涼しい朝の微風に、bloodの匂いが混じる爽やかな二月の朝。
「ウオォォォォォォ!」
野太い雄叫びが響き渡った。OrcやGoblin、Koboldの死体から朝食に使う内臓を抜いて処理をしていたGhoul達が驚いて雄叫びの主を見ると、Vigaroが朝日を仰いでいた。
「お、おい、Vigaroがでかくなってないか?」
「まさか、Rank up!?」
originally二meterを超えていたVigaroのbody partが、一回り以上大きくなっていた。獅子の頭はより精悍に、fangsは太く、力強く、四肢のmuscleはより発達しながらも柔軟さを維持していた。
それはここ数百年このDevil Nestsに存在しなかった、Ghoul達にとってlegendに等しい存在の姿を連想させた。
「Berserker……Ghoul Berserker!」
Vigaroはoriginally歴戦のGhoul Barbarianだった。それが昨nightの激戦で同格の筈のOrc Generalを複数、そして格上の筈のNoble Orcを倒した事で大量のExperience Pointを手に入れると共に、skill levelをincreaseさせた事で、Rank up条件を満たしたのだ。
legendのGhoul Tyrantには及ばないものの、たった一人で百人のHumanのSoldierを屠ったと言われるGhoul Berserkerの誕生を目にしたGhoul達は、Vigaroの名を称え歓声を上げた。
その五分後、Vandalieuは朝一番で三人の美女から説教を受けていた。
羨ましいと思う者もいるかもしれないが、それを彼に言えば「少なくとも、俺の業界ではご褒美じゃありません」と答えるだけだろう。
「良いか坊や、確かに坊やは儂らの頭じゃが、だからといって相手の頭と雌雄を決しなければならない訳ではないのじゃぞ」
「確かに私ではあのNoble Orcの相手では足手まといだったろうが、何もいきなり一人で飛び出さなくても良かったはずだ。仲間を引き連れ、最初から援護を受けて戦えばあんな危険な策に頼る必要は無かったんじゃないか?」
『そうよ、Samから聞いた時はおkaa-san faintedするかと思ったんだから! Vandalieu、あなたはまだ三ageにもなってないchildなのよ、幾らなんでも無茶をし過ぎよ!』
一番強くVandalieuを叱っているDarciaの声や姿はVandalieuにしか認識できないので、ZadirisとBasdiaにとっては二人で説教しているつもりなのだが。
「はい、すみません」
言い訳せずに、Vandalieuは素直に謝った。確かに、今思い返してみると一人でBugoganに突っ込んだのは無謀だった、もっと方法があったはずだと思ったからでもあるし、ZadirisやBasdia、そして誰よりもDarciaに心配をかけてしまったからだ。
Basdiaが言うように最初から皆でBugoganに襲い掛かり、Vandalieuが足止めに専念している間にGhoul達の弓矢や投擲Weapon Equipment、攻撃magicで延々攻撃するという手段なら、時間はかかってもBugoganを無力化出来たのではないだろうか。
そのtacticsを実行する前に、Ghoul達の矢や投擲Weapon Equipmentに【Deadly Poison】をかけておけばなお良し。
その上でBugoganに誰も殺されないようにするのは難しかったが、難易度では実際にやった肉も胸boneもlungも切らせたtacticsと、あまり変わらなかったかもしれない。
一晩経って冷静になって考えると、そういうtacticsもあったなと考えられるようになった。
それに気がつかなかったのは、自覚は無かったが当時の自分は焦っていたのだろうとVandalieuは思った。
まあ、それも久しぶりの実戦、それも大規模な戦いだったと思えば無理も無いと、これから長く続く説教に耐える為に自分を慰める。
『でも、それだけVandalieuがGhoulの皆の事を想っているって事だから、今回はこれぐらいで大目にみます。でも、次からあんな事はしないでね』
「だが、Vanに信頼してもらえるほど私達が強くなかったのも事実だ。実際私はあのNoble Orcに矢を放ったが、全てMagic Swordで切り払われてしまった。あれでは援護どころか隙を作る事も出来ない。
済まないVan、私のimmatureのせいで無茶をさせた」
「確かにのぉ。それに坊やのお蔭で儂らには一人の死人も出なかった。全て坊やがmagic itemを分け与え、skillでEnhanced (1)し、Manaを譲渡し、敵のMageを次々に無力化してくれたおかげじゃ。それを考えれば儂らは最初から坊やには無茶をさせておる。
すまぬな、坊や」
「……え?」
しかし、もっと怒られるかと思ったらDarciaは早々に許してくれ、BasdiaやZadirisに至っては逆に謝られてしまった。
驚くVandalieuだが、「――なんて言うと思ったか?」的などんでん返しも無いらしい。
「あの、もう良いんですか?」
思わずそう聞くVandalieuに、Darcia達は目を瞬かせた。
「そうじゃが……坊やも別に叱られたい訳ではないじゃろう?」
なのに何故そんな事を聞くのかと困惑するZadiris達に、Vandalieuはつい深く考えず答えていた。
「そういう訳じゃないですけど、今まで叱られた時はもっと辛いか長い物だったので」
Vandalieuのこれまでの人生は、EarthとOriginでは年長者に恵まれない人生だった。
Earthで彼を育てた伯父が彼を叱る時には、必ず暴力と怒鳴り声がセットで付いて来た。しかも外面を気にするので、その場では叱らず家に帰ってから叱るのだ。その上Vandalieuの言い分も聞かず、何故そうなったのかの原因も考えず、「二度とするな」と言う以外の改善点も指摘せず、叱った後これから如何すれば彼がそんな事をしなくなるのか考えもしない。
止めは叱る理由が「親noneの分際で人並みのluxuryをしようだなんて、俺に面倒をかけるなんてフザケルな!」なのだから、怒りかhorrorしか覚えない。
伯母が叱る時は、只管長かった。長々と暗い口調でグチグチと、何が言いたいのかさっぱり分からない事を延々言い続けるのだ。彼女の気が済むか、他の用事が出来るまで。酷い時は「あなたを叱るために時間を無駄にしたじゃない」と、数時間叱られ続けた。
学校のInstructorは、何かtroubleがあるととりあえずVandalieuを、おざなりに叱った。troubleを誰が起こしたのか、原因は何なのか考えるより、当時から挙動不審で暗い色の古い服ばかり着ている彼が悪い事にしておけば楽だったからだ。実際、それで小学校のclassは纏まっていたから、それは学校では正しい事なのだろうとVandalieuは思っていた。
その教訓から、中学高校では空気のような存在になって目立たず平和に過ごす事に成功した。
そしてOriginでは、「叱られる」という行為は「罰せられる」という意味に変化した。
OriginでのVandalieuはただの実験動物であり、彼を育てた研究者達にとっては教育ではなくTrainingする対象だったからだ。
拳は電気shockに代わり、説教はlung腑を抉るような言葉のknifeに変わった。certainly Vandalieuの言い分を聞く理由は無く、全て研究者の都合が優先される。
時には理不尽な理由で痛みを受け続けた場合、Manaの質は変化するのか実験するという理由で電気shockを流され、言いつけを守っても床の上で痙攣し続けた事もある。
そうした経験というよりtraumaの結果、Vandalieuは誰かに怒られる事を極端に恐れるようになっていた。
相手が殺しても構わないなら、殺したい相手なら、殺せる相手なら平気だ。戦いも怖くない、殺し合いもだ。しかし、そうでない相手から怒られ叱られるのは怖い。
certainly DarciaやZadiris、Basdiaがかつての伯父や研究者達のような真似をするとは微塵も思っていない。しかし、思っていなくてもダメなのだ。
『Vandalieu……ごめんね、怖がらせてしまって本当にごめんなさいね』
Vandalieuの過去を大まかにだが知っているDarciaは、過去彼に何があったのか大体察し、物理的には存在しないがヒヤリとするSpirit Formの腕でひしっと抱きしめてくれた。
『そんな、kaa-sanが謝る事じゃないよ』
前世以前のtraumaなのだから、Darciaにそれを注意するように心を砕けというのも酷だ。このworldで前世のMemoryを持ったchildを育てた経験のある母親は彼女が初めてなのだから、お手本も何も無いのだし。
しかし Vandalieuが前世のMemoryを持っていると知らない二人には、間違ったconjectureしか出来ない。
「坊や、今まで坊やの母親の事は詳しく聞いた事が無かったのじゃが……」
「どんな、人だったんだ? 普段はどんな-sama子で、Vanを怒る時はどうなった?」
同情的な瞳と、歯切れの悪い口調。その-sama子を見て、Vandalieuは「あ、もしかしてkaa-sanが俺を虐待していたと思ったのでは?」と気が付いた。
「違います、違います、kaa-sanじゃありません。丁度良いので事情を話しますけど、Vigaroを呼んできていいですか?」
『Vandalieu、私の事は気にしなくて良いのよ。彼女達には私は見えないのだし』
「気にします。kaa-sanが誤解されるのは、俺も悲しいから」
Darciaの事をZadiris達に誤解されるのが嫌だったし、originally彼女達に事情を話そうと思っていたのでVandalieuはこの機会に全てを話す事にした。
「なるほど、そんな事が……」
Vandalieuが自分には前世と、更にその前のMemoryがあり、更にはそれらがanother worldの物である事。更に自分と同じ、そして自分には無い常識を超えたAbilityを持つ者が百人、これからこのworldにreincarnationしてくる事を話すと、Zadiris達は驚きと、何故か納得を顔に浮かべた。
信じてもらえないよりはいいのだが、あまりにもすんなりと信じてくれたので逆にVandalieuが困惑していると、彼女達は口々に納得した理由を言った。
「今までこのworldに無かったattribute magicを使う、Mana一億のchildじゃ。Dhampirである事を差し引いても、これぐらい非常識な来歴を持っている方が逆に常識的じゃ」
「それに、まだ三ageにならないのにVanはあまりに多くの事を知っている。Sam達から教わったにしてもだ。
それも前世からの知識だと聞けば納得できる」
「あー、二人の言う通りだ。我の言う事はもう無い」
「……ああ、そう言われるとそうかも」
「まあ、後百人坊やのような者が増えると言うのには驚いたが」
「Mana一億以上が百人か……」
一億のManaを持つ少年Shoujoがadventurerや国に仕えるKnightやMageになって、Devil Nestsでmonsters狩りをする姿を想像して、深刻そうな顔つきで考え込むZadirisとBasdiaだが、Vandalieuは首を横に振った。
「いや、maybe Manaは俺よりもずっと少ないと思う」
「何? そうなのか?」
「はい。俺のManaがこんなに多いのは、俺が何も持っていないからだから」
Vandalieu以外の百人のReincarnatorには、それぞれRodcorteからCheat Abilityやattribute magicの適性が与えられている。VandalieuのManaが異常に多いのはその代わりなのだ。Rodcorteは『Empty Frame』にManaが宿るからだと言っていたが、その言葉を借りるなら、他の百人には『Empty Frame』が存在しない事になる。
彼らの枠はCheat Abilityやattribute magicの適性で埋まり、『Empty Frame』なんて存在しないはずだから。
maybe、殆どの者はこのLambda worldの一流のMageの平均的なManaである一万を多少超えるくらいではないだろうか。そのVandalieuのconjectureを口にすると、Zadiris達は小さく安堵の息を吐いた。
「そうか、それなら安心じゃな」
「いや、でもCheat Abilityですよ」
「儂は、その『ちーとAbility』がどんな物なのかよく分からんが、Manaが一億ある時点で十分常識の埒外じゃよ、坊や」
Zadirisの言う通り、このworldで一流と言われるMageでもManaは一万を超える程度。超人や人外と評されるAClassやSClass adventurer、そういった超人でも倒せるか分からない強大なmonsters、それ等でもManaが十万あるかどうかだろう。
一億を超えるManaなんて、それこそAge of Gods Eraに存在した神やDemon Kingと肩を並べる量なのだ。
「……そうですか? まあ、普通のattribute magicが使えれば、そうかも知れませんけど」
しかし、その持ち主のVandalieuは相変わらずその実感が薄かった。戦闘で使い勝手の良いFire-Attributeや土attributeのmagicが使えず、magicの制御が激甘で術を一つ行使するだけで最低でも数千のManaを使う彼にとって、自分の力はとてもCheatと言える物ではないとしか認識出来なかったのだ。
『kaa-sanね、Vandalieuはもっと自分に自信を持って良いと思うのよ?』
「うーん、善処します。
それはin any case、このまま俺がGhoul Kingで居続けると皆に迷惑がかかるかもしれません。reincarnationしてくる連中は、Human以外の知的生物が存在しないworldしか知らないから何をするか分からない」
このworldにはStatusやskill等のEarthやOriginのgameのようなsystemが存在する。だから連中がgame感覚でmonstersを殺戮するかもしれない。
いや、殺戮する対象がmonstersなら別に良い。問題なのは、Amid Empireでmonsters扱いされているVida's New Racesが対象になるかもしれない事。Vida's New Racesであるという認知すらされていないGhoulは言うまでもない事だ。
しかも Vandalieuの仲間となれば、「ヒャッハー!」とばかりに女childも見境なく蹂躙する可能性が否定できない。
Vandalieuと他の百人は、冷静に考えれば明確に敵対している訳ではない。Rodcorteのmissや不幸な偶然が重なって、結果的に百人はVandalieuもOriginにreincarnationしている事に最後まで気がつかず、そのままUndead Transformationした彼に止めを刺してしまっただけで。
しかし Originで止めを刺された後、Rodcorteの前でVandalieuが奴らを殺してやると宣言してしまったのでどうなるか分からない。幾ら同じReincarnatorだからといって、自分達を殺してやると喚く奴と仲良くなりたいかと聞かれればVandalieuだって首を横に振る。
Rodcorteが今もVandalieuを見ていて、復讐するつもりが失せている事に気がついてくれれば良いのだが……望みは薄い。
『あの神、俺達がreincarnationしたOriginの事も碌に見てなかったみたいだしな』
見ていたのなら、少なくともAmemiya Hiroto達にVandalieuを助けるようOracleでも下してくれても良いはずだ。それが無かったのだから、期待は出来ない。
なのでNoble Orc率いるOrcの大集落も消滅したし、さっさと称号を返還するべきだとVandalieuは思うのだが、Zadiris達の意見は違った。
「ふむ……確かにそうかもしれんが、その百人は一度にreincarnationするのではなく、そのOriginというworldで死んだ順に来るのじゃろう? じゃったらまだまだ先の話じゃし、一度に姿を現すにしても何人かしか来ないのではないか?」
VandalieuがOriginで止めを刺された時、奴らは二十代前半に見えた。しかしどうやら軍事国家の秘密研究所に発生したUndeadを退治するために派遣されるような、危険な仕事をしているようだ。
だから、もしかしたら仕事で失敗してVandalieuが死んだ半年後や、一年後に死んでいる者もいるかもしれない。
しかし、彼らはVandalieuが与えられなかったCheat Abilityはcertainly、magicの適性やFortune、Destinyに守られている。そう簡単には死なないだろう。そしてOriginの科学力はEarthに無いmagicという技術のお蔭で、Earthよりやや進んでいるようだった。
なので、殺されたり癌等の重Diseaseにかかったりしなければ八十代、もしかしたら百年以上Originで生きるかもしれない。
確かに、随分先の話だ。
それに一度に何人も死ぬような事があるとも思えない。
「それに、何もその百人全員がAmid Empireやその属国に生まれ変わるという訳でもあるまい。坊やが向かうMountain Rangeを越えた向こうに在る国かもしれんし、他のContinentかもしれん。Humanの両親の下に生まれるとも限らん。
もしかしたら、儂らGhoulや他のVida's New Racesの腹から生まれるかもしれん」
「まあ、そうかも知れませんけど……」
Zadirisの言う事は尤もなので、Vandalieuは先に何も続けられない。その彼に、Basdiaが追い打ちをかけた。
「それに、その百人以外にも私達にとっての脅威は幾らでも存在する。もしHuman達がこのDevil NestsにBClassやAClassのadventurerを派遣して来たら、それだけで滅亡の危機だ。今回みたいに、他のDevil Nestsから高Rankのmonstersがやって来て一大勢力を築くかもしれない。
だから、その百人がreincarnationして来てもVandalieuから離れなければならない理由にはならない」
Basdiaの言う通りで、彼女達GhoulはこのDevil Nestsでは最大の勢力だ。しかし、Mirg Shield Nationが本気で上Class adventurerを派遣すれば、一溜まりも無い程度の勢力なのだ。
「それに、Vandalieuが居なければ今回の戦いに勝てたかも怪しい。勝てたとしても、childが産まれないのでは結局集落を維持できない。
それで後数十年先の事に怯えて逃げる意味は無い」
「ま、まあ、それもそうかもしれませんけど」
これも尤もで、Vandalieuは強く否定する事も主張を繰り返す事も出来ない。Basdia達Ghoulにとって日常に脅威が存在するのが当然で、そのため脅威を避けるよりも生き延びるために戦う、脅威に怯えるよりも備えるのが当たり前なのだ。
「そもそも、Vanが私達から離れてもその百人がmonsters狩りを始めたら同じ事だと思うぞ。それを考えたら、寧ろVanが居る方が安心だ」
「っ!? それは思いつかなかった……!」
思わず絶句して驚くVandalieu。実際、別にreincarnationしてくる百人はVandalieuが関わっていなくてもmonstersを大々的に狩る可能性は高い。
なんたって奴等には力があり、このLambdaでmonstersは悪なのだ。正義感を満足させるためや、単純に手っ取り早く金とHonoraryを手に入れるためにmonstersを狩る可能性は高い。
衝撃を受けているVandalieuに、彼の意見を翻させる決定的な意見を告げたのは意外な事にVigaroだった。
「そもそもVandalieu、そいつらはそれほど強くないだろう」
思わず唖然としてしまうVigaroの一言。強くないだろうって、そんな事ない。常識を超えて強力で、ずるとしか思えないくらい強大。そんな百人を、強くないだろうなんて。
「と、当然強いに決まっているじゃないですか。きっと俺よりずっとっ」
「だが、そいつらは死ぬんだろう? だったらお前なら殺せる」
当然だよなと言わんばかりのVigaroに、Vandalieuは反射的に反論しようとする。
「そんな訳が――あっ!」
そして、はっと気が付いた。そうだ、奴らは確実に死ぬのだ。
Rodcorteは、Vandalieu以外の百人にCheat Abilityを与えた。
Fortuneを与えて守った。
Destinyを与えて導いた。
しかし、Rodcorteの狙いはEarthで死んだ彼らを使ってLambdaをdevelopmentさせる事で。その前にOriginにreincarnationさせたのは経験を積ませるためでしかない。
だから、Originで『死んだ』順にLambdaにreincarnationするよう仕組んである。
だから、死ななければ困るのだ。Originで死ななければ、何時まで経ってもLambdaに送り込めないから。
なので、Rodcorteが奴らに与えたCheat Abilityには、絶対死なない、殺されないというようなAbilityは含まれていない。
絶大なAttack Powerを手に入れるCheat Abilityを持っているかもしれないが、Defense Powerが普通なら殺せる。
超High-Speedで動けるかもしれないが、【Incurable Disease】でdiseaseにしてしまえば殺せる。
切断された手足を新しく生やせるようなRapid Regeneration Abilityを持っているかもしれないが、脳やheartを一撃で同時に破壊すればきっと殺せる。
絶対的な防御Abilityを持っているかもしれないが、【Aging】させれば老衰で殺せる。
どれもこれも簡単ではない。きっと難しいし、命懸けの戦いになるだろう。
だが、VandalieuはDeath-Attribute Mageだ。極めれば死を齎すのも遠ざけるのも自由自在のmagicの使い手だ。相手が何時か死ぬ生き物である以上殺す手段は必ず存在し、Vandalieuにはそれを実行して完遂する手段があるはずだ。
「こんな根本的な事に、なんで今まで気がつかなかったんだろう……」
「自分に無い物を持っている者を怖がるのは当然じゃろう」
「それに、一度お前を殺しているのだろう。勝てないと思い込んでも無理は無いと我も思うぞ」
思わず膝を突くVandalieuに、彼が百人のReincarnatorを恐れていた理由を言い当てるZadirisとVigaro。
「生まれ出でてから三年近く考えていたのに、気がつかなかった。指摘してくれたお蔭で、未来に希望が増えました。ありがとうございます」
「おう、お前と仲間で居た方が我達は助かる。気にするな」
もうKingの称号を返上すると言いださなければ、それで良いとVigaroは満足そうに昨日より大きくなったfangsを剥き出しにして笑った。
「まあ、adventurerやNobleになるのには儂らの方が邪魔になるかもしれんがな」
「その時はTamerしたとか言い張ります。それでダメなら無視できない程のachievementを打ち立ててやります」
「おお、吹っ切れたな、Van」
自分でもCheat Ability持ちを殺せる。そう思い至ったVandalieuの人生の悩みは半減し、頭の中はすっきりとしていた。
Gordan High PriestやHeinzといった仇を討つ等の目標はそのままだが、このまま強くなれば実現可能だと確信できる。EarthやOriginならin any case、このworldには見てわかるskillが有り、更に自分にはManaが一億以上ある。このManaを使いこなせるようになれば、敵討ちもCheat殺しも可能なはずだ。
人生の先にあったcountlessの山と谷の険しさが、緩和されたようだった。
そんなすっきりとした気分のVandalieuは、朝になったら言おうと思っていたがまだ言っていなかった事を思い出した。
「あ、そういえばHumanもこのOrcの大集落を討伐するための準備を進めていて、昨日俺達が退治した事を知られたんですが、どうしましょうか?」
「坊や……そっちの方が差し迫った危機じゃ」
会議続行の模-sama。
顔色の悪い Lucilianoは、早朝から緊張を強いられていた。
「報告は、以上です」
彼が膝を突いて報告を述べる先に居るのは、雇い主である髭NobleのBerno Balchesse Viscountに、ずらりと並んだKnight達。
そして、上座に座った中年と壮年の間の年頃の男。中肉中背で、戦闘が専門ではないにしてもLucilianoのように、Nobleからの指名依頼を何度も受けてきたadventurerが緊張するような相手では無い。
しかし、Lucilianoは彼の前に立つ度に背筋が寒くなるような、嫌な緊張感を味わっていた。
「その報告は、事実なのだな?」
「はい。Palpapek Marshall」
男の名は、Thomas Palpapek Marshall。peerageこそEarlだが、それはこのMirg Shield NationがAmid Empireの属国であるため、属国の王族はEmpireのMarquisであると位置づけられているためだ。
もし、Mirg Shield Nationが属国ではなく独立国なら侯peerageであっても……Dukeであってもおかしくない程の手腕と、実績を持つ実力派のMarshall。
彼がその地位に就いてからMirg Shield NationはOrbaum Elective Kingdomからの攻撃に耐え、治安を向上させ、adventurerとCoordinationしてmonstersがDevil Nestsから溢れ出す大氾濫を幾度も未然に防いできた。
「なるほど。Noble Orcが全滅し、その配下も散り散りにか……」
「非常に喜ばしいですな、Marshall -dono」
本当に嬉しそうなBalchesse Viscountが、Palpapek MarshallにSmiling Faceを見せる。心なしか自慢のカイゼル髭の艶まで増したように見える。
彼は大量の税金を使って大勢のadventurerを雇い、更にSoldierやKnightも送り込んで犠牲が出るだろう討伐隊を派遣しなくて済みそうで、ほっとしているのだろう。
下の者を何人でも使い捨てにしそうなimageが強いNobleだが、そんな事を平気で出来るのは余程の暗愚だけだ。ある程度のAbilityを持っているNobleなら、犠牲が出る事は避けようとする。
Soldierは領地の治安維持に必要だし、死傷したからと言って即座に代わりの人員が手に入る訳でもない。武装を支給すれば良い臨時雇いの警備兵とは違うのだ。正規兵にはそれなりの練度と、Loyalty心が求められる。
代々Nobleに仕えるKnightなら尚更で、無駄に消耗させればKnight爵家そのものから愛想を尽かされて他のNobleに主-kun替えされるという醜態を晒しかねない。
普段は下々の者である民草から徴兵した兵でも、犠牲は少ない方が良い。働き手である若者が大勢死ねば当然領地のProduction力が落ち、深刻な経済問題にdevelopmentしかねない。しかも領民からの不満も溜まると良い事が無い。
adventurerの場合はやや特殊で、基本的には全てSelf責任の職業なので十人や二十人程度犠牲が出ても、Balchesse Viscount領のような大きな町なら、何処にも悪impactは出ない。それに、毎年Mirg Shield Nationだけでも数百人のadventurerが犠牲になっているのだ。それでも誰も為政者の責任だとは言わない。
しかしそれも国全体での話で、一定の地域のadventurerの数が急激に減り過ぎるとDevil Nestsでのmonstersの間引きにimpactが出るし、adventurerが集めて来るmonstersの素材等が手に入らず、monsters対策や経済にimpactが出てしまう。
それにadventurerは基本rootless草なので、無謀な依頼をadventurerに強いる領主が居ると噂になればそっぽを向かれかねない。そうなると領地の運営に長期的な支障が出る。
よって犠牲は出ない、若しくは少ない方が良いのだ。certainly場合によっては、そんな犠牲を覚悟してでも行わなければならない事もあるのだが。例えば、町を狙うNoble Orc率いる五百匹のmonstersの群れを討伐するとか。
それが無くなって、討伐部隊を組まなくて良くなったのならBalchesse Viscountとしては良い事でしかないのだ。強力なmonstersを討伐した栄誉だとか、彼はそんな物は欲しくないのだろう。
しかし、Palpapek Marshallの意見は違うようだ。
「そうとも言っていられんよ、Balchesse Viscount。討伐隊の規模を増やした方が良いか……いや、それよりもVampire殺しで名高いGordan High Priestに助力を願うべきか」
「なっ!? 何故そうなるのです、Marshall! 既にNoble Orcは死に絶え、脅威は去ったのですぞ!」
「脅威は去ったのではない。移ったのだよ、OrcからGhoulに。
Noble Orc率いる五百匹のmonstersの群れを相手に勝利する、Ghoulの群れ。Lucilianoは確認していないが、恐らくGhoul Mageや……もしかしたらより上位のハイMageやBerserkerが居る可能性すらある。そんな集団が脅威にならないとでも?」
Palpapek Marshallの言う通り、人々にとってOrcもGhoulも同じmonstersだ。違うのはGhoulには雌が居るので、そう頻繁にHumanのfemaleを攫わない事と、Ghoulは滅多にDevil Nestsから出てこない事だ。
だがその違いを基に、Balchesse Viscount側のKnightが異を唱えた。
「しかし Marshall、今までDevil Nestsの外で、それも群れ単位で活動するGhoulは確認されておりません。そこからconjectureすれば、Ghoulの群れはDevil Nestsから出て来ないのではないでしょうか?」
「特にあのDevil NestsのGhoulは、滅多にadventurerと戦う事すらしない比較的大人しい性質の群れのようです。それにNoble Orc率いる群れはそこのadventurerの報告にもあったように、Ghoulの雌を母体として使っていたのでしょう? 今回の出来事は、単なるOrcに対するGhoulの報復なのでは?」
Noble Orcとその配下の群れを倒す力を持つGhoulの群れは、確かに脅威。だが、それは所詮Devil Nestsの中の生存競争に過ぎず、外に争いが広がる事は無い。
こちらから見えないcupの中の争いに態々参加する必要が何処にあるのか。
その意見に「確かに一理ある」とPalpapek Marshallも頷いた。
「確かに、今までのGhoulならそうだろう。しかし、今までDhampirのchildを群れに置いたGhoulが存在したか?」
だが、そう続けるとBalchesse Viscount以下Knight達は「いえ、聞いた事もありません」としか言えなくなる。
「しかも、状況を考えるとそのDhampirがGhoul Kingである可能性が濃厚……そうだな?」
「はい。状況を考えますと、恐らくそのDhampirがGhoul King、Vandalieuである可能性は否定できません」
それまで黙って控えていたLucilianoは、「違っていても、私の責任じゃない」と言外に言いながらconjectureを述べた。
Vandalieuが来るとGhoulが言っていた場所に現れたDhampirのchild。普通に考えれば、そのchildがVandalieuというnameなのだろうと察せられる。そして、Ghoul Kingの名はVandalieuだと他のGhoulが言っていた。
すると、Ghoul KingはVandalieuという名のDhampirのchildであるという事になる。
いくらDhampirとはいえ少年とも言えない幼児が大規模なGhoulの群れを率いるKingだとは、俄かには信じ難い。しかしそれを否定する材料も声も無い。
その上で、Palpapek Marshallは衝撃的な情報を公開した。
「実は、私はVandalieuというDhampirのchildが何者なのか、心当たりがある」
「何と!?」
「本当ですか、Marshall!」
Palpapek Marshallに仕えるKnight達ですら初耳だったのか、Balchesse Viscount達と一緒にざわめく。Lucilianoですら、思わず顔を上げて驚いた。
「約、三年前。Vampireの誘惑に屈したDark Elfの手配書が我が国に回って来たのは、Balchesse Viscountも覚えていよう。そのDark Elfの名はDarcia。
そして、これは私の手の者が念のためにと調査を進めていた過程で判明したのだが、Dark Elfを誘惑したVampireの名はValen。
両親の名の一部をchildの名にするのは、珍しい話ではあるまい」
ValenとDarciaの息子だから、Vandalieu。このnameの付け方は、平民に多い。
「ですが、そのDhampirは塵に返されたのでは無かったのですか!?」
「いや、確か処刑されたのは母親のDark Elfのみだったはず。当時乳飲み子だったDhampirの死体は、遂に発見できなかったと……」
「何といい加減な! templeの者達はそんな雑な事で高い寄付金をdemandするのか!?」
「だが、幾らHalf-Vampireとはいえ生後間もない乳飲み子が母親を亡くして生きて行けるはずが無い。nameはただの偶然では?」
「しかし、ageも合う。偶然で済ませるには無理があるのでは?」
狼狽し、conjectureを言い合うKnight達。それをPalpapek Marshallの力のこもった声が遮った。
「憂慮すべきは、Ghoul KingであるDhampir、Vandalieuがただ生き残るのを良しとせず、復讐のfangsを研いでいる場合だ。
その時、何が起こるのか。言うまでもないだろう」
Knight達は一-samaに顔を強張らせて口を閉じた。特にBalchesse Viscountの顔は青くなっている。
自分達に恨みを募らせているDhampir率いる、強力なGhoulの大群。どう考えてもNoble Orc率いるOrcの大群よりも、脅威だ。
Orcは頭が悪く、たとえ上位種に率いられていてもCoordinationが雑で付け入る隙が多い。
しかし GhoulはOrcよりもずっと頭が良く、Kobold以上にCoordinationして戦う事が得意なraceだ。それもMageや上位種しかmagicの使えないOrcとは違い、雌ならほぼ確実にmagicが使える。
Breeding力こそOrcに大きく劣るが、それはこの場にいるNobleやKnight達にとって意味の無い情報だった。
五百匹以上のOrcの大群に勝ったGhoulの群れなのだ、きっと同じか、少なくても四百以上の数がいるだろうと彼らはconjectureしていたからだ。
……実際には、戦闘員はVandalieuと彼に従うUndeadを含めてやっと二百程度なのだが。
そんな大群が襲い掛かって来る時、まずfangsを向けられるだろう最寄りの町の領主であるBalchesse Viscountが、今にも卒倒しそうな-sama子になっても無理はないだろう。
「ぐ、Marshall! どうかお力添えを!」
「certainlyだともBalchesse Viscount。早急に、そしてより規模の大きい討伐隊をorganizationし、GhoulとDhampirをあのDevil Nestsから根絶しようではないか」
こうして地元領主から請われる形を維持したまま、より大きな討伐隊をorganizationする事になったPalpapek Marshall。この討伐が成功したら、特にVampire Hunterと名高いGordan High Priestが討ち漏らしたDhampirを討てたら、彼の名声はより高まる事だろう。
(そんな政治の裏側をconjectureするよりも、私は何とかしてここで抜け出さなければ!)
もうあのDhampirの顔は見たくない。Lucilianoはそう思いながら、雇い主から「下がってよい」との言葉を賜るまで待ち続けた。
・Name: Vigaro
・Rank: 6
・Race: Ghoul Berserker
・Level: 5
・Job: none
・Job Level: 100
・Job History: none
・Age: 168age
・Passive skills
Night Vision
Mysterious Strength:4Lv
Pain Resistance:4Lv
Paralyzing Venom Secretion (Claws):1Lv
・Active skills
Axe Technique:5Lv(UP!)
Unarmed Fighting Technique:2Lv
Commanding:3Lv
Coordination:2Lv
・Name: Basdia
・Rank: 4
・Race: Ghoul Warrior
・Level: 63
・Job: none
・Job Level: 100
・Job History: none
・Age: 26age
・Passive skills
Night Vision
Mysterious Strength:3Lv(UP!)
Pain Resistance:2Lv
Paralyzing Venom Secretion (Claws):3Lv
・Active skills
Axe Technique:3Lv(UP!)
Shield Technique:2Lv(UP!)
Archery:2Lv
Throwing Technique:1Lv
Silent Steps:1Lv
Coordination:2Lv(UP!)
・Status Effect
Infertility