戻ってきたVandalieu達の凱旋を、集落に残っていたGhoul達は歓声で出迎えた。
前もって集落の拡張もしていたが、囚われていた百人以上の女Ghoulが増えたので許容人数をオーバーしてしまった。しかし、誰もそんな事は気にしていない。
そして助けた女Ghoulや女adventurer達を休ませ、自分の足で歩かせた食料や戦利品のUndead Transformationを解除した後本格的なDismantling作業を行う。
Kobold MageはtongueとeyeballがAlchemyの素材に。Kobold Generalはfurが鎧や服の材料に、fangsがknifeに成る。
通常のOrcは肉しか取れないが、Orc Generalは腱が弓の弦の良質な材料に成る。そしてOrc Mageはtongue、eyeball、liverがAlchemyの素材に成る。
そしてNoble Orcは、全てが素材に成る。肉は食用に、内臓はAlchemyや薬の素材に、皮は皮革製品に、boneはDefense EquipmentやWeapon Equipmentの材料に、性器や睾丸はVigor剤に、そこだけは美しい金髪も防刃繊維として服に編み込んで使うらしい。
そして、certainly Magic Stone。
もしAdventurer’s Guildに持って行けば、かなりの金額で買い取ってもらえただろう。
「ウフフフ、素材~そざっい~何を作ろうかしら~♪」
Dismantling用のknifeを器用に使い歌いながらBugoganをバラバラにしていくTareaの-sama子を見ながら、猟奇的だけど楽しそうだなぁとVandalieuが思っていると、クルリと彼女が振り返った。
「そういえばVan -sama、Van -samaはこの後どうなさるの?」
顔の横にbloodと油で滑るknifeがあるのでとても猟奇的だが、彼女はVandalieuのこの後の身の振り方を気にしていた。
GhoulのKingは、複数の集落にとって共通の敵が存在する間だけ選出されるまとめ役で、GoblinやKoboldのKingの-samaなrace名では無い。
そのため、Noble Orcを倒し敵対勢力を消滅させた今Ghoul Kingで居続ける意味も、この集落にGhoul達が留まる理由も無い。Tarea達も元の集落に戻り、今までと同じ日々に戻る事に成る。
(だからこそ、ここでVan -samaを連れて帰らなくては!)
っと、内心企んでいるTareaにVandalieuは答えた。
「その事なんですけど、明日話したい事があります」
「えっ!? 私だけに二人きりで話したい事がっ♪」
「いえ、皆に」
「……そ、そうですわよね。ほ、ほほほ……」
その日の夕食は戦勝を祝う宴と成り、Orc肉の串焼きやsoupでGhoul達はお互いの健闘を称えあった。特にOrcに囚われていた女達のappetiteは凄まじかった。
これまで食い物にされた恨みを晴らすかのように、Orcの肉を貪っていく。
死ぬ事だけを望んでいたはずの女adventurer達ですら、旺盛なappetiteを見せていた。今の彼女達はGhoul化してVandalieuのFollowersに成る事だけを望んでいるため、Zadirisの「ある程度Enduranceを付けんと、儀式に耐えきれんぞ」と言う言葉が効果的だったようだ。
まさか、Humanでも生きる希望を無くして死を心から望む場合は【Death-Attribute Charm】skillが有効だったとは、Vandalieuも思わなかった。
「今Earthに居たなら、自殺の名所の横に立っているだけで、友達を増やせそうな気がする」
まあ、それを実際にやると何時の間にか新興宗教の教祖にされそうだから、実際にはEarthに居てもやらなかっただろうが。
そんな事を考えながら、VandalieuはNoble Orcの串焼きにtongue鼓を打っていた。
Devil Nests産の果物や香草を使用したタレを付けて焼いた肉は、一口齧るだけで肉汁と蕩けるような脂が口の中に広がり、しかしタレのお蔭で後味はさっぱりしていて、幾らでも食べられそうだ。
圧倒的な肉の味に、感動を覚えずにはいられない。
Lambdaにreincarnationしてから食べた猪も美味かったし、この集落で暮らすようになってから食べたHuge Boarの肉は更に美味かった。しかし、Noble Orcの肉はそれすら上回る味だったのだ。
Earthの高Class豚肉でも、比べ物に成らないに違いない。高Class豚肉を食べた事の無いVandalieuですら、そう確信する程の味だった。
「うぅ、勝ったっ、やっとあいつらに一つ勝ったっ」
Earthでは絶対に食べる事が出来ないNoble Orc肉を食べながら、Earthの伯父familyに勝ち誇るのだった。
Humanの女をGhoul化させる儀式の方法は、まず対象者のwhole bodyが入る程度の穴を地面に掘る。次に泥にGhoulのbloodと爪から分泌される毒を加え、Goddess Vidaへの祈りと共に混ぜ合わせる。
そうしてできた穴に泥を流し込み、対象者を沈める。
そして三日も経てばHumanからGhoulに変化する。
「ただの溺死に見える……」
Katia達女adventurerが入った泥を見つめながら、繰り返しmagicで生命反応を確認してしまうVandalieuだが、それも仕方ないだろう。実際、普通だったら窒息して死ぬのだから。
「問題無い。昔からの方法じゃからな。Human以外のrace、他のVida's New Racesやmonstersにやったら普通に溺れ死ぬが」
「Van -sama、私もこうしてHumanからGhoulに成ったのですわ」
ZadirisとTareaの二大年長者のお墨付きを貰った事と、実際十分経ってもKatia達の生命反応が変わらずある事で、Vandalieuも納得した。
「それより、今日はあの話があるのじゃろう?」
「そうでした」
一晩経って戦勝会の浮かれた気分が抜けたGhoul達が集まり、Vandalieuを待っている。Tareaを含め、彼らはこれから始まる話は集落を滅ぼされ帰る場所が無くなった約百人の女Ghoulと、Ghoul化を望んだ女adventurer達の各集落への割り振り、報酬と約束されていた少子化問題解消のためのmagic itemについて、そして今後のVandalieuの身の振り方に関するものだと思っていた。
monstersに孕まされた女達といえど、出産して数か月も経てば元通り回復するだろうし、一つの集落毎に十人ぐらいなら問題無い。食料も、magicで保存しなければ本当に腐るほど手に入れたばかりだし。
女adventurerの方は、maybe全員Vandalieuの戦利品だろう。その方がGhoul化した後色々教える手間が無くていいし、Vandalieuは大量に手柄を上げている。
一人だけGhoul化の儀式を受けないまま、Vandalieuが直接世話しているのが奇妙だが、きっとお気に入りなのだろう。
magic itemは出来てから配るという約束だったし、Vandalieuが今後どの集落に身を寄せるかはZadirisとTareaの集落で取り合いになるだろうから、自分達の出る幕は無い。
大多数のGhoulはそう、これから行われる話を予想していた。
しかし、VandalieuはFirst声から彼らの予想を裏切った。
「皆、冷静に聞いてください。遅くとも夏までに、俺達を皆殺しにするためにHuman達の大軍がやって来ます」
四月。Noble Orcの集落が、Ghoulの大群とそれを率いるDhampirによって壊滅したとの情報が寄せられてから約二か月、Palpapek Marshall主導で編成された討伐隊千人が、密林のDevil Nestsに侵攻した。
DClass adventurer三百人に、CClass adventurer百人。そしてGordan High Priestを中心としたAlda temple Warrior団、元Five-colored bladesのBClass adventurer【Green Wind Spear】のRiley、そしてSoldierとKnight。
万全を期してBClass adventurerを後何人か雇いたかったが、BClass以上のadventurerを一箇所に大量に集めるのは対monsters防衛上問題であるため、CClassでも腕利きの者を多数集めた結果、この規模に成った。
「ヘヘヘ、悪いがDhampirは俺が貰うぜ。あの時はHeinzが反対したから逃がすfeather目になったが、俺はもうフリーだ。手柄を上げてやるさ」
「好きにせいっ! 邪悪なVampireとWitchのbloodが絶えるなら、誰の手で行われても神は祝福してくださる!」
にやけ面のRileyに、口をへの字に曲げたGordan High Priestはこの討伐隊の中核戦力であり、上位種のGhoulとDhampirを倒す事を期待されていた。
他のadventurerやKnight達も、彼らのfollowをするように指示を受けている。
どちらもadventurerの中では一流、そしてHumanの限界からはみ出しつつあるBClass以上の力量の持ち主であるため、AClass以上が存在しない討伐隊でのこの扱いは当然だった。
町とDevil Nestsの間にはPalpapek Marshallが放ったSpyが、Devil NestsからGhoul達が町に攻めてこないか常に見張っていたが、今まで動きは無かった。
「Ghoul共は儂らを待ち受けるつもりだ。油断した隙を突かれて、貴-samaが奴らのExperience Pointに成らん事を我が神に祈るばかりだ」
Ghoul達もHuman側が動く事を知っているのにDevil Nestsから出て来なかったという事は、戦力を整えてこちらを迎え撃つつもりに違いない。それがBormack Gordan High Priestを含め、討伐隊の幹部達共通の認識だった。
だからDevil Nestsに進む討伐隊の面々には、緊張の色が浮かんでいた。
「言われないでも解ってる。奴らは俺があの甘-chanのHeinzを超えるための、踏み台の一つに成るのさ」
Five-colored bladesを抜けてから指名依頼の数やguildでの扱いが目に見えて変わり、燻っていたRileyはMarshall直々の今回の依頼で手柄を上げようと躍起になっていたため、浮かんでいるのは緊張ではなく興奮だったが。
彼の頭の中は、Dhampirの首Classを上げてこれまでも目にかけてくれたPalpapek Marshallの信頼をより厚くし、Marquisのお抱えKnightやSpear Technique指南役に成り、出世する事で一杯だった。
そして討伐隊はDevil Nestsに入り、索敵を開始した。Noble Orcの集落の場所は解っていたが、それを滅ぼしたGhoulの集落の場所は不明だからだ。
場所が危険なDevil Nestsである以上、隠密Abilityに優れていても戦闘力に劣るSpyを放つ訳にもいかず、adventurer達に事前調査させる事も憚れた。DhampirがSpiritualistであるとconjectureされていたからだ。
Spiritualistは死者の霊と対話し、情報を得る事が出来る。そのためもしSpyやadventurerが見つかれば、容赦なく殺された挙句、その霊から情報を搾り取られる恐れがある。死人の口が饒tongueになる場合、おいそれと犠牲を出せないのだ。
そして索敵は難航した。
「見つかるのはGoblinやKoboldの集落ばかり。偶に二、三匹のOrcと遭遇するぐらいで、Ghoulは一匹も見かけないな」
「ああ、他はHuge Boarにその上位種のMad Boar、Impaler Bullに、Iron Turtle、Giant Rat……獣系のmonstersばかりだ」
こちらを探りに来たGhoulの小隊ぐらい見つけてもいいはずだが、討伐隊は中々Ghoulを見つけられなかった。
いや、accurateには集落は見つけたのだが……。
「ダメだ、いたのは勝手に住み着いたGoblinだけだ」
彼らが見つけたGhoulの集落跡らしい場所には、何も残っていなかった。
「きっとGhoulが一箇所に集まって、俺達を待ち伏せてるんだ! やばいぜっ、幾ら俺達が千人いても、一度に襲い掛かってきたら……」
「だったら何だってんだ! 俺はRikkenの、弟の仇を討つんだ!」
Orcにやられたと思われるadventurerの兄はそう激高するが、彼に「いや、やったのはGhoulじゃなくてOrcじゃないか?」と言うツッコミを入れる者はいなかった。
「まあ、女だったら生きているかもしれないが……」
「Ghoulにされてしまっている可能性が高いでしょう。彼女達の魂を出来るだけ早く救わなくては」
敬虔なAldaのbelieverの言葉に、adventurerの男は異議を挟まなかった。Orcに弄ばれた挙句Ghoulにされるなんて、殺してやった方が幸せだろうと彼も思うからだ。
討伐隊はOrcの集落があった場所に陣を敷き、Devil Nestsの探索を続けた。
しかし探索の結果見つかるのはGhoul以外のmonstersばかりで、その上何日経ってもGhoulが襲撃してくるsignも無い。
certainlyそれでも危険なDevil Nestsに滞在している事に変わりないのだが、この密林Devil Nestsに通常出現するmonstersを相手にするには過剰なほど戦力が集められているので、討伐隊の緊張感は緩み始めていた。
「また車輪の跡だ。どういう事だ?」
「前にここを俺達が通ったって事じゃないか?」
「idiot bastard、馬車は陣に置いたままだろ」
討伐隊は物資を運ぶために馬車を何台も用意していた。このDevil Nestsは密林とはいっても、体長五meterのMad Boar等のmonstersがrunawayし、木を薙ぎ倒す事が多いため馬車が通れるぐらいのBeast Pathがあるからだ。
しかし、その馬車もOrcの集落跡に張った陣に置くか、追加の物資を町から運ぶために一旦Devil Nestsを出ている。その馬車が、町や陣とは全く別の方向に向かうけもの道を通行する訳がない。
「じゃあ、この轍は何なんだよ? これがmonstersの足跡に見えるか?」
「maybe、ずっと前にadventurerが通ったんだろ。馬の足跡が無いのがその証拠だ、雨で深い轍以外消えちまったのさ」
その場は、その男のconjectureも尤もだとSoldierやadventurerも納得して討伐隊の幹部まで報告が上げられる事は無かった。
partyを組んだadventurerは、大量の素材を運ぶためにDevil Nestsに馬車で入る事が度々ある。OrcやHuge Boarを倒せば大量の肉が、Entを切り倒せば高価な木材が手に入るが、数百キロの荷物を抱えてDevil Nestsを移動するにはどうしても馬車が必要だからだ。
世の中には亜spaceに荷物を入れて運べるSpace-Attribute Mageや、そのSpace-Attribute MageがAlchemyで作りだしたitemボックスもあるが、どちらも希少でまず利用できないのが現実だ。
この轍も、そんなadventurerが残したのだろうと彼らは考えたのだ。
それが間違っていると分かったのは、二週間後。いよいよPalpapek MarshallやBalchesse Viscountが焦れ、討伐隊の緊張感が弛緩しきった頃だった。
「Devil Nestsの外に轍の跡が続いているだと!? 何故今まで気がつかなかった!」
激高するGordanは報告した部下を思わず怒鳴りつけた。
「それが、轍の跡は街とは反対方向、Boundary Mountain Rangeに向かって続いていたので誰も警戒しなかったのです。それに、まさかVampireならin any case Ghoulが馬車を使うとは誰も思わず……」
基本的に、GoblinやOrc等のmonstersは馬車を使わない。いや、使えない。何故なら、馬車を作るような技術が彼らには無いからだ。
VampireのようにHuman社会の中に隠れ潜み、Humanを誘惑して協力者に仕立てるmonstersなら馬車を手に入れる手段もあるが、GoblinやOrcが馬車を持っている場合は略奪した時だけだ。
しかも、maintenanceもせずに荒っぽく使い、馬車を引くための家畜もすぐ喰ってしまうので大抵すぐに壊れて捨てられるか、家の材料にされてしまう。
それはGoblinやOrcよりもずっと頭の良いGhoulも同じ事の筈だった。そのため経験豊かなadventurer程、Ghoulが馬車を使って移動しているという答えに辿りつけなかった。
adventurerからの助言を聞くようにと幹部達から言われていたKnightやSoldier達も同-samaである。
だが、これだけ探索を繰り返してもGhoulが一匹も姿を現さず、こちらを襲撃しても来ない。そしてDevil Nestsの外へ続く、何十台も同じ所を馬車が通ったような深い轍。
ここまでくれば結論は一つしかない。
「クソっ、まさかあのDhampir、Ghoulを連れて馬車で逃げやがったのか! なんで誰も気がつかなかった、Spyは何をしてやがったんだ!?」
Rileyがそう怒鳴り散らすが、質問の答えは彼自身も含めた誰もが知っていた。
Spyは-chanと見張っていたのだ。Devil Nestsと町の間を。
彼らを派遣したPalpapek Marshallが警戒したのは、Ghoul達がDevil Nestsから進軍して町を襲撃する事で、Devil Nestsから街とは正反対の方向に在る東のBoundary Mountain Rangeに逃げ出す事では無い。
だから貴重なSpyは、全員町とDevil Nestsの間である西に配置されていた。
「まさか数百匹のGhoulの大群とそれを率いるDhampirが戦いもせず逃げ出すとは……図られた!」
そう悔しげにGordan High Priestが唸り、Ghoul討伐隊の遠征は終わったのだった。
しかし Gordan High Priestと手柄を上げ損ねたRiley以外の討伐隊の面々は、悔しがるどころか寧ろ「得をした」と言わんばかりの上機嫌で町へと戻った。
彼らもGhoulを倒した際に手に入る報奨金や手柄を手に入れ損ねたのは同じだが、adventurerはGhoul以外のmonstersを倒してそれなりに素材やMagic Stone、討伐証明を稼いでいた。それに遠征中の経費は国持ちなので基本的に損はしていない。
KnightやSoldierの場合は遠征中であるため普段より多い日当と危険手当が出たし、特にSoldierは普段はなかなか食べられないMad Boar等のmonstersの肉を食べられたので大満足だ。
Balchesse ViscountもGhoulがBoundary Mountain Rangeの方向に逃げ、結果討伐隊に犠牲が出なかったと聞いて内心は小躍りする程喜んでいた。KnightやSoldierが死ぬと見舞金を出さなければならないし、代わりのKnightやSoldierを揃えなければならないからだ。
Ghoulを討伐できず脅威を消せなかったのは不安だが、Mountain Rangeの向こうには自分の領地がすっぽり入るようなDevil Nestsが数え切れない程存在し、Noble Orcどころか災害指定ClassのDragonが何頭も生息しているとAge of Gods Eraから伝えられている。
今更そこにGhoulが数百匹加わったところで、だから何だという気持ちの方が強い。
それよりもBalchesse Viscountが興味を向けたのは、千人の討伐隊によってmonstersの数が激減した密林Devil Nestsだ。大物が居なくなったそこで更にmonstersを狩り、Mage達に穢れたManaの浄化作業を行わせればDevil Nestsは豊かな開拓地に変わる可能性がある。
それを考えればGhoulやDhampirに割く脳細胞なんて殆ど残らないのだった。
「まさか逃げるとはな……」
苦虫を十数匹は噛み潰したような顔で呟くPalpapek Marshallは、「Ghoul達が本当にMountain Rangeに逃げ込んだのか、念のために確かめる」という名目でSpyを数名派遣したら、思考を切り替えた。
この後、彼は討伐隊がGhoulに逃げられた事で「こんなに予算を使う必要があったのか?」「まさか国の金でViscount領のDevil Nestsの浄化と開拓を手助けしたのではないか?」と難癖を付けるFinance Lordとの政争に取り組まなければならないからだ。
この事件で最も得をしたのは、領地が増え経済的に潤う可能性を手にしたBalchesse Viscountだっただろう。
そしてDhampirのVandalieuに関する情報は、彼を確認したadventurerがさっさと姿を消した事と討伐が不発に終わった事で報告書に存在が記される事も無く、一部の関係者のMemoryに残るだけに留まった。
戦勝会の翌日の話し合いで、VandalieuからHuman達が攻めて来ると知らされたGhoul達は当然「Humanを迎え撃つ!」といきり立った。
「我等は強くなった! Humanが何百人来ても負けはしない!」
勇ましく拳をthrust上げるVigaroの意見に、多くのGhoulが賛同した。彼らはOrcとの戦いでlevelを上げ、Rank upしている者も少なくない。
確かに、以前と比べてGhoul達の戦力は大幅にAugmented (2)されている。しかし……。
「すみません、Vigaro。俺達は勝てません」
だがVandalieuはHumanに勝てないと言い切った。
「何故だっ!?」
「King、俺達は強い! Humanに負けない!」
「お前が居れば勝てる! 何故勝てないと言う!?」
「私達と一緒に戦ってよ!」
口々に言うGhoul達の言葉に、Vandalieuは言葉を選びながら答えた。
「はい、俺達は強くなりました。同じ数のHumanが来ても、まず勝てます。でも、HumanはOrcと違い俺達を倒すための準備を整えて、俺達を殺すためにDevil Nestsの外からやって来ます。
今度は、俺達が攻められる側です」
Bugoganの集落を襲撃した時のように、奇襲出来ない。
Human達は数を揃え、質の高い戦力も加えてやって来る。
「そして、俺達を倒すまで何度でもやって来ます。最初の討伐隊を倒したら次が、次を倒したら更にその次が。何度でもやって来ます」
最初の討伐隊を無事撃退しても、Mirg Shield Nationは「そんな危険なmonstersの群れを放置する事は出来ん」と第二次討伐隊を差し向けて来るに違いない。
これがHuman同士の争いなら落としどころを見つけるなりして争いを収めようとする動きも生まれるだろうが、HumanにとってGhoulはmonstersだ。しかも、このDevil Nestsは町から三日ほどの距離しかない。妥協はしないだろう。
そしてMirg Shield Nation自体をどうにかしない限り、止まる事は……いや、Mirg Shield Nationが疲弊する前に宗主国のAmid Empireが出て来るだろうから、Vandalieu達にとって際限が無いのと一緒だろう。
「坊やの言う通りじゃ。originally Human達はNoble Orcを討伐するために戦力を集めていたようじゃから、坊やが倒したNoble Orcの頭を倒せるようなadventurerやKnightを、何人か用意しているのじゃろう」
「むぅ……」
Zadirisの意見に、Vigaroはグルグルと唸りながら黙り込んだ。
だが、Vigaroの主戦論を封じ込めたZadirisにしてもその表情には悔しさが滲んでいる。当然だ、折角 Noble Orcから一族を守り抜いたばかりなのだから。
しかも、彼女達GhoulはHumanの町を襲おうなんて考えてもいない。今まで通りこのDevil Nestsで生活出来ればそれで十分なのだ。
それなのにHumanは「危険だから」と皆殺しにしようと討伐隊を送り込んでくるというのだ。彼女達から見れば、理不尽極まりない話である。
そしてVandalieuも表情には出ていないが、忸怩たる思いがあった。family同然に想っているZadiris達の、自分を慕うGhoul達の望みを叶えられない事が、堪らなく悔しかった。
堅牢な砦を何十も築ければ、Devil Nests全体を覆うStone Wallを建てられれば、何千というGolemの軍勢を揃えられれば、このDevil Nestsを守れるのに。
「それに、俺達には守らなければならない人達が居ます」
助けたばかりの女達の殆どが孕まされていて、とても戦うどころでは無い。
certainly Bilde達Ghoulの子を宿した妊婦達も居る。
彼女達を危険に晒す事を、誰も望まない。
「はぁ……私達の望みは、一族の存続。多くの犠牲を出して僅かな数しか生き残らない勝利よりも、一人でも多く生き延びるための敗北を選ぶべきですわね」
溜め息をついた後のTareaの言葉で、Ghoul達の主戦論は完全に鎮まった。
内心では戦いたいと思っている者も少なくないが、Zadirisが諭し、Vigaroが押し黙り、Tareaが納得した。
この状況では実力主義が根付いたGhoulでは、異論を唱えられず納得するしかなかったのだ。
「しかし、これからどうしますの? 隠れるのは無理でしょうし、逃げるにしても……」
GhoulにはDevil Nestsが必要だ。Devil Nestsの外ではGhoulの生殖Abilityは更に低下するし、この人数を養えるだけの獲物が獲れない。
まさかいきなり土地を耕してFarmingを始めるのも不可能だろうし。
「逃げる先に、心当たりがあります、ちょっと遠いですけど」
だが、Vandalieuが以前Noble Orcを倒せなかった場合等を考えて放った虫Undeadが見つけたDevil Nestsの事を説明すると、逃げる先をどうするかという最大の問題が解決したのだった。
目的地は、Boundary Mountain Rangeの西側を超えた先に在る廃墟のDevil Nests。虫の視界では詳細には見えないが、大きな都市でGhoul達が住みつくには十分な広さがある。
何より、Devil NestsにUndeadが出現する事が分かったのが朗報だった。Undeadなら、Vandalieuの【Death-Attribute Charm】でそのままallyに出来るからだ。
そうと分かれば話は早いと、Ghoul達は早速大移動の準備を始めた。
「ウオオオオオオオオオッ!」
まず、Devil Nestsに生息するEntを絶滅させる勢いでDeforestation。そして集めた木材でVandalieuが次から次に馬車を、Curse Carriageを作る。
『後輩が大勢出来ましたな』
宿らせた霊は数日前に大量に殺したOrc等だから、【Precise Driving】等のskillは持っていないが今は頑丈で自力で動けるcarriageが作れれば、それで十分。
そして女adventurer達のGhoul化が完了したら、まだ新しいbody partに慣れていない彼女達と身重の女達を乗せてDevil Nestsを出たのだった。
Mountain Range側にSpyが居ないのはLemureや虫Undeadで確認済みだったので、特に慌ただしくも無い出発だった。
そして密林Devil Nestsから出て、一か月以上たった四月。
VandalieuはGhoul達の先頭groupでSamのcarriageに腰かけていた。
険しい道のりだが、旅は三つの問題以外順調に進んでいる。
「意外とMountain Rangeも大したことないな」
「しっかりfurを着込んでおいて言う事か」
高いMountain Rangeを越えるための防寒具は、密林Devil Nestsで狩って来たmonstersのfurで間に合わせた。
GhoulはHumanよりもずっと頑丈に出来ているから、高山 Diseaseにも殆どかからない。
Devil Nestsから出た事で活力的なものがやや下がっているが、それもVandalieuの【Strengthen Follower】で補える。なので、Earthの登山 家が見れば「そんな装備で大丈夫か?」と聞きたくなるような装備でも、「大丈夫だ、問題無い」と胸を張って答えられる。
そして装備や物資より問題に成りそうなのが道だ。馬車が通るどころか、Earthなら登山 家が命がけで登るような急斜面や崖が頻繁に存在する。
「坊や、道を頼む」
「はーい」
しかし、VandalieuがManaを切らさない限り、やはり問題に成らない。
山肌をGolemにした後【Golem Transmutation】で馬車が通れる道を作ればいいのだ。道が細いなら山肌を削って太くし、切り立った崖にはtunnelを掘る。
最初はこの【Golem Transmutation】とManaの力押しで、Mountain Rangeを越えるのではなくtunnelを掘ってshowトカットする案もあったのだが、「流石に馬車が通れるtunnelは崩落の危険があるし、地下水脈とぶつかったら大変だから」と却下する事に成った。
そしてGhoul達が通って暫くすると、通った道は元通り細い道や険しい崖に戻る。もしかしたらMirg Shield NationからSpyが派遣されるかもしれないと、心配したVandalieuが後を付けられないようにしているのだが、この処置は大正解だった。
実際Palpapek MarshallがVandalieu達に約一か月遅れで放ったSpyは、この数日後Mountain Rangeの麓でこれ以上のPursuitは不可能と判断して帰還したのだから。
では何が問題なのかというと……monstersからの襲撃、介護、そしてベビーラッシュだ。