礼拝堂から外に飛び出した瞬間、Mortor達Noble-born VampireはそれぞれSunlightに対する防御策をActivateさせた。
Wind-AttributeやWater-Attributeのmagicで自分のbody partを覆う膜を張り、自分のbody partに届くSunlightを弱める。完全に光を遮ると自分自身の視覚を風や水で物理的に遮る事になるため、これで限界だ。
「……冬じゃなくて日差しの強い夏に誘い出すべきだったでしょうか?」
『ご心配なさいますな、ごmaster -sama! 我々の輝きならあの程度の対策、無いも同然です!』
「ところでVandalieuよ、先に彼らをどうにかするべきでは? 私のSpace-Attribute MagicでBodyは脱出してはどうでしょう?」
Light AttributeのGhostとなった、淡く輝いている『Fighting dog』のDarockが闘志を滾らせるが、Gufadgarnは冷静にそう促した。
Birkyneに洗脳された孤児院の人々三十から四十人程が、今もVandalieuに何重にも抱きついている。その殆どが十age未満の小さなchildである事と、彼らが一言も話さないお蔭で会話は可能だが。
しかし、身動きする事はほぼ不可能である。礼拝堂からここに移動する時も、VandalieuがSpirit Formで彼らを保護していなければ何人かbone折や脱臼したかもしれない。Subordinate VampireだったCelisとBestra、あとやはりただのHumanでは無さそうなDirectorはin any case、Marcia等の小さなchildは生命の危機だ。
「もうしばらくこのまま-sama子を見ようかと。奴が何か命令しても、これなら対処できますし。準備はもう済んでいますから」
Vandalieuがそう言い終わるのを待っていたかのように、礼拝堂の壁に空いた穴から、Wind-AttributeのManaをbody partに纏ったBirkyneが姿を現した。流石Pure-breed Vampireと言うべきか、彼の配下達は顔や手に光に焼かれた傷がまだ残っているのに、彼は既に完全に回復しているように見える。
元の美貌を取り戻した顔で、Birkyneは言った。
「『自殺しろ』!」
その途端、Vandalieuに抱きついていた孤児院の人々が、一斉に自殺を試みる。小さなchildはtongueを噛み切ろうとし、CelisやBestraはそれまで意識していなかったはずのclawsを伸ばして自分の喉をかき切ろうとする。
「……ほら、こういう時です」
それに対してVandalieuは、Spirit Formを【Realization】する事で彼らの自殺を防いだ。口内の歯や、clawsをゲル状にしたSpirit Formで包み、自分のbody partを傷つける事が出来ないようにしたのだ。
「ん~っ! んん~っ!」
「はっ、ふぐっ!」
淡くLuminescenceする青白いRealizationしたSpirit Formに動きを封じられたMashやCelis達は、それでもBirkyneの命令を実行しようとする。他の孤児の頭部に頭thrustをして頭蓋boneをbone折しようとしたり、RealizationしたSpirit Formに顔を押し付けて窒息しようとしたり、その忠実さは尋常ではない。
しかし VandalieuのSpirit Formは頭部も包み、幾ら頭thrustをしても衝撃を殆どAbsorptionしてしまう。窒息死しようとする者には、Spirit Formを管状にしてlungまで伸ばし人工呼吸を始める。
『【Death Delay】のmagicでも良いのでは?』
『idiot者。【Death Delay】では死ぬまでの時間が伸びるだけで、傷を負わない訳ではないのだぞ』
そう呟いたBellquertを、Chipurasが叱責する。
「やはり、そうなった以上その人形共は取引には使えないか。洗脳も、私から【Demon Kingのshadow】を奪った後解けばいいとでも考えているのだろう?」
命令が不発に終わったBirkyneは、Chipuras達の余裕のある態度を見ても激高せず、静かにそう問いかけた。だが、冷静と言う訳では無かったらしい。
「だが忘れてはいないかな? ここはslums、全体から見れば外れの方でも約三万人が暮らす町の中だということを!」
そう叫ぶBirkyneの左右の手に、それぞれ燃え盛る炎と、激しい稲光が出現し、それまで-sama子を見ていたMortor達も素早く、しかも別々の方向に向かってmagicを放つ。
孤児院の外に向かって。
「【巨岩Spiral弾】!」
「【大火炎砲】!」
「【氷槍乱雨】!」
「【歪曲波】!」
drill状の岩や炎の帯が薄い孤児院の塀とその向こうに向かい、氷の槍が上空から雨あられと町に降り注ぐ。さらにspaceが歪み、元に戻る時の反作用で破滅的な衝撃波が撒き散らされる。
「人質など幾らでも居るんだよぉっ! 【flaming heat獣招来】! 【雷雨】!」
止めだと言うかのように、Birkyneが炎で作り出した獣を町に解き放ち、雷の雨を降らせる。
激しい爆音や衝突音が響き渡り、煙が上がる。
「はぁっはっはっはっはっは! 今ので、何人死んだかな!? 百人か? 二百人か? なに、気にする事は無いさ、この町には約三万人も下等生物がいるんだから!
それとも、やはり気になるかな? 二週間も滞在して商売をして関わって来た町の人々が死ぬのは!? それが嫌だったら――」
何も知らない無関係なHuman達を殺戮した事に、喜悦を抑えられず高笑いをあげていたBirkyneはVandalieuに視線を戻して、絶句した。
「ふぅ。普段表情豊かな人達が、無表情で迫って来るのってちょっと怖いですよね」
「Vandalieu、残念ながら私にはその気持ちを推し量るのは困難です」
『お二人とも無表情なのに……』
彼らが平然としていた。
VandalieuはCelis達をゲル状にRealizationさせたSpirit Formに包んだまま一人抜け出し、まだ何とかsuicideしようと蠢いている彼女達を、「なんだかLegionにちょっと似ていますね」と緊張感のfragmentも無い-sama子で話している。
「き、貴-sama等! Birkyne -samaの言葉を聞いているのか!? 町のHumanには興味が無いのか!?」
「……良いのかな、そんな態度を取って。私がこの町で-kun達が何をしていたのか、知らないとでも思っているのか?
貴-samaの家も、歓楽街も、Tamer guildやAdventurer’s Guild、共同temple、BeastmenのGuardがいる街の門も、貴-sama等がお茶会を楽しんだ領主の館でも、此処から狙う事も出来るんだぞ!?」
Mortorに続いて激高したBirkyneがそう叫ぶ。実際、Pure-breed VampireであるBirkyneが本気でmagicを放てば、このMoksiの町は壊滅する。彼でなくても、Mortor達四人の腹心の内一人だけでも同じ事だ。
この町のAdventurer’s GuildにはCClass以上のadventurerが何人もおり、またMoksi Earl 家が抱えるKnight達も精鋭が揃っている。
だがそれでも上位のNoble-born Vampireにとっては有象無象でしかない。時間帯が昼だから多少苦労するだろうが、小さな障害でしかない。
「対して貴-samaはどうだ? 町の中で貴-samaは全力を出す事は出来ないだろう!? 私達を倒しても、街が一面焼け野原になっていましたでは意味が無いからな!
余りの不自由さに、同情申し上げるよ。お人好しのDemon King -dono! ハーッハハハハハハ……ハ?」
分かったら私の話を聞け。そう続けようとしたBirkyneだったが、その前に聞こえるはずのものが全く聞こえない事に気がついた。
声が全く聞こえないのだ。
Slum街の孤児院から攻撃magicが連続で放たれたのだ。逃げ惑う人々の助けを求めるscreechや、混乱してpanicに陥った者達があげる怒声が全く聞こえてこない。
まさか適当に放った攻撃magicで、近隣住人が一人残さず即死した訳でもないだろうに。
「ビ、Birkyne -samaっ! 孤児院の塀が!」
配下の上ずった声が指す塀に視線を巡らせてみれば、城壁にも穴を空けるはずの【巨岩Spiral弾】が直撃した個所には、何の損傷も無かった。地面が多少荒れている以外の変化は何も無く、塀が立ち続けている。
反対側の、【大火炎砲】を受けたはずの塀も周辺がススで黒く汚れているだけだった。
「ば、BAKANA! そんなBAKANA……!」
「……俺達の家や、Tamer guildやAdventurer’s Guild、街の門に、領主の館でしたね。狙えると思うのなら、試してみたらどうです?」
顔面を蒼白にして、狼狽えるBirkyneにVandalieuがそう言いながら迫ると、Birkyneは上空に向かって飛び上がった。
そして空から見る事で、自分達が今何処に居るのか否定しようの無い真実を思い知らされた。
眼下に広がる町並みは、一見した限りではMoksiの町そのものだ。街の門も、大通りも、各種guildや領主の館も、本物の町と同じ位置に、同じ大きさ、そして似たような色の屋根をして存在している。通りを歩く人shadowだってある。
だがよく見れば、建物は全て色のついた土や石で出来ており、本物の建造物に施されているはずの装飾が無くなってはいないか。
町を行き来する人shadowは、全て石や金属で出来たGolemではないか。
そして町の外に見えるはずの森や草原が、全て乾いた荒野になっているのは何故か。
「BAKANAっ、そんな……町そっくりに創られたDungeonだと!? そんな物を創れるのか!?」
「Gufadgarnによると、『今まで創る理由が無かっただけで、出来ない訳ではありません』という事らしいですよ」
狼狽していたBirkyneは、すぐ近くで聞こえたVandalieuの声にはっとして振り返ろうとした。
「【大旋風脚】」
だが黒い異形の姿……【Soul Breaking Arts】と【Realization】で魂を纏ったVandalieuの回し蹴りを受けbody partがくの字に、しかも曲がってはいけない向きに曲がってしまう。
「がっぁぁぁぁぁぁ……!」
そしてそのまま、偽高Class住宅街がある方向に蹴り飛ばされていった。
蹴り飛ばされ流れ星のように落ちて行くBirkyneの姿に、Mortor達はscreechをあげた。
「Birkyne -sama!?」
「お、お助け申し上げろ!」
慌ててmidairに飛びあがろうとした彼らだったが、それは出来なかった。
それまで地下や建物のshadowに隠れていたVandalieuの仲間達が現れたからだ。
「最近フラストレーションが堪まってるのよ、ちょっとventされなさい!」
「キシャアアアアア!」
自分達と同じく空を飛ぶMilesや、空を覆う程GiantなPeteの出現に、Mortor達が憔悴も露わに動きを止める。
「貴-sama等に構っている暇は無い!」
「精々家畜の番でもしているが良い!」
そしてMilesやPeteでは無く、まだVandalieuのSpirit Formに拘束されているCelisやMash達に向かってmagicを放つ。
岩の弾丸や氷の槍、風の刃が降り注ぎ……全てspaceに空いた穴に吸いこまれる。
「貴-sama等に言われなくても、私が守っている」
そしてGufadgarnによって、Noble-born Vampire達の前に出現したspaceの穴から、岩の弾丸や氷の槍が彼ら自身に跳ね返されてしまった。
「うおおおっ!?」
まさか、自分の放ったmagicがspaceを捻じ曲げて返されるとは思わなかったMortor達は、動揺して思わず回避に専念してしまう。Vampireの高いRegenerative Powerを信じ、magicを無視すればまだBirkyneを追えたかも知れなかったが、もう無理だ。
Peteの角から放たれる【Roaring Lightning】や、Chipuras達が放つ光線、Dungeonの建造物の中から放たれる矢によって同僚達が落される中、Mortorは自分の意思で逃亡を断念した。
「我こそはBirkyne -samaの腹心筆頭、Mortor! チンピラ共のGeneral風情がどうやって力を得たかは知らんが、返り討ちにしてくれる!」
追っ手の『Hungry Wolf』のMichaelをmidairで倒し、他の追手が墜落した同僚達と戦っている間に、Birkyneの元に一人駆けつけようと企んだのである。
「誰がチンピラ共のGeneralよ! まさかあんた達、まだワタシの正体に気がついてない訳!? この『Kiss』のMilesに!」
「何ぃ!? 貴-sama、本当にGubamon配下の一人だったMilesか!?」
お互いに驚きながら、MilesとMortorがmidairでぶつかり合う。鋭いclawsで打ち合い、Fire-Attribute MagicとEarth-Attribute Magicが衝突する。
互いのbloodが飛び散るが、Mortorの顔には笑みが浮かんでいた。
「Birkyne -samaのconjectureが正しかった訳か。だが、それならば私は運が良い! 貴-samaが何故日の光を克服できたのかは分からんが、高々数百年しか生きていない小僧ごとき、一捻りにしてくれる!」
MortorはBirkyneのbloodによってVampireになり、六万年の年月を生きて来たNoble-born Vampireだ。彼は今存在しているEvil God (M)派のNoble-born Vampire達の誰よりも、古くから存在している。
そのRankは12で、Jobも幾つも経験している。彼の実力なら、確かにGubamon配下の幹部だったMiles程度は一捻りだろう。
「そうね、あんた比較的運がいいわよ。 ……【Beast Transformation】!」
だがVandalieuの配下であるMilesはwhole bodyに力を漲らせ、Bodyを変化させる。
「ウオォォォォン!」
狼男の姿に変化したMilesは、midairを蹴ってMortorに襲い掛かった。彼はMilesが【Beast Transformation】した事に驚きつつも、magicで岩の盾を作り出して彼の攻撃を防ごうとする。
「【透爪撃】!」
だがMilesが繰り出したMartial Artsによって、岩の盾は無傷のままMortorの腕は切り裂かれる。
「そんなBAKANA!?」
「こっちも【-Transcend Limits-】に【Magic Fighting Technique】まで使ってんのよ。これぐらい出来ないなら、あんたを追う訳ないでしょう!」
「うおおおおおおお!?」
切断された腕の再生は既に始まっており、数分で元通り生えて来る。まだ致命傷には程遠い。
しかし、手早く捻り殺すと言う当初の目論みは達成不可能だろう。焦燥が込められた叫びをあげるMortorに対して、Milesは冷静に彼を始末しにかかった。
Milesが言ったように、Mortorはまだ運が良い方だと言えるだろう。戦いは一対一で、相手もまだ常識的だ。
『う~ん、もう少しで何か掴める気がするんですけど……』
『姉-san、もう倒しちゃいましょうよ! 私、最近何も殺していないから溜まってるんです!』
『そんなもったいない。Rita、折角殺しても問題の無い強敵なんだから、-chanとskillの練習台にしないと――』
「強敵だと言うのなら、練習台にするなぁ!」
Human出身の女Vampireは、そう激高しながら脇腹にthrust刺さった矢を強引に引き抜いた。彼女が放つbloodthirstだけで常人なら失禁しながら意識を失ってもおかしくは無いのだが、SalireとRitaは気にした-sama子も無い。緊張感の無い口調で、まるで相談しながら買い物を楽しんでいるような雰囲気すら漂わせている。
(だと言うのに何なの、こいつ等は!? 常に鋭いbloodthirstを放ち、私にBirkyne -samaの元へ逃げる隙を与えない。しかも、実際に強い!)
女Vampireが激高しつつも、SalireとRitaとの間合いを詰められないでいるのはそんな理由からだった。
(他の連中の所にも手練れがいるのか? だとしたら、ますますこのままでは――!)
『masterの元に帰らないと、置いてきぼりにされるかもしれないから焦っているんですか?』
「なっ!?」
Ritaに図星を突かれた女Vampireは、思わず顔を引き攣らせた。
『あ、当たっちゃいました? あなた達がBirkyneの所に戻ろうとするから、そうなのかもしれないなと思ったんですけど』
「……それが分かったところで、何だと言うの? 袋の鼠だと私を侮るなら、痛い目を見るわよ」
『いえ、そういう訳じゃありませんが……叩き直さないといけないなと思いまして!』
地面が爆発したような音が響き、Halberdを構えたSalireが女Vampireに迫る。虚ろな瞳からでも分かるほど怒りを湛えて。
「【-Transcend Limits-】! 【歪の鏡】!」
女Vampireはそれに対してskillをActivateさせ、spaceを歪めて光を屈折させ姿を隠すmagicをActivateさせる。
これで二人の視覚を欺き、反撃に転じるつもりだったのだろう。
『【Single Flash slaughter】!』
だが、生物とは異なる【Special Five Senses】の持ち主であるSalireの視覚を欺く事は出来なかった。袈裟懸けに胴を切り裂かれた女Vampireの顔に、horrorが浮かぶ。
だが続くRitaの言葉で、horrorが再び怒りに変わった。
『あなたには、仕える存在の心得……Maidの心得が足りません!』
「だ、誰がServantだぁ!? 【space歪曲】!」
町に放った時よりも大分小規模だが、spaceを爆発させた女Vampireがそれまで鞘に納めていた剣を抜いて叫ぶ。
「我こそはBirkyne -samaの腹心が一人、何万年もの間nightを生きぬいて来た――ヒィ!?」
Ritaはそう名乗りを上げようとする女Vampireに対して、【百烈Spiral thrust】を放つ。名乗りを途中で止め、引き攣ったscreechをあげる女VampireはRitaのGlaiveを防ぎきれず、再びbloodが飛び散った。
『いいえ、あなたは私達がMaidにします! 寧ろMaid以外になれません!』
『Bocchanには、-chanとUndead Transformationの約束を取り付けてありますから諦めなさい!』
正気か貴-sama等!? そう叫ぼうとした女Vampireだったが、上半身と分離して間合いを詰めていたRitaのlower bodyによる膝蹴りをまともに受けて内臓を潰され、腕を分離したSalireのHalberdによって肩がずれる程深く胴体を切り裂かれ、それどころではなくなってしまった。
死とその後の再就職(Undead Transformation)が決まっている女Vampireも不幸だったが、四人いたBirkyneの腹心の中で最も不幸だったのはElf出身のNoble-born Vampireだっただろう。
「がはっ!?」
細いbody partをPeteの角で貫かれたVampireが、口から大量のbloodを吐き出す。
「キシャアアアアア!」
だがPeteは容赦なく【Roaring Lightning】を放つ。Vampireの絶叫が響き、肉が焼ける臭いが漂う。
「む、むむっ……wormがぁ!」
Elfらしい繊細な美貌を修羅の如く歪めたVampireは、何とclawsで自分の両脇腹を切断した。そして胴体の大穴と繋げて自ら上半身とlower bodyに分かれてPeteの角から何とか逃れる。
普通なら自殺行為でしかないが、Vampireは空を飛んでmidairに留まりながら懐にendureばせたitemポーチから新鮮な生きbloodが入ったbottleを取り出し、それを一気に飲む。
「かはぁっ! 戻れっ!」
そして【Bloodwork】skillで活性化した【Rapid Regeneration】skillで上半身と接合するため、【Long-distance Control】skillでlower bodyを呼び寄せる。
このElf出身のVampireは、Birkyneの腹心の中でも多芸である事で知られていた。尤も、Vandalieuの仲間達と比べるとその多芸もくすんで見えなくなってしまうが。
(何なのだ、こいつ等は!? ぐぅ……早くBirkyne -samaの元に戻らねば。此処がDungeonの中なら脱出するにはBirkyne -samaのshadowに縋るしかない!)
憔悴を滲ませたVampireが戻って来たlower bodyを繋げようと急ぐが、彼が操作しているはずのlower bodyは突如身を翻し、強烈な蹴りを放ってきた。
「な、何だと!? これは、私のlower bodyでは無い!?」
『ブグルルルル!』
そう、それはVampireのlower bodyにCamouflageし、magicでFlightしているかのように見せていたSatan Blood Mimicry SlimeのKühlだった。
なら本物のlower bodyは何処だと、Kühlの蹴りを掻い潜りながら探したVampireは愕然とした。
「探し物は、これかい?」
緑色の肌をした植物の葉で出来た服を着た女、Eisenが片手に掴んでいる枯れ技のような物。それは彼女にEnergyを吸い尽くされたVampireのlower bodyだった。
Kühlを【Telekinesis】で運ぶついでに、養分を摂取したようだ。
「お、おのれっ! だがこの程度でNoble-born Vampireの中でも上位に位置する私が死ぬと――」
啖呵を切ろうとしたVampireの声を、大量のfeather音が遮った。Dungeonにcountlessにある、Moksiの町の建造物を模して作られた建物の中から、蜂とfemaleを混ぜたようなmonsters……Gehenna Beeの兵隊蜂達が次々に現れ飛び上がったのだ。
その数は軽く百を超える。
「整列! 前衛構え! rearguardはmagicで援護! ……Charge!」
Gehenna Absolute Queen BeeのQuinnのCommandingに従って、兵隊蜂達の前衛が槍を構え、rearguardが呪文を唱える。
「ま、待てっ、こ、降伏だっ、降伏するっ、Birkyneのorganizationについて知っている事は全て話すっ、や、止めろ、止めてくれえええええ!」
Vampireの姿は、VandalieuのGuidanceや【Strengthen Subordinates】skill、Quinnの【Bee Swarm Commanding】skill、そして本人達の【Ability Values Enhanced (1)】skillによってEnhanced (1)された、Gehenna Beeの軍勢の前に文字通り半身を失ったVampireはなす術も無く蹂躙されたのだった。
「あいつ、何か言ってなかった?」
「さぁ? 聞こえなかったねぇ」
話も聞いてもらえず一方的に蹂躙されたElf出身のVampireと比べれば、彼はまだ幸いだろう。
「貴-sama等にはっ、Vampireの誇りは無いのか!? 己のmasterを殺した相手の僕になり下がるなど、恥を知れ!」
Birkyneの腹心の最後の一人、一見すると老紳士に見えるNoble-born Vampireが杖を構え、magicを放ちながらそう罵倒する。
『何? 俺がハジを知らないだと?』
痩せ型でnerve質そうな美青年に見える、Bellquertが聞き返した。生前は普通のVampireよりも更に青白い顔色をして、目の下にはsickのような隈が常についていた男だったが、今はただただ白く見える。
だが生前のvestigesがある顔つきは一瞬で変化した。
『この俺をidiotにするな! ハジくらい知っているぅっ! ハジとは、真ん中の反対の事だああああああ!』
目と口を大きく開き、そこから絶叫と共に怪光線を放った。Vampireは素早く【Light-Attribute Magic】で作った闇を盾にしてそれを防ぐ。
「くっ、生前は狂っていてもidiotではなかったはずだが……!」
Terneciaの腹心、『Five Dogs』。彼らと親しい訳では無かったが、生前何度も顔を合わせた事がある老Vampireは苦い物を口に含んだように顔を歪めた。
(Ghostとは言え、生前の本人その物ではないということか。確かに、慣れれば強さはそれ程でもないが)
生前のBellquertはVampire EarlでRankは10。幾つものJobを経験しており、Rank11のVampire Marquisである老Vampireでも、戦えば楽には勝てない相手だった。
だが今はそれ程では無い。確かにVampireにとって弱点であるLight Attributeの攻撃をして来る事は厄介だ。だが明らかにその力は弱体化している。
冷静に対処できれば、倒せない敵ではない。
『我々を恥知らず呼ばわりとはいい度胸だ!』
そう確信した老Vampireが反撃に転じる前に、今度は『Fighting dog』のDarockが迫る。彼は手にLight AttributeのManaで作った剣を構え、Bellquertの光線を防ぎ続けるため動きが取れない老Vampireに襲い掛かった。
『光の力を見せてくれる! 【光剣】!』
「こちらは生前と同じで、Chargeしか能の無い愚か者か! 【雷槍】!」
左手で闇の盾を維持しながら、右手に持った杖の先にWind-Attribute Magicで雷の穂先を創り出し迎え撃つ。
『受けろっ、【八つ裂き――』
「技は生前と同じか。だが、遅い! 哀れになるほどなっ」
技を放とうとしたDarockの胴体を、老Vampireの雷の槍が貫く。その瞬間、何の手応えも残さずDarockの姿は掻き消えた。
「ぎゃあああああああ!?」
だが、同時に老Vampireは背中を焼けるような激痛を受けて絶叫をあげた。彼の背後にはなんと、槍で貫かれたはずのDarockの姿があった。
「ば、BAKANA、何故私の後ろに!? 貴-samaのSpeedでは……」
『貴-samaが見えていたのは、私が光を屈折させて【投shadow】した虚像だ! 光の力を侮ったようだな!』
背後から攻撃するのが光の力か!? そう言いたかった老Vampireだが、彼はDarockに注意を向け過ぎた。
『フヒハヘハファハハ! 曲げるぅっ! 光は俺! 俺が光! ウオレェ光線っ!』
それまでただ愚直に闇の盾を攻撃し続けていたBellquertが、光線を曲げて放ったのだ。盾を掻い潜った光線を、老Vampireは避ける事も出来ずに撃たれる。
「ぐあああああっ! 【光線】のmagicが曲がるだとぉぉぉ……!」
body partに纏っていたSunlight対策のmagicのお蔭で多少Damageが和らげられたが、堪らず落下する老Vampire。だがやはり数万年を生きたNoble-born Vampire、地面に激突する前に体勢を立て直し、最早戦い方に拘っている余裕は無いと、杖を構える。
こうなれば距離を取り、広範囲を対象にしたmagicをBarrageして倒す。だがその老Vampireの上空に、今度はChipurasが現れた。
『BellquertもDarockも、術や武術など一部を除いて生前のMemoryを殆ど忘れておる。儂自身も、Rank1のWispからここまでやり直さねばならなかった。だからこそ、この光の力に目覚めたのだ!
受けよ、【大氷獣推参】!』
生前得意としていたWater-Attribute Magicの中でも上位の術で作り出した氷の巨獣が老Mageに襲い掛かる。
「くっ、【大刃乱風】」
唱えていたWind-Attribute Magicをそのまま氷の巨獣に向けて放つ老Vampire。二つのmagicがぶつかり合い、対消滅するかと思われた。
だがぶつかり合う前に、氷の巨獣が激しく輝いた。
『かかったな、この間抜けがぁ!』
次の瞬間、老Vampireの胸の中心に穴が出来ていた。Chipurasが氷の巨獣を作り出したのは攻撃の為では無く、光を収束させるためのレンズとして使うためだった事に気がつくと同時に、彼の意識は闇に落ちた。
spineを圧し折られた勢いで吹き飛ばされたBirkyneは、まだ意識を保っていた。Pure-breed Vampireである彼にとって、脊髄の損傷程度は致命傷にはならない。
「ぐっ、……おおぁっ!」
強引にくの字に曲がったbody partを正しい角度に戻し、地面に叩きつけられる前にmidairで制止する。
そして荒く呼吸を繰り返しながら、素早く建物の陰に隠れた。ヒステリーを起こしそうになる自分を懸命に説き伏せ、態勢の立て直しと状況の把握に努める。
だが好転する材料は殆ど無い。
Gufadgarnの目も掻い潜った移動手段……【Demon Kingのshadow】を使用したshadowからshadowへと移動が可能か試したが、やはり無理なようだった。
「Gufadgarnが手を打ったか、此処がDungeonだからか……どちらにしてもshadowをInfestさせた家畜共のshadowに移動して外に逃げるのは無理か」
恐らく孤児院の礼拝堂全体をGufadgarnの【門】で覆ったのだろう。扉や窓、壁の何処から出てもこのDungeonに繋がっていたはずだ。
だとすれば、脱出するのは至難の業だが不可能ではない。
(街に居るGolem共は、このDungeonで出現するmonstersだとすれば、このDungeonも通常のDungeonと同じ法則で成り立っているはず。外と繋がる出入り口は必ずある。そこから脱出し、外に出てshadowで移動すれば逃げる事が出来るはず――)
『休憩か熟考かは知りませんが、余裕ですね』
Vandalieuの声に我に返ったBirkyneが視線を上げる前に、彼が姿を隠していた建物の壁が粘土のように形を変え、ヘビのように彼の四肢に巻きついた。
「しまった!」
慌てて拘束を解こうとするが、彼の手足に巻きついたのはただの石や木材ではない。Dungeonの床や壁と同じ物質で出来た建造物の一部である。Pure-breed VampireのMysterious Strengthでも絶対に砕けない。
『では、行きますよ、Guduranis』
Monster explanation::Wisp Luciliano著
appearanceは師Artisanが使う【Demon Fire】のmagicと瓜二つ。another worldでは人魂とも呼ばれているらしい存在だ。
Rankは1のGhost系のmonstersで、強い怨念や未練等が無く、生前のMemoryや人格が殆ど残っていないが、Reincarnationの輪に還り損ねた魂が汚染されたManaと結びついてUndead Transformationする存在だ。
そのため、とてもweak。ぶつかっても害は無く、精々人気のない場所で見かけたら不気味なくらいだ。不stabilityな存在故に、退治しなくても数時間から数日で勝手に消滅してしまう。当然取れる素材も無い。Adventurer’s Guildでも、monstersとしてよりUndeadが多い場所の目印として認識されている。
師Artisanが作る場合は、対象の霊の損傷があまりにも激しい場合はGhostでは無くWispになってしまうようだ。
ただ根気強くlevelを上げ、Rank upさせれば生前のMemoryや人格を思い出す事もあるようだ。