「Ryuujin nationへようこそ。お久しぶりです、新Emperor Vandalieu -dono。して……何故ファイティングポーズを?」
「とりあえず戦うのかと思いまして」
「……ああ、Kijin nationではそうだったのですね。申し訳ありませんが、我々に彼等と同じノリは無理です」
訪れたRyuujin nationで出迎えに参じたRyuujinの女Warrior……Noble Orc kingdomに派遣された代表者だった女Swordsman、Rowenがそう言って苦笑いを浮かべた。
国賓の出迎えが一人とは寂しいかもしれないが、このBoundary Mountain Range内部では国の城門の外は、monstersがうろつくDevil Nestsだ。
大人数で豪華な歓迎をすると、刺激されたmonstersが殺到する危険性があるのだ。そのため、Kijin nationでキドウマル一人だけが待っていた-samaに、少人数の手練れだけで出迎えるのが通例となっていた。
「我々Ryuujinも武に生きるraceであり、西のKijin nationと対をなし、東側のMountain Rangeに発生したDungeonの管理を役目としていますが、みだりに私闘するべからずと言う教えがありますので。
特に、我等の守護龍の一頭、『Crystal Horned Dragon God』Lioen -samaより絶対に戦うなとOracleを受けておりますので」
以前MububujengeのDivine Realmで他のGodsと共にVandalieuと会い、そして彼を刺激してしまったLioenは相当nerve質になっているようだ。
Vandalieuからしてみると、ちょっとイラっとしただけで既にMemoryにも残っていない程度だったのだが。
「では、dance勝負とか曲芸Flightとか? 飲み比べならBorkusに代理で出て貰う事になりますけど」
「いえ、そう言った勝負事は何もnoneです。特に、飲み比べはご法度であります故」
何でもRyuujin達は酒好きが多く、一度飲みだすとベロベロに成るまで飲み続けてしまうらしい。……resistance skillを獲得しても、その限界を越えるまで飲み続けるのだ。
そのため、お互いを煽るような酒の飲み方はこの国では禁止されていた。
「挑戦はnone、ですか……」
若干楽しみにしていたVandalieuは、残念そうに呟く。しかし相変わらずVandalieuは無表情に平坦な声であったため、Rowenは気がつかなかった。
「ですので、その分の時間を会談や会食に使っていただきたいと四老竜は希望しています」
四老竜とは、Ryuujin nationを守る四柱の守護龍それぞれの代弁者であり、この国を合議制で運営する為政者達である。
その為政者達から希望されては、それに応じない訳にはいかないと、Vandalieuは考え直した。
「……特に、curry粉の輸入についての話し合いを、四老竜は希望しています」
「そう言えば、Noble Orc kingdomでの戦勝記念の宴の後、残っていたcurry粉をお土産に渡しましたっけ」
どうやら、curryはRyuujin nationの為政者達のtongueを魅了したようだ。
『Vandalieuったら、-chanとmuscle以外でも外交が出来るのね。偉いわっ!』
「グルメ外交、でしょうか。まあ、curry粉だけの力では無いと思いますが」
こうしてRyuujin nationでは平穏に歓待されたのだった。
Vandalieuが諸国歴訪に出かける前に、AClass Dungeonを作ろうとして失敗して出来た名noneのBClass Dungeon。そこで、PrivelやGizania、『Trial of Zakkart』攻略への参加を望む者達はlevellingを行っていた。
「……ここ、本当にBClass Dungeonだよね?」
「そのはずだ。少なくとも、そう言っていたはずだ」
単眼のgiantサイクロプスから、Magic Stoneと特に高価な素材だけを剥ぎ取り終ったPrivelとGizaniaはそう言葉を交わす。
『あぐあぐ……』
残りの肉や臓物は、死肉を食べる事でも微量だがExperience Pointを得られるZombieのRapiéçageとYamataが貪る。流石に、Giantなサイクロプスを全て食べる事は出来ないが。
『……アギトが、ほしい』
『ぐぎぎっ……キバ、タりない』
二人はOgreの手足やHydraの胴体を持つPatchwork Zombieだが、口はfemaleの物だ。一度に入る量は少ないし、fangsも無い上半身が多い。そのため、こうしてmonstersの死体をそのまま食べる時には苦労していたのだった。
サイクロプスはRank8のmonstersで、monstersに堕ちたTrue giantの子孫の一種であるとされるmonstersだ。body partの大きさは五meterを超え、見た目通りの恐ろしいMysterious StrengthとVitalityを誇る。
凶暴で孤独を好み、同族でもBreeding期以外は敵と見なす。そのためDevil Nestsはcertainly Dungeon内でも、複数の個体が徒党を組んで襲い掛かって来る事は無い。
そのはずなのだが、このDungeonのサイクロプスは普通に徒党を組んで襲い掛かって来る。
「このDungeonに出てくるmonstersは、当たり前のように常識を無視してくるでござるな」
EmpusaのMyuzeが鎌腕に付いたbloodや脂を布で拭きとりながら、ため息交じりの声でそう評する。
Dungeon内で出てくるmonstersは、Mentalを支配されていて本来の生態とは異なる行動をとる事は、広く知られている。
外部からの侵入者に対しては、raceが異なるmonstersであっても協力して排除に当たる。大runawayが起きた時以外、階層を繋ぐ階段には入らず侵入者のPursuitや、待ち伏せを行う事は無い。自分から階層を移動する事もしない。
そしてDungeonが自動的に仕掛ける落とし穴等のTrapの配置を、Instinct的に知っていて避けようとする等だ。
ただ、Dungeonで生成されたmonstersであっても完全にMentalを支配する事は出来ない。そのため、monstersの性質とあまりに異なる行動をとらせる事は不可能だ。
例えば孤独を好むはずのサイクロプスに、徒党を組ませた挙句拙いながらもteam playをさせるとか。
「他にも落とし穴の中にmonstersが潜んでいたり、階段の中まで追い駆けてきたり……まるで自然のmonstersの-samaな自由さでござる」
『恐らく、Creation者であるVandalieu -samaのAClass Dungeonを望む心が、BClass Dungeonの枠を超えた難易度として現れているのでしょうね』
ぼやくMyuzeに、Vampire ZombieのIslaが生前は数万年を生きた女Vampireらしく、冷静にconjectureを述べる。
『それにVandalieu -samaが創るDungeonで生成されるmonstersには、魂が無い。だからこそDungeonのMental操作が完全に機能する。
つまり、これも全てVandalieu -samaから課された試練!』
だが突然恍惚とした表情になって胸に手を当てると、天を仰ぎ見る。
『この難易度こそが、我々に課されたVandalieu -samaからの期待の大きさ! ああ我が主よっ、必ずやこの試練を乗り越えてご覧に入れましょう!』
「……Isla -dono、急にchildの教育上良くない顔で叫び出すのはどうかと」
Vandalieuに熱狂的なLoyaltyを誓うIslaは、一行の中で最も強く頼りに成る存在だ。サイクロプスを含めたmonstersを同時に複数相手取っても、負ける事はまず無い。
しかし時折彼女にしか見えないVandalieuと会話し、こうして何かを叫び出す事が珍しくない、やや困った人でもあった。
「Pauvina -chan、この人前からこうだったの?」
「ううん、Vanから首輪を貰うまでは大きな声は出さなかったよ」
「……前からだったんだね」
Islaは生前から内にInsanityを秘めていたが、当時はある程度自制が効いていた。しかし、Undead Transformationした事でタガが完全に外れてしまったらしい。……以前上司だったEleonoraはIslaを半ば放置していて気がつかなかったようだが。
因みに、Vandalieuが近くにいる時のIslaは彼しか見ないため言動が正常に近くなる。だからVandalieu本人だけが、Islaの奇行を知らないのだった。
「これでボク達よりずっと強いんだから凄いよ。Vampireって、強くなるとEleonoraやMiles -sanみたいに変わった人になるのかな?」
『あの女とは一緒にしないで』
「いきなり正気になったでござるな」
ライバルのnameを出された事で、陶酔に溺れていたIslaがぐるりと首を回転させて抗議する。
そのライバルのEleonoraも、今のIslaと一緒にされるのは心外だろう。因みに、彼女もPrivel達より深い階層で、Zadiris達Ghoul組やBragaとこのDungeonでlevellingに励んでいる。
既に実力的には十分AClass Dungeonや『Trial of Zakkart』攻略について行ける彼女達だが、新しくVandalieuが作ったDungeonに興味を覚えたようだ。
『私はVandalieu -samaにLoyaltyを誓っているだけ。それを狂人か何かのように……まあ、いい。ついでに確認するけれど、まだ攻略を続けるの?』
「う~ん、あたしはちょっと辛くなってきた~。injureとかは無いけど、ごめん」
Maceに付いたサイクロプスのbloodと脂を拭い終ったPauvinaが、そう言って息を吐く。
「いや、まだ-kunがついてこられる事が凄いと思うよ」
Privelが言うように六ageになったばかりの、Humanに換算するとまだ九ageになったばかりのPauvinaがBClass Dungeonの攻略に参加している事自体が凄い。
このageで普通なら……英才教育を施されるRoyal Nobilityや一流adventurerのyoung childでも、大人の監督下でRank1のmonsters一匹相手に戦うぐらいが精々だ。
それをPauvinaは、サイクロプスとの戦闘でも足手まといに成らず、戦力として参加していた。三meterの背丈に、Death Iron製のMaceやOrichalcumの盾を装備している事を考慮しても驚異的な力である。
「でも、全然倒せなかったよ。攻撃を盾で受け止めるのが精一杯だったもん」
ただ流石にサイクロプスを単独で倒すような事は出来ず、惹き付けながら牽制するだけでやっとだったようだが。
「受け止められる時点で凄いって」
「普通なら、Orichalcumの盾を持っていても倒されていると思う」
しかし Rank8のmonsters一体を惹き付けて大きなinjureもしていない事が、凄くない訳が無い。Orichalcumの盾の性能も大きいが、それを抜きにしてもageからは考えられない力をPauvinaは身につけていた。
「でも、『Trial of Zakkart』は無理かなぁ。この頃levelが上がり難く成ったし」
しかし、AClass Dungeon以上の難易度を誇る『Trial of Zakkart』攻略への参加は無理だろう。まだ一月以上の時間があるが、成長の壁にもぶつかっている事だし。
「成長の壁って、本当にlevelが上がらないんだね。今日だけで沢山 monstersを倒したけど、まだ1levelも上がらないもの」
初めてぶつかった成長の壁にそう愚痴を漏らすPauvina。その-sama子に、まだ食事中のRapiéçage達以外は苦笑いを浮かべながら同意する。
「皆、何回かぶつかるものらしいよ。ボクも今二回目かな」
「拙者も今二回目の壁だ。Van -donoは強敵を倒す事で強引に乗り越えてしまうから、彼ばかり見ているとあまり大変そうには見えなかったと思うが、本当は時間がかかる物だ」
急にlevelが上がり難くなる成長の壁は、多くの場合越えるのに時間がかかるのが普通だ。短い場合でも数か月、長ければ数年。十年以上壁にぶつかっている者もいる。
aptitudeの有無、壁を越えるためにする努力とそれが可能なFortuneに恵まれているか否かによって、期間は異なる。
『大変で当り前よ。簡単に越えられたら、DClassで燻ったまま引退するadventurerなんて世の中からいなくなる。でも、あなたにはVandalieu -samaがついているわ。必ず乗り越えられる。お前達もね』
Islaが年長者らしく一般的な外のworldの常識を教えつつ、そうPauvinaやPrivel達を励ます。実際、Vandalieuの【Guidance:Hell Demon Path】の効果を受けている彼女達なら、時間はかかっても確実に壁を越える事が出来るだろう。
実はPauvinaが今まで壁にぶつからなかった事も、その効果の一つだ。
『でも、Pauvina達の場合その為の努力はもっと浅い階層か、CClass Dungeonでした方が良いでしょうね』
「やっぱり? 今だとあんまり戦えて無いもんね」
戦闘で得られるExperience Pointの量は、どれだけ戦闘に貢献できたかによる。自分の実力では少ししか戦闘に貢献できない強敵よりも、それより数段弱くても自分で倒せるmonstersとの戦いを繰り返した方が、Experience Pointを得られる。
自分の実力を遥かに超える相手を使って強引に壁を越える方法もあるが、そんな強敵がそう簡単に現れるはずもない。
「じゃあ一旦Dungeonから出た後、CardでRank7までしか出ない階層に移動するでござるか?」
「このDungeonだと、不意打ち気味にRank8が現れる事もあるけどね」
「まあ、不意打ちは滅多にないから大丈夫……だと良いな」
『食べ……終わった……』
『うえ、いく?』
RapiéçageやYamataの食事と、休憩が終わった一行は一旦地上に出る為、この階層の階段まで戻るのだった。
「ところでGizania -dono、何時からVandalieu -donoの事をVan -donoと呼ぶようになったのでござるか?」
「いや、Kurnelia姫が、もっと呼び方に親しみを込めるべきだと……ただいきなりVan -donoとは呼べないので」
「Van -kunがいない所で練習していると。maybe Van -kun、気にしないよね?」
「うん、しないと思うよ」
そんな雑談をGizania達が交わしている頃、Vigaro達はPauvina達よりも深い階層で牛の頭部を持つ亜人型のmonsters、Minotaurの軍勢と戦闘を繰り広げていた。
Minotaurは洞窟や遺跡、そしてそうした閉鎖spaceの内装をしたDungeonに生息するOgreが特殊なRank upをした結果、誕生したmonstersだ。
牛の頭部に蹄の足、牛のtail等Ogreから大きくappearanceが変化し、子孫はOgreではなくMinotaurとして生まれてくる。ただ現在でもOgreからRank upしてMinotaurに変化した個体も存在する。
Rankは素のconditionだと5だが、今Vigaro達が相手にしているのは最弱でもRank7のMinotaur Berserkerや、Minotaur Shield Knight。そしてrearguardにはRank8のMinotaur Mageがおり、全体のCommandingをMinotaur Generalが執っている。
個体の強さはサイクロプスの群れの方が上だが、全体的な強さは【Commanding】skillを持つ個体に率いられた統制されたMinotaurたちの方が上だ。
しかも VandalieuのDungeonで生成されたmonstersであるため魂が無く、激高やhorrorでCoordinationを乱す事が無い。
「逆に士気が上がる事も無く一定だから、慣れればやりやすい」
「ある意味、楽じゃな。行動patternに変化が無いから、次に何をするのかがすぐわかる」
そんな相手を、BasdiaやZadirisは次々に倒していた。
付与magicでAttack Powerを増したBasdiaの斧がMinotaur Shield Knightの盾を割り、逆にMinotaur Berserkerを、繰り出されたHalberdごと弾き飛ばして転倒させる。
そこにZadirisが【Chant Revocation】skillの効果で次々にActivateさせた【Light Blade】や【光砲】のLight-Attribute Magicが殺到し、止めを刺していく。
「俺、ちょっとやり難い」
逆にBlack GoblinのBragaは苦い口調でそう言った。
優れたAgility性をWeapon Equipmentにして、敵の正面から堂々とBlind Spotや不意を突いて急所を切り裂く。そんな矛盾に満ちた戦闘styleを可能にするRank7のBlack Goblin ninja Masterである彼だが、Minotaurの軍勢相手にやや戸惑っている。
「こいつ等、首を割いても驚かない。動脈を斬って、bloodが沢山出ても怯まない。死ぬ瞬間まで、戦うの止めない。KingのDungeonのmonsters、KingのUndeadより、Undeadっぽい」
scout職の戦い方とは言えないBragaの戦闘styleだが、一応は不意を突く事で真価を発揮する。しかし、不意を突かれても動揺せず、致命的な傷を負い死ぬまで数秒しか無くても戦う事を止めない敵ばかりだ。
普段と違い過ぎて、やや戸惑っているらしい。
「一撃で頭部を破壊するとか、首を切断すれば良いんじゃないか?」
「Basdia、俺、そんな力ない。首を落すのは出来る。けど隙が大きくなる」
Minotaurの頭蓋boneは硬く、太い首は下手をするとboneよりも強靭なmuscleに覆われている。BragaではBasdiaが提案した方法で、数秒の間もなく即死させる事は難しい。
「なら、一撃では無く数回の攻撃で倒すようにするしかないわね。Minotaur Mageが私相手にやろうとしているでしょう? それをApprenticeなさい」
Eleonoraがそう言った瞬間、彼女の右脚に地面から生えた石の杭がthrust刺さる。Minotaur Mageが放った、Earth-Attribute Magicだ。
「こうやって私の動きを止めて、その間に残り少ない前衛のMinotaurか自分で止めを刺すって手順よ」
しかし、Eleonoraは表情も変えず、脚に刺さっている杭を【Mysterious Strength】で圧し折って前進する。当然大量のbloodが流れるが、Abyss種Vampireである彼女の【Rapid Regeneration】skillによって一瞬で出bloodが止まった。
「分かった?」
「……分かったけど、参考になる気がしない」
そして前進した先に居るShield Knightと、剣と盾で激しい攻防を繰り広げながらBragaに確認するEleonora。Rank11のAbyssal Vampire Marquisであり幾つものJobを経験している彼女にとって、Minotaur達は雑魚でしかないのだ。
「そう? 中々参考になるわよ、こいつ等。特に、盾の使い方がね。私よりも上手かもしれないわ」
ただEleonoraはmonstersとしてのRankは高くても、それなりに腕を上げた【Sword Technique】以外のskillのlevelが低いという弱点があった。彼女はその弱点克服の為、自分と互角程度の程良い技量を持つ、殺し合える練習相手を求めてBraga達と同行しているのだ。
生前HeroだったZombie相手に実戦形式の稽古が出来る木人訓練場もあるが、Hero Zombie相手だとskillのlevel差があり過ぎて、いまいち参考にならないのだ。
「流石Shield Knightと名乗るだけはあるわね」
そうEleonoraに評価されたMinotaur Shield Knightの盾は、Eleonoraの剣と打ち合う度に深い傷が刻まれ、遂に砕かれてしまった。
そのままShield Knightを剣で切り倒した次は、その後ろにいたMinotaur Mageの首を一撃で刎ねる。
そして噴水のようなblood飛沫を上げるMinotaur Mageの胴体を蹴り倒して、恍惚の表情を浮かべる。
「流石Vandalieu -samaが私達の為にCreationしたDungeon! Vandalieu -samaの、私達に強くなって欲しいという期待を感じるわぁ……」
「最近Eleonoraのdiseaseが悪化している気がするのだが、どう思うkaa-san?」
「前は坊やの前以外だと意外と普通だったのじゃがな」
「Islaと逆だな」
MinotaurがGeneralを含めて残り数匹になって、Eleonoraの奇行について意見を交わす余裕まで出たBasdia達だったが、戦闘中一貫して難しい顔をしている男がいた。
「むぅぅ……!」
Vigaroである。ただ、苦戦している訳では無い。四本の内盾を構えている腕を除いた三本の腕で、巧みに斧を操り、一撃でMinotaurを屠る事も少なくない。
だがVigaroの顔にはそれに対する喜びも、Selfの強さに対する自信も無く、ただ眉間に皺が刻まれている。
「何かが違う。何かが、我の斧には足りない!」
そう、Vigaroはスランプに陥っていた。
彼の【Axe Technique】skillは成長限界の10levelに達している。これ以上成長するには、Superior SkillにAwakeningする以外にない。
しかし、そのきっかけをVigaroは掴み損ねていた。もう少しで何かが分かりそうなのに、手を伸ばせば爪の先が届くのに、手で掴むには少し遠い。
そんなconditionがここしばらく続いていた。
「足りない!」
苛立ちを込めて振るう斧でさえ、力強く閃きMinotaur Generalを頭部から胸部までを叩き割る。頑丈なObsidian Iron製の兜と鎧も、紙同然だ。
返りbloodを浴び、次の相手を探して……全てのMinotaurが倒れている事に気がつく。
「むぅ……またダメだったか。同じ斧使いのmonstersだったから、今度こそ行けるかと思ったのだが」
残念そうに斧を降ろすVigaro。その肩を、背伸びをしたZadirisが励ますように叩く。
「まあ、気長にやる事じゃ。『Trial of Zakkart』の出現は今年中じゃが、それで坊やの人生が終わる訳でもないのじゃし」
Darciaを生き返し、TalosheimでEmperorとして幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし……では終われない。
確かに『Trial of Zakkart』はVandalieuにとって人生の大きな節目であるが、最終目標では無いのだ。そうである以上、まだまだVandalieuと一緒に戦う機会はある。
「そうだな。だが、歯痒いのだ。歯の間に肉の筋が挟まって取れない時のような気分で、落ち着かない」
それはVigaroも分かっている。だから焦っている訳では無いのだが、【Axe Technique】の高みに至れそうで至れない事に苛立っているらしい。
「あなたの腕なら、このDungeonでは無くてHero Zombieと実戦形式の訓練を重ねた方がいいかもしれないわよ。彼等の技量は確かだし」
「あいつ等の武術は凄いが、あまり我には参考にならないのだ」
Eleonoraの提案にも、Vigaroは首を横に振る。四本の、しかも立っていても手の甲が地面に着く程長い腕を持つ彼のAxe Techniqueは、Humanの物とは動き方が大きく異なるのだ。
「こういう時は、本人の気が済むまでやらせるのが一番だ。それにこのDungeonもまだ攻略していないのだから、Dungeonボスを倒すまで-sama子を見よう。
それより、Bragaを見習ってMinotaurのDismantlingを手伝え」
「そうじゃな、MinotaurのtongueはJadalの好物じゃし」
Basdiaの言葉によってVigaroのスランプは暫く-sama子を見る事にした一行は、MinotaurのDismantlingに取り掛かるのだった。攻略と修業が目的とはいえ、稼ぐ気が無いわけでは無いBasdia達だった。
Ryuujin nationではTalosheimとお互いにBlacksmithingを技術留学させる取り決めを交わし、curry粉の輸出、それにRyuujin nationのChefを留学させる事が決まった。
それらはスムーズだったのだが、四老竜達の話と売込みが長かった。
「Emperor -dono、儂の孫娘が産まれたらどうじゃろう?」
『お爺-san、産まれてからにしましょうね』
尤も、Vandalieuが応対する前に大体はPrincess Levia達に受け流されるなどしていたが。
「Rowenっ、muscleだ! muscleをもっとつけてEmperorの寵愛を得るのだ!」
「爺-sama、私の剣は速さが命。無駄なmuscleは逆に動きが鈍ります。爺-samaは孫娘の剣を鈍らせるつもりですか」
寧ろ、無理難題を吹っかけられていたRowenの方が大変だったかもしれない。
そしてnight、夢の中で『Crystal Horned Dragon God』Lioenを含めた、Ryuujin nationの四柱の守護龍のDivine Realmに招かれた。そして『God of Warriors』Garessが贈った-samaに、『竜帝』のsecondary nameをVandalieuに贈ろうとしたのだが、残念ながら失敗してしまった。
『何故に!?』
『maybe、俺の仲間に竜が少ないからでは?』
どんなに発言力がある者が付けようとしても、あまりに事実無根なsecondary nameはStatusに反映されない。どうやらVandalieuの『竜帝』も同-samaだったらしい。
実際、Vandalieuの仲間や配下にはUndeadを入れても、Dragonに関係する者は少ない。LizardmanやAhemait、それに恐竜Zombieはいるが、竜とは別のカテゴリーなのだろう。Dragon ZombieのLeoぐらいだろうか。
『致し方なし。では、代わりにこれを土産に』
『我のこれも持ち帰るが良い』
四柱の龍達は自らのscaleや爪、fangsを折るとそれをVandalieuにそれを持たせた。これを適性のある者に与えれば、力を強くする事が出来るだろうと言って。
『とても痛そうに見えるのですが、大丈夫ですか?』
やっている事はGaressと同じなのだが、彼と違って視覚的に痛そうな龍達の行動にVandalieuがそう尋ねる。Lioenは『blessingsを与える事と同じだ。問題は無い』と答えた。
当人達がそう言うので、遠慮無く受け取った。尤も、目覚めるとやはり手の中には何も残っていなかったが。
翌日、Vandalieu一行はMajin nationよりも更に南にある、Boundary Mountain Range内部の最南端の国、Merfolk nationに向かった。そして海辺に在る住宅街に、Vandalieu達は泊まる事になった。
Rankを持たないVida's New Racesの中では最もHumanから離れたappearanceをしているMerfolkたちは、魚のlower bodyを持つ。当然その主な生活の場はunderwaterであるため、Merfolk nationの主だった施設もunderwaterに在った。
しかし、Merfolk以外のraceもMerfolk nationに居るため、彼等の為に陸地にも町が作られているのだ。一行はそこに滞在し、海辺でMerfolk nationの有力者と会談を行った。
ただ、Vandalieuだけは【Demon King's Proboscis】でtongueを変化させて水面から先端を出して、シュノーケリングに似た事をしながら海の中のMerfolk nationを見て回った。
「王-samaこんにちは! 提灯アンコウのMerfolkと一緒に何処に行くの!?」
『どうも、提灯Vandalieuです』
【Demon King's Proboscis】以外にも、額から【Demon King's Antenna】を生やしてその先端を【Demon King's Luminescent organs】で光らせて静かに泳ぐVandalieuが、Merfolkたちには深海魚の特徴を持つ同族に見えたらしい。
「……Vandalieu -dono、貴方は【Dark Vision】skillをお持ちの筈。海の中を見渡すのに、照明が必要ですか?」
『……すみません、戯れてみました』
「その光に魚やPlanktonが誘われて集まって来て視界が悪くなるので、お止め下さい」
Merfolk王に真顔で問われて、すぐにantennaを引っ込める事になったが。
ただそうして見たMerfolk nationの海中としては、Coralや海藻を装飾に使った石造りやGiantな巻貝を利用した家が並ぶ、幻想的で美しいものだった。
ただimageしていたものよりも、陸地に近い比較的浅い海に都市が集中していた。
このBoundary Mountain Range内部で唯一Mountain Rangeに挟まれていない場所に在る国だが、実際には岩礁や渦、そして危険な海のDevil Nestsである『Demon Seas』に囲まれている。そのため、外洋に出る事は出来ずContinent沿いの海に住むしかないという事情があるそうだ。
『それに、Merfolkの中には泳ぎが不得意な者もいるものですから』
そう説明するのは、Merfolk nationに泊まったその日のnightにVandalieuをDivine Realmに招いたMerfolkの片親、『Goddess of Water and Knowledge』PeriaのSubordinate Godである『God of the Seas』Tristanである。
『Merfolkなのに泳ぎが不得意なのですか?』
『Merfolkのlower bodyは魚だが、中にはタツノオトシゴやアンコウのMerfolk等もいるのだ』
『……成るほど』
Merfolkにも、-sama々なTypeがいるらしい。鮫のlower bodyを持つ泳ぎが得意な者もいるが、一概に泳ぎが得意なraceばかりでは無いようだ。因みに甲殻類や貝類、クラゲ等のlower bodyを持つMerfolkはいないらしい。
『ところで、貴-donoのGuidanceに関してですが……名称を魔Nether Pathに変える事は出来ないだろうか? マーMaidウとも読めて、とても良いと思うのだが』
『skillの名称って、自分で変えられましたっけ?』
『すまない、我の緊張を解す為の冗談だ。では本題に入るが……元我が同胞、Yupeonを含めたAlda's FactionのGodsについて願いがある』
『God of Ice』Yupeon。Tristanと同じくPeriaのSubordinate Godだが、Vidaでは無くAlda陣営に付いた神だ。
Vandalieuと直接の面識はないが、Mirg Shield NationのHeroだったMikhailが生前携えていたArtifactの槍『Ice Age』には、YupeonのSpirit Cloneが宿っていた。
そしてそのSpirit Cloneによって、Talosheimの地下に存在したVidaの遺産であるResurrection Deviceが破壊され、Darciaのrevivalが遠のいてしまった。更にVandalieuを罵り、Knochenの元になったBone WolfやBone Monkeyを破壊した。
結局はVandalieuによってSpirit Cloneは砕かれ滅ぼされたのだが、その一件以後Spirit Cloneのmain bodyであるYupeonはTalosheimにとって憎き敵である。
しかし Yupeonが神である以上、そうそう相対する事は無いと以前は思われていたが……最近は頻繁に神に招かれるし、去年にはEvil God (P)と戦っている。
Yupeonとの戦いも、あり得ないとは言えない状況だ。
『……聞ける事と聞けない事がありますが』
そのYupeonに対する恨みと怒りを思い出したのだろう。Vandalieuの異形の魂に、countlessのDemon King's Hornやfangsが生える。
当人は抑えているつもりだろうが、Lioenが失言した時とは比べ物にならない圧力をTristanは感じた。
やはり冗談を言って緊張を解しておいてよかった。そう思いながらTristanは続けた。
『……そのYupeonを含めて、Alda側のGodsとRavovifardの時のように戦う事があって、万が一彼等が降伏し命乞いをした場合は、聞き届けて貰いたい。worldの為に』
『worldの為、ですか?』
『そうだ。我が主Peria -samaが眠りにつき、Aldaによって我もWater-Attributeの神の座から追われ、このworldのWater-Attributeを管理する神の数は今足りていないはず。他のattributeも、Light Attribute以外は似たようなconditionだろう。』
今Alda達がどのようにworldを管理しているのか、敗軍の将の一人であるTristanには想像するしかない。
だがGreat Godの不在に、Vida側に付いたSubordinate Godの追放とsealed。確実に神が足りていないconditionだ。
この十万年の間にAlda側に付いたGodsのbelieverが新たな神に昇華したとしても、数も実力も気休め程度にしかなっていないはず。
『Vida勢力がAlda's Factionに勝った場合、あなた達が神の座に戻れば神の数は足りる-samaになるのでは?』
『戦いの後、我々が勝った場合でもVida側のGodsの多くは疲弊するはず。それに私達も無傷とはいかない。故に、神の数が減り過ぎるのは避けたいのです。
……多少足りない程度なら数千年程度は持つでしょうし、その間にMerrebeveilやFidirg達がworldの管理に加わり、慣れれば何とかなると思うが』
Tristanが付け加えたのは、Vida側のGodsが来るべき戦いの結果自分達が勝った場合の予定だった。
元Demon King Armyの一員だった寝返り組のEvil God (M) Evil God (P)は、worldの管理に加わっていなかった。彼等が協力してくれれば、とりあえずこのworldの維持は出来るはずだと、Vida側のGodsは予想していた。
……そのimpactでDevil Nestsが増えたり、奇怪な動植物が誕生したり、異常な自然現象が起きるかもしれないが、それは今の段階で既に起きている。だからworld全体が滅びに瀕するよりはマシだろうと言う判断だ。
その説明を受けたVandalieuは、『なるほど』と頷いた。
『分かりました。降伏したら、命乞いを受けいれる方向で考えましょう』
『感謝します、我等がChampionよ』
想定していたよりも簡単に同意したVandalieuにTristanはほっと胸を撫で下ろした。というのも、『God of Battleflags』Xerxや『God of Warriors』Garessはこの説得を最初から、無理だろうと諦めていたからだ。
それはVandalieuが基本的に恨みを捨てない性格をしている事を聞いているからだ。しかし、流石のVandalieuもworldを滅ぼしてまで復讐を完遂したいとは考えていなかった。
ただ、譲れない一線もある。
『しかし、俺が勝てるとしても余裕のある戦いにはならないでしょう』
『……いや、Yupeonなら割と勝てそうですが』
YupeonはPeriaのSubordinate Godの中でも有力な神であったが、Tristanも彼とほぼ同格の神であった。だから十万年の間に多少差が出来ていても、Ravovifard程の力は手に入れていないはずだと分かる。
Yupeonが完全な憑代にAdventでもすれば別だが、そうでない限りほぼVandalieuが勝利するはずだ。
『だとしても、Yupeon達Alda's Factionの神が簡単に降伏するとは思えません。逆に、たとえ滅ぼされても降伏しないなんて神も少なくないのではないでしょうか?』
何せ相手は神だ。Humanとは別の価値観で彼等は存在している。
それにHumanだって信仰の為に命を捨てる事があるのだ。その信仰対象である神が、命がかかっているからといって簡単に、それも自分達が唱えてきた教えが否定する存在に下るとは思えない。
『その場合は気にせず喰らい、滅ぼして構わない。私は彼等が降伏するなら、worldの為に『仕方なく』生かして欲しいだけなのだ』
Tristanも十万年前に受けた仕打ちに対して、そしてその後も我が子であるMerfolkたちが受けている仕打ちに対して、恨みが無いわけでは無い。
かつては確かに同胞であり、戦友だった。だが今は敵同士。Yupeon達が考えを変えず、我が子等に害悪を及ぼし続けると唱えるならば、我が子等の為に決断するのが神として当然の事だ。
『その答えが聞けて安心しました』
そうVandalieuが言った途端、Tristanと周囲のCoral礁を思わせる彼のDivine Realmが薄れて消える。どうやら、会見が終わったらしい。
『おや?』
しかし、Vandalieuの意識は途切れなかった。何時もなら、Divine Realmから戻された後は意識が途切れ、起きた時は朝になっているのだが。
別の神のDivine Realmに招かれたのかと思うが、それも違うようだ。
意識は途切れていないが、急速に明確さを失っていく。five sensesも有って無いようなconditionで、思考も鈍っている気がする。
『なるほど、これは夢か……』
久しぶりに夢を見ているのだと、Vandalieuは気がついた。
同時に、自分の手の中に今までGaressやLioen達から受け取った突起物やscaleがある事にも。
それが何を意味するのか鈍った思考ではもう考えられないが、目の前に道らしい物があるのでそれを進んでみようとVandalieuは蠢きだした。
・Name: Braga
・Rank: 7
・Race: Black Goblin ninja Master
・Level: 75
・Passive skills
Dark Vision
Abnormal Condition Resistance:4Lv
Enhanced Agility:6Lv(UP!)
Intuition:5Lv(UP!)
Detect Presence:6Lv(UP!)
Strengthened Attribute Values when equipped with Ninja Equipment (Medium)
・Active skills
Dagger Technique:8Lv(UP!)
Throwing Technique:6Lv(UP!)
Silent Steps:8Lv(UP!)
Trap:5Lv(UP!)
Dismantling:5Lv(UP!)
Lockpicking:4Lv(UP!)
-Surpass Limits-:4Lv(UP!)
Assassination Technique:3Lv(NEW!)
Ninja -Surpass Limits-:1Lv(NEW!)
Coordination:3Lv(NEW!)
・Unique skill
Human Slayer:4Lv(UP!)