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Chapter 216: 扉の先には――

「うおおおおお! はあああああああああああ!! ぬぅうふうぅぅううぅ!」

 Simonが叫び声をあげて気合を込めながら自分の右肩を……右肩に装着した金属製の義手を睨むようにして見つめている。

 その視線の先では、義手の指が動いていた。義手の中身はがらんどうで、何の仕掛けも施されておらず、magic itemでもない。それなのにSimonは自分の意思で動かせるはずの無い指を動かしているのだ。


Simon、大声を出すと逆に集中力が途切れますし、息切れしますよ?」

「そういうもんなんですかい、師Artisanぉぉぉ!?」

Spirit Formmuscleでは無く意思で動かすものですから」

「分かりやした! でも、指を動かすだけでやっとだったとしても腕が、この腕が帰って来た事が嬉しくて……!」


 十年前に失い、取り戻す事を諦めていたRight Armを、自身のSpirit Formを義手に宿らせるという想像もしなかった方法でだが取り戻せた事に、Simonは歓喜し、胸を高鳴らせていた。

 それはつい先日だが、Minotaurによって四肢を奪われたNataniaも同じだった。


「は~っ、は~っ、気持ちは分かるけど、まずは少しでも長くこのconditionを維持できるようにならないと……うっ!も、もうダメだっ!」

 だが、Nataniaの義手と義足から青白い光が消え、それまで小刻みに震えていた義手がだらりと垂れさがる。


 Spirit Formを体外に出したconditionを維持できず、body partに戻ってしまったのだ。

「うう~、まだ立ち上がる事も出来ないのに……こんなのでオレ、またadventurerに戻れるのかなぁ?」

Natania、昨日よりも大分進歩していますよ。それにあなたはSpirit Formで動かさなければならない部位がSimonより多いのだから、難易度が高いのは当然です」


「でも、これじゃ【Spirit Formskillが何時手に入るかも分からないよ」

「まあまあ、焦らないこった。originallyJobの補正も無いskillを獲得するには時間がかかるもんだ。気長にやろうぜ」

「兄pupilsの言う通りですよ、Natania


「……え、オレもpupilsなんだ。じゃあ師Artisan、気長にやるからもう一度頼むよ」

「はいはい」

 Vandalieuは三人目のpupilsであるNataniaの背中に手を置く。そして汗で湿った服の向こうの彼女のBodyに向かって、Spirit Formを出して押し出した。


「うっあっ……もう少しで、何か掴めそうなんだ……!」

 そう喘ぐNatania、そしてSimonVandalieuが想定していたよりも覚えが良かった。originally aptitudeがあった……とは考えにくいので、恐らくこれも彼に導かれたimpactかもしれない。


 このまま続ければ、二人とも一カ月とかからずに【Spirit Formskillを獲得できるだろう。獲得までの期間が長く思えるかもしれないが、補正を得ていないskillの獲得を試みる場合はこれでも短い方だ。

(いっそ、Hell race等に変異させた方が速く習得できるかもしれないけれど……そう言う訳にもいかないし)

 Simonにはまだ真実を話していないし、Nataniaの場合はWildcat-species Beast raceがどんな変異を遂げるのかまだ確認していない。


 skill習得の為だけに変異させるには、状況や情報が揃っていない。

(まあ、【Spirit Formskillさえ手に入れば便利なんですけどね、この方法は。【Materializationskillまで獲得できれば、義肢が無くても、MaterializationさせたSpirit Formを四肢として使えますし)

 image通りに形を変える、magicmagic item以外の攻撃では傷つかない四肢。長時間扱うにはManaも必要になるが、凄く便利なはずだ。


 それを目指して、Vandalieuは二人を指導するのだった。




Transform!」

 Tareaの合言葉に従って、液体金属が彼女のbody partを這い回り姿を変えていく。


「これがあの御方が創り出したArtifact……素晴らしいです」

『いつ見てもTransform杖のActivateは面白いですね~』

『人毎に違う色と形になりますから、見飽きませんよね。しかし、まさかTarea -sanMagical Girlになるとは思いませんでした』

「そうね、私もVandalieuTarea -san用の杖を作っているのを知った時は、驚いたわ」


 Transformを終えたTareaは、自分に注目しているギャラリー……RitaSalire、そしてDarciaに向かって、少し頬を染めて抗議した。

「あの、そんなに注目されると気恥ずかしいのですけれど。それと、私はMagical Girlではありませんわ」

 彼女のTransformした姿は、確かに『Earth』のMagical Girl物を知っている者から見ても、それらしくはあまり見えない代物だった。


 skirt部分が無く、RibbonFrills等の装飾も無い。肌にぴったりと張り付くボディSuitに、首や腰や膝等の関節部分を装甲のような部品で保護している。

 金属的な光沢があるため、一見するとSF物の衣装に見える。


「私のmagicは【Alchemy】を覚えるために修めたものですし、dancein any case歌は出来ませんもの。確かにKanakoにも誘われましたけれど、Van -samaはそんなつもりでこの杖を私に贈って下さった訳ではありませんわ」

『それは分かってます。腰、ですよね』

『あと、肩もですよね』


「……もうちょっと歯に衣を着せてくださらないのかしら、このsistersは」

 RitaSalireTareaは、苦い口調と表情で言い返した。彼女のTransform杖の主な用途は、実は作業の補助……腰や関節部分にかかる負荷の緩和等であった。Earth風に言うなら、医療用Powered Suitモドキである。


 originally Zadirisとは別の集落のGhoulElderだった彼女はappearanceこそ十代後半のShoujoだが、実際には二百六十を超える老齢だった。そして腰痛が悩みの種であった。

 それはVandalieuが【Youth Transformation】を施しBodyから老いを取り去ってappearanceと同じageにした事で改善したが……完全に治った訳では無かったのである。


 どうやらbody partに癖的な何かが出来てしまったらしい。その後Ghoul High Artisanに、そして更にGhoul Elder ArtisanRank upした事で、更に腰を痛める頻度は減っていたのだが……彼女はTalosheimの武具製作の二大巨頭の一人だ。最近はEvil God (M)産の素材等、未知かつ超希少で超一流の素材を持ちこまれる事も多く、遣り甲斐はあるが同時に苦労の絶えない生活だった。


 それで暫くVandalieuTalosheimを離れるので、暫くはぎっくり腰になってもすぐSpirit Form massageをする事が出来なくなるからと作って贈った物だった。

『でも、【Transforming Artisan】なんてJobが出るくらいお気に入りじゃないですか』

secondary nameで、『Work Princess』なんてつきましたし』


「だってVan -samaからのプレゼントですわよ!? 気に入らないはずないでしょう! あなた達もいつか腰痛に……いえ、何百年経っても悩みませんわね」


『ええ、腰はありますけど――』

boneが無いですからね』

 Ritaがくるりと上半身を三百六十度回転させ、Salireも人には不可能なほど腰を逆に反って見せた。

 二人ともappearanceは露出度が高い鎧姿のShoujoだが、Living Armor系のUndeadである彼女達のmain bodyは鎧の部分で、Bodyに見える部分は全てSpirit Formである。当然だがboneや軟bone、そしてnerveも無い。


「くっ、普通のLiving Armorならそれでも関節部分のpartsが摩耗するぐらいの劣化はありますのに……BikiniHigh-leg型の鎧をmain bodyにした、Van -samaKnight of the Insightに感謝するといいですわ!」

 実際には、Dungeonで見つけた露出過多なfemale用鎧を二人のmain bodyにする事にVandalieuは乗り気では無かった。二人の父親であるSamが早く二人がUndead Transformationする事を望んだ結果なのだが、Tareaはそれを知らないのだった。


Tarea -san、私も前世では腰の辛さを覚える前に死んでしまったし、現世はVandalieuのお蔭で、maybe腰が痛くなる事は無いと思うの。ごめんなさい」

bone格がOrichalcumですものね……しかもMuscular Strengthは本気で腕相撲をしたら大抵の相手の腕をもぎ取れる程ですし」

 そしてChaos Elfの始祖になったDarciaも、腰痛とは無縁そうである。


「はぁ……別に構いませんわ。腰痛友達を探している訳ではありませんし、此処へは仕事で来たのですもの。では、始めますわね」

 そう言いながら、Tareaは地下室のDungeon入口の横に作った、簡易的な作業場で仕事を始める。


 TalosheimからGufadgarnの【Teleportation】によって、MoksiVandalieuに来てまでTareaが作るのはSimonNataniaの義肢である。

 修業が無事終われば、どんな物でもSpirit Formを宿らせて義肢に出来るようになるはずだが、それはそれとして「Human社会でも使える中では最高の素材で作った最高の義肢」を贈りたいらしい。


 【Demon King Fragment】から獲れる素材を使うのは、最近【Demon King Fragment】関連の事件が幾つか起きているため憚られる。そのため、彼女が呼ばれたのである。

Sizeはもう教えてもらいましたし、Natania -sanは直接触ってmuscleのつき方まで探りましたから、後は作って微調整を繰り返すだけですわ」


「よろしくお願いします。私が生きているのは……あの御方に会う事が出来たのは彼女のお蔭なのです」

 Julianaがそう言って、やや苦労しながら頭を下げる。彼女が他人であるはずのNataniaに特別なemotionsを抱くのは、Minotaurの巣に囚われるという極限状況で会ったからと、そして恩人だからだ。


 NataniaRandolphに助けを乞わなかったら、自分は死んでいた。そしてReincarnationの輪に還るか、あの場に囚われるか、Randolphに憑くか……どれになってもVandalieuに会う事は叶わなかっただろう。

 JulianaがこうしてVandalieuに導かれ、新たな人生を生きる事が出来るのはNataniaのお蔭なのである。


「構いませんわよ、義肢作りはVan -samaとの共同作業になりますもの♪ それに義肢を作るのは初めてですし、今後Natania -sanのような方をVan -samaが導いた時に、この経験が活かせるでしょうし。それに――」

(初めてHuman社会のNobleらしいNobleの、Ohime-samaと呼ばれる生まれの仲間ですもの! この機会に色々Royal Nobilityのあれやこれやを聞き出せますわ!)


 そう思いながらstealth笑いを漏らすTareaは、口調こそお嬢-samaっぽいが生まれはHumanArms Artisanで、平民生まれの平民育ちだ。その後はGhoulの集落で二百年以上暮らしていたので、おおよそNobleとは関わりが無い。

 そのため彼女の口調や仕草は全て、彼女の中のNobleのお嬢-samaimageに準拠している。そのため本物のお嬢-samaであるJulianaには、実は興味津々だったのだ。


 ……Talosheimには既にNoble出身のfemaleが何人もいるのだが、彼女達はNobleとは名ばかりの境遇だったり、普通のNobleらしくない性格だったり、単に話す機会がこれまで無かったりしたので、尚更。

 そんなTareaの内心を薄々察しているDarciaは、「Juliana -sanが動けない間の話友達に良いかしら?」と思っていた。


「――いえ、何でもありませんわ。それより、あなたの分の義肢は作らなくても宜しいの?」

「はい、私はNataniaと違い部下達と同じDestinyに導いていただく事になっています。だから、こうして話すのは短い間になるでしょう」

 両腕が無いJulianaは撫でる代わりに、愛おしげな眼差しで自らの腹部を見つめた。


 その胎内には、【Demon Kingfallopian tubes】によって産み付けられたcountlessの卵が成長しつつある。その内の一つに彼女はPseudo- reincarnationする予定なのだ。

 魂を直接新たなBodyに入れるPseudo- reincarnationは、Memoryや人格にimpactが出るので、生きたまま行うのは推奨できない方法だ。しかしJulianaの場合一度廃人になった後、Vandalieuが【Mind Encroachmentskillを使って、間に合わせの治療を済ませただけのconditionだ。


 表面上は元通りだが、彼女のMentalAdventurer’s GuildGuild MasterであるBellardがすぐ気づく程、正常から程遠い。

 ただ、MentalだけならVandalieuが定期的に時間をかけて治療を繰り返せばよくなる可能性もある。しかし、【Demon Kingfallopian tubes】で産み付けられた卵のimpactで体自体も弱っている。


 それらを解決するのには、Pseudo- reincarnationが最も適しているのだ。

 幸い、Vandalieuには元Cemetery BeeQueen蜂だったQuinnを生きたconditionから直接Pseudo- reincarnationさせた経験がある。それをHumanで行うだけだ。


body partの方は【Life Emperor Magic】で時間をかければ治せそうだけど……完全に再生させるには一月ぐらいかかるのよ」

 Darciaの【Life Emperor Magic】は、Life-Attribute MagicSuperior Skillだ。そのため、切断された腕を元通り『繋ぐ』事は容易い。傷跡も違和感も残さず、元通りのconditionに出来る。


 しかし完全に失われた部位を再生させるのは、まだ難しい。形だけ再生させるだけでも数時間かかる。

 originally失われた部位を再生させる事が可能な生態を持つraceや、body partの構造が単純なmonstersならずっと速く済むのだが……Humanの場合はどうしても難しい。


 そのためJulianaPseudo- reincarnationを、そしてNataniaSpirit Formで義肢を動かす訓練をする事になった。

 certainly、常識的な価値観の持ち主ならどれだけ時間がかかっても、リハビリがどれほど苦労したとしても、本来の四肢を取り戻せるのならその方法を選ぶだろう。


 しかし Vandalieuは異常な価値観の持ち主である。Darciaを生き返す時も、二度と殺されないようにとOrichalcumbone格や上位のmonstersDemon King Fragment製の素材を使う程だ。

 NataniaSpirit Formで義肢を動かす方法を身に付ける事で、JulianaPseudo- reincarnationで生まれ変わる事で、以前より強く生きられるようになる。もうMinotaurに四肢を切断されるような事にならないように、そうするべきだ。

 そう考える価値観の持ち主である。


「気にしないでください、女Kami-sama。全てはあのお方のGuidanceです」

 そしてJulianaVandalieuによって治療され、導かれている。つまりSaviorの意思であるため、それに沿う以外の発想が無いのだ。Nataniaもそのようなconditionである。


Tarea -samaとも、すぐ新しいbody partでお話しできるようになるでしょう。既に私に産み付けられた卵の因子は、全て変化させてあるそうですから、部下達と共に。ですが……二つ不安な事が」


「なんですの? 相談なら私や、お義母-samaやこの二人も乗りますわよ」

「ええ、何でも言って。力になるわ」

「はい、ではお言葉に甘えて……私や部下達は以前からGoddessを信仰してきました。私は特にVida -samaへ祈りを捧げてきましたが、Botin -samaPeria -sama……そして時にはNineroadMillにも」


 『Lambda』は複数のGodsが実在する事が知られているworldだ。そのため、Julianaのように複数の神に祈りを捧げる者が多い。adventurerなら依頼や狩りに出かける前にAdventurer’s GuildFounderである『Heroic GodFarmounに祈り、戦いの前に短くWar Godでもある『God of soldiers』や『God of Thunderclouds』に武運を祈り、に帰った後今日も生還できたことを『God of Law and LifeAldaに感謝する。


 templeに務めるClergymanが祈りを捧げるのは信仰する特定の神だけだが、そうでない人々にはこれが普通なのだ。

 しかし VidaAldaの真実を知り、Vida's Factionの旗頭となっているVandalieuに助けられ、導かれたJulianaは後ろめたさを覚えたようだ。


「それに部下の中にはAldaと近いGoddessを熱心に信仰していた者もいます。これをVidaに連なるGodsは許して下さるでしょうか?」

 そう尋ねる迷える子羊に、Goddessの化身は答えた。


「そんなの気にしなくて大丈夫よ! 安心して、これから一緒に頑張りましょうね」

 今までの移住者同-samaに、Vida's FactionGodsに改宗するなら過去の宗教観は問題視しないのがTalosheimである。それはDuke 家の一員だったJulianaに対しても同-samaだ。


「あぁ、ありがとうございます、女Kami-sama。これで部下達も安心してreincarnationする事が出来ます」

「ええっと、私はVida本人じゃないのだけど……でも、やっぱり女Kami-samaも同じ意見だと思うわ」

『ところで、もう一つの悩みは何ですか?』


「はい、reincarnationした後出来るだけ人に近い姿になるよう調整したとあの御方から聞きましたが、同時に産み付けられてからある程度時間が経っていたので、ややmonstersに近い形になるかもしれないとも聞きました。

 reincarnationした後、私達もGoddessの使徒であるその、『Magical Girl』になれるでしょうか?」


 そう、JulianaTransform杖でTransformしているTareaへ憧れの眼差しを向けて尋ねた。どうやら、Magical Girlについて中途半端に聞いた彼女は、Magical GirlとはGoddessの使徒であると解釈したらしい。

「別にMagical GirlVidaの使徒では……いや、でもあながち間違っていないような!? でも、私はMagical Girlではありませんわ!」


「そうね。私達が歌って踊るのはKami-samaへの信仰としてだし、Magical GirlVidaの使徒で間違っていないかも」

「間違っていない……じゃあ、やっぱりTarea -sanMagical Girlなんですね! 私もTarea -sanのようなMagical Girlになれますか!?」


「ちょっ!? お義母-samaが『間違っていない』と言ったのはそこじゃありませんわ!」

『きっとJuliana -sanならなれますよ! 良い声だと思いますし、BocchanならどんなSizeでも杖を作ってくれるでしょうし』

RitaBocchanもすぐ作れる訳じゃないのよ。でも、Juliana -sanが強く望めばBocchanも考えると思います』


「はい、今日あの御方が帰って来たら、お願いして見ます。生まれ変わったら私、Tarea -sanのようなMagical Girlになりたいと!」

「私のようなと言う部分は余計ですわ! ちょっとお義母-sama! Juliana -sanの前で一度Transformしてくださいません!? そうすればきっと彼女の関心が私から逸れるはずですから!」


 Tareascreechのような声をあげるが……Julianaの『好感度が高いはずの人物に対して、何故か話を聞かない』と言う特徴は、Vandalieuだけでは無く彼女へも発揮されたのだった。

 なお、この騒動は地下室で起きたため外で見張っている領主のSpyは気づかなかったという。




 修業を終えたVandalieu達は、に戻ろうとしていたが門で呼び止められていた。

VandalieuFang達の首輪がbarelyだよ。Marollなんてすっかり焼け焦げているし、Surugaの首輪は穴だらけだ。Urumiも見た目は普通だけど……凍っているし。今は平気だけど、繰り返すとその内千切れてしまうよ」


 新米GuardKestが、Fang達がTamed Monsterである事を証明する首輪が壊れる寸前である事を注意したのだ。

「すみません、気を付けてはいたのですが」

「ウゥゥ……」

「チュウゥン」

 Fang達も耳を垂らしてすまなそうにしているが、彼らがしているTamer guild支給で購入した汎用の首輪は限界であった。


 FangHellhoundRank upした事で大きくなったSizeが原因で、Maroll達は火鼠や濡れ鼠、鉄鼠になった事で首輪が焼けたり、凍りつくようなcoldに晒されたり、金属質になったfurが擦れたりしたことによる物理的な損傷が原因である。


「今日の内にTamer guildに行って、首輪を新しくして来るんだ。Maroll達みたいに、body partが燃えたり逆にcoldを発したりする特殊なmonsters用の首輪も販売しているから」

「そんな便利な物が売っていたとは、知りませんでした」


 Tamer guildには、-sama々なmonstersTamerした組合員たちが登録している。そのためmonstersに合わせた特殊な首輪の製造販売がguildでは行われている。

 単純にSizeの大小だけでは無く、防腐性や耐熱性や耐冷性、対電性等-sama々なimpactに対応した首輪も含まれている。


 そうした事はguildに通う内に気がつくか、師から教わるのだが……Vandalieuの場合Fang達があまりにも急速にRank upするので、それが間に合わなかったのだ。


「俺も詳しくは知らないけどね。お金が足りなくても、正規会員なら借金出来るから-chanと買うんだよ」


Kest、お前……」

「あ、すみませんsenpai! 私語は慎みます!」

「いや、そうじゃなくて……よく平気だなと思ってな」


 Kestsenpaiの一人であるGuardは、Fang達に対してやや怯えており、腰が引けている。だがそれを情けないと思ってはいけない。

 Rank3まではFangMaroll達の大きさは大型犬や大型げっ歯類の範疇だった。しかし Rank4のHellhoundになったFangの大きさは牛並で、狼よりも大きい。そしてMaroll達は首輪のconditionから考えれば、何か特殊Abilityを持っているのは確実だ。


 彼等は普段からmonstersと戦い慣れているadventurerではなく、ただのGuardだ。Tamerされていると知っていてもFang達にhorrorを覚えても無理はない。だというのに、それに平然と接しているKestが奇妙に思えたのだろう。

「昨日、Bachem -sanHuge Wyvernを見た時は、緊張で石像みたいに固まっていただろうに」


「それはそうですけど……何故かこいつ等は平気なんですよ。Huge Wyvernが竜種だからか、ただの犬だった頃から知っているからか……」

 首を傾げながら考えるKestだったが、彼に心当たりは無かった。……Vandalieusecondary nameの効果によって彼に惹かれて、それがきっかけになって導かれつつある事が原因だとは、気がつく事は出来なかった。


「まあ、ビビり過ぎてfeign illnessを使って早退したAggarみたいにならなければ、文句は無いが」

「は、ははは、いや、まあ、はい」

 本来ならまだ勤務中の筈のAggarは、どうやらVandalieuが帰ってくるtimingを見計らって、早退したらしい。それについて文句を言うsenpaiに、素行がやや不良でも同じsenpaiである彼を悪く言えないKestが曖昧な笑みを浮かべる。


「……そう言えば、昨日も姿を見なかったような。それに、奴と仲のいい仕事仲間まで。大丈夫ですかね?」

 SimonVandalieuにそう囁く。Slumの廃屋で暮らしていた彼は、犯罪organizationの幹部として潜入中のMilesよりも詳しくAggarの悪行を知っていた。


 certainlyそれもこれも被害者以外には大した事のないものばかりだが……彼が師Artisanと慕うVandalieuも、Aggarにちょっかいを出されている。

 AggarVandalieuを避け続けるのは、新手の嫌がらせを企んでいるからかもしれない。そう思ったのだ。


「大丈夫ですよ、Simon。対処はしています」

「おお、師Artisan、流石ですぜ!」

 しかし Vandalieuの言葉にSimonは安心すると、Aggarに対して関心を失ったのだった。


 因みに、monstersの専門ではないKest達はMaroll達三匹が新種である事には気がつかなかった。今まで見た事も聞いた事も無いから珍しいraceなのだろうが、もしかしたらこことは別のや他のDuchyには存在するのかもしれない。

 そう思ったようだ。




 その頃、そのAggarは仲間達と共にSlum街の孤児院へ向かっていた。

 あのDarciaが【Familiar Spirit Advent】をActivateさせるのを見てから三日目……遂に孤児院の孤児を誘拐し、それを餌にVandalieuを誘きだして捕まえ、Darciaを脅迫する計画を実行しようとしているのだ。


 薄汚れた外套をHaoriってSlumの住人に見えるよう変装しつつ、孤児院の裏口へと近づいて行く。

「後の手筈は分かってるな?」

「当たり前だろ」

 監禁場所は、Slumでは無く一般住宅街にある空きに決めていた。何故なら最近VandalieuSlumFood Stallの一部を傘下に収めている事と、『Hungry Wolf』がDarciaにちょっかいをかけているからだ。


 Food Stallの店主達の知り合いがSlumの何処にいるか分からないし、Darciaが『Hungry Wolf』のMichaelを頼って手下のチンピラ共に探させる危険があった。

 そこで逆に伝手が無いと思われる住宅街に監禁場所を決めた。


 都合が良い空きを見つけ-sama々な準備を整えるのに時間がかかったのが、今日実行になった理由である。


「やっぱり孤児は殺して死体は埋めちまった方が、面倒が無くていいんじゃねぇか?」

Aggar、それは無理だって言っただろ」

 腕利きのTamerであるDhampirVandalieuはともかく、ただの孤児ならAggar達でも殺すのは容易い。しかし、死体を処理するのは面倒だし……殺した事を隠すのは難しい。


 そもそも、彼らの目的は孤児を誘拐する事ではないのだ。孤児を人質にしてVandalieuを、そしてVandalieuを人質にしてDarciaを呼び出し、彼女を脅迫して欲望を叶える事が彼らの目的だ。

 そのためにはVandalieuDarciaが脅迫に屈するよう、自分達が制御できる人質を常に手元に置いておいた方が良い。


「あのガキや女がブチキレて暴れ出したら、俺達は終わりだぞ。忘れたのか?」

Yosefは喜ぶかもしれないが、俺達は奴を喜ばせるために死ぬなんて御免だぜ」

 GuardであるAggar達に危害を加えれば……もし殺してしまえば、VandalieuDarciaも立場が悪くなるかもしれない。


 しかし、彼らは命を賭けてVandalieu達に嫌がらせをしたい訳ではないのだ。死んだら意味がないし、大injureを負うのも嫌だ。

 それに、『Vandalieu達に関わるな』と上司に注意されている。もし彼らがVandalieuDarciaに害されても、彼らの誤魔化しや出任せは通用しない可能性が高い。


 だから脅迫し、Darciaを凌辱して彼女とVandalieu、そして孤児を口止めしなければならないのだ。


「……分かってるよ。冗談だ」

 ただ、AggarだけはDarciaを自分のものに出来るなら命を賭けても構わない-sama子だったが。

「お前、-chanと薬は持ってきただろうな?」

 だがAggarの言動に不安を覚えたらしい仲間の一人が、-chanと準備してきたのかと尋ねた。手筈では孤児やVandalieuを眠り薬や痺れ薬で動きを封じる事になっている。


 その薬を用意するのは、Aggarの役目だった。

「おうよ、今までの押収品をコツコツ盗んだ成果だ。安心しろよ」

(それに、あの女に使う媚薬もな。クククッ!)

 ニタリと口の端を歪めながら、孤児院の裏口にstealth寄り、懐から昔盗んだ合鍵を取り出す。


 その-sama子を領主であるIsaac Moksi Earlが放ったSpy達は、軽蔑の混じった目で見張っていた。


 Slumの孤児院はVandalieu達が寄付を行うなど、定期的に通っている場所だ。そのためSpyが張り込んでいた。そのSpyが昨日、中庭に続く裏口が合鍵で今も-chanと開くかどうかの確認をしにきたAggarの仲間を見つけたのである。


 それで警戒していたら、この-sama子である。

「どうします? 今のうちに始末しますか?」

「裏口から孤児院の中に入ってからだ。……我々が介入したお蔭で事件が防がれた。その痕跡を孤児院に残す。

 あのDhampirに気づかせるためにな」


 これまでVandalieuから距離を置き続けたIsaac Moksi Earlだが、Bellardから彼がJuliana Alcremらしい四肢の無いMinotaur被害者の娘を、当人の同意の下保護しているという報告を聞いてpolicyを変えたらしい。


 野放しにしておく方が危険だと。『あのDhampirの少年と母親がどれ程危険人物だったとしても、connectionを結んでおかないと逆に危険なのではないか?』と思い、自分達の有用性をVandalieuappealし、良好な関係を……色々とdelicateな問題に関して相談できるぐらいの関係を結んでおくべきだと考えたのだ。


 Julianaの件に関してIsaacは何も知らないが、conjectureは出来る。それでVandalieuが、そしてVidaFamiliar SpiritAdventさせられる彼の母親DarciaAlcrem Dukeに対する心証が悪くなるのではないかと言う事も、想像に難くない。


 EarlAlcrem Dukeを糾弾するつもりはない。だが、同時に弁護するつもりはない。ただ彼女達が本格的に反感を抱く前に、地元の領主は話が通じると認識してもらう事は重要だと考えているだけだ。

 もしAlcrem Duchy内のNoble全員に対してVandalieuDarciaが反感を持ったら、彼らに理解を示すNobleがいる他のDuchyと関係を結ぶ可能性が高い。


(母親もそうだが……息子の方も規格外だ。領主-samaの胸の内は、あの母子と一蓮托生になるほどの覚悟はまだ決めていないようだが、他のDuchyに流れるのを黙って眺めるには惜しい、と言うconditionか)

 そうEarlの心情を推し量っているSpy達の隊長は、Aggar達が裏口の扉を開けて中に入ったら、塀を一気に飛び越えて彼らを包囲し、拘束しようと身構えていた。


 それに気がつかず、Aggarはにやけた顔つきのまま裏口の鍵を開け、扉を少し開いた。隙間から、こちらに背を向けてしゃがみこんでいる十age程の少年と、それより少し年上の銀髪のShoujoの横顔が見えた。雪が積もった地面に何かを描いて遊んでいるのか。


「ん? この孤児院にElfのガキなんていたか?」

 少年の方はin any case、まるで精緻な芸術品のように整った容姿をしたElfBishoujoに男の一人が戸惑って動きを止める。


「そんなことはどうでもいいだろ、丁度近くにガキがいるんだ、さっさと攫うぞ!」

Aggarの言う通りだ、俺は男の方、お前は女のガキを」

「任せろっ」

 だが結局Aggarとその仲間達、合計四人はそう囁き合うと扉から孤児院の中に次々に入っていった。


「かかれっ」

 その後を追って、Spy達が優れた脚力を発揮して孤児院の壁を飛び越えた。次の瞬間には、自分達がAggar達を捕えている事を疑わずに。






Name: Tarea

Rank:

Race: Ghoul Elder Artisan

Level: 95

Job: Transforming Artisan

Job Level: 95

Job History: Apprentice Arms ArtisanArms ArtisanSlave(47Lv時強制Job change)、Apprentice ProstituteProstituteArms Artisan(48Lv~)、Arms Smith: Skilled ArtisanMagic ArtisanAlchemist ArtisanRefined Magic Artisan

Age: 274age(Bodyappearance age18age)

Title: Work Princess


Passive skills

Dark Vision

Pain Resistance:2Lv

Mysterious Strength:4Lv(UP!)

Paralyzing Venom Secretion (Claws):1Lv

Allure:5Lv(UP!)

Strengthened Attribute Values: Guidance:7Lv(NEW!)

Self-Reinforcement: Henshin / Transformation:2Lv(NEW!)

Mana Enlargement:1Lv(NEW!)


Active skills

Estimation:9Lv(UP!)

Armor Smithing:10Lv(UP!)

Weapon Smithing:10Lv(UP!)

Seduction:5Lv

Dancing:3Lv(UP!)

Love-making:2Lv

Archery:3Lv

No-Attribute Magic:2Lv(NEW!)

Mana Control:3Lv(NEW!)

Alchemy:4Lv(NEW!)

-Surpass Limits-:2Lv(NEW!)


Unique skill

Zozogante’s Divine Protection(NEW!)

Vandalieu’s Divine Protection(NEW!)


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