これはVandalieuが『Hyena』のGozorofのhideoutを襲撃した数日後の話である。
Emaは緊張のあまり乾いた喉を少しでも湿らせるため唾を飲み込もうとしたが、口内も乾ききっていたのでその行為に意味は無かった。
「お前達が新たな住人か……。いいだろう。Pure-breed Vampireにしてここの管理を司る我、Elperがここのruleを教えてやる」
整列したEma達の前に立っているのは、尊大な態度と口調をした白い肌と紅い瞳の美少年だった。
だがEmaも含めて、その態度に不愉快さを覚えた者は誰もいない。何故なら目の前の線の細い、野良仕事などした事が無さそうな美少年は、本人がSelf introductionしたとおりPure-breed Vampireなのだ。
EmaもGoblinやHorn Rabbitだったら見た事はある。だが、Pure-breed Vampireは彼女が知るmonstersとはdimensionが異なる存在だ。
限りなく不死に近く、無限のManaを持ち、鋼で出来た武具を飴細工のように捻り潰す。legendに謳われるHeroでなければ、とても太刀打ちできないAge of Gods Eraから生きるmonster。
そうEma達は巡教Priestが話す逸話や、Bardの歌から教えられてきた。
「いいか、何度でも教えてやるがよく聞け……まず朝六時起床、night十時には消灯だ。朝食は七時にcafeteriaへ移動して取る事になるので、その前に身支度とroomの清掃を行う事。夕食はnight六時から八時の間、大浴場の使用は八時から九時まで。昼食は各自学校や職場体験先で取るが良い……つまみ食い、時間外の入浴、night更かしには罰を与える」
そのElperが、Ema達がこれからしばらくの間暮らす事になる宿舎のruleを説明し始める。
「あ、あのっ、時間ってどこで確認すれば?」
「時計を見て確認するのだ。それと此処では朝六時からnightの九時まで三時間ごとに鐘がなる。それを聞き逃すな。……念のために聞くが、数字ぐらいは読めるだろうな?」
「あ、はい。小さなchildの中には読めないのもいるかもしれませんが」
その答えに満足したらしいElperは、背後の建物……Ema達がこれからしばらくの間生活する事になる宿舎を手で指した。
「貴-sama等はこの宿舎でnightに大声で叫ばず、備え付けの家具を壊さず、自分に宛がわれたroom以外で就寝せず、roomで酒を飲まず、賭け事もせず、規則正しい生活を過ごす事になるのだ……この管理人であるElperの眼が黒い内はな!」
「え、紅いじゃん?」
「黒い内と言ったのはそういう意味じゃない! 明日から通う学校でそういう事も教わって来るのだな!」
childに指摘されたElperが怒り出し、慌ててchildの両親が謝り出す。
「すみません、すみません! どうかご容赦を!」
「……ふっ、まあいい。childは元気で生意気なものだと神代から決まっているからな。それに我をよく見て、言葉をよく聞いていたと言う事でもある。
Wooz、貴-samaにはこれをやろう」
そうchildのnameを呼びながらElperは外套の内側から乾いた大きな葉で包まれた何かを取り出した。Elperは震え上がっているchildと親の前で、その何かを指でつまんで見せる。
「それは……?」
「我手製の干しイモだ。甘いぞぉ~。Woozだけでは無く全員、一人一切れずつ受け取るが良い。それとroomの鍵を配る。鍵は各世帯で管理し、紛失しないよう注意しろ」
「わ~い、干しイモだ!」
「待てっ、-chanと世帯ごとに並ばんか! 後鍵だけを持って行くな! 干しイモも受け取れ!」
「えっ? 私はもう大人ですけど良いのですか?」
「何だと貴-sama!? 我の干しイモが食えないと言うのか……ほ、干し杏の方が良かったのか?」
「ち、違いますっ、有りがたくいただきます!」
そしてEmaもroomの鍵と干しイモを受け取ったのだった。
Vandalieuは助けたSlaveやSlaveとして売るために捕まえられていた者達の内、希望する者達をTalosheimに移住させる事にした。
だが、実際には彼に助けられた全ての者達がTalosheimへの移住を希望した。それは『Hyena』のGozorofの配下達は村を襲って人々を攫う時、略奪を終えて引き上げる前には家や田畑に火を放っていたからだ。
捕まえた村民達の逃げる意思を折るためにしていた事だが、その結果助けられた人達の帰る家や生活の糧を得る田畑が損なわれてしまっていた。certainly Gozorof達から奪い返したpropertyはそれぞれ返却されたが……小さな村の住人達はoriginallyそんなに裕福では無い。
そのためTalosheimに移住しなければ最悪春を待たずに野垂れ死に。運良く生き残っても、今年の人頭税を払うために必死に働かなければSlaveに逆戻りと言う過酷な状況に置かれていたのである。
そしてEma達はTalosheimへ移住する事になったのだが、連れて行って直ぐに解散! と言う訳にはいかない。だからVandalieuは、「きっとこういう事になるだろうから」と予想して建てておいた宿舎でEma達を暫くの間生活させ、Talosheimに慣れてもらいながら学校に通わせ、そして就職先を斡旋し、ついでにageによっては訓練も受けさせる事にしたのだ。
そしてEmaが初めて通う事になった学校で教鞭をとったのは……学校で勉学を教授するより、練兵所で新兵を扱いているのが似合いそうな人物だった。
「あたしはGopher。あんた達より数年前にVandalieu陛下に助けられたSlaveさ。そしてこの前この学校を卒業したから、x2の意味でsenpaiって事になるね」
活発で明るい口調の、見るからに姉御肌そうなfemaleだ。ただ身長は二meter強で、muscleが発達した二の腕はEmaの太腿より太そうだ。
「あ、あんたが勉強を教えてくれるってのか?」
Gopherの迫力に圧倒されていた生徒たちの一人が、思わずそう尋ねた。
この教室には成人した大人しか集められておらず、childは別の階の教室に集められている。curriculumに違いは無いのだが、大人がchildの前で変な見栄を張ったり、child達の方が勉強できるからとprideが傷つけられたりしないようにと気を使ったらしい。
「おや、あたしが不安かい?」
その大人に向かってGopherはgrinningと笑うと、背後のEmaが始めて見る黒板にチョークで数式を書いて見せた。
「じゃあ、この問題を答えられる奴はいるかい!?」
彼女が出題したのは、三ケタの割り算であった。特段難しい問題では無いのだが……Emaも含めてすぐに答えられる者はいなかった。
「ならこれが読めるかい?」
次にGopherが黒板に書いたのは、「-Surpass Limits-」と言う漢字四文字だ。だがこれもやはり誰も答えられなかった。
この『Lambda』ではStatus systemが存在する関係で誰もが簡単な数学を習うし、識字率も『Earth』の中世と比べると高い。
しかし小さな農村やSlum街の住人などの中には、そうした数学を習わず、平仮名と片仮名しか読めない者も少なくない。
そしてEma達は小さな村出身で、税の計算や書類を書く必要がある村長一族以外勉学とは無縁だった。
「皆分からないようだね。だけど安心していいよ。あたしも特別頭が良かった訳じゃないが、出来るようになったんだ。あんた達だって真面目にやれば、一年か二年でこれぐらい分かるようになるからね。書類仕事が出来た方が稼げるからね」
そう言って歯を見せるGopherに、彼女も出来たのだから自分達もと大人たちは奮起したのだった。
……半年後、Gopher senseiは旧Talosheim時代からのHero『Sword King』Borkusの一人娘で、childの頃に一通り勉学を習い終えていて、学校では昔習った勉学を習い直しただけだった事が判明するのだが。
もっとも、既にその頃には皆それなりに読み書き計算が出来る-samaになっていたので、学習意欲が落ちて困る事も無かったようだ。
学校に初めて登校した日の帰り、Emaは自分と同じくらいから十age前後ぐらいのageのShoujo達に囲まれているGopherを見かけて立ち止まった。
「やっぱり人気者なんだ、Gopher sensei」
そう思ってしばらく見ていたが、-sama子がおかしい。
「senseiっ、あたし、もう十分大きくなりました!」
「私も! Beastmenは十ageでも大人と同じくらい大きくなりますから!」
「オラ、小さいけどDwarfだからで、本当はもう大人だから……」
聞こえてくる言葉からconjectureしたEmaは、一瞬Gopherは同性でずっと年下のShoujo達から迫られているのかと思った。
「だからUndeadになりたいんです!」
「あんたらねっ、生きている内からUndeadになりたがってどうすんだい!? 陛下にも止めろって言われたばっかりじゃないか!」
……性的にではなく、生的に迫られていたようだ。
「私達、Borkus -samaみたいな立派なUndeadになりたいんです!」
「お願いしますっ、introductionしてください!」
「頼むから勘弁しておくれよ! 親父をintroductionしても意味ないって!」
「あの、Gopher sensei、これは一体?」
Emaが遠慮気味に声をかけると、彼女に気がついたGopherは額に手を当てて呻いた。
「あんた達が騒ぐからこの前移住してきた子まで来ちゃったじゃないか。変な誤解をされたらどうするんだい、全く。
ああ、気にしないでいいよ。この子達はある意味あたしの同期達さ」
Gopherを囲んでいるShoujo達は、Gopherと一緒にVandalieuにHartner DuchyのSlave鉱山から助けられた元Slave達だった。
鉱山では狭い坑道のMiningに使うため小さいchildのSlaveに需要が在り、鉱山以外では小さいchildのSlaveは需要が少ない。そのためProstitute等に使えないageのShoujoや男児のSlaveの多くがSlave鉱山へ送り込まれていたのだ。
きついBody労働と日替わりで死んでいく仲間達。明日は自分の番かもしれない。そんな環境で彼女達の瞳は濁っていき……そこでVandalieuに運良く助けられた。
その結果、彼女達はVandalieuがやや困るほど熱狂的なVandalieu Believerとなったのである。
「それで、Undeadですか?」
「はい、UndeadになってRank upしてあの方の役に立つんです」
「Rita -sanやSalire -sanのような、立派なMaidになりたいんです」
Emaに瞳を……何処か濁っている-samaな気もするが、輝かせて応えるShoujo達。
「……MaidはUndeadにならなくてもなれると思うけどねぇ。せめてGhoulとかVampireとか、他のVida's New Racesになる道もあるんじゃないのかい。Beastmenのあんたはin any case」
「Zadiris -samaには断られました。もうちょっと、せめて二十age近くになるまで待った方が良いと……」
「将来小さな胸を痛める事になるって……オラ達の事を思って言ってくれたのは分かるけど、これから更に何年もなんて待てねぇっ!」
どうやら既にZadirisには相談済みだったらしい。
「それはZadirisの忠告が正しいよ。Vampireの方も、皆同じ事を言うだろうしね。
確かにあのEmperor陛下はあたし達を助けてくれたが、それは別にあたし達の人生を捧げて恩返しするのを期待しての事じゃないよ。特に、あんた達はchildなんだから。
この国で日々健やかに育ってくれれば、それで十分だって本人も言ってたじゃないか」
「それはそうなんですが……私達も何かしたいんです!」
「むぅ、これが若さって奴なのか、十代前半にかかるdiseaseなのか……ああ、あんたはそろそろ帰らないと管理人が心配して迎えに来るよ。門限破りの罰は尻叩きだから、早く帰りな」
どうやらElperが下す罰は、お尻ペンペンであるらしい。まあ、十万年以上生きている彼から見ればHumanは全員幼子のようなものなのだろうが。
「い、今すぐ帰ります! ありがとうございました!」
しかしこのageでそれは恥ずかしいと、Emaは慌てて宿舎に帰るのだった。
「……Undead、か」
そう小さく呟いて。
そして移住して三日が経った頃、Emaは自分のroomで寝るまでの時間を一人で過ごしていた。
「……どうしよう」
ここ数日の内に起きた変化は、あまりに大きかった。
roomの広さは一人のEmaには十分なほど広く、そして家具はNobleにでもなったのかと勘違いする程豪華だ。
藁とは比べ物にならない程柔らかいベッド、短く「ライト」と言えば光るmagic itemの照明、closetの中には村には無かった鮮やかな色に染められた冬服が五着。
それに暖房機。どういう仕組みなのかEmaは知らないが、金属の管の中をお湯が通っていて、それで冬の間はroomを暖めてくれるらしい。
ここはEmaが暮らしていた村より多少南に在るらしいが寒いので、とてもありがたい。……村にもあったら薪集めで苦労する事も無かっただろうに。
食事も一日に三度、美味しいものばかりが出される。ただのsoupでさえ、「ダシ」と言う物が効いているそうで、とても美味しいのだ。
だからこの待遇に不満は無い。寧ろ申し訳なくなってくるぐらいだ。何せ、Emaは何もしていないのだ。ただ襲われ、両親を殺され、捕まって馬車に乗せられ、そこでただ助けられた。それだけだ。
「……てっきり下働きとか、きつい仕事をするもんだと思ってた」
Emaは行く当てがないなら、Talosheimと言う聞いた事も無い国に移住しないかと聞いた時、Vandalieuは労働力を欲しているのだろうかと思った。
だから移住したら次の日から働いたり、未婚の男と引き合わされたり、そうした扱いが待っているのだろうと思って覚悟していた。……別にVandalieu達が悪い人だと思ったからではない。それぐらいが普通だと思っていただけだ。
このworldでは『人権』と言う概念が薄い。全く無いわけではないが明文化されておらず、『Earth』と比べれば無いも同然だ。
だからmountain banditや人身売買organizationから違法Slaveがrescueされた場合、Slaveから解放される以外の援助は多くの場合頼りないものだ。
近くの町や村で攫われた場合、そこが健在なら送り届けてくれるかもしれない。injureをしていればとりあえず治療してくれるし、数日の間保護してくれるかもしれない。
だが多くの場合それぐらいだ。Emaのように身寄りのない者を長期間保護し、職を斡旋するなんてほとんどない。
違法Slaveの境遇から救い出されたが、身寄りもpropertyも無い上に職を見つける事も出来ず、結局合法的なSlaveに身を落としたなんて話は幾らでもある。
それでもまだマシな方で、昔に滅びた国だが捕まっていた人々は犯罪者の「property」であるため、領主が徴収するなんて法がまかり通っていた時もあったらしい。
だからEmaは戸惑い、そして居心地の悪さを覚えていた。この国は、確かに奇妙だ。当たり前のようにmonstersやUndeadが行き交い、Humanのように振る舞っている。宿舎の管理人であるElperのようにHumanそっくりな者も少なくないが、SkeletonやLich等一目で生きている人じゃないと分かるUndeadも多いし、時々Human大の黒い蟲や、空飛ぶeyeballも見かける。
そうした者達にまだ慣れない元Slaveも多いが、EmaはもうSkeletonぐらいでは驚かなくなっていた。だから思うのだ。他の奇妙な住人達に慣れたらこの国は楽園に等しいのではないだろうかと。
「別に働かなくても食べていける訳じゃないけど、あのまま何事も無く村で生きていくよりずっと恵まれた暮らしが出来ると思うし……本当にいいの? 私なんかが。何かしたわけじゃないのに」
そうroomで漏らしたEmaの疑問は、二日後確信に変わった。両親と再会したのだ。
『おおぉ……Emaぁぁぁ……』
『無事だったのね。本当によかったわ』
「父-sanっ? か、kaa-san?」
両親にとってEmaはchildが中々出来なかった自分たちにやっと出来た一人娘で……つまり二人は村が襲われた時既にそれなりにageをとっていた。そのため、人狩り達に商品価値なしと見なされ殺されてしまったのだ。
そしてVandalieuが襲われた村の跡地に行って、Emaの両親を含めて残っていた霊を集めて来たのだ。
『ごfamilyとも相談して正常なReincarnationに還るか、Undead Transformationするか、monstersにPseudo- reincarnationする等進路を決めてください。Undead Transformationの場合は本人の人格が最も残りやすいです。Pseudo- reincarnationは、場合によっては全て忘れてしまう事もあります』
Pseudo- Main Body-type Demon King Familiarがそう説明するのを聞きながら、もう会えないと思っていた両親との再会をEmaは喜んだ。
そしてこの時彼女は決心を固めたのだ。
王城の地上一階で、Lucilianoは殆ど見覚えが無いShoujo達に言った。
「久しぶりだが、元気な-samaで何よりだ。元Slave仲間として、とても嬉しいよ」
「はい、お久しぶりです。Luciliano -san」
Shoujo達の方も殆どLucilianoの事を覚えていなかったのだろう。言葉とは裏腹に懐かしそうな-sama子は殆ど無い。
LucilianoもHartner DuchyでNobleのお家騒動に巻き込まれ、冤罪で犯罪Slaveに落されSlave鉱山で働かされていた。だからShoujo達とは元Slave仲間ではある。
しかし彼とShoujo達では働いていた場所も入れられていた監房も異なるため、馴染みは無かった。
そしてVandalieuに助けられた後も、Lucilianoは彼にpupils入りし王城を出入りする-samaになり……殆ど地下工房に住みつくような生活をしているため彼女達と交流することもなかったのだ。
Lucilianoは自分がこのTalosheimの中でも奇人変人の類である事を自覚していた為、意識して交流を避けてきた面もあるのだが。
「Gopherから話は聞いているよ。-kun達は遂に彼女から音を上げさせ、見事私を引きずり出した訳だが……流石にUndeadになるのはどうかと私も思うよ? もっと別の道に進む事を推奨する」
そう言うとShoujoの一人が落胆と驚きを露わにして口を開いた。
「そんな……普通の人みたいなことを言って誤魔化さないでください!」
「いやいや、幾ら私が奇人変人でも全ての言動がcrazyポンチだと思うのは、酷い誤解だと思うよ」
基本的にLucilianoは、Mad Scientist然とした性格をしている。必要があれば真Humanらしく振舞う事も出来るが、実際はmountain bandit等で人体実験をする事を躊躇わない。そして生きているHumanよりUndeadに興味がある。
生まれてこの方femaleの裸体を見るために覗きを働いた事は無いが、Giant raceのHero UndeadであるZandiaやJeenaの肌、そして何より内部の-sama子を見ようとVandalieuのSurgery風景を覗こうと試みた筋金入りの変人である。
だが、生きているShoujo達がUndead Transformationしたがるのを止めるぐらいの良識は流石に持ち合わせていた。
「専門家として言わせてもらうが、強いUndeadになるには強い恨みや未練が必要だ。-kun達のように自ら望んでUndeadになった事例のrecordは極僅かしか残っていないが……何人かのMageが研究の結果High LichやElder Lich等になった以外は、ほぼ失敗し、ただのLiving-Dead、Rank1の動くだけの屍となったそうだよ。
-kun達もそれは望んでいないだろう?」
「それは……だども……」
Lucilianoの説明に、動揺するShoujo達。
「それにUndeadになってからRank upするつもりなら、生きたまま研鑽を積んでも同じだと思うがね。Undeadの方が生者より成長速度が速いように見えるかもしれないが、生者の力も悲観したものでは無いと思うがね」
「確かにそうかもしれません」
Lucilianoの説得に彼女達の代表格のShoujoも、一理あると頷いた。しかし顔を上げると同時に口を開いた。
「ですが、HumanやDwarfでいるよりもそれ以外のraceになった方があの方に近づける気がするんです」
「あたしはBeastmenだけど、同じ意見です」
「むぅ、意外なほど師ArtisanのGuidanceの本質を理解してるな……利口で厄介なchild等め」
彼女達の言葉が正しい事を知っているLucilianoは、眉を顰めて唸った。彼女等は誰に説明された訳でもないのに、Intuition的にVandalieuのGuidanceの本質を理解している。
VandalieuのGuidanceは「Hell Demon Creation Path」……HumanもGuidingが、Humanよりもmonstersを、それも死に近いmonstersやUndeadの方がより作用する。生者に対しての憎悪とappetiteしか持っていなかった下等なUndeadが、それらを捨て去る事も厭わない程のimpactを与えるのだから、確実だ。
(しかし、より導かれるためにと言う理由でraceを変えたいとまで望むのは彼女達ぐらいだ。やはり生きた屍に等しいconditionで魅了され、その後生者として健康なconditionに戻って死から遠ざかったためGuidance的な物が前よりも減ったせいか?)
そうconjectureしたLucilianoは、Shoujo達を説得するのを諦めた。自分のconjectureが正しいなら、彼女達を理論で説得するのは不可能だからだ。
寧ろ下手に拒絶すると、近い将来思いつめて自殺騒ぎを起こすか、VampireになるためNoble-born Vampireを襲撃してbloodを奪おうとするかもしれない。
しかし不思議なのは――
「彼女等の事は分かった……と言うか諦めたのだが、何故-kunまでいるのかね? たしか、-kunは新顔の筈だが」
Shoujo達にEmaが混じっている事だった。
「私も、強くなりたいからです」
「……いや、だから普通に強くなる方法ではだめなのかね。国民皆兵訓練なら、一カ月もすれば受けられると思うが」
Talosheimは国民皆兵制度……国民全員に他国の平均的なSoldier一人を返り討ちに出来る戦闘力を、身に付けさせる制度を採用している。
Living Armorを着てcrossbowや槍の訓練を行い、【Archery】や【Spear Technique】skillを2levelまで獲得するのだ。
「その事は聞きました。でも、それじゃ足りないんです。だって……私は本当に何もしていないんです! あの馬車に乗せられて目の前で女の子が殺されそうになったあの時も、見ていただけで……怖くて動けなかった!」
EmaはVandalieuが潜り込んでいた馬車に乗っていた一人だった。そして彼が幼いShoujoを助けた場面に居合わせたのだ。
一見すると自分よりか弱そうな少年がShoujoを助け……tongueを伸ばして悪漢の耳の穴を貫いて脳を一部破壊してbody partを乗っ取ると言う異-samaな手段だったが、助けた。
その間EmaはShoujoの兄のように悪漢を止めようともせず、怯えて、自分が標的にならないよう縮こまっていただけだった。
そんな無力で卑怯な自分が助けられ、両親ともUndead Transformationしてちょっと言葉が不自由になったけれど再会させてもらえた。そんな厚遇を受けているのが納得できない。それがEmaの心理だった。
「……それで普通に感謝している時点で、-kunもかなりやられていると思うが。真っ当なAlda believerが両親をUndeadにされたら、怒り狂うか嘆き悲しむと思うよ」
「そうなんですか? 私の村にはBotin -samaの祠しか無かったので……」
「いや、Botinの教えでも死者は大地に還るべきだと説いていたと思うが。それにUndeadのsignを生者はInstinct的に恐れるものなのだがね。
in any case、-kunの主張も考え過ぎだと思うよ。師Artisanの人助けは、師Artisanなりの理由があってやっている事だから」
Lucilianoが見る限り、Vandalieuが人助けを行う主な理由は二つ。一つは仲間の為。彼が仲間と見なす者達の身内や知人が対象の時もあれば、何の縁も無いが仲間達が喜ぶだろうから助けている場合もある。
この範囲が異常に広い。何せVandalieuが仲間と見なす対象には神すら入っているのだ。
『Goddess of Life and Love』Vidaが喜ぶだろうから目についた弱者を、大きな負担にならない範囲で助ける。この時点でちょっとしたphilanthropyに等しい。
そしてもう一つの理由が、Vandalieu自身の為だ。別に助けた相手から即物的な利益を得ようとしている訳では無い。彼自身のHuman性やMentalのbalanceを維持する……人の側で居続けるための行為である。
このとても心情的な理由が、idiotに出来ない。もしVandalieuが情けを知らず、敵に成りうる存在……Alda's FactionのGodsのbelieverやAmid Empireの勢力圏のHumanを積極的に殺し、他人を顧みない人格の持ち主だったら今ほど強かったか、そして生き残れたか分からないからだ。
Darciaの息子として生まれた後、Zadiris達Ghoulと出会って彼女達を助けなかったら、Bone Man達をただの駒として扱い続け使い捨てにしていたら、Talosheimを復興させずUndead Giantを支配していたら……他のVida's New RacesやHuman達に手を差し伸べなかったら。
Alda's Factionに次代のDemon Kingとして危険視される事は無かっただろうが、Princess Levia達を解放するために向かったHartner Duke 家の城の地下で【Demon King Fragment】を取り込む事も無く、仲間を守るために研鑽を積む事も無く、Reincarnator達やEvil God (M)派のVampireにあっさりと殺されていたかもしれない。
Vandalieuは残酷だから強くなったのではない。狂っていても他人に情けをかけるから強くなったのである。このEmpire同-samaに。
「それに、師Artisanは弱さに寛容だ。力の無い者の勇気を褒めるが、だからと言ってcowardである事を責めてはいないだろう?」
「それはそうですけど……私が納得できないんです!」
「そうかね、分かった。もう面倒だから話を進めよう……幸いここにDemon King Familiarはいないから師Artisanは止めないし、一人分ぐらい増えても問題無いだろう」
Emaを説得するのが面倒になったLucilianoは、説得できなかった場合に使うとVandalieuから許可を得ていたbottleを荷物から取り出した。
「それは……お酒ですか?」
「いや、師Artisanのblood。straightだ」
bottleの中身を聞いてEmaとShoujo達は息を飲んだ。
「実は、師Artisanのbloodから作ったBlood potionを飲んだ実験動物が一斉にmonsters化してね。それでHumanも同じなのではないかと、私と他一名が師Artisanのbloodを飲んでみたのだが……前よりも夢で師Artisanに会うようになった事以外特に変化が無くてね。
それで、もしかしたら性別やage、raceや体質によって結果が変わるかもしれないと思ってね。-kun達がどうしてもというのなら、これの実験に付き合ってくれたまえ。ただ、まずは十五age以上に限定させてもらうがね」
そう言いながらLucilianoはbottleと同じように荷物から杯を取り出し、そこにbloodを注いでいく。本来なら鉄臭いはずの紅い液体から、Emaの鼻腔は甘い香りを嗅いだ気がした。
「さて、どうするかね? 別に飲んだからと言って変化があるとは限らない訳だが……」
それから数日後EmaはHumanのままだったが、握り拳大のeyeballを磨いては隣の肉片に埋め込む仕事をしている夢を見たらしい。