幌馬車の列がhideoutに入って行き……それなりの範囲でSlave狩りを主に活動していたこの犯罪者集団は終わりを迎えたのだった。
その辺りのmountain bandit団と比べれば戦力は充実しており、並のadventurer partyぐらいなら返り討ちに出来ただろうが、hideoutの内側に入れてしまったのはVandalieuだ。
彼の体内から出現したBlack Goblinを主体にしたninja部隊、上Class adventurerに匹敵する仲間達の前には抵抗も出来なかった。
「Vandalieu、何もあなたがSlaveの中に紛れ込まなくても、最初からこうしてhideoutを狙えば良かったんじゃないの?」
黒い肌に尖った耳、そして背中から伸びた透き通った二対のfeather……Vandalieuの【Group Binding Technique】で装備されるため【Chaos】skillで虫のfeatherを生やした【Aegis】のMelissaがそう尋ねる。
hideoutの場所が分からないなら、判明するまで馬車を直接襲って何人もいる男達から情報を吐かせれば良かったのではないかと彼女は思っているのだ。
実際、それでもこの犯罪者集団は容易く壊滅させる事が出来ただろう。
「Melissa、KingがSlaveに紛れ込んでも紛れ込まなくても、こいつ等始末する時間、変わらない」
ninja部隊の隊長になった、Black Goblin達の中で最初にninjaになったBragaにそう言われると、Melissaもfeatherを畳みながら言い返した。
「待って、別に責めている訳じゃ無いわ。単に、何でって思っただけよ」
「まあ、Melissaの言う方法でも良かったのですが……【Mind Encroachment】やInfest型Demon King Familiarの練習を実地でやりたかったんですよ。それで、丁度失敗しても構わないこの連中で試していた訳です」
対象者に効果を及ぼしつつも、一見すると普段通りの人格を維持しているように見え、更に効果が解けても障害が残らない【Mind Encroachment】の使い方は、Human社会に出た今重要である。
そして対象の脳の一部とnerveを【Demon King's sub-brain】と【Demon King's nerves】に入れ替えて創る、Infest型Demon King Familiarの実戦&実地testも重要だ。
試すだけなら生け捕りにしたmountain bandit等犯罪者やmonstersをSampleにして幾らでも出来るのだが……捕縛された犯罪者のMental conditionは通常時とは異なるし、monstersのfive sensesや注意力はHumanのそれとは異なる。
だから実際に試してみるのはとても大事なのだ。
「あと、気がつかれず穏便にhideoutに入り込んだ方が、取りこぼしも無く余計な被害も出さずに済むかなと」
「そう、そう言う事なら納得したわ」
「納得できるかぁぁっ! ふざけんじゃねぇ!」
丸く収まった会話に割って入ったダミ声は、髭に白が混じった禿頭のDwarfが出したものだった。
彼がこの犯罪者集団の頭、裏社会ではそれなりに名の知れた『Hyena』のGozorofである。
Half-Plate Armorを纏い、Battle AxeとSpike付きの盾を構えたその姿はまるで歴戦のmercenaryを思わせる。
その彼が額に青筋を立てて怒鳴り声を上げていた。
「暢気に雑談とはいい度胸じゃねぇか! 確かに手下はやられたが、俺や主だった連中は全員健在だぜ!」
そしてDwarfやHumanの幹部、合計五人が集まって抵抗を続けていた。
「用心棒を一人手懐けたぐらいで良い気になってんじゃねぇぞ、ガキ共が! その黒いGoblin共もすぐに皆殺しにして耳を削ぎ落してやる!」
そうただ一人剣と、他の犯罪者の死体から回収した盾を構えているGirabatも含めて威嚇するGozorof。ただ、MelissaとBragaは彼等を眺めるだけで、Vandalieuに至っては視線も向けない。
それも当然で、Gozorofは主だった者達は無傷だと言っていたが、逆に言うとこの場にいる者達以外は全員Braga達ninja部隊やMelissa、Gehenna Beeに始末されている。
そしてGozorof達が追い詰められているのはhideoutの広間で、隠し通路の類は無い。逆転の可能性は、彼等の頭の中にしかない。
「な、舐めやがってぇっ! てめぇらっ! 裏切り者を始末して、あの舐めた女とガキを人質にとって逃げるぞ!」
「いや、別に舐めてはいませんけどね」
そう言いながら、Girabat……【Demon King's sub-brain】と【Demon King's nerves】でBodyを乗っ取ったInfest型Demon King Familiarを動かしているVandalieuのCloneは、応えた。
そんな彼に向かって前衛でMaceとFlailを構えるDwarfが二人、Chargeして引き潰そうとし、弓を構えたHumanの男は牽制したいのかBragaに狙いをつけ、もう一人のHumanは何と呪文を詠唱している。mountain banditの同類にしては、戦力が充実しているようだ。
「うおおおおっ! 【Rock Crush】!」
「死ねェ、裏切り者ぉぉぉっ! 【Heavy Blow】!」
ただその挙動はDemon King Familiarの眼から見ると、とても遅いものだった。
(DClass adventurerぐらいなのかな?)
【Demon King's sub-brain】と【Demon King's nerves】、そしてVandalieuのCloneのお蔭でGirabatのBodyの反応速度は格段にincreaseしている。
そのfive sensesを前に、力強いDwarf二人のChargeは鈍重過ぎた。だが、increaseしているのは反応速度だけである。
(まともに受けると、GirabatのBodyが耐えきれない)
「……【Iron Wall】、【Iron Form】」
Martial ArtsをActivateしてDefense Powerを高めると、腰を落としてFlailとMaceの攻撃を盾で受け止め、鎧の硬い部分に当てて耐える。
「か、硬ぇ!?」
「Girabatが【Shield Technique】だと!? 貴-sama、何時の間に【Shield Technique】を覚えた!?」
Martial ArtsまでActivateした一撃にGirabatが耐えた事と、それ以上に彼が使えないはずの【Shield Technique】のMartial Artsを使った事に驚愕するDwarf達。
一方、Humanの男が放った矢はMelissaが張り巡らせていた不可視のBarrier、【Aegis】によって容易く防がれていた。一矢目を弾かれた後も諦めず、何処かに隙間があるはずだと二矢三矢と続けて放ったが、【Aegis】に隙間が無い事を確認しただけに終わった。
「私も別に努力しなかった訳じゃ無いのよ」
MelissaのBarrierを張るAbility【Aegis】は、最初は張ったBarrier自体がLuminescenceするのを止められなかったし、自分を中心に展開する事しか出来なかった。その後の研鑽によってBarrierのLuminescenceを抑えてほぼ透明にする事に成功し、自分からある程度離れた場所に展開できるようになっていた。
certainlyこうした情報は当時『Bravers』や『The 8th Guidance』のmemberにも伏せ、知っているのは前世で組んでいたMurakamiとKanako、そして腐れ縁のDougぐらいだった。
「前世では活かす間もなくPlutoのrunawayしたManaで死んだけど」
「そう言う事もある」
「頭っ! ダメですっ、Barrierか何かに囲まれてGirabat以外に手を出せません!」
「idiot bastard! だったらGirabatを狙え!」
「【Iron Form】なんてMartial Arts使ってる奴に、俺の弓矢が通じるはずないでしょう!?」
Gozorof達が情けないやり取りをしている間に、Demon King Familiarは剣を前衛のDwarf二人組に対して振った。
「Triple Thrust」
「い、【Stone Wall】!」
そのMartial Artsのnameを聞いた瞬間、Dwarfの一人は慌てて盾を上げてMartial ArtsをActivateした。
Girabatは幹部ではなかった。しかし mercenary guildを追放された札付きで【Shield Technique】こそ修めていなかったが、両手剣を振り回して何人もの敵を屠った攻撃主体の【Sword Technique】skillの使い手でorganizationでは知られていた男だった。
その彼がActivateした【Triple Thrust】をまともに受けたら、Vitalityに優れたDwarfでも鎧の上からSlash殺されてしまう。
だがInfest型Demon King FamiliarにされたGirabatは【Triple Thrust】のMartial ArtsをActivateする事はできなかった。口で「Triple Thrust」と言っただけで、その剣は速いだけで体重が乗っておらず、Dwarfが上げた盾に容易く弾かれてしまった。
「あ……」
いや、それだけでは無く剣が半ばから折れてしまった。
どうやらこれまで無理な力の入れ方をして振っていたのでガタが来ており、Martial ArtsをActivateし硬度を増した盾に叩きつけたのが止めになったらしい。
「よし、今だ! やれっ、Mage崩れ!」
「【Flash】!」
呪文を唱えていた男が、光で目を潰すmagicをActivateさせた。同時に、気を取り直したDwarf達だけでは無く、Bow Userが残っている矢で狙い、GozorofもBattle Axeを振り上げて襲い掛かってくる。
「むぅ……【Screw Strike】、【Shield Bash】、【Air Fist】、【Ten Consecutive Overarm Blows】」
視界を潰されたDemon King Familiarは、直前まで見えていた位置を狙って折れた剣を【Throwing Technique】で投げ、signを頼りに盾を鈍器として振るい、片手で拳型の衝撃波を放ち、更に連続の抜き手を放った。
screechと肉が弾けboneの砕ける音が響いた後、Demon King Familiar以外に辛うじて立っているのはGozorofだけだった。
「が、がは……? な、何だ、今の動きは……拳が、全く見えなかった……俺の斧が、飴細工みてぇに……」
柄だけになった斧を地面に落し、Gozorofはbloodを吐きながら震えていた。
彼が幹部として取り立てた者達は、荒くれ者を纏めるのに十分な技量の持ち主だった。特に同族でもあるDwarf二人は、長い付き合いだ。adventurerとだって正面からやり合える実力があったはずだ。
だが一人は盾で殴られ白目を向いており、もう一人はGozorofが受けなかった分の抜き手を受けてblood溜まりに沈んでいる。
背後のBow Userは胸板を折れた剣に貫かれて倒れており、Mage崩れは肩を【Air Fist】でぐしゃぐしゃに破壊されて呻き声を上げている。
Bow Userと抜き手を受けたDwarf以外は生きてはいるようだが、これ以上はとても戦えそうもない。Gozorofも立ってはいるが、気力で持っているだけで今にも死にそうな気分だった。
だがそれを行ったInfest型Demon King Familiarもただでは済まなかった。
「ぷっ……Melissa、もう大丈夫です。ありがとう」
胸には矢が刺さっており、盾は割れている。特にひどいのが素手の方の腕で、何処が肘なのか分からない程boneが折れ曲がっているうえに、指が全て無くなっていた。
しかし、恐ろしい事にその顔には何も浮かんでいなかった。口の中に溢れたbloodを無感動に吐き捨てる。
そのDemon King Familiarの言葉……Vandalieuの指示でMelissaが【Aegis】を解除したが、Gozorofにはもう何も出来なかった。
「俺自身のskill、【Shield Technique】や【Throwing Technique】、【Unarmed Fighting Technique】等のActive skillsは問題無く使えるけれど、素体……Girabatのskillは使えない。それに、俺自身のPassive skillsも効果を発揮できない」
そして、突然そう呟き出したDemon King Familiarに、Gozorofは怪訝な顔をした。
「な、何を言っていやがる、Girabat?」
だがその問いかけは無視され、その代わりのようにVandalieuが近づいてくる。
「まあ、当然ですよね。このGirabatのbody partに俺の一部をInfestさせて、乗っ取り操っているだけですから。Girabatも生きてはいますが意識は別にありますし。
後、body partの反応速度は上がってもmuscleやbone格は素体のままなので反動に耐えられないみたいですね」
【Ten Consecutive Overarm Blows】の結果役に立たなくなったRight Armを見下ろし、溜め息をつく。
「King、これ戦闘の役に立つのか?」
「立たないかもしれませんね。強い素体を使えば別かもしれませんが……そんな奴を態々探して【Demon King's sub-brain】をInfestさせる手間を払う価値は無いですし」
「最初から潜入用でしょ。Kanakoに演技の練習でも受けたらいいんじゃない?」
「実はもう習いました。……結果、俺は表情を作るのがdespair的に下手だと言う事が分かりました」
「……それは深刻ね」
「て、てめぇ等……何を話して……?」
突然自分を無視して会話を再開するVandalieu達に、Gozorofが困惑した-sama子で声をかける。もしかして殺されずに済むのかと、微かな希望を覚えたのかもしれない。
「ああ、これの実戦testの結果を纏めていました。HyenaのGozorofですね? あなたにはこれから取引あるSlave商人の事を話してもらいます」
「……くく、話しても良いがあっちは正規のSlave商人でNobleや商業guildの後ろ盾もある。違法Slaveを扱っている証拠も上手く消してやがる。俺から何を聞いても、捕まえる事は無理だぜ」
「いえ、捕まえません。stealth込んで洗脳して乗っ取ります。このように」
Vandalieuの声に合わせて、Girabatの耳からcountlessの細い蟲のようなものが伸びた。
「Girabatっ!?」
Gozorofが驚いて見つめる先で、Girabatの耳から【Demon King's nerves】を足代わりに、細長く変形した【Demon King's sub-brain】が這い出てきた。
「ア゛……かし……らぁ……たすけ……」
GirabatはGozorofに助けを求める言葉を言いながら、朽木のように倒れて動かなくなった。
「Vandalieu、死んじゃったけど?」
「小脳の部分を【Demon King's sub-brain】に入れ替えていましたからね。万が一捕まっても、誰にも助けられないように。寧ろ、よく最期に声が出せたなと思います」
「いっそ、頭の中身全部【auxiliary brain】にすればいいんじゃ?」
「それだと本人の生命活動が終わって、InfestしているManaの質が俺のものに変わってしまいますからね。別人だとばれる可能性があります」
そんな会話を聞きながら、重傷を負っているGozorofは何とか頭を働かせて目の前で起こった事を理解しようとしていた。
つまりGirabatは裏切ったのではなく、目の前のガキに頭の中を弄られて操られていたらしいが、何故そんな事を? いや、それより同じ事を今までSlaveを売って来たSlave商人にもするだと?
「そ、そんな事が、許されるとでも思ってんのか? 乗っ取るだと? 奴等に手を出したら、お前の方がどうにかされちまうぜ」
彼等は商売敵に成り得る新興勢力を殊更嫌う。それを潰す為なら、普段から争っているorganization同士でもある程度の協力体制も組むほどだ。
彼等の後ろ盾になっている権力者たちからも、Assassinを送り込まれる可能性が高い。それでただ殺されるだけならまだましで、Gozorofでさえ震え上がるような惨い殺し方をする、殺し屋と言うより見せしめ屋と呼んだ方が良い連中もいる。
Gozorof自身は『Hyena』なんて呼ばれていても、所詮末端だ。真の黒幕と言える彼等から見れば、替えの効く蜥蜴のtailでしかない。潰したところで動く事は無いが、自分達の商売に直接手を出そうとするなら容赦はしないだろう。
「テメェがどれだけcrazyタガキだとしても、絶対に無理……いや、もしかしたら……いけんのか?」
だが無理だと言いかけて、Gozorofは思い直した。
目の前で起こされた異常な現象の数々を思い返し、もしかしてVandalieu達なら裏社会の権力構造をひっくり返せるかもしれないと思ったのだ。
そのGozorofのIntuitionは正しい。ただ、その次を決定的に読み間違えている。
「ヒヒ、分かった、良いだろう、俺が知ってる事は全部話す。お前が……いや、あんたが今日から俺達のボスだ。へへへっ、俺達は役に立つぜ。だから、傷の手当てを……」
「いや、用があるのは情報だけで、あなた達自身は要りません。尋問が終わるまで【Death Delay】はかけますけど、治療はnoneです。さあ、この目を見なさい」
しかし VandalieuはGozorofの顔に掌を向けながら近づいて行く。そこには【Demon King's Eyeballs】があり、【Demon King's Luminescent organs】の効果で怪しく明滅している。
「そ、そんなっ!? 待てっ、待ってくれっ! 何でそんな所に目があるんだ!? やめろっ、止めてくれっ! こっちに来ないでくれぇぇぇ!」
screechを上げて逃げようとするGozorofだったが、実は既に致命傷を負っていた。Vandalieuのmagicによって死ぬ事こそ無いものの、そんな体では碌に動く事は出来ない。
そして【Mind Encroachment】skillを使った尋問により、彼は全ての情報を吐き出した後に始末されてしまった。
「てっきり、降伏した相手には寛大なんだと思っていたけど……それに、organizationを乗っ取るなら手足も必要じゃないの?」
「場合に寄ります。手足は必要ですが、末端の荒くれ者は必要ありません。戦力としては論外ですし、俺は犯罪organizationの情報網が欲しいだけで、犯罪をしたい訳じゃ無いですからね」
Orbaum Elective Kingdomで諜報活動とそれに必要な拠点が欲しいVandalieuにとって、略奪や人身売買でしか稼げない連中を抱えるのはriskでしかない。
手足もこれから乗っ取るorganizationの人員をそのまま洗脳するなり、Undead Transformationさせ訓練すれば良いのでGozorof達は必要が無いのだ。
「King、大体いつもこうだぞ。おかしいか?」
mountain banditをmonstersと同じ獲物の一種として認識しているBragaに訪ねられたMelissaは、このworldの常識を思い返してから首を横に振った。
「おかしくは無いわね。私もadventurerをしている時にmountain banditの討伐はした事があるし、降伏されても役人にthrust出すまで安全に連れて行く事に不安があるなら無視して殺せってguildで教えているから」
『Lambda』では人権と言う概念が無い。だから当然、『Earth』や『Origin』では常識である「犯罪者の人権も保護されるべきだ」という認識は、一切通用しない。
犯罪Slaveなんて制度がある時点で当然だが。
「でもAsagiと……Amemiyaは怒りそうね。あいつ等なら、『どんなworldでも守られるべきruleがあるべきだ。そして僕達another worldから来た者は、このworldの人々とは別の視点を持たなくてはならない』って、このworldでも言いそうだわ」
どうやら【Mage Masher】のAsagiとAmemiya Hirotoは、『Origin』でそう仲間達に訴えていたらしい。VandalieuはAmemiyaと話したことがないので殆ど知らないが、Asagiに関しては確かに言いそうだと思った。
一年以上前に会った時も、そんな-sama子だったし。
「今まで数え切れない程の人達を不当に捕まえ売り払って来た、殺せば報奨金が貰えて、役人にthrust出しても縛り首か犯罪Slaveにされるしかない連中なのに。
犯罪Slaveには鉱山労働や使い捨てのSlave Soldier以外の用途として、Mage guildでのmagicや薬の実験台や、Tamer guildで飼いならしたmonstersのBreeding用に利用される事もあるのに」
だと言うのに何故? とVandalieuは首を傾げた。
「同じReincarnatorのVandalieuがするのが許せないんじゃないの?
ところで、Slaveにされていた人たちはどうするの? 私達の時みたいにまず居住用Dungeonで導かれるまで生活させるにしても、あなたはこれから忙しくなるんでしょ?」
「とりあえず、本人達の希望次第ですね。特に一緒の馬車だった人達には借りがありますし、悪いようにはしないと誓いましたし」
「借り? 助けたんだから、貸しじゃないのか、King?」
「俺の実験のせいで怖い目に遭わせましたから、借りです。特に、あのbrother and sisterには」
Sunlightを浴びながらこの赤黒い、見るからに毒っぽいpotionを飲むだけで太陽を克服し、力が手に入る。
そう聞いた時は、「幾らなんでもそんなBAKANA事がある訳が無い」と思った。Sunlightとは彼等Pure-breed Vampireにとっては致命的ではないが、やはり克服不可能な弱点だったからだ。
いや、accurateには克服したPure-breed Vampireもいる。彼等の中で最も強靭でRobust HealthなBodyを誇ったZorcodrio、今ではZodと名乗っているbrothersはPure-breed Vampireになった後も、昼間から活発に動き回っていた。
屋外でSunlightに焼かれながら田畑を耕し、野山を開墾し、Architecture工事を行っていた。そのため、何時の間にか【Sunlight Resistance】skillを獲得したのだ。
それを知った彼を含めた他のPure-breed Vampire達もSunlightを克服しようとしたが……彼を含めた全員が挫折した。致命的でないにしてもSunlightにbody partを焼かれる痛みは不快で、それに何年耐えてもskillが獲得できなかったからだ。
その【Sunlight Resistance】skillを数時間から数日、長くても十日程で獲得できると言うのだ。幾らなんでも信じられない。
しかし、十万年ぶりに再会したZorcodrioが「騙されたと思って試してごらんなさい。Diseaseみ付きになりますぞ」とSmiling Faceでthumb's upしながら保証したし、Vandalieuの勧めだったので試してみる事にしたのだ。
「漲るぅぅぅぅっ!」
結果、彼は真っ昼間から上半身裸で歓声を上げていた。叫んで、手に持ったBlood potionの残りを呷る。白い喉を鳴らし、口の端から溢れた液体を紅いtongueで舐め取る。
瞳は炯々と輝き、白いfangsが逞しく伸びている。もし常人が見れば恐ろしい、しかし妖しげな美しさを漂わせるその姿に動けなくなっていただろう。
「ははははっ! なったっ、この我もZorcodrioと同じAbyss種……Abyss Pure-bornになったぞ! 力が無限に湧いてくるのを感じる! どうだ、新しい我の強くも美しい姿は!?」
「Elper -sama、ワタシこんな口調だけど同性が好きって訳じゃ無いの。それにちょっと幼すぎるし、ぶっちゃけ強いって言うより、可愛い?」
「……そうか」
Pure-breed Vampire Gubamonの元から寝返ってVandalieuの配下になったNoble-born Vampire、Miles Rougeに評価された彼、Pure-breed Vampire Elperは力なく項垂れた。
しかし、十代半ばの声も高くて線の細い美少年のappearanceの彼が幾ら力んでポーズをとっても、威厳は無い。
「義理の姪のDarciaにもchild扱いされるし……良いんだ、我なんて貧弱な坊やがお似合いさ」
そしてそう座り込んで、適当な小石を指でつまんでは砕いてイジケ始める。それをMilesは平然と眺めている。Noble-born Vampireにとって神に等しいPure-breed Vampireに対する態度では無い。
「……小石を指の力だけで砕く貧弱な坊やはいないと思うけど」
お代わりBlood potionを満載したwagonを押してきたEleonoraはそう小さくfollowするが、Milesが「いいのよ」と言って取り合わない。
「Elper -samaは調子に乗りやすいから厳しめな方が丁度良いのよ」
「……『Vida’s Resting Ground』のNoble-born Vampire達に怒られても知らないわよ」
十万年前から『Vida’s Resting Ground』内部でPure-breed Vampireに仕えてきたNoble-born Vampire達は、彼女やMilesと言ったEvil God (M)派出身のNoble-born Vampireとは異なり、彼等を心の底から尊敬し、敬愛している。ぞんざいに扱えば当然彼等の怒りを買う事になるだろう。
「その『Vida’s Resting Ground』のNoble-born Vampire達から言われたのよ。Elper -samaはchildっぽいからって」
しかし、そのNoble-born Vampire達もElperには手を焼いていたらしい。敬愛している故の親しみからも知れないが。
「そうなの? なんて言うか……Pure-breed Vampireの方々が普通の人みたいだと調子が狂うわね。Birkyneみたいに振る舞ってほしい訳じゃ無いけど」
「気持ちは分かるわ。私も別に戸惑ってない訳じゃ無いのよ……Gubamonみたいに振る舞ってほしい訳じゃ無いけどね」
MilesとEleonoraの視線の先では、半裸のPure-breed Vampire約二十人が煙を噴きながらSunlight浴をしている。彼等はElperのようにAbyss Pure-bornになろうとしているのだ。
最低でもRank13のPure-breed Vampireが約二十人。これだけでHeroic spiritがAdventするような奇跡が起こらない限り、Amid EmpireでもOrbaum Elective Kingdomでも滅ぼす事が出来る大戦力だ。
「ヒィック! お代わりぃ~」
「ああああぁ! 焼かれるのが痛くてBlood potionを飲むのが気持ち良くて癖になるぅぅぅ!」
「このbloodこそ正に至高! 黒きbloodのEmperorのお恵みだ!」
「Black Blood Emperorばんざーい! 我らの皇子、我らの子にばんざーい!」
まるで、ただの酔っぱらいの集団のようだが。
「おめぇ達が戸惑うのは分かる。だけど、オラ達からすると、スカしたBirkyne坊やGubamonのギョロ目爺ぃ、body partばっかり育って中身はお転婆だったTerneciaがそんな風になってる方がぁ、shockでなぁ」
そう声をかけて来たのはDwarfからPure-breed VampireになったDraganと言う男だった。既にAbyss Pure-bornとなっており、ちびちびと瓶に残ったBlood potionの残りを飲んでいる。
「昔はあいつ等も、まあ良い奴でなぁ。悪い所が無かった訳じゃなかったけんど……癇癪を起して同族を殺すような連中じゃあ、無かった」
Dragan達にとっては、Birkyne達Evil God (M)派のPure-breed Vampireも十万年前に共に戦った戦友だ。Vidaを奉じていた当時の彼等は、欠点はあっても邪悪では無くどちらかと言えば善良な人物だったのだろう。
「スカした坊や……Birkyneが」
「ギョロメ爺なのは、まあ知ってたけど」
だが、こうして聞いてもとても同一人物とは思えないEleonoraやMilesだった。
「Eleonora、話し込んでいないでBlood potionを配りに行きなさい」
そこに空の瓶を乗せたwagonを押してきたBellmondと、妙なDemon King Familiarがやって来る。
一見すると奇妙な兜を被り、胸甲に大きなオーブの装飾を施した板金鎧を着たKnightの-samaだが、よく見れば明らかに異形だ。
板金鎧に見えるのは滑らかな【exoskeleton】で、胸甲のオーブは【jewel】。そして奇妙な兜は、透明なカプセルでそれだけは【Demon King Fragment】では無い。だが、その中に浮かぶ灰色のchunk of meatは【Demon King's sub-brain】をcountlessに連ねた物だ。
他にも【eyeball】や【blood】、【blubber】や【stomach】等のfragmentを使い、出来るだけ長時間の活動が可能なように工夫されている。
【Long-distance Control】のSuperior Skill、【Group Manipulation】skillにも効果を発揮できる距離に限界がある。VandalieuがOrbaum Elective Kingdomに居る間も、その限界を超えてTalosheimでDemon King Familiarを動かしていられるのは、この特別製Demon King Familiar……Pseudo- Main Body-type Demon King Familiarのお蔭である。
「思っていたより消費量が多いですね。備蓄分までたっぷり作ったつもりでしたが……保存してある材料で足りるでしょうか」
Demon King Familiarを動かすVandalieuのCloneがそう言いながら頭部を揺らし、とぷんと音を立てた。【Alchemy】skillでBlood potion等を作る事を専門にしたDemon King Familiarもいるのだが、重要な材料であるbloodとdeath attributeのManaを新たにRefiningする事は出来ない。
Manaを作り出す事が出来るfragmentは、【Demon King's treasure orb】だけだ。この器官はZadirisの第三の目のようにManaのActivateや制御の補助以外にも、Manaを新たにRefiningする事が可能なのだ。
ただmain bodyであるVandalieuから離すとManaをRefiningする効率が下がるので、万能ではない。しかし「脳を持ち、ManaをRefiningする事が出来る」と言う条件を揃える事で、彼はこのDemon King FamiliarをPseudo-的なmain bodyとして運用する事に成功していた。
分裂した訳ではなくあくまでもPseudo-的なmain bodyなので、Memoryも人格もVandalieuの物だ。『Earth』の通信技術に例えると、基地局を新しく設置したような感じになるだろうか。
「工房のLucilianoやDemon達は、備蓄用の材料で十分だろうと言っていました。ああ、でももし足りなくなったら少しでもVandalieu -sama main bodyにお会いできるかもっ」
「……気持ちは分かりますが、だからと言って過剰にBlood potionを渡さないように。さあ、配って来なさい」
「ふんっ、分かっているわよ。貴重なVandalieu -samaのbloodを無駄にする訳がないわ」
正直に報告しながらも、誘惑に駆られた-sama子のEleonoraだったが、Bellmondに釘を刺されると、そう言ってwagonを押してお代わりを求めるPure-breed Vampire達の元に向かった。Pseudo- Main Body-type Demon King Familiarを名残惜しげに何度も振り返りながらだが。
「皆の中でDemon King Familiarってどう言う立ち位置なんでしょうか?」
そのEleonoraの-sama子に気になったPseudo- Main Body-type Demon King Familiarが呟く。Demon King Familiarの中身は、全てVandalieuである。別人格でも、countlessのペルソナの具現でも、Pseudo-人格でも無い。全てがVandalieuだ。
遠く離れたOrbaum Elective KingdomでGirabatのBodyを操作しているInfest型Demon King Familiarも、VigaroやBorkus達とDemon continentでmonsters退治をしているDemon King Familiarも、そう呟くPseudo- Main Body-type Demon King Familiarも、例外無くVandalieuである。
「全てが旦那-samaだという事は私もEleonoraも分かっていますが、やはりmain bodyの旦那-samaの方に魅力を感じるのです。旦那-samaも、Darcia -samaや……Eleonoraに触れるのならmain bodyの方が嬉しいでしょう?」
それもそうかとPseudo- Main Body-type Demon King Familiarも頷こうとした。
「そこで自分のnameを入れられないのが、あなたの性格よね」
「うむうむ、Terneciaの奴はHumanの頃から体つきは良いのに色気と可愛げが無くてな。こういう初心で不器用な所の一つもあれば、Pure-breed Vampireになる前に浮いた話の一つや二つあったろうに」
その前にMilesとDraganが割り込んでBellmondの注意を奪う。
「余計な御世話です。Dragan -samaも、Abyss Pure-bornになったのなら服を着替えてください」
「そう言えばボス、ワタシやIslaもだけど、あのEleonoraも諜報活動には役立つはずよ。特に犯罪organizationの運営なら、ワタシとっても得意なんだけど♪」
Bellmondの氷のような視線にも動じず、Milesはそう自分を売り込んだ。元Gubamonの配下の中でも幹部Classだった彼は、単純な戦闘Ability以上に実はorganization運営のKnowkowで周囲に一目置かれていた男だった。……彼等は知らないが、organizationの再編で苦労していたBirkyneも「もし彼等がいれば」と思い浮かべたnameの一つが、Miles Rougeである。
「今はまだ糸を辿りながら、不要な根と枝を剪定している所ですからね」
犯罪organizationは乗っ取るが、その後犯罪で儲ける必要は無い。organizationの維持費は全てVandalieuが出資するからだ。
そのため『Hyena』のGozorofのような連中を処分しながら情報を辿っている間は、Miles達のKnowkowは活かしようがないのだ。
「それに、Pure-breed Vampireの皆が落ち着くまで世話をして欲しいですし」
「……本音はそっちね。まったく、『Vida’s Resting Ground』で務めていたNoble-born Vampire達が倒れてなければ、ワタシ達は最初に説明するだけでよかったのに」
本来Draganやまだ落ち込んでいるElperの世話をしていたNoble-born Vampire達は、『Vida’s Resting Ground』に残っている者達を除いて全員グロッキーconditionで倒れていた。
Dragan達よりも先にAbyss種になろうとして、Sunlightに焼かれる痛みに耐えきれず失敗したのである。
「まあ、ワタシの部下達も成功するまで何か月かかかったのもいるから、仕方ないとは言えば仕方ないけど」
「すまんな。Pure-breed Vampireだ、Noble-born Vampireだと言われているが、我々はBoundary Mountain Range外の者達が考えているよりずっとweakのだ」
立ち直ったらしいElperが、Milesにそう答える。
「ずっとweakっちゅうのは言い過ぎだが、オラ達が強くないのは事実だ。なんせPure-breed Vampireになった頃はもうDemon Kingとの戦争の後で、互角以上の相手と命のやり取りをしたのはAldaやBellwoodのbastardとの戦いぐらいだ。
その後はずっと【Demon King Fragment】をsealedしながらBarrierを張って、偶に……数百年から数千年に一度自分達よりずっとweak monstersを間引く程度。どうしても勘は鈍るし、技は錆びる」
Boundary Mountain Rangeの内部は、十万年前から最近までずっと平和だった。そしてここにある最高難易度のDungeonはAClassで、DungeonボスもRank12だ。Rank13以上のPure-breed Vampire達が本気で戦うに値するような脅威は、無かったのである。
やはり極偶に同族同士やGodwinのような強者と模擬戦をする事があったが、彼等がより強くなるために十分な時間だったとは言い難い。
「Draganの言う通りだ。まあ、Vida -samaのDivine Realmで新しいmagicを考案する事ぐらいはあったし、Noble-born達はDungeonでそれなりに鍛えていたはずだが。
そう言う訳だからVandalieu、Miles、Bellmond、我達にRank以上の強さは求めないでくれ。我々に失望する事になるぞ!」
「いや、Rank13の時点で十分強いですからね」
「でもAlda達にぎゃふんと言わせたいから、これから頑張るぞ! だから本格的な戦いになったら期待してくれ!」
「……どっちなんですか」
「何なら、見てくれだけで選んでみっか? ほれ、あっちで悶えてるGiselleはDemon Kingとの戦争前からDwarfの中じゃ大人っぽい美人だとHumanの男共から人気じゃったし、Dwarfだからmuscleもあるぞ。
今Eleonoraの嬢-chanに抱きついて絡んでるFediricaは、素面の時は書類仕事も出来る頭の良いElf出身の娘でな。まあ、素面の時が殆ど無いのが珠のヒビ割れだがな」
「Dragan、それなら何故boltゥーナおば……姉-sanを薦めてやらない!? 可哀そうではないか!」
「いやあのgorillaを薦められる方が可哀相だろ、お転婆とか男勝りとか、そんな枠に入らんし」
「聞こえてるぞ、ごらぁ! Mikoをからかってんじゃないよ! 二人ともまたtongueを引き抜かれたいか!?」
Ogreと見紛うばかりに大柄な女Pure-breed Vampireが煙を噴きながら走って来ると、DraganとElperの頭を鷲掴みにしてそのまま戻って行った。
そしてしばらく経った後、口からblood飛沫を上げながらのた打ち回るDraganとElperの姿があった。どうやら、本当に引き抜かれたらしい。Fediricaがその光景を見て笑い出し、その隙にEleonoraは脱出に成功したようだ。
「……またすぐに生えて来るからって、容赦ないわね」
「それよりも、何故皆旦那-samaにfemaleをintroductionしたがるのでしょうか。Pure-breed Vampireにはもう必要無いはずでしょうに」
「彼等の場合は、からかい半分でしょう。もしくは癖みたいなものかもしれません。目覚めて『Vida’s Resting Ground』から出た際に、他の国から式典への出席や、結婚や婚約を祝福するよう頼まれる事が多かったらしいですし」
本気で狙っているなら既に顔見知りになっているDarciaを通じて何か言って来るはずだから、Vandalieuは本気では無いと判断していた。
尚、そのDarciaはDemon continentでEntertainment活動……士気高揚のために訪問中である。LegionとKanakoやZadirisと、Zandiaと一緒に。
Pseudo- Main Body-type Demon King Familiarは彼女達に思いを馳せようとして、ふと「あっ」と声を出した。
「どうしました?」
「いえ、地下工房でLucilianoがBlood potionの瓶を落して……零れた中身に実験で生まれた小動物が殺到して舐め出し、次々にmonstersに変化したみたいで」
他のDemon King Familiarが見ている状況を説明すると、MilesやBellmondの顔が強張った。
「実験で生まれた小動物と言うと、life goldやspirit silverを移植したUndead同士の子や生物のハーフですね。確か、百匹以上いたとMemoryにありますが」
「……それって大変なんじゃない。あの男、生きてるの?」
「monstersに変化したと言っても、それほど強くないmonstersですし、Lucilianoに関心が無いようなので大丈夫です。ただ……Demon King Familiarにとても懐いているだけで」
「「懐いている?」」
声を揃えて聞き返して来る二人に、Pseudo- Main Body-type Demon King FamiliarはBigラットやHorn Rabbitに囲まれている地下工房のDemon King Familiarの状況を確認して、「はい、懐かれています」と頷いた。
《【Black Blood Emperor】、【Dragon God Emperor】のsecondary nameを獲得しました!》
「……ついさっき叫ばれていた『Black Blood Emperor』はin any case、何故『Dragon God Emperor』が? Demon continentで何かあったかな」