Lucilianoの報告によってDhampir率いるGhoulの大群の存在を知ったその日、Thomas Palpapek Marshallは、滞在している別邸の執務室で書類の山と格闘していた。
本来ならmonstersの討伐隊を編成し送り出すのは、その領地の領主とAdventurer’s Guildの仕事だ。しかし、今回は討伐隊の規模が大規模になり、adventurerだけでは無く国軍のSoldierやKnightも参加する予定で、しかも領主のBerno Balchesse ViscountがPalpapek Marshallに権限を差し出し、どうか助けてくれと願い出ている。
certainly Balchesse Viscountも仕事をしていない訳では無いのだが、全ての書類の最終決裁に必要なsignは権限を持つPalpapek Marshallのものだし、何かmissがあれば最終的にMarshallの責任になってしまう。
その状況で今朝の決定である。
予定よりも参加人員を増やすための国軍Soldier、KnightへのOrder書。
そのSoldierやKnight達を増員したため増やさなければならない支給する武具の予算。
更に増やした分のSoldierやKnight達の為の糧食。
Devil Nestsを見張るために放っているSpyの増員。
Adventurer’s Guildとの折衝はMarshallでは無くFinance Lordの管轄であるため、いちいちFinance Lordの部下のNobleを通さなくてはならない事が、更に書類の山を高くしている。
せめてもの救いは、先の対Orbaum Elective Kingdom戦でAmid Empireが少ない犠牲で快勝したため予算が潤沢にある事だろうか。
まあ、その予算を申請するためにも書類に目を通してsignする事が必要なのだが。
「見るからに大変そうだな。ただでさえ短い寿命を、そんなつまらん作業に費やさなければならないとは同情を禁じ得ないよ、Thomas」
開けたMemoryの無い窓から冷たいnight気と声がするのに気が付いたPalpapek Marshallは、途中だったsignを書き終えてからペンを置いた。
「そう思うのなら手伝ってくれないかね? 永劫の寿命を持つ友よ」
顔を上げた先には、一匹の蝙蝠が居た。
「十分手伝って来たつもりだぞ、友よ? それともThomas、遂にHuman社会の栄達に虚しさを覚え永遠を欲するに至ったのかね?」
落ち着いた口調で紡がれる流暢な言葉は、蝙蝠の口から発せられている。常人なら驚くだろう自分をファーストNameで呼ぶその蝙蝠に対して、Marshallは無感動に応じていた。
「いいや、お前達の仲間になるつもりはないし、お前達も求めてはいないだろう。心にもない事を口にするな、Vampire」
蝙蝠の正体、それはVampireの放った使い魔だった。
Thomas Palpapek Marshallは、Palpapek Earl 家に生まれた次男だった。代々Orbaum Elective Kingdom軍から宗主国を守るための国として精強な軍を任されているMirg Shield Nationの、軍系法衣Earl 家だったPalpapek 家の歴史でも、Thomasは出来の良い少年だった。
しかし、どんなに出来が良くても次男に過ぎない。それでも長男の出来が余程悪ければ、継承権を逆転させる事が出来たかもしれない。しかし、長男もThomasと比べればやや劣るが出来の良い部類だった。
文武両方でThomasの方が勝っているのは、誰の目から見ても明らかだ。Thomasも、長男も解っていた。
しかし、優劣がはっきりしていてもその差が「多少」で済まされる程度なら、態々長子継承を崩してまでThomasをEarlにはしない。
brothersのどちらがMarshallの地位に就いても、城塞も兵もKnightも変わらない。代々Palpapek Earl 家を支えてきた家臣も、変わらない。
Orbaum Elective Kingdomとの戦争は小競り合いも含めて数年に一度の頻度で続くが、Mirg Shield Nationは所詮盾。Marshallの地位にある者が担うのは防衛戦だけで、華々しい侵略戦はAmid EmpireのMarshallやGeneralがCommandingを執ってきた。
だから、幾ら兄より優れていてもThomasがEarl 家を継ぐ未来はあり得ないものだった。
このままならThomasは他の娘しかいないBaron以下のNoble 家に婿養子に行くか、兄の家臣になるかだった。
そんな時、彼の前にVampireは現れた。「Earl 家を継ぎたくはないか? 劣った兄が自分より少し先に生まれたというだけで自分の上にいる事に、enduranceできるのか?」そう囁くVampireと手を組んだThomasは、不慮の事故で亡くなった兄に代わってPalpapek Earl 家を継ぎ、Marshallの地位を手に入れた。
「ククク、確かに。-kunほどの地位にあるNobleの協力者は、貴重だからな」
言外にMarshallの地位に無ければ利用価値は無いと言うVampireに、Thomasはそれ以上雑談には応じず「用件は分っているな」と言った。
「分かっているとも。裏切り者のValenと、Dark Elfの女の間に生まれたDhampirの件だろう? 我々が折角情報をくれてやったのに、貴-samaは取り逃がしていたようだな?」
ThomasはVampireの氏族や派閥の事を詳しく知っている訳では無かったが、大きく分けてEvil God (M)派とGoddess Vida's Factionの二つに分かれる事は知っていた。
そしてこのVampireはEvil God (M)派に属している。だが、別に彼らは人類の駆逐を企んでいる訳では無かった。
Demon King Guduranisが滅ぼされた後、生き残ったEvil God (P)やEvil God (M)達は支配者を喪いバラバラになり、好き勝手に動き出した。
滅んだDemon King Guduranisをrevivalさせるために、sealedされたDemon Kingの肉片を探す者。
自分達を敗北に至らしめたGodsとHumanに対する復讐を企てる者。
ただ怠惰に惰眠や美食を貪る者。
このworldでは勝ち目はないと、何時の間にかanother worldに旅立っていた者。
挙句他のEvil God (P)やEvil God (M)相手に権力闘争を始める者達までいる。
そして当初の目的を捨てて、自身の欲望を満足させる事に腐心する者。目の前のVampireが奉じるEvil God (M)は、そのgroupだった。
ただそのEvil God (M)とVampireにとって、Half-VampireであるDhampirは-sama々な理由で狩るべき対象であるらしい。
別に決定的に邪魔な存在という訳では無い。Human側に立ってVampire狩りを始めたら目障り、Vampireの高貴な誇りを維持するため、派閥に属する者に対しての見せしめ、単純に恋だの愛だの戯けたことを抜かす同族の前で嬲り殺すと面白いから。
そんな理由だ。
Subordinate Vampire ValenとDark Elfの間に生まれたDhampirの場合は、Thomasの目の前にいる蝙蝠の主である、名も顔も知らないVampireが狩れと、より上位のVampireから命じられていた。
そしてVampireはValenを始末したが、Dhampirを身籠ったDark Elfを故意に見逃した。certainly慈悲からでは無い。
このVampireは、Human達に惨たらしく殺されるDark ElfとDhampirが見たかったのだ。そういった見世物を彼らが奉じるEvil God (M)は特に好むからだ。
だからThomasに情報を渡した。だが、結果的には殺されたのは母親のDark Elfだけで、Dhampirの方は行方不明のまま。しかし、当時乳飲み子であったことから母親を亡くした以上何処かで飢え死んでいるものとconjectureしていた。
それが生きていて、Evbejiaから遠く離れたDevil NestsでGhoulのKingをしている。そうThomasから連絡を受けたVampireは、最近では殆ど忘れていた驚愕というemotionsを覚え、使い魔を派遣したのだった。
「……あの時は幾つもの不確定要素が発生したのだ」
Vampireから不手際を指摘されたThomasは、苦虫を噛み潰した顔をして当時の事を思い出した。
最初Dhampirの情報を聞いたThomasは、当時囲い込もうと画策していた前途有望なadventurer party『Five-colored blades』にその情報を与え、手柄を立てさせることを企てた。
これをきっかけに強いconnectionを作り、後々出す指名依頼を受けさせて『Five-colored blades』をMarshall専属のadventurerとして周囲に印象付け、上手くいけば部下として取り立てるつもりだった。
しかし、偶然Amid EmpireのAlda temple出身のGordan High PriestがEvbejia近くの村に滞在していた事で、彼の介入を招いてしまった。
更に、Dark ElfがDhampirの居場所について最後まで口を割らなかった。その上業を煮やしたGordan High Priestが、Thomasの手の者が止めるのも聞かずに処刑してしまった。
その上肝心の『Five-colored blades』はDark Elfの処刑後、Dhampirを探そうとせずEvbejiaから離れてしまった。
お蔭でThomasはDhampirの捜索を、controlを一切受け付けないGordan High Priestとその部下達に任せるfeather目になり、結局始末できずにDhampirが生き延びる隙を与えてしまった。
「一番の不確定要素は、Dhampirが乳飲み子だったのにも拘らずHigh Priestの捜索から隠れきり、今まで生き延びた事か」
「その通りだ。しかも Ghoulを率い、更に何処でJob changeしたのかSpiritualistのJobに就いているようだ」
「Spiritualistだと? いくら成長しているといっても、確かまだ三ageになるかならないかだろう?」
「確かだ。雇ったadventurerが使い魔にしていたLife-deadを見破ったらしい」
ThomasやBalchesse Viscount、そして他のKnight達はVandalieuがLife-deadを見破った理由を、彼がSpiritualistのJobに就いているからだと思い込んでいた。
まさかVandalieuがこのworldにこれまで存在しなかったDeath-Attribute Magicの使い手であるなんて、夢にも考えなかった。
「Spiritualistか……随分と特殊なJobを選んだものだ。父親のValenにはそのaptitudeは無かったはず。なら、母親のbloodか?
まあいい。どうせすぐ討伐されるのだ。そうだろう、Marshall -dono?」
「当然だ。問題のDhampirは、Ghoulの群れごと始末させる。そのために忌々しいAlda教のfanaticまで呼ぶのだからな」
Thomasにとって、Vampireからの要請は応えなくてはならないものだった。Unaging不死を望んでいる訳でも無いし、peerageを継げたことに恩を感じている訳でも無い。彼の計画に、Vampire達の力が必要なのだ。
Thomas 's ancestor国、Mirg Shield Nationは建国時からずっとAmid Empireの属国であった。Mirg Shield Nationの王族はAmid EmpireのMarquisに等しい者とされ、防衛戦の苦渋を押し付けられ、華々しい戦果は全てEmpireに奪われる。
平時に於いても押さえつけられ、国力を付けようとすれば横槍を入れて邪魔してくる。
それに耐えて何とか国力を増したと思ったら、何かと理由を付けて無駄な遠征をさせて力を削ぎに来る。特に二百年前のGiant race討伐は酷かった。多数の将兵に当時のHeroと国宝のHoly Spearまで失い、手に入れた戦利品の内目ぼしい物は献上させられた上に、結局領地も増えなかったのだから。
そんな仕打ちを受けて来たMirg Shield NationのRoyal Nobility達が『独立』の二文字を悲願とする事は当然だった。
そしてThomasの計画、それは祖国の悲願を自らの手で遂げる事。そして独立したMirg Shield Nation……いや、Mirg Kingdomで今以上に重要な地位に就く事だった。
そのためにはMirg Shield Nationの国力を少しずつでも増す必要があり、Amid Empireを少しでも弱らせる必要がある。
Amid Empireを敵視するVampire達の力は、必要不可欠なのだ。
「だが、High Priestは呼ぶのだろう? 奴は今や次期Cardinal Candidateだ。また手柄を立てさせてやるつもりか?」
「奴以外にも【Green Wind Spear】のRileyを参加させる予定だ」
「ほほぅ、Mirg Shield Nationから去った【Five-colored blades】から抜けた男か。CClass程度の、Heinzのお蔭でsecondary nameが付いたadventurerがどれ程役に立つやら」
「彼は既にBClassだ。だが、そんなに心配してくれるのなら貴-samaも参加するか? Devil Nestsに着くまでの間は太陽の光を浴びながら草原を三日間進む予定だが」
「ククク、止めておくさ。我々はお前を『信頼』しているからな。それより、私に連絡を寄越したのは報告するためだけか?」
「いや、念のため確認しておきたい事がある。Dhampirに関してだ。
Evbejiaで起こったGolem Transformation事件……あれはDhampirの仕業では無いのか?」
一年以上前起こった、町を守る外壁や領主の館やAdventurer’s Guildの建物が突然Golemと化して、町の外へ歩いて行ってしまった謎の事件。
捜査はMage guildも協力して続いているが、未だ犯人を捕まえるどころか犯行方法すらはっきりとは解っていない。出来たのは、あやふやで穴だらけの推理だけだ。
それが問題のDhampirによる犯行ではないか? Thomasはそれを疑っていた。早朝、Balchesse ViscountやLucilianoの前では確証が無かった事と、自分でもあまりにも荒唐無稽に思えるから口にしなかったのだが。
「idiotを言うな」
実際、VampireにとってThomasの推理は下手な冗談でしかなかった。
「お前達Humanは、我々Vampireよりも弱点が少ないDhampirを危険視するあまり、過大評価する傾向があるようだな。
Dhampirの素質は、特にVampireのAbilityに関するものはVampire側の親によって左右される。親がmagicに優れるなら、子も優れる。親が蝙蝠にTransformできるなら、子も蝙蝠にTransformできるようになる可能性が高い」
「逆に言えば、親がVampireの割にmagicに優れないのなら、子も同程度の素質という事だろう。それぐらいは知っている」
VampireとThomasが言うように、Dhampirが持つVampireとしてのaptitudeは、親のVampireに依存していた。
他raceのbloodが混じったDhampirの子が、最も親の素質を受け継ぐとはEvil God (M)派のVampireにとっては皮肉なものだが。
「Valenは確かに太陽へのResistanceに優れていたが、それ以外はageの割には強いだけのSubordinate-bornだった。magicは簡単な術しか扱えなかったと聞いている。就いたJobもApprentice Thief、Thief、格闘家で、aptitudeが眠っていただけとも考えられない。
それに、幾ら素質があっても当時一ageか二ageの赤子ではそれを活かせまい」
「それはそうか……」
「寧ろ、母親の方が怪しいのではないか? そのDhampirはSpiritualistらしいのだろう。母親の霊の力を借りたのではないか?」
SpiritualistのJobに就いている者は、霊と交信して知識を得る事が出来る。そこから更に一歩進んで、霊が生前行使していたmagicを使う上Class者も存在する。
Vampireは、母親が生前持っていたAlchemyの奥義を幼くしてSpiritualistになったDhampirが用いたのではないかといったが、今度はThomasの方が否定した。
「母親の方は調べたが、DClass adventurerでSpirit Magicならin any case Alchemyの心得は無いようだ。とてもAlchemyの奥義や秘伝を知っているようには考えられない」
「ならば、偶々近い時期に起きただけの偶然なのだろうさ。用件はそれだけか? ならば失礼させてもらおう、幾ら永劫の時を生きる我等でも、無為に時間を過ごしたい訳では無いのでな」
そう言うと蝙蝠は音も無くfeatherばたくと、窓から飛び立って行った。鼻を鳴らしてそれを見送ったThomasは、窓を閉めると小さく呟きを漏らした。
「偶然、か」
Evbejiaの事件を、辺境の小都市に起きた事件では無く、国家を揺るがす重大事件としてMirg Shield Nationは今も捜査している。何故なら、もしあの町と同じ事が城塞で起こればどうなるか……。
どんな堅牢な砦も、高く厚い城壁も、何の意味もなさなくなる。いや、もしGolemがEvbejiaの時と違い、内部にいるHumanに襲い掛かれば、どんな精鋭で編成された軍も本来の力を発揮できずに大打撃を受ける。
壁や天井や床から攻撃されるのだ。そんな状況でどうやって隊列を維持しろというのか。
それを防ぐためには、どうやって町の外壁をGolemにしたのかthrust止めなくてはならない。
だが、その答えをMage guildの上層部ですら出せなかった。
そもそもGolemとは、alchemistが手間とManaをかけて作る物だ。
Golemを作るための材料を用意し、それを手足や胴体等のpartsに分け、parts毎に各種触媒や霊薬と共に術を施し、そして最後にGolemを動かす人工核を埋め込む。
そうしてやっと作れるものなのだ。
だから既に完成している町の外壁や、使用されている領主の館やAdventurer’s Guildの建物、そして日々農民が耕し作物が実る畑の土をGolemに出来るはずが無いのだ。
もしそれを可能とするalchemistが居たら、Mirg Shield Nationだけでは無くAmid Empireが何をしても囲い込みにかかるだろう。それが不可能なら、全力で闇に葬ろうとするに違いない。
「確かに、ただの偶然だな」
たかが三age程のDhampirが、そんな大物の筈は無い。ThomasはPalpapek Marshallの顔に戻るとペンを取り、視線を書類に戻した。
もしLucilianoがOrcの集落のEnt製の外壁がWood Golemと化した事に気がついていれば、彼がVandalieuの異常なMana量を見抜いていれば、Palpapek Marshallは違う判断をしたかもしれない。
尤も、この段階で気がついても既に手遅れだったのだが。
彼の失敗は、DhampirのchildがGhoulを纏めるKingになったという【今まで無かった事態】を、【今までの常識】を基に対処する事の拙さに気がつかなかった事だろう。
Palpapek MarshallがVampireと密談していたその頃、Vandalieu達は彼らが暮らしていたGhoulの集落に向かっていた。
救出した百人程の女Ghoul達は長く劣悪な環境に置かれていた事と、弱らせるため意図的に食事を制限されていた事でEnduranceが落ち、中には手足のboneを折られた後歪な形で治されていた者もいて、とても長い距離を歩けるconditionでは無かった。
Ghoul化の儀式を受ける事を希望した女adventurerも例外では無く、大分衰弱していた。
そんな総勢百人以上のfemaleを、それもmonstersが出現するDevil Nestsの中を運ばなければならない。これはかなりの大仕事だ。
その大仕事を行ったのは、Vandalieuが作った馬車とSamだった。
「起きろ、integration、変形」
Orc達が破壊したEnt製のWood Golemの残骸。それをVandalieuは再びWood Golemにすると、【Golem Transmutation】skillを使い、残骸を一つの木材にintegration。そしてSamを見本にして変形させ、馬車のcarriageを作ったのだ。
本来なら金属も使わずに木材だけで馬車を作っても上手くいかないのだが、木の性質を持ったまま鉄に匹敵する硬度を持つEntの丸太から作られ、更にcarriage全体がGolemであるため問題無く動かせた。それどころか、誰に引かれるでもなく自力で車輪を動かす事が出来る。
幸い材料の残骸は呆れるほど転がっている。恐らくOrc達はBugoganの命令で、EntをDevil Nestsから絶滅させる勢いでSlash倒して外壁にしたのだろう。
「坊やがHumanの町に行ったら、これで食って行けそうじゃな」
「馬車作りですか? 材料が良いだけで、専門の職人がしっかり作った物と比べたらとても売り物にはならないと思いますよ」
「いや、木材の方じゃよ。Humanの町では木材を手に入れるために金を払うのじゃろう? 坊やならその木材をそれこそ大鋸屑からでも作れるではないか」
「確かに、灰にでもなっていなければ出来ますけど……」
金属と違って木材は一度切り分けると、炉で溶かして一つの材料に戻すという事が出来ない。そのためCarpentryが技巧を凝らすのだ。
しかし、Vandalieuは【Golem Transmutation】skillを使えば、そういった技術は無くても切り分けた木切れを一つの大きな木材に戻すのも自由自在だ。
やろうと思えばSlash倒した木を製材する時に落とした枝や、切り分ける時に出る大鋸屑からでも柱や床板に使える木材を創り出す事が出来る。
通貨文化の無いGhoulでも気が付く、革新的な技術といえる。
「でも、あまり仕事にはしたくないです」
「ん? 何故じゃ? 大儲けできるのではないのか?」
乗り気では無さそうなVandalieuの-sama子にZadirisが尋ねると、彼は溜め息と共に答えた。
「大儲けできるようになるまでが、とても面倒そうだからです」
Vandalieuが出来るのは、いわば廃材のrecycleだ。recycleである以上、出来上がる木材は中古品である。Earthなら再生木材と評してエコブームに乗れるかもしれないが、この機械文明どころか蒸気機関も無さそうなLambdaでエコの価値がどれ程あるのか、そもそも人々にエコの概念があるのかも疑問だ。
そんな中、ゴミから作られた中古品にどれくらいの値段が付くのか……。
その上、これは【Golem Transmutation】skillを持っていないと出来ない事だ。これから習得する予定のAlchemyを使ってmagic itemを作成し、Vandalieu以外も出来るようにするという事が出来ない。
つまり、全部Vandalieu自身で行うしかない。
結果、【Golem Transmutation】skillを使用したエコ木材で儲けようとすると、安い料金で長時間働かなければならなくなる可能性がある。
それはluxury complexを燻らせているVandalieuとしては、歓迎できない選択肢だった。
「まあ、Earthにあった黒檀みたいな高Class木材なら高い報酬が得られるかもしれないし、石材でも同じ事が出来るから、大理石で……ああ、でもStonemason guildとかあったら石材の出所を探られるかも。木材の方も木こりguildとかあるかもしれないし……」
「Humanの社会は複雑なようじゃな。坊や、悩むのはそれくらいにしよう、な?」
頭を抱えて懊悩し始めたVandalieuを、Zadirisはそう言って宥めるのだった。
因みに、Human社会では今現在Vandalieuが馬車を作っている材料のEnt材は、杉や松等の通常の木材の十倍の値段で取引されているのだが、それが分かるのはまだまだ先の事だった。
《Vandalieuは、【Carpentry】skillを獲得しました! 【Strengthen Follower】skillのlevelがincreaseしました!》
『Bocchan! 彼女達はお任せください!』
そしてSamは、昨日の戦いで得た大量のExperience PointでRank upしていた。
Rank3のGhost Carriageが同格のOrcはcertainly、Rank5のOrc General、そしてRank7のNoble Orc、Bugoganを轢き殺したのだ。さぞ莫大なExperience Pointが彼に流れ込んだのだろう。
お蔭でTareaが付けた物騒なSpikeがcarriageにすっかりFusionし、Rank4のBlood Carriageになっていた。
そしてRank upと同時に獲得したskill、【Size Alteration】と【Comfort Maintenance】によって特に弱っていた女達を運ぶ役に立っていた。
【Size Alteration】はbody partの大きさを変更するskillで、本来三頭立ての馬車であるSamのcarriageを大きくして四頭立てにしたり、小さくなって二頭立てSizeになったり出来る。
【Comfort Maintenance】は周囲の環境に関わらずcarriageの中を快適に保つ事が出来るようになるskillだ。
そしてoriginally持っていた【Impact Resistance】skillのお蔭で、普通に進む分には振動は全くない。
物騒なraceになったが、ますます利便性が増すSamだった。
昨日の戦いで得たExperience Pointによって、VigaroやSam以外にも多くのGhoulがGhoul WarriorやGhoul GrapplerにRank upしていた。
Vandalieuの配下ではSalireとRita、そしてBone BirdがRank upしている。
ただSalireとRitaのrace名はRank upしたのに変化せず、Living High-Leg ArmorとLiving Bikini Armorのままだった。
これはmaybe、宿っている鎧のAbilityを二人は発揮しきれていないconditionだったが、それが経験を積んである程度発揮できるようになったという事だろう。
race名に変化が無いのは、成長はしたがまだ完全に鎧に見合っていないという事か。
『早く高位のmonstersになって、Bocchanに肉とboneも切らせてboneを断つような事をさせないで済む、立派なMaidになりたいです!』
『それはMaidじゃないってBocchanが言いたいのは分かります。でも、私もRitaも本気ですから!』
どうやら二人は、blood塗れで地面に倒れる胴体が切断されかけていたVandalieuの姿に大きなshockを受けたようだ。
だから自分達がより強くならなくてはと、志を新たにしてくれたようだ。頼もしい限りである。
『グエエエエエ』
Bone BirdはRank4のSpecter BirdにRank upした。boneを包んでいたSpirit Formの輝きは益々増し、遠目には光り輝く縁起の良い鳥に見える。
しかし、地方によってはこのmonstersの出現は凶兆だと考えられているらしい。そのような地方がOrbaum Elective Kingdomに無い事を願うばかりだ。
そしてGhoulの集落に戻る時に問題になる、一番大量の荷物……戦利品である敵の死体の運送だが、これは一番楽に済んだ。
何せ、戦利品自身に歩かせればいいのだから。
『ぶふう゛うぅ』
『……ぎぃ……ぶぎぃい……』
blood抜きをした後【Preservation】の術でDecompositionを停止したconditionのOrcやKobold、Trainingされていた魔獣の死体を、Zombieにすれば態々運ぶ手間は要らない。
それどころか、生前使っていたWeapon Equipmentや鎧、adventurerから奪った所持品を手に持たせれば荷物からtransportation手段に早変わり。
Zombieと言ってもDecompositionをDeath-Attribute Magicで停止しているから、肉も内臓も死んで一晩も経っていない新鮮ピチピチのconditionが維持されている。
だから集落に戻ったら死体に宿した霊を抜いて、Zombieからただの死体に戻せば素材を取ったり肉を食べたりするのに問題は無い。
しかし monstersはそれを知らないので、獲物では無くZombieとしか認識できず積極的に襲わない。だから他のmonstersに盗まれないように警備しなくてもいい。
問題点は足が遅い事だが、今は弱ったGhoulの女達を運ばなければならないので足が遅くても構わない。
「これからは狩りで狩った獲物を、皆VandalieuにZombieにしてもらえば運ぶのが楽だな!」
そうVigaro達にも大好評だった。
『ぶごぉ……』と呻き声を漏らしながら歩くBugoganのZombieを気にせず、Zadirisに宥められ気を取り直したVandalieuは歩いていた。
Samや他の馬車に彼が乗れない程spaceが無い訳ではない。もうすぐ三ageになる事だしそろそろEndurance作りをしたい考えからだった。
『ねぇ、Vandalieu。おkaa-sanもUndeadやGolemになるのってどうかしら?
それで強くなってVandalieuと一緒に戦うの。素敵だと思わない?』
「気持ちは嬉しいけど、それはちょっと。あまり長い間同じ入れ物に入っていると、霊の形が変わってしまうから生き返す時どうなるか分からなくなるよ」
originallyは他の生き物だった霊でも、特定の入れ物に長い間入っていると霊の形が入れ物と同じ形になってしまう。
例えば、Samはoriginally Humanのmaleだったが、今彼が宿っている馬車のcarriageから彼の霊を抜けば、その姿は生前の彼では無く、馬車のcarriageに変わっている事だろう。
それほどBodyを喪ったSpirit Formとは変化しやすい。形を保ち続けるには、強い怨念や憎しみ、未練が必要不可欠。
「それで、kaa-sanには怨念や憎しみが殆ど無いから、宿った入れ物にすぐimpactを受けちゃうと思う。だからやめておいた方がいいよ」
正直に言えば、Vandalieuにはそれが信じられなかった。Darciaが憎しみも恨みも殆ど持っていない事が。
何故あれほど惨い殺され方をして、憎しみや恨みに囚われずにいられるのか。
一度直接聞いてみたが、「Vandalieuがしっかり生きてくれてるから」としか教えてくれない。
『そうかー、じゃあその代わりにもうあんな、肉もboneも切らせてboneを断つような事、しないでね』
そう言って心配してくれる母が自分を殺した者共に恨みをあまり持たない理由が、言葉通り自分が生きているからなら、彼女を殺した連中へのfeeling of revengeが一層滾ろうというものだ。
『もうすぐやって来る討伐隊の人達相手にも、危ない事しないでね』
だが今はその時じゃない。まだまだずっとずっと、その時じゃない。そうVandalieuはfeeling of revengeを心の底に沈める。
「うん、約束する。危ない事はしないよ」
・Name: (Bone Bird)
・Rank: 4
・Race: Specter Bird
・Level: 37
・Passive skills
Dark Vision
Spirit Form:3Lv(UP!)
Mysterious Strength:2Lv
・Active skills
Silent Steps:1Lv
High-Speed Flight:2Lv(UP!)
Projectile Fire:2Lv(NEW!)
・Name: Sam
・Rank: 4
・Race: Blood Carriage
・Level: 72
・Passive skills
Spirit Form:3Lv
Mysterious Strength:3Lv
Rough Road Travel:2Lv
Impact Resistance:2Lv
Precise Driving:3Lv
Comfort Maintenance:1Lv(NEW!)
・Active skills
Silent Steps:1Lv
High-Speed Running:1Lv
Charge:2Lv(UP!)
Size Alteration:1Lv(NEW!)
・Monster explanation: Blood Carriage
主に戦場で敵兵やallyのbloodで真っ赤に染まるほど、数え切れない程多くの死と怨念に塗れた戦車がUndead Transformationした存在であるBlood Chariot……のCarriage版。
通常、ただの馬車のcarriageが数え切れない程の死と怨念に塗れる事は無いので、SamがLambdaで初めて発生した個体かもしれない。
Blood Chariotは殺人衝動しか持たず、生者を轢き殺す事しか考えない危険なUndeadで空いているspaceがあっても誰かを乗せる事は無い。
しかし、Samは人(主にVandalieu)を乗せる事を前提としており、更に快適に過ごせるようにと心を砕き、これからのMountain Range越えの邪魔にならないようにとnightなnightな【Precise Driving】の訓練をしていたためか、【Comfort Maintenance】と【Size Alteration】というskillを獲得している。
更に戦闘Abilityも、Tareaによって追加されたSpikeや装甲によってEnhanced (1)されている。尚、Rank up時にこれらの追加装備はSamのmain bodyであるcarriageとFusionしている。