Earl 家で行われる個人的なお茶会への招待状。それを家に持ってきたKnightも、以前裏路地で保護を打診してきた時とは違って賓客に対するような恭しい態度だった。
そのためVandalieu達は大いに困惑した。もしかしたらEarlは、お茶会にVandalieuとDarciaを招いた隙に、家に残っているJulianaと、彼女の正体を知るNataniaを暗殺するつもりではないか。そんな邪推すらした。
だがletterには極めて個人的なお茶会であり、別宅で行う旨が記され、お仲間と気楽に足を運んでいただければ幸いですと書かれていた。
「Julianaの事もあるだろうけれど、maybe、AggarやYosef関係の事を話したいんじゃないの? ほら、SpyにAggar達を【Teleportation】させるところを見られたじゃない」
相談するために呼んだEleonoraは、letterを見た後そうconjectureした。
そのconjectureに、その場にいた皆が納得する。一名を除いて。
「BAKANA……証拠は何一つ残さなかったはず。更に、奴らを始末したのは折よくVandalieuが門でGuardと話している時だった。alibiまであるというのに、何故EarlはVandalieuと結びつけるのだ?」
目を見開き、肩や口元を小刻みに震わせGufadgarnは驚きを露わにしていた。Vandalieu以外の対象に彼女が此処までemotionsを表す事は、初めてかもしれない。
「まさか、EarlはOracleでGodsの指示を受けているのでは!? いや、Pure-breed Vampireの手先である可能性も――」
「Gufadgarn、そんな大したものじゃないと思うわ。ただ説明がつかないし、訳も分からないけど、あの連中とVanダ……Van -samaの関係から考えれば、怪しいから結びつけたってだけよ」
「何と!?」
「真実を言い当てているとはいえ、失礼な話ですよね」
fragmentほどの理論も無く、怪しいから決めつけた。そんなEarlに対してGufadgarnは絶句し、Bellmondのtailに巻きつかれて宙吊りになっているVandalieuも、彼女に頷いた。
「何と……己の知識だけで物事を推し量ろうとせず、理解が及ばない事柄もVandalieuの意思によるものだと畏怖するとは。Isaac Moksi Earl、あの者は既にVandalieuの偉大さを理解しつつあるということか」
だが、Gufadgarnが驚いた理由は違っていたらしい、彼女の中のEarlの印象が、「新たなVandalieu Believer」へと変わっていく。
「いや、それは分からないけど……ああ、ダメだわ。もう耳に届いてないわ、あれ」
『私、Gufadgarn -sanと話しているとOracleで人がKami-samaの意図を理解するのがどれだけ難しいのか、分かる気がします』
『……Gufadgarnは、かなり分かり易い部類よ。生前HihiryushukakaのOracleを受けた事が一度だけあるけれど、正体不明なmonstersの鳴き声にしか思えなかったもの。その時は使命に失敗してTerneciaに百年間ただ何もしないで立ち続けるって罰を下されて、散々だったわ』
「話が逸れています」
遠い目をするIslaに注意しながら、Bellmondがお茶を淹れる。
「……ところでBellmond、両手が動かせないとbrushingが出来ないのですが。それとも舐めて毛づくろいをしましょうか?」
「旦那-sama、お茶を淹れている最中に手元が狂ったら大変なので、止めてもらうために腕ごと巻き取っているのですよ。それと、tongueは絶対やめてください。
どうぞ、Darcia -sama」
微笑ましい主従の-sama子に目を細めながら、Darciaはカップを受け取った。
「ありがとう、Bellmond -san。でも、確かに少し変ね。Earlにとっては、Vandalieuだけじゃなくて私も十分正体不明の何かの筈なのに。特にあの人達の失踪に関しては、その頃私は共同templeの休憩室でPaula Priest達とお話ししていたから、alibiも怪しいのだけど」
数日前の講演から、Vidaのfemale PriestであるPaulaがDarciaに心酔している事を調べるのは難しくはないはずだ。邪推すれば、PaulaならDarciaが望むままにalibiの偽証をしかねないと思うはずだが。
「オレは新参者だけど……やっぱり師Artisanの方を疑うと思うよ。だって、Darcia -sanより師Artisanの方が、何て言うか怪しいし」
しかし、まだTalosheimに染まりきっていないNataniaから見ると、そう感じるようだ。
「なるほど。確かに、kaa-sanはFamiliar SpiritをAdventさせただけで、Fang達をTamerし、Food Stallを経営しているのも俺ですからね。ageを考えればそれでもkaa-sanの方を怪しむかもしれませんが……俺はDhampirですからね。見た目のageが当てにならない」
十age少々に見える、実際にまだ十一ageのVandalieuだが、DhampirはVampireでは無い方の親のraceと同じpaceで成長する。Dark Elfの場合、思春期の頃から成長するpaceが急激に落ちる。Earl側の立場で考えれば、Vandalieuのappearanceでも実際には二十age前後である可能性を疑っても、無理は無い。
『じゃあ、Earl -sanは単にBocchanを怪しむ以上に恐れていて、それで直接意図を聞くためにお茶会と言う名目で呼び出そうとしている事になりますね。
どうします? 領主-samaからの招待なら、『平民』に断る自由は無いと思いますけど……』
そう言ってSalireが指すletterの文面には、「VandalieuとDarcia、そしてお仲間」と、招待する対象が曖昧になっていた。
『どう言うつもりなんでしょうね、この『お仲間』って?』
素直に考えればSalireやGufadgarn等、全員が含まれる事になる。しかし、実際には彼女達がMoksiの町に居る事はVandalieu達以外誰も知らないはずだ。
「私達がVan -samaと通じている事は、気がついていないはずよ。ここへの出入りもGufadgarnの【Teleportation】を使っているし」
『そもそも私達の事にEarlが気づけるのなら、私達が乗っ取った犯罪organizationに対してもっと早く手を打っていたでしょうね』
そしてEleonoraやIsla、Bellmondに関しても気がついてないはずだ。
『私達も気がつかれていないはずですよ。Natania -san達が来る前に一度、木戸を開けて中にSpyの人達が侵入してきた時は、事前に家 Golemが気づいていたので壁に掛けられた鎧の演技をしましたし』
『Spirit Formを消して、じっとしていただけですけどね。地下室に向かうようなら、捕縛するつもりでしたけど、そのまま帰りましたし。何故か凄い目で見られましたけど』
実はSpy達が一度侵入していたのだが、流石に領主のSpyを消すのは後々面倒だと思ったので、見られて拙い物がある地下室に入らなければ、見張るだけにとどめる予定になっていた。
幸い、侵入は一度だけでSpyを生け捕りにした後、Vandalieuが廃人にしてしまう危険を冒しながらMemoryを消して洗脳するという事態にはなっていない。
「そうよね、そうなのよね……」
『Darcia -sama、どうかしました?』
「いいえ、何でも無いの。本当に何でも無いから」
そう言いつつも、Darciaは顔を手で隠して俯いてしまう。
(Spyの人、RitaとSalireの事を絶対私が着る鎧だと思ったわよね……)
その事に気がついてしまい、EmotionalにDamageを受けたようだ。Darciaと同じ事を察したBellmondが、そっと彼女に紅茶のお代わりを差し出す。
「ありがとう、話を続けましょう」
まさかEarlもお茶会でその事に言及はしないだろうと自分を慰めて、Darciaが顔を上げた。
「つまりこのletterの言う仲間と言うのは、Natania -sanとJuliana -san、そしてSimonの事でしょうね。孤児院のchild達やPaula Priestを含んでしまうと、個人的なお茶会の規模に納まらないでしょうし」
「仲間って濁したのは、Julianaのnameを直接出したくなかったからでしょうか?」
「なら、そもそも招待しなければ良かったのでは?」
『家に四肢が無い年頃の娘、しかも一人は深い事情付きなのだけ残させて、お茶会の間に何かするつもりだと勘ぐられないように、一応招待したんじゃないの? 実際、外にFang達を護衛に残しても不用心なのは事実よ』
Islaが言う通り、碌に動けない体だと思われている年頃の娘が二人だけで留守番していると知られれば、恐ろしいWatchdogがいると聞いても、「気がつかれずに家の中に入ってしまえばこっちのものだ」と考える泥棒の一人や二人出て来るかもしれない。
certainly泥棒くらい、RitaとSalireなら軽く屠れる。Nataniaも自力で動けるようになっているので自衛できるし、Tareaが偶然出くわしたとしても、今の彼女にとってただの泥棒を捻り殺す事は容易い。
ただ、あまり泥棒に来られるのは面倒だ。変な噂が流れても困る。
「とりあえず、皆で行きましょうか。Simonには一応声をかけて、Nataniaは義肢を見せるいい機会になるでしょう。Julianaは……まあ、残していくと危ないですからね。Earlが望んでいなくても、功を焦ったSpyが来るかもしれませんし、Earlが知らないAlcrem Dukeの手の者が町に居ないとも限りませんし」
「え、Julianaも? このconditionでいいのかい? それにオレ、Nobleのお茶会のmannerなんて知らないぞ?」
「大丈夫、俺もちょっとしか知りません」
「……それで良いのかよ、Emperor陛下」
「Irisから、Orbaum Elective Kingdom式のmannerをもっと詳しく習っておくべきでした」
遠い目をしながら、元Sauron DuchyのBearheart Knight爵家の一人娘で、現在Majin nationの王Godwinの一人娘でもあるIrisの事を思い浮かべるVandalieu。
尤も、彼女もNobleとはほぼ名ばかりのKnight爵家の出身だったので、あまり社交界のmannerには詳しくなかったのだが。
「まあ、Earl -sanも知らない事を前提で呼んだのだろうから、大丈夫よ。だから個人的なお茶会なのでしょうし」
「Eleonoraが知っているのはAmid Empire式で、私が知っているのは一万年程昔の亡国のmannerですからね。Earlやその周囲の者が洞察力に優れていたら、些細な違いに気がついて無用な誤解が生じるかもしれません。
代わりに、Chipurasに聞いてみてはどうです? 彼が潜入していたのはOrbaum Elective Kingdomの商業guild等でしたが、力のある商人はNobleのpartyにも呼ばれますから」
「なるほど。じゃあ早速――」
「ですが旦那-sama、その前に一つ確認しておきたい事が。彼女が作っている物は何なのでしょうか?」
Chipurasを呼ぼうとしたVandalieuを止めて、Bellmondが尋ねたのはTareaの工房にかけられている製作中の作品だった。
NataniaやSimon用の義肢以外にも、ごてごてとした装飾のついた鞘に収まっている剣や、やはり装飾過多な斧、そして手袋や鎖や首輪が置かれていた。
「あら、これですの? もちろんあなた達用のTransform杖……と言うか、Transformation Equipmentですわよ」
それまで相談に加わらず作業に集中していたTareaがあっさりと答えた事で、Bellmondの疑問は消滅したのだった。
「旦那-sama……Transform杖は遠慮申し上げたでしょうに……!」
「はい、なので杖以外の形状にしてみました。大丈夫ですよ、Transformした後もMagical Girlではないジャンルの形状になるようにしますから」
「今だけは旦那-samaの『大丈夫』で安心する事が出来ません。……ですがっ、しかしっ!」
「そうね、剣の形で、しかもこうして手作りしているところを見せられると――」
『Vandalieu -sama手作りの、新しい首輪に鎖……! それを受け取らないなんて、考えられないわ!』
Magical Girl、特にShoujoの部分に抵抗がある三人だったが、Vandalieuの僕として剣等の装備品や首輪の形状で作られると拒否する事の方に抵抗を覚えるようだ。
「計算通り」
別にVandalieuは仲間を全員Magical Girlにしようなんて、思ってはいない。ただただ、より優れた装備品を使ってほしいだけなのだ。
「でもっ、色々忙しいし、BirkyneやReincarnatorの誘き出しも兼ねたtactics中に作らなくても!」
「まあまあ、Eleonoraも遠慮せずに。俺の呼び方が『Vandalieu -sama』から『Van -sama』に変わった記念ということで」
「記念って、Demon King Familiarを通じて前から知っている筈でしょ!?」
「直接言われると、聞こえ方とか色々違うものがあるのです。
Basdiaの斧以外は完成までもう一工程必要なので、ちょっと付き合ってください。フィッティングを済ませておきたいので」
「それよりも、Earlのお茶会に備えて付け焼き刃でもmannerを学んでおくべきではないでしょうか!? 明日は午後から孤児院にも行くのでしょう!?」
「Bellmond、大丈夫です。同時進行ですませますから。俺はChipurasからmannerを学びます」
『俺達はこっちでフィッティングです。Bellmondはこの長手袋と首輪を』
『Eleonoraはこの剣と首輪です。剣は手に持っても、腰に下げても大丈夫です』
『Islaは首輪と鎖ですよ。新しいのに変えましょうね~』
たちまち四人に増えるVandalieu。mannerを教わる際所作を身に付けるにはBodyがあった方が良いので、Spirit FormのCloneがBellmond達のEquipmentを調整するために残った。
それに逆らう事が出来ず、身に着けて行くBellmond達。……Islaはもう「堕ちた」顔をしていたが。
それを見ていたNataniaは顔を青くして、Darciaに話しかけた。
「あのさ、Darcia -san。もしかして、オレもそのうち首輪とか着けないといけないのかな?」
Beast raceにとって首輪は師弟の関係にはとても納まらない、主従に関する重い意味がある。更に男女の場合は特殊な意味まで含まれる。だから聞いたのだがDarciaは苦笑いを浮かべて、「不安に思わなくても平気よ」と答えた。
「最近はVandalieuも慣れてしまったけど、首輪はIsla -san達が欲しがった結果で、進んで人に勧めているわけではないから。それに、あなたの場合はTransformするのに義肢があれば十分なはずよ」
「えっ!? この義肢って変形するのか!?」
首輪は別につけなくて良いと知って安堵したNataniaだが、続くDarciaの言葉に驚いて自分の義肢を確かめる。
「その義肢はまだ変形しませんわ。でも、今作っている義肢は変形しますわよ。私とVandalieu -samaの合作……楽しみに待っていなさい」
ホホホと笑うTareaに、Nataniaは頬を引き攣らせた。今はただの金属製の義肢を動かすだけで疲れている自分が、そんな高度な義肢を使いこなす事が出来るのだろうかと。
(修行の時も思ったけど、オレ達に対する師Artisanの期待が大きすぎないか!? SimonがBClass以上を目指すって言ってたけど、AClass相当の実力がないと無理だ!)
そう内心で絶叫するNataniaだったが、Darciaが彼女の手を取って言った言葉が更に彼女を追い詰める。
「さあ、私達はChipuras -sanからmannerを教えて貰わないと。付け焼き刃だけど無いよりずっとマシよ、きっと」
当然だが、NataniaにNobleのまどろっこしくて実用性に欠ける……つまり上品なmannerの心得は存在しない。しかもそれを、義肢を操作しながら覚えなければならない。
「ぜ、絶対修行より難しいじゃないか、それ!」
この日、Nataniaは五つのカップの取手を折り、七枚の皿を割る事になったが……その度にVandalieuの【Golem Creation】や、Darciaの【Magic Eye of Regeneration】が直してしまうので、Chipurasのmanner講習はnightまで滞りなく続くのだった。
翌日、Vandalieuの家の前にMoksi Earl 家の家紋が描かれた馬車が迎えに来て、VandalieuとDarcia、そしてNataniaとJulianaを乗せて行った。
ちなみに、昨日の内にSimonにもEarl 家からの招待について話したのだが、自分のnameが無い事を理由に断った。
「絶対無理ですって。俺みたいな人相の悪い Slum暮らしの男に、おNoble -samaのお茶会何て! ヘマやらかして領主-samaを怒らせるのが関の山だ」
そう言って残るSimonをNataniaは「裏切り者~っ」と睨んでいた。今頃、彼はFang達と共に自主練習に励んでいる筈である。
そして内装は豪華だが、乗り心地はSamよりも格段に劣る馬車に乗り、やって来たEarl 家のmansionの離れで細やかなお茶会が開かれた。
招待客はやはりVandalieu達だけで、もてなす側もIsaac Moksi Earl本人と、そのServantが数人だけ。彼の妻やchild達の姿は無い。
彼には妻が三人と、childが何人かいるはずなのだが。
「本日は急なお招きに応じてもらい、感謝する。Darcia・Zakkart、及びVandalieu Zakkart、Natania、そして――」
IsaacはNobleと平民と言う関係にしては丁寧にDarciaとVandalieuへ挨拶を交わす。VandalieuがZakkart姓を名乗ったので、Darciaもそうだろうとconjectureしたようだ。
そしてNataniaの隣でゆったりとした椅子に背中を預ける-samaに座っているJulianaに視線を移し、目に困惑を浮かべる。
「Julia……-donoで宜しいのかな?」
Isaacは当然だが、Alcrem Duke 家の一員でありKnightとして活躍していたJulianaと面識があった。年に一度、night会で短い挨拶を交わすかどうか程度の知人未満の面識だったが。
だからJulianaの顔をIsaacは知っていた。そのMemoryによれば、椅子に座っているのは明らかにJuliana Alcremだ。切断された四肢と膨らんだ腹を包む、ゆったりとしたdress姿を見なければ疑う要素は無い。
しかしその顔つきは虚ろで、Isaacが声をかけても視線を向ける-sama子もない。
Adventurer’s GuildのGuild Master、Bellardからの報告には、「かなり危ういが言葉を交わす事が出来る」とあったのだが。
「申し訳ありません、領主-sama。彼女のconditionはとても不stabilityでして、今は会話するのも難しいかと」
だが、VandalieuがIsaacにそう答えると、納得して頷いた。
Isaacは人のMentalについて深い知識がある訳ではないが、Julianaのconditionを考えればそんな症状があらわれても無理は無いと思ったのだ。
「なるほど。そのようなconditionなのに無理に招待してすまなかった」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
実際には、既にJulianaの魂は彼女の体内に産み付けられた卵の一つにPseudo- reincarnationしているのだが。
「彼女の事はともかく……本日お招きに預かったのはどのようなご用件でしょうか?」
「……うむ。非公式の場で済まないが、我が領に仕えるGuardと、家から出た身とは言え叔父がしでかした事に、遅まきながら謝罪をしたい」
そう言い、普通の平民なら驚くべき事にIsaacはVandalieu達に向かって頭を下げた。
実際、Nataniaと給仕をしているServantたちは彼が頭を下げた事に驚いている。Vandalieuも、多少だが驚いていた。
(確か、普通のNobleは平民に頭を下げる事は滅多にないはず。それなのに頭を下げたということは……静かにしているつもりだったけれど、相当プレッシャーをかけてしまったか。
生え際が後退しているのは、俺のせいではないと思うけど)
そうVandalieuが考えている間に、IsaacはAggarを重罪人として手配した事、そしてYosefは厳しい取調べの後、Moksi Earl領から追放される事になるだろうと説明した。
「商業guildはcertainly、我がEarl領と隣接する領にあれの居場所は無い。何処かのSlumに隠れ住むか、町を出てそのまま他のDuchyへ移り住むか……楽な余生は過ごせないだろう」
大体はVandalieuがconjectureした通りで、Yosefは弁解の機会も与えられないままAggar達を唆した罪……誘拐を企てた黒幕として処罰されるそうだ。
それを聞くと哀れだなと思うが、情報によると商人を志す数多くの若者にVandalieu達にしたのと同じような嫌がらせをしたり、若い頃は立場のweak femaleを脅してLoverとして囲ったりしていたそうだ。
本来なら領主から組合員を庇うべきguildが動かないのも、そうした事情があるらしい。
『商業guildからすれば、YosefはEarl 家から押し付けられた厄介者という感覚でしょう。今回の事は、Earl 家の問題だと考えているのかもしれませんな』
ChipurasがTelepathyでそう言うが、それがguildの本音かもしれない。
「それで、今後は嫌がらせの類は無くなると思うが――」
「はい、今後も今まで通り、母と共に商売に励もうと思います」
VandalieuがIsaacの言葉を遮るようにしてそう言いきった。今まで通り……つまり、あの歓楽街の裏路地で、問屋を通さず自分で食材を狩り、Food Stallを経営していくという宣言である。
別に、Vandalieuは問屋に対して恨みがある訳ではない。単に、今更普通に商売するのは彼らにとって都合が悪いというだけだ。
あの裏路地から移動して表通りの、それこそ各種guildのbranchがある一等地にFood Stallの営業場所を移すと言われても……傘下に加わった他のFood Stallは連れて行けない。それに、表通りのFood Stallの横にHellhoundのFangを待機させたら苦情が殺到するだろう。
それに他のFood Stallとの軋轢が新たに生じるかもしれない。
食材についても同じだ。
今Food Stallで出している肉は、Rank3のOrcやHuge Giga Bird、それ以上に高い肉だ。それを安い値段で串焼きにしている。sauceも今では香草、wineベース、胡桃の三種類。
それが可能なのはVandalieu達が食材を独自に入手し、加工しているからだ。もし問屋を通して仕入れたら、販売価格は三倍以上に跳ね上がってしまうだろう。
そして食材を自分で狩って手に入れるついでに町の外でSimonやNatania、Fang達の訓練をしているのだ。街の外に出にくくなるのは歓迎できない。
「ふむ、そうか……最近は傘下のFood Stallも増えているそうだが、そのせいか?」
「それもあります」
最初は同じ裏路地で営業しているFood Stallだけだったのだが、今では他の裏路地で営業していたFood Stallの店主や、Slumで営業している酒場の店主もVandalieuの傘下に入りたいと集まっていた。
彼らは別の場所で、最初にVandalieuの傘下に入ったFood Stallが売っていたのと同じような商品を、同じような値段で売っていた。
だがある裏路地で、それまでと同じ値段のまま美味いGoblin肉のsoupやKobold肉のsandwichが食べられると噂が立ち、客足が激減してしまったのだ。
それも当然である。Moksiは街と言っても、『Earth』の大都市のように広大ではない。人口は約三万人で、歓楽街とSlum街はその一部にすぎないのだ。
距離が離れていても歩いて十数分程度であり、同じ値段で美味い物が食べられるのなら、足を延ばしてVandalieuの傘下のFood Stallに買いに来る客が多かったのだ。
そうして困ったFood Stallや店の経営者達は、Gobu-gobuやKobold肉の秘密を探ろうと悪巧みをする事無く、Vidaの聖印であるheart markを掲げてVandalieuの傘下に入る事を選んだ。
これは、歓楽街の顔役である『Hungry Wolf』のMichaelに睨まれたくないという理由が大きい。彼は少額のショバ代を払えば見回りの用心棒を派遣してくれると言う、今までの搾取しかしなかったチンピラとは異なる存在だ。そのお蔭で食い逃げや泥棒、強盗の被害に遭う割合が激減し、裏路地の治安は明らかに向上している。
その彼の庇護下から外されたら、これまで用心棒によって追い払われていた無法者が殺到するのではないか。それを恐れたのだ。
それに派遣されてくる用心棒のreputationも悪くない。『Hungry Wolf』の手下であるチンピラ達の行儀や身だしなみが、何故か日に日に向上しているからだ。
これはMichael……Milesが、手下達がBAKANA事をしてVandalieuを怒らせるような事が無いようにと、躾を厳しくしたからである。
結果的に歓楽街とSlumでの『Hungry Wolf』の存在感は増しており、そんな『Hungry Wolf』のimpact下から出る事にVandalieuは魅力を感じなかった。
「つまり……今のままの方が全て順調だから、今まで通りの方が良いということか。分かった、商業guildの方へは儂が話を通しておこう」
「感謝致します、領主-sama」
本当に助かるので心から感謝して頭を下げるVandalieu。その後頭部に、再びIsaacの声がかかった。
「それで、傘下のFood Stallの幾つかで販売しているGobu-gobuについてだが――何時、いや、何処のGhoulから製法を聞き出したのだ? この町の周辺のDevil Nestsに住むGhoulか……もしかしてHartner Duchyや、Sauron DuchyのGhoul、かね?」
この質問にVandalieuは頭を下げたままの姿勢で数秒硬直した。その後頭部を見つめるIsaacは、stomachが痛くなりそうな緊張を覚えている。
Ghoul。それは数年前まではただの人型のmonstersの一種だった。しかし近年起きているElective Kingdom内での大事件のshadowには、Ghoulのある痕跡が残っている事にIsaacは気がついた。
きっかけはただの偶然だ。Bellardから、JulianaやMinotaurに関する報告を受けた席で、最近Ghoulの素材やMagic Stoneが急に取れなくなったと聞いた。
Bellardはそれを、Minotaurが母体にするためにGhoulの集落を襲ったせいだとconjectureしていた。だがIsaacは違和感を覚え、そして思い出したのだ。
Hartner DuchyやSauron Duchyで不可解な事件が起きた後、Ghoulが大規模な討伐が行われた訳でもないのに、姿を消している事を。
(Ghoulが姿を消した事には、誰も注目しておらん、Hartner Dukeの城が傾き、Scylla Autonomous Territoryが謎のUndeadの集団に占拠された大事件のshadowに隠れているし、どのDuke 家も調査しようとはしていない。
Ghoulの素材は他のmonstersの素材で代替が可能だからな。だが……不自然に姿を消しているのは事実だ。
それにこの者が関わっているのではないか?)
Isaacのその考えは、暴論未満の妄想である。思いついてからわずか数日で、詳しい調査もまだしていない。裏付けも何も無い、Intuition的にそう思っただけという代物だ。
だと言うのにそれをVandalieuに匂わせて尋ねたのは、そうしなければならないと感じたからだ。Hartner DuchyやSauron Duchyで起こったような大事件が、もしMoksiの街で起きたら……Alcrem Duchy全体は耐えられても、街は耐えられるか分からないのだから。
なので出来るだけ友好的な空気を演出し、話の分かる領主として、彼に尋ねて引き出そうとしているのだ。
「いえ、領主-samaがおっしゃった土地のGhoulから教わった知識ではありません」
そして顔を上げたVandalieuはIsaacに対してそう答えた。
「そうか。近年、Ghoulがいなくなった土地では大きな禍に襲われているようだが……最近、この街の周辺からもGhoulの姿が消えていてな。何かの前触れだろうか?」
「そうでしたか。adventurerではないので、monstersの生息数については少々疎くて……しかし、禍が起こるとも限らないのではないでしょうか」
「……もし、街に大きな事件が起きたら、解決に力を貸してくれるか?」
「私は一介の商売人に過ぎず、最近では『King of the Stalls』、『Genius Tamer』と呼ばれてはいますが、若輩の身。Hero豪傑には遠く及びません。しかし、街の人々の為なら微力を尽くしましょう」
「その言葉を信じても良いのだな?」
「領主-samaはcertainly、このMoksiの町と人々は私と母に大変良くしてくださいました。暮らし始めて一カ月と経っていませんが、愛着を覚えつつありますので」
「そうか、それは何よりだ……!」
Vandalieuの言葉を聞くと、Isaacはそう言い終るや否や崩れるように椅子に腰かけた。何時の間にか背中は冷や汗で湿っており、喉はからからに乾いている。
だが欲しかったもの……言質を引き出せたという確信が、緊張を安堵に変える。
Vandalieuの後ろではDarciaとNataniaも、緊張感から解放されて安堵の溜め息をついていた。
だがVandalieu本人は普通だった。
(何故か、Earlの俺に対する印象が、実際の俺から大きく乖離しているのを感じる)
Ghoulについて質問された事自体は驚いたが、そこから続く会話は、Vandalieuにとっては駆け引きでは無くただ「嘘ではないが真実でも無いだけの、日常会話」だった。
Gobu-gobuやKobold肉の蒸し焼きについて教わったGhoulは、Mirg Shield NationのDevil Nestsに住んでいたZadirisやBasdia、Vigaro達だ。Orbaum Elective KingdomのGhoulからでは無い。
monstersの生息数についても詳しくはないし、今のところMoksiの町はcertainly Alcrem Duchy全体に何かしようとは考えていない。
町に愛着を覚え始めているのも本当だ。
Isaacに対してはSpy達がAggarを逮捕しようとする際に、誘拐を未然に防ぐのではなく孤児院に入ってから逮捕しようとした事に若干不快感を持っていたが、一日時間が空いて頭が冷えたのと、実際に話した事でそれは消えていた。
(この人は話せるNobleだ。これからも友好的な関係を維持していきたい)
Isaacが考えるよりもずっと、Vandalieuはチョロい性格をしているのである。
Earl 家でのお茶会はその後もVandalieuにとっては何事も無く進んだ。
Nataniaの義肢についても話題になったが、実験的な試みをしていると話すとIsaacはそれ以上質問しようとはしなかった。
その後はVandalieuよりもDarciaの方にIsaacは話しかけていた。彼女のVidaの信仰について聞きたかったようだ。
その間VandalieuとNataniaは出されたお茶とお菓子を楽しんだのだが……『Earth』のそれと比べると、とても個性的だった。
Earl 家の牧場で朝搾られたばかりの牛乳を使用したmilk teaは良かったのだが……柔らかいbreadの上に強烈な酸味のフレッシュcheeseを乗せ、更に激甘なsyrupをたっぷりかけた菓子は、慣れるのに時間が必要だろう。
「maybe、新鮮な牛乳を使ったフレッシュcheeseと、砂糖を大量に使ったsyrupを使うのがEarl 家の富を表すのでしょうね。それが伝統として残っていると」
お茶会から帰ったVandalieuは、そう分析しながら孤児院に向かっていた。
何でも明日、Vidaに感謝し春が早く来るように祈るための祝祭を行うので、その準備を手伝ってほしいそうだ。去年まではやらなかったのだが、これもVandalieu達が行った寄付のimpactである。
『Vandalieu -sama、別に手伝わなくても良いのでは? あのMashや他のchild達に誘われただけで、Food Stallの準備もあるでしょうに』
Chipurasはそう言うが、Vandalieuは準備に参加するのに乗り気だった。
「Chipuras、確かにそうですが……俺は『同世代の友達とeventの準備をする』と言うシチュエーションが大好きです」
『Earth』での学校行事はほぼ苦行でしかなかったが、『Lambda』では違う。そのためVandalieuは行事には準備から関わる事を好んでいた。
「それに、大した手間ではないですから。Spirit FormのCloneやDemon King Familiarを使えない分面倒ですが、孤児院の礼拝堂を飾りつけるだけです」
飾りの量も多くはないし、child達も手伝うので、すぐ終わるだろう。
そう言いながらVandalieuが孤児院に着くと……違和感と妙なsignを覚えた。周囲に、見覚えの無い霊が漂っている。昨日まで孤児院の周りには……このMoksiの町には存在しなかったはずの霊達だ。
それがVandalieuに対して、言葉にならない声で危険を訴えている。
「……侵入者は?」
配置してあるUndeadやGolem等使い魔のMemoryを探るが、孤児院に外から入った者はいない。
bloodの臭いはcertainly、screechもしないが……それにしては霊達が騒いでいる。
「お、来たな! 早く入れよ、Vandalieu! 皆待ってるぜ!」
その時、Mashが孤児院の門の内側からVandalieuを見つけて声をかけてきた。Mashの-sama子は昨日までと何の違いも無い。だが、その声に応えてはならないと霊達が彼を止めようとする。
「……分かりました。大丈夫、備えた通りにやりましょう」
だが、Vandalieuは霊達にもそう声をかけてから、Mashが招くままに孤児院の中に入った。
孤児院の礼拝堂の中は、明日の祝祭に備えた準備は全くされておらず、代わりにDirectorやCelisやBestra達Nun、そして孤児院のchild達の内半分程が整列している。
「いらっしゃい、Vandalieu -san」
「よく来てくれたわね、助かるわ」
「お兄-chan、あたしのブライアンが新しい芸を覚えたんだよ!」
彼女達は昨日までと同じ-sama子でVandalieuに笑いかける。Vandalieuの横に立ったままのMashも、Smiling Faceを浮かべている。
そしてVandalieuが見覚えの無い紅い瞳をした四人と、見覚えのある男が待ち構えていた。
「ようこそ、Vandalieu Zakkart。私の人形達の家へ」
そう爽やかな笑みを浮かべるBirkyneに、Vandalieuは応えた。
「……用件は何ですか?」
まず、MashやNun Celisがどんなconditionにあるのか、聞き出さなければならない。
○Title explanation::Saintess
それらしい行いや偉業を達成したり、権威のあるtempleから認められたりした者が獲得するsecondary name。類似するsecondary nameに、聖人、聖者、聖Shoujo、Holy Mother等がある。
獲得すると同じ神やそれに近しいGodsをworshiperに対してcharisma性を発揮し、また布教等の宗教活動を行う際に有利な修正を受ける事が出来る。
また、【Familiar Spirit Advent】や【Strengthened Attribute Values: Religious Faith】等のskillを獲得しやすくなる。
通常、既に【聖人】や【Holy Mother】のsecondary nameを獲得している者が、改めてこのsecondary nameを獲得する事は無い。
Darciaの場合はBoundary Mountain Range内部及びDemon continentと、Orbaum Elective Kingdomの間に交流が無く情報の行き来がない。そのため彼女を【Holy Mother】と認識する者達と、【Saintess】と認識する者達が同時に、尚且つ別々に存在した結果である。