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Chapter 213: 不屈の者達と諦めている男

 Darciaの共同templeでの講演は、とても盛況であった。

(あまり堅苦しい話を期待されていなくて、本当に良かった。……あんな分厚い聖典、とても数日では覚えきれないもの)


 共同templeで行われる普段の説法は、日ごと各神のPriestが教義について、関連のある逸話を搦めて語り聞かせたり、過去のHeroの逸話を語ったりと信仰と娯楽を兼ね合わせるものだ。


 そのため、Vidafemale Priestも含めて誰もDarciaVida信仰に関する歴史や『正しい』教義の解釈に関する話を求めていなかった。

 female Priestは何かをDarciaから感じ取ったようだが、今日集まった多くの人々が期待しているのは「噂の美人Dark Elf」の姿を見て、珍しい話を聞く事である。


 実際、今日共同templeに集まっている人々の男女比率は大分maleに偏っている。

 templeで信仰に関する講演を聞くのに不純ではないかと嘆く者もいるかもしれないが、実際美形のClergymanの説法に人気が集まるのは、自然な事である。


 ……その中に非番らしいAggarと、先日連れて来たのと同じ仲間の顔が在る事に気がついて、Darciaも内心溜息をついたが。しかし彼から離れた場所にKestや、Food Stallの客、そしてCelisBestraと孤児院のchild達の顔を見つけると興味を持ってくれたのかと嬉しくなる。


 それに彼女は顔を知らなかったが、聴衆の中には『Rock Iron Party』の仲間に連れて来られたadventurerRockや、奥-san連れのTamer guildMasterBachemの姿もあった。

 そして、聴衆の中には領主が放っているSpyも紛れ込んでいる。


「皆-san、初めまして。Darciaと申します。今日はこうして皆-sanにお話をする機会を頂き、ありがとうございます」

 そうDarciaが挨拶をすると、聴衆から小さく感嘆の声が洩れるのが聞こえた。その多くがDarciaの美貌と、そして澄んだままはっきりと耳に届く美声に対してのものだ。


 地味にKanakoから受けたvoice Trainingが役に立っている。

「でも、私は本当のClergymanでは無いので……私が暮らしていた里でのGoddessの信仰と、まつわるHero達のlegendをお話ししますね」


 そしてDarciaは、自分が暮らしていたAmid Empire側に在るDark Elfの隠れ里に伝えられているものでは無く、TalosheimBoundary Mountain Range内部で伝えられている信仰やlegendを、所々修正して語り始めた。

 過激に聞こえないよう、だけどしっかりVida本来の教えが伝わるようにと。


 何故なら自分達の教えが、Alcrem DuchyVida信仰の主流となっているAlda believerに対して友好的な派閥と近いと思われたくなかったからである。

 Darciaは当然だが『God of Law and LifeAldaと敵対する、反Alda……Vida Fundamentalismである。


 だが、流石にいきなり「Undeadの存在を認めるべきだ」とか、「Aldaこそ真の敵であり、融和などもっての外」等と唱えても人々の支持は得られない。寧ろ反発を招くだけだと理解している。

 そのためにBoundary Mountain Range内部でのVidaを信仰する祭りの-sama子や、新raceHero等に関する話を加えて、聴衆の耳に柔らかく、そして面白く響くように工夫した。


 そして話し終えた時、聴衆の反応はまずまずのものだった、初めて普通のClergymanらしい事をした事を考えれば、上々の結果だ。

「では、最後に――」

 しかし Darciaはダメ押しを行う事にした。


(少し派手だけれど、抑えれば大丈夫よね。Murakami達はRodcorteから情報を貰っているはずだし、Birkyneも私の息子と敵対するつもりなら、私が多少強くなっていてもそれで弱腰になる事はないだろうし。

 良し、やるわ!)


 気合を入れると、DarciaVidaへ祈りを捧げ、意識を研ぎ澄ませた。

「【Familiar Spirit Advent】!」

 カッと、彼女に光の柱が降ってくる。そして自分では無い、しかし異物とは言えない何かが入り込んでくる。


 光を纏ったDarciaは、驚く聴衆に対して両手を開いて語りかけた。

Goddessの祝福を、皆-sanに」

 聴衆は一瞬だけ凍りついた後、すぐに熱狂的な歓声をあげたのだった。




 『Lambda』には神が確かに存在し、人々もそれを疑った事は無い。

 そんなworld人々から信仰を得るのにまず必要なのは、ありがたい教義やcharismaや美貌に優れるClergymanの説法だけでは無い。

 目に見える何かが、最も効果的だ。


 そのためClergymanは修行と称して各地を回り、adventurerのように人々を日常のtroublemonstersから救い、治療や教育を施す。またtempleDevil Nestsや辺境にCleric-warrior団を派遣し、恐ろしいmonstersを討伐する事もある。

 だが流石に一度の講演会でそれをするのは無理なので、DarciaFamiliar Spiritを自分のbody partAdventさせる【Familiar Spirit Advent】を使用して見せる事にした。


 彼女は本来なら【Familiar Spirit Advent】よりもずっと上位のskillである、【Goddess Adventskillを習得している。しかし、流石にGoddessAdventを願うのは目立ちすぎる。話題になって、Orbaum Elective Kingdom中のChurch of Vidaから招かれたり、Alcrem Dukeや他のDuke 家から使者が訪れたりしたら身動きが取れなくなってしまう。


 だからGoddessFollowersであるFamiliar SpiritAdventを願ったのだ。Superior Skillを所有しているからと言って、下位のskillを忘れた訳ではない。Vandalieuが【Hell King Magic】や【Hollow King Magic】に目覚めた後も、【Death-Attribute Magic】や【No-Attribute Magic】を使う事が出来るのと同じ事だ。


 そして大規模なAlda templeでは、説法の終わりにClergymanが【Familiar Spirit Advent】を使用する演出は珍しいものではない。

 一部のAlda Clericはそうした行為を、神のFollowersを見世物にしているとして不満を覚えているらしいが。

Darcia -san……いえ、Darcia -samaと呼ばせてください!」

 しかし、この反応を見る限りVidafemale Priestには好意的に受け止められたようだ。


「いや、あの、私はただのFood Stallの店員ですから、Priest -sama

 ただ、集まった聴衆はともかくfemale Priestにここまで受けるとは思わなかったが。

「私の事はPaulaとお呼び下さい、Darcia -samaっ!」

 まるでShoujoのように瞳を輝かせているPaula Priestに手を掴まれ、Darciaは若干焦っていた。


 今までのConcertで、観客の熱狂的な視線や歓声を向けられる事には慣れているはずだったのだが。

(やっぱり距離が近いからかしら? カナ-chanはお客-sanStageに上がらないようにしていたし……警備をしてくれていたBone Man -sanMikhail -sanのありがたみが今になってよく分かったわ)


 そう思いながら講演は終わっているのに、興奮冷めやらぬ-sama子で残っている聴衆の最前列を見るとそこにVandalieuがいた。

 相変わらず表情は動いていないが、握り拳に親指を立ててthumb's upしている。maybePaula Priestに縋りつかれている事も含めて、「流石kaa-sanだ」と思っているのだろう。


 ……これが逆の時はDarciaも「流石Vandalieuだわ」と思って見守っていたので、やはり似た者親子かもしれない。


Darcia -samaっ、私をpupilsにしてください!」

「いえ、それは……Priest -samaに私が教えられる事なんて……ええっと、どうしましょう?」

 いきなりBoundary Mountain Range内部の事を教える訳にはいかないし、【Familiar Spirit Adventskillは教えられるskillでは無い。religionを高め、日々の行いを神が唱える教義に近づけ、神と同調していく事で獲得する事が可能になるskillなのだ。

 つまり、敬虔なbelieverには「引き続き頑張って」としか言えないのである。


 だがこれはPaula Priestを、そしてMoksiVida believer達を反Aldaへ転向させるchanceである。

「分かりました、でも私は正式なPriestではありませんから……友人と言う事で良いかしら? これからも信仰について話し合いましょう」

 だから友人として受け入れる事にした。これなら、Orbaum Elective Kingdomでどの程度organization力があるのか、SlightlyはっきりしないChurch of Vidaも騒ぎはしないだろう。


「友人……はい、光栄です。Darcia -sama!」

-samaは、取ってくれないのね」

 感極まってDarciaを抱きしめるPaula Priestに、Darciaはその抱擁を受けながら(【Familiar Spirit Advent】に抑えて本当に良かった)と思っていた。


 もしAdventを願ったのがFamiliar SpiritではなくGoddessだったら、どんな大騒ぎになっていたか分からない。




 共同templeでは大勢の聴衆がVidaを讃える声が中々鳴りやまなかった。

 実はMoksiでは、先日のAlda Idol Statueの一部が崩れた事件で既にPaula PriestVida信仰のreputationを上げていた。

 AldaPriestscreechをあげてfaintedしている間、居合わせたPaula Priest人々を落ち着かせGuard隊に報告させ、panicが起きないよう陣頭Commandingに当たっていたからである。


 certainly Commanding自体はすぐ領主であるEarlの手に戻ったが、その後もPaula Priest人々を落ち着かせるために奮闘していた。それまでの誠実な人柄に加えて、緊急事態でもの為に働いた姿に多くの人々が感心していたのだ。

 そして今日のDarciaの講演で一気に盛り上がった。


 その盛り上がった共同templeから、青い顔をして足早に出て行く者達がいた。一人は、領主が放ったSpyの一人である。

(……とんでもないことになった。しかし領主-samaが今まであの親子の囲い込みに積極的に動かなかったのは、やはり正しかった)

 そう胸中で呟きながら、Spyは一刻も早く報告を届けるべく道を急いだ。


 Darciacharisma性や話す内容の物珍しさ、そして【Familiar Spirit Advent】の演出に惑わされずに内容をよく聞けば分かる。彼女がAlda Reconciliation Factionに好意的な派閥では無く、寧ろその逆である事が。

 Vida's New Racesは全て人として認識されるべきだとか、進んだ技術は取り入れるべきだとか、そしてDevil Nestsと戦うのではなく順応して生きようと言う考え方。


 全てが反Alda教だ。


 そして【Familiar Spirit Advent】をActivateさせてみせた。Darciaが反Alda Reconciliation Factionの旗頭になり得ると、Spyに確信させるには十分すぎる演出だった。

 串焼きFood Stallの売り子をしているDark Elfと言う立場では、【Familiar Spirit Advent】が使えても旗頭にはweakかもしれない。しかし、いざ動き出した時Dhampirの母親であると言う点が彼女のWeapon Equipmentになるだろう。


 これでもしIsaac Moksiが、DarciaVandalieuに対して既に親しい関係を結んでいたら、Alda Reconciliation Factionに対して友好的なAlcrem Dukeは「Moksi Earlは何か企んでいる」と疑われていただろう。

 Spyは主-kunKnight of the Insightを誇りながら、道を急いだ。


 それとは別に、決意を瞳に宿して進む者もいる。

「やってやる……俺だって、まだやれば出来るんだ。やってやる!」

 ボロ布を纏った男はそう繰り返し呟きながら、Slum街の方へと歩いて行った。


「畜生っ、話が違うじゃねぇか!」

「【Familiar Spirit Advent】なんて、話が違うぜ。Yosefにはこれ以上付き合えねぇ」

 そして最後の一組はGuardAggarとその仲間達である。彼らは誰かの命令ではなく、自分の意思で共同templeに集まっていたのだ。


 彼らが定期的にPriest達の説法を聞きに行く敬虔なbelieverだからではない。目当てはcertainly Darciaである。

 共同templeの中ならVandalieumonstersを連れ込めず、『Hungry Wolf』のMichaelとその手下達も姿を現さないだろうと考えたからだ。


 certainlyAggarIsaacが手を回したため既に上司から厳重注意を受けている。朝一番でGuard隊の隊長が訪ねてきて叱責され、最後に「もうあの親子には関わるな」と忠告されたのだ。

 そこまで不自然な事が続けば、彼も隊長より上のHuman……領主の意思を感じずにはいられない。


 そのため、このままちょっかいをかけ続ければ仕事を失う……下手をすれば物理的に首を斬られるかもしれないと、一旦は怖気づいた。だが、Aggarは「バレなければ大丈夫だ」と繰り返し賄賂を受け取っているGuardであり、彼の仲間もその同類だ。

 今回もそう考え、隊長の忠告を聞くという選択肢を選ばなかった。


 そんな彼だが、DarciaFamiliar SpiritAdventさせた事にはshockを隠せなかった。

「もし下手に手を出したら、こっちが返り討ちだ」

「噂じゃあ、Familiar SpiritAdventさせるとAbility Valuesがスゲエ事になるらしいぜ。幾ら女でも、そうなったら俺達じゃ敵わない」


 そうAggarの仲間達が零す愚痴の通り、【Familiar Spirit Advent】は使用者のAbility ValuesEnhanced (1)させるskillだ。そのEnhanced (1)が最も顕著に表れるのはManaだが、力やAgilityなどもEnhanced (1)される。

 そうなれば平均的なGuardとしての戦闘力しか持たないAggar達では、何十人集めても力づくでは敵わない。

 ……実際には、DarciaならFamiliar SpiritAdventさせるまでも無く、GuardどころかKnightが百人いても簡単に叩きのめしてしまうのだが。


 それを知らないAggar達は、「いざとなったら力づくで……」と言う手段が使えず、寧ろDarciaが反撃に転じたらどうにもならないと言う事実を受け入れなければならなかった。

 不意を突いて、skillを使わせる間もなく頭か急所に一撃を入れれば……と言うのは、Assassinの考え方であって彼らの目的ではないし。


「それに、手を出したらやばいんじゃないか? Divine Punishmentが下るんじゃ……」

 そして厄介なのが、psychological圧力だ。【Familiar Spirit Advent】は使用者に対して害意が無ければ、Godsしい奇跡であり、Godsの力を目で見る事が出来る絶好の機会だ。


 しかし Aggarのように使用者に対して害意があると、それはプレッシャーでしかない。しかも普段は忘れている絶対的強者、神に対するhorror心すら呼び起こす。

「び、ビビってんじゃねぇぞ! 俺は諦めないからなっ。Yosefから金も受け取ってんだ! 抜けるなら、勝手に抜けろ!」


 Vandalieu達の予想通り、Aggar達はSub GuildmasterYosefに金で雇われていた。仕事の内容も予想通り、彼に対する嫌がらせ……と言うにはやや度を越しているが……の手伝いだった。

 Aggarはそれに乗じてDarciaに手を出そうと企んでいたのである。


「そうは言ってもな、Aggar。幾らいい女でも【Familiar Spirit Advent】を使うような相手を、俺達がどうにか出来ると思うのか? 絶対あの女、【Familiar Spirit Advent】を使う前から俺達より強いぜ」

「何だとっ!? 女に俺が負けるって言うのか!?」


「お前こそ勝てると思ってんのか!? 【Familiar Spirit Advent】だぞ!?」

 一般に【Familiar Spirit Adventskillを使う事が出来るのは、厳しい修行を修めたClergymanHeroだけだと認識されている。

 そうした者達はAdventurer’s Guildの等Classに当てはめると、どんなに低くてもCClass相当になる。


 対してAggar達はAdventurer’s GuildならEClassからDClassの下位相当。Darciaの実力をどれだけ低く見積もっても、敵う訳がない。

「諦めようぜ、Aggar。俺達じゃ手が出せない女なんて今まで数え切れない程いたじゃないか。あの女もその一人だって事だよ」


「考えて見りゃあ、『Hungry Wolf』なんてヤバイ相手がちょっかいをかけてる女だしな。下手に手を出して危ない目に遭わなくて良かった。そう考えようぜ」


「隊長にも注意されたし……たしかにYosefの旦那には金を貰ったが、Guardを首になってまで協力する額じゃないだろ」

「くっ……」


 仲間達から口々に諌められたAggarの頭の中に、「そうかもしれない」という思いが浮かんだ。

 ここで諦めて暫く大人しくしていれば、今まで通りGuardとして勤めながらそれなりの収入と、小遣い程度の臨時収入を巻き上げられる生活に戻れる。Yosefから受け取った金も、返す義理は無い。

 別に何かを失った訳じゃない。ただ手に入らないものを諦めればそれでいいのだ。


(何をどうしたって、俺なんかには触れる事も出来ない……いや、待てよ)

 しかしAggarはこれなら上手く行くかもしれないと思える、tacticsの糸口を見つけてしまった。

「あの女、Slumの孤児院に寄付をしてたよな? 十年くらい前AldaPriestが、人身売買がどうのこうのと主張して俺達が踏み込んだあの孤児院に」


「ああ、そんな事もあったな。俺達は当時まだ新人で、見張りや荷物運びだけだったんでどうなったのか分からないけど」

「確か誰も捕まってないよな、あの騒動で。maybe、何も見つからなかったから当時のGuard隊の隊長が責任を取らされて、AldaPriestは黙って何も無かった事にしたんじゃないか」


 仲間達がおぼろげな当時のMemoryを思い出して、そう言う。AggarMemoryも、彼らと大差ない。Guardが孤児院に押し入って捜索したが、証拠は何も見つからず事件は証拠不十分で幕を閉じた。

 大半のの住人が忘れている事件である。


「それがどうかしたのか?」

「実はあの時、孤児院の合鍵を盗んでおいた。何かに使えるかもしれないって思ってな。この合鍵を使って孤児院の裏から入って、ガキを何人か攫う。

 そしてあの女のガキのDhampirに『孤児を無事に返して欲しけりゃ、monstersを置いて一人で来い』って呼び出す。そして捕まえたら、今度はあの女に――」


「お、おいおいAggar、幾らなんでもそりゃあ拙いぜ!」

「そうだっ、小銭を巻き上げるぐらいならその場を抑えられない限り幾らでも誤魔化せるし、女には口止めすればいい。でもそれは幾らなんでも誤魔化せないぞ!」


 慌てて止めようとする仲間達の声に、Aggarは耳を傾けようとしなかった。

「ビビるんじゃねぇ! 事が済んだら、容疑を全部『Hungry Wolf』のMichaelに被せりゃそれで済む! 所詮チンピラだ、痴情の縺れだとか何だとかでっち上げりゃこっちのもんだ。

 それでどうすんだ? 俺は一人でだってやるぜ」


 Aggarの言葉に、彼の仲間達は「本当にそんな都合良く行くのか」と思わないでもなかったが、やはり今まで何度も繰り返してきた悪事がバレなかった事で危機感が緩んでいたのだろう。

「そ、そうだな。分かったよ。協力するぜ」

 今回もヘマさえしなければ上手くいくのではないか。そう考え直してしまったのだ。


「へっへっへ、そう来なきゃな」

 Aggarは下卑た笑みを浮かべると、tacticsの詳細を話し合うために自分のroomへ向かうのだった。




 そのnightfilthy裏路地のFood Stall達は-sama変わりしていた。

「……何よ、これ?」

 いつものようにここで食事を済ませてから仕事に向かおうとしていた女は、目を丸くした。昨日まですっかり見慣れていたFood Stallが清潔になり、そして何故か明るいpink色のheart markが大きく描かれていたのだから、戸惑って当然だろう。


「……い、いらっしゃい」

 だが、やや引き攣った笑みを浮かべている店主は同一人物だったので女は安心した。

「何だ、親父-sanか。この店どうしたの? てっきり余所へ追いやられて、別のFood Stallが入ったのかと思ったじゃない」


「いや、ちょっと事情があってな……」

「事情って何? Food Stallも綺麗にしちゃって、しかもこのheart markVidaの聖印じゃない。あの串焼き屋の真似?」

「それは……お前の言う通りだよ」


「は、はあっ!? 本当に真似してんの!?」

「いいから食ってみろっ! どうせいつものだろっ」

 そう言って店主は常連客の女に、soupをよそって寄越す。女は戸惑いつつも、いつも通り器を受け取ると……中身を見て眉をしかめた。


「親父-san……香りは前より美味しそうだけど、この紫色をした具は何?」

 昨日までこのFood Stallで売っていた肉団子のsoupは、紫色の何かがが入ったsoupに変わっていた。

「味見はしてある。騙されたと思って食って見てくれ」


「それなら……見た目より不味くない!? 寧ろ、前より美味しい!? この紫色のも思ったより普通だし! 何なの、これ!?」

Goblinの肉だよ。何でも、あのガ……なんて言うか、ボスが言うにはGhoulCookingGobu-gobuって言うらしい」


「お姉-san、こっちはKoboldsandwichだ! 騙されたと思って食べてみてくれよ! 俺も驚くぐらい美味いぜ!」

「こっちは焼き肉だ。昨日までと同じ一包み一Baumだが、今日から中身はGoblinKoboldの内臓。しっかり処理したから、騙されたと思って食べてみてくれよ」


「ちょ、ちょっと。あたしは一晩で何度騙されたと思えばいいのよ?」

「おい、この客はまだうちのsoupを飲んでんだ。もう少し後にしろっ!」


 裏路地のGoblinKoboldの耳を刻んで混ぜた肉団子のsoupや、くず野菜と肉の切れ端のsandwichmouseや小魚などを纏めて炒めたSlum風焼き肉等、Slum風のCookingを売っていた店はGobu-gobusoupや、Kobolの葉で包んで蒸し焼きにしたKobold肉のsandwich、内臓の焼き肉を売る店に生まれ変わっていた。


 Goblinの肉は不味くて臭い。焼こうが煮ようがそれは変わらない。高価な香辛料をほど使えば普通の肉同-samaに食べられるようになるが……富豪でも無ければとても手が出せない金額になってしまう。


 しかし何処にでも生えている魔草であるGobubu Grassの汁に丸一日漬けこんだGoblinの肉は、色が紫色に変化し、あの臭みと不味さが抜け、表面がぬめっとしているし食感がSlightlyなるが食べられなくはない保存食、Gobu-gobuになる。

 GoblinKoboldの耳を刻んで強引に味を誤魔化した肉団子よりも、soupの具としては向いている。


 Kobold肉も、Koboldが近くに暮らしている場所にのみ生えるKobolの木の葉で包んで蒸し焼きにして臭さが無くなり、そして筋張って硬かった肉が柔らかく変化する。本来なら葉だけでは無くKobolの実の切り身も使うとより美味くなるのだが、それだととてもSlumの住人の手に届かない値段になってしまうので葉で包んだだけだ。


 しかし柔らかくなったKobold肉はタレや他の具材とよく馴染むため、硬く重い黒breadsandwichの具として優れている。


 そして実はGoblinの内臓はGobu-gobuと、Koboldの内臓は蒸し焼きと、同じ加工工程を踏む事で不味さと生臭さが抜けて、食べられるようになる。

 それを食べやすいSizeに切り分けた後更にsauceをかけて焼くと、Slum風焼き肉よりはずっと美味く……そして実は栄養のあるCookingになる。


 それ等のCookingは値段も量も以前と同じで、ややVandalieuの串焼きよりも安い。これならSlumの住人だけでは無く、物珍しさから歓楽街から迷い込んだ客も買って行くかもしれない。

しかし Vandalieu -sama、もう少し彼らから搾り取っても良かったのでは?』


 串焼きを焼くVandalieuChipurasがそう尋ねる。彼らのFood Stallが出すCookingの値段が以前と同じという事は、VandalieuGobu-gobuKobold肉の料金を、ただ同然の討伐証明やくず野菜や肉の切れ端と同じ値段しか受け取っていないと言う事である。


GoblinKoboldの肉は、普通の肉屋では買い取りを拒否される価値しかありません。加工も、俺がするのは最初だけで今後は彼ら自身にやってもらう事になりますし」

「お金は利益が出たらそこから少し貰う約束だから、大丈夫よ、Chipuras -san


『……普通、こういう場合売上から上納金を納めさせるのですが。売上から仕入れ値等経費を除いた純利益から、ほんの一percentとは、細やかだと思いますが……まあ、目的は儲けでは無く布教なら問題ありませんか』

 Food StallVidaの聖印を描いた事で、Slumの住人にもこのFood StallVandalieuの、そしてVida信仰と関わりがあると一目で分かるようになった。


 そのimpactは大きい。

 別に、これだけで熱烈なbelieverを獲得できるとは思っていない。食事をとった後のほっとした時間に短くても祈ってくれれば、ふとした時にVidaの事を思い出してくれればそれでいい。

 そうした細やかな信仰が増えて行けば、十分Goddessの力になる。


「他にも、Gobu-gobuKobold肉の蒸し焼きがGhoulの文化である事を広める事で、Ghoulmonstersでは無くVida's New Racesである事を公表する下地を作る一歩になりますし。

 ……まあ、この辺りのDevil NestsにはGhoulはもういませんけど」


adventurerの霊やMiles -san達に聞いて調べて、Talosheimに移住しないか陛下が聞いて回りましたからね』

 Princess Leviaが言ったように、Moksi周辺のDevil Nestsには、もうGhoulは一人もいないはずだった。

『後は、このVan -kuninfluenceの拡大?』

 VandalieuOrbiaにそう言われると、小さく息を吐いた。


「……本来はしないで良い事だったんですけどね。予定なら、三カ月目立たずFood Stallを営業するだけで良かったはずですし」

 考えてみれば、普通に表通りで問屋から普通に仕入れた肉で、普通よりちょっと美味しい程度の串焼きを売るだけで良いはずだったのだ。


 だが、商業guildYosefに目を付けられたのがDestinyの分かれ道だったのだろう。

「そうね。でも、kaa-sanはこの場所で良かったって思っているわ。その点だけはYosef -sanに感謝しても良いぐらい。お蔭でFangにも会えたし、孤児院の人達とも仲良くなったし、良い事の方が多いもの」

 そう言ってDarciaは、今日もFood StallshadowWatchdogをしているFangに微笑みかける。


「まあ、やる事は増えましたが俺も別に後悔している訳ではありません。FangMarollUrumiSuruga、晩御飯ですよ」

 焼いた後、適度に冷ました肉を串から抜いてひょいひょいと投げると、Fang達は器用に口でキャッチして食べ始める。


 その-sama子を、串焼きを買いに来た客達は微笑ましいものを見る目で眺め、楽しんでいた。


 大きいGreat giant ratMaroll達はまだRank2で、また珍しくないraceであるためTamer guildbranchがある交易都市Moksiでは忌避される事は無い。

 Brown Bearと同じ程度の危険度であるRank3のBlack DogFangは、普通ならどうしても忌避されただろうが……他者のhorror心を煽る【Dark Aura】を抑えているため、普通の大型犬と変わらないように人々には見えているのだろう。


「明日は私も一緒に狩りに行こうかしら。暫くGoblinKoboldの肉を大目に貯めておいた方がいいでしょう?」

「そうですね……Kobolの木は俺が生やせば良いですけど」

「ウォン!」




 -kunにしか出来ない、頼めない。断られたら我々は終わりだ、-kunだけが頼りなんだ。

 そう言った事を男は耳が腐るほど聞いて来た。そして、大体の場合自分以外でもどうにかなる事ばかりだった。

 今回も、彼でなくても事態を解決する事は可能なはずだった。


Adventurer’s Guildが見逃したMinotaur Kingとその群れの発生。神の試練とやらに『Five-colored blades』がかかりきりなのは分かるが、AClassやBClass adventurerをかき集めれば何とかなるだろうに。

 MinotaurKingが群れを作っても一か所に留まる傾向が強いmonstersだ。戦力を集める時間が無いはずはない」


 一人で歩いている男は、依頼を寄越したAlcrem Dukeの脂汗の浮いた顔を思い出しながらそう呟く。

 何でも、今から約一月前Devil Nestsの近くにある村が全滅した。々が焼かれている手口から、この辺りでは悪名高い『Hyena』のGozorofと言う人攫い一味がある村を襲ったのだとconjectureされ、Duke 家に仕えるKnight団の一隊が『Hyena』討伐の為に派遣されたらしい。


 しかし派遣されたKnight団は帰って来ず、それどころか全滅した村の近くにあるDevil NestsMinotaur Kingが率いる群れが存在すると判明した。


 そしてKnight団は前Alcrem Dukeの末の娘、つまり現Alcrem Dukeageが父と娘程も離れた腹違いのImoutoが率いている……いたらしい。

Dukeにその気はなかっただろうが、飢えた獣に格好の餌をやってしまった訳だ」

 それが分かったAlcrem Dukeは、偶々連絡がついた彼にこう依頼した。


『まさか-kunに連絡が付くとは……これは神のおぼしめしに違いない。どうかMinotaur Kingとその群れを討伐してくれ、そして私のImoutoがもしまだ生きていたら……どんなconditionでも処分してくれ』

 Knight団の実力は低くは無いが、MinotaurOgreの上位種だ。そのKingに率いられた群れとなると……『Hyena』討伐とは話が違い過ぎる。


 それで一カ月も音沙汰なしとなれば、どうなっているか想像するまでも無い。


「奴の先祖には世話になったし、口止め料は大金だ。悪い話じゃないが……継承権を放棄したImoutoMinotaurに孕まされたぐらいで傷つくほど安いものなのか? 奴が大事にしているDuke 家の名は」

 どうせなら、自分に払う口止め料で高額なpotionを買い、一流の治癒術士を雇い、辛いMemoryを忘れる事が出来る希少なmagic itemを製造して、治療してやれば良いだろうに。


 それでも気になるなら世俗を離れた修道院に入れるとか、色々あるだろうに。


 そう思わなくもない。


「だが……どうせ他人事か」

 表向きは一線を退いた事になっている、そして本人も隠遁したがっているSClass adventurer、『TrueRandolphは弓矢を背負い、手には細身の剣を下げて、独り言を呟きながらMinotaurの群れが存在するDevil Nestsへ足を踏み入れた。


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