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Side Chapter 31: 尽きぬしがらみ

 Randolphは、とてもElfらしいadventurerだ。Weapon Equipmentは鋭いfive senses、卓越した【Archery】による射撃、素早さと繊細な技を活かした【Sword Technique】、そして【Spirit Magic】だ。

 多くの人々imageするElfadventurer、そのままである。


「ブモオオオオオ!」

「ガアアアア!」

 そんなElfadventurerと、猛牛以上の迫力で斧や棍棒を振り回すMinotaurの相性は良くないのではないかと、多くの人は思うだろう。


 矢は強靭なmuscleに阻まれて目や口の中、わきの下にでも当てない限り効果は無く、細身の剣ではMysterious Strengthで振るわれるWeapon Equipmentを受け止める事はとても不可能。

 そして多少の痛みでは怯みもしない凶暴性とタフネスによって、【Spirit Magic】を繰り出してもいつかは間合いを詰められてしまう。


「……【千貫Spiralの矢】」

 しかしRandolphが森の中でも使いやすい短弓の弦を引き絞って放った矢は、向かってくる先頭のMinotaurの胸のCenterを貫いた。


「――――!?」

 High-Speedで回転する矢は勢いを弱める事無く、そのまま後ろのMinotaur達の右胸やLeft Armを穿ち、そして後方でCommandingを執っていたMinotaurコマンダーの胸甲とheartを貫き、背後の木々にround穴を空けてやっと止った。


「すまん、加減を間違えた。何分、初めて使う弓だったから」

 一度の攻撃で三分の二以上の仲間とCommanderを殺されたMinotaurの生き残りが、唖然として動きを止める。Randolphは細身の剣を抜くと、生き残りを手早く処理した。

 細身の筈の剣はMinotaurが慌てて構えたWeapon Equipmentや、彼らの分厚く強靭なmuscleに守られた四肢を、まるで稲の穂でも刈るように容易く切断していった。


 そしてMinotaurの死体をitemボックス……時間の止まった亜spaceの中に物品を収納する事が出来るmagic itemを使って、収納していく。

「本当にすまんな。傷つけるつもりはなかった。次からはもっと丁寧に戦う事にするよ」

 そして自分が傷つけてしまった木々にもう一言詫びを入れてから、進んで行った。




 Minotaur Kingの群れが存在する大まかな場所は分かっているが、accurateな情報は何一つなかった。

 そのためRandolphは風のAnimaに音を運んでもらい、Minotaurの大体の位置を確かめながら群の中心部へ進んだ。


 大体のKingは群れのCenterに居るからだ。これは【Strengthen Followerskillimpact下にあるmonstersKingを守るため、周囲に群れる傾向が強いからと、Kingの支配力を維持するためだ。

 【Strengthen Followerskillimpact下にあるmonstersKingの忠実な僕となるが、所詮はmonsters。軍隊のようにCoordinationの取れた行動が出来ても、軍隊そのものになるわけではない。


 何故ならmonsters達は、群でしかないからだ。軍隊は拠点を分けて戦力を配置する事が出来るが、群れにはそれは不可能だ。

 それにKing自身にもorganizationを作り維持するKnowkowが無い。


「例外は、Boundary Mountain Range内部に存在するらしいNoble Orc Empireぐらいだろうな。

 そう言う意味では、俺にとってはRank4のGoblin Kingの群れも、Rank8のMinotaur Kingの群れも、変わらない訳だが……」


 Randolphは彼を止めようと現れるMinotaurを討伐しては死体をitemボックスで回収しながら、まるでDungeonのような洞窟を進んで行く。


「思ったよりMinotaurの数が多いな。もう百以上倒したのにまだ出て来るとは……お前達のKingEvil God (M)Evil God (P) 's Divine Protectionでも持ってるのか?

 お前達が攫った女の数は、襲撃した村一つ分で三~四十人。Knight団の分隊一つ分で多くても十人少々。後は、数えていないadventurerから何人か……多くても百人って事は無いだろう?」


「ゴアアアアアアァ!」

 Randolphに問われたMinotaur Mageは、答える-sama子も見せずに呪文を唱えて通路を炎で埋め尽くそうとする。しかし、術をActivateした途端激しい風が吹き、発生した炎はRandolphではなく術者であるMinotaur Mage自身を焼く結果になった。


「ゴギャアアアアアアア!?」

「そうか、分かった。なら、やはり普通に孕ませて増えてる訳じゃないな。GoblinKoboldの雌じゃ、こいつ等に耐えられるとは思えないし、Vida's New Racesの集落でもあったのか? それともやはりEvil God (M) Evil God (P)が絡んでいるのか……面倒になって来たな」


 消し炭になって倒れたMinotaur Mageの死体は放置して、Randolphは進んだ。自分を止めるためにMinotaurが現れる方向へ、着実に進みながら。




 そして最後の扉を守っていたMinotaur Generalを倒したRandolphは、dome状の広いspaceに出た。

 床や天井にはびっしりとmagic陣が描かれており、spaceの四隅ではCleric役らしいMinotaur Mageがそれぞれ一心不乱に祈りを捧げている。


 そしてCenterには他の同種よりも大柄で、異-samaな雰囲気をwhole bodyから放っているMinotaurが祭壇を前に唸り声をあげている。

 祭壇の上には錆びで赤黒く変色した金属製の小瓶と、女が横たわっていた。生きてはいるようだが、四肢が途中から切断されて逃げられないようにされている。あれがAlcrem DukeImoutoであるFemale Knightだと、話が早いのだが……何か-sama子が違う。


 髪の色が聞いていた特徴と一致しない。しかも、獣の耳とtailがあるように見える。


「……少し面倒な事態になったな。それはともかく、この儀式は自分の種でその女に、Evil God (M)Evil God (P)の化身を孕ませるためのものか?」

 Randolphがそう儀式の目的をconjectureして問いかけると、祭壇の前で唸り声をあげているMinotaurtailの形状が、牛のものから先端がneedleのように尖った蟲の一部のように変化する。同時に、禍々しいsignspaceに充満する。


「やたらと数が多かった手下は、そのDemon King Fragmentで増やしたのか。形状と効果から察すると……【Demon Kingfallopian tubes】ってところか? 攫った女に卵を植え付けて急激に増えたと。しかし雄しかいないMinotaurKingが、随分と変わったfragmentを手に入れたもんだな」


「モ゛オ゛オオオオ!」

 自らの異形を目にしてもhorrorどころか動揺もしないRandolphに苛立ったのか、Minotaur Kingが雄たけびをあげ、傍らのHalberdを掴んで彼に向かって駆け出した。


「【絶空閃】」

 それに対してRandolphは剣を振るい、斬撃を飛ばす上位Martial ArtsMinotaur Kingを倒そうとした。だが、Minotaur Kingは【Demon Kingfallopian tubes】に変化したtailの一振りで打ち消してしまった。


「モ゛オ゛ォォォ!」

 そして、fallopian tubesからボコボコと半透明な卵を産み落とす。それは地面にぶつかると同時に孵り、急速に成長し産声をあげた。

「「「ブモオ゛ォォォ!」」」

 そして【Demon Kingfallopian tubes】が無い事を除けば、自分そっくりなMinotaurの群れを創り出した。


「増えるのに女が必要無いのか。いや、俺が踏み込むまで作っていなかった事を考えると、単生殖で出来るのは即製のCloneみたいなものか。寿命は、数分から数時間と言うところだろうな」

 そんなRandolphの考察を無視して、Minotaur KingCopy達は彼に向かって殺到する。流石にHalberdや鎧は身に着けていないが、その拳や蹴りはElfの細いbody partには十分すぎるWeapon Equipmentになるはずだった。


「【Severing Hundred Flashes】」

 だがRandolphは再び、そしてより速く剣を振るった。放たれたcountlessの斬撃が、Copy達に断末魔のscreechをあげる間も与えずに屠っていく。


 折産み出したCopy達が一瞬で全滅するのを目にしたMinotaur Kingは、Randolphが格上の相手だと認識を改めた。Halberdを振り上げて雄叫びをあげる。

「グモ゛オォォォン! ……っ!?」

 だが、何も起こらない。愕然とした-sama子のMinotaur Kingが振り返って祭壇を見るが――。


「【風God Spear招来】」

 その隙だらけの胴を、Randolphが唱えたWind-Attributeの【Spirit Magic】で作られた槍が貫いた。

「モ゛オ゛ォォォ!?」

 だがMinotaur Kingは倒れず、激痛と怒りで満たされた濁ったscreechをあげると傷口が塞がり始める。


 【Demon King Fragment】を取り込んだimpactMinotaurには本来ない【Rapid Regenerationskillを獲得したのか、それともscreechが治癒magicの呪文だったのか。

 だが、当然Randolphは傷が治りきる前に止めを刺そうと剣を振るうが、【Martial Arts】によって飛ばされた斬撃は以前のように鞭のようにしなる【Demon Kingfallopian tubes】によって防がれてしまう。


 grinningと、Minotaur Kingが嘲笑を浮かべる。さっきのように動揺さえしなければ、Randolphを相手取る事は容易いと言っているかのように。

 それを見て、Randolphは息を吐いた。


「確かに、生憎この剣はMythril製で【Demon King Fragment】と正面から打ち合えるOrichalcumじゃない。だが……【風気残shadow】」

 大気を歪め、風で作った質量のある残像を残すmagicActivateさせたRandolphは、Minotaur Kingに向かって素早く間合いを詰める。


「っ!?」

 そのSpeedはあまりに早く、迎え撃とうとMinotaur Kingが振るった【Demon Kingfallopian tubes】とHalberdが貫き、Bisectionしたのは全て残像だった。

「【Lightning三連thrust】」

 懐に入り込んだRandolphは、Lightningのような速さと激しさの三連thrustMinotaur Kingsolar plexusheart、そして首に向かって放った。


「だが、【Demon King Fragment】と打ち合わず急所を破壊すれば良いだけの話だ」

 信じられないと言った顔つきのまま、Minotaur Kingが倒れる。今度は、傷を再生させる事は無かった。

RankDemon King Fragmentの分を考えると10ぐらいか。群の数も考えると、AClass adventurerが十人はいないと、儀式を止められなかったかもしれないな」


 そう言いながら、Randolphは死んだMinotaur Kingbody partから這いだそうとした【Demon Kingfallopian tubes】を、念のために常備しているsealed用のmagic itemで封じ、もう一つの古いsealedの【Demon King Fragment】も回収する。

 そして、Kingが死んだ事にも気がつかず、儀式を維持するために祈り続けている四匹のMinotaur Mageを短弓で射殺する。


「もっとも、肝心の神に何故か見放されていたようだから、儀式に成功したかどうか分からんが。Familiar SpiritSpirit Cloneかは知らないが、それぐらい降ろしてやれば良いだろうに。

 それなら俺も多少は楽しめた……かもしれないな」


 そうRandolphは、名も知らぬMinotaur達に奉られていた神に文句を言った。Minotaur Kingは、あの時【Familiar Spirit Advent】かそのSuperior SkillActivateしていた。だが、それに神が応えなかったのだ。

しかし、何故こいつ等は見限られた? どうせEvil God (M) Evil God (P)だろうから、こいつ等の邪な祈りに応えない理由は無いはずだ。勝ち目が無いと見抜いていたとしても、Familiar Spiritを遣わす程度たいした労力ではないだろうに」


 そうRandolphは首を傾げるが、その頃Minotaur達が奉じていたEvil God (P)……『Evil Cow Horn GodRangulbozaは深い安堵の溜め息を吐いていた。

『無事儀式は失敗したか、あのかぼちゃ頭の間抜けめ。我のOracleを無視するから、こうなるのだ』

 Rangulbozaは牛に似た姿をしたEvil God (P)で、それが縁でmonstersの中でもMinotaur達に目をかけていた。


 それでこの群れのKingにもblessingsを与えていたのだが……Boundary Mountain Rangeに向かう途中だったDemon King Fragmentの宿主を殺して【Demon Kingfallopian tubes】をAbsorptionしかも sealedされたconditionのまま手に入れた二個目のfragmentを使って、RangulbozaAdventさせるためのBodyを作ろうとし始めた。

 Rangulbozaが何度『止めろ』、『大人しくしろ』とOracleを下しても、耳を貸そうともせずに。


 冗談ではない。今の地上に降りるなんて、破滅願望の持ち主でなければどんなEvil God (M) Evil God (P)だって御免だ。

 今までにない程『God of Law and LifeAldaの勢力が活発的に動き、更に地上ではそのAldaが『新たなるDemon King』と恐れるVandalieuが存在している。

 そう、Humanだけでは無くGodsの魂すら喰らうmonsterが。


 ついさっき僕共を倒してくれたRandolphもその戦闘Abilityは高く、SClass adventurerの名に相応しい超人の中の超人、神と戦える存在だ。

 しかし VandalieuRandolphとは別の種類で危険すぎるのだ。


 既に『Evil god of release』や『Evil god of Magic Tome』等、幾柱ものEvil God (M) Evil God (P)が喰われ、Aldaの腹心である『God of Records』も奴のstomach袋の中だ。

 その仲間入りをするのは御免である。


 だからRangulbozaMinotaur Kingが【Familiar Spirit Advent】をActivateした時、それに応えなかったのだ。万が一にも、Randolphに彼が勝たないように。

『このadventurerに奴が倒されても、儂は全く傷を受けない。後は、我がDivine Realmに閉じこもりそのまま地上の状況が変わるまで、何万年でも眠り続けるのみ。目覚める事無き死に等しい眠りかもしれぬが……苦しみ悶えながら喰い殺されるよりはマシだ』


 そしてRangulbozaRandolphに構わず、そのまま意識を地上から背けた。

 そんな事情があるとは知らないRandolphは暫く思考を続けたが、やがて「神には神の事情があるんだろう」と考える事を放棄する事にした。


「神を信じる、依存した者の末路はHumanmonstersも変わらないと言う事か。それよりも残りの仕事だが、この娘は……」

 Randolphが祭壇に寝かされている娘を見ると、彼女は虚ろな瞳で虚空を眺め続けていた。腕は肘の、脚は膝の上辺りで切断されている。切断面は、bloodが止まる程度には治療されていた。

 それは切断された手足が見つかっても、元通り接合する事が出来ないと言う事でもあったが……それよりもRandolphは彼女の顔を見て驚いた。


「やはりJuliana Alcremとは別人か」

 もし生きていたら楽にしてやり、Minotaurには捕まらず戦いの中で果てた事にして欲しい。そう腹違いの兄であるAlcrem Dukeから頼まれたFemale Knightの特徴を、Randolphは簡単にだが聞いていた。

 それとは髪と瞳の色と顔立ち。そして何よりも、raceが違う。


 Juliana Alcremは金色の髪に青い瞳の、凛々しさと高貴さを併せ持つ美貌のHumanBishoujoと美女の間に在るような年頃だ。


 しかし、祭壇の上に寝かされているのは金色と言うより黄色という感じの髪に、意思が強そうな太い眉をした勝気そうな顔つきをしている。野性味が強いが、凛々しさが無いとは言えない、美人の部類ではあるだろう。

 だが頭には三形の猫科動物の耳が、そして腰からは豹柄のtailが生えている。


 明らかにBeastmenである。Wildcat-speciesか豹系かは、Randolphには見分けられないが。


「まいった……怪しげな儀式をしているようだから、姫-kunは生贄か何かに使うためにKingの近くにいるだろうと思い込んでいた」

 神の化身を孕むための生贄は、物語なら高貴な生まれの姫-kunの役だが……Minotaur達にとってはその限りでは無いのだろう。


 もしかしたら本当に戦いの中で果てたか、生け捕りにされてもMinotaur達のBreeding行為に耐えきれず既に死んでしまったのかもしれない。

 adventurerとしての信用やHonoraryに関心が無いRandolphとしては、そういう事にしてこのまま帰っても構わないのだが――。


「それは流石に哀れか。とりあえず、この娘から話を聞こう」

 Randolphitemボックスから布を出すと、娘のbody partに被せた。そして変装用のmagic itemActivateし、目を覚まさない娘に、【解毒】のmagicをかける。


 すると、虚ろだった娘の瞳に徐々に光が戻り、顔つきもはっきりしてきた。

「ぁ……あれ? オレは……あっ……あああああああっ!?」

「気が付いたついでに、痛みまで戻ったか。待ってろ、今治してやる」

 目覚めてすぐscreechをあげ始めたShoujoに、Randolphは彼女から話を聞くため四肢の傷を痛みが無くなる程度に治そうとした。


「ま、待てっ! 待ってくれっ! このまま治したらっ、治したらくっ付かなくなるっ! オレの腕、オレの腕は……ヒィっ!? 足っ!? 足もっ……!?」

 だがShoujoはそれを拒否しようとした。四肢を切断されても、切断面を正しく合わせたconditionで四Class以上のpotionややや高度な治癒magicを施せば繋げる事が可能で、何か月、若しくは何年かかかるが、元通り動かす事が出来るようになる可能性がある。

 それを知っているからだろう。


「無駄だ、もう傷の切断面は簡単にだが塞がれている。手足が何処にいったのかも分からない。maybeMinotaurstomach袋の中だろう。

 諦めろ」


「そんな……うあああああっ! 畜生っ! あいつ等っ、よくもオレをっ! オレを囮にしたあいつ等、絶対に許さない!」

 これは傷を癒しても、話を聞くまでしばらく時間がかかるなと、Randolphは溜息をついた。

 彼女があげるscreechと怒声からconjectureすると、彼女はadventurerで最近あるpartyに加わったらしい。暫くは何事も無かったようだが、運悪くMinotaur Kingの縄張りに入ってしまい、複数のMinotaurに追われる事になった。


 しかしこのままでは逃げ切れないと理解した仲間達の一人が、何と彼女の脚にknifeを投擲。彼女は堪らず転倒し、仲間達は……仲間だと思っていた者達は「悪いな」と言い捨てて彼女を残して走り去っていった。

 彼女はなおも抵抗しようとしたがMinotaurが振るった斧で構えていた両腕を切断され、そこで意識を失った。


「それで気が付いたらMinotaurの巣で、オレ以外にも何人か女が捕まってて、その内の一人がまだ話せて、自分はDuke 家の者だから、必ず助けが来る。だから諦めるなって……でもMinotaurに妙な薬を飲まされて……その時はまだ脚は二本とも揃ってたのに……こんな……嘘だ……こんなの……」


「おい、俺はRalph。依頼でここのMinotaur Kingの討伐と、ある女を助けに来た」

「えっ……?」

「俺は、Ralphだ。お前のnameは?」

 Randolphはこういう時の為に決めてある簡単な偽名を繰り返し名乗って、BeastmenShoujoに訪ねた。


「お、オレはNatania

「そうか、Natania。俺はDukeから依頼を受けてその女を助けに来た。その女が何処にいるか分かるか?」

 そう伝えると、Nataniaは暫く考えた後答えた。


「臭いを辿れば、maybe

 その答えを聞いたRandolphは、マントで包んだNataniaを抱きかかえるようにしてbloodの跡だけが残るMinotaurの巣を彼女が指し示す方向に向かって進んだ。


 そして程なくMinotaurが女達を監禁していたroomに辿りついた。中には幾つもの人boneが転がっていて、監禁roomと言うより処刑roomと言った-sama子だったが。

 恐らく、死んだり使えなくなった女はこのroomでそのまま食い殺していたのだろう。


 そしてJuliana Alcremは、まだ生きていた。

「そんな……」

 呼吸も鼓動もしている。Natania-sama四肢が切断されているが、それは元からだろう。ある程度の実力を持つ者を安全に監禁するためには、鉄の枷を嵌めるだけでは不十分だ。四肢を切断し、両目を潰し、Vocal Cordsを裂かなければいけない。

 それを考えれば四肢だけで済んでいるのは、Minotaur達の処置がまだ甘かったと言う事だろう。


 しかしJulianaはすっかり壊れていた。NataniaRandolphが姿を現しても、虚ろな瞳で虚空を眺め、半開きになった口の端から唾液を垂らすだけで、反応らしい反応は一切見せない。

 Randolphは念のためにとNataniaにもかけた【解毒】のLife-Attribute Magicをかけてやるが、Julianaが正気を取り戻す事は無かった。


「オレが連れて行かれるまでは、やつれてたけど意識があったのに。オレに諦めるなって……自分はまだ【Familiar Spirit Advent】は使えないけど、Kami-samaが必ず助けてくれるって!」

「その後何があったかは、大体察しがつくな」

 恐らく、あのMinotaur Kingが儀式に使うNatania以外に残っていた女の体内に、【Demon Kingfallopian tubes】で大量の卵を産みつけたのだろう。


 それでJuliana以外の女は耐えられずに死に、彼女自身もMentalDecayしてしまったのだろう。

(寧ろ、今までよく保ったと思うが)

 手足を切り落とされて産む機械にされ、他の女が次々に死んではMinotaurに食い殺されるのを目にしていたのだ。その状況で捕まってから約一カ月も正気を保ち続けたのは、驚嘆に値する。

 Nataniaは信じられないらしいが、Randolphにはそう思えた。


「それはともかく、早速『助ける』とするか」

「ああ、頼むよっ。Duke 家から何か凄いpotionとか、預かって――え?」

 RandolphNataniaを地面に降ろすと、剣を抜いた。


「な、何で剣を……ま、待てよっ! あんたの言っていた『助ける』って意味は……!?」

「それで正解だ。お前もadventurerなら分かっているだろう」

 OrcGoblin、そしてMinotaurの討伐依頼では、捕まっている女を見つける事がある。その女が自力で動けるならまで連れて帰るが……四肢を無くしMentalも壊れているような場合はどうするのか。


 どうしようもないので、来世では幸せになる事を祈って楽にしてやるのだ。


「そんなっ、その人はDuke 家の人で、Knightなんだぞっ! adventurerじゃない!」

「そのDuke 家からの依頼だからな。まあ、多少五体が不満足でも生きて行けるようなら見逃してやろうと思わなくもなかったが」


 先祖に世話になったから、その借りを帳消しにするのと大金を報酬に依頼を受けた。

 しかし、万が一Julianaが正気を保っていて死にたくないと主張したら……彼女が死んでいても、彼女がMinotaurに汚されたと知っている彼女の部下がそう主張したら、RandolphAlcrem Dukeとの契約を破るつもりだった。


 彼は主観ではadventurerを引退している。だからと言って、殺し屋に転職したつもりはないからだ。

 ただこの場合は、寧ろ殺してやるのが慈悲だろう。


「手足も無い廃人が、familyも無く一人で生きていける訳も無いからな」

 『Earth』ならRandolphの言葉は非Human的だと非難されるだろう。しかしこの人権という概念が未発達なworldでは、「致し方ない」と納得される判断だ。

 Alcrem Duke 家Julianaを助けるつもりだったら、その財力でどうにでもなっただろうが……。


「お前も後で苦しまないよう送ってやるから、安心しろ」

「お、オレも殺すのか!? い、嫌だっ! 折助かったのにっ、まだ死にたくないっ!」

「……俺は親切のつもりで言ったんだが」

 悲痛なscreechをあげるNataniaを見下ろしながら、Randolphは呆れた-sama子で溜め息をついた。


「考えても見ろ、adventurerが戦えないbody partになってどうやって食っていくつもりだ? guildに十分な預金でもあるのか? それとも世話をしてくれる程、お前のfamilyは裕福なのか?」

 Randolphが尋ねる度に、Nataniaの顔色が青くなっていく。しかし、それでも諦めて楽になるつもりはないらしい。


「じゃあ、頼むよっ、あんたが助けてくれよ! Ralphってnameは聞いた事無いけど、あんなに居たMinotaurを一人で全部退治できる程強くて、Duke 家とも知り合いならあんたAClassだろ!?」

 はっとした-sama子で、良い事を思いついたかのように顔を輝かせたNataniaしかしそれに対するRandolphの反応は薄い。


「いい推理だが、だったらどうした?」

「AClass adventurerなら稼いでるだろっ!? 金を貸してくれっ、オレとその人が暫く生きていけるだけで良いっ。Prostituteでも何でもやって必ず返すからっ!」


Prostituteか。その生き方だと数年後に『今死んでおけばよかった』と後悔しながら死ぬことになるぞ」

 今のNataniaでも娼館に勤めればとりあえず食って行けるだろうし、世話もしてもらえるだろう。元adventurerProstituteは普通のProstituteよりも体が丈夫で、人気が出ることも多い。

 しかし、より悲惨な人生が待ち受けている場合も多い。


 特に彼女のconditionだと客の中心は特殊な性癖の持ち主になる。余程運が良くなければ毎日死ぬまで慰み者にされるか、やはり特殊な趣味の金持ちにSlaveとして飼われるが関のだ。


 戦えない体になりProstituteに身を堕とした元女adventurerが、後に成功した現役時代の仲間に身請けされ、幸せに暮らしました。という夢物語の類のいくつかが実話であることをRandolphは知っている。しかしNataniaにそれが期待できる知り合いがいるとは思えない。


「そ、それでも生きていれば、もしかしたら……!」

「諦めが悪いな。確かに、俺も未来が見えるわけじゃない。可能性が完全に無いとは言わない」

「それならっ!」

「……だが悪いな。しがらみをこれ以上抱え込むつもりはない」


 Randolph程の実力と財力があれば、大抵の事は可能だ。Alcrem Duke 家を滅ぼす事も、何百何千と言う孤児を貧困から救って高度な教育を施す事も、何なら一から国を興す事も出来なくはないだろう。

 NataniaJulianaを助ける事も可能だ。


 優秀なalchemistに義手と義足を作らせて人並みに動けるようにして、Julianaには別のnameを名乗らせて生活の面倒を見る事は、やろうと思えば出来る事だ。

 だが、それでは切りが無い事をRandolphは知っている。どの村、どの、どの国にも困っている者はいる。手を差し伸ばさなければ死んでしまうような者が幾らでも、何時でも転がっているのだ。


 そんな縁も何も無い他人を助けるために手を差し伸ばす行為は、確かに尊いだろう。やっている奴が存在するなら、彼も尊敬を惜しまないだろう。

 しかし自分が実行するつもりはない。ただでさえ過去のしがらみのせいで、adventurerを引退出来ていないと言うのに。


「そんな……」

 Nataniaの瞳が曇るのを見ずに、Randolphは剣を今度こそ振り上げた。

「そういう事だ。恨むなら、自分の見る目の無さを恨んでくれ。形だけは、Zuruwarnに来世の幸福を祈っておいてやる」


 Randolphは、実を言うと無信仰だ。昔はGodsに祈りを捧げ、Familiar Spiritをその身にAdventさせた事もある。しかしadventurerを引退すると決めた時にGodsに祈りを捧げるのも止めた。

 だが、このGodsが実在する『Lambda』では無信仰者はそれだけで変人、変わり者扱いをされる。

 そのためRandolphは決まった戒律が無いZuruwarnを信仰していると、口では答えるようにしていた。


「だったら、せめて頼むよ……オレを囮にした奴らは『Flame Blade』ってpartyだ。Adventurer’s Guildに、あんたから通報して欲しい。死にたくないって泣き叫ぶ女を殺すんだ、それぐらい頼んでもいいだろ」


 だがその言葉でRandolphの腕は止まった。

 確かに、Nataniaを殺すのならそれぐらいはするのが筋かも知れない。だが、それにはAdventurer’s Guildを訪れ、Nataniaを見捨てるどころか、意図的に傷つけ囮にした事を説明する必要がある。

 当然、何故そんな事を知っているのかとguildに説明したうえで。


(Minotaur Kingの群れに囚われていた女adventurerから聞きました……そんなお前は何者だって話になるな。そうなるとDukeの依頼の事は黙って俺の正体を明かすか? 身分も明かさず説明もしない場合は……通報しても調査されない可能性が高いから、そうするしかないわけだが。

 いや、そもそも俺の正体がばれた時点で、Alcrem Dukeからの依頼で動いた事は察しがつくだろう。俺は昔世話になった奴か、その子孫の依頼しか受けていないからな。すると、Julianaの件と結びついて考える奴も……)


 真実が世間にばれた場合、最悪Alcrem Dukeは『TrueRandolphを使ってDuke 家にとって邪魔になったImoutoを殺したと言うレッテルを張られかねない。

 Randolphとしても、Dukeに雇われた殺し屋呼ばわりは困る。これから同じような依頼が他のDuke 家から殺到したらと思うだけで、死にたくなる。


 ならNataniaの頼みを受け入れず、ただ二人を殺していけばいい。

(考えてみれば、NataniaJulianaの事をDuke 家の者だと知っている。だったら、Julianaが討ち死にした事にするには、彼女を殺す以外に道は無いわけだ)

 だから依頼を優先するなら殺すしかない。Julianaが部下共々Minotaurに生け捕りにされ、しかし Randolphが助ける前にJulianaだけ死に、部下だけが生きていた場合と同じだ。


 そして、Nataniaは死にたくないと言っている。


「仕方ないか」

 ため息を吐いて、Randolphは剣を振るった。Nataniaがきつく目を瞑った。だがbloodが飛び散る音がしないので、暫くしてから困惑した-sama子で目を開いた。


 RandolphJulianaの長い金髪を肩にかからない長さに適当にSlashDuke 家紋が彫られたpendantの鎖を千切って、懐に入れた。そして他に指輪などが無いかを確認してから、目を瞬かせているNataniaに告げる。


「助けはしない。助けはしないが、とりあえずfrom here一番近い……にはDuke 家の連中がいそうだな。だから二番目に近い交易都市、MoksiAdventurer’s Guildまでは運んでやる。後はProstituteになるなり、こいつの腹の中のMinotaurchildTamer guildに売るなり、Slaveになるなりして生きていけ」


 Julianaの体内に産み付けられたMinotaurの卵は、Randolphが【Demon Kingfallopian tubes】をsealedした事で成長のSpeedが落ちていた。それでも通常のMinotaurよりは速いし、卵が幾つ入っているか分からないが、に着くまでの間に生まれる事は無いだろう。


 Tamer guildも何匹もMinotaurTamerは出来ないだろうが、Rank5のmonstersの産まれたばかりのchildだ。一匹一万Baum以上で買い取ってくれるだろう。


「み、見逃してくれるのか!?」

「……単に放り捨てるだけだ。それとこいつはお前とは別口で捕まった旅人かadventurerの女だ。少しでも長生きしたいなら、そう言う事にしておけ」


「わ、分かった!」

 Randolphはそう言いながらitemボックスから再び布を出してJulianabody partを包んだ。

「じゃあ、一旦Devil Nestsの外まで【Teleportation】する。その後、Moksiまで送って、適当なadventurerにお前等を任せる。後は俺は知らない。以上だ。

 後は精々、俺とは違うお人好しに出会うよう祈れ」


「ああ、それで十分……わっ!?」

 Nataniaが言い終るのを待たずに、Randolphはあらかじめ決められた場所に【Teleportation】する事が出来るmagic itemを起動して、三人でMinotaurの巣から去ったのだった。


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