Vandalieu達が無事YosefとAggarの下らない企みを乗り越えた頃、歓楽街のSlumの間にある名も無い酒場にある男が飲み仲間……に見せかけた手下達と共に入店した。
「いらっしゃ～い……」
やる気の無さそうなウエイトレスに、見かけは強面だが腕っぷしは素人同然の用心棒、そして何故首にならないのか不思議なほど愛想が無い上におしゃべりなBartender兼Chef。
客も発酵しすぎなのを水で割って誤魔化している安酒で満足するような連中ばかりだ。
「ご注文は？ 悩んでいるなら今日はSlumカクテルをお勧めするぜ。他の店から恵んでもらった残り物の酒を混ぜ合わせたもんだが、tonightの配合は大当たりだ。極楽間違いなしだよ」
そんな店のバーテンが、陰気な口調でペラペラと話しかける。男はそんな無駄話に付き合わず、注文を口にした。
「特製の赤wineと羊のcheeseのセットを一つ、大盛りで。飲み仲間と分ける」
「……それは、切らしていましてね。白wineと普通のcheeseならあります」
「いや、赤wineと羊のcheeseだ」
「分かりました。奥の個室へどうぞ」
そして男達は案内された個室に入ると、そこは簡素なtableとイスが置かれているだけで窓一つないroomだった。だが男の手下が壁に隠されたswitchを押すと床に地下への階段が現れた。
「行くぞ」
「へい、『Viper』のエーキッド-sama」
男の名は『Viper』のエーキッド。Alcrem Duchyの裏社会では、『Hyena』のGozorof同-samaに少しは知られた男だ。
そして彼は、Gozorofと同じように名も無き犯罪organizationの下部organizationのボスで、この地下への階段の先に在るのがorganizationの本部だ。……少なくともエーキッドはここが本部だと説明されているし、organizationの首領や他の下部organizationのボスと会ったのも、此処だ。
(俺が教えられているのが正しい情報とは限らないし、会ったボスがshadow武者では無く本人である確証はない。我ながら、よくここまで得体の知れないorganizationに身を置いているものだな)
そう自嘲しながらも、エーキッドはorganizationに対して不満は無かった。原材料の栽培と麻薬のRefining、売買のルートに捜査の情報。organizationが提供してくれるものは多い。
certainlyエーキッドが上納している金額も大きいが……手元には十分な金が残る。
だから不満は無い。……ほんの少し前までは。
「ようこそ、『Viper』のエーキッド-dono。首領はこの奥でお待ちです」
地下への階段を下り、通路を進むと一人の女がエーキッド達の前に現れた。最近首領が近くに置いているBeast raceの女で、名はベル。新しい秘書兼Loverだろうと噂されている。だが護衛でもあるのだろうとエーキッドは見ていた。
豊満な胸や腰の形が分かる薄い布製でしかも深いslitのあるイブニングdress姿は、秘書では無く高Class Prostituteの類にしか見えない。
しかし肩にかからない程度に揃えられた髪や怜悧な瞳、そして隙のない立ち姿から自分と同じか、匹敵する腕利きだとエーキッドは彼女の実力を見抜いたつもりになっていた。
「ですが、その前に用件を伺ってもよろしいですか？ 火急の要件としか聞いておりませんので」
Jungle Monkey-species Beast raceの特徴であるフサフサとした長いtailを襟巻のように首に巻いて、ベルが問いかける。
「certainly首領の貴重な時間を無駄にはしません。ですが、非常に重要な要件ですので……直接首領の耳に入れたいのです」
エーキッドは薄く微笑むと、そう言って答える事を拒否した。
「……分かりました、ほかならぬエーキッド-donoがそう言うのでしたら。こちらです」
ベルは暫く黙りこんだ後溜め息をつき、諦めてエーキッド達に奥へ進むよう促した。手下達の視線が一人を除いて、彼女の白い背中とtailの下の歩く度に揺れる尻に張り付く。
だがエーキッドは先を進むベルに素早く近づくと、そのtailを強引に掴んだ。まさか首領の秘書兼Loverである自分に対して、下部organizationのボスがこんな真似をするとは思わず意表を突かれたのか、ベルに避ける素振りは無かった。
ただ彼女の肩がビクリと震えたのが、エーキッドには分かった。
「首領のお気に入りか何か知らないが、良い気になるなよ。猿女が。首領が今まで何人の女を使い捨てて来たと思っている？ お前も飽きたらその仲間入りだ。
今のうちに俺へ精々媚を売っておくんだな、そしたら下げ渡されても大事に使ってやる。この邪魔なtailは切り落とさせてもらうがなっ」
tailを引き抜くように力を入れてそう脅してから、エーキッドは手を放した。
「……こちらです」
対してベルは何事も無かったかのように案内を続けようとする。しかし、そのただでさえ白い顔からbloodの気が失せて青くなっている事をエーキッド達は見逃さなかった。
多少溜飲が下がったエーキッドは口元に再び薄笑いを浮かべると、それ以上はベルに手出しせずに案内を受け入れる。
そして程なくして、大きな扉の前に着いた。それまでの間、他のorganizationのmemberには一人も会わなかった。
本部とは言ってもボスが常にいる訳では無く、またここに手入れが入る事はまず無いため大勢の見張りや戦力を置いておく必要がないからだ。
もしかしたらエーキッドが知らされていないだけで、何処かに金庫があってorganizationの会計係たちが事務仕事をしているのかもしれないが。
「……ベルです、『Viper』のエーキッド-donoをご案内しました」
『入りなさい』
ベルが扉をノックすると、中から女の声で入るよう促される。
扉の向こう側は、広い会議室になっていた。しかし、roomで待っていた人shadowは三人だけだ。
「エーキッド、火急の用件との事だが……随分と機嫌が良さそうだな」
白い髭を蓄えた、しかし服の上からでも分かるほど鍛え上げられたBodyを維持している老人が、玉座を思わせる椅子に腰かけている。この老人が首領である。
そしてその左右と後ろに立っている護衛の女達だ。
右の女は美人でベル程ではないが肉感的な体つきをしている。見た目のageはベルや他の女達よりも確実に上だが、それを衰えと感じさせない艶がある。だが妙に存在感が薄く、生きているsignを感じさせない。
対して左の女は、キツそうな美貌の赤毛の美人で二十age程。Monsterの皮を使っているらしい皮鎧を身に着け、長剣を腰に下げている。
そして二人揃って首にチョーカー……首輪を嵌めている。首領が何処かから調達してきたSlaveかもしれないと、エーキッドは思った。
そして首領の後ろに立って控えているのが、ElfのShoujoだ。女達の中では最も地味な雰囲気だが、容姿は整っておりBishoujoで十分通じる。見るからにきつそうな赤毛の女や、何処かケバケバしい年増の女よりも、彼女の方が好みだと言う男も少なくないだろう。
ただ武装していないので護衛には見えず、格好も粗末な訳ではないがLoverらしくない。そして首輪も無い。もしかしたら、彼女はElfの女に産ませた首領の隠し子ではないか。そんな噂が流れているのを、エーキッドは知っていた。
そうroomにいる自分達以外の者達を素早く観察した彼は、それを首領に気取られない内に一礼した。
「はい、畏れながら……organizationの運営と人事について確認したくて参りました」
「それが、火急の件か？」
「certainlyです。私の麻薬ビジネスを拡大する計画に突然待ったをかけたのは何故です？ 辺境の村を乗っ取って、村丸ごと麻薬の製造所にする計画……何処に不備があったのですか？」
エーキッドが練った計画では、peddlerが年に一回か二回しか来ないような辺鄙な村を武力で乗っ取り、住人をSlaveにして麻薬の栽培とRefiningを行う拠点にする予定だった。certainly peddlerは商業guildの方から手を回して、organizationの息がかかった者に替え、行商に見せかけて麻薬の密売を行う。
上手く行けば、数年も経たずにAlcrem Duchy内に麻薬の一大Production地が出来るはずだったのである。
その計画を首領が急に待ったをかけた。取り締まりが厳しくなるとか、他のorganizationがちょっかいをかけて来ているとかなんとか言って、落ち着くまで-sama子を見るようにと。
エーキッドが持っている情報網では、取り締まりのEnhanced (1)やちょっかいをかけてくる他のorganizationに関する情報は無かったと言うのに。
「訳は話したはずだが、儂の指図が信用できないと？」
「はい。それだけではありません。最近、随分と『Hyena』が大人しいそうではありませんか。他にもいくつか休んでいる下部organizationがあるようですね」
「……他の下部organizationには、他の事情がある。いちいちお前に了解を得なくちゃならない理由でもあるのか？」
何処か平坦な口調の首領の横で、護衛の女達が剣呑な視線をエーキッドに向ける。特に年増の方の女は、それまでの存在感の薄さが嘘のようだ。
「それに……『Hungry Wolf』のMichaelと言うのは誰です？ 表を任せたようですが、そんな男今まで聞いた事もありませんよ。
……聞いた話じゃ、そこのベルや左右の女共が最近は首領の代わりに指図しているそうじゃないですか。このままじゃ、とても以前と同じように信用しきれませんよ」
「エーキッド、勘違いするな。お前が儂を信用できるかは重要じゃない。儂がお前を信用するか否か。それがすべてだ」
そう、首領の言う通り犯罪organizationとはそう言うものだ。しかし、エーキッドは首領のその一言を聞いて決心を固めた。
「そうですか……じゃあ、今日で手下を止めさせてもらいます！ お前達、受けとれ！」
連れていた四人の手下達に向かって、エーキッドは手を掲げた。その指にはまっていた指輪が僅かに輝くと、突然剣や斧、短槍が現れる。
「itemボックス！？」
「エーキッド-donoっ、裏切るつもりか！？」
ベル達の叫びを聞いて、エーキッドは胸が躍る気分だった。短い間に変わり過ぎたこのorganizationを、エーキッドはこれ以上信じる事が出来ない。出来ない以上、生き残るためにはorganizationから離れるか、乗っ取るかだ。
そのために準備を整えた。腕利きを集め、首領の前にはあからさまに武装していたら立てないだろうから、Weapon Equipmentを持ちこむためのmagic itemを購入した。
四人連れて来た手下の内三人は、麻薬に溺れるか借金で道を踏み外したＣClass adventurerや、それ相当の実力がある者達。
そして最後の一人は、元ＢClass adventurerで依頼主を殺す等悪事がばれて賞金首になったが、今まで何人もの賞金稼ぎを返り討ちにしてきた『賞金稼ぎHunter』のAbelだ。
エーキッド自身も、それなりに腕に覚えがある。この場でorganizationを乗っ取る事は出来なくても、暫く行動不能になる程度のDamageは与えられるはず。
その隙に自分の麻薬売買organizationは独立し、態勢を整えるのだ。
その野望の成就を約束する光景……首領のbody partに手下達のWeapon Equipmentが振り下ろされるのを見て、エーキッドは喝采を上げた。
「ハッハ～っ！ 女共、降伏するなら命だけは助けてやるぞっ！ そっちのベル共々飼って……あれ？」
だが手下達の内三人、ＣClass adventurer相当の実力があるはずのWeapon Equipmentは、実際には首領のbody partを傷つけていなかった。
「な、何だ、こりゃっ！？ magicのBarrierか！？」
「俺の必殺の【Iron Slash】が、全く通用しないだと！？」
何と首領と後ろのElfのShoujo……Melissaを包むようにして、透明なBarrierが張られていたのだ。
「守り甲斐の無い首領よね」
「大きな傷を負うとLife-dead conditionを維持できなくなるので、そう言わないでください」
そう暢気に会話するMelissaと『首領』。二人に向かって部下達は必死に攻撃を繰り返すが、全て彼女の【Aegis】に防がれていた。
そしてエーキッドの切り札であるAbelは……護衛の女二人の剣を同時に受けて、bloodを撒き散らしながら床に倒れたところだった。
「ちょっとっ、何であなたもこいつを狙うのよ！」
『一番強そうだからに決まっているでしょう。まあ、雑魚に違いはないけど』
「まあ、良いわ……【無限thrust】！」
そして残りの三人も、赤毛の美女……EleonoraのcountlessのthrustをHigh-Speedで放つSword TechniqueのMartial Artsを受け、blood飛沫を上げてこと切れた。
『あぁっ！ 一人ぐらいは生かしておきなさいっ、【Torture】の腕が鈍ったらどうしてくれるの』
「この程度で鈍るならそれまでの腕と言う事よ。それにTortureが必要なのは、そこで突っ立っている男でしょう？」
『生意気な事を……まだ【Sword Technique】のままSuperior SkillにAwakeningできていない分際で』
「くっ、痛いところを～っ！ もう少しで何かが掴める気がするのよ！」
なす術もなく手下達が全滅したのを目の当たりにしたエーキッドは、呆然と立ち尽くした。頭の中が事態の変化について行けず、思考が完全に止まっている。
何せ元ＢClass adventurerの賞金首が一人と、ＣClass adventurer相当が三人だ。それが苦戦する程度ならまだしも、時間稼ぎも出来ずに全滅するなんて、彼の想定には無い事態である。
「お暇なようですね。では、私がお相手致しましょう」
そのため、ベル……Bellmondのtailがヘビのように自分の脚に巻きつくのを回避する事が出来なかった。
「なっ、この猿女がべっ！？」
Bellmondは巻き取ったエーキッドを、tailの力だけで持ち上げて天井に叩きつけた。
そして数秒の間を置いて、今度は床に叩きつける。そして再び天井へと、エーキッドは何度も天井と床を往復させられた。
「かっ……かがっ！？ ぐえっ！？ ごっ！？」
見る見るうちにエーキッドは若き野心家で麻薬organizationのボスから、瀕死のinjure人へと加工されていく。
「これは頂いておきますね」
そして顔の判別が難しくなった頃に、Bellmondはやっとエーキッドの指から指輪を抜き取り、代わりに捻じ曲がった脚からtailを解き解放した。
tailを解かれ、ゴミを捨てるかのように放り出された彼を見て、Melissaは口元を引き攣らせ、Islaは逆に綻ばせる。
「これ、死んだんじゃないの？ たしかこいつって、生け捕りにする予定だったはずだけど」
『Melissa、こいつはまだ辛うじて生きている。ＤClass adventurerぐらいになると、この程度ならすぐには死なない。このworldのHumanのタフさにまだ慣れていないようね』
Islaの言う通り、エーキッドの胸は弱々しいが上下していた。potionやmagicを使って治療すれば、まだ助かるだろう。
「……どうにも、普通のHumanだと『Earth』や『Origin』の常識で考える癖が抜けないのよね。monstersやあなた達は平気なのだけど」
「Melissaはこっちに来てから対人戦をあまり経験していないから、仕方ないわよ。そのうち嫌でも慣れるわ。
それより、itemボックスっぽい指輪はどう？」
Eleonoraに問われたBellmondは、エーキッドがしていた指輪を暫く見た後、首を横に振る。
「残念ながら、itemボックスの粗悪品です。出し入れできる荷物の量は、数人分のWeapon Equipmentが限度でしょう。それでも高額ではありますが」
「……凶器を持ち込むのに丁度良いmagic itemとして、こいつが手に入れていたのかもしれないわね。不意打ちには効果的だったかも。
それより、随分荒っぽいやり方だったけどどうしたの？」
「ええ、あなたにしては執拗だったし。力加減はしていたようだけど……何かあったの？」
MelissaとEleonoraに問われたBellmondは、再びtailを襟巻のように首に巻きつけると微笑を浮かべた。
「いえ、特に何も」
その答えを聞いて、二人はエーキッドがBellmondの逆scaleに触れてしまったのだろうと察した。
(maybe、tail関係だわ)
(それ以外にないわね)
そうアイContactして頷き合う二人の後ろ、『首領』の背後からモコモコした一つ目の生物……『首領』の口を操っていたDemon King Familiarが出て来る。
『では、こいつは治療後尋問を行い、その後彼のorganizationを壊滅させるときに利用しましょう。皆、お疲れ-samaでした』
会議室の隠し扉から【Demon King Fragment】の移植Surgeryを施されたorganizationの構成員……『Hyena』のGozorofを含めた怪人達が新たな同類を処置室へ連れて行く。
エーキッドはこれから法で裁かれる事だけは無いが、自分がしてきた悪事を永遠に後悔しながら存在し続ける事になるだろう。
「ところで旦那-sama……次はこの秘書兼Loverと言う設定は止めませんか？ 何があったとは言いませんが」
Bellmondの訴えに、Demon King Familiarの瞳が遠くを見つめた。
『首領の女と言う事にしておいた方が、ちょっかいを出す人はいなくなるだろうと思ったのですが……実際は上手くいっていないみたいですね』
そしてEleonoraやIsla、Melissaに視線を向けると彼女達も頷いた。
「私は一回声をかけられたぐらいね。maybe、『首領』の情報を探ろうとしたんじゃないかしら？」
『ふふ、私は五回よ。小娘とは女としての魅力が違うようね』
「甘い言葉を囁けば簡単に抱き込めそうに見えるのが魅力なら、確かにそうかもしれないわね」
『……小娘、今度実戦形式のSword Techniqueの稽古をつけてあげるわ。時間を空けておきなさい』
「ちょっと止めて。二人が実戦形式の稽古なんてしたら、この地下hideoutが崩落するわ。
それと私は普段から『首領』の近くにいるから声を掛けられたり、いきなり肩や腰に手を回されたりすることは無かったわ。……ただ、何故か『首領』の隠し子だって噂が流れているようだけれど」
三人の言葉を聞いて、Demon King Familiar……Vandalieuは「このtactics、次からは本当に止めた方がいいかもしれない」と思い直していた。
どうやらorganizationの結束が緩むと、下剋上を狙う男達の目に首領の女達はトロフィーか何かのように映るようだ。
『次に機会があったら、もっと慎重に考えましょう。まあ、下剋上もそろそろ終わりでしょうけれど』
「そうですね……そろそろ下部organizationの幹部が居なくなりますから。残っているのは、『Brown Rat』と『Vulture』の二人です」
『Bellmond、何なのその『Hyena』以上に嫌な響きのsecondary nameは。どんな連中なの？』
Islaが嫌そうに顔を顰める。Vampire Zombieだからか、死骸を食べる生き物に苦手意識があるのかもしれない。
「『Brown Rat』は乞食の元締めで、独自の情報網を持っている老人です。Moksiの町では無く、根城は他の交易都市なので姿を現す事は無いでしょう。又、当人もたいした悪党ではありません。
『Vulture』は、盗品を扱う闇市の元締めです。これも、Moksiの町には居ないのでここに現れる事は無いでしょう」
「端役が生き残ったと言う事かしら。ところで、このorganizationって何で幹部は動物のnameのsecondary nameを名乗っているのかしら」
「さあ。単に、多くの人に知られている動物のnameがsecondary nameとして付きやすいだけかも知れません」
『……この辺りってどちらかと言うと北国ですけど、Vultureっていましたっけ？』
このorganizationの下部organizationには『Hyena』のGozorofのような人狩りやmountain bandit行為を行う者達や、mercenary団、Assassinのorganizationが存在していたが、今はもう無い。
Vandalieu達が潰したからである。
最初は情報を収集するだけにするつもりだったのだが、先程のエーキッドが企んだ村の乗っ取りのような悪事を企んでいたので、「これは流石に見逃せない」と手を引かせた。そして言う事を聞かないなら即座に潰し、エーキッドのように下剋上を狙う連中は返り討ちにした。
そして残ったのが、犯罪organizationの下部organizationとしては穏当な部類の『Brown Rat』と『Vulture』だけという現状である。
「話は変わるけど、『Viper』の治療にBlood potionを使っていないわよね？ 彼がHell raceになって逃げ出したら面倒な事になるかも」
Melissaは同じReincarnatorのDougを含め、Vandalieuの一部を口にしたHuman達が新raceに変異するのを直接見ていた。彼女はそれと同じ事がエーキッドの身にも起きるのではないかと危惧したのだ。
『その心配はないわ。あなたが帰って来る前に捕まえた下部organizationの連中の内、何人かで試したから。Vandalieu -samaの貴重なbloodを飲ませても、【Demon King Fragment】を直接埋め込んでみても、新raceに変異する事は無かったわ。……怪人にはなったけれどね』
生きているHumanに【Demon King Fragment】製素材を移植した結果出来る、egoの無い肉人形『怪人』。Vandalieu's Fragmentを与えられたと言う意味ではDougやLuciliano達と同じではあるが、全く異なる存在だ。
犠牲者がそれに変化する際にあげる絶叫を思い出したのか、Islaの口元に喜悦が浮かんだ。
「ああ、『Viper』を連れて行った怪人はそれだったの。……じゃあ、大丈夫そうね。でも、Dougと『Viper』の何処が違うのかしら？」
「……麻薬売買で儲ける為なら何でもやる変態外道と同じ分類にするのは、止めてあげなさい。人格では無くraceや体質の事だと分かっていても、良い気分はしないと思いますよ」
考え込むMelissaに、Bellmondがそっと忠告する。どうやら、彼女の中でエーキッドの評価は地の底にへばりついたまま固定されているようだ。
「違い？ 決まっているでしょう。Vandalieu -samaのGuidanceを受けているかどうかよ。Vandalieu -samaに身も心も捧げた者だけが、新たなるStageに進む事が出来るのよ！」
考え込むMelissaにEleonoraが興奮気味な-sama子でそう断言する。以前だったら、そんなMental論は信じない彼女だったが、「そうかも」と頷いた。
「このworldではStatusが存在して、『Guidance』はそのStatusにimpactを与えるのだから、Mental論はMentalだけの問題にとどまらない。変異するかどうかの結果にimpactを与えてもおかしくないわ」
『Melissaの言う通りかもしれませんがその言い方は止めましょう、Eleonora。cultっぽいです。
後、身と心までは捧げなくて良いですし』
Melissaは同意したが、VandalieuはEleonoraの説明に危険な響きを感じ取ったらしい。毛玉が小刻みに揺れている。
「まあ、Vandalieu -samaったら相変わらず謙虚なんだから。
ところで、話は変わるけれどBirkyneの息がかかっているorganizationはまだ動いていないのよね？ Vandalieu -samaがDhampirである事を明かして約一週間。もう情報が届いていてもおかしくないはずだけど」
突然真剣な顔つきになったEleonoraが、Vampireとしての親であるBirkyneのnameを出す。
『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaを奉じるPure-breed Vampire最後の一人であるBirkyneは、現在 Bahn Gaia continentのVampire organizationを纏めている。そのorganization力はこのMoksiの町には及んでいなかったようだが、Alcrem Duchy内の他の町には彼の手先が居るはずだ。
人の行き来が激しい交易都市でVandalieuが正体を明らかにしたのだから、そろそろ彼の手先の耳に届いているはずだが……。
『今のところ、町に入ったVampireはいないようです。城壁の一部を勝手に監視用Golemにし、町の周辺に監視用Undeadを配置して警戒していますから。霊達も、怪しい者は領主のSpyやYosefの手先以appearanceつけていないようですし』
「まだ機能させている下部organizationからの情報にも、それらしい者はいませんね。そもそもEleonora、あの男の手口はこの中ではあなたが一番詳しいはずですよ」
『何か知らないの？ あなた、奴のお気に入りだったんでしょう？』
BellmondとIslaに問い返されたEleonoraは、「それはそうだけど」と言いながら苦笑いを浮かべた。
「お気に入りと言っても、別にorganization内で大きな役割を果たしていた訳じゃないのよ。単にBirkyneの直属ってだけ。部下もいなかったしね。
Bellmondはともかく、Islaならこれぐらい知っているでしょう？」
『そう言われても……私が生きていた時は自分達以外の派閥の事情は中々探れなかったのよ。そもそも、私ぐらいの大幹部になるとBirkyneのお気に入りは興味の対象ではなかったし』
この辺りが将来有望とされつつも一VampireでしかなかったEleonoraと、Pure-breed Vampireの腹心としてsecondary nameを与えられたIslaの違いだろうか。
なお、BellmondはVampireになってからの時間の殆どを、地底湖にあったTerneciaの隠れ家の管理人として過ごしていたので当然何も知らない。
『Miles達主だったVampireが居なくなったGubamonのorganizationを再編するのに、思った以上に手間取っているのかもしれませんね。
若しくは……実はもうBirkyneの手の者が町に居るのかもしれません。Vampireでは無く、悪事も働かず、そしてBirkyneの手先である自覚も無い。そんな奴が』
ふと思いついた事をVandalieuがそのまま口にすると、Melissaが「なるほど」と頷いた。
「ある人が他の町に居るfamily宛に町で起きた出来事を書いたletterを出す。その何の変哲もないletterを受け取るfamilyはVampireの手先になっていて、知らずに情報を流してしまっていたとか、そうした手口ね。それなら情報網には引っかからないわ」
『……Birkyneが好みそうな手口だわ。あいつ、ナルシストの気があるようだったから、そうした頭が良さそうに見える搦め手が好みの筈よ』
『いや、ただの思いつきですよ？』
「そんな事無いわ、Vandalieu -sama。改めて考えると、鉱山に売られたSlaveだった私をどうやって見つけたのか分からないのよ。適当に集められた訳じゃなかったし。
だからHumanの手先が人を集められそうな色々な場所に紛れ込んでいるはずだわ」
Eleonoraのconjectureが正しければ、Birkyneは既にVandalieuがMoksiの町に居る事を知っている。そしてその上で何かを企んでいるはずだ。
その企みがVandalieuから逃げ隠れして生き延びる事だったら、この誘きだしtacticsは失敗だが……機会を伺って攻撃してくるつもりだとしたら――
『やはり、もっと町の警戒網を厳重にしないと。皆も、注意してください』
「はい、Vandalieu -sama！」
「……ああ、忘れていました。あのYosefやAggarについてはどうします？」
『それどころではないので、放置で。商業guildのSub Guildmasterに今以上の嫌がらせが出来るか分かりませんが、やり過ぎるようなら領主が何か手を打つでしょう』
Moksiの町から離れた何処かの闇で、Birkyneは報告書を読んでいた。
「良い兆候だ」
彼はEleonora達のconjecture通り、VandalieuがMoksiの町に来ている事を知っていた。他にも『Hungry Wolf』のMichaelの正体を、報告された容姿からGubamon派の配下だったMilesだと見破り、Darciaと名乗るDark Elfを連れている事も。
疑問は尽きなかったが。
「Milesを手懐けたのはともかく……彼は何故日の光を浴びても平気なんだ？ 前、『Fifteen Evil-Breaking Swords』との戦いでは短時間だからmagicやmagic itemで説明できるが、今は昼間から町の裏通りをうろついている。まさかValenと同じ【Sunlight Resistance】skillを獲得していたのか？
それに彼の母親のnameを名乗る女Dark Elf。何者だ？ 母親の死体は火炙りにされて灰になったはずだからUndeadではないだろうし……母親の故郷で、親類から良く似たDark Elfでも連れ出したのか？ だとしたら、いったい何のために？」
十万年以上生きているPure-breed VampireであるBirkyneの知識をもってしても、まさかVandalieuがMilesをAbyss Noble-bornに変異させていたとは、発想出来なかった。
しかしもう一方の謎には見当がついた。
「いや、彼女は母親本人か。Boundary Mountain Rangeの何処かにZakkartの遺産が保管されているとしたら、『The root of life』が残されているかもしれない。それを使って蘇生させたのか……」
VidaとAldaの戦いが始まる前は、BirkyneもVida believerのPure-breed Vampireの一人だった。そのため、ある程度Boundary Mountain Range内部に何があるのか想像する事が出来る。
「となると、やはりVandalieuと事を構えるのは正解では無いな。やはり、もう少し-sama子を見よう」
「何もしなくてよろしいのですか？ 手先の者を使うなり、新たに操っているHumanを送り込むなりして、計画を進めては？」
腹心の一人、Dwarf出身のNoble-born VampireであるMortorが進言するが、Birkyneはそれに対して「何もしない事が肝要なのさ」と答えた。
「Moksiに彼が現れたのは偶然だが、何処で当たりを引いても良いように仕込んでおいたからね。後は何もしなくても僕の可愛い人形はVandalieuにすり寄って行く。自然に、下心無く、純粋に。
今までの調査で分かっているじゃないか、Vandalieuはお人好しだと。なら、彼は私が何もしなくても人形を思いやり、助け、例え真実に気が付いたとしても見捨てられない程親しくなるだろう」
Birkyneはそう言って、笑いながらwine glassを手に取った。
「その時だよ、僕達が手を出すのはね」
そしてglassに注がれた紅い液体を呷った。
そしてIsaac Moksi Earlはnight遅く、執務室で聞いたSpy達からの報告に頭を抱えてscreechをあげた。
「何を考えているんだ、あのクソ叔父は！？
Guardの方には直属の上司から厳重注意！ 逆らうようなら他の町に飛ばしてやる！ 叔父貴の方にはletterを書く！ letterは直接渡して、奴が読んだ事を確認し、読む事を拒否するか、万が一読まずに破り捨てたら不敬罪でも何でもでっち上げてしょっ引いて来い！」