カプセルの中で新たなBodyの完成を待つDarciaは、胎児のように穏やかに眠っていた。Vandalieuの声を子守唄代わりに……なんて事は無かった。
『走りながら射ろ! 腕も脚も目も休ませるんじゃないぞ!』
『はいsensei!』
今Darciaは、お花畑で教官の扱きを受けていた。
『ここはDivine Realmだ! 今のあんたにBodyは無い、FatigueやBody的限界は全てお前の思い込み、Emotional限界のせいだ!
Mentalを超越しろ!』
『はい、sensei!』
教官の男……つい先日やっと正式に『Goddess of Life and Love』VidaのHeroic spiritに加わったDhampirのmercenary Veldは、Darciaを容赦しながら扱いていた。
Veldも生前mercenary団で部下や新入りを訓練していた時は、もっと過酷な訓練を……時にはTortureと評した方が相応しい訓練を行って来た。しかしそれをDarciaに行う訳にはいかない。例え、訓練を受ける事が彼女自身の希望だとしても。
何故ならDarciaがなりたいのは、腕利きのmercenaryでは無く「我が子に護られるだけではない、強い母」だからである。
(それで、何で俺にお鉢が回って来るんだ? 貧乏クジは生きている間に引き尽くしたはずだと思ったんだがなぁ)
そう嘆きつつも、Veldは走りながら弓を射るDarciaを観察してある程度満足していた。
呑み込みが早い。流石Mental、それもHumanの限界を越えつつあるMentalのみのconditionだ。当人のモチベーションも高いし、この分なら十カ月を過ぎる前にただのDark Elfだった頃とは比べ物にならない程強くなるだろう。そうVeldは予想していた。
少なくとも、当時の『Five-colored blades』に捕まるような事にはなるまい。
『次はMartial Artsを使え! ここは現実じゃないからManaや周囲へのimpactは気にするな、的を射る事だけ考えろ!』
『はいっ、sensei!』
【Rapid Fire】や【Sustained Fire】、【High-angle Fire】、【Screw Projectile】、【Shadow Arrow】……どれも5level以下で使えるようになるMartial Artsだが、それを連続で、走りながら的をaccurateに射抜く腕は、中々見所がある。
『撃ち方止め、休憩!』
『はいっ! ……ところでVeld sensei、Mentalだけなのに休憩の意味があるのかしら?』
『それがある。psychological Fatigueを覚えるなと言っても、結局は無理だからな。出来るのは、意識を逸らして無視する事ぐらいだ。お前-sanも覚えがないか?』
死後、半Heroic spiritとして長く『Vida’s Resting Ground』で彷徨っていたVeldは、psychological Fatigueは蓄積していく事を経験から知っていた。Astral系のUndeadと違い、下手に正気を保っているからこそFatigueに蝕まれる。
『ごめんなさい、霊だった時は疲れると直ぐに眠っていたから』
『まあ、それが健全だからな。とりあえずお茶にするか』
Veldは手を翳すと、その下にお茶のセットと焼き菓子が出現した。
これも実体の無い幻のような物だが、香りと味も再現されているため摂取する事でpsychological stressを解消する事が出来る。
『あ、だったらこっちにしません?』
だがDarciaが手を振ると、そこにランチボックスに入ったsandwichやオニギリ、そして緑茶が出現する。
『Vandalieuが再現したEarthのCookingなの。味や香りも、私に分かるようにfive sensesを共有してくれたから、senseiの焼き菓子みたいにここでも食べられるのよ』
『……そ、そうか。じゃあ、御相伴にあずかろうか』
普通、Familiar SpiritかHeroic spiritでも無ければDivine RealmでMemoryから物品を再現する事は出来ないのだが。内心の驚きを隠しつつ、Veldは適当にオニギリを幾つか食べた。
久しぶりの米の食感は悪くは無い。
『食事が終わったら、次は別の教官役とUnarmed Fighting TechniqueとDagger Techniqueの訓練だ。その後はMuscular Strength Trainingだな。magicの制御は更にその後になる。あまり食い過ぎるなよ。思い込みで腹が重くなるから』
『でも、今Muscular Strength Trainingをする事に意味はあるの? Mentalだけなのに』
Mentalだけのconditionで腕立て伏せや腹筋運動をする事に疑問を覚えたDarciaに、Veldは『普通は無い』と答えた。
『だが、あんたは別だ。『The root of life』でBodyを創っている最中だからな。あれは魂に適応するBodyを創る事が出来る。
だからここでMuscular Strength TrainingをしてMuscular Strengthが上がったと魂が認識すれば、後は『The root of life』がそれをBodyにフィードBackしてくれる』
『そうなの!? 私が思っていた以上に凄いのね、『The root of life』って』
『ああ、だからMuscular Strength TrainingもArcheryの訓練と同じくらい頑張ってくれ』
そう言って、想像以上に美味いオニギリを齧るVeldの背後に複数の人shadowが現れた。
『お待ちなさい、Veld。そろそろ我々がDarcia -sanの教官になる時間ではありませんか?』
『我々を差し置いて仕切るとは……新参者の分際でなんて羨ましい』
『そうだそうだっ! 祖先のbrothers sistersには敬意を払え!』
騒ぎ立てる者達に、Veldはうんざりした顔になり、Darciaは『ど、どうしましょう?』と笑みをやや引き攣らせた。
『母にとって手Cookingの技術は必要不可欠! この『Goddess of the Hearth』Delboraが、神の包丁捌きを伝授して差し上げましょう!』
『何を言う、強くなるのならこの『競争の神』リーヴにお任せを。過酷な生存競争でも生き残れる闘争心を授けましょう!』
『このPure-breed Vampire Elperが、とりあえず何か教える!』
『じゃあ、私は両腕の翼とgrip talonを使ったmidair Unarmed Fighting Techniqueを!』
『あ、じゃあ私はtailを使ったLove-making等を。Darcia -sanのお子-sanはうちの孫のGodwinと仲が良いし』
中年femaleの姿をしたGoddessや獣の頭蓋boneを被った男神、少年の姿のPure-breed VampireにRank13以上に至ったHarpy、そしてSuccubusを見回してVeldはSmiling Faceで手を振った。
『散れ、神plusアルファ共』
『酷いっ! 仮にも神に向かって!』
しっしと手を振るVeldにすぐさま抗議の声を上げるGodsだが、彼の態度は変わらなかった。
『喧しい! 神だったら乞われた時だけ応えろ! 不本意だが教官役はもう決まってんだ!』
吠える-samaなVeldの怒鳴り声に、『わ~っ、Veldが怒った~!』と逃げて行く。通常、Heroic spiritは人々にGodsのように尊敬される。しかしその立場は一段下のものに留まるのだが、彼等の関係は対等のように見えた。
『暇を持て余しやがって……遊ぶなら他でやれ、Gods』
弱肉強食による厳しい上下関係が存在するDemon King ArmyやそのRemnants、そして役割ごとに秩序と規律を守る事が求められる厳格な父系社会のAlda's FactionとVida's Factionは違う。
個々の性格にもよるが上下関係は曖昧で、それを良しとするところがある。それは元mercenaryのVeldも気にいっているのだが……これで大丈夫なのかと思わなくもない。
『あの……Veld sensei』
『ん? ああ、あの方々は何時もあんな感じだ。気にする必要は無いぞ。本気で包丁捌きやらLove-makingやらを教えようと思っている訳じゃ無い。jokeみたいなものだ』
不安げな-sama子のDarciaを安心させようとするVeldだが、彼女の不安は別の所にあったようだ。
『私、翼とかgrip talonとか、tailが生えるのかしら? それが嫌って訳じゃ無いけれど、あまりbody partの形が変わるとbalanceも変わるし……今やっている訓練が無駄になるんじゃないかって』
どうやら、不安なのは今育っている新しいbody partについてらしい。
『それは……』
Veldもそれに関してはどう言っていいか、すぐには思いつかなかった。生前は歴戦のmercenaryだった彼も、流石にformが人型から大きく外れた者に戦闘訓練を施した経験は無い。
だがVeldが言葉を絞り出すより先に、Divine Realmの本来の主が姿を現した。
『大丈夫ですよ、我が子Darcia』
温かな光を纏ったVidaは優しげな声をDarciaにかけた。
『Vida -sama!』
流石にGreat Godを前にすると、Veldも佇まいを正した。
実はDarciaのMentalがDivine Realmに在るのも、Veldが彼女の教官役になっているのも全てVidaの意思によるものだった。
そもそも、MentalだけDivine Realmに招いてそのまま訓練を行うなんて前例が無い事だ。それを行っているのはDarciaの強くなりたいという希望と、そしてBodyが完成してrevivalするまで待って時間を無駄にする事が出来ないというVida側の事情があった。
RicklentとZuruwarnからの情報に拠ると、近々Aldaが本格的に動き出すらしい。『Five-colored blades』の面々に試練を与えてEnhanced (1)する以外にも、-sama々な手を打つはずだと。
そのため、revivalしてから訓練を積んでいたのでは間に合わない可能性がある。
VidaがそこまでDarciaの為に動くのは、彼女がAlda's Factionとの戦に勝利するための鍵だから……という訳では無い。『The root of life』でbody partを創っている最中である事や、『Vidaのblood crystal』を使った事で、彼女はHumanでありながらDivine Realmで訓練を積む事が出来るようになったから、やっておこう。そんな感覚である。
十万年前とは大分状況が違うとは言え、以前自分達を全滅手前まで追い詰めた相手が本格的に動き始めたのだ。自分達も打てる手は全て打っておきたいのが人情である。
『大丈夫とは、私がどんな形でrevivalするか女Kami-samaは分かるんですか?』
『Darcia、このworldにはskillがあります』
瞳を期待に輝かせるDarciaの質問に答える代わりに、別の話題を振った。
『skillは、魂に刻み込まれます。だからMentalがしっかりとした形を持つこのDivine Realmでの訓練によって、skillの獲得と習熟に必要な熟練度は蓄積され、完成したbody partに戻った時必ずあなたの努力に応じた数字を出してくれるでしょう。
そしてskillの補正があれば、少しbody partの形やbalanceが変わったりしても大丈夫です。すぐ慣れます』
『ええっと、それは嬉しいですけれど……つまり?』
『私にもあなたがどんなBodyでrevivalするか分からないの、ごめんね♪』
エヘっとtongueを出すVidaに、Darciaは足を滑らせたかのようによろめいた。
これは怒っても良いのではないかと、黙って聞いていたVeldは思った。
『あらら……でも女Kami-samaでも分からないのなら、もう気にしても仕方ないわよね!』
しかし Darciaは怒るどころか、不安を吹っ切ったようだ。
『前向きなのは良い事だ。でも、我々もそろそろBoundary Mountain Range内に入りたいのだが。Rodcorteも妙な動きをしているし、curry食べたいし』
『Zuruwarn……』
Veldが背後から聞こえた声にギョッとして振り返ると、そこにはDarciaが出したオニギリを何とか食べられないかと四つの頭で悪戦苦闘している『God of Space and Creation』Zuruwarnと、それを半眼で眺める『Magic God of Time and Arts』Ricklentの姿が在った。
『まあ、二人ともまた来てくれたのね。本当はお茶でもご馳走したいところだけれど……』
そう言ってVidaがSmiling Faceを曇らせる。Boundary Mountain RangeにGodsが張ったBarrierによって、ZuruwarnとRicklentは彼女のDivine Realmに幻の-samaなconditionで現れる事しか出来ないのだ。
二柱のGreat Godはそれぞれ『仕方あるまい』と答えると、話題を変えた。
『Alda's Factionの動きが活発になっているのは前も伝えたが、妙な場所にWar Godや守護の神を配置している。BotinやPeriaがsealedされている場所かもしれないが……何故そんな事をするのか分からない。まさか、Vandalieuから守ろうとしている訳でもあるまいし、何かの囮か? いや、それにしてもあからさま過ぎる。Demon King Army Remnantsに気がつかれたら……いや、既に眼中に無いのか?』
『Ricklent、話の途中で考え事に集中するのはあなたの悪い癖よ。それに考えが合理的過ぎるわ』
『然り。今のAldaは以前と異なり、冷静な-samaで疑心とemotionsで動いている。Aldaの先を読むつもりなら、錯乱した心理を読まなければ自分の足を引っ掛ける事になりかねん』
『Zuruwarn、真面目に話してくれるのは良いけどオニギリにじゃれつくのは止めて。私の子達が戸惑っているわ』
流石にGreat God同士の会話に割って入る事が出来ないVeldは、とりあえず黙って顔を伏せていた。
一方、Darciaは『今度Vandalieuにお供えする-samaに頼み……そうだわ、revivedら作り方を教えて貰って一緒に作ればいいのよ! 出来たらお供えしますね!』とZuruwarnに話しかけていた。
どうやら、幾度もあったGodsとの遭遇ですっかり慣れたらしい。
『マジで!? あ、でもBarrier越しで受け取るお供え物は、Divine Realmで再現できないんだよな~』
『Zuruwarn……それはともかくGufadgarnは姿を現していないのか、我が姉よ。あの新しいbrothersの手を借りれば、我々もBarrierの中に入る事が出来るはずなのだが』
Gufadgarnは、『Trial of Zakkart』ごとBoundary Mountain Rangeの中と外を出入りしている。その力を借りればBarrierをすり抜ける事も可能なはずだった。
しかし Gufadgarnはまだ一度もVidaのDivine Realmを訪ねていない。それどころか、かの神はVandalieuの工房からほとんど動こうとしない。
そのため、Ricklent達は彼……彼女とContactを取れずにいた。
『originally一か所に籠もりがちな性質の神だから……それに、今はVandalieuに会えてはしゃいでいるんだと思うの』
はしゃいでいると言うVidaの言葉に、Darciaが『えっ!?』と声を上げる。彼女のMemoryではGufadgarnは常に慇懃な態度を崩さなかったので、驚いたようだ。
『……ならば仕方がないか。暫くはBarrierの外でAldaに見つからない程度に情報収集に務めよう』
『またOracleを出すのも、苦しいし』
だがRicklent達には「はしゃいでいる」で通じたらしい。彼等はChampion ZakkartをGufadgarnが信仰しているのを知っているのだ。
そう、信仰である。
another worldから現れたとは言え神がHumanを信仰すると言うのも変な話だが、Gufadgarnの場合はそうとしか言いようがない。
Gufadgarnが今までVida's Factionに属していたのも、Boundary Mountain Range内のVida's New Races達に便宜を図って来たのも、全てVidaがZakkartを選んだGoddessだからである。
そのため実はGufadgarnはGodsに対してぞんざいな態度を取る事が多く、Vida's FactionのGodsの間では「有能な困った奴」という評価をされていた。まあ、Vida's FactionにはそんなGodsが珍しくないので特別に問題視されている訳では無いのだが。
『とりあえず皆、Vandalieuが誰かのDivine Realmに来たらGufadgarnにこの事を伝えてね。
じゃあDarcia、そろそろ訓練を再開しましょう。Veld、よろしくね』
『はい、Vida -samaっ! よろしくお願いします、Veld sensei』
ニコニコと微笑む自らの主と、恐らく将来自分の上に立つだろう生徒に溜め息をついた。
(これじゃ、俺が扱かれているみたいじゃないか)
人気の無い古ぼけたmansionで、『Thunderclap』のSchneiderはその野性的だが端正な顔を盛大に顰めた。降ろしたての靴で馬糞を踏みつけたとしても、ここまで顔を歪めはしないだろうという程に。
「お前の遺言状に、息子だと?」
現Emperor Mashkzarの、芸術品のように整ったHalf-Elfの美貌を睨みつける。だが、彼の表情は穏やかで怯えや緊張した-sama子は見られない。
「そうだ。近いうち、余は帝位を追われ良くてdisease療養の名目で幽閉され頃合いを見て『Disease死』させられるだろう」
そして、自分が辿るだろう悲劇的なDestinyを話す時もそれは変わらなかった。
「貴い身分の連中を退場させる時の常套手段だな。一応聞くが、悪い場合は」
「公開処刑であろうな。恐らく火刑だろう」
「そいつは最高だな。その時は見物に行ってやるよ」
Schneiderはそう言うと、懐のitemボックスから取り出した葉巻……では無くスティック状に形を整えた野菜を齧った。
「……何故根菜をこの場で齧るのだ?」
「野菜は健康にいいんだよ。知らねぇのか? 後、俺は煙草はやらないからやるなら一旦roomを出ろよ、お前等」
roomにいるのはSchneider以外にはMashkzar一人だけ。だと言うのに「お前等」と言った彼の言葉に、僅かだがroomの中のsignが乱れる。
「流石だな。『十五剣』や『Hilt』とは別だが、余の『shadow』に気がつくとは。『King Slayer』のSleygar程ではないが、隠形には優れているはずだと思ったが」
大国のEmperorともなれば、常にその身を守るshadowの者が存在する。それがこのmansionにもついて来ているのだ。
「そんな事より、どうして帝位を追われるようなfeather目になる? Sauron領の一件程度じゃ、そこまでのimpactは無ぇだろう、名-kun -sanよ」
だがMashkzarの質問には答えず、Schneiderは話を続けた。
Schneiderが知るMashkzarは、Amid Empireの国民の多くを構成するHumanにとって名-kunと評するに相応しい治世を行っている。
少なくとも、民草からはそう見えるだろう。
定められた税しかとらず、戦争でもつい最近Sauron領から撤退した時とMirg Shield Nationに行わせた遠征以外では負け知らず。monstersのrunawayを配下に命じて鎮圧し、mountain banditや海賊等の犯罪者を取り締まらせて治安を守っている。
歴代Emperorと比べて生活は質素な物で、妻も少なく後宮は彼が帝位に就いてから倉庫代わりに使われるようになった。
そしてどうしようもないidiotはNobleだろうと処断し、Schneiderのような者がそうしたidiot Nobleに働いた行いには赦免を与える。
庶民のallyで、話の分かる、何よりも美形なEmperor陛下だ。
実際には妻が少ないのはMashkzarがElfのbloodを引く為に長命で、今childを作ってもHumanに生まれついた場合寿命の関係でSuccessorに成らないから。Nobleを処断するのは、増え過ぎたNobleの間引きと他のNobleへの引き締め、そして民へのShow。
Schneiderを赦免するのは……下手に罰しようとすると軍に甚大な被害がでるから。それぐらいなら赦免の代償として、厄介な災害指定種を狩らせた方がEmpireにとって有益だからである。
そうした裏の面も含めて、少なくともEmpire国民としては良い為政者の筈だ。Noble達にとっても、積極的に追い落とす理由は無いはず。Schneiderのような隠れVida believerや、Vida's New Races達は別として。
だが、その場合はMashkzar個人だけでは無く、Amid Empireとその属国全てが追い落とす対象だが。
「実は……Alda Grand TempleのPopeが代替わりをする事に成った。神の意思でな」
その理由を、Mashkzarは指で眉間を押さえながらSchneiderに告げた。
「一週間ほど前か、お前が知っている故Marme Dukeの孫の一人、現Marme Dukeの妾の子EileekがOracleを受けたと言い出した。何でも、偉大なるAldaから『Popeに就任せよ』と告げられたらしい」
「……幻聴じゃねぇのか? じゃなきゃBAKANAホラ吹きだろ」
「知っての通り、『Oracleを受けた』と言い出す詐欺師は今まで数え切れない程いた。そのため、本当にOracleを受けたのか真偽を判別するmagic itemがGrand Templeにある」
Oracleを本当に受けたか判別するためのmagic itemで、その的中率は確かだ。歴代のPopeも、受けたOracleの内容を発表する前には、そのitemを使って真偽を判定している。
ただ、流石に受けたOracleの解釈が正しいかまでは判別できないのだが。
「調べた結果は、白。Eileek・Marmeは確かにOracleを受けていた」
「ほほぅ、それじゃあPope交代か?」
「流石にそこまで話は進まんよ。Oracleを受けたのは確実だが、その解釈が正しいかの判別は出来ないのだからな。ただ、Eileekはこれが神の意思である事を示すとOracleにあった預言を告げた。
来年の一月、Eclipseが起きるそうだ」
太陽は『War-God of Fire and Destruction』Zantark、『Goddess of Life and Love』Vida、そして『God of Law and Life』Aldaが司っている。
「帝室に仕えるSage達に調べさせたが、その時期には本来Eclipseは起きないそうだ。Eileekの告げた預言通りになれば、神の意思の証明になる。
今までPopeの選別をHumanが行って来たが、Godsから直接指名を受けた少年を蔑ろには出来ん。Eileek Popeの誕生だな。そして、余は遠からず帝位から追い落とされる事に成るだろう」
何故そうなるのかと、Schneiderは訊ねなかった。
何故ならMashkzarは歴代のEmperorの中で最もAlda Grand Templeを抑えつけて来たEmperorだからだ。
そんなEmperorを、believer側の都合や法を無視して直接Popeを指名したAldaが放っておくとは考え難い。
Mashkzarも大人しく追い落とされるつもりは無いだろうが、相手は国教であるAldaが直接選んだPopeだ。どう考えても形勢は不利になる。
神よりMashkzarを糾弾するOracleを受けたとEileekが言えば、それだけで名-kunから国賊に転落しかねない。だが帝位を次代に交代させるだけならまだしも、謀殺まで指示するだろうか? 仮にも秩序を司る神が。
「そうは言うが、Aldaがそこまでするのか? テメェは俺がガキの頃からEmperorをやっていただろうが。Aldaがテメェを邪魔に考えても、今になって強引に排除しようとするとは俺には思えないんだが。
それに、PopeとEmperorは違うだろうが。あんたを排してこの国をどうするってんだ?」
PopeはAmid EmpireのAlda believerの頂点であり、他の国のAlda's Factionのbeliever達からも尊敬を集めている。そのinfluenceは計り知れない。しかし、結局PopeがReignするtempleは信仰の場であり世俗からは離れている。
そのPopeが神の名で、Empireの政治と軍事の頂点である現Emperorを廃し、新たなEmperorを選ぶ。その瞬間、帝室はtempleのimpact下に置かれるのだ。
だがtempleのClericたちに国家運営が出来るとは思えない。Marme Dukeのbloodを引くEileekにしても、妾の子でまだ未成年の少年だ。とても無理だろう。
Empire Noble達の中にも、templeの力が大きくなる事に反感を覚える者もいるはずだ。
「門外漢の俺にもわかるぜ。Empireの政治は乱れ、荒れるってな。まあ、俺にしたら好都合……って程でもないか」
MashkzarもSchneiderに同意見だったのか、「そうであろうな」と頷いた。
「だが、それがAldaの意思かもしれん。国とは人の集まりだが、believerを纏める国は我がAmid Empireでなければならない理由が、神には無い」
国が荒れて結果的にAmid Empireが滅亡しても、believer達が次の国を興せばAldaにとってはそれで良い。神にとって国とは、代わりが利く程度のものなのだ。
そのMashkzarの発言に、隠れていた「shadow」やSchneiderですら動揺を覚えた。
(だが、考えてみれば当然か)
歴史上、今まで数え切れない程の国が興り、そして滅亡を繰り返してきた。Godsはその国々で熱く信仰されたが、Human同士の争いで特定の国にGodsが肩入れした事は今まで一度も無い。Godsから見ればRoyal Nobilityも、貧民の子もbelieverの一人でしかないのだ。
Amid Empire程の規模になるとGodsにとっても無価値という事は無いだろうが、何か大きな目的の為なら代償として切り捨てる事も考えられる。
そして、その大きな目的にSchneiderは心当たりがあった。
「Vandalieuか?」
「Vandalieuであろうな」
Mashkzarもあっさりと頷いた。そう、Alda達GodsはVandalieuを倒す為の計画に使うため、Amid Empireを使い潰そうとしているのだ。
「っで、遺言状と息子って言うのは?」
「余が抵抗虚しく追い落とされた時の、非常手段だな。Empireが乱れた時、templeに反感を持つHuman達を纏める為の傀儡に使えるだろう」
「上手くすれば、Empireの名とEmperorのblood統が残るって魂胆か。俺としても傀儡のEmperorを立ててEmpireをAldaからVidaに鞍替えさせる絶好のchanceだな。邪魔な奴は混乱に乗じてあらかたぶっ殺せばいいし。
合理的だが……俺があんたの息子を殺さないって何故思う? 俺が合理主義者に見える訳でもないだろうが」
SchneiderはAlda believerであっても、必要の無い犠牲者は出さない方が良いと考えている。だが、これまで互いに利用し合っても来たがMashkzarが彼にとって敵である事に変わりは無い。
そもそも、Mashkzarの言葉通りに踊るのは気に食わないし危険だ。
何故ならこの名-kunは、Empireの利益と存続の為なら自分の息子でも切り捨てる冷bloodな人物だからだ。
「ふむ、その質問に答えよう。実は……その息子と言うのは余の隠し子で、既に貴-samaが保護しているからだ」
「……ちょっと待て。隠し子はともかく、俺が既に保護しているだと!?」
「もう三年前になるか……悪漢に襲われている身重の女を助けた事を覚えているか? その女のchildの父親が余だ」
「はぁぁあああ!? お前がSiegの父親だと!? マジで言ってんのか、テメェ!?」
Mashkzarが言った身重の女に覚えがあったSchneiderは、思わず立ち上がって怒鳴り声を上げた。
あれはたしか、Slum街と普通の市街の境目での出来事だった。ある夫婦が麻薬addictionの強盗に襲われていたのを、通りがかったSchneiderは助けた。
しかし夫の方は既に息絶えていて、妻の方は大きな腹を抱えて、もうこの子と一緒にSlaveに堕ちるしかないと泣きだしてしまった。
そこでSchneiderは未亡人に成った彼女を実質経営している施設で保護し、その後紆余曲折あって今では立派なVida believerの仲間としてVida's New Racesの隠れ里で生まれSiegとZodが名づけた息子と共に生活している。
……尚、現在、第二子妊娠中。
「なんでそうなるんだ!? あいつの前の旦那の死体は俺も確認したし、嘘をついている-sama子は無かったぞ!?」
食ってかかるSchneiderに、Mashkzarは涼しい顔をして答えた。
「女の方は謀反を企んだNobleの娘で、他の幼い弟Imoutoの命を引き換えに協力させた。帝室が管理する特殊なCurseでMemoryを改竄したから、彼女に嘘を言っているつもりは無いだろうな。
夫役と強盗役は、それぞれ生け捕りにしたmountain banditだな。比較的人相が悪くない方を殺して夫役に、もう片方を麻薬漬けにして犯人に仕立て上げた」
非人道的な行為を平気な顔で打ち明けるMashkzarに、周囲で彼を守るshadowたちでさえ内心引いていた。主-kunである彼が、罪悪感のfragmentも覚えていない事を彼等は分かっているからだ。
「何年もの時間とそれなりの予算をかけたtacticsだ。貴-samaが見捨てていたら無駄になる所だったが、仮にも『Goddess of Life and Love』のbelieverなら身重の母親を助けない確率は低いだろうと考えた。
こうして余は当時Empireを打倒しうる最有力Candidateの懐にblood族を送り込む事に成功した訳だ。後々母子ともに利用するつもりだったのだが……こうなるとは流石に予想外だ」
「テメェ……やっぱりこの場でぶち殺す!」
「落ち着けっ! こいつのconjectureが正しいなら、殺してもAldaの思う壷だぞ!」
「そうよっ! 気持ちは分かるけどっ! 凄く分かるけど!」
「その通りです、Schneider -dono……この腐れ外道の命は私の手で直接断つ!」
「Lissanaっ、SchneiderじゃなくてZodの方を抑えて!」
激怒したSchneiderを、magic等で隠れていたDalton達が現れてholdstopい絞めにする。
だが何故かSchneider以上にPure-breed VampireのZodが激高してMashkzarに襲いかかろうとする。
「これは、そろそろお暇した方が良さそうだ」
そう言うと、Mashkzarは持ってきていたitemポーチ……見た目以上に物品を収納できるmagic itemを置くと、Zod達が仲間によって押さえられている間に席を立った。
「遺言状と息子の身の証しになる物、それに依頼料はその中だ」
そしてそう言うと、shadowが【Teleportation】のmagicをActivateさせてMashkzarはまんまとSchneider達の前から姿を消したのだった。
「どうやら、我が一族の中で最も生き残りそうなのは余が顔も見た事が無い息子のようだ」
そう独り言を残して。
Sauron Duchyの旧Scylla Autonomous Territoryの外周部では、Vandalieuによって創られた粗製Undead達の軍勢約三千が厚い警備網を敷いていた。
かつてはただのZombieやSkeleton Soldier等、Rank2や3の者もいたが、ローテーションでScylla Autonomous TerritoryにあるDClass Dungeonでlevellingを行い、今では殆どの者がRank5以上の強力なmonstersと成っている。
この防衛力をすり抜けるには、生半可な腕では不可能だろう。
だが外周部に近づくだけならそれほど難しくは無いようだ。
『何だぁ? これは……ちょっと解いてみろ、カラダぁ』
『グギャギャ?』
fanトムKnightが、相方のZombie Berserkerに指示を出す。かつては自分のBodyに勝手に宿ってUndead TransformationしたこのGoblinを忌々しく思っていた彼だが、今ではすっかりコンビとなっている。
Zombie BerserkerはfanトムKnightが指差した木の枝に巻かれた、白い布を解く。しかし首を傾げてそれをそのままfanトムKnightに見せた。
布には、二種類の文字が書かれていた。
『letterかぁ? Vandalieuへ……俺達の主宛で、他には……なんて書いてあるんだ、これは?』
letterにはOriginの、Vandalieuが捕まっていた軍事研究所があった国の言葉で『亡命を希望したい、【Venus】、【Hecatoncheir】、【Aegis】』と書かれていた。
・Job解説:Luciliano著
最近師Artisanが益々非常識なので、基本的な知識を振り返ろうと思う。今日は、Mage guildやAdventurer’s GuildでのJobに関する知識についてだ。
まず、Jobとは何なのか? 現代では自らの人生の進路の選択であると定義される。
何故ならJobに就く事で、そのJobに関するskillの獲得補正を得る事が出来るからだ。Chefに成りたければ【Cooking】skillが必須だから、Job changeの際【Chef】Jobに就くのは当然だろう。
こう説明すると師ArtisanとLegionは首を傾げるのだが。どうやら目的の職業に就くのに必要な技能を手に入れるために、Jobに就くというのがanother worldの感覚では奇妙に感じるらしい。まあ、another worldにはJobやskillが存在しないそうだから、そのせいだろう。
それはともかく、Production related Jobに就く一般人だけでは無く、戦闘系Jobに就くadventurerもJob選択の重要性は人生を左右する。【Apprentice Warrior】や【Apprentice Mage】、【Apprentice Craftsman】等の汎用Jobはともかく、【Baker】や【Swordsman】等の専門Jobと成ると受けられるskill補正やJob効果の範囲が狭いからだ。
つまり、潰しが利かないのである。
【Baker】や【Swordsman】にJob changeした後に、自分がその職に向いていない事に気がついても次のJob changeまで他のJobに就く事は出来ない。
まあ、似たような業種……【Baker】であれば同じChef系の仕事になら就けるだろうし、【Swordsman】にしても別に槍や斧が装備できないbody partになる訳でも無いから、この例の場合そこまで致命的な事にはならないだろう。
ただ戦闘系JobからProduction related Jobに進路を変える-samaな、大幅な人生設計の変更は大変だから、注意する-samaに。……師Artisanのように戦闘系Jobに就きながらProduction related skillを幾つも獲得してlevelも上げている者は、world的な例外なのだ。
次にJobにおけるskillの獲得補正とJob効果だが、これらはJob changeしてもそのまま引き継がれる。だから同じ系統のJobを重ねると、その分野ではスペシャlistに成る事が出来る訳だ。あまりやり過ぎると専門外の事が何もできなくなるので、ある程度幅を持たせるのが普通だがね。
そのJob changeの数だが、平均的なHumanの一般人が人生で死ぬまでに経験する回数は、職業とJobにもよるが四回だと言われている。先ほどから私が例として挙げている【Baker】なら、【Apprentice Chef】→【Chef】→【Baker】→【Renowned Baker】と成る訳だ。
aptitudeがある者や師Artisanに恵まれた者は、さらにその先の【Master Baker】等のJobに就く事も可能だ。
師Artisanやその側近であるEleonoraやZadiris、Vigaroと比べると少なく感じるだろうが……levelの上がり難いProduction related Jobで、しかも成長の壁に何度かぶつかりながらだからこんなものである。
尚、四度目のJob changeを経験する頃には普通の者は四十代前後に成っている事が多いらしい。
国によっては徴兵制度で【Apprentice Soldier】に強制的にJob changeさせて訓練を積ませる事がある。この場合は平均回数が五回になるわけだ。
寿命の長いDwarfの場合はこれより更に二回程、更に長命なElfの場合は倍程に増える。ただDwarfとElfは一般人でも戦闘系Jobに就く事があるので、純粋な意味での一般人では無いが。
そして以下はadventurerの場合だが、adventurerの場合は依頼の途中で死ぬ事が少なくなく、上Classの者に成るとNobleに仕えたり、Nobleその物に成ったりしてguildでも詳しい情報を調べられないので、人生で何回Job changeを経験するのかの平均は出せそうにない。
なので、Adventurer’s Guildの等Classごとに平均値を私の知識と偏見で記しておこう。
●GClassとFClass
Adventurer’s Guildに登録したばかりの新人と、EClass昇格への訓練期間にある者達なので、Job changeを経験していない事も多い。
●EClass
adventurerらしいadventurerに成りつつある段階。基本的にJob changeの数は一回程。
●DClass
adventurerとしては中堅で、大体二回から三回Job changeを経験した者が多い。早いものはこの段階で成長の壁にぶつかる。
●CClass
adventurerとしては中堅から頭一つ飛び抜けたconditionにあり、adventurerだった頃は私もこの等Classだった。
ここまで上がるのに一回以上成長の壁を乗り越えており、Job changeを経験した回数は三回から五回程の者が多い。
ただ中にはBClassへ昇Classして面倒な上流階Classとの付き合いをしたく無いという者が、故意に留まっている場合がある。その場合は平均を大きく超えるJobに就いている場合がある。
●BClass
普通にHeroだろうね。少なくともEARTH DragonやRock Dragonを退治できるし、運にもよるがpeerageが貰える程度の手柄を立てる事は可能だ。成長の壁も複数回越えているだろうし、その際に必要なpatience力や、培った経験は重要だ。
Job changeの回数は最低でも五回以上。多い場合は七回程だと思われる。
●A&SClass
Job changeを七回以上経験しているだろうという事以外分からない。AClass以上となると、adventurerであると同時にその国家にとっても重要な人物なので、情報が殆ど開示されないのだ。
個人的な知り合いならある程度conjectureできるが、私にはいなかったのでね。
SClassの場合は、accurateな情報は無いが……十回はJob changeを経験しているのではないだろうか?
一応、legendに残っているSClass adventurerの何人かは逸話としてJobの数がrecordに残っている人物もいる。しかし、大体は眉唾で……いや、師Artisanのような存在がいるから、そうとも言い切れないのか?
とりあえず、生前AClass adventurerだった『Sword King』Borkusと『Saintess of Healing』Jeenaは八回、SClass昇格間違いなしと言われていた『Divine Spear of Ice』のMikhailは十回目のJob changeを行ったばかりだったらしい。
あ、今気がついたがJobの数だけなら私もAClassだな。
これらの事から考えれば、如何に師Artisanとその周辺が規格外なのか分かるだろう。何故他のadventurerが師Artisan達のようになれないのかについてだが、誰だって命が惜しいからだ。
師Artisan達は成長の壁にぶつかる度に格上の相手を倒したり、連日Dungeonで高Rankのmonstersを倒したりしている。それを普通のadventurerがやると、高い確率で命を落とすのである。
常に命の危険があるadventurer稼業だが、adventurer達は一部の戦闘狂以外日々の生活の為に戦っている。自分の手に余る危険は避けるのである。
以上の情報は私の個人的な意見であり、実際には当てはまらない例外が数多く存在するだろう。
それにAdventurer’s Guildで「五回以上Job changeしているからCClass昇格」というような事はまず起きない。何故なら、Jobの数を重ねるだけなら実は難しくないからだ。
極端な話だが、【Apprentice Warrior】から【Apprentice Mage】、【Apprentice Thief】とlevelを上げるのが容易いApprentice系Jobに繰り返し就けば、これだけで三つのJobを経験した事に成る。
ただ実際の実力は、広く浅く色々な事が出来る新人程度で、DClass adventurerには全く敵わないだろう。
Job毎にAbility Valuesの成長率や獲得に補正がかかるskillやその有効さは異なる。それに、その分野への研鑽を積み実戦経験を重ねる事が何よりも重要だ。
その事を忘れないように。
尚、Vida's New Races……特にmonstersのRankを持つ長命raceの平均は取っていない。Talosheimで採用されているExplorers’ Guildではまだしっかりした等Class制度が導入されていないから、あまり意味のあるdataに成らないからである。