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Chapter 208: Demon Kingにとっては平穏な一週間

 現Moksi EarlIsaac Moksiは不機嫌だった。

 昨日は、一昨日の昼過ぎに起きた共同temple……複数のGreat Godbelieverの多いSubordinate GodIdol Statueが祭られ、believer達が祈る施設から発した謎の事件の調査と今後の対策の為、一日中忙しかったからだ。


 突然Alda Idol Statueの一部が砕け、敬虔なClergymanだったAldaPriestが絶叫あげて失神すると言う、不真面目なバカNobleならIdol StatueInanimate Aging劣化とPriestの健康上の問題として片づけそうなそれを真面目に扱った内の一人が、彼である。


 協力を要請したのは、共同templeに務めるAlda以外の各神のPriest達やMage guildGuild MasterAdventurer’s GuildGuild Master、そしてEarl 家お抱えのMageMoksiの頭脳を結集したといっても過言ではない人員だ。

 だが彼らとの共同調査と会議の結果は、とても実りある物とは言えなかった。


 事件の原因はでも、Moksi Earl領でも、Orbaum Elective Kingdomでも無く、恐らくGodsの身に何かが……特に『God of Law and LifeAldaとそのSubordinate GodGod of RecordsCuratosの身に何かが起きたのが原因である事は分かった。

 分かったが……同時に対策の取りようがないと言う事実も分かってしまった。


 IsaacAlcrem DuchyNobleの中では力を持つ方だ。交易都市の一つを領都にしているし、経済力にも自信がある。抱えている軍もそれなりに精強だ。

 だが所詮は人である。Godsの問題に介入し、問題を解決できるようなHeroではないし、そのHeroに心当たりも無い。


 だから今後同じ事が起きるのかどうかも分からない。

 Isaacたちに出来るのは、これ以上の異変は起こらないと民に向けて発表して落ち着かせる事。そして同-samaの事件が起きた際には、素早く事態を収拾できるよう備える事。


 そして、Idol Statueが壊れた場合に備えて予備のIdol Statueを揃えておく事ぐらいだ。何でもIdol Statueはただの偶像では無く、人々の信仰や祈りを、Idol Statueを経由して神に届ける役目があるらしい。

 そのため神の身に何かが起きた場合、Idol Statueにそのimpactが表れるらしい。聖印やrelief、教義を記した聖典等も実は同じ役割を果たしているが、Idol Statueが最もimpactが表れやすいとconjectureされていた。


 conjectureばかりだが、実際conjectureと経験則ばかりなので仕方がない。神ならぬ身に神の事情が分かる筈も無い。

 しかし、そのconjectureと経験則によれば人々の信仰や祈りが向けられていないIdol Statueは、神の身に何が起きても傷つく可能性は低いと言う事だ。


 そのためIsaacは今後同じ事件が起きた時に備えて、共同templeで祭られている全てのIdol Statueの予備をStonemasonに彫らせ、出来上がったら出番が来るまで布をかけて倉庫の中に仕舞っておくことを決めて会議を終えた。

 この事件と同じ事がElective Kingdom中、いや Bahn Gaia continent中で起きているとしたら、Stonemasonや彫刻は稼ぎ時だな。そんな不謹慎な事を考えながら、遅い床に就いた。

 明日は遅めに起こすよう宰に頼んで。


「……まだ朝早いようだが?」

 だと言うのにいつもと同じ時間に起こされたIsaacは不機嫌そうに宰を睨んだ。

「申し訳ありません、お館-sama。一大事でしたので」

「一大事? 今度はVidaIdol Statueでも砕けたのか?」


「いえ、報告が上がって来まして……MoksiDhampirが現れました」

「そうか、Dhampirが現れたか。それは一大事……何だと!? Selen嬢が滞在しているのか!?」

 寝ぼけ眼のままMaid達に身支度を任せていたIsaacの目が、かっと見開かれた。

 Orbaum Elective Kingdomで生存が確認されている唯一のDhampirSelenが滞在しているのかと思ったからだ。


 彼女自身は希少なraceAlda過激派やVampireに狙われる数奇なDestinyに生まれついただけの、同情する点は多々あるが平民でしかない。

 しかし保護者は一年以上Dungeonに潜ったままだが、SClass adventurerHonorary NobleHeinzとその仲間達だ。

 もし滞在中にtroubleが起きて彼女の身に何か起きたら……考えるだけで恐ろしい。


 そんな彼女が領主である自分に無断でに滞在しているのだとしたら、確かに一大事だ。

「いえ、問題のDhampirSelen嬢ではありません。商業guildの職員からの報告によりますと、Vandalieu Zakkartと言う少年であるそうです」


「なに? 他にDhampirがいたのか。……待て、色々分からんぞ。nameはともかく姓があるのか? しかも Zakkartだと?」

 このworldの多くの国では、姓を名乗るのは王族やNoble等だけで平民は名乗らない。Orbaum Elective Kingdomでは平民が姓を名乗るのは禁止されていないが……そんな事をするのはNoble気取りの痛々しい奴か、没落したのを認められないNobleの末裔を除けば、詐欺師ぐらいのものである。


 それなのに一体何故そのDhampirは、それも『Fallen ChampionZakkartの名を姓として名乗ったのか。

「何故だ? まさかStatusに表示されている訳でもあるまいし……狂信的なZakkart崇拝者だとしたら危険かもしれん。

 いや待て、そのDhampirはそもそも何故商業guildに行ったのだ?」


「それが、母親であるDark Elfと一緒に仮登録の為に訪れたようです。Statusも、仮登録のため確認した者はいないそうです」

「母親がDark Elfなのも少々驚いたが……仮登録を? ……何故だ?」

「はぁ、何でもFood Stallで串焼きを売って生活するつもりのようです」


「母親と一緒に、串焼きを。……Dark ElfDhampirの母と子が、か? たまたまオッドアイに生まれついたchildを母親が唆しているとか、実は片方義眼でraceを偽っている詐欺師の可能性は無いのか?」

「いえ、担当した受付嬢は少年の指先からclawsが伸びるのを確認したそうです。Dhampirに間違いありません」


「そうか……そのDhampirは、仮登録を済ませた後何をした? Adventurer’s Guildへ出入りしたか? 誰かに保護を求めるような事は無かったのか?」

「報告によりますと……Food Stallで使う炭や肉を店で購入。その後商業guildintroductionされた曰くつきの一軒を購入後、指定された歓楽街とSlum街を繋ぐ裏路地でFood Stallを営業したようです。

 Adventurer’s Guildや誰かに保護を求める-sama子は無かったようです。ただ、例の『Hungry Wolf』と接触しています」


「……最後以外珍妙で訳が分からんな」

 Vandalieuの昨日一日の行動を聞いたIsaacは渋面を浮かべた。理解が追い付かず、気分が悪くなる。

 Isaacは、Dhampirchildとは他者から命を狙われるかweak存在だと理解している。実際、『Five-colored blades』に保護された後のSelenも、多くの場合Vampireに狙われているし、違法Slaveを扱うSlave商人や猟奇的な趣味を持つNobleからも刺客を送り込まれていた。


 だからもしMoksiDhampirの少年が来たとしたら、領主である自分やtempleAdventurer’s Guild等とにかく頼れそうなorganizationに保護を求めるか、正体を隠して潜伏しようとするのが最もあり得る選択肢だと思った。

 実際、に入る時はDhampirである事を黙っていたようだし。だが、Vandalieuはよりによって商業guildで正体を明らかにしている。


 商業guildが犯罪の温床になっている……と言うような事は無いが、Vampire等の脅威から身を守るために保護を求めるには向かないorganizationだ。

 そしてDhampirは保護を求めるのではなく、何と仮登録をしてFood Stallの営業を始めている。しかも、何故かを一軒購入できる程の現金を持っていた。どれだけそのが安くても、それだけの金があるなら安宿で生活すれば数年は暮らせるはずだ。


「つまり、Zakkartの姓を名乗り当座の生活資金には困っていないはずのDhampirの少年がDark Elfの母親と一緒にFood Stallの営業を始めたと。お前からの報告でなければ信じないところだぞ。

 それで『Hungry Wolf』は何故接触してきたのか分かっているのか?」


 最近の裏社会で頭を現した『Hungry Wolf』のMichaelを、Isaacは領主として警戒に値する人物だと考えていた。何か大それたことを考えているとかでは無く、あまりにも役不足であるために。

 配下に集めさせた情報を分析すると、Michaelの力量はBClass adventurer以上。それだけの実力者が、何故かチンピラのボス程度に納まっているのである。望めばKnightに取り立てられたり、Honorarypeerageを得たり、Nobleや大Chamber of Commerceの用心棒等に就職する事も出来るのに。


 もし脛に傷があってそれが不可能だったとしても、Devil NestsDungeonで格下のmonstersを一カ月に数匹狩っていれば、チンピラを率いてショバ代を巻き上げるよりも稼げるはずだ。

 そんな実力者が周囲のや村に寄った痕跡も無いまま、突然に来たのだ。

 チンピラのボスと言う役には過ぎた力量を持つ、前歴不明の不気味な人物。それが『Hungry Wolf』のMichaelだった。


 そんな男が謎のDhampirに接触して、何をするつもりなのか。

「歓楽街に潜ませている者によりますと、Dhampirの母親のDark Elfを口説いていたそうです」

「……そーか、そーか。ただのナンパか。

 実はそのVandalieuと最近現れた『Hungry Wolf』のMichaelが以前から通じていたと言う可能性は、考えられるか?」


「いえ、彼のFood Stallを『Hungry Wolf』の縄張り内に配置するよう指示を出したのは、あのYosef -donoですからそれは無いかと」

「チッ、叔父上か」

 商業guildSub Guildmasterの一人である伯父、YosefIsaacにとってSlightly邪魔な存在だった。


 関係は良くないが、Isaacにとって敵と言う程の存在ではない。普段の素行がやや悪く、気に入らない組合員に対して規則に反しない範囲で嫌がらせを行う事を繰り返しているが、規則の範囲内なので罰する程ではない。

 しかし、罰する事は出来ないがその分guild内での評価は落ちる。だから何年経ってもGuild Masterに出世できないのである。……certainly、それに相応しいAbilityと器が無い事も昇進できない理由だが。


 YosefはそれをIsaacが手を回して邪魔をしているからだと逆恨みをしており、ますます関係が険悪になる。しかし Isaacにとって実害と言う程の害が無く、罰する口実も無い為放置するしかない。そんな不毛なspyラルに陥っていた。


「あのクソダヌキは何を考えているんだ? 確かにDhampirと言っても平民に過ぎないが……それは今だけの話だ。recordによると成人する頃には高いaptitudeを発揮するraceらしいし、我等がAlcrem Duke閣下は日和見主義だ。名声を高めている『Five-colored blades』に今後も良い顔を見せようとするはず。

 だと言うのにDhampirに嫌われるような事をして、数年後に首が物理的に刎ねられる事になるかもしれないとは考えないのか?」


 Vandalieuも平民だが、Yosefも現在は平民である。Dukeの権力があれば、適当な罪で平民の、それも周囲から嫌われている平民の首を刎ねるぐらい何とでもなってしまう。

 Isaacが面倒なYosefを放置するのは、領都に在るbranchSub Guildmasterの人事を、領主が権限も無いのに強制したと言う悪しき前例を作りたくないからでしかないのだ。


「さて、あの方が何を考えているかは分かりませんが……『Five-colored blades』の方々がDungeonで死んでいると思っているのかもしれませんな。彼らがDungeonに入ってから、今年で二年目になりますし」

「ふむ……そうなるとAlda Reconciliation Factionも分からなくなるか」

「後、『クソダヌキ』という言葉はお控えください」


「分かった。しかし、結局何もわからんぞ。何かを企んでいるのは確実だが」

 Vandalieuが何かを企んでいるのは、間違いない。商業guildでの仮登録からの一連の行動は、何か思惑があるはずだ。だが、その何かがIsaacには全く分からない。

 だが、何か分かるまで静観するのは暢気が過ぎるだろう。


「とりあえず、Knightに私のletterを持たせて接触させてみよう。叔父の件には私は関与しておらず、もし希望するなら保護する準備があると、Extreme Strength平和的に」

「我々が気づいていると教える事になりますが?」


「私がいつまでも気がつかない方が不自然だろう。殊更Dhampirである事を触れ回ってはいないようだが、一応私の叔父がいる商業guildDhampirだと明かしたのだからな。

 調査は継続。念のためにVampireに注意するようAdventurer’s GuildMage guildにも通達を出せ。後は……基本的には何かあるまで静観だ」


「畏まりました」

「では私は寝――」

「お館-sama、朝食の準備が整いました。奥-samaはもうcafeteriaでお待ちです」

「……仕方がない。起きるか」


 こうしてIsaac Moksiの一日は始まったのだった。




 VandalieuFood Stallを開業してから一週間。夢で魂を再構築し、起きている時はFood Stallを営業。休日にはGufadgarnが【Teleportation】で連れて来たEleonora達をに招いてtactics会議&食事会を催す等、平和な日々が続き大きな出来事は起きなかった。


 一方Vandalieuの行動を注視していたAlda's FactionGodsは彼の意図が分からずただひたすら困惑し、Murakami達はとりあえずAlcrem Duchyを目指して移動し続けていた。


 TalosheimではLucilianoが自分も含めた変異したraceのとりあえずの調査を終え、報告書をMelissaに持たせた。

 それによると、まずHell raceAbility ValuesHumanに比べてManaが多めで、【Abnormal Condition Resistance】や【Rapid Regeneration】、そして【Night Visionskillを持つracerace的な弱点は特になし


 次にDvärgensはやはり元になったDwarfと比べてAbility ValuesManaIntelligenceが高く、skillDwarfが生まれつき持つものに加えて【Fire/Light Attribute Resistance】を獲得していた。

 そしてHell Beast raceは、主にVampireが持つskillBeast raceの場合は持つ者は極稀な【Beast Transformation】を何とrace単位で持っているとconjectureされた。


 【Beast Transformation】は人型の獣になるskillで、Ability ValuesEnhanced (1)されclawsfangs等のWeapon Equipmentが備わるskillだ。

 まだHell Beast raceoriginally Wolf-species Beast raceだったShoujoが変異した、魔Wolf-species Hell Beast raceしかいないため分かっているのはこれぐらいだが。


 それに各raceの寿命や生態もまだ不明だ。元のraceより短くなると言う事は無いだろうが、若干生殖Abilityは落ちるかもしれない。

 その辺りは今後Talosheimで変異する者達が出て来るだろうから、何れ分かるだろうとLucilianoは纏めている。


 Vandalieuがする事は、そうした詳細よりも国民がpanicに陥らないように各raceが変異する可能性があると国民に周知する事である。……Boundary Mountain Range内部やDemon continentで流通しているBlood potionの主な原材料はVandalieubloodであり、まぎれもなく彼のfragmentなのだ。

 それを考えると、誰が変異してもおかしくは無い。ただ、加工していないbloodを直接飲んだ場合程変異の可能性は大きくないようだが。


 そして仲間達では、【Demon King's bones】等のfragmentbody partに組み込んでいたKnochenBone Manにそれぞれ変異が起きていた事が分かった。

 Knochenはこれまで空をFlightする際はバラバラのboneの群れに戻らなければならなかったが、boneを組み立てたconditionのままFlightする事が可能になった。


 小さな変化に思えるが、これによりKnochenに無かったtransportation Abilityが加わり、城塞やConcert theaterformのまま移動する事が可能となったのは、大きい。

 地上に展開していた時大量の敵や自然災害が迫って来た場合、中に入ってそのまま飛んで逃げれば良いのだから。

 それに……boneを組み合わせて城塞のようにGiantな球体になり、対象にHigh-Speedで体当たりをかますと言う規格外の攻撃手段も取る事が出来る。


 本人はboneが痛むからやりたがらないだろうが。


 Bone ManRank11のSkeleton Blade Lordのまま足踏みしていて、その為ひたすら技巧を磨く事に集中していたが昨日突然Rank upした。

 したのだが……Rank upしたのがSkeleton Blade Emperorと言うraceで、本人は『ヂュオオオ! 主に何と言う不敬を! 腹があったらSlashたい!』と嘆いていたらしい。


『気にする事は無い……我が主は何れEmperorの位をも超える器だと。ヂュオオ……なるほど!』

 とりあえず、Demon King Familiarを通してVandalieuが宥め説得した結果そう言って立ち直ったが。

 なお、二人ともVandalieu’s Divine Protectionを隠していた伏せ字は完全に解放されていた。Talosheim templeでは早速NuazaGiant Vandalieu像建立計画を始動したようだ。


 石像を作るならせめて大人になってからにして欲しいと思ったVandalieuだが、それを待っていると何十年かかるか分からないので、諦める事にした。……Idol Statueではなく石像であると明記するよう条件は出したが。


 私生活では仲間が一頭増えた。

 お湯で柔らかくふやかし、塩気を抜いた干し肉を食べている犬を微笑ましく見つめ、痩せた背中を撫でてやりながらDarciaは尋ねた。


Vandalieu、この子のnameは何にするの?」

 「何で拾って来たの」とか「-chanと世話できるの?」等の、世間一般でよくありそうな流れをDarciaは省略した。その訳は――


『うわ、凄い! 普通の犬ですよ!』

Bocchanが霊でもUndeadでもmonstersでも人でもない、普通の犬を拾って来るなんて……こんな日もあるんですね』

 このRitaSalireの言葉に現れている。


「俺だって普通の犬を拾って来る事はありますよ。当初はmouseで済ませるつもりでしたけど」

 Vandalieuが裏手に居た犬を拾った名目は、実験台である。Undeadと生物、Undead同士の交配実験で生まれた動物は、彼が【Fragment BestowerJobに就く前に零れたBlood potionを少量舐めただけで、monstersに変異した。


 では【Fragment Bestower】になった今普通の動物を、準Devil Nestsに等しい環境に在るTalosheimではなく普通の人里、このMoksiで飼育したらどうなるのか。

 それを確かめるためだ。

 後、飼いならせたらTamer guildに登録するのも良いかもしれないと考えている。


『つまり、手の届く範囲に居た飢えた犬を見捨てるのがstealthなかったと』

「むぅ、Chipurasに俺の秘めた胸の内を見抜かれてしまった」

『運が良かったですね、この子。しっかり食べて大きくなるのよ』

『すっかり痩せちゃって……ところでこれぐらいの子に肉を食べさせて大丈夫?』

『……お姫-sanOrbiaの姉-san、この犬はこれで大人だと思いますぜ』

「歓迎しよう、新たなる同胞よ。全てはVandalieuのお心のままに」


 ワイワイと一同に見守られながら久しぶりの肉を食べる犬は、肉以外にも安心と緊張と言う奇妙な感覚を味わっていた。

 安心しているのは、の中に一人もHumanが居ないからだ。の中にいるのはUndeadEvil God (M)、そしてGoddessの化身ばかりで、犬にとっては全員人ではない何かだ。


 そして緊張しているのはVandalieu越しに自分を値踏みするように見ている何かが存在している事だ。

 その視線の元はEisenQuinnPeteKühlVandalieuに装備されている面々である。

 犬は新たな群れの最下層に組み込まれたのを強く意識していたのだった。


「それでnameですが……毛の色に合わせてハイとかグレイは安直ですし……」

 干し肉を食べ終え、顔を上げて自分を見つめる灰色の毛並みの犬を見つめ返しながら、Vandalieuは暫く考えた後決めたようだ。


「初めて会った時すぐ甘噛みしてきたので、Fangと名付けましょう」

 犬は情けなさそうに「くぅん」と鳴いたが、nameFangと命名された。




 開店して一週間、店の経営は意外に順調であった。客は『Hungry Wolf』のMichaelことMilesと、その手下達だったが、時折匂いにつられて表通りからやって来た客が買って行く事があった。


 そして本来はFood Stallの食事とは無縁の筈の高Class娼館の高Class Prostituteや、高Classバーから態々買いに来る者までいた。

 ……まあ、『Hungry Wolf』のMichaelが口説いている女を見に来た口実として買いに来た者が多かったのだが。

 どうやら裏社会にReignするMichaelに言い寄ろうとしている女や、懇意にしたい店の経営者達は、彼が口説いていると噂のDarciaに興味を持ったらしい。


「あなたがねぇ……ふんっ!」

「調子に乗らない事ね、あなたみたいなコブ付きの女にあの方は相応しくないわ」

 等と態々Darciaの前まで来て言いに来るfemaleが何人かいた。


「まあ、もう噂が広がっているのね。Michael -san、思っていたよりモテるのね」

「どうもコブです。ご注文が無いならFood Stallの正面からもう少しずれて頂けませんか?」

 certainly、そうしたfemale達をDarciaVandalieuが相手にする事は無く、若干注意はしてもそれ以上気にする事も無かったのだが。


「大人しくあの人の前から消え――いえ、何でもありません。失礼しました」

 一人だけ売込み中の女用心棒らしい者が言葉の途中で急に逃げ出したが、恐らく【Intuitionskillの持ち主なのだろう。見込みがありそうなので、Milesに彼女の容姿を伝えておいた。


 それ以外にも迷惑な……と言うか勘違いした客もいた。見るからに成金らしい男と、両サイドを固めた二人の護衛の三人組だった。

「幾らだ?」

「はい、一串五Baumです」


「ほう、それで追加料金に幾ら出せば貴女を買えるのかな?」

「え、私をですか?」

 目を瞬かせるDarciaに、成金は宝石と金の指輪が幾つもはまった指で自分のchinを撫でながら言った。


「そうだとも。ここはProstituteの隠れ斡旋所か何かなんだろう? Food Stallの売り子という名目で女を立たせて、客が串焼きと一緒に料金を払って女を買う訳だ。そうでなければ-kunのようないい女が、チンケなFood Stallで売り子何てする訳が無い」


 そう得意気に語ると、ニィっと口の端を釣り上げる。そして「さあ、早く値段を言ってくれ」とdemandしながらDarciaの肩に触れようとする成金。

 その前にFood StallWatchdogとなっているFangが立ちはだかり、グルルルと唸り声をあげる。


「何だ、この汚らしい犬は? おい、邪魔だ、どけ……ひぃっ!? うあああああああああああ!? ひいやあああああああ!?」

 成金は最初やせっぽちのFangを気にもしなかった。しかし突然絶叫を上げ、真っ青になると脱兎の如く逃げ出した。


「えっ!? 旦那っ、どうしたんです!?」

「ま、待ってください!」

 成金の後を慌てて追いかける護衛の男達の後ろ姿を見送ったDarciaは、勝ち誇るFangの後ろにいるVandalieuに訪ねた。


「もしかして、【Mind Encroachmentskillを使ったの?」

「いいえ、【Mind Encroachment】だとimpactが残りそうだったので、【Demon King's Demon Eye】を使って見つめただけです」

 【Demon King's Demon Eye】というfragmentAbsorptionした事で獲得したskillで、その効果は見つめるのが土地ならManaで汚染し、生物ならhorrorを与えると言うものだ。


 Demon King Guduranisにとっては、便利なAbilityだっただろう。このworldを眺めるだけでmonstersが次々に生まれるDevil Nestsを広げ、立ち向かってくるHuman達の多くが一瞥するだけで戦意を砕かれるのだから。

 ただVandalieuにとっては微妙な効果だった。別にDevil Nestsを広げたい訳ではないし、horrorの効果は一般人に対してはキツすぎるが、【Five-colored blades】はcertainly、ある程度の実力を持つadventurerには通じない程度でしかなかったからだ。


 そんなMagic Eyeを成金に使ったのは、彼らを言葉で説得するのが面倒だったからである。

「あまり人の話を聞くTypeに見えませんでしたし、『Hungry Wolf』のMichaelの事も知らないみたいでしたし……Magic Eyeなら誰にも気がつかれずに済むかなと」


 そうVandalieuが言った通り、裏路地の人々は成金が逃げ出す時に上げたscreechに驚いていたが、誰も彼のMagic Eyeには気がついていなかった。

 犬が死ぬほど怖かったのだろうと、無-samaな金持ちの醜態を嘲笑っている。


「でも、もう少し加減しないとtraumaが出来ちゃうかもしれないわね」

「あれでも半眼で見たのですが……難しいですね」

「まあ、大丈夫よ。きっといい薬になったわ」


 Darciaが言った通り、成金にとって本当にいい薬になったようで以後彼らを歓楽街で見かける事は無かった。


 他には開店二日目にMoksi Earlに仕えるKnightが二人やって来て、EarlからのletterVandalieuに渡していった。その際、希望するならEarl 家で保護すると提案されたが丁重にお断りして帰ってもらった事があった。

『監視を付けておいて、何で使者なんて出したんだろ?』

Orbia、張り込みをしている人達がEarlSpyとは限らないんですから」


『いや、限るでしょ。生きているHumanの、それなりに訓練されてそうなSpyをアタシ達に張りつかせるのは領主ぐらいだよ』

Murakamiって人達にしては早すぎるし、Vandalieuの力を知っているBirkyneならもっと腕利きを使うだろうから、Orbia -sanの言う通りだと思うわ」


「そうですか……まあ、基本は放置しましょう。の中に入られないように注意だけして」

 尚、実はこの時Isaac Moksiの方にもSpyを放っていたのだが……鍵が開けられなかったため退散していた。Vandalieuを、扉の鍵も含めてGolem Transformationしていたのである。

 どんなLockpickingの達人でも、鍵が意思を持って構造を変えるため絶対に開ける事が出来ない。少なくとも、鍵や扉を壊して押し入ろうとしない限り。


 尤も、の中に入ってもRitaSalireになす術も無く捕獲されるか殺されるだけなので、SpyにとってはFortuneだったが。

 そうしたFortuneVandalieuが裏でもEarl 家と揉めるのを嫌がったため、Earl 家Spyは数を減らさずに済んでいた。


 そして開店三日目には、共同templeからVidaPriestと回復したAldaPriestがやって来た。目的はDhampirとその母親の保護で、丁寧な口調ではあったが形だけの提案だったKnight達よりも熱心に二人を説得しようとした。

「ここで暮らしている者達には悪いが、ここは治安が悪い。最近頭を現した『Hungry Wolf』というチンピラに目を付けられているようであるし……悪党やVampireの刺客がstealth寄って来るか分からない。

 我々templeの保護を受けるべきだ」


 そう訴えるAldaPriestに対してVandalieuは、certainly丁重に断った。

 だがVidafemale Priestの方は意外な展開になった。

「是非一度講演をお願いいたします! Dark Elfの方の信仰を知る事はbeliever達の……いえ、人々の見識を広める良い機会になります!」


「いえ、私は集落では祭祀に特別関わっていた訳ではないので」

「そんな遠慮なさらずっ、どうかお願いします!」

「そ、そんな事言われても……」

 彼女は話している間にVida’s IncarnationであるDarciaから何かを感じたのか、templeで一度話をしてくれるよう熱烈に頼み込んできたのだ。


 頼まれたDarciaは普通の説法はあまり経験が無く、かと言って共同templeでソロConcertを開く訳にもいかず、何とか断ろうとするのだが、female Priestが中々諦めない。

「ど、どうしましょう? 話すだけなら良いかしら?」

「良いと思いますよ。kaa-sanなら大丈夫」


 根負けしたDarciaの背をVandalieuが押した事で、共同templeDarciaの講演会が開かれる事になったのだった。このVidaの信仰を高め、believerを増やす事が出来れば『Vida’s Resting Ground』で祭られているVida main bodyの回復も僅かだが進むだろう。


 それに保護こそ断ったが、Moksiallyが増えるのは良い事である。


 他には開店四日目にVandalieuと同じくらいのageの少年が売り上げを盗もうとしてFangに押さえ込まれ、捕まると言う些細なtroubleが起きた。

 落ち着かせて話を聞いてみると、Slum街にある孤児院の、accurateには孤児院から出たばかりのchildで仕事が無くそれで盗みを働こうとしたらしい。


「何で態々うちから盗もうとしたの? Watchdogもいるのに」

「やせっぽちの犬と甘そうな女とぼんやりしたchildで、盗みやすいと思ったんだよ!」

 と言う事らしい。

 だがそうして話をしていると、少年を探していた孤児院のNunが迎えに来たが。


「すみませんっ、この子ったら孤児院を出してこんな事を……」

「俺はもう孤児院を出るって書置きしただろ! もうageだって十になったんだ、外で働けるんだから世話にならないぜ!」

「あんなミミズがのたくったような字を壁に落書きしても読める訳ないでしょう! それに働けるって、盗みは仕事じゃないのよ!」


 どうやら孤児院の寄付金が減ってNuncertainly child達も満足に食べられない日々が続いているため、少年は自ら院を出て口減らしになろうとしたようだ。

 立派だが無謀だった少年は、繰り返し謝るNunに連れて行かれた。それを見送りながらVandalieuは、呟いた。


kaa-san、明日孤児院に寄付を行おうと思います。Vidaの聖印入りの箱に詰めた食材を」

「うん、それが良いわね。……そう言えば、あの人達何のKami-samaを信仰しているのかしら? 迎えに来た女の子は、Nunだったみたいだけれど」


 尚、Vandalieuから賄賂を巻き上げた不良GuardAggarは何度かやって来てFood Stallに、特にDarciaに近づこうとしたが、その度にMilesやその手下に睨まれて、退散していった。

 真面目な新米の方のGuardであるKestは、一度来て串焼きを一本買って行った。「事情は分かるから、立場上一言だけ言っておくよ。あまり嘘をつかないようにな」と軽く形だけ注意して。


 こうして一週間が過ぎ、情報網にMurakamiBirkyneが引っかからない事を除けば概ね順調にVandalieu達のtacticsは進んでいた。

 Darciaの講演と、孤児院の寄付など本来の目的とは関係が無いが、Vida's Faction人々を増やす機会に恵まれる等予想外の収穫にも恵まれていた。


 そして八日目、魂の再構築が終わったVandalieuは肉の仕入れの前に飼いならしたFangと共にTamer guildに向かったのだった。




Name: Bone Man

Rank: 12

Race: Skeleton Blade Emperor

Level:


Passive skills

Dark Vision

Monstrous Strength:2Lv(Mysterious Strength awakened into!)

Strengthened Attribute Values: Loyalty:10Lv

Spirit Form:10Lv(UP!)

Strengthened Attribute Values: Mounted:7Lv(UP!)

Self-Enhancement: Creator:6Lv(UP!)

Self-Enhancement: Guidance:5Lv(UP!)

Physical Resistance:2Lv

Murder Healing:3Lv(NEW!)

Strengthened Attribute Values: Ruling:3Lv(NEW!)

Enhanced Body Part : Bone:5Lv(NEW!)


Active skills

Hollow Bone Swordsmanship:4Lv(UP!)

Shield Technique:10Lv(UP!)

Archery:8Lv(UP!)

Silent Steps:3Lv

Coordination:9Lv(UP!)

Commanding:5Lv(UP!)

Armor Technique:9Lv(UP!)

Mount:7Lv(UP!)

Long-distance Control:10Lv(UP!)

Aura of Fear:5Lv(UP!)

Parallel Thought Processing:5Lv(UP!)

-Surpass Limits-:5Lv(UP!)



Unique skill

Bone Blades

Xerx’s Divine Protection

Vandalieu’s Divine Protection




Monster explanation:Skeleton Blade Emperor


 Skeleton系のmonstersで確認されている中で最高位のmonstersSkeleton Emperor……よりも一Rank上の存在。

 Skeleton系のUndeadCommandingする恐ろしいSkeleton Emperorしかし Bone Manの場合masterであるVandalieuEmperorであるため、自分はそれに仕えるKnight的な立場であるとしている。

 そのためSkeletonUndeadCommandingしたり、Reignしたりしようとしない。以前は旧Scylla Autonomous TerritoryUndead軍をCommandingしていたのだが、自分がEmperorになってしまった事が余程shockだったらしい。


 例外は仲間であるKnochenだけで、戦闘になると誰よりも前で戦い、少しでも早くRank upして新たなrace名を得ようと懸命に刃を振るう。


 なお、certainly Lambdaでは新種である。


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