Moksiの町のAdventurer’s Guildに運ばれたVandalieuとSimonの助けで辿りついたNataniaの身柄は、Vandalieuの家にあった。
「Julianaの診察と施術は終わりました。kaa-san、Magic Eyeはどうですか?」
「ごめんなさい、やっぱり【Magic Eye of Regeneration】で四肢を再生するのは無理だったわ。せめてboneや肉片が残っていれば……でも大丈夫よ、Vandalieuならどんなことをしてでも必ず良いようにしてくれるから」
『Bocchan、仕込みは私達がやっておきますからねー』
『主にお肉を切って串に通すだけですからね。チェーン店の人に渡すGobu-gobuとKobold肉の準備は終わってますから』
寝かしたJulianaの枕もとで何か呟き、孕まされて大きくなった腹部に触れて暫く何かのmagicを行使していたVandalieu。その間自分の世話をしてくれていたDarcia。そして鎧を着ているsistersらしい二人の奇妙なMaid。
「じゃあ、話を聞いている間採寸……と言うか、muscleのつき方などを触らせてもらいますわよ」
そしてTareaと言うHuman社会ではZombieの上位種ということにされているGhoulの女。彼女は、少し前までいたはずのGufadgarnと言うElfのShoujoがSpace-Attribute Magicで連れて来た。
家の中は驚きに満ちており、Nataniaにとって人外Devil Nestsと呼ぶしかない状況だ。
「あ、ああ、頼むよ」
しかし Nataniaはhorrorや不安では無く、Darciaと何よりVandalieuから覚える奇妙な安心感を強く感じていた。同時に、自分が後戻りできない事を察してごくりと唾液を飲み込んだのだった。
時は遡って、Natania達がMoksiの町に入る時……。
もしかしたら、Julianaが本当に死んだかどうか案じるAlcrem Dukeの手が、この町にも及んでいるかもしれない。
そう内心では心配していたNataniaだが、門で特に身元を調べられる事も無く通る事が出来た。
FangがHellhoundにRank upしている事に驚いたGuard達だったが、次に気がついたNataniaとJulianaのconditionを見て、「こっちの方が一大事だ!」と理解したためである。certainly何故二人が四肢を切断されているのかと説明を求められたが、それもすぐ済んだ。
「Minotaurが!? ……では説明は後からAdventurer’s Guildから聞くので、早く向かってくれ。悪いが、お二人はあまり姿を見せないように」
Minotaurと言えば最低でもRank5のmonstersだ。DungeonやDevil Nestsならまだしも、それ以外の場所で被害者が出たのなら大事件だ。
そのMinotaurがもし群れを形成しているなら、Moksiのような大きな都市にとっても脅威である。そのためNataniaとJulianaはnameも聞かれず、そして町の人々が動揺しないように布を被せられ、ただのinjure人としてAdventurer’s Guildまで行く事が出来た。
furを通常のconditionにしているためMaroll達がRank upしている事に気がつかれなかった事と、更にAggarとその仲間が居合わせていなかった事も、話が早く済んだ一因かもしれないが。
そしてAdventurer’s Guildでは受付Counterではなく、二階の会議室に通されGuild MasterのBellardに事情を説明する事になった。
「つまり……Minotaurの群れに捕まったが、そこにRalphと言う名のadventurerが群れを壊滅させ、-kun達を助けたと?」
ただMinotaurの群れが既に壊滅している事を知ると、Guild Masterの顔に浮かんでいた緊張感はすぐに緩んだが。
この町のAdventurer’s Guildを預かるBellardとしては、Natania達の身の上よりMinotaurの群れの脅威の方に注目するのは当然の事ではあるのだが。
「そのRalphと言うadventurerについてだが、他に何かわからないかね? guildでの等Classや、普段拠点にしている町とか。単独でMinotaurの群れを全滅させるほどの腕前のadventurerなら、nameぐらいは聞いた事がある筈なんだが」
去年から神's Divine Protectionを得たHero Candidateが大勢出現しているが、Moksiの町周辺に限ればそう何人もいる訳ではない。寧ろ、何故か最近では彼らの活動範囲がMoksiの町から遠のいているような気がするとBellardは感じていた。
尤も、それは神's Divine ProtectionとOracleを受けるHero Candidateが活動する程の脅威はこの町の周辺に無い事を意味するのなら幸いなのだが……Minotaurの群れはHero Candidate -samaには脅威ではないのだろうか? そう思わずにはいられない。
「さあ、詳しくは話してくれなかったんだ。Humanの男で、三十代前後ぐらいだったと思う」
「俺も、特に特徴らしい特徴は見つけられませんでした。でも、口ぶりからするとかなりの腕利きだと思いますぜ」
実はただのMinotaurの群れでは無く、Minotaur Kingの群れだった事を隠しているNataniaは、内心冷や汗をかきながらBellardにそう答えた。
彼女には元歴戦のadventurerだろうBellardの目を欺けるのか、まったく自信無かったからだ。
「ふむ……軽装で、Spirit Magicの使い手で、Ralph……か」
だがBellardはNataniaでは無く自分自身の思考に意識を向けていた。もしかして、謎のadventurer Ralphの正体は、『True』Randolphではないかと思い至ったからである。
Ralphと言うnameは、Randolphを縮めたものと考えれば偽名としてありきたりだ。raceはHumanらしいが、それは変装用のmagic itemで耳を偽装する等すればElfである事を隠す事は容易い。
それにMinotaurの群れを単独で壊滅させるような大手柄を上げて、黙っているようなadventurerとなると……Bellardには一人しか思い当たらない。
(しかし、それが真実でも追及する意味は無いな。Alcrem Duchy本部のGuild Masterなら何か知っているだろうが、俺が問い合わせても『その件については忘れろ』としか言われないだろう。
それにRandolphが動いたのなら、まずDukeやMarquis等やんごとなき方々が絡んでいる可能性が高い。……そう言えばあの娘、Juliaと言うそうだが……Dukeの末のImoutoがJulianaと言うnameのKnightだったような気がする)
頭をHigh-Speedで回転させたBellardは、「よし、これ以上考えるのは止めよう!」と思考を止める事にした。
彼はNobleでは無くAdventurer’s GuildのMoksi branchを預かるGuild Masterである。それ以上でも、それ以下でもない。下手をすれば虎でも殺されそうな好奇心は捨てて、仕事優先だ。
「まあ、そのRalphが何者だったとしても、逃げたMinotaurが何匹かいるかもしれない。領主-samaへの報告とadventurer達に警戒喚起は必要だな。貴重な情報をありがとう」
「ああ、役に立ったのなら嬉しいよ。それで、オレを囮にした奴等だけど――」
「『Flame Blade』と言うpartyだな。certainly調査し、然るべき処置を行う。安心してくれ」
大勢いるDClass adventurerのpartyの一つでしかないだろう『Flame Blade』について、Bellardは何も知らない。nameを聞いても、Moksiの町には居ないが、恐らくあの有名な『Five-colored blades』にあやかってつけたnameだろうとしか思わなかった。
何年か前、何とかの刃というparty名を付けるのが流行って困った事がMemoryに残っている。
だがNataniaから聞いたその手口が本当なら、『Five-colored blades』にあやかる資格も無い悪質極まりない連中だと、Bellardは思った。
Minotaurの群れに捕まった仲間をただ見捨てただけなら、責める事は出来ない。DClass adventurerではpartyを組んでやっと一匹相手できるかどうかというRank5のmonstersが、一度に複数現れたのだ。助けようと試みるのは無謀でしかない。
しかし、加わってから日が浅いとはいえ仲間の女adventurerの脚を攻撃して、意図的に囮にするのはやり過ぎだ。確かにそのまま逃げればただ犠牲者が増えただけだったかもしれないが、緊急避難で済ませるには悪質過ぎる。
「adventurerとは、腕じゃない。信頼で成り立つ商売だ。adventurerがruleを守るからこそ、我々は町中で武装していられるし、商人だって護衛を依頼する。それを奴らに教えてやる。まず-kunが活動していた町のguildに問い合わせて、『Flame Blade』のadventurer達を取り調べなければならないから多少時間はかかるが。
それに、死刑や犯罪Slaveに堕とすのは流石に無理だ。昇Classへのpenaltyと、賠償金で満足してもらう事になるだろう」
「……それは、分かってるよ」
「何故ですか?」
Bellardの言葉にやや悔しげだがnod Nataniaに、それまでJulianaの耳元で何か囁き続けていたVandalieuが口を挟んだ。会議室には彼と、居心地が悪そうにしているSimonも通されていたのだ。
「し、師Artisanっ、guildにも訳ってもんがありまして……!」
「捕まったらどんな目に遭うのか明らかなのに、脚を故意に傷つけて囮にした連中に対して処分が甘すぎるように感じます。特に彼女はAgilityなWildcat-species Beast raceで、装備も軽量なUnarmed Fighterです。その『Flame Blade』と言うpartyの他のmemberがどんな人かは知りませんが、彼女より全員足が速かったとは思えません」
止めようとするSimonに構わずVandalieuはそう続けた。
『Flame Blade』は危機に陥った場合、Nataniaを捨て石にする事を想定して仲間に入れたのではないか。Vandalieuは皆と話し合った結果、そう疑っていた。
「な、何でオレがUnarmed Fighterだって知ってるんだ!?」
ただ話し合った相手が主にNataniaに見えないOrbiaやPrincess Levia達Ghostや、霊であるため彼女には驚かれたが。
「俺も【Unarmed Fighting Technique】skillを持っているので、muscleのつき方でそうだろうと思いました。ほら、爪だって伸びますよー」
「うわ、本当だ……って、お前Dhampirだったのか!? は、初めて見た。本当にclawsがあるんだな」
「おお、確かに下手なknifeより鋭いな。ちょっと後学のためにもっと近くで見せてもらっていいかね?」
「Guild Master、話が脱線していますぜ」
Nataniaと一緒にVandalieuの細い指から伸びる凶悪な鋭さのclawsを覗き込んでいたBellardは、Simonに言われ慌てて佇まいを直した。
「何故かと言うと、我々Adventurer’s Guildは司法organizationでは無いからだ。賞金首やmountain bandit、強盗等でない限り人を勝手に裁く事は出来ないし、犯罪Slaveにする権限はないのだよ。
それにadventurerは何が起きてもSelf責任なのが世の常だ」
Self責任故に、人を見る目が無かったNataniaにも責任がある。そういう事になるのだ。
「だが、別に昇Classのpenaltyと罰金は軽い罰じゃないぞ。罰金はDClass adventurerじゃとても払えない額になるし、奴らが即金で払えない分はguildからの借金と言う事になる。そして奴等から搾り取った罰金は、guildを経由してNatania -kunへの見舞金として支払われる。
それに仲間の女をMinotaur相手に捨て石にしたと噂になれば、誰も好んでそんな連中に近づきはしない。次の犠牲者が出る事も無いだろう」
Bellardが言うのは、『Flame Blade』はguildへの多額の借金を抱える事になるので、ある意味命がけの労役に就かされるのと同じconditionになるということらしい。
「なるほど……余計な口を挟みました」
「いや、良いんだ。それで話は変わるが……Natania -kun、-kun達はこれからどうする? -kunが持ちこんだMagic Stoneの買い取り金額や、『Flame Blade』から搾り取る罰金を合わせても、これから一生食っていく分にはとても足らない。magic itemの義手と義足を買うにしても、戦闘がこなせるほどとなると……」
BellardはNataniaと、そしてJulianaの今後について話し始めた。Adventureを続けられなくなったadventurerへのケアもAdventurer’s Guildの業務の一環だった。
ただ完璧とは言い難く、腕を無くしたSimonのようなadventurerでもできる日雇い仕事を斡旋する事等、細やかな物だったが。
「それは……悪いけど、introductionしてくれないか。あるだろ、オレみたいなのをintroductionする先が」
先程よりも生気が弱まった-sama子のNataniaは、ため息交じりにそうBellardに頼んだ。自分を裏切った『Flame Blade』に対する制裁が行われると聞いて、安堵すると同時に気力が萎えつつあるようだ。
「分かった。出来るだけ良い所をintroductionさせてもらおう」
Adventureにも出られない。しかし貯蓄も無く、手に職も学もない。そんな女adventurerにguildがintroductionする先の一つが娼館である。
「だが、そっちのJulia -kunはどうする? Tamer guildには連絡してあるが……生憎MasterのBachemが仕事で今朝から町を出ていて、見積もりは後になりそうなんだが」
ただMinotaurにNataniaよりも先に襲われ囚われていた村娘のJulia、ということになっているJulianaについてはguildの対象範囲外だ。
しかし、孕まされたmonstersの仔の買い取りを行っているTamer guildに連絡を入れておいた。
「Juliaはfamilyがいないから、オレが世話をしようと思うんだ。オレが今正気でいられるのも、この人のお蔭だから」
「分かった。Bachemが戻り次第、腹の仔の買い取りを急がせよう」
「いいえ、その必要はありません」
「そうか。必要無いのならintroductionしなくても……今誰が喋ったんだ!?」
「Juliana -san!? あんた、話せるようになったのか!?」
BellardとNataniaが驚いて視線を向けると、Julianaは輝きが戻った瞳で二人に頷き返した。
「Natania、あなたや皆、そしてこの方のお蔭で私は死を免れ、Insanityから戻って来る事が出来ました。ありがとう、私を見捨てないでいてくれて」
「そんな事ないよ、オレだってあんたが励ましてくれたから……ああ、良かった! 本当にJulianaだ!」
突然正気を取り戻したJulianaの回復に、涙を流して喜ぶNatania。まだJulianaの言動が一部おかしい事には気がついていないらしい。
「回復したのは何よりだが、必要無いとはどういう? ……そこまで大きくなっているなら、堕胎は危険だと思いますが」
一方BellardはNataniaが口にしているJulianaというnameに気がついていない演技をしつつ、先程の発言について問いただした。
「そのままの意味です。皆と相談して、私の身は全てGoddessにお任せする……つまりこの方に委ねる事にしました」
「Goddessではありませんが、任されることになりました」
何とDhampirの少年、Vandalieuが身請けする事になっているらしい。
「何時の間に!? いや、しかしそんな事をして大丈夫なのか!? 産まれて来るのはMinotaurの仔だぞ!?」
「俺はTamer guildの正規組合員ですが」
「た、確かに取り扱う資格はある……」
monstersの仔の買い取りはTamer guildで行っているが、組合員のTamerが個人で行ってはならないと言う規則は無い。
「それに、Rank4のmonstersをTamerしています」
「しかも、実績もあるな……その上仕事があって、家も一軒所有していて、彼女自身の意思もある。彼女はただの被害者で罪人でもSlaveでも無く、familyも居ないそうだし……止める理由も権限も私には無いな。
ははは、うん、好きにしなさい」
「そんな簡単に……進むもんなんですか」
あまりの急展開にSimonが目を見張るが、全ては乾いた笑い声を出しているBellardの言った通りである。
「でも、お袋-sanに相談しなくてもいいんですかい?」
「は、そうか。親には-chanと相談しておいた方が良い。人を一人とMinotaurの仔を抱え込むんだ、簡単な事じゃないぞ」
「kaa-sanなら大丈夫です。理解があるので」
実際には既にChipurasが一足早くDarciaに報告しに行っているだけなのだが、Vandalieuはそう言ってBellard達を誤魔化す事にした。
「そ、そうか。凄い理解力だな、-kunのおkaa-sanは。それじゃあ、Natania -kunの方だが――」
「えっ、オレも一緒に!?」
Nataniaの今後に話題を戻そうとするBellardだったが、そちらでも彼にとって予期せぬ展開が起きていた。
「そうです、Natania。この方は約束してくださいました、あなたを助けると。この方なら必ずあなたに新しい手足を授けてくれます。
だから一緒に女Kami-samaの御許へ行きましょう」
BellardがVandalieuと話している短い間に、JulianaがNataniaに一緒に行こうと説得していたのだ。
「俺はGoddessではありませんが、彼女の言っている事は本当です。俺は神ではありませんが」
「あのMinotaurの巣で、私達はお互いに励まし合いました。その時に私が言っていた事を覚えていますか? どんなに辛くても、死に逃げてはいけない。希望を捨てなければ、神はきっと応えてくれる。
そして、Goddessは……Vidaは応えたのです」
ただ、その説得の内容はかなり狂信的だったが。
「え、いや、確かに覚えてるけど……Kami-samaってこんなchildじゃないと思う……男、だと思うし」
「そう思いますよね。でも彼女は聞いてくれないのですよ、大事な事だから繰り返して言っているのに」
彼女自身の言葉に寄れば「Goddess」であるはずのVandalieuの声も届いているか怪しい-sama子のJulianaに、説得されているNataniaも困惑を浮かべながら顔を青くしている。
「でも、師Artisanは信じてついて来るなら腕についてどうにかする技を授けてくれるって、俺とも約束してくれましたぜ」
しかし Simonがそう言った事で、Julianaの言葉にNataniaは説得力を覚えたらしい。
「分かったよ……オレも一緒に行くよ……たしかに、この子からは何か只者じゃない感じがする」
もしくは、単に諦めただけかもしれないが。
「そうか、話が纏まったようで何よりだ。では、私は手続きがあるので、失礼するよ」
事態を見守っていたBellardは、口元が引き攣るのを隠せないでいた。
表情や意識が戻ったJulianaは、一見すると正気に戻ったように思える。しかし、実際は廃人から狂人に変化しただけではないだろうか。彼女の瞳を見てしまったBellardには、そう思えてならなかった。
そしてその原因は、彼女の耳元でずっと何事かを囁き続けていたVandalieuであると彼は確信していた。
(……話が一段落したら、彼にそろそろAdventurer’s Guildに登録だけでもしてみないかと誘うつもりだったんだが……もう少し-sama子を見た方がいいな。実はかなりの危険人物かもしれない)
そう思いながら、Bellardは諸々の手続きを行うために会議室から退出したのだった。
Adventurer’s Guildから出た後、途中でSimonと別れ、NataniaはVandalieuの家に運び込まれ……Vandalieu達から、彼ら自身がどんな存在なのかざっと説明を受けた。
Vida’s Incarnationとか、その息子のZakkartのSuccessorとか、頭の中がどうにかなりそうだったが、何とか乗り切った。
「Natania -san、何故こんな秘密をあなたに打ち明けるのかと言いますと――」
「分かってるよ、ここまで知った以上逃げ道はないぞって、オレに覚悟させる為だろ」
『Vandalieu -sama、Darcia -sama、この娘、勘違いしておりますぞ』
「そうじゃないのよ、ただ家でお世話をする以上、色々バレるだろうから、それなら前もって話しておいた方が良いって思ったのよ」
緊張からtailを膨らませたNataniaに、Darciaが宥めるようにそう説明した。
「Natania -san、あなたを助ける……五体が揃っていた時と同じか、それ以上のconditionにするための方法が幾つかあります。今からそれを説明するので、選んでください。
まず、保存してある女Vampireの手足を移植して、重い副作用に苦しんだ後にVampireに変異する方法」
Simonと違い四肢を喪ってから長い時間が経っていない彼女は、脳の手足に関する部分がまだ委縮していない。Pure-breed VampireであるTerneciaのLife-deadの四肢を移植すれば、そのまま動かせるようになるだろう。
ただ、そんな大部分の移植Surgeryを行えば、ただのBeastmenのままではいられない。Vandalieuが【Death Delay】のmagicで死ぬのを遅らせながら施術するので、まず死ぬ事は無い。だが最悪の場合いっそ死にたいと思うような副作用に苦しみながらVampireに変化する事になるだろう。
「ほ、他の方法は無いのか? だったら――」
「いえ、ただmagic itemの義手や義足をつける方法もあります。……作ろうと思えば、それくらい俺たちなら作れるでしょうし」
Vandalieuは【Alchemy】skillを10levelで持っている。素材を集めれば、本物の手足のように動く義手や義足を作る事が出来るだろう。
「これが一番楽だと思いますよ。ただ、戦えるようになるかは分かりませんけど」
「……確かにそうかもしれないけど、それだとあんた達の世話になりっぱなしになっちまう。細かい事は聞こえなかったけど、Juliana -sanはあんたに恩返しするんだろ。俺だって助けてくれるなら恩ぐらい返したい。
できれば、俺にもあのSimonって奴と同じ修業を受けさせてほしい」
しかし Nataniaの意思は固かった。
「分かりました。では、これから一緒に頑張りましょう」
そう言うVandalieuだが、やはり『The root of life』については話さなかった。助けると決めはしたが、『The root of life』は生命attributeを極めたZakkartが創り上げた物だ。Vandalieuですら新しく創り出す事は出来ない貴重な素材である。
流石にNatania達の手足の為に使う事は出来ない。
後、もう一つ話さなかった方法にPseudo- reincarnationがある。Nataniaの場合、Quinnのように死んで新しいbody partに生まれ変わる事になるので、最初から選ばないだろうと思ったのだ。
下手に話すと、変な誤解をされる心配もあったので。
「では今日の内に始めだけやっておきましょうか。あなたの場合、Simonより多めに必要になりますから」
「分かった、どうすれば――何だ、これ!? な、何かがオレの中に入って来るぅぅぅっ!?」
次の日、町を出たVandalieu達はDevil Nestsでは無く、そこから離れた適当な草原に居た。
「師Artisan、食材を狩らなくてもいいんですかい? それにこいつ等のlevellingは?」
そう心配するSimonに、「大丈夫です」とVandalieuは答えた。
食材は、既に【Preservation】をかけて保存してある分だけで数日分家にストックされている。Gobu-gobuにするためのGoblin肉も、蒸し焼き用のKobold肉も。
ただ、早くもGobu-gobuとKobold肉の蒸し焼きがreputationになっており、想定していたよりも早く無くなるかもしれないが。
今まで不味くて食えないmonstersの代表格であったGoblinとKoboldの肉を、美味くCookingしているらしいheart markのFood Stallがある。そんな噂が歓楽街の外でも流れているのだ。
昨日は、噂を聞いたらしいadventurerが態々歓楽街の裏路地までFood Stallを探しに来て、度胸試しのつもりで買って行った程である。
「もしGoblinやKoboldの肉が足りなくなったら、Adventurer’s Guildに依頼を出すので心配無用です」
「あー、それは……手足があったらオレもそっちに加わったかもしれない」
「俺もGoblinぐらいなら、挑戦したかも」
GoblinやKoboldの肉を持って来れば買い取る。そんな依頼があったら、経験が少なく、実力が足りないadventurer達は喜んでGoblinやKoboldを狩った事だろう。
何せGoblinは弱くて数が多い。碌なMagic Stoneもとれず、素材も無く、普段は討伐証明部位の耳一つで5Baumにしかならない。人気の無い獲物だ。
しかしその肉まで売れるなら、経験不足のadventurerにとっては貴重な収入源になるだろう。
「そしてFang達のlevellingですが……そろそろlevelだけではRank upできない時期なので、暫くはbody partの動かし方を学び、skillの習得を促すのに時間を使おうかと」
大型犬Sizeから牛程の大きさに変化したFangや、大きくなってfurの性質を変えられるようになったMaroll達。そのため、新しいbody partに慣れる必要があった。
monstersのRank upが起こるには、levelだけでは無くskillも必要になる。例えば、あるBlack GoblinがBlack Goblin ninjaになりたいのなら、levelを上げる事以外にも【Silent Steps】や【Trap】等scout職に必要となるskillを獲得しlevelを上げておく必要がある、などだ。
だがFang達は今まで同格以上のmonstersを倒して大量のExperience Pointを得て、急速にRank upしてきたため、skillのlevelが低めだ。そのため、今日は自主訓練が割り当てられる事になった。
「ガルルルル!」
「ヂュヂュウ゛!」
「ヂュゥゥゥゥゥっ!」
「キィィィィィィ!」
HellhoundのFangと鉄鼠のSurugaが激しいphysical battleを演じ、火鼠のMarollと濡れ鼠のUrumiがfurに纏った炎とcoldをぶつけ合っている。
「と、とても訓練には見えねぇ」
「あれは、大丈夫なんだよな!?」
SimonとNataniaがFang達の実戦さながらの訓練を見てそう慌てるが、問題無い。彼らには見えないが、Princess LeviaやOrbiaが-chanと見守っている。
「あと、もう一人いたJuliaだかJulianaだか分からないが、あの人の姿が無いのが気になっていたんですが……」
「Juliaなら大丈夫です。彼女はあなた達とは別の方法で頑張る事になったので、俺の家に居ます。
では修業を始めるので、Simonはこれを付けてください」
VandalieuはSimonにそう言いながら、荷車に乗せて来た練習用の『腕』を彼に渡した。
それは一見するとwhole body甲冑のRight Armの部分だけを外して、body partに装着するためのbeltをつけただけの代物に見える。
「へい、分かりやした!」
それを受け取ったSimonは、特に疑問を持たず約束した通りVandalieuを信じて身に着ける。
「確認しますが、Sizeはどうですか?」
「ええ、beltの長さが丁度良くて……後、右肩の切り口にしっかりくっついて擦れない。まるで俺の右肩に合わせて調整したみたいだ。
師Artisan、これは一体いつの間に作ったんで!? まさか、前々からこうなる事を見通して……!?」
「いや、そんな未来を予知するような真似は出来ませんから。昨日、家に帰ってから適当な鎧の腕の部分だけを使って、ちょっと調整しただけです」
昨日の治療で、VandalieuはSimonの体形を【Perfect Recording】で覚えている。それを基に【Golem Creation】で加工して、肩と接する部分はTareaと一緒に調整をし、『腕』を作ったのである。
「それは練習用の間に合わせに作った物です。修行が進んだら、もっと便利な『腕』を渡すので楽しみにしていてください」
その間にVandalieuはNataniaに、Simonに渡したのと同じ『腕』や、そして『脚』を身に着けさせる。
「では修業を始めるので、Simonもこっちに来てください。彼女の左隣に座って、そして何を感じても受け入れてください」
「へいっ。でも、修行ってこれから何をすれば……」
信じてはいるが困惑を覚えずにはいられない-sama子のSimonに、Nataniaが何処か達観した眼差しで助言する。
「最初は何もしなくて良いんだってさ。ただ、覚えればそれで良いって」
「覚えればって、何を――っ!?」
戸惑ったまま何か言おうとするSimonだったが、得体の知れない異物感を覚えて言葉を途切れさせた。
痛みや、熱さや冷たさも感じない。だが、ただただ異物がbody partに入り込んで、『押されている』事だけがはっきりと分かる。
「い、一体俺のbody partに何が、何が起きて……!?」
「うぅぅぅっ、二度目でもまだ慣れないぃぃぃっ!」
何と言い表せばいいのか分からない感覚にSimonは目を見開き、Nataniaはtailを膨らませて耐えている。
「怖がらずに、そのまま……そのまま……」
そしてVandalieuは、二人の背に触れている手からSpirit Formを出して、彼らのBodyに宿るSpirit Formを『押して』いた。
そうしてSimonは右肩の、Nataniaは両手足の切断面からSpirit Formの一部をところてんのように押し出そうとしているのだ。
二人に【Spirit Form】skillを獲得させ、それでLiving Armor系のUndeadのように無生物の腕や脚を自分の手足同然に動かせるようになってもらうために。
本来ほぼUndead専用である【Spirit Form】skillを生者が獲得する事は、まず不可能だ。生きているHumanのSpirit FormはBodyに宿って外に出る事が無いし、そもそも【Spirit Form】skillを生者が獲得する意味が無いからだ。
それを生者である二人に覚えさせるためには、BodyからSpirit Formを出す感覚を覚えてもらう必要がある。そして自力でSpirit Formの一部をbody partから出す事が出来るようになれば、後は渡した腕や脚を動かせるように訓練するだけである。
そこまで出来れば、自分の思い通りに動く新しい手足の完成だ。
(Vigaroの時のように夢で教えられたらいいのだけど……もうすぐJob change出来るので、次は【Dream Guider】にでもなりましょうか)
そうしたら、少しは夢の中での行動をcontrolできるかもしれない。そう考えながら、Vandalieuは二人のSpirit Formを押し続けたのだった。
・Name: Fang
・Rank: 4
・Race: Hellhound
・Level: 52
・Passive skills
Dark Vision
Mysterious Strength:3Lv(UP!)
Detect Presence:2Lv(UP!)
Intuition:1Lv
Self-Enhancement: Guidance:2Lv(UP!)
Enhanced Body Part:fangs、爪:2Lv(UP!)
Mental Resistance:1Lv
・Active skills
Silent Steps:2Lv
Dark Aura:2Lv(UP!)
Scream:2Lv(UP!)
Charge:1Lv(NEW!)
Coordination:1Lv(NEW!)
Flame Breath:1Lv(NEW!)
・Unique skill
ヴァ■■■ー's Divine Protection
HellhoundにRank upしたFang。Black Dogから変異したため、通常のHellhoundには無い【Dark Aura】skillを持っているため、牛と同じぐらいの大きさなのに隠密Abilityも高い。又、Maroll達と協力して狩りを行った経験により、【Coordination】 skillを獲得している。
ただ通常のHellhoundに比べてskillのlevelは低め。
・Name: Maroll
・Rank: 4
・Race: 火鼠
・Level: 60
・Passive skills
Night Vision
Abnormal Condition Resistance:1Lv
Enhanced Body Part:front teeth、fur、tail:2Lv(UP!)
Enhanced Agility:2Lv(UP!)
Rapid Healing:2Lv
Strengthened Attribute Values: Creator:2Lv
Self-Enhancement: Guidance:2Lv
Murder Healing:1Lv(NEW!)
Heat Immunity(NEW!)
・Active skills
-Surpass Limits-:1Lv
Whip Technique:2Lv(UP!)
Armor Technique:1Lv
Charge:1Lv(NEW!)
Coordination:1Lv(NEW!)
Mana Control:1Lv(NEW!)
Projectile Fire:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Vanダ■■'s Divine Protection
flaming heatのfur:1Lv(NEW!)
火鼠にRank upしたMaroll。普段は白いfurだが、彼女の意思一つで炎を纏う事が出来る。纏った炎は【Mana Control】skillで制御する事でPseudo-的なFire-Attribute Magicとして扱う事が出来、またただ単に【Projectile Fire】する事も可能。
因みに【flaming heatのfur】がUnique skillなのは、現在彼女が唯一の火鼠だからである。
・Name: Urumi
・Rank: 4
・Race: 濡れ鼠
・Level: 59
・Passive skills
Night Vision
Abnormal Condition Resistance:1Lv
Enhanced Body Part:front teeth、fur、tail:1Lv
Enhanced Agility:2Lv(UP!)
Rapid Healing:2Lv
Strengthened Attribute Values: Creator:2Lv
Self-Enhancement: Guidance:2Lv
Murder Healing:1Lv(NEW!)
Frost Immunity(NEW!)
・Active skills
-Surpass Limits-:1Lv
Whip Technique:2Lv(UP!)
Armor Technique:1Lv
Charge:1Lv(NEW!)
Coordination:1Lv(NEW!)
Mana Control:1Lv(NEW!)
Projectile Fire:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Van■ル■'s Divine Protection
frozen waterのfur:1Lv(NEW!)
濡れ鼠に変異したUrumi。furにcoldを帯びた液体を纏う事が出来、それをMarollの炎同-samaに【Mana Control】skillで操り、Pseudo-的なWater-Attribute Magicとし、もしくはそのままProjectile Fireする事が出来る。
【frozen waterのfur】がUnique skillである理由は、Marollと同-sama。
・Name: Suruga
・Rank: 4
・Race: 鉄鼠
・Level: 58
・Passive skills
Night Vision
Abnormal Condition Resistance:2Lv(UP!)
Enhanced Body Part:front teeth、fur、tail:2Lv(UP!)
Enhanced Agility:1Lv
Rapid Healing:3Lv(UP!)
Strengthened Attribute Values: Creator:2Lv
Self-Enhancement: Guidance:2Lv
Mysterious Strength:1Lv(NEW!)
・Active skills
-Surpass Limits-:2Lv(UP!)
Whip Technique:1Lv
Armor Technique:2Lv(UP!)
Coordination:1Lv(NEW!)
Projectile Fire:1Lv(NEW!)
・Unique skill
Van■■ー's Divine Protection
iron armorのfur:1Lv(NEW!)
鉄鼠にRank upしたSuruga。盾職的な役割をしていた為、三sistersの中で一人だけ方向性の違う成長を遂げつつある。
金属質なfurはそのままneedle状の飛び道具として【Projectile Fire】する事が可能。ただ、Projectile Fireすればするほど毛の量が減り、再生するまでの間Defense Powerが下がってしまうので、注意が必要。