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Chapter 198: 冬は出会いと分離の季節

 『Earthの神』、それは独立した個別のDivinityでは無く、異なる国の神と悪魔、更に妖怪や妖精、都市legend等々の集合体である。

 『神』と言う大元から『Earth』のHuman達の信仰や畏れ等を支えに、枝別れした存在だ。


 それだけに意見の集約が出来ず、力はあるが地上にimpactを及ぼす事は滅多に出来ない。神の真横に悪魔が常に存在しているような状況の為、お互いに牽制しあって結果何もできない事が多いからだ。

 唯一の例外がZuruwarnとの交渉の結果、VandalieuEarthの神の約半分がblessingsを与えた事だ。


 そんな『Earthの神』を、ZuruwarnVandalieuに会わせたいと言う。

『一体何故? 確かにblessingsは受けていますが、半分くらいは俺を応援したくないと言っていたのでは?』

 『Earth』で生きていた頃から考えると、Vandalieuの言動は大分変化している。そのため、受け入れられなくても仕方ないだろと彼も思っていたのだが。


『まあ、会って見れば分かるって』

 Zuruwarnはそう言うと、不思議な場所に案内した。そこでは、Vandalieuも知っているEarthの神秘的な存在がcountlessに集まって何か議論をしたり、喧嘩をしていたりしていた。

 神に仏に悪魔に妖怪が数万以上も。中々壮観な眺めだ……あ、河童と口裂け女がいる。


『おお、よくぞ来られた。反対派の諦めの悪さに辟易していたのだよ』

『しまったっ、間に合わなかったか!』

『良いtimingだ! お陰で論戦は俺たち賛成派の勝ち逃げだぜぇ!』

 一部のGodsがほぼ口喧嘩と化していた議論を取りやめて、Vandalieu達を迎える。


 Vandalieu達に対して-sama々な反応を示すEarthの神達。彼等の多くはVandalieuに対して友好的で、敵対的な態度を見せる者は極僅かだった。


 そして彼等の話とは、Vandalieuに既にblessingsを与えた冥神達以外の神が、改めてblessingsを送りたいという事だった。どう言う事かと尋ねると、どうやらVandalieuは無意識のうちに『Earthの神』にimpactを与えていたらしい。

 『Earthの神』の内、死者や死後のworldに関係するGods、いわゆる冥神はVandalieublessingsを与える事で彼と繋がった。


 だが冥神達は『Earthの神』の一部……およそ半分だ。そのため当初Vandalieublessingsを与えたくないと拒否していた神も、間接的にVandalieuと繋がってしまった。

 そして徐々に冥神達を通してimpactを受け、浸食されたのだ。


『別に我々全体のDivinityが変化したとか、そう言う事では無い。今も貴-donoの行動は認めがたいと思っている』

しかし Zuruwarn -donoがしつこく説得を続けるうちに、こいつを含めた石頭共もこう思うようになったのさ。『another worldなら別に良いか』と』

another worldで何が起ころうと、Earthの迷える子羊たちには何のimpactも無いからだそうだ』


『そう考えると、blessingsによってできた繋がりを通して見るあなたのanother worldAdventureは、とても愉快だわ。我々は今までこのEarthしか見た事が無かったから、尚更そう感じたのかもしれないわね』

 つまり、『Earthの神』にとってVandalieuの行動は格好の娯楽だったらしい。『Earthの神』の中には剣と魔法のworldを夢見るHumanの思いから産まれたDivinityもいるので、『Lambda』でのAdventureはそんなDivinity達の好奇心を大いに刺激したのだろう。


『そう言う訳だ。我々's Divine Protectionを受け取るが良い』

『ありがとうございます』

 尊大な物言いで光る球体を渡して来る『Earthの神』Divinityに、Vandalieuは頭部を下げてblessingsを受け取った。


『ところで、ついでにColarecipeEarthの諸々に関する知識も教えてもらえませんか?』

『……何故そこまで炭酸飲料のrecipeを求める? まあ、良いだろう。another worldで作る分には、Earthの企業の権益を侵す事は無いだろうし』


『ただ他の知識に関しては完全にとはいかぬ。汝のHun & Poは外から手を加えられる事に対して抵抗力が強すぎる。

 教えはするが、九割以上は忘れると思え』

『それに、俺達が与えるのはあくまで『Earth』での知識だ。物理法則が違うそっちのworldで同じ事が出来るとは限らんぞ。注意するんだな』


 こうしてVandalieuは『Earthの神』の完全なblessingsと、Colarecipe。そしてEarthの諸々の知識の極一部を手に入れたのだった。




 『Earthの神』からblessingsと知識を受け取った直後、Vandalieuは再びZuruwarnに咥えられてspaceを移動した。

『ここが『Origin』ですか? 見分けがつきにくいですが』

 『Earth』とほぼ同じ惑星をouter spaceから眺めて、Vandalieuは呟いた。


『然り。『Earth』と『Origin』は似ている故、此処からでは小さな地形の相違点でしか見分ける事は出来ないのだ』

 『Origin』は『Earth』と違ってmagicが存在し、歴史的に第二次world大戦が起きていない等相違点は大きいが、space (UCHUU)から眺める分には違いは殆ど無い。


『来たついでにRokudouにあまりやり過ぎると来世で酷い事になるぞと忠告したり、AmemiyaRokudouが裏切り者だと教えたりするのは……拙いでしょうね』

Rodcorteに気がつかれるから、ちょっと難しいかな。後、彼等が-kunの今のその姿を見て無事でいられるか分からないし……地上にAdventするのはマジ止めて』


 高層ビル並みの大きさ以外にも、Vandalieuの魂はcountlessの【Demon King Fragment】が入り交じり、今までよりも更に名状しがたい形状になっていた。

 Zuruwarn達としてはRodcorteに自分達の行動がばれ、今後の暗躍がしにくくなる事もそうだが、Vandalieuが『Origin』で狂人を量産する事も避けたい。


『それに、姿を見せても約十年前のように攻撃される可能性の方が高いだろう。あの時より今の-kunの姿は異形と化しているのだから』

 Vandalieuの二度目の人生が終わった時の事を指して言うRicklent。確かに、あの時はまだ人の形をしていたが、今は人型をしているだけだ。


 Rodcorteにばれる危険を冒して忠告しに行ってそれでは、bone折り損にも程がある。

『それもそうですか』

しかし-kunにとって彼等は忠告に値するような人物なのか? 眼中に無いものとばかり思ったが』


 Ricklentに尋ねられたVandalieuは、『いいえ、RokudouAmemiya本人はどうでもいいです』と答えた。

 本当に別にどうでもいいのだ。この『Origin』の二度目の人生で彼等がどんな生き方をしようと、結局はRodcorteの元に行き、自分を殺すように依頼されて『Lambda』にreincarnationする事は変わらない。


 それで彼等がRodcorteの依頼を受けるとは限らない。Vandalieuに関わらないように何処かに逃げるかもしれないし、逆にKanakoのように近づいてくるかもしれない。Asagiのように、斜め下の行動に出る可能性もある。

 ただそれは彼等の性格や心情によって変わるだろうし、それを短時間、一度か二度話した程度で変えられるとは思えない。


 そもそもVandalieuは既に『Origin』での人生は終えているのだ。ほかならぬ、AmemiyaReincarnatorの手で。

 そうである以上、Reincarnator達が『Origin』でどんな人生を送り、その身に災いが降りかかろうがそれは彼の関知するところでは無い。


『ただ、Plutoが見逃した……助けたAmemiya Narumichildの将来が少し気になっただけです』

 しかしPlutoNarumiを殺そうとしてそれが出来なかった原因、その時彼女の中に宿っていたchildについては少し気になっていた。

 彼女が一度目の人生で……二度目があると知っていた訳でもないのに、本懐を遂げるのを諦めてまで助けたchildだ。


 折助かったのだから、出来れば健やかに育って欲しい。

 Kanako達によると、彼女達が死んだ施設にVandalieuを実験動物にしていた研究者達の生き残りも集められていたらしい。だから彼女達とほぼ同時に、全員死んだはずだ。

 それを考えると、Vandalieuが『Origin』で関心があるのはAmemiya coupleの二人目のchildぐらいだ。


『でも、後はご両親に頑張ってもらいましょう。

 じゃあ、『Origin』の神の所に連れて行ってください』

 気分を切り替えてZuruwarnに頼むと、彼は『Earth』の時と同じように不思議な場所にVandalieuを連れて行った。


 『God of Origin』も『Earthの神』と同じcountlessDivinityを持つGroup Bodyの神だが、そのDivinityの数はずっと少ない。やはりmagicが存在するためか、『Origin』のHumanの自然や神秘に対する考え方は『Earth』とは違うのかもしれない。

 『Earth』なら何か不思議な事が起こると、「妖精の悪戯」や「妖怪の仕業」、「幽霊の祟り」となり、畏れから新たなDivinityが生まれる。


 しかしOrigin』では「何者かのmagic」や、「偶然magic的な効果が発揮されたのかもしれない」と、magicで物事をconjectureするため、Divinityが生まれないのかもしれない。

『とりあえず、あいつらはいないようですね』

 だが実在するHeroや偉人がDivinity化する事はある。しかしBravers』の面々は幸いにもDivinity化していなかったようだ。


 もし、Divinity化していたら面倒な事になるところだった。

『まあ、Amemiya Hirotoは本人が生きているからね。でもほら、-kunの知っている顔ならここにいるよ』

『ああ、ようやくお会いできました』

 Zuruwarnが指した所に、Vandalieuは最近になって見るようになった姿が在る事に気がついた。


 黒い髪と瞳をした、abnormalに白い肌のShoujo

Pluto?』

 『God of Origin』の中に居たのは、最近前世での姿にTransform出来るようになったPlutoだった。


『はい、私はPlutoです』

 彼女はVandalieuに恭しく一礼して、こう続けた。

『ですが、本物のPlutoではありません。この『Origin』のHuman達の信仰や祈りによって生まれた、『God of Origin』のDivinityとしてのPlutoです』


 『The 8th Guidance』は、Plutoに死の力を集める為やsponsorの獲得、そして『Bravers』や国際機関に嫌がらせを行うため、慈善事業を行っていた。普通なら死を免れないsickJackPlutoの元に運び、彼等から『死』を吸い取って治療していたのだ。


 Pluto達からしてみれば完全な善意とは言えない下心あっての行為だが、命を救われた当人やそのfamilyから見れば救いのGoddessである事に違いは無い。

 それも失われたはずのdeath attributemagicを使う、ageを取らない神秘的なBishoujoが行ったのだから、Pluto達が想像していたより大勢の崇拝者が現れた。


 そして、Plutoを含めた『The 8th Guidance』のmember全員が死亡した後も崇拝者達は残り、死してcharismaとなったためか崇拝者は増え続けていた。

『その信仰が私を『God of Origin』として生じさせたのです。そのため私はPluto本人では無く、『Origin』のHuman達が想像するPlutoと言う事になります』


『なるほど。それで少し-sama子が違うんですね』

 Vandalieuから見て目の前のPlutoは、本物の彼女とは少し言動が異なっていた。その違いは、目の前のPlutoは素の彼女を知らない崇拝者のimageから作られた存在である事が原因のようだ。


『それで、我々がblessingsを与えたLegionとの繋がりを経由して、同じくblessingsを与えていたZuruwarn -donoRicklent -donoに頼んであなたをお呼びしたのは、今後【Avalon】のRokudou Hijiriがこのworldに大きなimpactを与える場合、対処するためAmemiya Hirotoを利用する事を我々が決めたからです』


 death attributeを手に入れるための研究を秘密裏に進めているRokudou Hijiriは、今後過激な行動に出る可能性が大きい。その結果発生する死者が数千人、数万人ぐらいなら幾ら『God of Origin』がRodcorteに憤りを覚えていても、Plutoが加わっていても、動く事は無かっただろう。


 『Earth』と似たworldである『Origin』は幾度も災害や紛争、戦争を経験してきた。数千人や数万人の命が失われる事が幾度もあった。

 その悲劇の最中、天から輝きと共にGodsが現れ人々を救済した事は一度も無い。


 -sama々な神の集合体である『God of Origin』にとって、Human同士のぶつかり合いはそのまま己を奉じる者同士のぶつかり合いとなり、結果Gods同士でも意見の相違が生まれ動く事が出来ないからである。

 だが【Avalon】のRokudou Hijiriはその例外だった。


『彼のやろうとしている事によって生まれる被害は、最悪の場合このworldを滅ぼしかねません。彼の研究が、正しければですが』

Rokudou Hijiriの研究は、それ程危険なのですか?』

『はい。本当に実現できるのかは分かりませんし、途中でdeath attributeManaを扱いきれなくなって自滅するかもしれませんが……その場合でも、『Origin』の総人口は三分の二程に減るでしょう』


 どうやらRokudou Hijiriの研究は相当危険なものらしい。Plutoからそこまで聞いていなかったのか、ZuruwarnRicklentも思わず息を飲んだ。

『そこまで危険ならRodcorteも止めそうなものだが……このworldHuman達はCircle of Reincarnationを司る奴に取っても力の源の一つの筈だ。

 だが、そんな-sama子は無かったのだな?』


 Ricklentに問われたZuruwarnは、四つの頭全てを横に振った。

『無かった。事態の深刻さに気がついていないのか、Amemiya Hirotoが止めるだろうと楽観視しているのか、barelyまで待って介入するつもりなのかは分からないが、今まで何もしなかった事を考えると――』

『どちらにせよ、我々はもうRodcorteを信頼も信用も出来ない。その意見で一致しています。そのため、Rokudou Hijiriを止める為にAmemiya Hiroto達『Bravers』を援助する事で利用するつもりです』


 どうやらPlutoを含めた『God of Origin』は、もうRodcorteに断りを入れるつもりも無いらしい。勝手にAmemiya Hiroto達を援助して、被害が大きくならない内にRokudou Hijiriが破滅する-samaに仕組むようだ。


 だがそれまで静かな決意を瞳に宿していたPlutoの顔が、急に顰められた。

『私個人としては奴らに、一時的と言えblessingsを与え、奴らを援護するために奇跡を起こすなんて真似は気にくわないのですが……我々には地上で行動するSpirit CloneHeroic spiritに相当する存在がいないので、実行戦力として奴らを利用しなくてはならないのです。

 お許しください』


『それは別に構わないのですが……Kami-samaworldを守ろうとするのは当然の事ですし』

『いえ、それが……利用し終わったらblessingsは取り上げるつもりですが、もしRokudou Hijiriを止める最中にblessingsを与えたReincarnator達が死亡した場合、blessingsを持ったままRodcorteDivine Realmへと行ってしまってblessingsを取り上げられなくなる可能性があるのです。

 それをお伝えしようと思いまして』


 つまり、Rodcorteの依頼を受けるか、Asagiと似たような事を考えるReincarnatorに、God of Origin’s Divine Protectionがついている可能性があるらしい。

『なるほど。その場合、魂を喰らうとあなた達にまでDamageが入ってしまう訳ですね』

 そうしたReincarnatorの魂をVandalieuが喰らうと、Reincarnatorの魂に付加された『God of Origin's Divine Protection――力の一部も喰われてしまい。それなりのDamageを受けてしまう。


 Plutoはそれを避けたいらしい。

『それでRicklent -donoと相談した結果、恐縮ですが我々's Divine Protectionを『Undead』……Vandalieuに受けて頂き、その繋がりを通じてReincarnatorの魂が喰われるときにblessingsを回収するのが良いだろうと言う事になりました。

 受けて頂けますか?』


『返事をする前に確認しますが、もしblessingsを得ているReincarnatorが俺を殺そうとせずに姿を消すか、俺に降って来た場合はどうしましょう?』

『その場合はそのままで構いません。無理にblessingsを全て回収しなければならない訳では無いですから』

 敵では無い存在の魂まで喰らわなくても良いと聞いて、Vandalieuはほっと胸を撫で下ろした。


『では、有りがたく受け取ります』


『お許しいただき、ありがとうございます。偉大なる『Undead』、Vandalieu -sama

『では、ついでのようでありがたみも薄いだろうが、我々's Divine Protectionも受け取ってもらおうか』

『もうAldaに隠す意味も無くなったし』

 そしてVandalieuはもう一人のPlutoから『God of Origin's Divine Protectionを、そしてRicklentZuruwarnからもblessingsを受け取った。




《【Earth’s Hell Gods’ Divine Protection】が、【Gods of Earth's Divine Protection】に変化しました!》

《【God of Origin’s Divine Protection】、【Ricklent’s Divine Protection】、【Zuruwarn’s Divine Protection】を獲得しました!》




 そしてVandalieuはまだ夢の中にいた。

『そのまま暫く夢を見ていれば目覚めるし、-kunbody partGufadgarnが動かして行列に並んでいるから心配しないで待ってて』

 そう言ってZuruwarnRicklentは去っていった。どうやら、迎えに来ても送ってはくれないらしい。


『途中、縁があれば出会う者もいるかもしれない。その者をどうするかは、汝の裁量一つだ』

 そうRicklentが言っていたので、ただ送らなかっただけでは無いらしいが。しかし、出会う者とは誰の事だろうか?


『夢の中で俺が会うのは、大体知り合いだけなんですが……『Origin』や『Earth』に知り合いっていましたっけ?』

 そんな事を考えながら、Vandalieuはのんびりと進んでいた。結局、誰にも出会わず目覚めるのでないだろうか。そう思った途端、小さい何かを見つけた。


『……?』

 きょとんとした-sama子でこちらを振り返る、猫や中型の犬ぐらいの真っ黒い何かにVandalieuも戸惑った。

 今迄夢の中で出会った者達は、大体現実と同じ姿をしていたからだ。黒い何かなんて漠然とした姿の者はいなかった。


 暫しお互いに困惑したまま見つめ合うVandalieuと黒い何か。しかし、先に困惑から脱したのは黒い何かだった。

『あぁ~っ』

 甲高い声を上げたと思ったら立ち上がり、よたよたとVandalieuに駆け寄ったのだ。


 そのままVandalieubody partのそこかしこから生えたbumpを掴んで、登ろうとしてくる黒い何か。その-sama子を見て彼は黒い何かの正体に気がついた。

『ああ、赤-chanか。自分に対する認識がしっかりしていないから、そんな姿になっているのか。流石に夢の中にまで親御-sanはいないみたいですね』


 正体に気がついたものの、黒い何か……赤ん坊を持て余して周囲を見回すが、保護者らしい人の姿は無い。

 まさか乱暴に振りほどいて進む訳にもいかないので、あやしながら進む事にした。……因みに、何処に向かって進んでいるのか、進む必要があるのかは、Vandalieu本人にも分かっていない。


 夢で曖昧になった思考の結果である。

『めっ? めっ?』

『そうです、それは目だから指を突っ込まないでくださいねー』

『にょろ?』

『それはantennaです。あまり引っ張らないでー。夢の中だからか、現実よりずっと力が強いですね』


 黒い赤-chanは、Vandalieubody partの各所にある目を指で突いたり、伸びているantennaをひっぱったり、楽しそうに遊んでいる。中々アグレッシブな赤-chanである。

『でも少し話せるようですし、一ageから二ageぐらいでしょうか。おnameは言えますか?』

『めー』

Me-kunですか』


 やんちゃで物怖じしない-sama子だったので男の子だろうと、Vandalieuは予想して-kun付けて呼ぶことにした。

『俺はVandalieuです』

『バンダルー?』

『そうそう、バンダルー』

 顔のpartsは何一つ見当たらないが、tongue足らずな口調で発音するMe-kunに合わせるVandalieu


 そうしながらこの子は何者だろうかと考えるが……夢の中だからか思考が纏まらない。

(まあ、起きた時考えましょう)

 思考を放棄したVandalieuは、自分のbody partでアスレチック遊びをするMe-kunをあやしながら、進んだ。


『■■■■■■』

 暫く進むと、今度はのっぺらぼうに出会った。

『おや、EarthKami-samaの一部ののっぺらぼう-san……じゃないですね』

 白いwhole bodyタイツを着た性別不明の人shadowは、Vandalieuが話しかけても反応する-sama子もなく、何かを呟き続けている。


 自分に対する認識がはっきりしていない赤ん坊でもないのに、顔どころか性別すら分からないMental conditionで彷徨っているとは、かなり深刻なconditionだ。

『しろ』

『そうですね。夢の中でも【Mind Encroachmentskillが使えるでしょうか?』


 夢であったのも何かの縁だろうと、Vandalieuは白い人shadowに腕を伸ばし掌で出来るだけ優しく包んだ。

『あなたは誰だ?』

 そして掌の内側にcountlessの目と口を生じさせ、問いかける。


『■■■■』

『あなたは誰だ?』

 『誰だ?』『何者だ?』『何だ?』……繰り返し、繰り返し質問し続ける。すると、不明瞭な呟きを続けるだけだった白い人shadowに変化が生じた。


『■■■■■……わ……私は……誰だ?』

 白い人shadowの何も無かった顔に口が出来、意味の分かる言葉を呟き、姿が変化していく。

 だがその姿は一定にならず、輪郭はmaleからfemaleに、femaleからmaleにと変化し続けている。


 その-sama子をMe-kunは不思議そうに眺めた後、Vandalieuを見上げる。その-sama子から、「治ってないよ?」と言っているようだ。

『やっぱり一度だけでは治りませんね。無理をするとMentalが本格的にDecayしますし、また会えるとは限らないし……薬代わりに出しておきましょうか』

 Vandalieuはそう言うと、掌にある二つの目と口を一つ千切り、白い人shadowにくっつけた。


 これであの目と口が、白い人shadowに質問し続けてくれるだろう。

『私……私は……』

 そして白い人shadowを放す。すると白い人shadowは頼りない足取りで何処かに向かって歩いて行った。


『しろー?』

『あの人とはここでお別れみたいですね』

 やはり夢だからか、何故か追う気にはならず。そのままVandalieuMe-kunを乗せたまま歩き続けた。

 途中何故だかわからないが、大勢の人達に周りを囲まれて謎の祈りを捧げられたり、白い人shadow程では無かったがDiseaseんだ-sama子の人達が通りすがったので、それを【Mind Encroachmentskillで助けたりした。


『……最初は誰とも会わないんじゃないかと思っていましたが、意外と出会いますね』


 そうこうしていると、それまで歩いていた地面とは違う色の地面との境界線に出た。

『どうやら、Me-kunともここでお別れみたいですね』

 感覚的に、此処が夢の終わりなのだろうと分かったVandalieuがそう言うと、Me-kunは『やーっ』と言って彼のbody partにくっついた。


『そう言ってくれるのは嬉しいですが、夢は醒めるものですし……じゃあ、Me-kunにも上げましょう』

 そう言ってVandalieuMe-kunが掴んでいるのと同じbone、気に入っている-sama子の目やantennaを引き千切り始めた。


『むーっ』

 しかしMe-kunはそれだけでは満足できないらしくペチペチとVandalieuを叩いて不満を訴える。

 その度にVandalieuは他の部位を引き千切って行く。そして小さなになったそれらを捏ねて人形を作った。そしてMe-kunの背後に彼よりも大きな、しかし Vandalieuよりもずっと小さい、もう一人のVandalieuが出来上がっていた。


bandaaっ!』

 そのもう一人のVandalieuに、Me-kunははしゃいだ-sama子で駆け寄って行く。


『じゃあ、Me-kunを頼みます。俺よ』

『大したことは出来ないと思いますが、やってみましょう。俺よ』

『ではjewelも付けましょう』

『それがあれば多少はマシになりますね。助かります』


 そしてjewelを受け取った小さなVandalieuは、片腕にMe-kunを抱きかかえたままVandalieuとは別の方向に向かって歩き去っていった。

 それを見送った後、Vandalieuは目覚めた。




《【Hell Demon Creator Path Enticementskilllevelが上がりました!》




Vandalieuよ、目覚めましたか?」

 気がつくと、Vandalieuはまだ行列に並んでいた。もうすぐの門に着くが、空の-sama子を見るとZuruwarnに魂を連れて行かれてから一時間も経っていないようだ。


「ええ、おはようGufadgarnbody partを動かしてくれてありがとう」

 姿の見えないGufadgarnに、礼を言うVandalieu。どうやら彼女はspaceの隙間から指なのか、それとも他の器官なのかは不明だが、それを伸ばして服の下から彼のBodyを人形のように操っていたようだ。


「勿体なきお言葉」

 平坦だが、何処か嬉しげな声と共に、肌に触れていた細長い何かが外れた。

 それと同時に、門を警備しているGuardが不審そうに声をかけて来る。


「なんだ、お前一人なのか? てっきり前か後ろの商人の丁稚か何かだと思ったんだが」

 Guardの目には、hoodのついたローブを被った十age過ぎのchildが映っている。背負い袋一つしか荷物の無い、安全に旅が出来るとはとても思えない格好であるため、不審に見えたのだろう。


「はい。奉公に出ていた隊商がmountain banditに襲われて……俺は運良く逃げられたのですが、貧しい両親の元に戻る訳にもいかず、ここまで旅をしてきました」

 前もってMilesEleonoraと相談して決めた嘘の経歴を話すと、Guardが彼を見る目が不審から同情に変わった。


「そうか……それで、このに来てどうするつもりだ?」

「はい、商業guildに行って仕事を探そうと思います。幸い、mountain banditが見逃したお金が少しありますし」

「分かった。これから大変だと思うが、生き残っただけでも御の字だ。俺達の世話にならないよう、頑張ってくれ。十五age以下のchildは通行税が免除されるから行って良いぞ、Moksiによ――」


「おい、待て。顔も確認しないで通すつもりか? ガキだからって手を抜くな。

 さっさとhoodを上げろ」

 若いGuardの声を遮って、彼より年上のGuardVandalieuに顔を見せるようdemandしてきた。その顔は職務に厳しい勤勉さ……では無く、いやらしい笑みが浮かんでいる。


 ただ言っている事は正しいので、Vandalieuhoodを上げて顔を見せた。Dhampirである事を隠す為、眼帯代わりの布は既に巻いてある。

「ほう、片目か。良くここまで無事だったもんだ。ところで……の治安を守るために、不審者は入れちゃならないって決まりがあってな。この不審者ってのは、親のいない、仕事も無いガキも含まれてるんだ。ガキでも、生きていくためなら盗みやかっぱらいをしかねないからな」


Aggar senpai、幾らなんでも――」

「黙ってろ、Kestっ。新米が俺に文句でもあるのか?」

 Kestと呼ばれた若いGuardが止めようとするが、このAggarと言うGuardに睨まれると小さく呻いて引き下がった。

 どうやら新米GuardKestは、Aggarと言うsenpaiよりずっと立場がweakらしい。


「だが、暫く生活できる金が在るなら話は別だ。大人以上に通行税を払う余裕があるとかな」

 そしてAggarは手をVandalieuの前に伸ばして来る。どうやら彼は、Vandalieuが言った『mountain banditが見逃したお金』を持っていると聞いて、まだguildにも登録していない無力なchildから賄賂を巻き上げに来たようだ。


(に入った後、Food Stallをやるための資金を持っている事を不審に思われないようにと考えた嘘が、ちょっと仇になってしまった)

 資金自体は潤沢にある。Talosheimに移住したSauron領の村人等からLuna貨と交換し、『Hyena』のGozorofhideoutから手に入れたBaum貨があるからだ。


 賄賂を渡すぐらいは何でも無い。しかし、金を持っていると目を付けられ続けるのも面倒だ。

(確か、この辺りの通行税は大人一人当たり五Baumだったな)

 そう思って、とりあえず懐から倍の十Baum貨をAggarの手に握らせる。


「……いいだろう。ようこそ、俺達の町 Moksiへ」

 ニタッと笑ってAggarVandalieuの前から退いた。

「宿なら門の近くにある『Starling Inn』が、安く泊まれる。食事はその近くの『ツバメの巣』亭だと腹いっぱい食べられるはずだ」

 そして門を通り抜ける途中でKestがそう小さく教えてくれる。同じく小さく礼を言って、VandalieuMoksiに入った。


 いきなりケチがついたが、活気のある良い街だ。下調べした通りに。

 実はVandalieuは数日前からこのの中と外を、門を通らず出入りしている。『Hyena』のGozorofの上の犯罪organizationの本部が此処に在ったためだ。


 既にそこはMilesIslaによって制圧されており、主だったmemberは全て一通り情報を吐かせた後、Undeadにしてある。彼等はGozorofと違って、暫くの間は使うかもしれないので簡単には終わりに出来ないのだ。

 そうした甲斐あって、このMoksiの裏社会はVandalieuが掌握したに等しい状況だ。……流石に賄賂をせびってくるような下っ端までは掌握できなかったが。


(掌握したのは上の方のHumanだけで、下の構成員や構成員でない人までは把握できませんからね)

「……Vandalieuよ、あのHumanの始末はいかがいたしますか?」

 spaceの隙間からGufadgarnにそう尋ねられて、Vandalieuの思考は一瞬停止した。


「あのAggarって言うGuardの事ですよね? 何もしませんからね」

「……宜しいのですか? 私に命じて頂ければ、奴を死の迷宮で永遠に閉じ込める事も可能です。無論、証拠は残しません」

「いや、だからやりませんて」


『それじゃあ、アタシが殺っとく?』

「育ちざかりのchild達が、肉団子が食べたいって鳴いているの」

『養分……実が美味しくなるよぉ』

『プグプルルル』


 背後に憑いているOrbiaや、体内に装備されているQuinnEisenKühlが被り直したhoodの中の耳の周りから小さく出て、そう囁く。

「ですから、何もしませんよ。小悪党をいちいち始末していたら、あっという間に行方不明者のができてしまいます」

 被害はたったの十Baumなのだから。


『……そうかい? 何時でも言うんだよぉ』

 Vandalieuの言葉に納得したのか、それとも一旦-sama子を見ているだけかEisenがそう言ったのを最後にみんな引き去った。


「……悪質なクレーマーに目を付けられないと良いのですけど」

 下手をするとMoksiで発生した連続行方不明事件の中心人物になってしまう。Vandalieuはとりあえず、introductionしてもらった『Starling Inn』に向かったのだった。


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