧ろ深まったが、Andrewに逆らうのはもっと怖かったためchild達が牢から出ると、何と他の牢でも同じような事が起きていた。

「お子-samaたち、俺が、このBagnioがお助けいたします！」

「さあ、このCitrineお姉-sanが自由にしてあげますからね！　Citrineお姉-sanが！　自由に！」

「退け！　この牢のchildを助けるのはこのRyckertだ！　邪魔をするならぶち殺すぞ！」

「邪魔をしないで！　この私、Felpoが助けるのよ！」

　ほんの数分前まで、child達にとって恐ろしい管理者だったはずのVampire達が我先にchild達を牢から解き放ち、媚びらしきものを売っている。

　child達はその光景に呆然としながらも、何か大きな事が起きたのか、若しくは終わったのだという事だけは理解した。

　『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaの消滅は、瞬く間にBirkyne配下のVampire全員に伝わった。そう、Continent全土に分かれて活動していた、originallyはTerneciaやGubamonの配下だったVampireも含めて。

　普通なら、そんな事はVampireと言えどあり得ない。HihiryushukakaがVandalieuに滅ぼされたのは、Gufadgarnが創り上げたDungeonの中で、Birkyneの腹心も全員倒されている。外に情報が洩れるはずはない。

　だがHihiryushukakaは、Evil God (M)ではあるがVampire達に奉じられている神である事に違いは無い。

　過去VandalieuにSpirit Cloneを砕かれた『God of Ice』Yupeonや、Subordinate Godを喰われ自身が創り上げたDungeonを損壊させられた『God of Law and Life』AldaのClergymanたちは、神がDamageを受けた事が伝わりEmotionalに大きな衝撃を受けた。

　MoksiのAlda Priestもscreechをあげて意識を失った。

　それと同じ事がEvil God (M)派のVampire達にも起こったのだ。

　HumanがGodsに向けるものと性質が異なるが、Vampire達は『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaと、それに仕えるPure-breed Vampire達に対して強固なreligionを向けていた。

　その中心にあるのは畏怖だ。Evil God (M)達の力を崇めつつも、その力が自分に向く事が無いようにと願い、奉っているのだ。それでも人と異なり過ぎるMental構造を持つEvil God (M)からのOracleを受けられる者は殆ど居ない。だが、断末魔の絶叫を聞くのは簡単だった。

　結果、長くHihiryushukakaに仕えたNoble-born Vampire達の殆どがEvil God (M)の消滅を理解し、狂乱した。恐ろしい存在から解き放たれたと言う解放感と同時に、自分達を纏める枷が外れてしまったと言うLost感、そしてEvil God (M)と言う強力な後ろ盾を失ったhorror。

　そしてEvil God (M)派のVampire達は、Hihiryushukakaを滅ぼしうる存在について知っていた。

「Vandalieuだ！　Vandalieuが『Evil God of Joyful Life』を滅ぼしたに違いない！」

「奴は魂を砕く力を持っている！　それでEvil God (M)を滅ぼしたのよ！」

　そうNoble-born Vampire達は悟って狂乱したのだ。

　厳密に言えば、Vandalieu以外にもHihiryushukakaをどうにか出来そうな存在はいる。『Five-colored blades』や『Storm of Tyranny』と言ったＳClass adventurer partyが奮戦すれば、Godsにもその力は届くだろう。

　しかし、彼らにはHihiryushukakaをsealedする事は出来ても、滅ぼす事は出来ない。それが出来るのは魂を砕き消滅させる事が出来るDemon King Guduranis……そしてVandalieuだけだ。

　故に、Vampire達はVandalieuがEvil God (M)を滅ぼしたのだと考えた。そして、次は自分達に違いないと。

「うああああ！　Birkyneのhideoutになんて居られるか！　死者の声を聞いた奴が、俺達を殺しにやってくる！　その前に俺は逃げる！」

「ヒーッ！　ヒィィィィ！」

　Noble-born Vampire達には、今まで多くの悪行に手を染めて来た自覚があるし、それで見返りを得ていた覚えもある者達だ。しかも Noble-born Vampireは、多くの場合organizationでは幹部以上の地位にいるので「命令されて仕方なく」という台詞は使えない。

　そのため、空を飛んで逃げられるNoble-born Vampireの多くが逃げ出した。彼らは最低でもRank６の実力を持つため、Devil Nestsの真ん中から一人で逃げ出す事が可能だったのだ。

　だがSubordinate Vampire達はそうもいかない。Noble-born Vampire達のscreechや、Subordinate-bornでもEvil God (M)の断末魔の叫びを聞いてshockを受けた少数の者から事情を知る事が出来た。出来たが、彼らは飛べない。その上、Subordinate-bornはweak者はRank３しかない。

　そしてこのBirkyneのhideoutは、adventurer等が簡単には辿りつけない程広大で、強力なmonstersが生息しているDevil Nestsの中心部にあるのだ。そこからSubordinate-born達が逃げ出すには、monstersと戦いながら地上を駆け抜けなければならない。何日もかけて。

　それは不可能だと思ったSubordinate-born達は、別の選択肢を選んだ。

「その結果、囚われていたchild達を自分達で解放したと……この光景はそう言う訳だったのね」

　Gufadgarnの『Teleportation』によって訪れたBirkyneの拠点で、Vandalieu達は彼の部下達との戦闘を想定していた。

　しかし、実際に訪れた彼らが見たのは解放された百人程のchild達と何人かの大人、そしてそれを接待するSubordinate Vampire達という予想外の光景だった。

「はいっ！　このAndrew、心を入れ替えました！　これからは過去の贖罪の為に人生を捧げる覚悟です！」

「私、Bagnioと申します。Subordinate-bornとなって数十年、この拠点で掃除や洗濯等雑用ばかりさせられてきました。本当です、ですからどうかお助け下さい！」

「今、child達が食べているfoodはこのCitrineめが作った物でございます。ですので、どうか！」

　Subordinate Vampire数十人の命乞いを聞きながら、Eleonoraは溜息をついた。見事な掌の返しっぷりに、いっそ感心する。

「まあ、刺客だったのに寝返った私が言うのも何だと思うけれど……どうしましょうか？」

「彼らの言葉がそのまま本心だとは思えません。ですが……何人かは既に旦那-samaに導かれているようですね」

　GuiderのGuidanceの本質は思想にある。そのため、導かれているか否かappearanceから判断する事は普通不可能だ。しかし、BellmondはSubordinate Vampireの内何人かは、VandalieuのGuidanceを受けていると分かった。

「生かしてはおけないと言うのでしたら、今すぐ殺してくれ！　このRyckert、霊となり絶対のLoyaltyをお誓いします！」

　それは、そう言いだす瞳に狂信的な輝きを宿す者がいたからだ。

『そうね。あの瞳はVandalieu -samaに狂信的なLoyaltyを誓う者達、特にUndead Transformationする事も厭わないHuman達がしている瞳だわ』

「Bellmond、Isla、確かに俺もそう思いますけど……皆-san、俺が怖くて命乞いするために捕えていたchild達を解放して媚を売ったのでしょう？　目的が変わっていますよ」

　fanaticを作っている覚えのないVandalieuがそうSubordinate Vampire達に話しかけるが、それは逆効果だった。Subordinate Vampire達は、全員Evil God (M)派……『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaを奉じて来た者達で、しかも organizationでの地位は低い者達だ。そのMental性は健全なconditionとは言い難い。

　特にここにいるのはHuman社会と接点がほぼ無く、Vampire人生の大半をBirkyneやNoble-born Vampireに服従し続けて生きて来た者達だ。

　つまり、ある意味ではTraining済な者達ばかりなのだ。

「瞳に映るだけで、手が震える……なんて強大な力……！」

「はぁ、はぁ、何て恐ろしい……！」

　そのため、Vandalieuが話しかける度に勝手にhorrorを覚え、狂信的な輝きを瞳に宿す者達が増えていく。

『こいつ等、全員あんたの親戚か何か？』

「ちょっとっ！　自分は違うとでも言うつもり！？」

「……世間的には我々三人も彼らと同類でしょうね」

　遠い目をするVandalieuの背後で、IslaやEleonoraがSubordinate Vampire達を見て、そう評していた。

「child達から話を聞いてきました」

　そこにCelisやBestraが戻ってきた。Holly Directorは彼女達の孤児院からここへ送られたchildと再会して、今まで助けに来られなかった事を詫び、話し込んでいる。

「Vampireに捕えられたのに、監視役のVampireに助けられた事に彼らも困惑していて。命が助かって解放されるなら、恨まないと言う子が多かったです」

「ただ、怖いし気味が悪いから近づけないでほしいと言う子も多かった。後、彼らの言う通りここ暫くVampire達は殺しを控えていたらしい」

　Birkyne達は霊からVandalieuへ情報が渡る事を警戒して、child達を殺すのをExtreme Strength避けていたようだ。また、霊を見る事が出来る【Spiritualist】JobのHumanを探し出して誘拐し、協力させていたそうだ。

「尤も、SpiritualistはVampire達に嘘を教えたそうだが。Birkyne達には聖水を被れば憑いている霊は浄化できると教えたが、実際にはcountlessの霊がついていてそれぐらいではとても浄化しきれないconditionだったらしい」

「そのお蔭で、孤児院に入る前に何かが起きていると知る事が出来た訳ですから、Spiritualistの人には感謝しないといけませんね。

　それで、child達には若干不評なあなた達ですが……とりあえず連れて行く事にします」

　Vandalieuの決定に、Subordinate Vampire達の三分の一がほっと安堵の溜め息を漏らし、三分の二が「おぉ！」と短く歓声をあげる。……ちなみに、後者がfanaticっぽい者達だ。

「全員Vida's Factionへの改宗と、暫く監視付の生活をしてもらいますが。監督は……Dark Night Knightsに頼みましょうか」

『お任せください、Vandalieu -sama。私の部下達ならこいつ等を躾けてくれるでしょう』

　Dark Night KnightsはIslaがDelegation Leaderを務める、Vampire Zombieを中心にしたKnight団だ。彼女と共にTalosheimのruleを守り、人々に愛想よく接しながら町の清掃等のボランティアで地道なimage upに取り組んだ者達なので、Subordinate-born達の監督を安心して任せられる。

「これから回るorganizationでも何人か……何十人か増えるでしょうからね」

「……念のために尋ねたいのだが、Vampireは全てああなのだろうか？　今日自分がVampireだと気がついたばかりなので、自覚が無いのだけど、いつか私やCelisも同じになるのか？」

「違う……はずだけど、私達が言っても説得力が無いわね」

　不安そうなBestraにEleonoraはそう答えた。しかし、Vandalieuから貰った首輪をしている彼女の言葉にはやはり説得力は無かったらしく、Bestraは不安そうなままだった。

　Vandalieu達がこのBirkyneの居城であるこの砦に来た本来の理由は、child達が大勢捕らえられており、Birkyneが帰って来ない事から彼の敗北を悟り、自棄になったVampire達がchild達を殺すか、逃げ出してchild達だけ取り残される事を危惧したからだ。

　それが無いと分かったため、Vandalieu達は他のBirkyneの拠点や施設に行く前に、この拠点に設置されたroomを使ってJob changeを済ませる事にした。ただ速やかにとはいかなかった。

　EleonoraがJob change可能なJobに姫と付くものしかなく、【Transforming Sword Princess】を渋々選び、Bellmondも同じような理由で【Transforming Kunoichi】を選んだ。

「明らかにVan -samaが作ったこのTransformation Equipmentのせいだけど……便利過ぎて手放せない！

　Van -samaは私達をどうしたいの！？」

「全くです、旦那-sama。はっきり言ってください。覚悟しますので」

『二人ともまだまだ分かっていないわね。言われずとも察するのが、私達僕の本来あるべき姿というものよ』

「俺の主な目的はより優れた装備を使ってもらい、皆に強くなって貰う事なのですが。まあ、多少楽しんでいるところがあるのは否定しませんけど」

　二人に詰め寄られ、Islaがtroubleの起きるフラグを立てようとし、Vandalieuが本心を繰り返し打ち明けて宥めると言う一幕があった。

　尤も、KanakoやDarciaによると【Magical Girl】等のJobはAbility Valuesの成長率が高い有用なJobなので、それに近いだろう【Transforming Sword Princess】や【Transforming Kunoichi】も同-samaに有用なJobとなる筈。EleonoraとBellmondはまた一段階強くなる事だろう。

「俺もHihiryushukakaを倒したExperience Pointで、【Dream Guider】のlevelが１００に到達しましたからね。……この先、一分一秒を争う事態は、起きそうにないですし」

　Hihiryushukakaの断末魔の絶叫を聞く程のVampireがいる場所なら、ここと同じようにもう事態を悟った後だろう。

　いない場所なら、Birkyne達の敗北にまだ気がついていないはずだ。

　どちらにしても、慌てて駆けつける必要性は薄い。

「それに、Moksiの町でJob changeして万……いえ、億が一にも聞かれたら困りますからね」

　Vandalieuはこの拠点に設置されたJob change roomに入り、水晶に手を触れた。

《選択可能Job　【Whip Tongue Calamity】　【Vengeful Berserker】　【Dead Spirit Mage】　【Hell King Mage】　【Divine Enemy】　【Fallen Musha】　【Insect Nin】　【Destruction Guider】　【Dungeon Master】　【Demon King】　【Chaos Guider】　【Hollow King Mage】　【Eclipse Cursecaster】　【String User】　【Demon Ruler】　【Creator】　【Demiurge】　【Pale Rider】　【Tartarus】　【Aramitama】　【Hell Battery Cannoneer】　【Magic Wand Creator】　【Soul Fighter】　【God Destroyer】　【Qliphoth】　【Hell Beast User】　【Spirit Tuner】　【Artisan: Transformation Equipment】》

「……今回は増えなかったか。では、予定通り【Demon King】を選択」

　今まで避けてきた【Demon King】Jobだが、Hihiryushukakaを滅ぼしてDemon Kingのsoul fragmentである【Demon Kingのshadow】を取り込んだ時、これまで幾つもAbsorptionしてきたDemon King's Bodyのfragmentとは若干異なった感覚を覚えた。

　結果的には何も起きなかったが、もしかしたら今後、他のDemon Kingのsoul fragmentをAbsorptionする事があるかもしれない。【Demon King】Jobなら、その問題を未然に防げるかもしれないと思ったのだ。

　思っただけで何の根拠も無く、逆に問題が悪化する可能性もcertainlyあると理解している。しているが……。

(fragmentからmain bodyと呼ばれるようになって随分たつし、今更でしょう)

　そう考えて、riskは少ないと判断したのだ。ただ、選択する際の声を町の人達に聞かれるのは拙いので、この砦のroomを利用する事にしたけれど。

《【Demon King】JobにJob changeしました！》

《【Life Deception】、【Magic Erosion】、【Fake Reincarnation】、【Lackey Creation】skillを獲得しました！》

《【Life Deception】が【Mutagenesis】に、【Magic Erosion】が【Guidance：冥魔創夢道】skillに、【Fake Reincarnation】と【Lackey Creation】が【Hell King Magic】skillにintegrationされました！》

《【Rapid Regeneration】、【Mass Strengthen Adherents】、【Deadly Venom Secretion:(Fangs, Claws, Tongue)】、【Body Expansion (Tongue)】、【Strengthened Attribute Values: Ruling】、【Surpass Limits: Fragments】、【Mind Encroachment】、【Labyrinth Creation】、【Demon King】skillのlevelが上がりました！》

《【Automatic Mana Recovery】が【Constant Mana Recovery】skillに、【Vitality Enlargement】が【Augmented Vitality】skillにAwakeningしました！》

《levelが１００に到達しました！》

　ボコボコとbody partの中から不吉な音が聞こえ、boneやmuscleが歪むような音が聞こえた気がしたが、それよりもVandalieuは脳内に響いたアナウンスの方が気になった。

　Hihiryushukakaの魂を喰った時と同じように物騒なskillを覚えたと思ったら、既存のskillにintegrationされて一安心。等と思っていたら、levelが１００に到達したと言ったのだ。

「【Status】……本当にlevelが１００になっている。何故？　【Demon King Fragment】を集めていたからかな？」

　【Fragment Bestower】がHumanや生物を変異させる事でExperience Pointを得る事が出来るJobだったのと同じように、【Demon King】は【Demon King Fragment】を集める事でExperience Pointが得られるJobなのかもしれない。

「ともかく……levelが１００になった以上もう一度Job changeしないと。次は……どれにしましょうか？」

　【Hollow Shadow Warrior】がJob change可能なJobに増えたが、これは【Demon Kingのshadow】と関係のあるJobだろう。それも含めて考えた結果、Vandalieuが選んだのはDemon Kingよりも正体不明のJobだった。

「【Demiurge】を選択」

《【Demi-God】skillを獲得しました！》

・Name: Vandalieu Zakkart

・Race: Dhampir(Mother: Goddess)

・Age: １１age

・Title: 【Ghoul Emperor】　【Eclipse Emperor】　【Guardian of the Cultivation Villages】　【Vida's Miko】　【Scaled Emperor】　【Tentacle Emperor】　【Champion】　【Demon King】　【Oni Emperor】　【Trial Conqueror】　【Transgressor】　【Black Blood Emperor】　【Dragon God Emperor】　【King of the Stalls】(ＮＥＷ！)　【Genius Tamer】(ＮＥＷ！)

・Job: Demiurge

・Level: ０

・Job History: Death-Attribute Mage　Golem Transmuter　Undead Tamer　Soul Breaker　Venom Fist User　Insect User　Tree Caster　Demon Guider　Archenemy　Zombie Maker　Golem Creator　Corpse Demon Commander　Demon King User　Nether Guider　Labyrinth Creator　Creation Guider　Hell Healer　Disease Demon　Magic Cannoneer　Spirit Warrior　Fragment Bestower　Dream Guider　Demon King

・Ability Values

Vitality: ２３５,５０３　(１１０,５２５ＵＰ！)

Mana: ５,７７９,７６０,０２０＋(４,６２３,８０８,０１６)　 (合計１,３７１,９５８,４３７ＵＰ！)

Strength: ２９,１５８　(１３,６５０ＵＰ！)

Agility　：２４,７６１　(１３,６９５ＵＰ！)

Endurance　：３１,５２０　(１４,５３７ＵＰ！)

Intelligence　：４１,３７５　(１７,８４８ＵＰ！)

・Passive skills

Monstrous Strength：２Ｌｖ(ＵＰ！)

Rapid Regeneration：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Hell King Magic：６Ｌｖ(Life Force Endowment、Soul Restraint、Setup Undead Domination、Fake Reincarnation、Lackey Creation integrated＆ＵＰ！)

Status Effect Immunity

Magic Resistance：９Ｌｖ

Dark Vision

冥魔創夢道Enticement：８Ｌｖ

Chant Revocation：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Guidance：冥魔創夢道：８Ｌｖ(Magic Erosion integrated！)

Constant Mana Recovery：１Ｌｖ(Automatic Mana Recovery awakened into！)

Mass Strengthen Adherents：２Ｌｖ(Strengthen Subordinates awakened into＆ＵＰ！)

Deadly Venom Secretion:(Fangs, Claws, Tongue)：２Ｌｖ(ＵＰ！)

Enhanced Agility：８Ｌｖ(ＵＰ！)

Body Expansion (Tongue)：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Increased Attack Power while Unarmed: Very large(ＵＰ！)

Enhanced Body Part (Hair, Claws, Tongue, Fangs)：１０Ｌｖ(ＵＰ！)

Thread Refining：７Ｌｖ

Mana Enlargement：８Ｌｖ(ＵＰ！)

Mana Recovery Rate Increase：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Strengthened Attack Power while activating a Magic Cannon : Large(ＵＰ！)

Augmented Vitality：１Ｌｖ(Vitality Enlargement awakened into！)

Strengthened Attribute Values: Ruling：３Ｌｖ(ＵＰ！)

・Active skills

Bloodwork：１０Ｌｖ

-Transcend Limits-：６Ｌｖ

Golem Creation：６Ｌｖ(ＵＰ！)

Hollow King Magic：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Precise Mana Control：１Ｌｖ

Cooking：８Ｌｖ

Alchemy：１０Ｌｖ

Soul Breaking Arts：３Ｌｖ(ＵＰ！)

Simultaneous Multi-cast：２Ｌｖ(ＵＰ！)

Surgery：８Ｌｖ

Realization：３Ｌｖ(ＵＰ！)

Coordination：１０Ｌｖ(ＵＰ！)

Super High-speed Thought Processing：５Ｌｖ(ＵＰ！)

Commanding：１０Ｌv(ＵＰ！)

Thread-reeling：６Ｌｖ

Throwing Technique：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Scream：７Ｌｖ

Dead Spirit Magic：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Demon King Artillery Technique：３Ｌｖ(ＵＰ！)

Armor Technique：７Ｌｖ

Shield Technique：７Ｌｖ

Group Shadow Binding Technique：６Ｌｖ(Group Binding Techniqueから変化＆ＵＰ！)

Surpass Limits: Fragments：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Spirit Tuning：１Ｌｖ(ＮＥＷ！)

・Unique skill

God Devourer：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Deformed Soul

Mind Encroachment：９Ｌｖ(ＵＰ！)

Labyrinth Creation：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Demon King：６Ｌｖ(ＵＰ！)

Abyss：８Ｌｖ(ＵＰ！)

Divine Enemy

Soul Devour：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Vida’s Divine Protection

Gods of Earth's Divine Protection

Group Thought Processing：６Ｌｖ(ＵＰ！)

Zantark’s Divine Protection

Group Manipulation：６Ｌｖ(ＵＰ！)

Soul Form：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Demon King's Demon Eye

God of Origin’s Divine Protection

Ricklent’s Divine Protection

Zuruwarn’s Divine Protection

Perfect Recording

Surpass Limits Soul：１Ｌｖ

Mutagenesis(Imperfect Life、Life Deception integrated！)

Demon King's Body(ＮＥＷ！)

Demi-God(ＮＥＷ！)

・Curse

　Experience gained in previous life not carried over

　Cannot learn existing jobs

　Unable to gain experience independently

　Statusを確認したVandalieuは、眩暈を覚えた。

(遂に百億を超えたMana以外にも、Vitalityも増えたし……力やEnduranceが倍近く上がった。なのに成長期の時と違って今回はmuscle痛が起きていない)

　Job change roomを軽く歩き回って見ても、muscleやboneが軋むような痛みは無い。

　【Demon King Fragment】が【Demon King's Body】にintegrationされたからか、それとも【Demiurge】Jobに就いて獲得した【Demi-God】という、字面からして尋常ではないskillの効果か。

「まあ、もしかしたら明日になったらwhole body muscle痛でベッドから起き上がれなくなっているかもしれませんが」

　そう思いながらroomを出ると、少し騒ぎが起きていた。

「Van -sama！　私達ついさっき急に【Familiar Spirit Advent】じゃなくて、【Familiar Spirit Demonic Advent】ってskillを獲得したのだけど、何かあったの！？」

「Eleonora、『何があったのか』ではありません、『何をしたのか』を聞くべきです！」

　二人にそう言われたVandalieuは、何か答える前にPseudo- Main Body-type Demon King Familiarを通じてTalosheimに意識を向けた。

　……同じ事が起こっていた。【Vandalieu’s Divine Protection】を受けている者達が、次々に【Familiar Spirit Demonic Advent】skillを獲得しているようだ。

　興奮した-sama子のLucilianoがPseudo- Main Body-type Demon King Familiarに「遂に神に至ったのかね！？　そうなら是非調べさせてくれ、師Artisan！」と迫っていて、かなり怖い。

「……やっぱり、【Demon King】からの【Demiurge】は迂闊でしたね。皆と相談してから決めるべきでした」

　自分の軽はずみな判断を後悔するVandalieuだった。

　ちなみに、この時Islaは早速【Familiar Spirit Demonic Advent】skillを試していたらしい。

　自らの執務室で、Isaac Moksi Earlは大きな仕事をやり遂げた達成感を味わいながら、書類にsignし判子を押していた。

　あの色々と尋常ではないDhampirの少年と、友好的なconnectionを結ぶことに成功した。それは彼にとって第三国との重要な条約締結に等しい、大仕事だった。

　国の行く末を左右する強大な力を持つ個人……あの少年はそれに匹敵するとIsaacは考えていた。得体が知れないだけに、強く。

「旦那-sama、ご報告に参りました」

　そこに家宰がSpy達からの報告を持ってやってくる。

「聞こう」

「本日、あの少年はSlumの孤児院に向かったようです。Food Stallの方は母親が仕切り、茶会にも出席したBeast raceの娘と、Slumに住むSimonという男がそれを手伝っているようです」

「ん？　本人とTamed Monsterはどうしたのだ？」

「それが、Tamed Monsterは家の方で留守番を、本人はSlumの孤児院に行ったままのようです。何でも、明日の祝祭の準備を手伝っているらしいのですが」

　家宰の報告を聞いたEarlは、首を傾げた。Food Stallに本人がいないのは、商業guildの規則上問題は無い。仮登録から正規登録への試験の内容は、継続的な商売が出来るか否かだ。Food Stallさえ営業し続けているなら、登録者本人が不在でも平気だ。

　だが今日会談したばかりの少年が、これまでにない行動をしていると言うのにIsaacは違和感を覚えた。

「明日はVidaの祝祭だったか？　覚えが無いのだが」

「申し訳ありません、共同templeで行われるものならMemoryしておりますが……」

　Isaacの疑問に、家宰は答える事が出来なかった。それだけ、Slumの孤児院に対して関心が払われていなかったと言う事だ。

　IsaacもSlumの福祉政策として多少の寄付を行っているが、普段はそれだけだ。Vandalieuの件が無ければ、態々注目する理由は無いというのが、彼らの認識であった。

「近所の住人に聞きこみを行いますか？」

「……そこまですればばれるだろう。良い機会だ、Spy達に伝えよ、これからはVandalieu Zakkartの監視と調査では無く、彼に近づこうとする者、特に害意を持つ者がいないか監視と調査を行うようにと」

「彼の正体や思惑についての調査は、打ち切って宜しいのですか？」

　聞き返す家宰に、Isaacは「うむ」と頷いた。

　昼の茶会でconnection作りは出来た。これ以上Spy達に探らせ続けると、露見した場合折角のコネにケチがついてしまう。

(それに、我が家のSpy達にこれ以上調べさせても、彼の思惑や正体を掴めるとは思えないからな)

　流石にそう口に出す事は無かったが。

「それよりも、そろそろ彼の存在がAlcrem Duchyの主だった都市はcertainly、他のDuchyへも広がる頃だ。過激派の連中が寄って来たら迷惑だからな。注意しておく必要がある」

　Isaacとしては、得体が知れないけれど悪意は無く、規則に従い町とAlcrem Duchyのdevelopmentに繋がりそうなVandalieuよりも、Dhampirを狙うfanatic共の方が余程注意すべき対象だ。信仰熱心なのは結構な事だが、それで事件を起こされたら困る。

　彼の考えは今日の茶会でそう変わっていた。

「彼らに我が家の護衛が必要だとは思えないが……過激派が放火でも企てたら事だからな。未然に防がねばならん」

「畏まりました」

　家宰が一礼して下がり、SpyへIsaacの指示を伝えに行く。

　再び一人きりになった執務室で、Isaacは最後の書類に判を押して大きく伸びをした。

「さて……tonightは早めに寝るとしよう」

　Isaacを含めた多くの人々にとって、Moksiの町は今日も何事も無く平和だった。

・Job解説：Dream Guider　Luciliano著

　夢見がちな事を言ってGuiding者……では無く、夢に出てきてGuiding者である事を表すJob。……Guidanceは基本的に思想の筈なのだが、夢は思想と言えるのだろうか？

　そう言う意味では現在確認されているGuider系Jobの中では、最も異質と言える。

　Ability Valuesの成長は、力やEndurance、Agilityと言ったBody的な物はあまり成長しなかったようだが、その分IntelligenceとManaの成長率が高かったようだ。

・Job解説：Demon King　Luciliano著

　Demon KingとはJobなのだろうか？

　我々のJobと言う概念に疑問を投げかけるJobである。恐らく、【Demon King Fragment】にInfestされるのではなく、己と一体化させる事に成功させた者のみが就く事が出来るJobだと思われる。

　Ability Valuesは全体的に成長幅が大きかったようだ。