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Chapter 201: 確定された敗北

 Vandalieuが変化した異形の姿……成人maleのシルエットをしているが、黒く艶の無いskinの表面から用途不明の突起物や管が生え、出鱈目な位置に-sama々な大きさの目や口が配置されている。

 monstersと比べてもあまりに異-sama過ぎる造形に、Heinz達はそれを認める事を拒否するように思考を麻痺させてしまった。


「っ!?」

 だからVandalieuがまっすぐ飛びかかって来た時に対応が一歩遅れてしまった。異-samaな姿からは想像できない程隙の無い、素早い動きで拳がHeinzに向かって繰り出される。


 鈍い衝突音と女の声が上がった。

「何ぼさっとしてるの!? 最初からこいつは敵なの! さっさと構えて!」

 Delizahが、Vandalieuの拳をOrichalcumの盾で受け止めた。彼女は先程の会話にもあまり加わらず、何時彼が仕掛けて来てもいいように、ずっと-sama子を窺っていたのだ。


「あ、ああ、分かった!」

「すまねぇ!」

 Delizahに叱咤されたHeinz達が、生き返ったように戦闘態勢に入る。Vandalieuの仲間のCopyと戦って消耗していた彼らだが、先程までしていた会話のお蔭でpotionを飲むなどして、傷とEnduranceは完全ではないが回復させていた。


 だが、それを承知の上でVandalieuはあの会話を行ったのだ。

『『『■■■■■■!』』』

 体中にある口から一斉に、脳にthrust刺さるような絶叫が上がる。Vandalieuの【Mind Encroachment】が込められた【Scream】だ。


「ぐっ! 【Abnormal Condition Resistance】じゃ、防げないのかよ!?」

「これは、叫び声で私達のMentalを攻撃しているだけだ! Status Effectじゃないっ」

「うぐぅぅぅぅぅ!」

 両手で耳を押さえてのた打ち回りたい衝動に逆らいながら、EdgarHeinzが踏みとどまる。しかし最も近くで叫び声を叩きつけられているDelizahが、思わずよろめいた。


 その隙を突いてVandalieuが彼女に向かって蹴りを繰り出そうとする。

Millよ、我等の心に安らぎを。【Mental防御】!」

 その時Daianaが『Goddess of SleepMillblessingsを願いながら、Life-Attribute Magicpsychological守りとResistanceEnhanced (1)する。


「……【瞬輝Single Flash】!」

「【Shining Slash】!」

「【輝雷拳】!」

 それによってVandalieuの【Scream】によるMental攻撃から立ち直ったHeinzEdgarJenniferが次々に攻撃を繰り出す。


 Vandalieuはそれを腕や膝で弾くか、回避し、【Death Bullet】を放ちHeinz達を牽制して一旦距離を取った。

 だが完全にやり過ごす事は出来ず、黒いbody partに幾つかの切り傷が浮かんでいた。傷自体はすぐに消えたが、その-sama子とVandalieuの動きを見て、Heinz達は思った。


(見た目は異-samaだし、magicは驚異的だが……動き自体は大した事は無いのか?)

(body part Abilityは低くない。AClass adventurer並だが、つまり俺達と大きく差は無い。だが俺達にはまだ【Heroic Spirit Advent】が残っている。それに速さじゃ俺はcertainly、あのNeck-Hunting Demonよりずっと下だ)


(技も、大した事無い……あたしの方が上だね)

(力は強いけど、あのUndead Giant程じゃない)


 VandalieuAbility Valuesは、Mana以外はHeinz達とそれほど差は無い。特にAgilityでは彼らより劣っている程だ。

 そしてUnarmed Fighting Techniqueも、先程Superior Skillの【Soul Breaking Arts】に目覚めたばかり。既にSuperior SkillAwakeningしているUnarmed FighterJennifercertainlyHeinzEdgarよりもずっと下だ。

 そして今はどう言う訳か、【Demon King Fragment】を使っていない。

 つまり、総合的に見れば自分達が勝てない相手では無い。一対五の今なら、確実に勝てる。


「その程度なら、他の偽物を時間稼ぎに利用なんかしないで、混じって一緒にかかって来るべきだったんじゃないか? Emperor -sanよ」

 しかし油断せずEdgarProvocationを投げかけながら、隙を窺う。勝てない相手ではないとは判断したが、どうすれば倒せるのか判断しかねているのだ。


(魂って言っていたが、どう言う事だ? あの姿が『魂』だとして、その奥のBodyを破壊すればいいのか? それとも外側を徹底的に破壊するべきか?)


 表ではニヤ気面をしているEdgarはそう思案していたが、答えや隙を見つける前にVandalieuが答えた。

『あれは俺の仲間の精巧な偽物ですが、神が操っています。だから神が操作すれば、お前達では無く俺に攻撃してきたかもしれない。

 だからお前達が偽物を倒してくれた事は都合が良かった。偽物とは言え、皆を殺さずに済みましたからね』


 返ってきた答えはとても落ち着いているように聞こえた。とても目の前の異形から発せられたとは思えない程、揺るぎが無い。

『だからという訳じゃありませんが、確認しますね。……suicideはしないので?』

 だから続いた言葉に驚いた。


「な、何を言い出すんだ!? する訳無いじゃないかっ!」

『そうですか……残念です。あなたと後ろのDaianaには、是非suicideして欲しかったのですが』

「ふざけるなっ! 何であたし達がそんな事――」

Jennifer、彼は私達が逃げないのか確認しているんだ。ここは、特殊な場所だからね」


 Heinzが言ったように、このDungeonでは彼らは何度死んでも『街』でrevivalする事が出来る。今すぐsuicideすれば、『街』に逃げる事が出来るのだ。

「だが、何でそんな事を聞く? -kunは私達を殺したいのだろう? 私達が本当にsuicideしたらどうするつもりだ?」

 もしかしたら『街』でrevived自分達を殺すつもりなのかもしれないと思ったが、その時はこのDungeonを管理している神が、階段を塞ぐだろうと直ぐに思いついた。


 だがVandalieuの答えはHeinzも想定できなかった。

『お前達がsuicideしたら、このDungeonを破壊します』

 破壊する。それまで浄化してsealedする事しか出来ず、破壊する事は不可能とされていたDungeonを。

 それがVandalieuには可能だった。


 これ以上Heinz達を強くされても困るし……このDungeonを管理している神が気に食わない。

 だからVandalieuは、もしHeinz達が逃げたら、Manaが底をつくかこのDungeonDecayするまで【Hollow Cannon】を撃ち続けるつもりだった。


Dungeonを破壊っ!? そんな事出来るはずが……いや、出来るのか、こいつは!?」

Jennifer、落ち着いてください。本当に出来るかは分かりませんが……その可能性が僅かでもあるなら、私達は逃げる事は出来ません」

 Heinz達の目的はこのDungeonの試練に打ち勝ち、Bellwoodを継ぐ者になる事だ。そして神に直接問い質す事。


 その機会をふいにする事は出来ない。

 そしてこのDungeonから逃げる事が出来たとしても……結局Vandalieuは外のworldの何処かに居て、再び戦う事になるのだ。


 今よりも強くなるためにも、Vandalieuからは逃げられない。


suicide、撤退の意思を確認しておきながら、実際には俺達の逃げ道を塞いだ訳か。見かけの割に冷静じゃないか、恐れ入ったぜ」

 Edgarも苦笑いを浮かべながら、背中に回した手でEnduranceを常時回復させる効果のあるmagic itemを起動する。なんとしてもここでVandalieuを倒さなくてはならないと、彼も理解したのだ。


 一方、Vandalieuに起きた変化はEdgarとは違いあからさまだった。

「れいせい? 俺が……冷静……魂を最適化」

 その瞬間、Vandalieuの姿が再び変化した。のっぺりとした輪郭の無い人型だったシルエットが、まるで金属で出来たwhole body鎧のようになり、暗く毒々しい赤のラインが現れる。


「チッ、まだ本気を出していなかったって言う事――」

『【Spiral弾】、【Instant Response】、【百烈抜き手】』

「っ!?」

 Projectile Fireされた【Demon King's Horn】をEdgarは慌てて短剣で弾き、その隙にVandalieuは【Armor Technique】のMartial Artsを使用して反応速度を上げながら、Heinzに向かって突進しながら抜き手を放った。


 自分が冷静だと思い込んでいるEdgar達を内心で罵りながら。

 そんなはずがないのだ、こうしてHeinz達と戦っている時点で、Vandalieuに冷静な判断力など残っていないのだから。


 Vandalieuは以前の夢、Heinz達が五十階層を攻略している時の事を思い出し、それが現実にこのDungeonで起きた事だと理解した。


 ここでは、Heinz達はどんな死に方をしても何処かでrevivalする。そして死ぬ瞬間までのMemoryと経験はそのまま受け継がれる。本当に生き返っている訳ではないだろうし、どう言う仕掛けなのかは分からないが、それは確実だ。

 だからここでVandalieuHeinz達を全員殺す事が出来ても、それだけなら以前と同じようにrevivalしてしまう。Vandalieuが今の時点でどれくらい戦えるのか、それを知ったconditionで。


(だから、Heinz達の魂を砕かなければならない)

 Bodyを幾ら破壊しても意味が無いなら、魂を破壊するしかない。それに失敗すれば、この戦いに勝っても奴らに自分の情報をプレゼントしただけになる。


 だが今のconditionVandalieuが、繰り返しrevival可能なconditionHeinz達の魂を砕く事が出来るのか。それは分からない。VandalieuIntuition的には「出来る」と思ったが、それが正しいと保証する根拠なんて何も無い。

 しかも戦況は不利だ。一対五……周りに霊がいない以上Golemも作れず、Princess Levia達死霊の手も借りる事が出来ず、装備していたEisenKühlの力も借りる事が出来ず、Gufadgarnの声も届かない。


「クソっ、いきなりブチ切れやがって!」

「くっ!」

 Edgarが毒づきながらを弾き、Heinzが蒼い炎が灯った刀身で抜き手を弾き続ける。横ではDelizahHeinzを庇おうと動きだし、JenniferDaianaがそれを援護しようとしていた。


『【曲弾】……ファイエル』

 それを背中から伸ばしたblood vesselを銃身代わりに使った、【Demon King Artillery Technique】のMartial Artsで牽制する。JenniferDaianaは五十階層で既に何度か【Artillery Technique】を受けていたので、咄嗟にDelizahの盾のshadowに避難する。


『いきなり、ですか』

 こんなconditionで戦い、魂を砕く事が出来るか賭ける。

そもそも勝てるかも分からない。Vandalieuの有利な点はBorkus達のCopyがやられるまでの間、Heinz達の戦う-sama子を見る事が出来た事と、もう一つだけだ。


 もしVandalieuが冷静だったら、自分以外のCopyが消滅した時点でsuicideしていただろう。この偽物のbody partが死んでも、本物のBodyに何のimpactも無い事は分かっているのだから。

 だからそれをせず、【Soul Breaking Arts】にAwakeningして本来のAbility Valuesで戦えるようになってまでHeinz達を滅ぼそうとしている時点で、Vandalieuは冷静では無いのだ。


『俺はずっと、お前達三人を滅ぼす事だけを考えていた!』

「三人って、あたし達を無視するんじゃないよ!」

 Vandalieuにそう叫び返して、JenniferDelizahの後ろから飛び出した。既にMartial Artsの【Super Instant Response】や【-Transcend Limits-skillActivateさせ、Daianaの【Enhanced Agility】の付与magicもかけられている。


「『Five-colored blades』は、五人partyだ! 【輝飛斬蹴り】!」

 管の度から弾丸の軌道を読み、蹴りを放って三日月状の斬撃を飛ばす。

『【Iron Wall】』

 それをまともに食らう訳にはいかなかったのか、Vandalieuが腕に【Demon King's Carapace】を出現させて【Shield Technique】のMartial ArtsActivateさせた。だが、それを隙と見たEdgarHeinzが動き出す。


「【Hundred Slash】! 【Demon King Fragment】だろうが、【Iron Wall】程度のMartial Artsで凌ぎ切れると思うなよ!」

「その通りだ! 【烈輝瞬閃】!」

 盾にするつもりで前に出した腕が、【Demon King's Carapace】ごと傷ついて行く。Jenniferの斬撃とEdgarの短剣を受け続けたところに、Heinzの輝く剣の一撃が入り、carapaceが脆くも砕ける。


『【Impact-Negating Barrier】、【Magic Absorption Barrier】』

 後ろによろめきながらBarrierを張るVandalieu。このBarrierなら、Heinz達のMartial Artsmagicも防げるはずだった。


「そのBarrierは、もう通用しない! 【Radiant Life Blade】!」

 Heinzは五十階層でVandalieumagicを何度も……十回ほど仮の死を経験した事で開発したmagicActivateさせる。それはLight Attributeと生命attributeの力を剣に宿らせる術だ。


 彼はVandalieumagicdeath attributeである事を知らないのに、生命と光が混在したManaは、death attributeの反attributeとなる事にIntuition的に気がついたのだ。何度もDemon King Guduranisと戦ったChampion Bellwoodですら、それを見つけられなかったと言うのに。


 x2Barrierは容易く切り裂かれ、Vandalieuは咄嗟にLeft Armで我が身を庇った。その結果胴体は無傷だが、Left Armが肘から先で切断され回転しながら飛んで行った。

『■■■■■■■■!?』

 半ばで切断された腕を右手で抱えたVandalieuは、それを嘆くように仰け反りながら絶叫を上げた。


「へっ、腹ががら空きだ!」

 このまま押しきろうと、隙だらけの胴体に追撃を放つためにJenniferが接近していく。

「待って! Trapよ!」

「【Rotating Tongue Dagger】、【口絶槍】」

 そのJenniferDelizahが叫ぶのと、Vandalieuの声はほぼ同時に聞こえた。


「えっ――がはっ!?」

 Jenniferは、自分が隙だらけだと思ったVandalieuの胴体から回転しながら生えたぬらぬらとしたtongueと、管状の器官、proboscisに貫かれて口からbloodを吐いた。


Jenniferっ!?」

「待ってろっ、今助けるっ!」

 そう言って駆け寄ろうとするEdgarHeinzだったが、Vandalieuの背中から蜘蛛を連想させるArthropod Legsが生えて攻撃を繰り出し、近づく事が出来ない。


「そんな……Trapって……」

『わざとらしいかなと思いましたが、俺の演技力も捨てた物では無いようですね』

 【Screamskillで叫び声を上げ、故意に隙を演出して見せたVandalieutongueheartを、proboscissolar plexusを貫いたJenniferbloodを吸おうと試みたが、吸えなかった。accurateには、吸う事は出来るのだが味がしないしManaも回復しない。


(お互いに偽物のbody partだからか。なら、もう用は無い)

 VandalieuLeft Armを再生させると、拳を【Demon Kingbump】に変化させる。そして、それを振り上げた。

「くそ、再生まで……しかも早い……」

Jenniferっ!」


「【重拳】」

 鋭い棘の生えた鈍器と化した左拳が、Jenniferの頭部をぐしゃりと砕いた。頭部のfragmentが地面に落ちる前に、音も無く彼女のbody partは塵になって消えていく。

 その間もHeinzEdgarは八本のArthropod Legsを巧みに繰り出すVandalieuと切り結んでいるのだが、Jenniferが死んだ事で、一層攻勢を激しくする。


Jenniferなら『街』に戻っただけです! 二人とも一旦下がってください!」

「わか――」

「分かっちゃいるがっ、いちいち下がっていたら何時までもこいつのpaceだ! 【spyラルソニックBlow】!」

 Daianaがそう警告するが、Edgarがそのまま攻撃を続行する。搦め手や奇襲を多用するVandalieuには、いっそこのまま力押しで倒した方が良いと考えたのだろう。


 Edgarの判断は間違っているとは言い難い。実際、Vandalieuとしても一旦距離を取りたいところだ。

(でもまあ、歓迎しますが)

『【鋼裂】』

 八本のArthropod Legsの内二本をEdgarSlash飛ばされたVandalieuは、残りの六本のclawsで彼を引き裂こうとする。


「はっ、遅いぜ!」

 だがEdgarは温存していた【-Transcend Limits-】、【Transcend Limits – Magic Sword】をActivateし、Orichalcumの短剣でArthropod Legsを次々に切断する。

 Vandalieuは鈍器と化したLeft Armも使ってEdgarを迎え撃とうとする。


「【空飛斬】、【Radiant Life Blade】!」

 だがHeinzの放った斬撃が空を飛び、続けてEdgarの短剣に対death attributeの付与magicをかける。

「仕方ありませんっ、【All Ability Values Enhanced (1)】!」

 そしてDaianaEdgarに付与magicをかけた。


 Heinzの斬撃はVandalieuLeft Armに命中し、切断こそ出来なかったものの半ば以上を切り裂き動きを止めた。

「【サウザンドSlash】!」

 そこにAbility Valuesが大幅にEnhanced (1)されたEdgarが、付与magicをかけられた短剣で上Class Martial Artsを放った。

「【対刃】、【Death Bullet】、【無限thrust】、【tongue刀】」

 対してVandalieuwhole bodyから【Demon King's Fur】を生やして、【Armor Technique】のMartial ArtsActivateさせながらmagicArthropod Legstongueで迎え撃つ。


 だがEdgarの短剣による斬撃によって、Vandalieumagicと繰り出した部位は次々に切断され、対刃繊維の塊と化したfurも切り刻まれる。

(まるでButterにでもなったような気分ですね)

「【spyラルBlow】!」


 Vandalieuが見上げる中、Edgarが彼の兜の隙間に短剣をthrust入れた。兜の中のboneを貫き柔らかい肉を掻き回した手応えに、Edgarの口元に会心の笑みが刻まれ……そのbody partVandalieuから発せられた幾筋もの光線が貫いた。


Edgarっ!? 今回復させます!」

「すまんっ、早めに頼む!」

 screechを上げるDaianaに、身を捩ってVandalieuから飛び退いたEdgarが詫びる。彼はVandalieuが光線を放つ寸前に身を捩り、barelyで急所を守っていたのだ。

 だが、その代償は高くついた。


「無事?」

「いや、もう無理だな。利き手が取られた……それにどう言う訳か、Manaが殆ど残ってねぇ」

 Edgarは手首から先が無くなったRight Armに背中に保持していた短弓を括りつける。これで矢を射る事は出来るし、左手でも短剣は扱えるが、やはり精細さは欠ける。

 しかし Daianaの治癒magicでも喪った部位を元に戻すには、十分以上かかる。この戦いでは手は戻らない。


 しかも-Transcend Limits-】の効果が切れた事でwhole bodyに拭い難い倦怠感が圧し掛かっていた。【Radiant Life Blade】の効果も消えている。

 Vandalieuは兜から脳漿を垂らしたまま、Edgarに対して思わずこう言った。


『ほぼZero距離で放った光線から急所を守るなんて……monster

 【Soul Devour】の効果を乗せて放った光線を避けられ、幾つものeyeballを無駄にしてしまった。それで利き手とManaだけとは……腐っても上Class adventurerと言う事かと、改めて『Five-colored blades』の実力を認識するVandalieu


「くそ、monsterはてめぇの方だ……頭を潰されて何で動いていられる!?」

(答えは、俺のbody partSoul Formの胴体までしか入っていないからです)

 鎧状にSoul Formが変化した事で、appearanceは成人maleより若干大きくなったが、内部のbody partの大きさは変わっていない。そのため、VandalieuBodySoul Formの胴体にしか入っていなかった。

 頭と手足に中身は無く、Edgarの短剣が貫いたのは、Vandalieuが【Demon King's bones】と【auxiliary brain】で作ったダミーである。


 certainlyそれを説明する程Vandalieuはお人好しでは無い。代わりに、whole bodyに【Demon King's Fur】を再び生やし、それをぶわっと膨らませた。

「っ!?」

『【乱れ射ち】』

 そしてhedgehogneedleのように変化させたfurを、【Throwing Technique】のMartial Artsで周囲全てに飛ばす。


Daianaっ、もっと身を小さく!」

「ですが、Heinz達が! Edgarの傷もまだ塞がりきっていないのにっ!」

 雨のように放たれたneedleを盾で防ぎながら、Delizahは治癒magicを維持するために動けないDaianaを守っていた。Vandalieuに敵意の方向を無理矢理自分に変えるProvocation系のMartial Artsが効かないため、彼女の傍を離れられないのだ。


 だが心配されたHeinzは、剣を回転させ投擲物を弾き落すMartial ArtsActivateして自分とEdgarの身を守っていた。

 しかし Vandalieuはそんな事は予測済みだと言うかのように、走り出し追撃を始めていた。……比較的近くでneedleを防ぐのに精一杯なHeinz達ではなく、盾を構えて防御を固めているDelizahに向かって。


「【Divine Iron Wall】! 【God Iron Form】!」

 こっちに来るなら好都合だとDelizahMartial ArtsActivateし、Vandalieuが振り上げたLeft Armについたbumpの一撃に備える。

 猛烈な勢いで振り降ろされたbumpが、盾とぶつかり合って轟音を響かせた。だが、Delizahは無傷で大した衝撃も感じなかった。


(耐えきった! ならこいつを【Shield Bash】で後ろに――腕が動かない!?)

 そう考えながら【Shield Bash】を放とうとしたDelizahだが、腕が動かない事に気がついて愕然とする。

『前の時も使いましたよね? suction cupsは』

 Delizahの盾は、Vandalieuの【Demon Kingbump】が振り降ろされた瞬間Activateした【Demon King's Suckers】によって張り付いていたのだ。


 そしてVandalieuAgilityよりも力のAbility Valuesが高く、【Monstrous Strengthskillを持つphysical battleではPower重視のMageだ。

『■■■■■!』

 見た目は小柄でもHumanより比重が大きく、更にwhole bodyを武具に固めたDelizahVandalieuは盾ごと一気に持ち上げた。


「う、うわっ!?」

 簡単に落ちないよう盾を腕にbeltで固定していたため、Delizahは盾を捨てて逃げる事が出来ず宙吊りにされてしまう。


Daiana、術を解け! 攻撃しろ!」

「っ! 【樹縛】!」

「今助けるっ!」

 Delizahを助けようと治癒magicを中断したDaianaが、改めて唱えたLife-Attribute Magicによって生えた樹木がVandalieuを捕えようと枝を動かし、Heinzも駆けつけようとする。


 しかし Vandalieuは背中のArthropod Legsを再生させて枝を逆に圧し折り、長いリーチを活用してHeinzを牽制する。


Daianaっ、逃げ――!」

『【剛投】…………【Death Flame Prison】』

 大きく振るわれたVandalieuLeft Armbumpが外れ、suction cupsで盾がくっついたままのDelizahごと飛ばされる。

 そしてmidairで大爆発した。


「で、Delizahぁぁぁ!?」

 【Demon Kingbump】の内側に満ちていた【Demon King's Blubber】を爆発させたのだ。

「そんな――」

 頼みの盾が無くなったDaianaの首を、VandalieuDemon King's Clawsが生えたRight Armを振るって切断した。ElfGoddess官の首は、地面を数度跳ねて転がり、塵になって胴体と同時に消えた。


Daiana! ……よくもやってくれたわね!」

 所々焦げたDelizahが地面から立ち上がり、盾職としてのprideと仲間を傷つけられた怒りに顔を歪める。

 しかし冷静さは失っておらず、そのままVandalieuではなく、迂回してHeinz達と合流できないか探っているようだ。


 HeinzEdgarも、怒りは覚えているが冷静さを維持したまま、Vandalieuを警戒しながらDelizahとのCoordinationを図っている。

 それはDaianaJennifer-samaに、本当に死んだ訳ではないからというのが大きかったのだが。


『これで邪魔者は消えた……数で負けるのは初めてなので大変でしたけど』

 一方Vandalieuはそう息を吐いた。JenniferDaianaを排除できたのは、彼にとってそれだけ大きな成果だったのだ。


 『Five-colored blades』では手数で押して来る身軽なUnarmed FighterJenniferと、party全体の援護と回復を担当するDaianaが果たす役割は大きい。しかもClass adventurer partyの名に恥じない高度なCoordinationを誇っている。

 その二人と離され、Coordinationにも穴が空いたHeinz達の戦力は半減したと言える。


 しかし Vandalieuが二人を排除したかったのは、戦略上の理由では無い。

 あの二人は、Elective KingdomHeinz達が拠点を移してから『Five-colored blades』に加わったJenniferDaianaは、Darciaの仇では無いのだ。


 だから魂までは滅ぼすつもりは無かった。彼女達はそれぞれGhoulMajin Raceを殺しているようだが……GhoulMajin Raceは無力な被害者では無い。それぞれの事件の事情も分からないのに魂を喰っては、それこそやり過ぎというものだ。

 そのためVandalieuは戦闘中、二人に当たる可能性がある攻撃には、【Soul Devourskillを乗せていない。使ったのは、Edgarに向けて放った光線ぐらいだ。


 だが、今この場に残っているのは仇が三人。何の遠慮も無く魂を喰らう事が出来る。


「大変ね……随分余裕じゃないか。まったくDamageを受けている-sama子も無い……SClass adventurer partyの面目丸つぶれだぜ」

 Left Armを元通り再生させたVandalieuに、Edgarがそう言って話しかけてくる。恐らく、片腕でManaが殆ど残っていない自分を囮にして、HeinzDelizahから注意を逸らすつもりだろう。


 体表に【Demon Kingcompound eyes】を幾つも配置しているVandalieuは全周囲を見る事が可能なため、無駄な努力なのだが。

『気を落とす必要はありませんよ、これは順当な結果です』

 だからVandalieuはそれに乗った演技をしながら、Edgarの話に応じた。


「順当? 俺達五人を余裕で相手取って、簡単に二人倒した事がかよ?」

『ええ、だってお前等はBorkusLegionとの戦いでもう消耗していましたから』

Enduranceや傷は、お前と話している間に回復――」


Manaと、skillの効果時間、そして使用によるFatigueはほぼそのままのはず』

 Vandalieuがそう指摘すると、Edgarの口元が僅かに引き攣った。compound eyesに映るHeinzDelizahも、言い当てられて動揺している。

 これがVandalieuの持つもう一つの有利な点だった。


 そう、彼らは消耗している。上Class adventurerAlda's FactionGodsに見込まれる程の実力の持ち主であるHeinz達だが、やはりHumanElfDwarfとしてのraceの枷があった。

 彼らはVandalieuのように異常な速度でManaを回復できないし、Fatigueを無視する事も出来ない。

 そして【-Surpass Limits-】や【-Transcend Limits-skillは使用すると、効果時間が切れた瞬間から酷いFatigueに襲われ動きが鈍る。


Manaが心許ないから、ここぞと言う時しか消費が激しい上位のMartial Artsmagicを使わなかった。あの厄介な【Radiant Life】の付与magicも、Manaを多く消費する上効果時間が短いのか節約している。

 それに、もうすぐ【Heroic Spirit Advent】の効果時間も切れるのでしょう? お前等は俺を警戒して、この階層に入る前から使っていたようですからね』


 自分達のconditionを、先程Edgarが焦って仕掛けた理由も含めて当てられて、彼らの顔に動揺が走った。

Ability Values、特にManaが大幅に下がる。Gordan High PriestFamiliar SpiritAdventさせただけでManaが十万に増えたと語っていましたからね。Heroic Spirit Adventなら、百万から二百万ぐらいですか?

 でもHeroic Spirit Adventが解ければ……お前達は基礎的なMartial Artsmagicも何も使えなくなる』


 そう続けながら、(消耗が激しいのは、俺もですが)とVandalieuは胸中で呟いた。

 己の魂をMaterializationさせて戦うこの【Soul Breaking Arts】、使ってみると予想以上にManaの消耗が激しい。更に、Heinz達に対して攻撃し、攻撃を受ける度に、Manaが大きく削れていく。彼の六十億を超えるManaの総量と異常な回復速度でも、補いきれていない。Edgarから奪った分など、足しにもならない。


 何故なら、Heinz達に対して発射し、切り離して爆発させ、Slash飛ばされているのはVandalieu自身の魂なのだから。


「……それが何だってんだ。もうすぐJenniferDaianaも戻ってくるぜ、俺達はこのDungeonじゃ幾ら死んでも蘇る事が出来るんだからな」

 Vandalieuが消耗していると気がついていないEdgarは、そう強がって見せる。しかしそれは完全なハッタリだった。


 何故なら死んで『街』に戻ると、傷は残らず癒えている。しかし消費したManaはそのままだからだ。

(クソ、此処が外だったら魔晶石をもっと持ってきていたんだが……)

 EdgarMagic Stoneを加工して作る、Manaを繰り返し充電可能な魔晶石を思い浮かべた。Manaが切れそうになった時に重宝していたのだが……このDungeonではmonstersからMagic Stoneを含めた全ての素材を手に入れる事が出来ない。

 更に死ねば『街』と言う安全地帯でrevivalする事が出来る。


 そのためManaが乏しくなったconditionでも、勝たなくてはならない戦いはこれまで無かった。今も、もし昨日までと同じCopy相手の試練だったら無理はせず、程々で切り上げて明日再挑戦する事を考えただろう。

 だからEdgar達はManaが切れないように魔晶石を多めに用意する等の準備を怠ってしまった。


 しかしVandalieuはこのDungeonを何らかの方法で破壊すると宣言している。

 それはさせる訳にはいかない。


「何度お前に殺されても、必ずお前をぶっ殺してやるぜ」

 そう啖呵を切りながらEdgarが弓に矢を番え、弦を引き絞った。compound eyesで確認すると、DelizahHeinzが組んで何か仕掛けて来るらしい。


 だが、彼らはVandalieuが魂を喰らう事が出来ると知らない。攻撃を受けた時Manaが大きく減ったのも、Manaを奪い取る攻撃を受けただけだと思っている。

『……【Blood Infection】』

 その彼等に対して、Vandalieuは必殺のmagicを放った。それまで彼が流してきた赤黒いbloodが、塵になって虚空に舞う。


「くらえっ、最後の――ぎゃあああああああ!?」

 その塵を浴びたEdgarが、screechを上げて矢から指を離し、screechを上げて地面に転がった。

「っ!? がっ!? あ゛ああああっ! なんで、毒やdiseaseなら、【Abnormal Condition Resistance】が……!」

「うぐぅぅぅっ! 違うっ、何かがっ、何かが私達の鎧の内側に入り込んで……!」

 そのEdgarを追うように、HeinzDelizahも苦しみ始める。


 その-sama子を眺めながら、Vandalieuは美味にtongue鼓を打っていた。

 Heinz達を襲っているのは、Vandalieu自身のbloodを変化させた貪欲な肉食性微生物だった。


 【Disease DemonJobの効果で自分のbody partの一部をDisease原菌やvirusに変化させる事が可能になったVandalieuは、それを害虫駆除に活用する以外にも、【Abnormal Condition Resistance】や【Status Effect Immunityskillを持つ敵との戦いを想定していた。


 その結果開発したのが、自身のbloodを肉食性の微生物に変化させる事ができる【Blood Infection】のHell King Magicだった。このmagicの前には、【Abnormal Condition Resistanceskillも対virusmagic itemも意味を成さない。

 何故なら、彼らは極小の微生物に姿を変えたcountlessVandalieuに貪り喰われているだけなのだ。Status Effectでは無く、単なる物理攻撃である。ただ、攻撃している微生物は肉眼で見えず手で払っても意味が無い程小さいが。


 一度skinに付着すれば避けられない凶悪で、残酷な奥の手。ただDisease原菌とは違い対象を選ぶことが出来ないので、JenniferDaianaがいる間は使う事が出来なかった。

 これで後数分から十数分もすれば、Heinz達は魂を削り喰われて消滅する。


『……【tongue鋒】』

 だがそれを待たずに止めを刺すべく、Vandalieuは倒れているEdgartongueで貫こうとした。

「【Instant Response】! 【Blue-flame Sword】!」

 だが、そのtongueは起き上がったHeinzMagic Swordによって切り払われてしまった。彼は苦痛に顔を歪めながらも、Vandalieuの前に立ちはだかった。


-kunの、好きには……させない!」

『強引に痛みを無視して、【-Transcend Limits-】か何かを無理にActivateさせましたか。……着実に数を減らそうと思いましたが、お前から滅ぼした方が良さそうですね』


 苦痛に苛まれながら剣を構えるHeinzVandalieuは彼に対して間合いを詰めようとした。

「ブガアアアアア!」

「の、Noble Orc!?」

 だが、その真横に何の前触れも無く鎧を着たNoble Orcが出現し、Giantな剣をVandalieuに向かって振り下ろした。


 Vandalieuの頭部に命中したGiant剣は、glassが割れるような音を立てて砕け散った。

「ブ、ブゴ……ボビュ!?」

『今まで無かったから手出しできないのかと思ったら……』

 Vandalieuclawsを一振りしてNoble Orc……BugoganCopyを始末した。


 だがVandalieuの周りに次々に人やmonstersCopyが現れ、同時Heinz達を彼から遮るように壁が出現する。

 このDungeonを管理する神が介入を開始したのだ。

 certainlyそれも警戒していたVandalieuだが、現れたCopyを無視する事は出来なかった。


Humanの力を舐めるなよ!」

「邪悪なDhampirめが! 今こそDivine Punishmentをくれてやるわい!」

「ゲギャアアアアアア!」

「あたしの蟲の餌に成りな!」

「行くぜ、KasimZenoっ!」

「おうっ!」


 『Five-headed Snake』のErwinに、Gordan High Priest、そしてGoblin King、【Insect Army】のBebeckettFesterKasimZeno

 Vandalieuに魂を砕かれた敵や、大して思い入れの無い敵、そして殺した後仲間にした敵、そして友達のCopy。強さに纏まりは無く、今ではGordan High PriestBugogan-sama雑魚に過ぎないが……。


『どうやら、余程俺を怒らせたいようですね。……俺はもう激怒していると言うのに! 【-Transcend Limits-】、【Surpass Limits: FragmentsActivate、【Instant Response】!』

 もう伏兵は出尽くした。そう判断したVandalieuは、全力でCopy達に襲い掛かった。


 壁の向こう側では、恐ろしい咆哮と断末魔の叫びを聞きながらも、Heinzが言葉を失っていた。

Martina……Riley……お前達が何で……?」

 彼らの前に現れたのは、死んだはずの二人の仲間だったからだ。


Heinz、きっと、マルティとRileyCopyよ」

 RileyCopyに運ばれてきたDelizahがそう言い、はっとHeinzが我に返る。

「そうだ、この二人のCopyは一時的に我の代行Fissionとして使用している」

 生前のRileyからは聞いた事の無い、理知的だが何処か無機質な声が発せられる。同時に、Heinz達を苦しめていた激痛が嘘のように消えた。


「……main bodycontrolから離れた、appetite以外意思の無いCloneなら通常のCopy-sama消せるようだな。recordしておこう。

 『Five-colored blades』よ、我は『God of RecordsCuratos。助けに来るのが遅れてすまない」

 RileyCopyに宿った神、Curatosの出現にHeinz達の顔に驚きと希望が浮かぶ。despair的な状況だったが、神の力を借りる事が出来れば、Vandalieuに勝てるかもしれない。


「ここは我に任せて――」

 MartinaCopyが、既に息も絶え絶えなconditionになっているEdgarを抱き起こす。

「すまん、Kami-sama悪いが、回復をたのえげ?」

 そしてEdgarの首を、ごきりと捻り折った。


「な、何をっ!?」

 驚くHeinzDelizahに対して、Curatosは無機質な口調で言った。

「我に任せ、魂を喰われない内に『街』に戻り、このDungeonより脱出するのだ。このDungeonは忌々しい『Evil God of Labyrinths』等によって孤立させられている。他のGodsの救援は無い。

 我々の負けだ」


 Curatosの敗北宣言を肯定する-samaに、Edgarbody partが塵と化して崩れ去った。


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