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Chapter 19: えげつない襲撃を行おう

 Noble OrcBugoganが支配するOrcの大集落のnightは、平和な時間が流れていた。

 厳密に言えば、捕えた女Ghoulや女adventurerscreechが聞こえたり、Bugoganの息子の一人Bubobioが些細な失敗をしたGoblinを処刑したり、そういった事はあった。


 しかし、それらは既に日常茶飯事で誰も気にしない。日常でない事……他のmonstersの襲撃などはそのsignも無かった。

 そもそも平和でない事の方が珍しいのだ。何故ならここはNoble OrcReignする集落なのだから。


 Devil Nestsに集落をつくる場合、GoblinKobold等のweak monstersは外敵の目につきにくい場所、洞窟や地下を掘って作る場合が多い。だが、Rankの高いmonstersが頂点にいる群れは堂々と地上に集落を構える。

 何故なら外敵を心配する必要が殆ど無いからだ。


 another worldから現れたDemon Kingやその配下のEvil God (M) Evil God (P)に創られたmonstersには、monsters同士仲良くしようなんて概念は無い。raceによっては同種同士で殺し合う事も、Cannibalismすら厭わないぐらいだ。

 しかし、そんなmonsters達も明らかに格が上の相手には攻撃を仕掛けない。monstersだって自殺したい訳ではない。例えば、強大なNoble Orc等には間違ってもちょっかいをかけようなんて思わない。


 他のmonsters達はBugoganの存在をInstinct的に感じ取って、集落に近づこうとはしないのだ。

 尤も、それも理解できない程下等なmonstersが集落の外側を覆う壁を破ろうと、体当たりしてくることがあるが。

 それを防ぐために見張り櫓が立てられ、弓を持ったGoblinKoboldが配置されているのだ。


「ギィ」

「キヒヒ」

 ただし、その櫓に居る見張りにしてもあまり真剣に仕事をしている訳ではない。守りの堅牢さに自信があるからだ。

 高さ三meterの外壁は切りだした丸太を杭のように地面に打ち込み、並べた物だが、見た目以上に強靭で、火に強い。何故ならその木は植物のmonstersEntを切り倒したものを使っている。


 体長五meterMad Boarの体当たりも耐えきる、石造りの壁より強固な守り。これを守る仕事よりも、次に何時Orcから女が下げ渡されるかを話し合う方が、Goblin達には真剣に取り組むべき問題なのだ。


 しかしそれは間違いだった。

 月が上りきる少し前の頃、びくともしないはずの外壁が突然ギシリと音を立てて軋んだ。ギョッとしたGoblin達が慌てて弓を構えるが、矢を打つべき標的は何処にもいない。なのに外壁を構成する全ての丸太が軋り続けている。

 これは一体何なんだ!? そう混乱の極致に至ったGoblin達の前で、外壁が変化した。


『ギィィィィィィィィー!』

『オォォォォォォォォン!』

 木が割れ軋む甲高い音そのものの叫び声や、まるで怨霊のような咆哮を上げる、Wood Golemへと。


「ギッ……ギャヒィィィ!」

 集落を外敵から守る頼もしい外壁から、外敵へとそのまま変化したWood Golemが動き出しただけで、Koboldが組んだ見張り櫓はバラバラに砕け、Goblin達は地面に叩きつけられてしまった。


 Goblin達は警戒するべきではあった。しかし、警戒したところでどうにもならなかったのも、事実だった。




First段階成功。何故かManaが浸透しにくかったけれど、無事Wood Golemに出来た」

 Vandalieuは破壊するのが困難な壁が、そのままこちら側の戦力になったのを確認して頷いた。

 前Evbejiaの外壁をRock Golemにした時と同じ事をしたのだが、【Mana Controlskillを獲得し【Golem Transmutationskilllevelが上がったお蔭か、前よりも効率良く作業を進める事が出来た。


「まあ、所詮Wood Golemだけど」

「じゃが、壊すとなると時間がかかる。その時間を節約できたと同時に全方位から攻撃を仕掛けたのじゃ、悪くはあるまい」

 杖を持ちfeather飾りが幾つも付いた戦装束を身に纏ったZadirisの言う通り、先制攻撃は大成功だ。もし集落に居るのがGoblinKoboldだけなら、これだけで勝敗が決してもおかしくない程だ。


「ブゴオオオオオオ!」

 しかし敵の主戦力は頭にbloodが上ったら豚というより猪のように暴れまわるOrcだ。外壁がGolem Transformationして襲ってくるという、普通のSoldierなら驚愕で暫く立ち直れない異常事態に対して、早速立ち向かっている。


 個々の判断で重量ClassWeapon Equipmentを振り回しながらChargeするという、猪武者そのものの行動だったが呆然と立ち尽くしたり逃げ回ったりするよりは、余程厄介な行動だ。

「でも意外と持つな、あのWood Golem

「見た目よりも硬いな。Van、これもDeath-Attribute Magicの力か」


 外壁が鉄並に硬いEnt製だと知らなかったGhoul軍の面々は、意外と健闘するWood Golem-sama子にこれもVandalieumagicの力かと盛り上がる。


「では……ガルルルルルルルルルル!!」

 Ghoul達が戦闘時に使う吠え声による言葉で、Zadirisが各部隊に号令を発する。内容は『各部隊攻撃を開始せよ! Orcを排除し、目的の建物を制圧し女達を確保するのじゃ!』といったものだ。


「ガアアア!」

「グルルウゥ!」

 了解と吠え声を上げてfangsを剥いたGhoulWarrior達が、外壁の無い丸裸の集落にChargeを開始する。

 彼らが身に纏うのはDClass adventurerが羨むlevelの装備。しかもVandalieuZadirisを含めたMageの援護魔法がこれでもかと施されている。


 基本的にGhoulOrcは総合的にほぼ同じ強さだが、装備と援護で明らかにGhoulの方が有利だ。

「グルオォォォォォォォォォ!」

 その中でも、一目で業物と分かるGiantBattle Axeを構えたVigaroが、両手持ちの斧でWood Golemを一体DeforestationしたOrcに向かって行く。


 Orcにしては珍しく簡素だが鎧を着ているその個体は、恐らくOrc Generalなのだろう。通常のOrcより一回り以上大きいGeneralは、斧を構えるとVigaroを迎え撃った。

「ガアアアアア!」

「ブモギュギョ!?」

 そしてVigaroの構える盾で前にthrust出た鼻が陥没する程強く殴られ、のけ反ったところを横一文字に腹をBisectionされて内臓とbloodをばら撒いた。


 Orc GeneralRankVigaroと同じ5。本来ならこんな簡単に勝負が付くはずがないのだが、levelRankには反映されない日々の研鑽、そして数々の援護magicと【Strengthen Followerskillの恩恵、そして何よりVandalieuが渡したmagic itemBattle Axeが、大きな差をつけていた。


 しかし日々の努力や【Strengthen Follower】、magic itemは時間が多少過ぎても効果を減じないが、援護magicは効果を失ってしまう。それを防ぐためにはMage達が再び術を唱えなければならないが、Manaは無限ではない。

「じゃあ、Manaを回復しますね。【Spirit Form Transformation】」

 そこで無限のManaを持つに等しいVandalieuの出番だ。彼は両腕を【Spirit Form Transformation】でSpirit Formにし、まるで植物の根のようにcountlessに枝分かれさせるとZadirisを含めた女Ghoulや男GhoulMagebody partに接続する。


「うっく」

「んぅっ……」

「アァー!」

 そこかしこで上がる小さな……一つ妙に大きい呻き声やら喘ぎ声。特に最後に聞こえた物を意識から外して、VandalieuZadirisの集落に来てから習得したNo-Attribute Magicを放つ。


「【Mana Transfer】」

 No-Attribute Magicの中にある、最も使えないmagic。それがMana Transferだ。

 attributeに染まっていない無色のManaを対象に譲渡するmagicで、一見とても有用そうに思える。しかし、対象に譲渡する段階で殆どのManaが無駄になってしまうのだ。


 Manaの伝達率は対象との関係、心理conditionmagic的な相性、race等によって上下するが、平均して五%。信頼し合っていてmagic的な相性もいい双子のMage同士では、何故か譲渡した量よりManaが増える百二十%というrecordを打ち出した例もあるが、逆にManaを譲渡するどころか減らしてしまった例も少なくない。

 そして、この伝達率を意識的にincreaseさせる技術は今のところ発見されていない。


 そのため他人にManaを渡すよりも、自分で使った方がずっと効率が良いという結論になる。百のManaを使っても、五しか渡せないなら当然だ。

 しかしVandalieuの場合はManaが一億以上ある。


 Manaを百渡すのに二千使う、千渡すのに二万使う、一万渡すのに二十万使う。OK使おうじゃないかと即断できる量があるのだ。

「ほら明るくなっただろうと、お金を燃やして明かり代わりにする成金のManaバージョンです」

「坊や、金貨や銀貨は燃えんと思うが……? まあよい。皆よ、坊やから譲渡されたManaを存分に使え!」


「はい! 行くわよ、皆!」

「漲るぅぅぅぅ!」

 そしてManaが全快したGhoulMage達と彼女達を護衛するWarrior達が、先行した部隊を追っていく。それを見送って、Vandalieuは横に待機していたSamによっこいせと乗った。


「じゃあ、俺達はtactics通りに遊撃に出ますから後はお願いします。見えないと思いますけど、使い魔を付けておくので緊急事態の時は呼んでください」

「うむ、任せておけ」

 【Death-Attribute Charm】でGhoul達を纏め、【Strengthen Follower】でEnhanced (1)するのが役目のGhoul KingであるVandalieuは、襲撃を始めたらSam達と遊撃に出ることが決まっていた。


 彼にはoriginally Commanding Abilityが無いし、戦場を俯瞰して見るような広い視野も無い。その代わり、Orc達の中でも厄介なOrc Mageを含めたmagicを使うmonstersを木偶に出来る【Magic Absorption Barrier】のような、Death-Attribute Magicがある。

 それを活かすためには遊撃部隊としてSamの機動力を生かしながら戦場を駆け回るのが、最も良い。


 やはりKingが一番働いているような気がしないでもないが、Vandalieuの士気は高かった。

 何故なら遊撃部隊だからだ。多くの作品でprotagonistが任されたり所属したりして、大活躍する遊撃部隊。これで盛り上がらないなんてあり得るだろうか?


Sam、出して」

『畏まりました』

 Spirit Formの馬が嘶き、Samが走り出す。馬車には既にRitaSalireBone Manが乗り込み、周囲ではBone BearBone Bird達も並走している。


 Noble Orc達にとって最も厄介な遊撃部隊が、集落の中に突入した。




 Orc達にとって、そして彼らを支配するBugoganにとっては特に自分達が奇襲を受けるというのは、想定の範囲外だった。奇襲とは自分達が仕掛けるものであって、受けるものではないと信じていたと言ってもいい。

 何故ならBugoganが危険視するGhoulHuman達に対して、自分達の情報を与えないように動いていたのだから。


 だから見張りに立っていたのは士気の低いGoblinKoboldであり、Orcは捕えた女をlibidoのはけ口にしているか、惰眠を貪っているかのどちらか。

 Wood Golemが集落内を闊歩する音とGoblinKoboldscreechで目をさまし、飛び起きたOrc達はそのままpanic conditionに陥り、上の地位の者の指示を仰ぐような事をせずその場で個々に応戦し始めた。


 偶然集落の外側に居たOrc Generalが周囲のOrc達を纏めようとしたが、Vigaroによって一撃で屠られてしまった。

 お蔭でOrc達のpanicはますますAccelerationし、masterであるOrcpanicに陥っているためSlaveであるGoblinKoboldorganization的に動けるはずがない。それどころかOrcが滅茶苦茶に振り回す棍棒や斧の巻き添えを喰らう者が続出した。


 そんな中、混乱からいち早く立ち直ったのはKobold達だった。比較的頭が良く、同族同士でのCoordinationに優れる彼らはKobold ChiefKobold Mageを中心にして、自分達とは相性の悪い Wood Golemを掻い潜りGhoulを迎え撃とうとした。


「ガアアアアアアアアア!」

「ギャオオオオオオ!」

 そこに襲いかかる形になったのが、Ghoulの格闘戦部隊だ。直立していても地面に手の甲が付く長い両腕を使って、gorillaのような四足走行で集落に突入したのだ。


 獅子の頭を持つGhoulの男がするとその姿は一見滑稽だが、実際には【Mysterious StrengthskillEnhanced (1)されたMuscular Strengthで軍馬の全力疾走並の速さがある。

「ウォウン!」

 その速さに対してKobold達が出来たのは、矢を一度放つぐらいだ。だが、それもTarea特製の軽く動きを阻害しない、しかし十分な強度を持つDefense Equipmentと、Zadiris達がかけた援護magicの効果で殆ど成果を上げる事が出来なかった。


「ギャイン!?」

 Kobold達に接近したGhoul達は、自慢の鍵爪を振るい邪魔者を次々に薙ぎ払っていく。Commandingを執っていたKobold Chiefすら、殆ど抵抗も出来ず屠られていく。


「ガアアアア!」

 返りbloodに染まったGhoul達は咆哮を上げ、更に集落の内側に攻め込んでいく。その姿を見ればHumanにはbloodに狂った獣に見えたかもしれないが、Ghoulの戦闘言語が分かる者には「助けに来たぞ」と叫びながら囚われた同族の女達を探すWarriorなのだと気が付いただろう。




Bocchanっ、前方にGoblinの一団が!』

「おし――」

『畏まりました! 押し通ります!』


 Orcの集落を青白い馬に引かれた三頭立ての馬車が疾走する。その馬車には所々monstersfangsから削り出したSpikeが取りつけられ、まるでChariotの如く攻撃的だ。

 それだけでもかなりの迫力だが、何より恐ろしいのはCouch DrivingであるSamだ。bloodのように赤く輝く目を見開き、青白い顔で歯を剥き出しにして嗤っている。


「ぎゃぶっ!」

「ぎゃひぃぃっ!?」

「ギュゲ! ゲゲげげげぇ!」

 盾と槍を構えてその馬車を押し止めようとしたGoblin SoldierKnight達が、その勢いを全く止める事が出来ずに蹄に叩き潰され、Spikeに抉られ、車輪に巻き込まれて砕かれていく。


 本来なら馬車main bodyにもDamageがあるはずだが、改造された馬車main bodyにはEnt製の部品が多く使われているため小指の爪の先ほどの傷もついていない。

『フハハハハ! 実に爽快ですなぁ、Bocchan!』

『父-san、調子に乗り過ぎですよ』

『イエーイ! イケイケーっ!』

Ritaもはしゃがない!』


 Tarea以下Ghoulの職人集団の手によって、Sammain bodyである馬車のcarriageMonsterの素材をluxuryに使って大幅な改造が施されていた。

 Humanに麻酔noneでサイボーグSurgeryを施すようなものだが、Samが言うには形状が馬車のままなら部品が九割以上交換されても問題無いらしい。


 これまでもBone Monkey達のboneが折れたり罅が入ったりする度に新しいboneと交換してきたVandalieuだが、ほぼ全て交換しても問題無いとは思わなかったので驚いた。

 そしてその改造の効果は、monstersとしてのRankは3のままなのに大幅にincreaseした戦闘力を見れば明らかだ。


Bocchan! 今度は前方にOrcの一団が!』

 見ると、斧や棍棒を構えた鼻息荒いOrcが三匹前方に立ちふさがっている。相手はSamと同じRank3で、しかも一匹が百キログラムを優に超えるGoblinとは比べ物にならない重量Class

 しかも頭は豚でblubberもたっぷり蓄えているが、その下には強靭で分厚いmuscleboneや内臓を守っているうえ、bone自体もHumanの物よりずっと強固だ。


 Salire達はVandalieuが【Bloodshed Enhancement】をかけた矢を射かけるが、分厚いblubbermuscleの壁を破る事が出来ずOrcをますます怒らせただけに終わる。magicのお蔭でVitalityを削られているはずなのだが、見る限り大したimpactは無さそうだ。


 これは迂回した方がいいかと思ったVandalieuは口を開いた。

「安全――」

『畏まりました! 安全Firstで轢き潰します!』

 そんな無茶な。そう言うより早くSamはグンっと一層Accelerationする。突っ込んでくる三頭の馬を叩き殺し、続くcarriageも破壊しようとOrc達がそれぞれMartial ArtsActivateさせた。


「ブゴォォ!」

 【Single Flash】、【Bisection】、【Double Thrust】、それぞれ新米adventurerでも使える1levelや2levelMartial Artsだが、Mysterious StrengthOrcが使えばとんでもないAttack Powerを発揮する……のだが、この場合は相手が悪すぎた。


 青白い馬に棍棒や斧、槍が触れてもそのまま粘り気の強い液体に触れたような手応えを残しただけで、Orc達のWeapon Equipmentをすり抜けてしまった。

「ブゴ!?」

「ブギャアアアア!?」

 そして予想と違う展開にbody partbalanceを崩したOrc達は、そのままSamの【Charge】によって、ゴム毬のように跳ね飛ばされて人生を終えるのだった。


 馬車を引く三頭の馬は、一見すると青白いがただの馬に思える。しかし実際にはSamの【Spirit FormskillRealizationしたSamの一部であって、物理的な攻撃はほとんど効果が無いAstral系のmonstersだ。そんな物にただの鉄の塊をどれ程強く叩きつけても無意味。

 それを知らないOrc達が、体勢を崩したところにAccelerationしたSamの【Charge】を受け切れるはずも無い。


『実にっ! 実に爽快! 命を一つ轢き潰す度に、力が漲りますぞ!』

「あー、Experience Pointが入ってるのか。存分に稼いでいいけど、安全運転でお願いします」

『畏まりました!』


 人の良いおじ-sanの霊だったSamが、Experience Pointを得る喜びにますます瞳……eyeball全体を炯々と光らせる。人は変わるものだなぁ、娘達には『お父-sanカッコイイ』と好評のようだから構わないが。

 しかしClassリムジンと殲滅戦車は両立しうるのだろうか? そうSamの将来に首を傾げるVandalieuだが、『グエエエエエ!』と言うBone Birdの鳴き声を聞いて、思考を切り替えた。


『ガアアアアア!』

『アオォォォォォン!』

 後ろに続くBone Bear達はMysterious Strengthを活かしてOrcの腹を抉り、別のOrcBone Wolfが毒のBreathで弱らせたところをBone Monkeyが止めを刺す等優勢に戦いを続けている。

 空を飛ぶBone BirdOrc達の動きを逐一報告してくれるので、的確に動き現場の下士官格のOrcコマンダーを狙って攻撃を仕掛け、敵の混乱が続くように仕向けている。


「圧倒的じゃないか、我が軍は」

 Commander気分でそんな事が言えるほど、Vandalieuには余裕があった。何故なら、彼の下には続々と殺された敵の霊が集まっているからだ。

 SamBone Monkey達が倒した敵だけでは無く、VigaroBasdia達が倒した敵の霊も居る。その数は既に二百を超える勢いで増え続けていた。


 つまり既に敵の半分を倒している事になる。そして、allyの霊は一体も居ない。

 敵の損耗率約五十%で、こちらは無傷。Humanの軍相手だったら、既に大勝は揺るぎないと確信していいだろう。

「だけど相手はmonstersの群れだ。まだNoble Orcも出て来てないし……そろそろ『Lemure』を本格運用するか」

 Samが自在に馬車を走らせ集落を見回るが、苦戦している仲間は今のところいない。女Ghoul達が囚われている建物も、既に制圧に成功している。


 しかし首領格のNoble Orcがまだ姿を現していない。それを警戒してVandalieuZadirisとの修行の成果、その一つである『Lemure』を本格的に使い始めた。


 各attribute magicにはManaで使い魔を作る術が存在する。attributeを帯びさせたManaに形を持たせ、術者の命令を聞くよう術式を書き込んだもので、Manaで動くLong-distance Controlドローンのようなものだ。

 Abilityと形状は術者によって-sama々で、炎で出来た蝶や風で出来た小鳥など、小動物の形を模倣する事が多い。


 Vandalieuが選んだ形は、空飛ぶ髑髏だった。

『オォォ……』

 創り出されたLemureは、殆ど透明な髑髏の形をしている。そしてそのAbilityは、masterfive sensesを共有できる等使い魔として基本的なもの以外には、見つかり難い事ともう一つだけ。


「ブガアアアア! ブオオオオオオ!」

『ブオオオオオオオオ!』

 丁度前方にOrc Knightを引きつれたOrc Generalが現れたので、早速試す事にする。


『む、Bocchan、回避致しますか?』

 盾を構えているのは先のGoblin達と同じだが、流石にその突進力を同じだと判断する事は出来なかったSamが、冷静に尋ねる。しかしVandalieuは「Charge」と短く答えた。


『畏まりました!』

 三度【Charge】を敢行するSam。それをOrc Generalは豚面を嘲りに歪めて見ていた。

 体長五meterMad Boarの体当たりさえ跳ね飛ばす自分の【Shield Bash】に加えて、脇を固めるOrc Knightが二人。


 それに正面から突っ込んでくる馬車が、砕けないはずがない。

 そう確信してOrc Generalは配下と同時に【Shield Bash】をActivateしようとして、はっとした。


 自分達の真後から、恐ろしいbloodthirstを……死のsignを感じた。

 今すぐ対処しなければ殺される! 生物にとってfundamentalhorrorを魂の芯まで味わったOrc Generalと配下のOrc Knightは、咄嗟に背後に向き直り、恐ろしい敵に対して盾を構えた。


 しかし、振り向いた先には何も無かった。

「ブ、ブゴ?」

 気が付くとあの強烈なbloodthirstも消えていて、Orc General達は「あれ?」と呆然とする。

「ブヒベゴォ!?」

 そしてそこをSamに轢かれた。


 いくら突進力とDefense Powerに優れていても、盾を構えていない背後から棒立ちになったまま轢かれては一溜りも無い。

「ブ……ブヒ……」

 それでも息があるのは流石Rank5、流石Generalと称えられるべきだろう。よろよろと立ち上がろうとするが、それは果たせなかった。


Samstop。そしてBack

『畏まりました』

 ギャリリリとOrc Generalを轢いたSamの車輪が逆回転を始め、馬車が止まる。そして、そのままAccelerationして後退したのだ。


「ブゲ!」

 そんなBAKANAと言った顔をしたまま、Orc Generalは再び轢かれて命を消したのだった。


 Orc General達が感じて思わず背後を振り返ってしまった原因のbloodthirst。それがLemureAbilityだった。

 消滅と引き換えに、生存Instinctに訴える強力なbloodthirstを目標に対して放つ。

 bloodthirstを放つだけで、具体的な攻撃は何もできない。精々heartweakお年寄りなら、heart発作を起こせるかどうかといった程度だ。平時では、嫌がらせ程度にしかならないだろう。


 しかし、戦いの最中に使えばこれ程効果的な攪乱は無い。しかもその効果は、bloodthirstに対して鋭敏な強敵になればなるほど成果を上げる。

OriginLemureを作れていれば……いや、何も変わらなかったか」

 まあ、過去より今を見つめよう。


 それからVandalieuは、横にも縦にも巨漢なOrc Sizeに作られた集落の通路を走り回り、Goblin MageKobold MageOrc Mage等の頭の良いmonstersに狙いを定めて【Magic Absorption Barrier】で次々に無力化していった。

 それと同時Lemureをばら撒いてGhoul達を援護するとともに、Noble Orcの出現に備えた。


 そして一分も経たずに――

Noble Orcって、金色の髪を生やした三meterくらいのOrcですよね?」

『そう聞いていますが』

「見つけました。一度に三匹」


 一匹は快進撃を続けるVigaroの前に立ちはだかっている。

 二匹目はZadiris率いるrearguard部隊に迫っている。

 三匹目はBasdiaが居るWarrior部隊に向かっている。


 そのどれもが先ほど二度轢きしたOrc Generalよりも更に大きく、そして月の光を反射して煌めく金色の髪を生やしている。

 恐らく、この集落の長であるNoble Orcの息子達だろう。Kobold Shamanの霊に拠れば、その実力はOrc Generalよりも遥かに上で、Rankは6。


 VigaroZadirisを含めたGhoul達の誰よりも、格上の相手だ。


「……Bone MonkeyBone WolfBone BearBone BirdZadirisの援護、Lemureに案内させます。

 Sam、俺達はBasdiaの所に向かいます」




 Lucilianoはこのnightも、Life-deadを通じてNoble Orc達の-sama子を不本意ながらうかがっていた。

 本来ならさっさとOrbaum Elective Kingdomに旅立ちたかった彼だが、Balchesse Viscountの侍従長に使い魔にしているLife-deadが健在である限り、five sensesを共有し続ける事が可能である事がばれてしまったのだ。


 かくてLucilianoは領主直々の緊急指名依頼を、金貨がぎっしり詰まった袋と引き換えに受けるfeather目になったのだった。

『ご、Tortureだ……ViscountAdventurer’s Guildは、私の健全な心を抹殺するつもりだ!』

 Noble Orcの動向をrisk無く収集できる、Lucilianoの特殊なLife-Attribute Magicの独壇場とも言えるシチュエーションなのに、ここまで彼が嫌がる理由はsimpleに嫌悪感だった。


 LucilianoBalchesse Viscountから提供を受け、Life-deadにした新鮮な女の死体。それを何故かNoble OrcBugoganが気に入ってしまったのだ。

 Orc語を習得していたLucilianoは、「このadventurerの女に、我が第四子を産む栄誉を与える」とBugoganが宣言した時に、思わずscreechを上げてしまった。


 そんな中Life-deadfive sensesを共有するのは、Noble Orcに凌辱される女の視点を体験するという事で、視覚的な暴力……いや、災害と言えた。

 広い世の中には、獣やmonstersに凌辱される美女の姿を見る事に興奮を覚える特殊な趣味が存在するらしいが、鼻息を荒くした醜いOrcの姿に視界を占領されたいなんて趣味は聞いた事が無い。


 少なくとも、【Degenerate】なんてsecondary nameで呼ばれているがLucilianoにはそんな趣味は無かった。

 幸いな事に、Life-deadは触覚が殆ど無く、Sense of smellweakため何とか耐えられているが。

しかし、色々と情報が聞けたな。寝物語で口が軽くなるのは、monstersも例外ではないという事か』


 BugoganLucilianoが操るLife-deadを全く警戒しなかった。それはそうだろう、BugoganにとってLife-deadは反抗的な態度どころか、殆ど反応らしい反応も示さない子を産む機械だ。そのため日頃の愚痴や自分を排斥した故郷のNoble Orc達への恨み言まで、色々と独り言を語ってくれた。


 そういった情報を全てViscount達に渡しているため、Lucilianoの懐はかなり潤っていた。

 tonightも価値ある独り言を聞くためだと己を慰めながら、LucilianoLife-deadの視線で励むBugoganを見上げていると、情事の最中に小間使いにしているOrcが飛び込んできた。


 どうやら、集落に大規模な襲撃が仕掛けられているらしい。

『妙に騒がしいと思ったが……Orcが酔っぱらって暴れている訳じゃなかったのか』

 襲撃をかけてきたのはGhoulの大軍であり戦況は芳しくない。既に何体ものOrc Generalが倒され、Orc Mageも数を減らしているらしい。


「ブガアアアア! ブギギBubobio!」

 苦労してここまで大きくした己の軍団を滅茶苦茶にされたBugoganは怒りの咆哮を上げると、息子のBubobio達に対処させろと命じ、Life-deadの上から退いた。どうやらこれから自分も戦支度を整えるつもりらしい。


『これは……Viscountに報告だな』

 最終的にGhoulは負けるだろうが、Noble Orc側が受ける被害は大きくなるはずだ。そうなれば奴らが春から夏の間にを襲う計画も、延期になるだろう。

 戦力が減れば百人以上adventurerを集めなくても、BClass adventurer partyを一組か二組雇えば十分になるかもしれない。


『できれば勢い余ってこのLife-deadも破壊してくれると助かるのだが』

 そうすれば自分は金を貰ってお役御免、さっさと旅に出られる。

 Lucilianoの期待に応えるように、Bugoganの住まいの外から聞こえてくる戦闘音は、激しさを増して行った。


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