Talosheimに亡命した元Amid Empire Noble、Cuoco Ragdewが新しい年を迎えたこの一月、幾つかの印象深い出来事が起きた。
最初に起こったのは、正式に男peerageをEmperorであるVandalieuから賜った事だ。Cuocoだけでは無く、彼以外の亡命Noble達全員が、とりあえず男peerageを賜る事に成った。……accurateには、まだ内定のconditionだが。
どうやら彼の前世と更にその前の前世で生きたworldでは、Nobleが存在しないというCuocoには理解しがたい統治体制を採用していたらしい。それもあって、originally Noble制が無かったTalosheimでわざわざ採用する必要をVandalieuは感じなかったし、peerageを求める者も最近まで居なかった。
だから今まで採用するかどうかの決断を先延ばしにしていたらしい。
だが実質Prime MinisterであるChezareや、Cuocoの今の上司であるKurtに説得されたそうだ。
NobleにとってpeerageはHonoraryと権力、そしてpropertyだけでは無く、子孫の身分と生活の保障に繋がる大切なものだ。それを保証する事で亡命したNoble達のLoyalty心を強め、これから他国のNobleの翻意を促すための材料に必要だと言われたらしい。
そしてVandalieuは「まあ、Earthにも二世議員とか代々高Class官僚の一族とかいましたし、いいか」と頷いたそうだ。
一部Emperorの権力が新参者に奪われると反対意見も出たそうだが……peerageを認めた程度でこの国の支配者がどうにかなるはずないだろうと説得されて、すぐ消えたようだ。Cuocoも同感だ。
originally peerageを継がせる事を諦めていた彼にとっては、peerageにそれほどの価値は無いのだが。
それよりも印象深かったのは、Cakeだ。
「陛下、あの白くてフワフワとしたCreamなる物が乗ったCakeのstability供給こそっ、この国には必要なものではないだろうか。いや、そうに違いない!」
「Cuoco、まさかそれを訴えにここまで来たのですか?」
ヴヴヴヴとfeather音が響くCemetery Beeの巣で力説するCuocoに、Vandalieuは聞き返した。
「Cake好きなんだね、Cuoco -kun」
しみじみとした口調でPauvinaが言った。
この前迎えた自分の六ageの誕生日partyで、切り分けられたCakeを口にしたCuoco一家の感激ぶりを思い出したのだろう。
「うむ、それだけでは無いのだが。この場所にも前々から興味があったのでね」
Human換算で九age程のShoujoに-kun付けで呼ばれている事も気にしないCuocoは、周囲で忙しく動き回るCemetery Beeや、巣に併設された養殖場を見て目を輝かせた。
「普通都では、これはとても手に入り難いのだよ。手に入っても、既に干物や甘露煮にされているものが殆どでね。新鮮なconditionで欲しければ専門の商人と契約するか、自分で田舎にでも行くしかない。それほどの高Class食材。
だがこのTalosheimでは庶民の味としてFood Stallで甘露煮や串焼き、素揚げが一Lunaから売られている。その秘密がここに在るのだ!」
『煩いねぇ! 蟲が驚くだろうがっ、静かにおし!』
そう叫ぶCuocoを、『Insect Army』のBebeckett……Bebeckettの魂を入れられた、Patchwork Zombieが叱責した。
彼女本人の死体は頭部をErwinが砕き、それ以前に蟲をInfestさせていた為muscleや内臓の欠損していた部位が多すぎてZombieとしても使えなかった。
そのため、VandalieuとLucilianoが厳選した素材を使用して新しいBodyを作ったのだ。
因みに、RickertやErwinの魂は情報を吐き出させた後、Vandalieuによって喰われて消滅している。彼等はUndeadにして再利用するには、Ability的にはin any case、性格的に問題があったからだ。特にErwinは行動を許すと、生前のように自分や仲間を犠牲にするやり方をしかねない。
死んでVandalieuに魅了されても、すぐに性格が大きく変わる訳では無いのだ。
尤も、それも時間をかけて矯正するか、【Mind Encroachment】skillで洗脳すればいいのだが……結局のところ、それほどの手間をかける価値をVandalieuは二人に見出せなかったのだ。因みに、魂を食べてもskill等は得られなかった。神のFamiliar Spiritでもそうだったので、幾ら強くても人の魂では食べても何も得られないのだろう。
二人と違い価値を見出され、特別製なボディを与えられたBebeckettが此処で何をしているのかというと、養蜂と蟲の養殖である。
Cemetery Beeは、以前から芋虫やmonsters化していない、若しくは低Rankの蜂のmonstersを狩って、Vandalieuにお裾分けしたり、Talosheimの飲食店に卸したりしていた。
そのCemetery Beeの巣で、生前は養蜂を営んだ事もあるInsect UserのBebeckettが、狩猟採集だけでは無く養殖を始めたのだ。
これにより新鮮な蟲のstability供給が可能となり、都会では高Class食材の蜂がTalosheimでは更に庶民の味と成ったのである。
『クキクキ、陛下の為に丸々と太った芋虫や蜂の子を育てているんだからねぇ、ヴヴヴ……邪魔をするんじゃないよ』
脇腹に移植された【Demon King's Jointed legs】や、背中に移植されたmonstersのfeatherを鳴らすBebeckett。Cuocoも彼女を怒らせるつもりはないので、すぐに謝罪した。
「それ程高Classなのですか?」
Vandalieuは落ち着いたCuocoにそう尋ねた。Japanでも蜂は高Class食材とされていたが、image的にA5Rankの松坂牛や神戸牛、キャビアやトリュフ等よりは下だと思っていたからだ。
しかしその通りだとCuocoや、それまで黙ってBebeckettを観察しながらメモを認めていたLucilianoも頷いた。
「当然だとも。都市部では生きている物は見つけづらいし、monstersでは無い普通の蜂でも捕獲には危険が伴うからね」
「DClass以下のadventurerだと、スズメバチを甘く見て刺されて死ぬ奴が毎年何人か出るのだよ。monstersでは無いただの蜂の巣を採取するだけで、OrcやHuge Boarを狩るより報酬が手に入ると油断してね」
どうやら、このLambda worldにも危険なスズメバチが存在するようだ。しかも、場合によってはadventurerでも死者が出るらしい。
「CClass以上のadventurerだと、monstersを狩っていた方が楽だし効率も良いから見向きもしない。生け捕りは手間だからね。しかもスズメバチは危険だが、monstersと違って無暗に人を襲わないから探すのが面倒だ。その上Devil Nestsに入れば一年中どの季節でも狩れるmonstersと違い、旬というものがある。
逆にスズメバチの捕獲に精通し、その売却で儲けているスズメバチHunterのEClass adventurerもいるらしいが」
「Nobleなどの富裕層ほど蟲を食べない傾向にあるから、高Class食品でも必ず高値で売りさばけるとは限らない。だから食用蜂の大々的な養殖なんて、普通は採算が取れない。こんな事が可能なのは師Artisanぐらいだよ」
「……二人とも気が合うみたいですね」
「息がピッタリだよ」
そうVandalieuとPauvinaに言われた二人だが、「まあ、それはin any case」と大して気にせずスルーした。どうやら、お互いにあまり興味が無いらしい。
「それでCuocoは蟲の養殖場を見に来たのですか?」
「ああ、それが私の主目的だ。蜂の幼虫を使った新しいCookingのideaがあってね。それをサイドビジネスにしようかと思っているのだよ」
一度家が財政破綻目前まで行ったせいか、今度は日頃から稼いでおくつもりらしい。
「だが、皆から何時頃peerageを貰えるのか聞いて来て欲しいと頼まれてね」
Cuocoの言う「皆」とは、VandalieuがMarme Dukeを拉致した時、占領軍からTalosheimに亡命したNoble達の事だ。
「頼まれたって、自分達で師Artisanに聞けばいいだろうに」
「それはまだ躊躇われるらしい。-kun達がMarme Duke達にやった事を考えるとねぇ……」
「Van、何かしたの?」
意味ありげなCuocoの言い方が気に成ったのか、Pauvinaが不思議そうに目を瞬かせる。
「人体実験した以外に」
「人体実験以外には何もしてないですね」
「そうだよね? 普通の事なのに何で話しかけてくれないのか、不思議だよね」
「ですよね」
揃って首を傾げるPauvinaとVandalieu。その言動に流石のCuocoも、顔が若干引き攣った。目で「あれは本気なのか?」とLucilianoに問うが、「Pauvinaは本気だ」と答えられると、恐ろしい物を見る目で三meterのShoujoを見上げた。
頭部の皮をIslaに剥がされて拉致されたMarme Dukeや、彼の家臣でもVida's New Racesや民に対して酷い迫害を行った者達はあの場で殺されず、王城地下の工房で人体実験の素材に利用された。
themeは、「Vandalieuが生成する【Demon King Fragment】の生の部位を、生きたHumanに移植するとどうなるのか」と言うものだ。
【fur】による植毛や、【blubber】による豊胸、【blood】の原液を直接blood transfusionした場合どうなるのか、可能になったら便利そうだから、試そうとVandalieuとLucilianoは思ったのだ。
結果は、被験者を苦しませるためのTortureとしては成功だった。
【Demon King Fragment】の生成物を生きたまま移植されたMarme Duke達被験者達は、激しい拒絶反応を示した。
だが死ぬ事は出来ず、【Demon King Encroachment】skillを獲得後瞬く間にそのlevelを上げて【Demon King Fragment】に人格とbody partを生きたまま乗っ取られてしまったのだ。
幸いだったのは、それまで【Guidance:Hell Demon Path】のimpactを受けるsignの無かった彼等もそのconditionに至ると、Vandalieuを『main bodyぃ』と呼び、彼に服従した事だった。
そうしてできた【fragment】に乗っ取られたHuman、便宜上Vandalieuが「怪人」と呼ぶ存在だが、本来の【Demon King Fragment】に飲み込まれたHumanよりも、圧倒的に弱かった。戦力として使うなら、Living Armorを量産した方がずっと有用だ。
しかも事ある事にVandalieuとintegrationされようとするので、仕方なくfragmentの部分を体内に戻したら正気に帰る事無く死んでしまった。
「生前親しくなかったとはいえ、顔を知っている者が異形に成り果てる光景は、控えめに言っても恐れられるのに十分だと思うのだが……」
「別にCuocoまで戦かせるつもりはないのですが……捕虜をTortureし、罪人を惨たらしく処刑する事ぐらいEmpireでもやっているでしょうに」
Talosheimではその代わりに人体実験を行い、「導かれていないHumanに、加工されていない生の【Demon King Fragment】細胞を移植すると危険」だという貴重な結果が残った。それだけの事である。
「それに異形と言っても、生前と今のBebeckett程じゃないでしょう?」
「た、確かに!」
体中に蟲をInfestさせていたBebeckettの姿を見た事があるCuocoは、はっとして頷いた。
実際、Marme Duke達が変異した怪人達はその程度の異形だった。VandalieuやLegionに見慣れていれば、「変なのがいるな」と思うだけで済んでしまう。
「我ながらこの感覚が正常だとは思わないが、ね。ところで師Artisan、質問に答えてはどうだね」
「ああ、peerageの事でしたね。俺がこれからBoundary Mountain Range内部の各国を回って、その後『Vida’s Resting Ground』で就任の挨拶をして、正式にEmperorになったあとの予定です」
「成るほど……意外と形式に拘るのだね」
どうやらCuoco達は、護衛も連れず一人で町に出現し国民と交流したり、自ら学校でchild達に授業をしたり、child達に混じって授業を受けたりするVandalieuの-sama子を見て、形式に拘らない存在だと感じたらしい。
実際、Lambdaの歴史でも国を興した初代国王などは形式や格式ばった儀式等を嫌った者が少なくなかったので、Vandalieuもそうだと考えたのだろう。
「そりゃあ、長生きするつもりですから。余裕のある時は拘ります」
寿命が長いDark ElfとのDhampirであるVandalieuは、数百年どころか千年後だって生きてEmperorをしている可能性がある。
その時、いい加減な儀式が伝統として受け継がれていたら気不味い思いをする事になる。将来由来などを聞かれて、その度に「若気の至りで……」と答えるのは避けたいのだ。
「ですから、皆にはもう少し待ってくださいと言っておいてください」
「いやいや、拘ってくれた方が助かるよ。皆も安心するだろう」
形式に拘るという事は、何かの気まぐれでpeerageを取り上げるような事は無いだろう。そんな計算が、亡命Noble達の頭の中で働くだろうからと言うCuoco。
「一応忠告しておくが、師Artisanはmaybe普通のNoble連中が『多少の事』と考えている-samaな悪事を働いたら、通常通り罰すると思うので、安心しすぎもどうかと思うが」
「それはMarme Duke達の末路を見れば分かるとも。それに、自分に高貴な青いbloodが流れていると考える-samaな輩は、私も推薦しなかったからね」
adventurerだった祖父が手柄を立てた事で男peerageを得たCuocoは、EmpireのNoble社会では当然新参者だ。しかも財政難で何時没落するかも分からないconditionが続いていたので、自分に高貴なbloodが流れているとは考えた事も無かった。certainly彼の妻と娘も同じだ。
そんな彼がVandalieuに、「見込みがありそうな者」として勧めた占領軍勤めのNoble達だ。彼同-sama何時没落してもおかしくない零細貧乏Nobleばかりで、庶民感覚を持っている者達で揃えられている。
certainly Cuocoも彼等がこれから増長し、高慢にならないと保証する事は出来ない
しかし、Marme Duke達の末路を思い出せばそうはならないだろう。
「……頭の皮を剥いだこと以外、見せしめのつもりは無かったのですが」
「全くだ。あれは意味のある医療実験であって、無意味なTortureでは無いというのに」
ただ口々に心外だという師弟から、Cuocoは思わず視線を逸らした。
「いけない事をしたら怒られるのは、普通の事だよね?」
そして逸らした先のGiant Shoujoに、不思議そうにそう言われてしまった。どう考えても、あれは「怒られた」の範疇に納まらない仕打ちだと思うのだが。
Cuocoが黙った事で若干静かに成ったせいか、Cemetery Beeの立てる音の中にビリっと何かが破れる音が混じった事にVandalieu達は気がついた。
「この音は、grown wingsが始まっているようですね」
VandalieuによってPseudo- reincarnationしたCemetery BeeのQueen蜂、Quinnの蛹が納まっているroomの蓋が、内側から押されて動いている。
変態を終えたQuinnが出てこようとしているのだ。
「これは興味深い! 一体どんな形状に進化したのかrecordに残さなくては!」
「我が家の蟲Cookingビジネスにも重要な存在の誕生か。ぜひ見届けなくては!」
「でもmale陣は退場しましょうか」
「「何故!?」」
『いいからこっちに来なぁぁ!』
BebeckettのGiant昆虫の前足に掴まれたLucilianoとCuocoが、強制退場させられていく。Vandalieuもその二人と一緒に巣の外に出ようとした。
「Vanはここに居ないとダメ!」
しかし Pauvinaに襟首を掴まれ、猫の子の-samaに持ち上げられてしまった。
「こういう時居ないと、何年も恨まれるってBorkusと、それにVigaroも言ってた」
「それは、奥-sanの出産では?」
そう言い返すVandalieuだが、考えてみれば確かに残った方が良いかもしれないと思い直した。
grown wingsや脱皮は蟲にとって必要な成長過程だが、同時に命がけの作業でもある。蟲型のmonstersの場合でも割合は低いが、脱皮の際に体が変形してしまう事や、失敗して死ぬ事もある。
QuinnはCemetery BeeのQueen蜂が同じくQueen蜂に生まれ変わった存在なので、働き蜂達がgrown wingsを手伝ってくれる。
しかし Pseudo- reincarnationしdeath attributeのManaを浴びたQuinnが、通常のQueen蜂としてgrown wingsするとは考えられない。実際、幼虫の段階で普通では無かったのだから。そのため、働き蜂達の補助にも至らないところが出るかもしれない。
だから何かあった時の為にVandalieuが立ち会うのは、間違っていない。
そうVandalieuが理論武装を完了させた数秒後、roomの蓋を破って内側から手が現れた。
形は人の手だが、まるで籠手でも着けているかのようなexoskeletonに覆われており、手首には柔らかそうな毛が生えている。
それが更に三つ出てきて、蓋を更に破いて穴を大きくしていく。
「おぉ~、きれい~」
Pauvinaがそう言いながら見つめるのは、遠目に見れば蜂をモChiefにした鎧を着たfemaleだと思われるだろう姿をしていた。
五体があり、全体的な造形はHumanのfemaleに近い。しかし腕は四本で、脚は二本だが膝から下は蜂と同じ形状をしている。それらはexoskeletonに覆われており、関節部分は綿菓子のように柔らかそうな毛に護られている。
頭部も人に近い。毛髪があり、一見すると目は二つで、鼻も口も人の物と同じ形をしている。しかし額には二本のantennaが生えていて、眼下に納まっているのはeyeballではなくcountlessのcompound eyesだ。集まっているので一見すると、瞳の部分が異常に大きいだけのように見えるが。
そして背中ではgrown wingsしたてで濡れた蜂のfeatherが、乾くにつれて真っ直ぐ伸びていっている。その下のHumanなら尾骶boneのある辺りからは、蜂の腹部に当たる部分がtailのように生えていた。
ただそれらの部分とは違って胴体の前面は人のfemaleの物と変わらない造形をしている。顔つきも、antennaやcompound eyesを除けば、二十代半ば程のfemaleの物だ。
Pauvinaより若干背が高く、それ等も相応に大きい事を除けばだが。
「それに大きい~!」
「まあ、幼虫の段階でGiantでしたものね」
成虫になって小さくなるはずもない。そう納得するVandalieuと喜ぶPauvinaの前で、働き蜂達がQuinnに群がってbody partのケアを始める。
「……ぁ……」
Quinnは働き蜂達に身を任せつつ、口を開けて大きく呼吸を繰り返していた。どうやら何か言いたいようだが、形と機能が大きく変わったbody partに慣れていないせいで、上手く出来ないようだ。
しかし Quinnが何を言いたいのか、VandalieuとPauvinaには察する事が出来た。一応彼女がPseudo- reincarnationした時から一緒に居た、ある意味幼馴染なのだから。
「若干躊躇いを覚え無くも無いですけど」
「Van、照れない」
「はいはい」
Vandalieuはtongueを伸ばすと、働き蜂達に混じってQuinnのexoskeletonや背中を舐めはじめた。彼女が幼虫の頃、body partにカビが生えない-samaに舐めていたのと同じように。
「今の姿があなたの望んだ姿ですか?」
嬉しそうにするQuinnにそう尋ねると、彼女はその通りだと頷いた。どうやらVandalieuは上手く彼女をGuiding事が出来たようだ。
Quinnがgrown wingsし、Gehenna Queenビーという新種のmonstersに変化した数日後、Vandalieuは使節団と共にBoundary Mountain Range内の各国を歴訪するためにTalosheimを旅立った。
その数日の間にVandalieuは【Labyrinth Creation】skillを使用して、AClass Dungeonを創り出そうと試みた。
今まで彼がBClass以上のDungeonを作らなかったのは、木人訓練場等があるので急いで増やす必要を感じなかった事もある。だが、それ以上にDungeonが危険物だからだ。
BClass Dungeon以上の難易度となると、Talosheimでも攻略できる者は減って来る。すると、大runawayを起こさないよう内部で発生するmonstersを、stabilityして間引く事が出来るか不安が残る。
Vandalieuや側近memberなら、BClass Dungeonに出現するRank7以上のmonstersも、stabilityして間引く事が出来る。しかし、Vandalieu達は常にTalosheimにいるとは限らない。その間にmonstersが増えて大runawayを起こしたら大きな被害が出てしまう。
それを警戒したのだ。
【Labyrinth Creation】で創ったDungeon内のmonstersには魂が無く、Creation者であるVandalieuの命令になら、大雑把にだが従う。しかし、流石に「それ以上増えるな」という命令に従わせる事は不可能だ。
certainly、魂の無いmonsters達が増えたとして、通常のDungeonと同じように大runawayを起こすのかは不明だ。しかし、試してみる訳にもいかない。
そうして創らなかったBClassよりも一つ難易度の高い、 Bahn Gaia continentでも数えるほどしか無いAClass Dungeonを何故今創るのかというと、TalosheimのExplorer達の実力が全体的に向上した事や、『Trial of Zakkart』に挑戦する前の腕試しに、AClass Dungeonが必要になったからだ。
しかし、時間とManaを費やして創ってみたらBClass Dungeonにしかならなかった。
「う~ん、何故でしょう? 相性が良いように蟲系のmonstersが中心に出現するDungeonを思い描いたのに」
「ボクはDungeonを創るって感覚が分からないけど……時間が足りないとか?」
出発の時間barelyまで試行錯誤しているVandalieuに、見送りに来ていた者達の一人であるPrivelがそう話しかけた。
しかし、時間が足りない訳では無いような気がする。
「これ以上時間とManaを込めても、変化が無さそうなのですよ。縁まで水を汲んだ壺に、更に水を注ごうとしても無理なのと同じで」
「それでは、skill levelが足りないのかもしれないな」
ArachneのGizaniaにそう指摘されると、そうかもしれないとVandalieuは思った。
Vandalieuの【Labyrinth Creation】skillのlevelは7。他のskillと比べると、十分高levelと言える。
しかし、BClass Dungeonも世間的には十分高難易度のDungeonだ。それからconjectureすると、今のlevelではどう頑張ってもAClassには届かないのだろう。
「やや間抜けな結果ですが、Majin nationにもAClass Dungeonはあるそうですし、そっちで試してみますか」
「きっとその内AClass Dungeonも作れるようになるでござるよ。……その練習の為に、Dungeonを量産されても困りものでござるが」
「分かっています。管理できないDungeonは増やしません」
Myuzeの言う通り、等Classの低いDungeonで生成される低Rankのmonsters程速く増える。そのため、練習でも簡単に創れないのだった。
「確か、Vandalieu -samaって凄く小さいDungeonをHartner領やSauron領に創っていましたわよね。あれは……?」
「Tarea、極小Dungeonを放置してもRank1のmonstersが数匹外に出るだけで何も起きませんよ」
Tareaにそう保証するVandalieu。実際には、発見した近隣住民に定期的にHorn Rabbitが狩れる場所として利用されているので、増えたmonstersが溢れだす事は殆ど無かった。
『陛下、そろそろ』
「ですね。
では皆、ちょっと行ってきます」
「行ってらっしゃい! 創ったDungeonはボク達が修業がてら間引いておくから、頑張ってね!」
「歴訪中に『Trial of Zakkart』が現れても、潜る前に一度は戻って来てくれると嬉しい」
『留守の間の事は、お任せください』
そう見送られて、VandalieuはTalosheimを後にしたのだった。
ただ通常の国が仕立てる使節団と違い、幾つもの馬車を仕立てて大勢の護衛を引き連れて行く事は無い。
馬車はNightmare CarriageのSam一台。そして外の護衛はKnochenである。
『さあ、行きますぞ!』
Samのcarriageは【Space Expansion】skillの効果で、見た目の十六倍の容量が入る。そこにUndeadや蟲、植物を装備できるVandalieuが乗るのだ。使節団どころか、ちょっとした軍団である。
『おおおぉおん!』
そして後方を空飛ぶ億に迫るboneの集合体、Knochen。
護衛に成るどころか、竜種の中でも上位の存在であるHurricane Dragonでも近づくのを避けるだろう。
そんなVandalieu一行がまず向かったのは、最も近いZanalpadna――では無く、Kijin nationだった。
何故かZanalpadnaやNoble Orc kingdom、Majin nationからは、『もう十分なので、Vida’s Resting Groundで待っている』と事前に言われてしまったのだ。Ghoul nationやHigh Goblin nation、High Kobold nationも同-samaである。
何が十分なのかと首を傾げつつ、そのままTalosheimから見て西側のMountain Rangeに在るKijin nationに直行する。
そしてStone Wallをくり抜いて作った城や、都市を地上のmonstersから守るための城壁の外側に降りて、礼儀正しく城門から尋ねようと、Vandalieuは門番に話しかけた。
「すみませーん、貴国とお約束していたTalosheim国王のVandalieuと申します。Emperor就任のご挨拶に参りました。上の方に取り次ぎをお願いします」
『うんうん、お行儀は満点よ、Vandalieu』
『陛下ーっ! そう言うのは自分でしちゃダメです! Darcia -samaも止めて!』
『Princess Levia、主は何時もこうだからきっとこれからもこうかと』
『やっぱり普段からそれらしい態度をさせておかないと、突然は出来ないもんッスねぇ』
自ら先頭に出てきて用件を伝える国王と、それを褒める母。慌てるPrincess Leviaに、既に達観しているBone ManとKimberly。
そんな騒ぎにも動じる-sama子を見せない門番らしいKijin raceの男……赤銅色の肌に背丈とmuscleはVigaroに勝るとも劣らない大男は、門の前に一人仁王立ちをしていた。
「分かっている。貴-dono等が空を進む姿は、大分前から見えていた」
そして岩を擦り合わせたような重厚な声でそう答えた。
『くおおん』
門番の男が言うように、城塞並の大きさがあるKnochenが後ろからついて来ているのでMountain Rangeの側面に在るKijin nationではVandalieu達の接近に気がついていた。
「では早速――」
「だが、その前にまずは貴-samaの力を試させてもらうぞ!」
門番の男……門番だとVandalieuが思っていた男は、両の瞳に燃える-samaな戦意を宿して、背負っていた身の丈Sizeの金棒を構えて見せる。
「我こそはKijin nationが誇る『六角戦鬼衆』が二の角、『大金棒』のキドウマル! 我が国の王と会いたくば、まずはこの我を倒してもらうぞ!
だが我を倒しても更に、この門をくぐっても我を越える実力を持つ『六角戦鬼衆』の残り四人が立ちはだかる事に成る! それを倒して進み、更に我々の頭たるGeneral Oniwaka -samaを倒さなければ、王に会う事は出来ん!」
childが見たら泣きそうな迫力で、そう説明するキドウマル。どうやら彼は門番なのでは無く、Kijin nationの幹部的な存在らしい。
「えーっと、何故?」
一通りキドウマルの言葉を聞いて、暫く考えた後Vandalieuはそう尋ねた。この「何故」には色々な意味が含まれていたのだが、キドウマルは二言で済ませた。
「こういう習わしなので、頼む」
「分かりました。戦いましょう」
「ご理解、感謝する」
お互いに礼をして戦う構えを取る両者。
それを後ろで見ていたDarciaやPrincess Leviaは、Vandalieuがあっさり納得して戦う事も含めて予想外の成り行きに、呆然としていた。
『習わしなら、仕方ないのかしら?』
『お国柄、なのかしら?』
『ところで、あの人が二の角なんですよね? 一は? 姉-san知ってる?』
『Rita、確かNoble Orc kingdomでBocchanが会ったKijin nationの人が、『六角戦鬼衆』の一の角だって言っていたそうですよ』
『VigaroやGorbaもGhoul nationでGhoul王と戦っていたしな。そういうもんなんだろ。
やっちまえ、坊主!』
こうしてKijin nationを訪ねるための戦いが始まったのだった。
《【Labyrinth Creation】skillのlevelが上がりました!》
・Name: Quinn
・Rank: 9
・Race: Gehenna Queenビー
・Level: 0
・Passive skills
Abnormal Condition Resistance:5Lv
Rapid Regeneration:1Lv
産卵:10Lv
Peerless Vigor:3Lv
Mana Enlargement:5Lv
Automatic Mana Recovery:5Lv
Deadly Poison Secretion: Stinger:1Lv
Enhanced Body Part:exoskeleton:1Lv
Strengthened Attribute Values: Under Servitude:1Lv
・Active skills
Mana Control:1Lv
Space-Attribute Magic:1Lv
Bee Swarm Coordination:10Lv
Bee Swarm Commanding:10Lv
・Unique skill
High-speed Bee Swarm Development
Zanalpadna’s Divine Blessing(NEW!)
QuinnがVandalieuのPseudo- reincarnationとGuidanceを受けた事で誕生した新種のmonsters、Gehenna BeeのQueen蜂。
成虫のRankは9で、Instinct的に初歩のSpace-Attribute Magicを使う。ただQueen蜂であるためQuinn main bodyはそれ程強くは無い。VitalityやMana、IntelligenceはRank相応だが、戦闘Abilityは殆ど持っていない。
彼女の本領は働き蜂を含めた配下の蜂をCommandingする事で発揮される。
【産卵】skillでGehenna Beeの卵を一日最大十個産む事が可能で、更にskillの対象が蜂に限定される代わりに通常の【Coordination】や【Commanding】skillよりも効果の高い、【Bee Swarm Coordination】と【Bee Swarm Commanding】skillを獲得している。
【Bee Swarm Coordination】は蜂の役割に徹していれば効果が発揮されるので、Quinnは実質何もしなくても……何もしていない時に効果が発揮される。
更にUnique skill【High-speed Bee Swarm Development】で、大量のManaを消費する事で自分が産んだ卵や幼虫を、数秒で成虫に成長させる事が出来る。ただこのskillは緊急時の為のもので、本来は普段から多用する事は出来ない。
【Evil god of Carapaces and Compound Eyes】Zanalpadna’s Divine Blessingを受けており、さらに成長する可能性がある。