Emperorに正式に就任したVandalieuは、一旦Talosheimに戻る事になった。まだ『Trial of Zakkart』が出現していなかったし、やる事も色々あったからだ。
その内一つが留守の間に一斉にRank upしたPrivelやZadiris達のお披露目である。
Vandalieu自身は自覚していなかったが、夢に出て彼女達を導いていたらしい。その際、自分の姿が山のようにGiantだったり、大地を覆い尽くす程countlessに分裂していたり、手乗りSizeだったりと人によって見え方が異なっているのが面白かったが。
「もしかして俺って、魂とかMentalの形が普通の人とは違うのかもしれませんね」
「Championのsoul fragmentで創られた魂だから? 夢なんて見る人によって変わる物だから、そうでもないと思うけれど」
Mythrilの延べ棒にdeath attributeのManaを注ぎながら言うVandalieuの呟きに、Eleonoraがそう言う。彼女の言う通り、夢なんて不確かな物だから気にする事は無いのかもしれない。
「俺も今まではそう思って気にしなかったのですが……思い返すと心当たりがありまして」
VidaのDivine Realmでの自分の立ち振る舞いや動きを思い出すと、明らかにHumanの動きをしていなかったような気がする。
それが気になったVandalieuは、BudarionやGodwin達と一緒にMububujengeのDivine Realmに招かれた時の事を思い出して見た。
あの時、BudarionやGodwinは魂だけのconditionになっても通常の姿形と変わらなかったような気がする。
だが自分は彼等を上から見下ろしていた……つまり本来のBodyよりも明らかにGrowしていた。当時は気にしなかったが、自分の来歴を聞いた後だともしかしたらと思うVandalieuだった。
『Spirit Formは普通の形なのに、魂の形は違うのか。変なもんだな』
「確かに坊やは頻繁に変形するが、それをしない時は、普通の形じゃな」
不思議がるBorkusとZadirisに、Vandalieuは実際に【Out-of-body Experience】でSpirit FormのCloneを作って見せて説明した。
「Slimeに例えると分かり易いでしょうか? 魂は核で、Spirit Formはそれを包むゼリー状の部分です。通常魂は常にSpirit Formに包まれていて、表に出る事はまずありません」
『俺の場合通常と異なるのは魂だけで、Spirit Formは他の人と何も変わらないのでしょう。だからSpirit FormのCloneを見ただけでは誰も気がつかなかった』
『ブルルルル』
「協力ありがとう、Kühl」
Deep Blood SlimeのKühlにも手伝ってもらっての解説に、そんなものかと納得するBorkusとZadiris。
EarthやOriginだったら細胞の核を魂に例えて説明するのだが、LambdaだとSlimeに例えた方が説明しやすい。
『形が変わっていても、VandalieuはVandalieuよ。気にする事無いわ』
Darciaがそう言いながら息子の頭を撫でる-samaな仕草をする。
「ありがとう、kaa-san。でも俺がと言うより、皆が俺の魂を見た時怖がらないかなーと思いまして」
『あ、それもそうね。皆、気を付けてね!』
Vandalieuから周囲の皆に振り返ってそう呼びかけるDarcia。
「いや、普通はそうそう魂の姿を見るような事にはならないと思うけど。FidirgやZozoganteなんかと会う時は、あっちが姿を現すし」
『まあ、坊主と一緒にDivine Realmに招かれるような事もそう無いだろうしな』
「もし招かれても、下を向いていれば問題無いじゃろうしな」
「……若干、見てみたい気もするがね」
そのDarciaの呼びかけに対して、落ち着いて応えるEleonora達。Lucilianoだけは怪しい事を言っていたが。
『ところで、Mythrilをdeath attributeのManaで変化させる事は出来ましたか?』
IslaがZombieらしい死んだ瞳に、ギラギラとした欲望を滾らせてVandalieuの手元を覗き込む。
「さっきからやってはいるんですが、無理っぽいです。AdamantiteやObsidian Ironもダメでしたから、魔導金属は変化させる事が出来ないのかもしれませんね」
今Vandalieuは工房でMythrilやAdamantite等のManaを帯びた金属を変化させる事は出来ないか、試していたのだ。
これまで金属をそれぞれDeath IronやHell Copper、spirit silverやlife goldに変化させて来たVandalieuだが、MythrilやAdamantite等は試していなかった。
Talosheimで貨幣として流通しているLuna貨に使うDeath IronやHell Copperを作るのに忙しかったという事情もあるが、MythrilやAdamantite等の金属はDungeonでも簡単には産出されないのが最も大きな理由である。
大体は出現するTreasure Chestの中やmonstersが装備しているitemといった形で見つかる。そのため、纏まった量を見つけるのは滅多にない。
Vandalieuなら【Golem Creation】skillでManaを消費して創り出す事も可能だが、それにはそれなりの時間がかかる。そして、Death IronやHell Copperが素材として優秀であるため魔導金属を変化させる必要性も薄かった。
そのため実験は後回しにされていたのである。
しかし、ようやく取り掛かった実験の結果は芳しいものでは無かった。
「暫く放置してもspirit silverやlife goldのように消えたり、動きだしたりする事もなさそうですし、見た目も強度も性質も変化none」
「なるほど。魔導金属はoriginally銀や鉄がManaを帯びて変化した物だから、師Artisanのdeath attributeのManaでも変化済の物を更に変化させる事は出来ない、という事か」
Vandalieu's Discipleだが実質研究助手であるLucilianoが、実験結果を書類に纏めて行く。
「ところでOrichalcumは試さないのかね?」
「試すまでも無いでしょう」
神しかRefiningも加工も出来ないとされるOrichalcum。それをVandalieuは大まかに形を変える程度の加工だが、【Golem Creation】skillでMaceや盾、棒等に形状を変化させてきた。
その際Orichalcumは大量のdeath attributeのManaを浴びているので、変化するならとっくに変化しているはずだ。
「白金は以前試した時には変化しませんでしたし、この辺りで打ち止めでしょうか」
「【Earth’s Hell Gods’ Divine Protection】とやらを得る前に行った実験だから、改めてやってみたらどうかね。blessingsを得ると色々と変化する事が少なくない。EarthのMythで、死後のworldにしかない金属等が創れるようになるとか」
『そうね、今のところblessingsの効果って【Group Binding Technique】でザクロを簡単に生やせるようになったぐらいだし、他にもあるかもしれないわね』
【Group Binding Technique】にintegrationされた【Plant Binding Technique】の効果によって体内で植物を栽培する事が出来るようになったVandalieuだが、【Earth’s Hell Gods’ Divine Protection】を得てから、以前よりザクロの栽培が簡単に行えるようになっていた。
「んー……そうですね、後日やってみましょう」
「坊や、EarthやOriginには他に金属や素材があるのではないかの? 今ならそれも【Golem Creation】で作れるのではないか?」
「ありますけど、どうやって作るか分からないのですよね」
EarthやOriginにはLambdaでは存在を知られていない……存在しているかも不明なタングステン等の金属がある。しかし、Vandalieuはそれらの金属や素材に関してあまり詳しくなかった。
Earthで高校生をしていた時は金属や鉱物に特別な興味は無かったので、タングステンやチタン合金の-samaな金属の性質やRefining方法はMemoryになかった。……現役の学生だった当時は元素記号ぐらいなら覚えていたはずだが、既に三十年程前の事なので、全く覚えていない。
Originでは研究者の霊から金属に関する知識も聞いたが、研究者達が語ったのは自分がその金属に関するどんな研究をしていたのかという事で、金属その物の詳しい説明は無かったのだ。
流石に【Golem Creation】skillでも、nameを知っているだけで知識の無い鉱物を創り出す事は出来ない。
「Legionに聞いても、彼女達もあまり詳しくないようですし。まあ、彼女達は研究者や専門家じゃないですからね。……『Trial of Zakkart』の最奥には色々あるようですけど、試して良いのか激しく迷います」
『Trial of Zakkart』にはChampion Zakkartの遺産が収められている。その中には彼がDemon King Guduranisを倒すために使おうとして製作途中だったanother world『EARTH』の軍事兵器も存在するらしい事が、『Vida’s Resting Ground』に残されていた資料に記されていた。
Vandalieuとしても、手を出すか迷う代物である。
『まあ、別に良いんじゃねぇか? Death IronもHell Copperも素材としては一Class品だし、坊主には『Demon King Fragment』もあんだろ?』
「うむ、そうじゃな。これで実験は一段落ついたとして……坊や、言いたい事がある」
強引に話題を変えたZadirisは、がっしりとVandalieuの肩を掴んだ。
「何でしょう、Rank upに関する事ですか?」
ZadirisもPrivel達と同-samaにVandalieuのGuidanceを夢で受けて、Rank upしていた。詳細はまだ聞いていないが、こうして見ている限り姿はほとんど変わっていないように見える。何か問題があっただろうかとVandalieuは内心首を傾げた。
しかし Zadirisは「大有りじゃ」と言う。
「Zadiris、導かれた結果Rank upしてそれに不満があるなんてselfishnessよ」
『小娘と同意見なのは不本意だけど、その通りだ』
そのZadirisをEleonoraとIslaが窘めようとするが、彼女はVandalieuの肩を掴んだまま言った。
「坊や、確かにRank up出来た事には感謝しておる。しかし……何故race名がGhoul Wizard Princessなのじゃ!?」
涙目のZadirisの問いに、思わず時が止った。
Princess、つまり姫。
多くの場合王族や、それを含めた高貴な生まれの子女を表す言葉だ。Irisのsecondary nameの『Liberating Princess Knight』の-samaに、生まれついた地位とは関係無い場合もあるが、やはり多くの場合ある程度、高貴な身分の親の元に産まれたか、本人がそうした地位にある若いfemaleを呼ぶときに使われる。
「……前言を撤回するわ、Zadiris」
『……同情に値する』
『私は可愛いと思うけど……』
「ふむ? 第三の目や肌の模-samaなどに変化は見られるようだが……いや、少し容姿が幼くなったような気がするが、気のせゴゲ!」
一転して同情の眼差しをZadirisに向けるEleonoraとIslaが、学術的好奇心を優先させたLucilianoのsolar plexusを軽く突いて悶絶させる。
板金鎧を纏ったKnightの胴体を素手で貫く事が出来る二人によって倒されたLucilianoに、Borkusが『お前も学習しねぇなぁ』と声をかけた。
その後になって、ようやくVandalieuは言葉を絞り出した。
「……か、可愛いですよ?」
「坊やっ! 儂はもう三百目前じゃぞ!? 孫もいる! それで何故Princessなのじゃ!? 可愛いと言われても素直に喜べんじゃろうが!」
『一応喜ぶんだな』
Borkusの呟きを無視して、Vandalieuに訴え続けるZadiris。
「儂も別に坊やが意図的にGhoul Wizard PrincessにRank upさせたとまでは思っておらん。儂も聞いた事が無いraceじゃしな。じゃが、言わせてほしい。
GeronimoやQueenやグRandマザーでは無く、何故Princessなのかと!」
「……それはmaybe Statusを司っているKami-sama達に聞かないと、分からないですね」
VidaのDivine RealmでRicklentから聞かされた事を思い出して答えるVandalieu。Ricklentは当時monstersだけが持っていたRankの神は創っていないので、もしかしたらDemon King Armyの邪悪なGodsの中にRankの担当者がいるのかもしれないが。
「しかし何故かと言われても……やはり、image?」
「Zadiris、そのappearanceでQueenは無理があるわ」
『落ち着きなさい、次にRank upしたらappearanceが変わってQueenにRank up……出来る望みもZeroではないはず』
「Islaまで優しくするでないわ! お前達二人もVampire Princessとか、Zombie Princessとか、そんなrace名になればいいんじゃ~!」
「止めて! 妙なCurseをかけないでよ、本当になったらどうしてくれるの!?」
『私は無いな。appearance age的に』
Zadirisの呪詛にappearance ageが二十ageで可能性が無くは無いEleonoraは顔を引き攣らせ、三十代半ばのIslaは静かに肩を竦めてみせた。……万が一の可能性を考えたのか、若干顔が強張っていたようにも見えたが。
『まあ、俺もこのageでZombieプリンスheroなんてもんになったら堪らねぇが……Rank upしちまったもんは仕方ねぇだろう』
Borkusの言う通り、Undead Transformationでもしない限りmonstersやVida's New RacesはRank upする事はあってもダウンする事は無い。
また、Rank upを経ずにrace名が変化する事も今まで確認されていない。
五体が損なわれようが、老いようが、Rankとrace名はそのままである。
「そうじゃなぁ。ここまで来るとそう簡単にはRank upは出来んじゃろうが、それしかあるまいな」
「とりあえず、ステッキとcostumeでも作ります?」
「……childっぽいdesignは嫌じゃからな。Queenとは言わんが、レディとかMrsとか、そんなdesignじゃと嬉しいの」
内心「Witchっ娘☆Zadiris」なんて想像をしながら尋ねたVandalieuだが、Japanのアニメを知らないZadirisは普通にプレゼントの打診だと解釈したようだ。
(design……自信はあまり無いのだけど)
一転して機嫌が良くなったZadirisに「冗談だった」と言うのも酷なので、「分かりました」と答えるVandalieu。
自力で糸をRefiningして編めば衣服を作る事が出来る。杖は、【Demon King's Horn】や【exoskeleton】をベースにして、彼女の希望を出来るだけ取り入れて仕立てよう。
そう決めたVandalieuの手を、Islaが軽く引きながら言った。
『Vandalieu -sama、実は私も欲しい物が……鎖を頂けませんか? 何なら、縄でも結構です!』
「Isla……Rockな趣味ではなくて首輪に付けるつもりですよね、それ。【Golem Creation】で編んだ物で良いですか?」
『はい、certainlyです!』
x2の意味でnod Islaに、「分りました」と請け負うVandalieu。最近Islaも頑張ってくれているし、首輪に続いて贈り物を贈るのも当然だろう。
「Vandalieu -samaっ! 私にも!」
『Isla -sanもだけど、Eleonora -sanももっと抑えて……もらうのは無理なのね、きっと』
「俺もそう思います、kaa-san。
Eleonoraにはチョーカーで良いですか? もっとaccessoryっぽい感じで」
『陛下く~ん』
『ちょっといいかな?』
更にEleonoraも遅れてなるものかとねだる中、生前は旧TalosheimのHeroでBorkusのparty memberであるGiant raceの女Zombie、『Saintess of Healing』Jeenaと、『Tiny Genius』Zandiaが地下工房に入って来た。
『まさか、お前等も首輪とか言い出さねえよな?』
timing的に嫌な予感を覚えたらしいBorkusが恐る恐る聞くと、二人とも眉を寄せて訝しげな顔をする。
『えっ? 何の事? 私達は陛下-kunにBodybuilding大会についての報告と、ついでに色々話しに来たんだよ』
Vandalieuからサイドチェスト等のBodybuildingのポーズを教わったJeenaは、「これは面白いかもしれない」と、Talosheimに建てられたtheaterを使用してBodybuilding大会を催す事を思いついた。
このLambdaでも、Body美を誇る者がmuscleを強調するポーズを取る事自体は幾らでもあった。その中にはEarthのBodybuildingダーと同じポーズを好んだ者も、当然いるだろう。-sama々なraceが存在するLambdaだが、五体の形は多くのraceでEarthのHumanと共通しているのだから。
しかし、Body美だけを競う大会は珍しい。LambdaではBody美に優れている者とは、body part Abilityに優れている事と同じであり、優れた戦闘Abilityが求められる。
つまり剣闘Slaveの命を懸けたtournamentや、そこまでblood腥くは無いが時折死人が出る武道大会等になってしまうのだ。
実用性が求められない、美しさだけを競う大会は少なくともBoundary Mountain Range内では初めての試みである。
宗教的にも、生命attributeのGoddessであるVidaに奉じるのに良いthemeなので、『Vida revival記念Bodybuilding大会』として大々的に開催する予定だ。
「何か問題や手伝える事は在りますか?」
certainly Vandalieuも楽しみにしている。大会当日は、特別審査員として参加する予定だ。
『今のところは大丈夫~。選手用のcostumeも作ってもらったし。でも副賞とかよろしく』
Vandalieuにappealするchanceと貪欲に目を輝かしているIslaと、「female部門でも流石にBasdiaに勝てないわよね」と息を吐くEleonora。
「ふぅ、儂には関係の無い話じゃのう。それよりZandiaや、他の報告とは何かの?」
そして奇しくもPrincess仲間になってしまったZandiaに、完全にmuscle方面は諦めているZadirisが尋ねる。
『うん、まずあたし達がRank upしてBlowクンが取れた事。私がRank9で、Jeena姉がRank10だよ。
後は、Vida -samaがAldaの杭から解放された事と陛下-kunがChampion四人の生まれ変わりだった事を祝して、NuazaがGiant陛下-kun像をVida -samaのIdol Statueの横に建立するって言っている事ぐらい』
「止めてきます」
とんでもない事態が進行している事を知ったVandalieuは、Zadirisの腕から抜け出すと決然とした足取りで歩きだした。
『えっ? 止めるの? Veldって偉い霊に死後はSubordinate Godになれるかもしれないって、言われたんじゃなかったけ?』
「言われたけど止めます。現人神に成るつもりはありません、今まで通り等身大の物をIdol Statueの前に置くぐらいにしてもらわないと」
死後は神になるかもしれないが、生きている間は成るつもりはないVandalieuだった。
Mirg Shield Nation現Marshall、Thomas Palpapek Earlは書類にsignをすると大きく息を吐いた。
引き締めれば軍人らしい精強さが、微笑めば人を安心させる柔和さ、そしてどちらであっても頼もしさを感じさせていた彼だが、ここ数年で随分老けた。
前はageよりも若く見られる事が多かったが、今は実ageより十は老けて見える。
しかし、それも仕方ない事だとMirg Shield Nation王やRoyal Palaceの高官達は思っていた。
約四年前の遠征で失った六千人の精鋭部隊、それによって大幅に落ちた国の戦力を立て直すと言う激務に従事してきたのだから。
更に、Orbaum Elective Kingdomに取り戻される前はSauron領の、そして今は前と同じconditionに戻った国境の防衛も担っている。
その働きぶりは、本来Thomasの政敵である親Amid Empire派のNoble達も認めている程だ。
彼の働きがあれば、後十年もせずMirg Shield Nationの軍事力は遠征前と同じ水準に戻るだろうとまで言う者もいるぐらいだ。
その賞賛を聞く度に、Thomasは内心「それまでこの国が在ればな」と呟いていた。
「……何故、こうなった?」
目を通すべき書類を全て処理したThomasは、苦々しい口調で呟いた。この頃、一人だけで仕事をしていない時はずっと同じ疑問が彼の頭の中を支配していた。
自分は何処で間違えたのか、何故こうなったのか。そしてこれからどうするべきなのか。
四年前、Pure-breed Vampire達の企てによって始まった遠征がThomasの想像を超える大失敗で終わった時。Thomasはこれ以上の損害を自国が受けないよう、懸命に働いた。
報復を唱える世論を鎮静させ、Vandalieuが何時攻めて来ても対応できるよう軍事力を立て直そうと奮闘した。
当時の彼は、それが最善の手だと考えていた。恐らくVampire達と自分の企みによって母親を殺されたDhampirの赤子だろう、Vandalieuに対する策はそれ以上の物は無いと。
Boundary Mountain Rangeのtunnelは崩落して完全に塞がっていた。Vandalieu自身ももうこちらを攻撃する事は出来ないはずだ。
certainly Mirg Shield Nationの側からもMountain Rangeを越える事は出来ないので、Thomasは自らの手でVandalieuに復讐する事は考えていなかった。
彼が手を下さなくても、Pure-breed Vampire達が勝手にやってくれるだろうと予想していたのだ。もしくは、事態を重く見たAmid Empireが動くかもしれないと。
しかし、Thomasの予想は尽く裏切られた。
彼と繋がっていたVampire一派の首領、Pure-breed Vampire Gubamonの死。将来は重要なポストに就けようと思っていた人材、Kurt LegstonがCommandingを執っていた砦のDecay。
そして去年は『Fifteen Evil-Breaking Swords』の一人、『Light Speed Sword』のRickert・Amidの敗北。
その全てにVandalieuが関わっている事を、Thomasは確信していた。
属国のMarshallでしかない彼には、Amid EmpireのEmperor Mashkzarが抱える程の力を持つ諜報organizationは無い。しかし、繋がっているVampireの-sama子を見ていればある程度は予想できる。
ThomasがMirg Shield Nationの軍事力を立て直す為に四苦八苦している間に、VandalieuはPure-breed Vampireを屠り、Amid Empireが抱える最強の『Fifteen Evil-Breaking Swords』でも手に負えない程の力を蓄えたのだ。
最早Mirg Shield Nationの軍事力が遠征前に戻ろうが戻るまいが、何も変わらない。Vandalieuがその気になれば、国ごとThomasは潰されてしまうだろう。
「私はこの四年国にとって最大の危険人物に対して、Undeadの材料でしかない集団を育てるため仕事に日々励んでいるのか。ふふふ、笑わずにはいられないな」
どんなに将兵を鍛えても、自ら剣を取って軍をCommandingしても、BClass以上のadventurerを何人雇い入れても、VandalieuにとってはUndeadの材料の質が高くなるだけだろう。
もしかしたら、Vandalieuにとってこの国は既に敵では無く、Undeadの元を育てるための牧場でしかないのかもしれない。最近はそんな妄想すら浮かぶ。
あまりの徒労感に、Thomasは自嘲的な笑みを浮かべた。
「顔を見た事も無いchildの掌の上か、私の命は」
Thomas Palpapekは、Vandalieuの姿を直接見た事が一度も無い。言葉を交わした事もないし、どんな人物なのか詳しく知っている訳でも無いのだ。
Life-dead越しに見たと言うadventurerの証言から書き起こした似顔絵を見た程度だ。
Ghoulを率い、Undeadを使役する常識の枠を超えたDhampirである事は、分かっている。だがそうしたAbility以外の、どんな人格の持ち主でどんな哲学に従って生きているのかは知らない。
彼が自分の事をどれ程知っているのか……母親の死の黒幕に等しいと知っているのか、いないのか。知っていたとして、どの程度恨んでいるのかも知らない。
最悪のpatternを考え、三人いる妻とchild達を別邸等に避難させているが……どうなる事か。
「あの時……adventurerの証言によってDhampirの存在が判明した時、討伐隊を編成するような悠長な真似をしたのがそもそもの失敗か。もっと迅速に刺客を送り付け、討伐するべきだった。いや、それを言うならEvbejiaで奴の母親が発見された時、子飼いのKnightだけで確実に母子共々殺しておくべきだったか。
だが過去には戻れない。ならこれからどうするべきか……」
Vampireに頼る? 愚策だ。彼等にとって自分の価値はそこまで大きくない。それに既に三人いたPure-breed Vampireの内二人まで討ち取られている彼等に、何を期待できるのか。
Amid Empireに泣きつく? いや、EmperorがVandalieuをどうするつもりなのか、戦うのか落としどころを見つけて密約を結ぶのか分からない内は、危険だ。
もし密約を結ぶことをEmperorが考えている場合、Thomasとそのfamilyの首は都合の良い材料として扱われるだろう。
「いっそ首でも括りたい気分だが……ん?」
何時の間にか木戸が開き、night気がroomに入り込んでいた事に気がついたThomasは最終的な答えの出ない問いを中断すると、椅子から立ち上がった。
そして窓の近くに一通のletterが落ちている事に気がつく。
「Vampireからのmessageか? ……これは!」
そう思いながら手に取って中身を確認すると、そこには驚くべき事が描かれていた。
「本当なのか、彼等が私の為に動く? 報酬は依頼達成時のみ……額は莫大だが当然か」
書かれている文面を何度も確認する度に、Thomasの瞳に浮かぶ希望の輝きが強くなっていく。
「彼等の力があれば、私は……この国は生き残る事が出来る!」
・Name: Zadiris
・Rank: 10
・Race: Ghoul Wizard Princess
・Level: 0
・Job: Great Mage
・Job Level: 35
・Job History: Apprentice Mage、Mage、Light-Attribute Mage、Wind-Attribute Mage、Sage、Great Sage
・Age: 298age(Youth Transformation済み)
・Passive skills
Dark Vision
Pain Resistance:4Lv(UP!)
Mysterious Strength:2Lv(UP!)
Paralyzing Venom Secretion (Claws):2Lv
Mana Recovery Rate Increase:10Lv(UP!)
Mana Enlargement:5Lv(UP!)
Automatic Mana Recovery:4Lv(NEW!)
Strengthened Magic Power with a Staff : Medium(NEW!)
・Active skills
Light-Attribute Magic:10Lv
Wind-Attribute Magic:10Lv(UP!)
No-Attribute Magic:5Lv(UP!)
Mana Control:10Lv(UP!)
Alchemy:6Lv
Chant Revocation:7Lv(UP!)
Multi-Cast:5Lv(UP!)
-Surpass Limits-:5Lv(UP!)
Housework:1Lv
High-speed Thought Processing:4Lv(UP!)
・Unique skill
Zozogante’s Divine Protection
Garess’s Divine Protection(NEW!)
・race解説:Ghoul Wizard Princess
Kijin nationのPatron GodであるGaress’s Divine Protectionを、夢の中に現れたVandalieuによって得たZadirisがRank upしたrace。やはりLambdaで初めて現れたraceである。
appearanceに変化はないが、Ghoul Elder Wizardの時よりもmagic的な素質がincreaseしている。
更に【Strengthened Magic Power with a Staff : Medium】のskill効果で杖を装備している間、magicの力がincreaseしている。(Attack Powerだけではなく、回復magicを唱えた時の治癒力や付与magicを唱えた時の持続力等もEnhanced (1)されるskill)
尚、このRank upにGaressの意思は関係していない。